説明

灰色組成物

【課題】分光特性における波長依存性を抑えた灰色の着色組成物の提供を目的とする。また、上記のような良好な灰色を有し、かつ保存に対する経時の安定性を有する灰色組成物を提供する。
【解決手段】第5族の遷移金属の窒化物を含有する灰色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灰色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
灰色の色材が要求される分野がある。この色材は、完全に可視光を遮断してしまう黒色のものではなく、可視光領域の全域において均一に一定量の光を透過する。したがって特定の色味の着色がない。この光学的な特徴を活かし、デバイスの設計や製造に適用される例がある。
【0003】
例えば、グレートーンフォトマスクを利用した半導体素子やカラーフィルタの製造が挙げられる(特許文献1〜3等参照)。そこでは、グレートーンフォトマスクにより半透過領域を新たに追加することで露光量を制御し、レジスト残膜の多値化を可能とする。これにより、2種類の厚みを持ったレジストパターンを1回の工程で得ることができる。すなわち、グレートーンの透過領域を利用した多階調マスク1枚で、通常のマスク2枚分の働きをさせ、TFT基板等の製造に必要なマスク枚数を減らすことができる。さらにまた、全体の工程簡素化により製造コストを削減することができる。あるいは、カラーフィルタの製造において、フォトスペーサーの形状を多様化したり、厚みの異なる着色層を設け位相差を調節したものとしたりすることができ、その効率的な製造手法としても検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−002899号公報
【特許文献2】特開2010−014931号公報
【特許文献3】特開2011−436443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記のようなグレートーンフォトマスクやカラーフィルタのグレーピクセル(特願2011−074799号明細書参照)等への応用を考慮し、良好な特性をもつ灰色色材の開発を進めた。ところが、後記比較例でも示したとおり、既存の暗色色材は分光特性にばらつきがあり、特定の波長領域で偏った光学濃度(OD:Optical Density)を示すことがわかってきた。具体的に、カーボンブラックは低波長に高い光学濃度を有し、チタンブラックは高波長領域に高い光学濃度を有する。このように波長依存性のある分光特性をもつものでは、全体として光透過性を高めても色味を生じてしまい、良好な灰色の色材とすることは難しい。また、他の色材と混合するなどして調色することも考えられるが、製造上の負荷となるのみならず、保存安定性等の色材性能への影響も懸念される。
【0006】
そこで本発明は、分光特性における波長依存性を抑えた灰色の着色組成物の提供を目的とする。また、上記のような良好な灰色を有し、かつ保存に対する経時の安定性を有する灰色組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)第5族の遷移金属の窒化物を含有する灰色組成物。
(2)前記遷移金属がバナジウム又はニオブである(1)に記載の灰色組成物。
(3)前記遷移金属の窒化物が窒化バナジウムである(1)又は(2)に記載の灰色組成物。
(4)さらに、第5族の遷移金属の酸化物を含有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
(5)さらに、分子内に不飽和結合をもつ安定化剤を含有する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
(6)さらに、分散剤を含有する(1)〜(5)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
(7)前記安定化剤が下記一般式(I)又は(II)で表される化合物であることを特徴とする(5)又は(6)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【0008】
【化1】

[式中、R、T、Zは、下記式に示した構造の基である。nは0〜14の整数であり、mは1〜8の整数である。一分子内に複数存在するR及びTは各々同一であっても異なっていてもよい。]
【0009】
【化2】

(8)前記分散剤が下記式(i)〜(iii)のいずれかで表されるモノマーに由来する繰り返し単位を有することを特徴とする(6)又は(7)に記載の灰色組成物。
【0010】
【化3】

