説明

火災警報器

【課題】火災感知手段と報知手段とを収容する筐体への報知手段の着脱を容易にする。
【解決手段】火災を感知する火災感知手段6と、該火災感知手段が火災を感知した旨を報知する報知手段110とが設けられる筐体2と、該筐体に着脱自在に設けられ、前記報知手段を覆うカバーとを備え、前記報知手段は、前記火災感知手段による火災の感知を音によって報知するスピーカを有し、前記筐体に、前記スピーカの外周を取り囲むように形成された収容壁部24と、前記収容壁部に囲まれて形成される収容領域からの前記スピーカの離脱を防止するように当該スピーカを係止する係止爪25と、を一体に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等に設置される火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
火災警報器は、住宅等の天井や壁に設けられており、火災時の煙や熱を感知して火災が発生している旨の警報を行う。
火災警報器は、煙等で火災を検出した場合に、正常に警報することができるように定期的に作動するか否かの試験を行う必要がある。そのため、火災警報器の前面には、警報を作動させる又は警報を停止させる操作片が設けられている。この操作片を押動操作することにより、または、予め火災警報器内部で操作片に結ばれて火災警報器の外部へ延出されたスイッチ用の引き紐を引き操作して操作片を連動させる。これにより、操作片が作動し、火災警報器に内蔵されたスイッチが押圧されて、報知部から警報が放音出力される。また、再度、この操作片を操作することにより火災警報器内のスイッチが押圧されて警報停止を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−122414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の火災警報器にあっては、操作片と引き紐との連結部が火災警報器内に収容されていた。そのため、引き紐を操作片に結びつける際に、火災警報器を一旦分解して引き紐を操作片に結びつけ、その後再び火災警報器を組み立てて引き紐を火災警報器の外部に導く必要があり、手間がかかるという問題があった。
また、従来の火災警報器にあっては、引き紐を使用しない場合には、室内の景観を損なうことから、引き紐を操作片から取り外すが、再度使用する際に、取り外した引き紐を紛失してしまうおそれもあった。
【0005】
また、従来の火災警報器にあっては、報知部に圧電振動板を使用することが一般的であったが、この圧電振動板は、音声を増幅する構造を警報機のカバー内に設ける必要があり、且つ当該音声増幅構造との密接接続を図る必要性からねじ止めされることが一般的であった。そして、火災報知器の製造工程において、圧電振動板のねじ止め作業が煩雑となり、作業効率の低下を招いていた。また、報知手段のネジ止め作業は、故障や点検等で着脱する際にも煩雑になるという問題があった。
本発明は、操作片に引き紐を結びつける際の手間を軽減することをその目的とする。
また、本発明は、引き紐の紛失を防止することを他の目的とする。
また、本発明は、報知手段の着脱を容易にすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、火災を感知する火災感知手段と、該火災感知手段が火災を感知した旨を報知する報知手段と、が設けられる筐体と、該筐体に着脱自在に設けられ、前記報知手段を覆うカバーと、を備え、前記報知手段は、前記火災感知手段による火災の感知を音によって報知するスピーカを有し、前記筐体に、前記スピーカの外周を取り囲むように形成された収容壁部と、前記収容壁部に囲まれて形成される収容領域からの前記スピーカの離脱を防止するように当該スピーカを係止する係止爪と、を一体に設ける、という構成を採っている。
【0007】
上記構成では、報知手段にスピーカを使用するため、圧電振動板のように音声増幅構造を必須の構成としないので、ねじ止めのような強固な固定手段を必須としない。そして、報知手段を構成するスピーカは収容壁部に囲まれて形成される収容領域に収容される。このとき、係止爪は、収容領域からのスピーカの離脱を防止するようにスピーカを係止する。これにより、スピーカは筐体に形成された係止爪で収容領域への収容が可能となるので、従来のように、ネジ等を用いて筐体に固定する必要がなく、スピーカの筐体への着脱を容易にすることができ、さらには、部品点数を軽減できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記カバーは、放音孔と、当該カバーを前記筐体に装着した際に前記スピーカに対向して前記放音孔に報知音を導く筒体を有し、前記係止爪は、前記筒体側に延出されると共に当該筒体の側壁の一部を構成する、という構成を採っている。
