説明

炎症標的化粒子

少なくとも1つの活性薬剤、例えばイメージングまたは治療剤を含むオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子であって、正の表面電荷を有し、その表面に、標的化リガンド、例えば抗体、ペプチドまたはアプタマーを含まない前記粒子は、炎症、例えばサイトカイン刺激による炎症と関連する健康状態を治療および/またはモニターするのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究に関する陳述
本発明の基礎をなす研究の一部は、グラント番号W81XWH-07-1-0596およびDoD TATRC W81XWH-07-2-0101の下で、フェデラルファンドによる支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本開示は、一般に治療剤またはイメージング剤などの活性薬剤の送達用ビヒクルに関し、特に、炎症を標的化することができるミクロまたはナノ粒子に関する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態によれば、炎症と関連する健康状態を治療またはモニターする方法は、少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性(opsonizable)ミクロまたはナノ粒子を含む組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含み、ここでミクロまたはナノ粒子の表面は、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない。
【0004】
他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含み、ここでミクロまたはナノ粒子の表面は、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない。さらに他の実施形態によれば、被験者における炎症を起こした細胞を標的化する方法は、少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含む組成物を被験者に投与することを含み、ここでミクロまたはナノ粒子の表面は、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1A〜Dは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびJ774マクロファージ細による、酸化されたシリコン粒子、APTESシリコン粒子またはPEG化シリコン粒子の取り込みに関する。図1Aは、HUVECによる、3.2μmシリコン粒子の無血清内在化の走査型電子顕微鏡写真である。左の画像の解像度バーは5μmを示し、右の画像の解像度バーは2μmを示す。図1Bは、37℃で1時間のインキュベーション後の、無血清粒子とオプソニン化された粒子との間のHUVECによる内在化の比較を示す図である。図1Cは、血清オプソニン化(100%血清で60分間、4℃)の前後の、3.2μmミクロ粒子の静電ポテンシャル(ゼータ電位)を示す表である。図1Dは、37℃で1時間のインキュベーション後の、774マクロファージによる1.6μm粒子の取り込みに対する血清の影響(*p<0.03)を示す図である。図1Bおよび1DにおけるY軸は、粒子を有する細胞(強い側方散乱を示す細胞)の百分率を示す。
【図2】図2A〜Cは、HUVEC細胞およびJ774マクロファージ細胞による、IgGでオプソニン化されたシリコン粒子の取り込みに関する。図2Aは、37℃で1時間のインキュベーション後の、無血清に対する、IgGでオプソニン化された、3.2μmの酸化されたミクロ粒子のHUVECによる取り込みのフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。図2Bは、37℃で1時間のインキュベーション後の、無血清に対する、IgGでオプソニン化された、3.2μmの酸化されたミクロ粒子のJ774細胞による取り込みのフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。図2Cは、フローサイトメトリー分析により測定された、FCγRの定量的表面発現を示す図である。
【図3】図3A〜Dは、サイトカイン刺激されたHUVEC細胞およびJ774マクロファージ細胞によるシリコン粒子の取り込みに関する。図3Aは、対照HUVEC細胞とサイトカイン刺激されたHUVEC細胞との間の、酸化された3.2μmシリコン粒子、APTES3.2μmシリコン粒子およびPEG化3.2μmシリコン粒子の取り込みを比較する図である。図3Bは、対照J774細胞とサイトカイン刺激されたJ774細胞との間の、酸化された3.2μmシリコン粒子、APTES3.2μmシリコン粒子およびPEG化3.2μmシリコン粒子の取り込みを比較する図である。図3Cは、HUVECによる3.2μmシリコン粒子の取り込み(37℃で30分間インキュベーション)の走査型電子顕微鏡写真である。図3Dは、J774細胞による3.2μmシリコン粒子の取り込み(37℃で30分間インキュベーション)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4A〜Cは、HUVEC(無血清)による酸化されたシリコン粒子の内在化に関する。図4Aは、37℃で15分間、30分間または60分間、1.6μm、3.2μmのいずれかまたは両方のサイズの酸化されたシリコン粒子でのインキュベーション後にシリコンチップ上に増殖したHUVECの走査型電子顕微鏡写真である。図4Bは、37℃で15分間および120分間、3.2μm酸化されたシリコンミクロ粒子と共にインキュベートした、Alexa Fluor 555 Phalloidinを用いてアクチン染色したHUVECの共焦点顕微鏡写真である。図4Cは、60分間または120分間のいずれかにおける粒子位置を示すために中央部にトリミングした共焦点投影画像である。