[式中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す。Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ基(−NH−)を表す。Yはメチン基又は窒素原子を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Zは官能基を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、−Z、又は−L−Zを表す。]
(9)前記分散剤を組成物全量中1〜90質量%含有することを特徴とする(6)〜(8)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
(10)可視光領域の光学濃度(OD)のばらつきが、波長400nmにおける光学濃度(OD)を基準として、その±20%以内に抑えられた(1)〜(9)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
(11)前記酸化バナジウムと窒化バナジウムとを含有させる媒体として有機溶剤を用いたとことを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の灰色組成物は、分光特性における波長依存性を抑えた良好な灰色を呈する。また本発明の灰色組成物は、上記良好な灰色とともに、保存において析出物等の生じない経時の安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の灰色組成物は、5族の遷移金属の窒化物を(好ましくはその酸化物とともに)含有する。これにより、波長依存性のない良好な灰色を有し、しかも高い経時安定性を示す。本発明においては、さらに特定の安定化剤を使用することで、上記の良好な灰色の呈色性を維持して、経時の安定性を一層高めることができる。以下、本発明の灰色組成物についてその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
[5族の遷移金属の化合物]
本発明の好ましい実施形態に利用される5族の遷移金属の窒化物ないし酸化物は特に限定されるものではなく、この種の材料として利用されているものを用いることができる。5族の遷移金属の窒化物としては、窒化バナジウム及び窒化ニオブを挙げることができ、中でも窒化バナジウムが好ましい。5族の遷移金属の酸化物としては、酸化バナジウム及び酸化ニオブを挙げることができ、中でも酸化バナジウムが好ましい。
【0014】
・組成等
本実施形態のバナジウム混合物において、酸化バナジウムと窒化バナジウムとの組成は特に限定されないが、良好な灰色の呈色を実現する観点からその比率を設定することが好ましい。酸化バナジウムと窒化バナジウムは、それぞれ、2種以上のものを利用してもよい。
【0015】
・媒体
本実施形態の灰色組成物において、媒体は特に限定されず、製造上の利便性、アプリケーション上のニーズなどにより適宜選定することができる。
媒体として利用できる有機溶剤としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、等;
【0016】
3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等の3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、等;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等の2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、等;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、等;
【0017】
エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、等;
【0018】
ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、等;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、等が好ましい。
【0019】
上述の通り、これらの有機溶剤は、紫外線吸収剤及びアルカリ可溶性樹脂の溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合してもよく、特に、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液が好適に用いられる。
【0020】
灰色組成物において媒体の含有量は、塗布性の観点から、組成物の全固形分濃度が5〜90質量%になる量とすることが好ましく、5〜87質量%が更に好ましく、10〜85質量%が特に好ましい。
【0021】
[灰色組成物]
本発明の灰色組成物は波長依存性が低いあるいはほぼない良好な分光特性を有する。分光特性の測定方法は限定されないが、特に断らない限り、下記実施例で示した方法及び条件による。なお、下記実施例では製膜したものの分光特性を測定しているが、液組成物の分光特性もこれに相関し、波長依存性の序列は通常異ならない。
上記の波長依存性は可視光領域の全域において抑えられていることが好ましく、具体的には、波長400nm〜700nmの領域で一定した光学濃度(OD)を示すことが望ましい。具体的には、光学濃度において、400nmの値を基準として、400〜700nmで±20%以内のばらつきに抑えられていることが好ましく、±10%以内のばらつきに抑えられていることがより好ましい。下限値は特にないが±1%以上であることが一般的である。このように低いばらつきに抑えられることで、特定の波長に大きな吸収がなく、色みのない、良好な灰色の色材とすることができる。
【0022】
なお、本発明において組成物とは、2以上の成分が特定の組成で実質的に均一に存在していることを言う。ここで実質的に均一とは発明の作用効果を奏する範囲で各成分が偏在していていもよいことを意味する。また、組成物とは上記の定義を満たす限り形態は特に限定されず、流動性の液体やペーストに限定されず、複数の成分からなる固体や粉末等も含む意味である。
【0023】
[安定化剤]
本発明においては、分子内に不飽和結合をもつ安定化剤を用いることが好ましい。これにより、上記バナジウム混合物における色材の経時安定性を一層高めることができる。
上記分子内に不飽和結合をもつ安定化剤としては重合性化合物を利用することが好ましい。具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
重合性化合物として、具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
より具体的には、モノマー及びそのプレポリマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの多量体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの多量体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜段落番号0108に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0026】
重合性化合物としては、以下に詳述する重合性モノマーを好適に用いることができる。重合性モノマーとしては、少なくとも1つの付加重合可能なエチレン性二重結合を有し、かつ常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物が好ましい。
【0027】
重合性モノマーの例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの;特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物;を挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも挙げることができる。
このモノマーとして、水素結合性基を有するモノマー(以下、「水素結合性基含有モノマー」ともいう)を含有することが好ましい。
これにより、水素結合性基含有モノマー同士の水素結合(又は、水素結合性基含有モノマーと後述の他のモノマーとの水素結合)が効果的に形成されるので、ポストベークによる熱ダレが抑制され、パターン矩形性の劣化が抑制される。
【0028】
具体的には、前記水素結合性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホ基、スルホンアミド基、アミド基等が挙げられる。これらの中でも、水素結合に供与する水素と、水素結合を受容する置換基の双方を持つものが好ましい。
パターンの矩形性の観点からは、前記水素結合性基としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、及びウレイド基から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0029】
また、前記水素結合性基含有モノマーは、多官能モノマー(以下、「多官能重合性モノマー」ともいう)であることが好ましい。
以下、水素結合性基を含有する多官能重合性モノマーの具体例について説明する。
【0030】
ヒドロキシル基を含有する多官能重合性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ECH変性エチレングリコールジアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、ECH変性フタル酸ジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、ECH変性トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0031】
多官能重合性モノマーとしては、下記一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物が挙げられる。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
なお、下記一般式において、T又はGがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がR、X及びWに結合する。
【0032】
【化4】

