説明

炉内仮設足場構造

【課題】圧力容器の炉内に架設される仮設足場の構造において、炉壁吊り替え用の手段の設置を容易にして工数削減を図る。
【解決手段】容器内側から炉壁2側に向けて延びると共に足場板26を支持する水平枠25を有し、前記水平枠25の容器内側の部位が、垂直枠21,22に固定的に支持される固定枠31とされ、前記水平枠25の炉壁2側の部位が、前記固定枠31の端部に回動連結部39を介して連結される可動枠35とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等の圧力容器の炉内に架設される仮設足場の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラ等の圧力容器の炉内に足場を架設して各種作業を行うにあたり、炉の下室に搬入された足場部材を上室へ容易に吊上げ可能としたもの(例えば、特許文献1参照)や、固定足場に対して起伏状態に回動可能な起伏式足場を備えたもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−119914号公報
【特許文献2】特開平09−060804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボイラの定期点検時にはその炉壁を交換することがある。その際、圧力容器の炉内に炉壁に沿うように仮設足場を架設することがあるが、炉壁を吊り替えるためのウインチやチェーンブロックを設定するには、一部足場板を取り外さないといけなかった。
しかし、足場板の取り外しやその復旧には時間を要するため、炉壁交換作業の工数を増加させるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、圧力容器の炉内に架設される仮設足場の構造において、炉壁吊り替え用の手段の設置を容易にして工数削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、圧力容器の炉内で炉壁に沿うように架設される仮設足場の構造において、容器内側から炉壁側に向けて延びると共に足場板を支持する水平枠を有し、前記水平枠の容器内側の部位が、垂直枠に固定的に支持される固定枠とされ、前記水平枠の炉壁側の部位が、前記固定枠の端部に回動連結部を介して連結される可動枠とされることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記可動枠に足場板が固定されてこれらが一体的に回動することを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、当該構造が吊り足場に適用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、可動枠を固定枠と共に水平に配置して水平枠を炉壁近傍まで延ばすことで、炉壁に対する切断等の作業を容易にすると共に、前記作業後には可動枠を回動させて固定枠と炉壁との間に空間を形成することで、炉壁の切断片と新規パネルとを交換するためのウインチやチェーンブロック等の移動手段の配置スペースが確保されると共に、前記切断片と新規パネルとを吊り替えるための作業ペースも確保される。このため、炉壁交換時における足場板の取り外しやその復旧にかかる時間を短縮でき、炉壁交換作業の工数削減を図ることができる。
請求項2に記載した発明によれば、炉壁近傍にスペースを確保するための工数をさらに削減できる。
請求項3に記載した発明によれば、足場板の着脱を容易にしたことにより安全性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における圧力容器の炉壁交換作業を示す説明図である。
【図2】上記炉壁交換作業に用いる吊り足場の側面図である。
【図3】上記吊り足場の水平枠を回動させた状態の側面図である。
【図4】(a)は上記水平枠の側面図、(b)は上記水平枠の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ボイラ等の圧力容器1外周の一炉壁(以下、単に炉壁という)2を交換する際の作業の概要を示す。
炉壁2の交換作業は、まず炉壁2の交換部分を正面視格子状に切断し、この切断片2aを圧力容器1の図中左側に予め形成した開口部3まで第一及び第二移動手段4,5を用いて搬送し、この開口部3から炉外に設置した定置式クレーン6及び移動式クレーン7を用いて切断片2aを所定の回収場所まで搬送する。