【0009】
上記構成では、カバーを筐体に装着するとカバーの筒体はスピーカに対向してスピーカの周囲を包み込む。ここで、係止爪は、筒体の側壁の一部を構成しているので、筒体と係止爪を別個に設ける場合に比べて省スペース化を図ることができる。
また、筒体と係止爪との嵌め込みは、カバーを筐体に装着する際のガイドとすることもできるので、カバーの筐体への装着作業を容易にすることができる。
また、筒体は、スピーカの周囲を筒状に囲む壁部となるので、スピーカから発せられた音がスピーカの周囲に散乱することを抑制して大部分が一方向に伝達され、警報効果を向上させることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記スピーカは、前記報知手段の制御手段に導線を介して接続され、前記収容壁部と前記係止爪との間には、当該係止爪の撓みを許容するスリット部が形成されると共に当該スリット部から前記導線を収容領域の外側に案内する、という構成を採っている。
【0011】
上記構成では、収容壁部と係止爪との間にスリット部が形成されており、このスリット部からスピーカの導線を収容領域から外側に案内することができる。これにより、スピーカの導線が他の場所に行かないようにスリット部で押さえることができるので、スピーカの配線を容易に行うことができる。
また、係止爪の撓みを許容するためのスリット部が上記スピーカの導線のガイドとしても機能するので別途導線のガイドを設ける必要がなく、火災報知器の生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明では、報知手段を構成するスピーカは収容壁部に囲まれて形成される収容領域に収容される。このとき、係止爪は、収容領域からのスピーカの離脱を防止するようにスピーカを係止する。これにより、スピーカは筐体に形成された係止爪で収容領域への収容が可能となるので、従来のように、ネジ等を用いて筐体に固定する必要がなく、スピーカの筐体への着脱を容易にすることができ、さらには、部品点数を軽減できる。
【0013】
請求項2記載の発明では、カバーを筐体に装着するとカバーの筒体はスピーカに対向してスピーカの周囲を包み込む。ここで、係止爪は、筒体の側壁の一部を構成しているので、筒体と係止爪を別個に設ける場合に比べて省スペース化を図ることができる。
また、筒体と係止爪との嵌め込みは、カバーを筐体に装着する際のガイドとすることもできるので、カバーの筐体への装着作業を容易にすることができる。
また、筒体は、スピーカの周囲を筒状に囲む壁部となるので、スピーカから発せられた音がスピーカの周囲に散乱することを抑制して大部分が一方向に伝達され、警報効果を向上させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明では、収容壁部と係止爪との間にスリット部が形成されており、このスリット部からスピーカの導線を収容領域から外側に案内することができる。これにより、スピーカの導線が他の場所に行かないようにスリット部で押さえることができるので、スピーカの導線の配線を容易に行うことができる。
また、係止爪の撓みを許容するためのスリット部が上記スピーカの導線のガイドとしても機能するので別途導線のガイドを設ける必要がなく、火災報知器の生産性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】火災警報器の正面側を示す斜視図。
【図2】火災警報器の分解斜視図。
【図3】筐体の正面側の斜視図。
【図4】筐体の正面側の斜視図。
【図5】凹部まわりの拡大斜視図。
【図6】凹部にスピーカを収容した状態での凹部まわりの拡大斜視図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】筐体の背面側の斜視図。
【図9】筐体に形成された収容部の拡大斜視図。
【図10】暗箱の斜視図。
【図11】暗箱の内部構造を示す断面図。
【図12】暗箱の背面板に設けられた構造を示す斜視図。
【図13】カバーの背面に形成された嵌合壁部の拡大斜視図。
【図14】入力部の背面側の斜視図。
【図15】カバーに入力部を取り付けた状態での背面側の斜視図。
【図16】操作片とカバーと筐体との位置関係を説明する拡大断面図。