[式中、R、T、Zは、下記式に示した構造の基である。nは0〜14の整数であり、mは1〜8の整数である。一分子内に複数存在するR及びTは各々同一であっても異なっていてもよい。]
【0033】
【化5】

【0034】
以下、前記一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】


【0040】
以上で説明したカルボキシル基を含有する多官能重合性モノマーと、後述する他のモノマーと、の組み合わせとしては、東亜合成化学(株)製のTO−2359、TO−2360、TO−2348、又はTO−756が市販されている(いずれも商品名)。
【0041】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0042】
中でも、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0043】
アルコキシカルボニルアミノ基を有する多官能モノマーとしては、新中村化学工業(株)製のU−6LHA、U−6LYXA、U−12LMA等が挙げられる。
アミド基を有する多官能モノマーとしては、東亜合成製モノマーM−315、M−215等が挙げられる。他にも、アミノ基を含有する多官能モノマーも好適に使用できる。
水素結合性基を含有する多官能モノマーとして、具体的な例として以下の化合物が挙げられる。
【0044】
【化11】

【0045】
【化11】

【0046】
上記水素結合性基含有モノマーの中でも好ましくはカルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニルアミノ基含有モノマー、ウレイド基含有モノマーであり、最も好ましくはカルボキシル基含有モノマーである。さらに、カルボキシル基含有モノマーと、アミノ基含有多官能モノマーを併用することが更に好ましい。
【0047】
本発明においては、上記安定化剤を、組成物の全固形分中10質量%以上含有することにより、際立った安定性の良化を発現させることができ好ましい。上限値は特に無いが90%以下であることが実際的である。
なお、本明細書において化合物の表示については、当該化合物そのもののほか、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基(連結基を含む)については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0048】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0049】
[分散剤]
本発明に用いられる分散剤としては、高分子分散剤であることが好ましく、例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を挙げることができる。その他、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、及び顔料誘導体等を挙げることができる。
分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、及びブロック型高分子に分類することができるものが好ましい。
【0050】
分散剤は、第5族の遷移金属化合物(特定金属化合物)の粒子の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、その表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、分散剤は被分散体の表面を改質することで、分散樹脂の吸着を促進させる効果を有する。
【0051】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(商品名、ポリアミドアミン燐酸塩)、107(商品名、カルボン酸エステル)、110(商品名、酸基を含む共重合物)、130(商品名、ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170、180(商品名、高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(商品名、高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(商品名、ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(商品名、ブロック共重合体)、4400、4402(商品名、変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(商品名、高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(商品名、脂肪酸ポリエステル)、6745(商品名、フタロシアニン誘導体)、6750(商品名、アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ(株)製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学(株)製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(商品名、アクリル系共重合体)」、楠本化成(株)製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(商品名、脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王(株)製「デモールRN、N(商品名、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、デモールMS、C、SN−B(商品名、芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(商品名、高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(商品名、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(商品名、アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(商品名、末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(商品名、ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。また、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000Eなどの両性分散剤も挙げられる。
これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
分散剤の酸価は、5.0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲であり、更に好ましくは60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の範囲である。
分散剤の酸価が200mgKOH/g以下であれば、遮光膜を形成する際の現像時におけるパターン剥離がより効果的に抑えられる。また、分散剤の酸価が5.0mgKOH/g以上であればアルカリ現像性がより良好となる。また、分散剤の酸価が60mgKOH/g以上であれば、特定金属化合物粒子の沈降をより抑制でき、粗大粒子数をより少なくすることができ、チタンブラック分散物又は感光性樹脂組成物の経時安定性をより向上できる。
【0053】
本発明において、分散剤の酸価は、例えば、分散剤中における酸基の平均含有量から算出することができる。また、分散剤の構成成分である酸基を含有するモノマー単位の含有量を変化させることで所望の酸価を有する樹脂を得ることができる。
【0054】
本発明における分散剤の重量平均分子量は、遮光膜を形成する際において、現像時のパターン剥離抑制と現像性の観点から、10,000以上300,000以下であることが好ましく、15,000以上200,000以下であることがより好ましく、20,000以上100,000以下であることが更に好ましく、25,000以上50,000以下であることが特に好ましい。