【0010】
その後、炉壁2の新規パネル2bを各クレーン6,7により開口部3まで搬送し、この開口部3から炉内の各移動手段4,5クレーンにより新規パネル2bを炉壁2の切除部分まで搬送して、当該部位に新規パネル2bを溶接等により固定する。この交換作業を炉壁2の全域に渡って行うことで、炉壁2全体の交換作業が完了する。以下、炉壁2の切断片2a及び新規パネル2bをワークと総称することがある。なお、図中符号2cは炉壁2のバックステーを、符号2dは炉壁2に設けたバーナー(機器)をそれぞれ示す。
【0011】
図3を併せて参照して説明すると、第一移動手段4は、圧力容器1の上部内に架設した第一梁4aに、例えばワイヤロープ4bを巻き掛けて電動ウインチ4cを吊下してなり、炉壁2の近傍においてワークを昇降させる。
【0012】
また、第二移動手段5は、圧力容器1の上部内で第一梁4aよりも下方かつ容器内側にオフセットして第一梁4aと平行に架設した第二梁5aに、トロリ5bを介してチェーンブロック5cを吊下してなり、第一移動手段4から玉掛けし直したワークを炉壁2の近傍において炉壁2に沿うように水平移動させる。
なお、各梁4a,5aは、例えばフランジを水平に配置したI形鋼からなる。
【0013】
各梁4a,5aの上方には、各梁4a,5aと上面視で直交するように架設された根太梁8が位置する。根太梁8は、例えばフランジを水平に配置したH形鋼からなり、その下面には、根太梁8と上面視で直交するように架設された主梁9の上面が溶接又は締結等により固定される。
【0014】
主梁9は、例えばフランジを水平に配置したI形鋼からなり、炉壁2から所定量離間した位置に配置される。主梁9の下面には、これと平行に延びる断面T字状の鋼材からなる第一吊り下げ部材11の上面が溶接又は締結等により固定される。
また、主梁9と炉壁2との間における根太梁8の下面には、第一吊り下げ部材11と平行に延びる断面T字状の鋼材からなる第二及び第三吊り下げ部材12,13の上面が溶接又は締結等により固定される。
【0015】
なお、第一及び第二吊り下げ部材11,12間の距離は、第二及び第三吊り下げ部材12,13間の距離よりも短くされる。
そして、各吊り下げ部材11〜13には、炉壁2交換作業を行うための吊り足場20が吊下される。
【0016】
図2,3を参照して説明すると、吊り足場20は、上下に複数ピッチ(複数階層)を有するように形成されるもので、各吊り下げ部材11〜13のそれぞれの下方に延びるように設けられる第一〜第三垂直枠21〜23と、各ピッチの下端位置にて各垂直枠21〜23に渡るように架設される水平枠25とを有し、炉壁2近傍にてこれに沿う扁平なボックス状に形成される。
【0017】
各垂直枠21〜23は、既存の足場材(丸鋼管)を主になる複数の枠部材24を上下に複数連結してなる。各枠部材24は、吊り足場20における一ピッチ分の上下長さを有し、前記足場材からなる枠本体24aと、枠本体24aの上下端部にそれぞれ溶接固定される例えばフック状の上下係止板24b,24cとからなる。
【0018】
各垂直枠21〜23の上端部(上係止板24b)は、各吊り下げ部材11〜13の対応するものの下部にそれぞれ係合する。なお、吊り足場20の最上ピッチにおいて、第一垂直枠21は主梁9の下方に吊下されることから、その長さは第二及び第三垂直枠22,23よりも短くされる。前記各移動手段4,5を支持する各梁4a,5aは、炉壁2と直交する方向で第二及び第三垂直枠22,23間の領域に位置している。
【0019】
水平枠25は足場板26を支持する足場受けパイプであり、第一垂直枠21側(容器内側)から第三垂直枠23側(炉壁2側)に向けて延びる。水平枠25の図2,3における左端部(長手方向で容器内側の端部)には、第一垂直枠21における水平枠25の上方に位置する枠部材24の下端部(下係止板24c)及び下方に位置する枠部材24の上端部(上係止板24b)がそれぞれ係合する。
【0020】
同様に、水平枠25の図2,3における左右中間部(長手方向中間部)には、第二垂直枠22における水平枠25の上方に位置する枠部材24の下端部(下係止板24c)及び下方に位置する枠部材24の上端部(上係止板24b)がそれぞれ係合し、水平枠25の図2,3における右端部(長手方向で炉壁2側の端部)には、第三垂直枠23における水平枠25の上方に位置する枠部材24の下端部(下係止板24c)及び下方に位置する枠部材24の上端部(上係止板24b)がそれぞれ係合する。
【0021】