【図17】紐掛け部の平面図。
【図18】紐掛け部を引き紐により引く状態を示す斜視図。
【図19】紐掛け部の他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(火災警報器の全体構成)
本発明の実施形態である火災警報器100について図面を参照して説明する。
図1に示すように、火災警報器100は、建造物の屋内の天井や壁面に設置され、火災により生じる煙を感知することで警報音等による報知を行うものである。
ここで、以下の説明において、火災警報器100の設置に際して、建造物の天井の平面或いは壁面に対向する面を火災警報器100の背面(後面)とし、その逆側の面を火災警報器100の正面(前面)とする。なお、以下の説明において上記正面側に向かう方向を前方、背面側に向かう方向を後方として説明を行うこととする。
【0017】
図1、図2に示すように、火災警報器100は、建造物の屋内の天井や壁面にネジ等によって取り付けられるベース1と、ベース1上に設けられた筐体2と、筐体2上に設けられた回路基板3と、回路基板3上に設けられた暗箱4と、回路基板3及び暗箱4を上方から覆い、筐体2に着脱自在に設けられるカバー5と、を備えている。
【0018】
(ベース)
ベース1は、カバー5の外径と等しくなるように円板状に形成され、カバー5と同心となるように連結されている。ベース1は、例えば、白色の樹脂材料にて一体成形で作られている。
ベース1の背面側には、火災警報器100が設置される天井や壁面に対してネジ止めを行うための長穴状或いは鍵穴状のネジの挿通穴11が表裏にわたって貫通するように形成されている。
ベース1には、壁面に設けられたフックなどに火災警報器100を吊下するための壁掛けリング12が一体形成されている。壁掛けリング12は、火災警報器100を壁に吊下して設置する場合に切り離され、その基端部が取り付け穴13に取り付けられて使用される。
【0019】
(筐体:正面側)
図1〜図9に示すように、筐体2は、平面視円形の皿状に形成されている。筐体2の外周には、ベース1と同径となるような壁部20が形成されている。筐体2の上面には、回路基板3を取り付けるための軸状の取付部21が一体に形成されている。当該取付部21は、回路基板3に形成された嵌合穴に挿入される構造となっており、各取付部21の間隔はわずかに各嵌合穴の間隔よりも広く設定され、これにより挿入時に各取付部21が弾性力を生じ、これをもって回路基板3の保持を行うようになっている。
また、筐体2の上面には、カバー5の下面側に形成されたピン5aを挿入して筐体2にカバー5を取り付けるための挿入穴22が形成されている。
【0020】
図3〜図5に示すように、筐体2には、筐体2の上面よりも下面側に凹んだ凹部23が平面視円形状に形成されている。凹部23には、煙を感知した旨を警報音により報知する報知手段としてのスピーカ110が嵌め込まれる。すなわち、凹部23は、スピーカ110の収容領域となる。凹部23の周囲には、スピーカ110の外周を囲む収容壁部24が筐体2に一体形成されている。収容壁部24は、互いに対向するように弧状に二つ形成されている。収容壁部24の上端には、その上端から下方に向けて切り欠かれた切欠部24aが所定間隔をあけて形成されている。これは、スピーカ110の枠に形成された爪部110aを嵌め込むためのものである。
【0021】
図5、図6に示すように、収容壁部24の対向する端部間には、隙間が形成されている。この隙間には、筐体2の正面側に向かって起立する係止爪25が形成されている。すなわち、係止爪25は、収容壁部24の一部としても機能している。
係止爪25は、弾性を有する樹脂材料から形成されている。係止爪25は、その先端部が収容壁部24によって囲まれるスピーカ110側に張り出している。
図7に示すように、係止爪25は、その下端部で上方に向けて折り返すように形成されて筐体2と一体形成されており、係止爪25の撓みが可能となるよう当該係止爪25の両側にはスリット部26が形成され、係止爪25の背面には空間Sが形成されている。
すなわち、スピーカ110を凹部23に収容する際には、係止爪25の上端部はスピーカ110に押されて外に広がるが、スピーカ110を凹部23に収容した後は、係止爪25の先端がスピーカ110の上方に張り出すように元の状態に戻る。これにより、係止爪25は、スピーカ110の凹部23からの離脱を防止する。