[分子量]
分子量及び分散度は特に断らない限りGPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)法を用いて測定した値とし、分子量はポリスチレン換算の質量平均分子量とする。GPC法に用いるカラムに充填されているゲルは芳香族化合物を繰り返し単位に持つゲルが好ましく、例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるゲルが挙げられる。カラムは2〜6本連結させて用いることが好ましい。用いる溶媒は、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒が挙げられる。測定は、溶媒の流速が0.1〜2mL/minの範囲で行うことが好ましく、0.5〜1.5mL/minの範囲で行うことが最も好ましい。この範囲内で測定を行うことで、装置に負荷がかからず、さらに効率的に測定ができる。測定温度は10〜50℃で行うことが好ましく、20〜40℃で行うことが最も好ましい。なお、使用するカラム及びキャリアは測定対称となる高分子化合物の物性に応じて適宜選定することができる。
【0055】
(グラフト共重合体)
本発明においては、分散剤として、グラフト共重合体(以下、「特定樹脂」ともいう)を用いることも好ましい。分散剤としてグラフト共重合体を用いることで、分散性及び保存安定性をより向上させることができる。
【0056】
グラフト共重合体としては、水素原子を除いた原子数が40〜10000の範囲であるグラフト鎖を有するものが好ましい。この場合のグラフト鎖とは、共重合体の主鎖の根元から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
この特定樹脂は、特定金属化合物粒子に分散性を付与しうる分散樹脂であり、優れた分散性と、グラフト鎖による溶媒との親和性を有するために、特定金属化合物粒子の分散性、及び経時後の分散安定性に優れる。また、感光性樹脂組成物としたとき、グラフト鎖の存在により重合性化合物又はその他の併用可能な樹脂などとの親和性を有するので、アルカリ現像で残渣を生じにくくなる。
【0057】
また、この特定樹脂に、更に、カルボン酸基などのアルカリ可溶性の部分構造を導入することで、アルカリ現像によるパターン形成のために現像性を付与する樹脂としての機能をも付与することができる。
従って、前記グラフト共重合体に、アルカリ可溶性の部分構造を導入することで、本発明の特定金属化合物分散物は、特定金属化合物粒子の分散に不可欠の分散樹脂自体がアルカリ可溶性を有することになる。このような特定金属化合物分散物を含有する感光性樹脂組成物は、露光部の遮光性に優れたものとなり、且つ、未露光部のアルカリ現像性が向上される。
【0058】
グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり分散性は向上するが、一方グラフト鎖が長すぎると特定金属化合物への吸着力が低下して分散性は低下してしまう。このため、本発明で使用されるグラフト共重合体としては、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が40〜10000であることが好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が50〜2000であることがより好ましく、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数が60〜500であることが更に好ましい。
【0059】
グラフト鎖のポリマー構造の例としては、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエーテルなどが挙げられる。グラフト鎖としては、グラフト部位と溶媒との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることがより好ましい。
【0060】
このようなポリマー構造をグラフト鎖として有するマクロモノマーの構造としては、ポリマー主鎖部と反応可能な置換基を有し、且つ本発明の要件を満たしていれば、特に限定されないが、好ましくは、反応性二重結合性基を有するマクロモノマーを好適に使用することができる。
【0061】
特定樹脂の合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA−6(商品名、(商品名、東亜合成(株))、AA−10(商品名、東亜合成(株)製)、AB−6(商品
名、東亜合成(株)製)、AS−6(東亜合成(株))、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、AW−6(商品名、東亜合成(株)製)、AA−714(商品名、東亜合成(株)製)、AY−707(商品名、東亜合成(株)製)、AY−714(商品名、東亜合成(株)製)、AK−5(商品名、東亜合成(株)製)、AK−30(商品名、東亜合成(株)製)、AK−32(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPP−100(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−500(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−800(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPP−1000(商品名、日油(株)製)、ブレンマー55−PET−800(日油(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−400(商品名、日油(株)製)、ブレンマーPSE−1300(商品名、日油(株)製)、ブレンマー43PAPE−600B(商品名、日油(株)製)、などが用いられる。このなかでも、好ましくは、AA−6(東亜合成(株)製)、AA−10(商品名、東亜合成(株))、AB−6(商品名、東亜合成(株)製)、AS−6商品名、東亜合成(株))、AN−6(商品名、東亜合成(株)製)、ブレンマーPME−4000(商品名、日油(株)製)などが用いられる。
【0062】
特定樹脂におけるグラフト部位としては、少なくとも下記式(1)〜式(4)のいずれかで表される構造単位を含むことが好ましく、少なくとも、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、及び下記(4)のいずれかで表される構造単位を含むことがより好ましい。
【0063】
【化12】

【0064】
式(1)〜式(4)において、W、W、W、及びWはそれぞれ独立に酸素原子或いはNHを表す。W、W、W、及びWは酸素原子であることが好ましい。
式(1)〜式(4)において、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X、X、X、X、及びXとしては、合成上の制約の観点からは、好ましくはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であり、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0065】
式(1)〜式(4)において、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、該連結基は特に構造上制約されない。Y、Y、Y、及びYで表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y−1)〜(Y−21)の連結基などが例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)〜式(4)における左末端基、右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y−2)又は(Y−13)であることがより好ましい。
【0066】
【化13】

