説明

火炎抑制シリンダ

【課題】特徴部を有する火炎抑制シリンダを提供する。
【解決手段】火炎抑制シリンダ20は、液状抑制物質28および気体32を受けるキャニスタの出口におけるバルブ30と、バルブ30のコントローラ31と、液状抑制物質を受けるキャニスタ26の一部分における特徴部と、を備える。バルブ30は、コントローラ31によって選択的に制御されて開き、これにより抑制物質が領域22へと供給される。特徴部により、気泡の量および形成速度が増加する。特徴部は、粗面34としてもよく、この粗面は、キャニスタ26の壁部の下方部分に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状抑制物質が気泡の形成によってキャニスタから放出される火炎抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火炎抑制装置は、周知であり、火に対して放出される種々の作用物質(エージェント)を含む。放出速度が早い火炎抑制装置は、キャニスタから液状作用物質を放出するため、揮発性液状作用物質からの加圧物質(通常、加圧された窒素あるいは二酸化炭素)の急速な脱着(脱離)を利用している。
【0003】
通常、バルブがトリガされて開き、溶解ガスの気泡が作用物質に急速に形成され、膨張しかつキャニスタから放出される発砲混合物が形成される。この発泡体の形成は、作用物質を効果的に分配するために非常に重要である。
【0004】
この現象に関する最近の研究により、放出される作用物質の割合が温度の減少につれて減少することが明らかになっている。これは、熱力学効果と動力学効果の合成によるものと考えられている。ある種の気体は、低温時に液状物質に溶けにくくなるが、気泡形成の速度は変化する。
【0005】
気泡は、増大するために、抑制装置内の圧力および低温時に増加する液体の表面張力による抵抗を克服する必要がある。テストにより、気泡の初期形成は、特に高溶解性ガスのための低温時における速度決定ステップであることが示された。
【0006】
気泡を形成するために、表面に核生成部位(nucleation sites)を付与することが周知である。核生成部位の一例としては、シャンパンフルート(champagne flutes)の表面不完全部分(imperfections)がある。そのような部位は、気体分子を塊にすることができる面を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、核生成部位は火炎抑制シリンダには未だ用いられていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
火炎抑制シリンダは、キャニスタの出口におけるバルブおよびバルブのコントローラを備える。キャニスタは、液状抑制物質および加圧ガスを受ける。特徴部が液状抑制物質を受けるキャニスタの一部分内に設けられる。特徴部は、液状抑制物質内の気泡の形成を増加させる。
【0009】
本発明の上記および他の特徴は、以下の発明を実施するための形態および添付の図面によってより詳細に理解されるであろう。以下に図面菜簡単な説明について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例を示す図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す図。
【図3】本発明の第3の実施例を示す図。
【図4】本発明の第4の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には火炎抑制シリンダ20が図示されている。そのようなモジュールは、例えば、地上車や航空機などの車両の壁部24に含まれる。火炎抑制シリンダ(モジュール)20は、火炎が生じないように維持される領域22に対応している。バルブ30は、コントローラ31によって選択的に制御されて開き、これにより抑制物質(作用物質)が領域22へと放出される。バルブ30およびコントローラ31の作動は、米国特許出願公開第2006−0016608号明細書に開示されている。該明細書は本願の参考となる。壁部24を貫通するノズルを備えた火炎抑制シリンダを示しているが、壁部の外側におけるブラケットに取り付けられ、壁部を通って延びる開口部を有するシリンダがより一般的である。
【0012】
火炎抑制シリンダ(モジュール)20は、液状の抑制物質(液状抑制物質)28および気体32を受けるキャニスタ26を有する。抑制物質28には溶解ガスが含まれる。図1に符号36で示すように、キャニスタ26の壁部の下方部分34は粗くなっている(粗面化されている)。粗面であることを示すために、キャニスタ26の金属性壁部における不完全部分(imperfections)の大きさを符号36として誇張して図示している。この面は、下方部分34の形成後に粗面化されてもよいし、形成中に粗面化されてもよい。下方部分は、液状抑制物質28のレベル(水位)に実質的に対応した高さを有する。別の実施例として、キャニスタの全ての面を粗面としてもよい。
【0013】
実施例において、粗面化された部分36は、1mmまたはそれ未満、あるいはより狭義には、約0.1mm〜約0.5mmの高さを有して突出していてもよい。
【0014】
図2に他の実施例50を示す。この実施例50では、キャニスタ52は、液状抑制物質28に含まれたパウダ54を受ける。パウダは、液状抑制物質28に反応または溶解しないように選択される。また、パウダは、核生成部位(nucleation sites)をもたらすように十分に細かい粒子を含むが、抑制物質とは反応しない。例示的なパウダとして、シリカ(酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、タルク、マイカ、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸二水素アンモニウムなどが挙げられる。
