説明

火葬炉

【課題】火葬炉を構成する壁部のうち内壁部から熱を回収可能にすること。
【解決手段】台車を出し入れする主燃炉の上方に再燃炉を備え、主燃炉の主燃室で発生した排気ガスを煙道から再燃炉の再燃室に導く火葬炉において、主燃炉と再燃炉を構成する壁部のうち少なくとも内壁部の一部を、空気層の炉内面側を金属板で覆ってある熱交換層によって形成し、空気層に空気を流通可能としてあること。熱交換層を壁部の厚み方向に重なり合う複層構造としてあること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火葬炉内で発生する熱の有効活用を可能とする火葬炉に関する。
【背景技術】
【0002】
火葬炉は、通常、主燃炉と再燃炉とを主体として構成されており、主燃炉内の主燃室で遺体を燃焼し、主燃室で発生した排気ガスを煙道から再燃炉の再燃室に導き、再燃室で排気ガスを再度燃焼するようになっている(特許文献1)。そして、再燃炉を出た800〜900℃の排気ガスを無公害化するために、熱交換器で200℃以下に冷却してから後続機器に送り込むことが行われている。
【0003】
また、特許文献1の火葬炉では、排気ガスとの熱交換によって温められた空気を熱交換器から主燃炉や再燃炉に設置された主燃バーナや再燃バーナに送りこんで利用することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−147174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、火葬炉で発生する熱は、排気ガスだけでなく、主燃炉や再燃炉を構成する壁部をも高温にしている。このため、主燃炉や再燃炉を構成する壁部のうち内壁部は、耐火煉瓦やセラミックファイバーといった耐熱温度の高い特殊なブロック状の耐火材によって構成されている。
【0006】
そこで、本発明者は、これら耐火材から熱を回収すれば、火葬炉周辺の空調設備や温水設備に利用することができるし、耐火材を耐熱温度の低い材料で構築できる可能性もあると考えた。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮したもので、火葬炉を構成する壁部のうち内壁部から熱を回収可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、台車を出し入れする主燃炉の上方に再燃炉を備え、主燃炉の主燃室で発生した排気ガスを煙道から再燃炉の再燃室に導く火葬炉において、主燃炉と再燃炉を構成する壁部のうち少なくとも内壁部の一部を、空気層の炉内面側を内面板で覆ってある熱交換層によって形成し、空気層に空気を流通可能としてあることを特徴とする。
【0009】
また、熱交換層は、一層であっても良いが、より多様な温度の空気を回収するには、次のようにすることが望ましい。すなわち、熱交換層を壁部の厚み方向に重なり合う複層構造としてあることである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、空気層と内面板で形成される熱交換層を利用して火葬炉の壁部のうち少なくとも内壁部の一部を構成してあるので、空気層を流れる空気によって炉内で発生する熱を回収することができる。また、このような熱交換層を用いて内壁部を構成するので、従来までのようなブロック状の耐火材を用いる場合に比べて、軽量化を図ることもできるし、内面板の材料を従来のブロック状の耐火材よりも耐熱温度の低いものとすることも可能である。
【0011】
また、熱交換層を壁部の厚み方向に重なり合う複層構造としてあれば、段階的に温度の異なる空気を回収することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の火葬炉を示す正面方向から見た断面図である。
【図2】本発明の火葬炉を示す側面方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先に火葬炉の基本的な構成を図面に基づき説明する。火葬炉1は、図1、図2に示すように、主燃炉2の上に再燃炉3を備えるものである。
【0014】
主燃炉2は、前壁部11、天壁部12、左右の側壁部13、後壁部14、及び床部15を主体として構成される直方体形状である。また、主燃炉2の内部空間である主燃室21は、台車4が挿入されることによって、台車4に対して上方の火葬用空間22と、台車4に対して下方の車輪用空間23とに分かれる。