【0067】
式(1)〜式(4)において、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。該有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、Z、Z、Z、及びZで表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有するものが好ましく、各々独立に炭素数5から24のアルキル基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基或いは炭素数5から24の環状アルキル基が好ましい。
【0068】
式(1)〜式(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ1から500の整数である。
また、式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2〜8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性、現像性の観点から、4〜6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0069】
式(3)中、Rは分岐若しくは直鎖のアルキレン基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることがより好ましい。
式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられ、更に好ましくは、水素原子、又はアルキル基である。該Rがアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐状アルキル基、又は炭素数5〜20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。
【0070】
特定樹脂において、式(1)〜式(4)で表される構造単位は、質量換算で、特定樹脂の総質量に対し10%〜90%の範囲で含まれることが好ましく、30%〜70%の範囲で含まれることがより好ましい。式(1)〜式(4)で表される構造単位が、この範囲内で含まれると特定金属化合物粒子の分散性が高く、遮光膜を形成する際の現像性が良好である。
【0071】
また、特定樹脂においては、2種以上の構造が異なるグラフト部位を含有することができる。即ち、特定樹脂の分子中に、互いに構造の異なる式(1)〜式(4)で示される構造単位を含んでいてもよく、また、式(1)〜式(4)においてn、m、p、及びqがそれぞれ2以上の整数を表す場合、式(1)及び式(2)においては、側鎖中にj及びkが互いに異なる構造を含んでいてもよく、式(3)及び式(4)においては、分子内に複数存在するR、R及びXは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
前記式(1)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(1A)で表される構造単位であることがより好ましい。
また、前記式(2)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(2A)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0073】
【化14】

【0074】
式(1A)中、X、Y、Z及びnは、前記式(1)におけるX、Y、Z及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2A)中、X、Y、Z及びmは、前記式(2)におけるX、Y、Z及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0075】
また、前記式(3)で表される構造単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(3A)又は式(3B)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0076】
【化15】

【0077】
式(3A)又は(3B)中、X、Y、Z及びpは、前記式(3)におけるX、Y、Z及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0078】
特定樹脂としては、前記式(1A)で表される構造単位を有するものであることがより好ましい。
【0079】
特定樹脂には、グラフト部位以外に特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基を導入することができる。
この特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、反応性を有する官能基等があげられ、特定樹脂には、酸基を有する構造単位、塩基性基を有する構造単位、配位性基を有する構造単位、反応性を有する構造単位を用いて導入される。
【0080】
特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基などがあり、特に好ましいものは、特定金属化合物粒子への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高いカルボン酸基である。特定樹脂には、これらの酸基を1種或いは2種以上有してもよい。
また、このような酸基を導入することで、特定樹脂のアルカリ現像性を向上させるという利点をも有する。
特定樹脂に共重合成分として導入されうる酸基を有する構造単位の好適な含有量は、0.1モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、アルカリ現像による画像強度のダメージ抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0081】
特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、アミド基などがあり、特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高い第3級アミノ基である。特定樹脂には、これらの塩基性基を1種或いは1種以上導入することができる。
特定樹脂に共重合成分として導入される場合、塩基性基を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂における全構造単位に対し、0.01モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、0.01モル%以上30モル%以下である。
【0082】
特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基である配位性基、及び反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。特に好ましいものは、顔料への吸着力が良好で分散性が高いアセチルアセトキシ基である。特定樹脂には、これらの基を1種あるいは1種以上有してもよい。
特定樹脂の共重合成分として導入されうる配位性基を有する構造単位又は反応性を有する構造単位の好適な含有量は、特定樹脂の全構造単位に対し、0.5モル%以上50モル%以下であり、特に好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、1モル%以上30モル%以下である。
【0083】
本発明における特定樹脂が、グラフト部位以外に、特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基を有する場合、上述したような、各種の特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基を含有していればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、下記一般式(i)〜一般式(iii)のいずれかで表される単量体から得られる構造単位の少なくとも1種を用いて導入されていることが好ましい。
【0084】
【化16】