【図5】図5A〜Cは、HUVEC(無血清)による、酸化されたシリコン粒子およびFITCデキストランの初期の取り込みに関する。図5Aは、37℃で15分間のインキュベーション後の、1.6μmシリコン粒子のHUVEC取り込みを示す透過型電子顕微鏡写真である。図5Bは、37℃で15分間のインキュベーション後の、3.2μmシリコン粒子のHUVEC取り込みを示す透過型電子顕微鏡写真である。図5Cは、無粒子(ソリッドグリーンピーク、左から2番目)、1.6μmシリコン粒子(レッドオープンピーク、右のピーク)または3.2μmシリコン粒子(パープルオープンピーク、右から2番目)で1時間インキュベートしたHUVECによるFITCデキストラン内在化のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。ソリッドブルーピーク(左のピーク)は、FITCデキストランを含まない培地でインキュベートしたHUVECを示す。図5Cにおいて、x軸は、内在化されたFITCデキストランによる蛍光を示し、y軸はカウント数(高さは、細胞数に依存する)を示す。
【図6】図6A〜Bは、2時間目における内在化された粒子の細胞内位置を示す。図6Aは、より小さい1.6μm粒子が、細胞の核周囲領域に位置することを示している。粒子の一部の周囲に膜が認められる。図6Bは、より大きな3.2μm粒子がより散在しており、みかけの膜を欠いていることを示している。このことは、エンドソーム脱出を示している可能性がある。図6Aおよび6Bにおける主画像の解像度スケールバーは10ミクロンであり、挿入画像では500nmである。
【0006】
発明の詳細な説明
関連出願
以下の研究論文および特許文献(それらの全体が参照により本願に組み込まれる)は、本発明を理解する上で役立つことができる:
1)国際公開番号WO2007/120248(国際公開日:2007年10月25日);
2)国際公開番号WO2008/041970(国際公開日:2008年4月10日);
3)国際公開番号WO2008/021908(国際公開日:2008年2月21日);
4)米国特許出願公開第2008/0102030号(特許出願公開日:2008年5月1日);
5)米国特許出願公開第2003/0114366号(特許出願公開日:2003年6月19日);
6)米国特許出願公開第2008/0206344号(特許出願公開日:2008年8月28日);
7)米国特許出願公開第2008/0280140号(特許出願公開日:2008年11月13日);
8) Tasciotti E. et al, 2008 Nature Nanotechnology 3, 151 - 157。
【0007】
定義
特記しない限り、"ある(a)"または"ある(an)"は1以上を意味する。
【0008】
"ミクロ粒子"は、1ミクロン〜1000ミクロンまたは1ミクロン〜100ミクロンの最大特性サイズを有する粒子を意味する。"ナノ粒子"は、1ミクロン未満の最大特性サイズを有する粒子を意味する。
【0009】
"オプソニン"は、粒子に結合したとき、その粒子の食作用を受けやすくするタンパク質である。
"ジスオプソニン(Dysopsonin)"は、粒子に結合したとき、その粒子の食作用を受けにくくするタンパク質である。
【0010】
"オプソニン化性"は、血液または、血清などの血液成分に暴露されたときオプソニン化されることができる粒子、すなわち血液またはその成分からの1以上のタンパク質に結合することができる粒子のことを言う。好ましくは、血液または血液成分に暴露されるとき、オプソニン化性粒子は1以上のオプソニンと結合し、ジスオプソニンとは結合しない。
【0011】
"ナノ多孔質の"または"ナノ孔"は、平均サイズが1ミクロン未満の孔のことを言う・
"生体内分解性"は、生理的媒体中で溶解もしくは分解しうる材料または、生理的条件下で生理的酵素および/または化学的条件によって分解しうる生体適合性高分子材料のことを言う。
【0012】
"生体適合性"は、生細胞に暴露されるとき、細胞の生存周期における変化、細胞の増殖率の変化および細胞毒性などの細胞における望ましくない結果を引き起こすことなく、細胞の適切な細胞活性を維持する材料のことを言う。
開示
正の表面電荷を有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子は、その粒子がタンパク質と選択的に結合することができ、それにより、オプソニン化された後、その粒子が、被験者の体内で炎症を起こした細胞を特異的に標的化することを可能にすることができるという方式で、血液または、血清などの血液成分中でオプソニン化されることができるということを本発明者らは見出した。好ましくは、オプソニン化の前に、正に荷電したオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子は、その表面に配置された、抗体、ペプチドおよび/またはアプタマーなどの標的化リガンドを含まない。
