説明

災害対策枕

【課題】懐中電灯と履物とを収納することで就寝時の災害に迅速かつ確実に対応可能であるとともに、防災頭巾として機能し、しかも寝心地が快適な災害対策枕を提供する。
【解決手段】本発明の災害対策枕は、平面視略長方形状の枕本体部、並びに、その枕本体部の両側にそれぞれ配置された左側袋部および右側袋部を備えている。左側袋部および右側袋部は、防災用具を収納可能な袋形状に形成されている。枕本体部は、その略長方形状の一辺において開口可能となるように上側クッション部と下側クッション部とを重ね合わせて形成されている。枕本体部の両クッション部間に人の頭部を挿入することで防災頭巾として使用可能であることを特徴とする。また本発明の災害対策枕と、災害対策枕の左側および右側袋部に収納可能な懐中電灯および履物とを組み合わせた災害対策枕セットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時に利用することのできる防災用具を収容した枕に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の防災対策として、懐中電灯、ラジオ、非常食といった防災用具を非常持ち出し袋等に納めて保管する方法が広く普及している。しかし就寝中に地震等の災害が発生した場合には、同時に停電となる可能性が高く、防災用具の所在を知ることができないためにせっかく用意した防災用具を活用できない恐れがあった。そこで就寝時であっても利用できるような形態で非常用の照明器具を配置する技術が求められていた。
【0003】
また就寝中に災害が発生した時には、素足の状態から屋外に避難しなければならない事態が想定される。そのような場合に足を保護するため、就寝中に災害が発生しても確実に利用できる形態で身近に履物を配置できる技術が求められていた。
【0004】
上記課題を克服するために、就寝時に最も身近にある枕の中に防災用具を収納する試みがなされている。特許文献1には、防災用具を収納した容器と、この容器の上に配置されるクッションと、これら容器とクッションとを包むカバーとを備えた防災用具が開示されている。特許文献2には、防寒具とスリッパを収納しており、防災頭巾として利用可能な枕が開示されている。特許文献3には、簡易靴を収納しており、防災頭巾として利用するための紐を内蔵した枕が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3021364号公報
【特許文献2】登録実用新案第3112678号公報
【特許文献3】特開2009−90072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防災用具は、クッションの下の容器に、形状や硬さの異なる防災用具を収納して配置している。このため、たとえクッションを隔てている場合であっても、防災用具が使用者の後頭部に硬い感触を与えて寝心地を損なう恐れがあった。また特許文献2又は特許文献3に開示される枕は、履物を防災頭巾で挟み込んだ構成となっている。このため、防災頭巾の中で履物がずれた場合に、使用者に違和感を与える恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、防災用具を収納していながら、使用者に違和感を与えることがなく、寝心地に優れた枕を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、災害対策枕に関する。この災害対策枕は、平面視略長方形状の枕本体部、並びに、その枕本体部の両側にそれぞれ配置された左側袋部および右側袋部を備えている。災害対策枕の左側袋部および右側袋部は、防災用具を収納可能な袋形状に形成されており、枕本体部は、その略長方形状の一辺において開口可能となるように上側クッション部と下側クッション部とを重ね合わせて形成されている。本発明の災害対策枕は、枕本体部の両クッション部間に人の頭部を挿入することで防災頭巾として使用可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の災害対策枕は、上側クッション部と下側クッション部とを重ね合わせて形成され、災害発生時に防災頭巾として使用することが可能な枕本体部と、枕本体部の両側に配置された防災用具を収納可能な左側袋部と右側袋部とを備えている。本発明の災害対策枕は、枕本体部に防災用具を収納せず、枕本体部とは異なる左側袋部と右側袋部に防災用具を収納するために、使用者は、枕本体部に頭部を載せた際に違和感がなく、快適な寝心地で就眠することができる。
【0010】