【0015】
図3に別の実施例60を示す。この実施例60では、キャニスタ62は、内包された面64を含む。この内包された面64は、当該面が液状抑制物質28と反応しないように選択される。図示した実施例では、3−D(三次元)のメッシュ材を用いている。この3−Dの面により核生成部位がもたらされる。
【0016】
複数の実施例について説明してきたが、例えば、図1の実施例において、粗面を形成する他の方法として、シリンダの内側に粗い(粗面化された)ライニングを取り付けてもよい。このような実施例では、ライニングを付与するために用いられる材料は、図2の実施例におけるパウダのように、液状抑制物質に反応または溶解しないように選択される選択されることが望ましい。
【0017】
図4にさらに別の実施例70を示す。この実施例70では、キャニスタ72は、ガスシリンダ74を備える。ガスシリンダ74はコントローラ31に接続され、コントローラ31は、バルブ30を作動させる際にガスシリンダ74も作動させ、これにより、ガスシリンダ74がピン76を通して液状抑制物質28に気泡を放出し始める。
【0018】
液状抑制物質28内の気泡の生成を増加させる特徴部を有するキャニスタに係る4つの実施例について説明してきた。理解されるように、気泡の生成は、排出時、および火に対して火炎抑制物質を放出している最中に生じることが好ましい。気泡は、従来のように、特徴部がなくても形成されるが、特徴部が存在することによって、気泡の量および形成速度を増加させることができる。本発明の実施例において、特徴部は、粗面(図1)、パウダ(図2)、内包された面(図3)あるいは気泡を放出するシステム(図4)である。当然ながら、本発明の範囲には、気泡の形成を増加させる他の方法および実施例が含まれることを理解されたい。
【0019】
本発明の実施例について説明してきた。上記の実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされることを理解されるであろう。したがって、本発明の真の内容および範囲を決定するように添付の特許請求の範囲を検討されたい。
【符号の説明】
【0020】
20 火炎抑制シリンダ
22 領域
24 壁部
26 キャニスタ
28 液状抑制物質
30 バルブ
31 コントローラ
32 気体
34 壁部下方部分
36 粗面化された部分
52 キャニスタ
54 パウダ
62 キャニスタ
64 内包された面
72 キャニスタ
74 ガスシリンダ
76 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状抑制物質および加圧ガスを受けるキャニスタの出口におけるバルブと、
バルブのコントローラと、
液状抑制物質を受けるキャニスタの一部分における特徴部と、
を備え、
前記特徴部は、液状抑制物質内の気泡の形成を増加させることを特徴とする火炎抑制シリンダ。
【請求項2】
前記特徴部は、キャニスタの少なくとも一部における内壁に形成されることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項3】
前記特徴部は、液状抑制物質のレベルに実質的に対応するキャニスタの内壁の一部分だけに形成されることを特徴とする請求項2に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項4】
前記特徴部は、前記内壁における粗面であることを特徴とする請求項2に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項5】
前記内壁における粗面の高さは、1mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項6】
前記内壁における粗面の高さは、0.1mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項5に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項7】
前記特徴部は、液状抑制物質内に含まれるパウダ物質であることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項8】
パウダは、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸二水素アンモニウムの1つであることを特徴とする請求項7に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項9】
前記特徴部は、キャニスタに内包されかつ液状抑制物質中に沈んだ面であることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項10】
前記面は、キャニスタ内に内包される三次元材料であることを特徴とする請求項9に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項11】
前記三次元材料は、メッシュであることを特徴とする請求項10に記載の火炎抑制シリンダ。
【請求項12】
前記特徴部は、火炎が確認されたときに液状抑制物質に気泡を放出するように作動するガスシリンダであることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−15967(P2011−15967A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152576(P2010−152576)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(510079477)キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】