これにより、各垂直枠21〜23における上下に並ぶ各枠部材24が水平枠25を介して互いに連結される。なお、水平枠25は、炉壁2の幅方向で所定間隔をもって複数設けられる。また、吊り足場20の各ピッチにおいて、各垂直枠21〜23の各枠部材24の上下中間部には、例えば上下一対の中間水平枠(手すり等)が架設される(不図示)。
【0022】
ここで、水平枠25は、第一及び第二垂直枠21,22間に渡ると共にこれらに支持される固定枠31と、固定枠31の炉壁2側の端部から第三垂直枠23まで延びて前記端部及び第三垂直枠23に支持される可動枠35とに分割構成される。
【0023】
図4を併せて参照して説明すると、固定枠31は、既存の足場材(丸鋼管)からなる固定側枠部材32と、その両端部にそれぞれ溶接固定される例えば鍛造製の固定側内外末端部材33,34とを有する。なお、固定側内末端部材33は水平枠25の長手方向内側、固定側外末端部材34は水平枠25の長手方向外側にある。
【0024】
固定側外末端部材34は、固定側枠部材32の外端部内に挿入される円柱状の挿入部34aと、その外側端に突設される一対のストッパ支持片34bとを一体に有する。各ストッパ支持片34b間には、一側に長孔を有する短冊状のストッパ部材27が回動可能に支持される。このストッパ部材27を水平枠25の長手方向と略直交する状態(図4に示す状態)に配置することで、第一垂直枠21の各係止板24b,24cの前記長手方向での抜け止めがなされる。一方、ストッパ部材27を回動させて水平枠25の長手方向と略平行な状態に配置することで、第一垂直枠21の各係止板24b,24cの前記長手方向での着脱が可能となる。
【0025】
固定側内末端部材33は、固定側枠部材32の内端部内に挿入される円柱状の挿入部33aと、その外側端から固定側枠部材32と同一外径をなすように延出する連結支持部33bとを一体に有する。連結支持部33bは、固定枠31の長手方向及び径方向に平行なスリット33cを有し、このスリット33c内に可動枠35に固定した後述の可動側内末端部材37の連結被支持部37bが挟み込まれる。
【0026】
これら連結支持部33b及び連結被支持部37bを一対のボルト28及びナット29により一体に締結することで、各内末端部材33,37ひいては固定枠31及び可動枠35が一体的に連結される。一方、各ボルト28の一方を取り外すことで、可動枠35が固定枠31に対して各ボルト28の他方を中心に回動可能となる。
【0027】
なお、スリット33cの基端部にも前記ストッパ部材27が回動可能に支持され、このストッパ部材27を水平枠25の長手方向と略直交する状態(図4に示す状態)に配置することで、第二垂直枠22の各係止板24b,24cの前記長手方向での抜け止めがなされ、ストッパ部材27を水平枠25の長手方向と略平行な状態に配置することで、第二垂直枠22の各係止板24b,24cの前記長手方向での着脱が可能となる。
【0028】
可動枠35は、固定枠31と同様の既存の足場材(丸鋼管)からなる可動側枠部材36と、その両側にそれぞれ溶接固定される例えば鍛造製の可動側内外末端部材37,38とを有する。なお、可動側内末端部材37は水平枠25の長手方向内側、可動側外末端部材38は水平枠25の長手方向外側にある。
【0029】
可動側外末端部材38は、固定側外末端部材34と同様の構成であり、可動側枠部材36の外端部内に挿入される円柱状の挿入部38aと、その外側端に突設される一対のストッパ支持片38bとを一体に有する。各ストッパ支持片38b間にも前記ストッパ部材27が回動可能に支持され、このストッパ部材27を水平枠25の長手方向と略直交する状態(図4に示す状態)に配置することで、第三垂直枠23の各係止板24b,24cの前記長手方向での抜け止めがなされ、ストッパ部材27を水平枠25の長手方向と略平行な状態に配置することで、第三垂直枠23の各係止板24b,24cの前記長手方向での着脱が可能となる。
【0030】
可動側内末端部材37は、可動側枠部材36の内端部内に挿入される円柱状の挿入部37aと、その外側端から可動側枠部材36と同一外径をなすように延出する連結被支持部37bとを一体に有する。連結被支持部37bは、可動枠35の長手方向及び径方向に平行な板状をなし、この連結被支持部37bが固定枠31の固定側内末端部材33の連結支持部33b内に挟み込まれる。これら連結支持部33b及び連結被支持部37bにより、固定枠31と可動枠35とを回動可能に連結する回動連結部39が構成される。
【0031】