図5、図6に示すように、係止爪25と収容壁部24との間には、スリット部26が形成されている。スリット部26は、スピーカ110を凹部23に嵌め込んだ際に、その導線111を凹部23から外側に案内する機能も有している。この導線111は、制御手段(図示しない)に接続され、煙感知手段6(後述する)により煙が感知されると、制御手段は導線111を介してスピーカ110に音を発する指令信号を送信する。
【0022】
(筐体:背面側)
図8、図9に示すように、筐体2の背面側には、後述する引き紐Tを収容する収容部27が設けられている。収容部27は、筐体2の壁部20と、筐体2の背面に設けられた収容壁28とによって囲まれて形成されている。
収容部27には、カバー5を筐体2に取り付けた際に、収容部27に収容された引き紐Tと紐掛け部94(後述する)とを隔離する隔離壁29が形成されている。
隔離壁29は、壁部20から紐掛け部94の一部を囲むように形成されている。なお、紐掛け部94の全体を隔離壁29で覆うことも可能であるが、紐掛け部94への引き紐Tの着脱の利便性を考慮し、引き紐Tの装着が行われる部分は隔離壁29を設けていない。
【0023】
(回路基板)
図2に示すように、回路基板3は、筐体2の上面に取付部21を介して固定されている。
図2、図10〜図12に示すように、回路基板3には、火災発生時の煙を感知する火災感知手段としての煙感知手段6(図11参照)と、煙感知手段6を格納する暗箱4と、押圧操作によりスピーカ110の作動をON/OFFするスイッチ7と、煙感知手段6の感知によりスピーカ110から警報音を鳴らすための回路が主に構成されている制御手段(図示略)と、を備えている。
【0024】
(煙感知手段)
図10〜図12に示すように、煙感知手段6は、暗箱4内に設けられる発光素子61(例えば発光ダイオード)と受光素子62(例えば、フォトダイオード)とから構成される。すなわち、発光素子61はその照射範囲が制限された状態で暗箱4内に配置され、受光素子62は検査光が直接入射されないように受光範囲が制限された状態で暗箱4内に配置される(図12参照)。
さらに、暗箱4内において、発光素子61と受光素子62とは、その照射範囲とその受光範囲とが一部が重複するように配置され、その重複領域(検煙領域Aとする)に煙が侵入すると当該煙により発光素子61の照射光が散乱されて受光素子62に入射し、煙が感知されるようになっている。
【0025】
(制御手段)
制御手段は、その一番目の機能として、発光素子61を点灯させると共に当該点灯時に所定値以上の光強度で受光素子62が検出を行うと、スピーカ110から警報音を鳴らす処理を実行する回路が構成されている。
また、二番目の機能として、スイッチ7が押下されると、受光素子62の検出の有無にかかわらず、スピーカ110から警報音を鳴らす処理を実行する回路が構成されている。
【0026】
(暗箱)
図10〜図12に示すように、暗箱4は、筐体2内において正面側となる円形の正面板41と、背面側となる円形の背面板42と、正面板41と背面板42との間において当該正面板41又は背面板42のいずれかに一体成形された後述する各種の構造及び暗箱4の外周を覆う図示しない防虫網から構成されている。
なお、正面板41、背面板42とこれらに一体成形された各種の構造は、いずれも光吸収性の高い黒色樹脂から成形されている。
【0027】
正面板41と背面板42とは、いずれも等しい外径の円板であり、同心となるように互いに連結される。
また、正面板41と背面板42との間には、図11に示すように、煙感知手段6の発光素子61の前方を除いて周囲を覆いつつ保持を行う発光素子保持部43と、煙感知手段6の受光素子62の前方を除いて周囲を覆いつつ保持を行う受光素子保持部44と、暗箱4の外周近傍で外光の侵入を防止するラビリンス部45と、発光素子61の照射光が受光素子62の受光領域に直接進入することを防ぐ遮蔽板46と、発光素子61からの出射光を受けて発光素子61と受光素子62とにより設定される検煙領域Aの外側に集光する反射板47とを備えている。
【0028】
発光素子保持部43は、発光素子61を中心方向に向けて保持し、発光素子61の左右と後方を覆う壁面部43aと前方で照射範囲を規制する絞り部43bとを備えている。
上記壁面部43aは正面板41に一体成形され、絞り部43bは光軸を挟んで二分割され、一方が正面板41に、他方が背面板42に一体成形されている。
また、発光素子保持部43に保持された発光素子61は、そのリード線が背面板42を貫通して暗箱4の背面側に位置する制御手段に接続されている。このリード線を暗箱4の外部に導く貫通穴の周囲には図示しない遮光壁が形成され、当該貫通穴からの外部光の侵入が防止されている。
【0029】
受光素子保持部44は、受光素子62を中心方向に向けて保持し、受光素子62の左右と後方を覆う壁面部44aと前方で受光範囲を規制する絞り部44bとを備えている。
上記壁面部44aは正面板41に一体成形され、絞り部44bは背面板42に一体成形されている。
また、受光素子保持部44に保持された受光素子62は、そのリード線が背面板42を貫通して暗箱4の背面側に位置する制御手段に接続されている。このリード線を暗箱4の外部に導く貫通穴の周囲にも図示しない遮光壁が形成され、外部光の侵入は防止されている。
【0030】
遮蔽板46は、発光素子保持部43と受光素子保持部44の間に配置され、発光素子61の照射範囲が受光素子62側から離れるように制限されている。かかる遮光板46は正面板41に一体成形されている。
そして、発光素子保持部43及び遮蔽板46に規定される照射領域と受光素子保持部44に規定される受光領域との重複する範囲が検煙領域Aとなり、煙がこの検煙領域A内に侵入すると、照射光が散乱されて生じる散乱光が受光素子62に受光されて、煙の侵入を感知する。
かかる検煙領域Aは、暗箱4のほぼ中央に設定される。
【0031】
反射板47は、発光素子61からの照射光を反射する凹面を備え、かかる反射板47は正面板41に一体成形されている。
反射板47は、発光素子61からの照射範囲全体の照射光を反射可能な大きさに設定され、暗箱4の外部となる仮想の集光点に集光するように凹面が形成されている。かかる仮想の集光点は、暗箱4の正面板41よりも正面側遠方に設定されており、反射板47をかかる形状とすることで、発光素子61からの照射光の反射光を全て受光領域外に向かわせることができ、検煙時の散乱光以外の外乱光の影響を抑制し、S/N比を向上することができる。
【0032】
ラビリンス部45は、断面形状が略L字状、略Z字状等の屈曲形状となる複数の壁面と、発光素子保持部43の壁面部43a、受光素子保持部44の壁面部44aと一体的に形成された壁面とからなり、これらのラビリンス部45は、検煙領域Aを取り囲むように配置される。そして、図11に示す断面方向において、隙間を形成しながら互いにかみ合うように配置されることで、暗箱4の外周から検煙領域Aへの外部光の侵入を防止している。なお、各ラビリンス部45は互いに隙間をもって配置されるので、検煙領域Aへの煙の誘導は容易に行うことができる。
なお、各ラビリンス部45は、主に正面板41に一体成形されている。
【0033】
(カバー)
図1、図2に示すように、カバー5は、筐体2に着脱自在に設けられ、煙感知手段6、スピーカ110、スイッチ7等を覆うものである。カバー5は、円形の正面部51と、正面部51の周縁部から連なる側壁面を構成する円筒部52と、正面部51の中央部に設けられた略円筒状の凸状部53とを有し、これらは白色の樹脂材料にて一体成形で作られている。
凸状部53は、正面部51に対して同心に配置されると共に当該正面部51よりも小径な皿状の天板53aと、天板53aと正面部51とを連結する四つのリブ53bとを有している。
リブ53bは、天板53aの周縁部において四本が均一間隔で設けられ、各リブ53b同士の間は広く開口している。図2に示すように、凸状部53の内側には、煙感知手段6を格納する暗箱4が配置されるため、各リブ53bの間を開口部53cとすることで暗箱4内に煙を導きやすい構造となっている。
カバー5の正面部51は、その中央部が、凸状部53の天板53aとほぼ同じ大きさで開口し、暗箱4が遊挿状態で配置されている。
【0034】
図13に示すように、カバー5の正面部51の裏面には、カバー5を筐体2に取り付けた際に、筐体2の収容壁部24に嵌合して筒体を形成する嵌合壁部55が形成されている。嵌合壁部55は、収容壁部24と同じく、スピーカ110を取り囲むような略円形状に形成されている。そして、カバー5を筐体2に取り付けた際に、スピーカ110を取り囲んで筐体2側に延びる略円筒状の筒体が形成される。嵌合壁部55によって囲まれたカバー5の正面部51には、スピーカ110からの警報音を外部に出力する放音孔55aが形成されている。
また、嵌合壁部55には、カバー5を筐体2に装着した時に、前述した二つの係止爪25の先端部が嵌合する矩形の切り欠きが二カ所に設けられており、各係止爪25が筒体である嵌合壁部55の側壁の一部を構成するようになっている。
【0035】
図2に示すように、カバー5の円筒部52の下端部には、紐掛け部94に係止された引き紐Tの他端部をカバー5の内部から外部に導く切り欠き状のガイド部58が形成されている。