【0013】
オプソニン化された後、正に荷電したオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子は、オプソニン化の前に負の表面電荷を有するかまたは表面電荷を有さないこと以外の点では等しいミクロまたはナノ粒子と比較して、マクロファージなどの免疫細胞による取り込みを低下させることもできる。この文脈において、取り込みの低下は、オプソニン化された正に荷電した粒子が、負電荷を持つかまたは中性のオプソニン化された粒子よりも、免疫細胞により内在化されるのにより長時間かかりうることを意味しうる。その結果として、炎症を起こした細胞を標的化するとき、オプソニン化された正に荷電した粒子は、被験者の体内で免疫細胞による取り込みを逃れることができる。
【0014】
好ましくは、オプソニン化の前に、オプソニン化性粒子の表面は、ポリエチレングリコール(PEG)または他の親水性鎖によって形成されるコーティングなどの抗オプソニン化コーティングを含まない。PEG化として知られる親水性鎖を有するコーティング粒子は、マクロファージによる粒子の迅速な内在化を減弱または抑制することができるが、同時に、PEG化は多くの場合、粒子が標的細胞(単数または複数)に結合するのを抑制する可能性がある。多くの実施形態において、オプソニン化性粒子の表面は、オプソニン化の前には、アルブミンを含まない。多くの実施形態において、オプソニン化性粒子の表面は、オプソニン化の前には、オプソニンを含まない。多くの実施形態において、オプソニン化性粒子の表面は、オプソニン化の前には、タンパク質を含まない。
【0015】
正に荷電したオプソニン化性粒子は、被験者の体内で炎症を起こした細胞を特異的に標的化することによって、血液系を有する動物などの被験者におけるサイトカイン刺激による炎症などの炎症と関連する健康状態を治療、予防および/またはモニターするために使用することができる。多くの実施形態において、被験者はヒトなどの哺乳動物であることができる。
【0016】
正に荷電したオプソニン化性粒子は、炎症を起こした血管を特異的に標的化するために使用することができ、それによって炎症と関連する健康状態または疾患を治療、予防および/またはモニターするために使用することができる、
このような健康状態の例は、限定するものではないが、アレルギー、喘息、アルツハイマー病、糖尿病、ホルモン不均衡、自己免疫疾患、例えば関節リウマチおよび乾癬、変形性関節症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患を含む)、血管炎、慢性炎症性状態、例えば肥満、潰瘍、例えばマルジョラン潰瘍、たばこの煙またはアスベストによって引き起こされる気道炎、包皮炎、ウイルス、例えばヒト乳頭腫ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはエプスタイン・バーウイルスなどによって引き起こされる炎症、住血吸虫症、骨盤内炎症性疾患、上皮性卵巣炎、バレット化生、ヘリコバクター・ピロリ胃炎、慢性膵炎、肝吸虫の侵入、慢性胆嚢炎ならびに炎症性腸疾患;前立腺癌、結腸癌、乳癌を含む炎症に関連した癌;消化管癌、例えば胃癌、肝細胞癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、上咽頭癌、食道癌、胆管癌、胆嚢癌および肛門性器癌;外皮癌、例えば皮膚癌;気道癌、例えば気管支癌および中皮腫;泌尿生殖路癌、例えば包茎、陰茎癌および膀胱癌;生殖器系癌、例えば卵巣癌を含む。
【0017】
特に、正に荷電したオプソニン化性粒子は、癌をもたらしうる炎症性状態と関連する炎症を起こした細胞を特異的に標的化することによって特定のタイプを予防するために使用することができる。例えば、マルジョラン潰瘍によって引き起こされる炎症を標的化することによって、正に荷電したオプソニン化性粒子は皮膚癌を予防することができ;アスベスト、シリカまたは喫煙によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は気管支癌を予防することができ;包皮炎を標的化することによって、該粒子は包茎を予防することができ;ヒト乳頭腫ウイルスによって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は陰茎癌および/または肛門性器癌を予防することができ;住血吸虫症によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は膀胱癌を予防することができ;骨盤内炎症性疾患または上皮性卵巣炎によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は卵巣癌を予防することができ;エプスタイン・バーウイルスによって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は上咽頭癌を予防することができ;バレット化生によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は食道癌を予防することができ;ヘリコバクター・ピロリ胃炎によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は胃癌を予防することができ;慢性膵炎によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は膵臓癌を予防することができ;肝吸虫の侵入によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は胆管癌を予防することができ;慢性胆嚢炎によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は胆嚢癌を予防することができ;B型肝炎またはC型肝炎によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は肝細胞癌を予防することができ;炎症性腸疾患によって引き起こされる炎症を標的化することによって、該粒子は大腸癌を予防することができる。
【0018】
炎症と関連する健康状態および疾患は、以下の引用文献に開示されている: 1) M. Macarthur et al. Am. J. Physiol Gastrointest Livel Physiol. 286" G515-520, 2004; 2) Calogero et al. Breast Cancer Research, v. 9(4), 2007; Wienberg et al. J. Clin. Invest, 112: 1796-1808, 2003; Xu et. al. J. Clin Invest, 1 12:1821-1830, 2003。正に荷電したオプソニン化性粒子は、米国特許出願番号US2008280140および国際公開番号WO2008021908に開示されている多段階ドラッグデリバリーシステムの一部として使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、正に荷電したオプソニン化性粒子は、活性薬剤を含むことができる少なくとも1つの第2段階粒子を含有することができる。
粒子
オプソニン化性粒子は、種々の形状およびサイズを有しうる。
【0019】
オプソニン化性粒子の寸法は特に限定されず、用途に左右される。例えば、血管内投与のためには、粒子の最大特性サイズは、被験者における最も細い毛細血管の半径(ヒトでは約4〜5ミクロンである)よりも小さいものであることができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、粒子の最大特性サイズは、約100ミクロン未満または約50ミクロン未満または約20ミクロン未満または約10ミクロン未満または約5ミクロン未満または約4ミクロン未満または約3ミクロン未満または約2ミクロン未満または約1ミクロン未満であることができる。さらにいくつかの実施形態において、粒子の最大特性サイズは、100nm〜3ミクロンまたは200nm〜3ミクロンまたは500nm〜3ミクロンまたは700nm〜2ミクロンであることができる。
【0021】
さらにいくつかの実施形態において、粒子の最大特性サイズは、約2ミクロン、約5ミクロンまたは約10ミクロンを超えることができる。粒子の形状は特に限定されない。いくつかの実施形態において、粒子は球形粒子であることができる。さらにいくつかの実施形態において、粒子は非球形粒子であることができる。いくつかの実施形態において、粒子は対称形状を有することができる。さらにいくつかの実施形態において、粒子は非対称形状を有することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、粒子は、炎症を起こした血管の内皮表面などの標的部位の表面と粒子との間の接触を容易にするように構成された、選択された非球形形状を有することができる。適切な形状の例は、限定するものではないが、扁球、平円盤または円柱を含む。いくつかの実施形態において、粒子は、その外表面の一部のみが、内皮表面などの標的部位の表面と粒子との間の接触を容易にするように構成されるように形状が限定され、外表面の残りの部分はそうではないものであることができる。例えば、粒子は短縮型扁球粒子であることができる。
【0023】
標的部位の表面と粒子との間の接触を容易にすることができる粒子の寸法および形状は、米国特許出願公開第2008/0206344号および米国特許出願第12/181,759号(出願日:2008年7月29日)に開示されている方法を用いて評価できる。多くの実施形態において、オプソニン化性粒子は多孔質粒子、すなわち、多孔質材料を含む粒子であることができる。多孔質材料は、多孔質酸化物材料または多孔質蝕刻材料であることができる。多孔質酸化物材料の例は、限定するものではないが、多孔質酸化ケイ素、多孔質酸化アルミニウム、多孔質酸化チタン多孔質酸化鉄を含む。用語"多孔質蝕刻材料"は、電気化学エッチングなどの湿式エッチング技術によって孔が導入された材料のことを言う。多孔質蝕刻材料の例は、多孔質シリコン、多孔質ゲルマニウム、多孔質GaAs、多孔質InP、多孔質SiC、多孔質SixGe1-x、多孔質Gap、多孔質GaNなどの多孔質半導体材料を含む。多孔質蝕刻粒子の製造方法は、例えば、米国特許出願公開第2008/0280140号に開示されている。