【0015】
前壁部11は、その下部に台車4が出入りするための開口部11aを備えている。そして、この開口部11aを封じる耐火扉5が開閉可能に設けられている。図示しないが、通常、耐火扉5は、巻上機を駆動させることによって、開口部11aの側部に併設されたガイドに沿って昇降する。
【0016】
天壁部12は、その後部において、後壁部14との間に間隔をあけてあり、この間隔が煙道16となっている。そして、この煙道16を介して、再燃炉3の内部空間である再燃室31と主燃室21とを連通させている。図示の例では、天壁部12は、天壁本体部12aの後部から上と下にそれぞれ延長する起立壁部12bと垂下壁部12cを設けてあり、煙道16の距離が長くなっている。
【0017】
左右の側壁部13は、台車4の出入りの際に干渉しない程度のクリアランスを保って対称的に設けられている。
【0018】
後壁部14は、前壁部11に向けて主燃バーナ24を備えており、主燃バーナ24の先部を後壁部14の穴に突入させ、主燃バーナ24から火炎を図示しない棺に向けて噴射する。
【0019】
床部15は、床部本体部15aの上に、棺を載せる台車4に連結可能で且つ台車4を出し入れする図示しないコンベヤが設けられており、そのコンベヤの外側をケース15bで覆ってある。そして、このケース15bの上には所定軌道に沿って走行させる為の一対のレール15cを備える。一対のレール15cは、耐火扉5で封じられる前壁部11の開口部11aから後壁部14に向けて直線的に平行に敷設されている。
【0020】
台車4は、耐火素材からなる棺載台41と、棺載台41の下方で回転可能に支持される車輪42を備える。
【0021】
再燃炉3は、主燃炉2と同様に構成された直方体形状である。そして、前壁部11、左右の側壁部13、後壁部14が主燃炉2から上方に延長して設けられ、再燃炉専用の天壁部17が設けられている。なお図示の例では後壁部14は、主燃炉2に相当する部分よりも再燃炉3に相当する部分を後方に突出した段付き形状としてある。また、再燃炉3には、上方の天壁部17の前部と前壁部11との間に間隔をあけてあり、この間隔が排気路18なっている。そして、この排気路18を介して、再燃炉3の内部空間である再燃室31と火葬炉1の外部とを連通させている。なお、再燃炉3は、後壁部14に再燃バーナ32を前壁部11に向けて備えており、再燃バーナ32から火炎を再燃室31に向けて噴射する。
【0022】
上記した基本的な構成を備える火葬炉1において、本発明は、床部15を除く壁部、すなわち前壁部11、上下の天壁部12、17、左右の側壁部13、後壁部14を適用対象とし、これら壁部のうちの最も内側部分である内壁部の少なくとも一部を、熱交換層6で形成したものである。この熱交換層6は、空気層61と、空気層61の炉内面側を覆う内面板62とで形成されている。なお、空気層61の外側(炉外面側)は、断熱材63や炉枠64で覆う。また、内面板62には、その空気層61側に向かって突出する放熱板62aが設けられており、放熱板62aを空気の進行方向に沿って延長することにより整流機能が発揮されている。なお、内面板62は、空気層61の厚みを確保するために、適宜箇所を他部材に連結材62bで連結している。
【0023】
図示の例では、主燃室21と再燃室31を仕切る天壁部12の全体が熱交換層6で形成されている。また、再燃炉3の天壁部17は、その内壁部が熱交換層6で形成され、その外壁部が断熱材63で形成されており、この外壁部には空気層61に空気を送り込む送気口17aと空気を排出する排気口17bが設けられ、送気口17aに連結されたブロワから空気を送り込み、熱交換層6で炉内の熱を受けた空気を排気口17bから排出し、必要な設備(例えば主燃バーナ24や空調設備等)に送り込むようになっている。
【0024】
前壁部11は、その内壁部が熱交換層6で形成され、その外壁部が断熱材63とその外側を覆う炉枠64とで形成されている。左右の側壁部13は、台車4よりも上方については、前壁部11と同様に形成されている。一方、台車4よりも下方については、断熱材63がなく、空気層61と、その内側を覆う覆板65と外側を覆う炉枠64で形成されている。覆板65は、その下端部を内側に延長させてコンベヤ用のケース15bに取り付けてある。従って、この空気層61は、断面L字状に屈曲しており、この空気層61に空気を出入りさせて熱交換層6として使用しても良いし、空気の出入りを積極的に行わない単なる空気層61として使用しても良い。台車4よりも下側は、直接火炎で熱せられることがないので、覆板65の材料は、内面板62よりも温度の低い材料で充分である。