【0085】
一般式(i)〜一般式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原
子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、又は炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
一般式(i)〜一般式(iii)中、R、R、及びRは、より好ましくは、それぞ
れ独立に水素原子、又は炭素原子数が1〜3のアルキル基であり、最も好ましくは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。一般式(i)中、R及びRは、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
【0086】
一般式(i)中のXは、酸素原子(−O−)又はイミノ基(−NH−)を表し、酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(ii)中のYは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0087】
また、一般式(i)〜一般式(ii)中のLは、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、及び置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、及び置換アリーレン基)、2価の複素環基及びそれらと酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ基(−NH−)、置換イミノ結合(−NR31−、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)又はカルボニル結合(−CO−)のうちの一つ以上との組合せ等が挙げられる。
【0088】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。前記脂肪族基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が更に好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。
【0089】
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6〜20が好ましく、6〜15が更に好ましく、6〜10が最も好ましい。また、前記芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0090】
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環のうち1つ以上が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基及び複素環基を挙げられる。
【0091】
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lはオキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としてはポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、−(OCHCH−で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2〜10の整数であることがより好ましい。
【0092】
一般式(i)〜一般式(iii)中、Zは、官能基を表し、グラフト部位以外に特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボン酸基、第三級アミノ基であることが好ましく、カルボン酸基であることがより好ましい。
【0093】
一般式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原
子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素原子数が1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、−Z、又は−L−Zを表す。ここでL及びZは、上記におけるL及びZと同義であり、好ましい例も同様である。
、R、及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0094】
本発明においては、一般式(i)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、一般式(ii)で表される単量体として、Rが水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zがカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
更に、一般式(iii)で表される単量体として、R、R、及びRがそれぞれ独立
に水素原子又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0095】
以下に、一般式(i)〜一般式(iii)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示
す。
該単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物と無水トリメリット酸の反応物、分子内に付加重合性二重結合と水酸基を有する化合物とピロメリット酸無水物の反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4−ビニル安息香酸、ビニルフェノール、4−ヒドロキシフェニルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0096】
特定樹脂中における酸性基を有する単量体などの特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基の含有量は、特定金属化合物粒子との相互作用、分散安定性、及び現像液への浸透性の観点から、特定樹脂に対して0.05質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%がより好ましく、10質量%〜70質量%が更に好ましい。
【0097】
更に、特定金属化合物分散物に含まれる特定樹脂は、画像強度などの諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記グラフト部位(グラフト鎖を有する構造単位)及び特定金属化合物粒子と相互作用を形成しうる官能基を有する構造単位に加えて、更に種々の機能を有する他の構造単位、例えば、分散物に用いられる分散媒との親和性を有する官能基などを有する構造単位を共重合成分として含むことができる。
【0098】
特定樹脂に共重合可能な共重合成分としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0099】
これらを1種或いは2種以上用いることができ、特定樹脂中、これら共重合成分の好適に使用される含有量は、0モル%以上90モル%以下であり、特に好ましくは、0モル%以上60モル%以下である。含有量が前記の範囲において十分なパターン形成性が維持される。
【0100】
特定樹脂を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0101】
このような特定樹脂の具体例としては、以下の例示化合物1〜例示化合物55が挙げられる。なお、各構成単位(主鎖部分)の添数字は質量%である。
【0102】
【化17】

【0103】
【化18】

【0104】
【化19】

【0105】
【化20】

【0106】
【化21】

【0107】
【化22】

【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
【化25】

【0111】
【化26】

【0112】
【化27】

【0113】
【化28】

【0114】
【化29】

【0115】
【化30】

【0116】
【化31−1】

【0117】
本発明の特定金属化合物分散物における分散剤の含有量としては、被分散体(特定金属化合物粒子からなる被分散体及び他の着色剤等からなる被分散体を含む)の全固形分質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
また、本発明の感光性樹脂組成物における分散剤の含有量としては、被分散体(特定金属化合物粒子からなる被分散体及び他の着色剤等からなる被分散体を含む)の全固形分質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、3質量%〜70質量%がより好ましい。
【0118】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明の組成物は、さらにアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性・パターン形成性が向上する。
【0119】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーに酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合するようにすればよい。 なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを単量体成分として酸基を導入する場合には、重合後に例えば後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0120】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0121】
アルカリ可溶性樹脂として用いられる線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N―フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アルカリ可溶性樹脂としては、下記一般式(ED)
【0122】
【化31−2】

【0123】
(式(ED)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(a)を、必須成分であるポリマー成分(A)として含むことも好ましい。これにより、本発明の組成物は、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた硬化塗膜を形成しうる。前記エーテルダイマーを示す前記一般式(1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0124】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。前記一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他の単量体を共重合させてもよい。
【0125】
また、本発明における組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂としては、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したアルカリ可溶性樹脂等が有用である。上述の重合性基を含有するポリマーの例としては、ダイヤナ-ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer. Diamond
Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)、日本触媒社製MX−2−RD−FSなどが挙げられる。これら重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂、OH基を含むアクリル樹脂とイソシアネートと重合性基を有する化合物を反応させた樹脂、特開2002-229207号公報及び特開2003-335814号公報に記載されるα位又はβ位にハロゲン原子或いはスルホネート基などの脱離基を有するエステル基を側鎖に有する樹脂を塩基性処理を行うことで得られる樹脂などが好ましい。
【0126】
アルカリ可溶性樹脂としては、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他ノモノマーからなる多元共重合体が好適である。この他、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0127】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは30mgKOH/g〜200mgKOH/g、より好ましくは50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜120mgKOH/gであることが最も好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましく、7,000〜20,000が最も好ましい。
【0128】
アルカリ可溶性樹脂の組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは、2〜25質量%であり、特に好ましくは、3〜20質量%である。
【0129】
[光重合開始剤]
本発明における光重合開始剤(以下、単に「重合開始剤」ということがある。)としては、以下に述べるような光重合開始剤として知られているものを用いることが好ましい。
【0130】
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。また、前記光重合開始剤は、約300〜800nm(330〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0131】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0132】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0133】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0134】
光重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物、特開2006−342166号公報記載の化合物を用いることができる。
【0135】
オキシム化合物として得に好ましくは、特開2007−269779公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム系光重合開始剤としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0136】
【化32】