本発明の災害対策枕は、第1の横長な袋状カバーと、第2の横長な袋状カバーとを備えることができる。そして、上側クッション部は、前記第1の袋状カバーの中央部に略長方形状のクッション材を内包することで構成され、下側クッション部は、前記第2の袋状カバーの中央部に略長方形状のクッション材を内包することで構成される。枕本体部は、略長方形状の各クッション材の2つの短辺と1つの長辺に沿って第1及び第2の袋状カバーを縫合することによって、一長辺において開口可能に形成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の災害対策枕は、第1の袋状カバーの中央部の左側および右側、並びに、第2の袋状カバーの中央部の左側および右側に、それぞれ第2のクッション材を内包させた状態で、第1及び第2の袋状カバーの外周縁の一部を縫合することによって、左側袋部および右側袋部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の災害対策枕は、左側袋部および右側袋部に収納される防災用具が、懐中電灯と履物であることを特徴とする。
【0013】
本発明はまた、災害対策枕セットを提供する。本発明の災害対策枕セットは、災害対策枕と、災害対策枕の左側および右側袋部に収納可能な履物および懐中電灯と、を組み合わせてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防災対策枕は、枕本体部に防災用具を収納せず、枕本体部とは異なる左側袋部と右側袋部に防災用具を収納するために、使用者は、枕本体部に頭部を載せた際に違和感がなく、快適な寝心地で就眠することができる。
【0015】
本発明の防災対策枕は、枕本体部の開口に、タオルや更なるクッション材といった緩衝部材を挿入することで、枕本体部の高さを、使用者の好む高さに調整することができる。
【0016】
本発明の防災対策枕の枕本体部は、クッション材が収納された袋状カバーを縫合することによって構成されているために、通常の枕と同等の寝心地を確保している。しかも内包されているクッション材によって、防災頭巾としても高い機能を備えている。
【0017】
本発明の防災対策枕は、左側袋部および右側袋部の中に第2のクッション材が内包されていることにより、防災用具を安全に保管することが可能である。しかもこの第2のクッション材が内包されていることによって、防災用具が使用者の頭部に接触する時の違和感が減じられており、使用者の頭部が枕本体部からずれたとき(例えば、寝返りしたとき)にも、使用者の寝心地を快適に保つことが可能である。
【0018】
本発明の防災対策枕は、履物と懐中電灯とを収納することができる。履物と懐中電灯と本発明の防災枕とを備えた防災対策枕セットは、万一就寝中に災害が発生した場合であっても、周囲を懐中電灯で照らして避難経路と必要な持ち物の確認が可能であり、且つ使用者の頭部と足とを安全に保護して避難することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る防災対策枕の上面斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る防災対策枕の一長辺を開口させた状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る防災対策枕の下面斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係る防災対策枕を背面下部から見た図である。
【図5】本発明の実施例に係る防災対策枕に収納される懐中電灯の平面図である。
【図6】本発明の実施例に係る防災対策枕に収納される履物の側面図である。
【図7】本発明の実施例に係る防災対策枕を防災頭巾として着用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、発明を実施するための形態としての実施例について説明する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しつつ説明する。図1に、本発明の実施例に係る防災対策枕の上面斜視図を示す。図2に、本発明の実施例に係る防災対策枕の一長辺を開口させた状態を示す。図3に、本発明の実施例に係る防災対策枕の下面斜視図を示す。
【0022】
図1に示すように、本実施例における災害対策枕1は、平面視略長方形状の枕本体部2と、その枕本体部2の両側にそれぞれ配置された左側袋部3および右側袋部4を備えている。図2に示すように、本実施例における枕本体部2は、平面視略長方形状の上側クッション部11と、上側クッション部11とほぼ同一形状の下側クッション部12とを重ね合わせて形成されている。上側クッション部11と下側クッション部12とは、一つの長辺とその両側の短辺が、外側に沿って縫合されており、残る他の長辺が分離していることによって、図2において前面で示される一つの長辺が開口可能となっている。
【0023】