【0024】
多くの実施形態において、多孔質粒子はナノ多孔質粒子であることができる。
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の平均孔径は、約1nm〜約1ミクロンまたは約1nm〜約800nmまたは約1nm〜約500nmまたは約1nm〜約300nmまたは約1nm〜約200nmまたは約2nm〜約100nmであることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の平均孔径は、1ミクロン以下または800nm以下または500nm以上または300nm以上または200nm以下または100nm以下または80nm以下または50nm以下であることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の平均孔径は、約5〜約100nmまたは約10〜約60nmまたは約20〜約40nmまたは約30nm〜約30nmであることができる。
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の平均孔径は、約1nm〜約10nmまたは約3nm〜約10nmまたは約3nm〜約7nmであることができる。
【0027】
一般に、孔径は、N2吸着/脱離および、走査型電子顕微鏡法などの顕微鏡検査を含むいくつかの技術を用いて測定できる。
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の孔は線状の孔であることができる。さらにいくつかの実施形態において、多孔質粒子の孔は、スポンジ状の孔であることができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、多孔質粒子の少なくとも1つは生体内分解性領域を含むことができる。多くの実施形態において、粒子はすべて生体内分解性であることができる。
【0029】
一般に、多孔質シリコンは、その多孔性および孔径に応じて、生体不活性、生体活性または生体内分解性であることができる。同様に、多孔質シリコンの生体内分解率または速度は、その多孔性および孔径によって左右されることができる。例えば、Canham, Biomedical Applications of Silicon, in Canham LT, editor. Properties of porous silicon. EMIS datareview series No. 18. London: INSPEC. p. 371-376. を参照のこと。生体内分解率はまた、表面修飾に左右されることもできる。
【0030】
多孔質シリコン粒子およびその加工方法は、例えば、Cohen M. H. et al Biomedical Microdevices 5:3, 253-259, 2003;米国特許出願公開第2003/0114366号;米国特許第6,107,102号および第6,355,270号;米国特許出願公開第2008/0280140号;国際公開番号WO2008/021908; Foraker, A.B. et al. Pharma. Res. 20 (1), 1 10-116 (2003); Salonen, J. et al. Jour. Contr. ReI. 108, 362-374 (2005) に開示されている。多孔質酸化ケイ素粒子およびその加工方法は、例えば、Paik J.A. et al. J. Mater. Res., VoI 17, Aug 2002, p. 2121 に開示されている。
【0031】
オプソニン化性粒子は、多くの技術を用いて製造できる。
いくつかの実施形態において、オプソニン化性粒子は、トップダウンの加工粒子、すなわち、トップダウンのミクロ加工技術またはナノ加工技術、例えばフォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、X線リソグラフィー、遠紫外線リソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィーまたはディップペン・ナノリソグラフィーを用いて製造される粒子であることができる。これらの加工方法によって、均一な、または実質的に寸法が同一の粒子の大規模な製造を可能にすることができる。
活性薬剤
活性薬剤は、治療剤、イメージング剤またはそれらの組み合わせであることができる。活性薬剤は、それを含有する粒子から放出されることができる薬剤であることができる。活性薬剤の選択は用途に左右される。
治療剤
治療剤は、哺乳動物またはヒトなどの動物の標的部位において所望の生物学的作用を生じさせることができる任意の生理活性または薬理活性物質であることができる。治療剤は、限定するものではないが、ペプチド、タンパク質、核酸および小分子を含む任意の無機または有機化合物であることができ、それらはすべて、解析されたものであることも、そうでないこともできる。治療剤は、種々の形態であることができ、例えば未変化分子、分子複合体、薬理学的に許容される塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、サリチル酸塩など)であることができる。酸性の治療剤に関しては、金属、アミンまたは有機カチオン(例えば、第四級アンモニウム)の塩を使用することができる。