【0137】
一般式(1)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
前記Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0138】
一般式(1)においては、一般式(1)中のArと隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0139】
【化33】

【0140】
オキシム化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0141】
【化34】

【0142】
一般式(2)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。
一般式(2)におけるR、A、及びArは、前記一般式(1)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0143】
一般式(2)中、Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0144】
これらの中でも、一般式(2)におけるXとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、一般式(2)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0145】
一般式(2)中、Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、「*」は、一般式(2)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0146】
【化35】

【0147】
中でも、二価の有機基としては、感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0148】
【化36】

【0149】
さらに、オシム化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0150】
【化37】

【0151】
一般式(3)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。
一般式(3)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、一般式(2)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0152】
以下好適に用いられるオキシム化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
【化38】

【0154】
【化39】

【0155】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものであり、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることが好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0156】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0157】
本発明に用いられる光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0158】
光重合開始剤の組成物中における含有量(2種以上の場合は総含有量)としては、組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲、特に好ましくは1〜8質量%の範囲である。この範囲内であると、良好な安定性の発現に効果的に寄与する。
【0159】
[その他の添加物]
本発明の組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、上記以外の高分子化合物、界面活性剤、有機カルボン酸、有機カルボン酸無水物、重合禁止剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することかできる。
【0160】
・界面活性剤
本発明の組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。これらの中でもフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0161】
特に、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0162】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0163】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、竹本油脂社製パイオニンD−6315等が挙げられる。
【0164】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0165】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0166】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
【0167】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の組成物への添加量は、組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
【0168】
・重合禁止剤
本発明の組成物には、該組成物の製造中又は保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。また、室温は25℃を指す。
【0170】
(合成例:分散剤1の合成)
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン600.0g、及び2−エチル−1−ヘキサノール22.8gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。前記フラスコにモノブチル錫オキシド0.1gを加え、フラスコの内容物を100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて原料が消失したのを確認し、その後フラスコの内容物を80℃まで冷却した。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1gを添加した後、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート27.2gを添加した。5時間後、H−NMRにて原料が消失したのを確認後、室温まで冷却し、固体状の前駆体M1〔下記構造〕を200g得た。得られた物質がM1であることは、H−NMR、IR、質量分析により確認した。
【0171】
【化40】

【0172】
前記前駆体M1を30.0gと、NKエステル CB−1を70.0gと、ドデシルメ
ルカプタン2.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)233.3gとを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温した。これに、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(和光純薬(株)製の「V−601」)0.2gを加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行なった。2時間後、さらにV−601を0.2g加えて、3時間加熱攪拌し、下記分散剤1の30%溶液を得た。
【0173】
【化41】

【0174】
分散剤d−1の組成比、酸価、及び重量平均分子量(Mw)は、以下の通りである。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した値である。GPCによる測定は、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製)を用いて行った。
・組成比: x=50(質量%)、y=50(質量%)
・酸価 : 100mgKOH/g
・Mw : 30,000
【0175】
(製造例:バナジウム混合物VN1の作製)
粒径100umの太陽鉄工製五酸化バナジウムVT-1を100g、およびビックケミー社製Disperbyk190を100g秤量し、イオン電気交換水71gを加えてKURABO製MAZERSTAR KK-400Wを使用して公転回転数1360rpm、自回転数1047rpmにて20分間処理することのより均一な混合水溶液を得た。この水溶液を石英容器に充填し、株式会社モトヤマ製小型ロータリーキルンを用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した後、窒素で雰囲気を置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、粉末状の窒化物と酸化物のバナジウム混合物を得た。
【0176】
(実施例1)
(バナジウム分散物の調製)
下記組成に示す成分を、攪拌機(IKA社製、EUROSTAR[商品名])を使用して、15分間混合し、分散物101aを得た。
【0177】
(組成)
・上記のようにして得られたバナジウム混合物VN1 ・・・25部
・上記合成例により得られた分散剤d−1の30%溶液 ・・・25部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(溶剤)
・・・50部
【0178】
得られた分散物101aに対し、寿工業(株)製のウルトラアペックスミルUAM015[商品名]を使用して下記条件にて分散処理を行い、バナジウム分散液(塗布組成物)101を得た。
【0179】
<分散条件>
・ビーズ径:φ0.05mm
・ビーズ充填率:75体積%
・ミル周速:8m/sec
・分散処理する混合液量:500g
・循環流量(ポンプ供給量):13kg/hour
・処理液温度:25〜30℃
・冷却水:水道水
・ビーズミル環状通路内容積:0.15L
・パス回数:90パス
【0180】
(比較例1)
実施例1のバナジウムをカーボンブラック(東京インキ社製、商品名 TEP BP-BLACK1)に置き換えた(塗布組成物c11)。また、実施例1のバナジウムをチタンブラック(三菱マテリアル電子化成 社製、商品名 12S)に置き換えた(塗布組成物c12)。
【0181】
(塗布組成物の塗布)
上記で得られた塗布組成物を、基板であるガラスウエハ(Corning 1737[商品名]、Corning社製)にスピンコート法で塗布し、着色組成物塗布膜を得た。膜厚は1μmとし、すべてのサンプルについてこの厚さになるようにした。
【0182】
(バナジウム分散液の分光評価)
上記の着色組成物塗布膜の分光特性を評価した。測定装置は島津製作所社製、UV−3600[商品名]を用い、測定は室温(25℃)で行った。波長400nmの光学濃度(OD400)を基準とした場合の450、550、650nmでの光学濃度(OD)の比率(OD/OD400)を表1に示す。図1には塗布組成物101を用いた塗布膜の分光特性チャートを示した。
【0183】
(塗布組成物膜の評価)
上記で得られた黒色組成物塗布膜の外観を塗布直後、3日後に目視で評価した結果を表2に示す。評価の点数として、下記を用いた。
・ 膜全体に、異物無し ・・・ 5
・ 膜周辺部に極僅かに異物が析出 ・・・ 4
・ 膜周辺部に僅かに異物が析出しているが実用可能 ・・・ 3
・ 膜全体に異物が析出して、実用不可能 ・・・ 2
・ 膜全体に異物が大量析出して、実用不可能 ・・・ 1
【0184】
【表1】