枕本体部2を構成する上側クッション部11と下側クッション部12についてより詳細に記載する。図3に示すように、上側クッション部11は、横長な第1の袋状カバー13と、これに内包されているクッション材15aとを備えている。下側クッション部12は、横長な第2の袋状カバー14と、これに内包されているクッション材15bとを備えている。第1の袋状カバー13と第2の袋状カバー14とは、ほぼ同一の形状を備えている。またクッション材15aとクッション材15bとは、ほぼ同一の平面視略長方形の形状であって、全体として直方体となる形状を備えている。
【0024】
本実施例に於いて、第1の袋状カバー13および第2の袋状カバー14は、綿または麻を含む吸湿性のある織布で形成されている。クッション材15a、15bは、ポリウレタンで形成されている。
【0025】
クッション材15aは、第1の袋状カバー13内部のほぼ中央部に配置されている。クッション材15bは、第2の袋状カバー14内部のほぼ中央部に配置されている。クッション材15aを内包した第1の袋状カバー13と、クッション材15bを内包した第2の袋状カバー14とは、クッション材15aとクッション材15bとの外周部の位置が一致するように重ね合わされた状態で、クッション材15a,15bの短辺と平行に袋状カバー13,14を横断する二つの縫製ライン21,22で縫合されている。この二つの縫製ライン21,22によって、クッション材15aは第1の袋状カバー13の中に固定され、クッション材15bは第2の袋状カバー14の中に固定される。
【0026】
次に、枕本体部2の両側にそれぞれ配置される左側袋部3および右側袋部4の構成について詳細に説明する。本実施例における左側袋部3および右側袋部4は、それぞれが、第1の袋状カバー13と、第2の袋状カバー14と、第2のクッション材16によって構成されている。
【0027】
第1の袋状カバー13および第2の袋状カバー14の長手方向の長さは略同一であって、クッション材15aの長辺の長さと、1個のクッション材16の長辺の長さと、縫製のための縫いしろの長さとの和に相当する長さを備えている。
【0028】
左側袋部3は、第1の袋状カバー13の左側端部と第2の袋状カバー14の左側端部とを、一部開口を残して縫合し、この開口から第2のクッション材16を挿入した後に、この開口を縫合して第1の袋状カバー13の左側端部と第2の袋状カバー14の左側端部とを連結されている。更に左側袋部3は、第1の袋状カバー13左側の、図3において前方で示される端部と、第2の袋状カバー14左側の、図3において前方に示される端部とが縫合されていることで、袋型の形状となっている。つまり左側袋部3は、第1の袋状カバー13と第2の袋状カバー14の左側端部、および図3において前方で示される辺とからなる外周縁の一部が縫合されており、且つ、第1の袋状カバー13と第2の袋状カバー14の図3において後方に示される辺が離反していることで、防災用具を収納可能な袋状に形成されている。
【0029】
右側袋部4は、第1の袋状カバー13の右側端部と第2の袋状カバー14の右側端部とを、一部開口を残して縫合し、その開口から第2のクッション材16を挿入した後に、この開口を縫合して第1の袋状カバー13の右側端部と第2の袋状カバー14の右側端部とを連結されている。更に右側袋部4は、第1の袋状カバー13左側の、図3において前方に示される端部と、第2の袋状カバー14左側の図3において前方に示される端部とが縫合されていることで、袋型の形状となっている。つまり右側袋部4は、第1の袋状カバー13と第2の袋状カバー14の右側端部、および図3において前方に示される辺とからなる外周縁の一部が縫合されており、且つ、第1の袋状カバー13と第2の袋状カバー14の図3において後方に示される辺が離反していることで、防災用具を収納可能な袋状に形成されている。
【0030】
本実施例における防災対策枕1は、左側袋部3と右側袋部4とが同一の形状に形成されている。左側袋部3と右側袋部4は、その内部に、防災用具である懐中電灯5と履物6のいずれか一方を収納するために充分な広さを備えている。図4に、右側袋部3に履物6を収容し、左側袋部4に懐中電灯5を収容した状態の防災対策枕1を、背面下部から見た図を示す。
【0031】
図5に、本実施例の防災対策枕1の左側袋部3又は右側袋部4に収納可能な懐中電灯5の一実施形態を示す。図6に、本実施例の防災対策枕1の左側袋部3又は右側袋部4に収納可能な履物6であるスリッパの一実施形態を示す。図6に示されるスリッパは、厚地の布地で形成されており、使用者の足をガラスの破片等から保護することができると同時に、就寝時の使用者が第2のクッション材16を挟んで頭部を載せてもあまり違和感を覚えない程度の柔軟性を備えている。
【0032】
図7に、本実施例の防災対策枕1の枕本体部1の開口に、使用者が頭部を挿入した状態を示す。枕本体部1を構成する袋状カバー13,14とクッション材15a,16bとによって、使用者の頭部は、災害発生時にも安全に保護される。
【0033】
本実施例における防災対策枕1の枕本体部1の開口には、タオルやクッションと言った任意の緩衝材を挿入することで、使用者が所望する高さに調節することができる。