ここで、図16に示すように、紐掛け部94とガイド部58との位置関係について説明すると、カバー5を筐体2に装着した状態において、紐掛け部94は、筐体2の背面において周囲の平面部よりも後方外側に突出すると共に、ガイド部58は、紐掛け部94よりも後方に配置される。なお、紐掛け部94の周囲の平面部は、前述した引き紐の収容部27の底面であって、当該平面部は筐体2のベース1への非装着時において筐体2の後方から外部に開放されている。
【0036】
(操作片)
図1、図2に示すように、カバー5の正面部51の一部は切り欠かれており、この切り欠かれた部分には、カバー5と別個に構成され、カバー5から筐体2側に押し込み可能に支持された入力部9が設けられている。入力部9は、カバー5を筐体2に取り付けた状態で押圧操作をした際に、その先端が回路基板3に設けられたスイッチ7に接するように形成されている。そして、入力部9を押し込むことで、スイッチ7を入力することが可能となっている。なお、スイッチ7は警報音の作動確認の試験を行うためのものであり、入力操作されると、煙感知にかかわらず、警報音を鳴らすように回路基板3の回路が構成されている。
【0037】
図14〜図18に示すように、入力部9は、カバー5の正面部51の外周に沿う弧状に形成されている。入力部9の一端には、入力部9をカバー5の背面に取り付けるための取付部91が形成されており、この取付部91をカバー5の裏面側に取り付けることで、入力部9は、カバー5に取り付けられた一端部を支点として筐体2側に押し込み可能となる。
入力部9の背面側には、入力部9の正面から背面に向かう方向に沿って延びると共に、入力部9をカバー5に取り付けた際に、筐体2に向けて垂下するように形成された操作片92が形成されている。なお、円弧状の壁面部の裏面が入力部9の押圧操作によりスイッチ7に接触する。
【0038】
操作片92は、入力部9の背面から延びる垂下部93と、垂下部93に連続するように形成されると共に垂下部93の下端部から屈曲するように形成され、引き紐Tの一端部が繋がれる紐掛け部94と、を備えている。
垂下部93は、筐体2に入力部9を取り付けたカバー5を装着した際に、図16に示すように、筐体2を貫通して筐体2の裏面側まで延びて、収容部27内に配置される長さ、大きさに形成されている。従って、紐掛け部94も筐体2の裏面における周囲の平面部に突出することとなる。
【0039】
紐掛け部94は、垂下部93に対して直角に屈曲するように形成されている。図14〜図17に示すように、紐掛け部94には、引き紐Tの一端部を係止するための溝部94aが、紐掛け部94の面方向、すなわち、操作片92の押圧操作方向に直交する方向に延びるように形成されている。また、この溝部94aは、当該溝部94aとガイド部58との間に張った状態で掛け渡された引き紐Tにも直交する方向に沿っている。
溝部94aの開口付近は拡幅されており、引き紐Tが溝部94a内に入り込みやすくなるように形成されている。溝部94aの奥側の端部は、拡幅されており、この部分で引き紐Tの結び目が係止される。また、溝部94aの奥側の端部が拡幅されていることで、引き紐Tを引っ張った際に溝部94aの長手方向にずれにくくなっている。
紐掛け部94に繋がれる引き紐Tは、図18に示すように、引っ張ることで操作片92を引き紐Tの操作方向Pに動作させるものであり、引き紐Tを介してスイッチ7を押下することも可能となっている。
なお、図8や図16などのように壁部20の内壁部を垂下部93に近接するように突設させてガイド部58として構成し、かつガイド部58を紐掛け部94よりも後方に配置すれば、引き紐Tの一端部(結び目)からガイド部58に掛かる部分は、押圧操作方向と殆ど同じ方向に引っ張られるので、この場合には、引き紐Tの結び目が紐掛け部94に確実に係合されるとともに紐掛け部94に加わる力は押圧操作方向に充分に伝達されるので、より確実にスイッチ7を押下する。
図9に示すように、引き紐Tは、束ねた際に収容壁部24により形成される収容部27に収容される長さ、太さの紐を用いることが好ましい。
【0040】
(火災警報器の組み立てと取り付け)
火災警報器100を天井や壁に設置する際には、ベース1をネジ等により天井や壁の所定位置に固定する。そして、火災警報器100の本体を組み立てる際は、筐体2にカバー5を装着する。このとき、筐体2にはスピーカ110の収容壁部24とカバー5の嵌合壁部55とが嵌合するようにカバー5を筐体2に取り付ける。
次に、筐体2の裏面側から突出した操作片92の紐掛け部94に引き紐Tを通す。引き紐Tの一端部は、予め結び玉を形成する等して、引き紐Tが溝部94aから抜けないようにしておく。引き紐Tを紐掛け部94に繋げた後、引き紐Tの他端部をカバー5のガイド部58から引き出すように這わせておき、この状態で筐体2をベース1に取り付ける。