【0185】
上記の結果より、比較例のカーボンブラックを含有する分散液(c11)は低波長側の光学濃度(OD)が著しく高いことがわかる。チタンブラックを含有する分散液(c12)についても、低波長側の光学濃度(OD)が高く、均一な分光特性が得られていないことがわかる。これに対し、本発明のバナジウム混合物を含む組成物によれば、可視光領域の全域にわたり一定した光学濃度(OD)を示す、均一な分光特性が実現されることがわかる。また、本発明のバナジウム混合物を含む組成物は、膜の劣化が抑えられ、良好な経時の安定性を発揮することがわかる。
【0186】
(実施例2)
下記組成の成分を攪拌機で混合して、塗布組成物201を調製した。
(組成)
・前記例示化合物 M−213〔不飽和結合含有安定化剤〕 ・・・6部
・バナジウム分散液101 ・・・36.5部
・日本触媒社製MX−2−RD−FS ・・・4.5部
・BASF社製IRGACURE OXE01 ・・・0.9部
・竹本油脂社製パイオニンD−6315 ・・・0.2部
・DIC社製メガファックF−781 ・・・0.04部
・三立ケミー社製p−メトキシフェノール ・・・0.003部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
・・・50部
前記塗布組成物201に対して、分散剤及び安定化剤を表に記載にように変えた以外は同様にして、塗布組成物202〜205を得た。なお分散剤の添加量は25部とした。
【0187】
【表2】

【0188】
表2の結果から、本発明のバナジウム混合物を含む分散液に不飽和低分子化合物を追添することで、可視光領域における均一な分光特性を維持し、さらに経時安定性を高めることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第5族の遷移金属の窒化物を含有する灰色組成物。
【請求項2】
前記遷移金属がバナジウム又はニオブである請求項1に記載の灰色組成物。
【請求項3】
前記遷移金属の窒化物が窒化バナジウムである請求項1又は2に記載の灰色組成物。
【請求項4】
さらに、第5族の遷移金属の酸化物を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【請求項5】
さらに、分子内に不飽和結合をもつ安定化剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【請求項6】
さらに、分散剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【請求項7】
前記安定化剤が下記一般式(I)又は(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【化1】

[式中、R、T、Zは、下記式に示した構造の基である。nは0〜14の整数であり、mは1〜8の整数である。一分子内に複数存在するR及びTは各々同一であっても異なっていてもよい。]
【化2】

【請求項8】
前記分散剤が下記式(i)〜(iii)のいずれかで表されるモノマーに由来する繰り返し単位を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の灰色組成物。
【化3】

[式中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す。Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ基(−NH−)を表す。Yはメチン基又は窒素原子を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Zは官能基を表す。R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜6のアルキル基、−Z、又は−L−Zを表す。]
【請求項9】
前記分散剤を組成物全量中1〜90質量%含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【請求項10】
可視光領域の光学濃度(OD)のばらつきが、波長400nmにおける光学濃度(OD)を基準として、その±20%以内に抑えられた請求項1〜9のいずれか1項に記載の灰色組成物。
【請求項11】
前記酸化バナジウムと窒化バナジウムとを含有させる媒体として有機溶剤を用いたとことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の灰色組成物。

【公開番号】特開2013−49809(P2013−49809A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189482(P2011−189482)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】