【0034】
本実施例における防災対策枕1は、枕本体部1の開口が図3における前面側に形成されており、左側袋部3と右側袋部4の開口が図3における後面側に形成されている。このように、中央の枕本体部2の開口と、両端部の袋部の開口とを異なる側で形成することは、使用者の寝心地を向上させる効果がある。つまり、就寝時に、枕本体部2の開口が使用者の首側になるように配置すると、使用者が寝返りを打った場合でも、使用者の首および肩には左側袋部3と右側袋部4の縫合された側が接触することになり、袋部の内部に収納された防災用具に触れる機会を減じることが可能となる。
【0035】
本実施例の防災対策枕1は、懐中電灯5と履物6とを組み合わせた防災対策枕セットとして販売することが好ましい。本実施例における懐中電灯5と履物6とは、いずれも、就寝中の災害対策として有効な防災用具であると共に、防災対策枕1の両側の袋部に収納したときに、使用者の寝心地を極力損なわないように構成されているためである。
【0036】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば実施例では、クッション材15aとクッション材15bとが同一の形状を有する場合について説明したが、寝心地を向上させるために、クッション材15aとクッション材15bの形状を異なる物とすることが可能である。また、実施例では、元々別体である第1の袋状カバーと第2の袋状カバーにクッション材15aとクッション材15bを別々に挿入した後、縫合する製造方法について説明したが、長尺の1本のカバー部の中に、所定の間隔をあけて、合計4個のクッション材を挿入し、両端部を縫合した後で2つ折りとして縫製ラインで縫合して枕を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 災害対策枕
2 枕本体部
3 左側袋部
4 右側袋部
5 懐中電灯
6 履物(スリッパ)
11 上側クッション部
12 下側クッション部
13 第1の袋状カバー
14 第2の袋状カバー
15a,15b クッション材
16 第2のクッション材
21,22 縫製ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略長方形状の枕本体部、並びに、その枕本体部の両側にそれぞれ配置された左側袋部および右側袋部を備え、
前記左側袋部および右側袋部は、防災用具を収納可能な袋形状に形成されており、
前記枕本体部は、その略長方形状の一辺において開口可能となるように上側クッション部と下側クッション部とを重ね合わせて形成されており、
前記枕本体部の両クッション部間に人の頭部を挿入することで防災頭巾として使用可能であることを特徴とする災害対策枕。
【請求項2】
第1の横長な袋状カバーと、第2の横長な袋状カバーとを備えており、
前記上側クッション部は、前記第1の袋状カバーの中央部に略長方形状のクッション材を内包することで構成され、
前記下側クッション部は、前記第2の袋状カバーの中央部に略長方形状のクッション材を内包することで構成され、
前記略長方形状の各クッション材の2つの短辺と1つの長辺に沿って前記第1及び第2の袋状カバーを縫合することによって、一長辺において開口可能な前記枕本体部が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の災害対策枕。
【請求項3】
前記第1の袋状カバーの中央部の左側および右側、並びに、前記第2の袋状カバーの中央部の左側および右側にそれぞれ第2のクッション材を内包させた状態で、前記第1及び第2の袋状カバーの外周縁の一部を縫合することによって、前記左側袋部および右側袋部が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の災害対策枕。
【請求項4】
前記左側袋部および右側袋部に収納される防災用具は、懐中電灯と履物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の災害対策枕。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の災害対策枕と、
前記災害対策枕の左側および右側袋部に収納可能な履物および懐中電灯と、
を組み合わせてなることを特徴とする災害対策枕セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143052(P2011−143052A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5766(P2010−5766)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510013921)株式会社パイントジャパンコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】