このような手順で火災警報器100を天井や壁に設置すると、ガイド部58から引き出された引き紐Tをユーザが引くことで操作片92の押圧操作を行うことができる。
なお、引き紐Tを使用しない場合には、筐体2の収容部27に引き紐Tを束ねて収容することができる。
火災による煙が発生すると、煙は、筐体2の開口部53cから暗箱4のラビリンス部45を介して検煙領域A内に侵入する。すると、発光素子61の照射光が散乱されて受光素子62で受光され、当該受光素子62の光感知から回路基板3は、スピーカ110により警報音を鳴らす。これにより、火災感知が行われる。
【0041】
(実施形態の作用・効果)
火災警報器100において、カバー5を筐体2に装着すると、操作片92に形成された紐掛け部94は、筐体2の裏面においてその周囲の平面部から外側に突出する。そのため、紐掛け部94は、筐体2の平面部から外側に露出した状態となり、引き紐Tを紐掛け部94に結びつける際に、カバー5を筐体2から取り外す必要がない。これにより、操作片92に引き紐Tを結びつける際、取り外しの際の手間を軽減することができる。また、引き紐Tの着脱毎にカバー5を筐体2から取り外す必要がなくなるので、組み立て工程の削減を図ることができる。
また、ガイド部58は、カバー5を筐体2に装着した際に、紐掛け部94よりも後方に配置される。そのため、紐掛け部94に結ばれた引き紐の他端部を引っ張ると、紐掛け部94がガイド部58側に引っ張られることとなり、スイッチ7の押圧操作が行われるようになっている。
なお、ガイド部58を紐掛け部94に近接させ、かつ紐掛け部94よりも後方に配置すれば、結び目(引き紐Tの一端部)からガイド部58に掛かる部分の引き紐Tは、押圧操作方向と同方向に引かれるので、紐掛け部94も押圧操作方向に引かれることとなり、より確実にスイッチ7の押圧操作が行われるようになる。
【0042】
また、紐掛け部94には、切り欠き状の溝部94aが形成され、その溝部94aは操作片92の押圧操作方向に直交する方向であって紐掛け部94とガイド部58の間を渡る引き紐Tに直交する方向に延びている。そのため、引き紐Tを紐掛け部94に結びつけて引き紐Tを引いた際に、操作片92にかかる力のうち、操作片92の押圧操作方向に直交する方向の成分の力はかからない。これにより、引き紐Tが紐掛け部94の溝部94aにおいて操作片92の押圧操作方向に直交する方向にずれることがない。
また、引き紐Tを引いて操作片92の操作を行った後に引き紐Tを手放した場合において、引き紐Tの弾性力により引き紐Tが引く前の位置に戻ろうとしても、引き紐Tが戻ろうとする方向と紐掛け部94の溝部94aの延びる方向が直交しているので、引き紐Tは紐掛け部94から外れない。
よって、引き紐Tが紐掛け部94から外れることを防止できる。
【0043】
また、筐体2の裏側に収容部27を設けることにより、引き紐Tを収容部27に収容することができる。
このため、引き紐Tを紛失してしまうことがない。
また、収容部27は筐体2の裏側に設けられていることから、収容された引き紐Tは外部から視認することができない。そのため、引き紐Tが火災警報器100からはみ出すことにより室内の景観を損なうこともない。
【0044】
また、カバー5を筐体2に装着した際に、紐掛け部94は、収容部27内に配置される。これにより、引き紐T全体を収容部27に収容することができ、引き紐Tが収容部27外の領域で他の部品等に絡まることがない。また、収容部27から取り出した引き紐Tを取り付ける場所がすぐに分かると共にすぐ近くに位置するため円滑且つ容易に引き紐Tの取付作業を行うことができる。
【0045】
また、収容部27に収容された引き紐Tと紐掛け部94とを隔離する隔離壁29が設けられていることから、引き紐Tが紐掛け部94に引っ掛かることがない。これにより、収容部27内の引き紐Tが絡まるのを防止することができると共に操作片の操作不良を効果的に防止することが可能となる。
【0046】
また、スピーカ110は収容壁部24に囲まれて形成される凹部23に収容される。このとき、係止爪25は、凹部23からのスピーカ110の離脱を防止するようにスピーカ110を係止する。これにより、スピーカ110は筐体2に形成された係止爪25で凹部23への収容が可能となるので、従来のように、ネジ等を用いて筐体2に固定する必要がなく、スピーカ110の筐体2への着脱を容易にすることができ、さらには、部品点数を軽減できる。