なお、連結被支持部37bの先端側の厚さは基端側の厚さよりも薄く、この連結被支持部37bの先端側及び基端側をそれぞれ各ボルト28が貫通する。この連結被支持部37bに対応するように、連結支持部33bのスリット33cの先端側の幅は基端側の幅よりも狭くされる。各ボルト28は壁部と平行かつ水平に配置されている。
【0032】
水平枠25は、第三垂直枠23側から炉壁2側に向けて炉壁2と直交するように配置され、この水平枠25が炉壁2に近接するまで延びることで、足場板26を炉壁2近傍まで配置可能となり、炉壁2の切断等の作業がし易くなる。
【0033】
一方、前記切断等の作業後には、第三垂直枠23を除去すると共に可動枠35を固定枠31に対して例えば上方にスイングさせることで、固定枠31及び第二垂直枠22と炉壁2との間の領域から足場構成部材が比較的容易に除去され、各移動手段4,5の配置スペース及びこれらを用いたワークの移動スペースが確保される。
【0034】
なお、図3では可動枠35に固定した足場板26を可動枠35と共に回動させており、足場構成部材の除去をより容易にしている。また、水平枠25及び足場板26の除去のみで第三垂直枠23を設置したままにしておくことも可能である。
【0035】
以上説明したように、上記実施形態における仮設足場構造は、圧力容器1の炉内で炉壁2に沿うように架設される仮設足場(吊り足場20)の構造において、容器内側から炉壁2側に向けて延びると共に足場板26を支持する水平枠25を有し、前記水平枠25の容器内側の部位が、垂直枠21,22に固定的に支持される固定枠31とされ、前記水平枠25の炉壁2側の部位が、前記固定枠31の端部に回動連結部39を介して連結される可動枠35とされるものである。
【0036】
この構成によれば、可動枠35を固定枠31と共に水平に配置して水平枠25を炉壁2近傍まで延ばすことで、炉壁2に対する切断等の作業を容易にすると共に、前記作業後には可動枠35を回動させて固定枠31と炉壁2との間に空間を形成することで、炉壁2の切断片2aと新規パネル2bとを交換するためのウインチ4cやチェーンブロック5c等の移動手段4,5の配置スペースが確保されると共に、前記切断片2aと新規パネル2bとを吊り替えるための作業ペースも確保される。このため、炉壁2交換時における足場板26の取り外しやその復旧にかかる時間を短縮でき、炉壁2交換作業の工数削減を図ることができる。
【0037】
また、上記仮設足場構造において、前記可動枠35に足場板26が固定されてこれらが一体的に回動することで、炉壁2近傍にスペースを確保するための工数をさらに削減できる。
さらに、上記仮設足場構造が吊り足場20に適用されることで、足場板26の着脱を容易にしたことによる安全性向上にも貢献できる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、吊り足場20に限らず接地型の仮設足場に適用してもよい等、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 圧力容器
2 炉壁
20 吊り足場(仮設足場)
21,22 垂直枠
25 水平枠
26 足場板
31 固定枠
35 可動枠
39 回動連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の炉内で炉壁に沿うように架設される仮設足場の構造において、
容器内側から炉壁側に向けて延びると共に足場板を支持する水平枠を有し、
前記水平枠の容器内側の部位が、垂直枠に固定的に支持される固定枠とされ、
前記水平枠の炉壁側の部位が、前記固定枠の端部に回動連結部を介して連結される可動枠とされることを特徴とする仮設足場構造。
【請求項2】
前記可動枠に足場板が固定されてこれらが一体的に回動することを特徴とする請求項1に記載の仮設足場構造。
【請求項3】
当該構造が吊り足場に適用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設足場構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149419(P2012−149419A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7896(P2011−7896)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(592009281)IHIプラント建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】