【0025】
内面板62の材料としては、炉内の雰囲気に耐えられる耐熱性のあるステンレスや、超耐熱合金、金属間化合物等の金属板が挙げられる。炉枠64の材料は、内面板62と同じであっても良いが、内面板62よりも耐熱温度の低い鋼板等で充分である。
【0026】
断熱材63の材料としては、断熱煉瓦、断熱ボード、セラミックファイバー、ロックウール等が挙げられる。
【0027】
本発明では、上述のように熱交換層6を設けてあるので、遺体を火葬している間に、熱交換層6の空気層61に空気を流通させることにより、火葬炉1内の熱気が内面板62及び放熱板62aから空気層61に順次伝えられる。したがって、熱交換層6から排出された空気層61の熱は高温となっており、再利用することが可能である。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、熱交換層6は、一層とは限らず、壁部の厚み方向に重なり合う二重等の複数層で形成してもよく、より詳しく言えば、この場合、図示しないが主燃室21、煙道16及び再燃室31の排気ガスが流通する空間から離れる方向に複数の熱交換層6を重なるように配置する。このようにすれば、複数層からなる熱交換層6内の空気層61を流れる空気の温度を、主燃室21等から離れるにつれて段階的に設定することができ、それによって複数温度の空気を取り出すことができ、用途に応じて使い分けすることも可能である。そして、主燃室21等に最も近い熱交換層6については、その内面板62の温度を、燃焼に適した温度に保ちながら、それよりも主燃室21から遠ざかる熱交換層6については、十分に熱を回収することも可能である。
【0029】
また、熱交換層6は、主燃炉2の壁部だけに設けておき、再燃炉3の壁部を従来通りの耐火煉瓦等で構築するなどしても良い。更に、内面板62は、放熱板62aが付いていないものであっても良い。
【0030】
なお、火葬炉1自体の構造も適宜変更可能である。例えば、煙道16は、主燃室21の後部から再燃室31の後部に通じる構造に限らず、主燃室21の前方上部から再燃室31の後方下部に向かう(主燃室21と再燃室31を仕切る天壁部12の下方に煙道用の壁部が後壁部14から前壁部11に向かって延長する)構造であっても良い。また、後壁部14も、主燃炉2から再燃炉3に向かって段差なく一直線に起立する構造であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
1火葬炉
2主燃炉
3再燃炉
4台車
5耐火扉
6熱交換層
11前壁部
11a開口部
12天壁部
12a天壁本体部
12b起立壁部
12c垂下壁部
13側壁部
14後壁部
15床部
15a床部本体部
15bケース
15cレール
16煙道
17天壁部
17a送気口
17b排気口
18排気路
21主燃室
22火葬用空間
23車輪用空間
24主燃バーナ
31再燃室
32再燃バーナ
41棺載台
42車輪
61空気層
62内面板
62a放熱板
62b連結材
63断熱材
64炉枠
65覆板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車を出し入れする主燃炉の上方に再燃炉を備え、主燃炉の主燃室で発生した排気ガスを煙道から再燃炉の再燃室に導く火葬炉において、
主燃炉と再燃炉を構成する壁部のうち少なくとも内壁部の一部を、空気層の炉内面側を内面板で覆ってある熱交換層によって形成し、空気層に空気を流通可能としてあることを特徴とする火葬炉。
【請求項2】
熱交換層を壁部の厚み方向に重なり合う複層構造としてあることを特徴とする請求項1記載の火葬炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96660(P2013−96660A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241279(P2011−241279)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000141808)株式会社宮本工業所 (22)
【Fターム(参考)】