【0047】
また、カバー5を筐体2に装着するとカバー5の嵌合壁部55は筐体2の収容壁部24に嵌合してスピーカ110の周囲を包み込む筒体を形成する。ここで、係止爪25は、筒体を構成しているので、筒体と係止爪25を別個に設ける場合に比べて省スペース化を図ることができる。
また、嵌合壁部55と収容壁部24との嵌め込みは、カバー5を筐体2に装着する際のガイドとすることもできるので、カバー5の筐体2への装着作業を容易にすることができる。
また、筒体は、スピーカ110の周囲を筒状に囲む壁部となるので、スピーカ110から発せられた音がスピーカ110の周囲に散乱することを抑制して大部分が一方向に伝達され、警報効果を向上させることができる。
【0048】
また、収容壁部24と係止爪25との間にスリット部26が形成されており、このスリット部26からスピーカ110の導線111を収容領域から外側に案内することができる。これにより、スピーカ110の導線111が他の場所に行かないようにスリット部26で押さえることができるので、スピーカ110の導線111の配線を容易に行うことができる。
また、係止爪25の撓みを許容するためのスリット部26が上記スピーカ110の導線111のガイドとしても機能するので別途導線111のガイドを設ける必要がなく、火災警報器100の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
(その他)
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、図19に示すように、紐掛け部98に形成される溝部98aを途中で引き紐を引っ張る方向に屈曲させる略L字状に形成してもよい。このような形状としても、引き紐を引っ張る際には、引き紐が溝部98aから外れる方向に動くことを規制されるので、紐掛け部98からの引き紐の離脱を防止することができる。
また、火災警報器100では、火災感知手段として煙感知手段6を搭載しているが、熱感知手段を搭載しても良い。
また、スイッチ7については、特に機能を警報のオンオフの入力に限定するものではなく、煙感知手段6の制御手段に対して必要ないかなる操作入力を行うものであっても良い。
【符号の説明】
【0050】
2 筐体
5 カバー
6 煙感知手段
7 スイッチ
23 凹部(収容領域)
24 収容壁部
25 係止爪
26 スリット部
27 収容部
29 隔離壁
55 嵌合壁部
55a 放音孔
58 ガイド部
92 操作片
94 紐掛け部
94a 溝部
100 火災警報器
110 スピーカ(報知手段)
111 導線
T 引き紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を感知する火災感知手段と、該火災感知手段が火災を感知した旨を報知する報知手段と、が設けられる筐体と、
該筐体に着脱自在に設けられ、前記報知手段を覆うカバーと、を備え、
前記報知手段は、前記火災感知手段による火災の感知を音によって報知するスピーカを有し、
前記筐体に、前記スピーカの外周を取り囲むように形成された収容壁部と、前記収容壁部に囲まれて形成される収容領域からの前記スピーカの離脱を防止するように当該スピーカを係止する係止爪と、を一体に設けたことを特徴とする火災警報器。
【請求項2】
前記カバーは、放音孔と、当該カバーを前記筐体に装着した際に前記スピーカに対向して前記放音孔に報知音を導く筒体を有し、
前記係止爪は、前記筒体側に延出されると共に当該筒体の側壁の一部を構成することを特徴とする請求項1記載の火災警報器。
【請求項3】
前記スピーカは、前記報知手段の制御手段に導線を介して接続され、
前記収容壁部と前記係止爪との間には、当該係止爪の撓みを許容するスリット部が形成されると共に当該スリット部から前記導線を収容領域の外側に案内することを特徴とする請求項2記載の火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−133819(P2012−133819A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87086(P2012−87086)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2007−247689(P2007−247689)の分割
【原出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000111074)ニッタン株式会社 (93)
【Fターム(参考)】