【0032】
薬物の誘導体、例えば塩基、エステルおよびアミドもまた治療剤として使用することができる。水不溶性治療剤は、その水可溶性誘導体またはその塩基誘導体の形で使用することができ、そのいずれの場合も、あるいはその送達によって、酵素によって変換されるか、体内pHによって加水分解されるか、または他の代謝過程によってもとの治療活性体に変換される。
【0033】
治療剤は、化学療法剤、免疫抑制剤、サイトカイン、細胞毒、核酸分解化合物、放射性同位体、受容体およびプロドラッグ活性化酵素であることができ、それらは、天然に存在するものであることもできるし、あるいは合成法もしくは組換え法またはそれらの任意の組み合わせによって製造されるものであることもできる。
【0034】
ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチンおよびビンクリスチン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンおよびダウノルビシン)、RNA転写阻害薬(例えば、アクチノマイシンD)ならびに微小管安定化薬(例えば、パクリタキセル)などの、古典的多剤耐性によって影響を受ける薬物は、治療剤として特に有用性を有することができる。
【0035】
癌化学療法剤は、好ましい治療剤であることができる。有用な癌化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン、アルカンスルホナート、テトラジン、白金化合物、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、代謝拮抗剤、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン系薬剤、ビンカアルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬およびホルモン剤を含む。典型的な化学療法剤は、アクチノマイシンD、アルケラン、Ara-C、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、BiCNU、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルボプラチナム、カルムスチン、CCNU、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、CPT-11、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、サイトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エチレンイミン、エトポシド、フロックスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォテムスチン、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヘキサメチルアミン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ステロイド、ストレプトゾシン、STI-571、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テトラジン、チオグアニン、チオテパ、トミュデックス、トポテカン、トレオスルファン、トリメトレキセート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16およびゼローダである。
【0036】
有用な癌化学療法剤はまた、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド;アルキルスルホン酸塩、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパ;エチレンイミンおよびおよびメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミンを含む);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビエヒン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチェアミシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモイニシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダムビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ぺプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチンおよびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリンおよびトリメトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリンおよびチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロックスウリジンおよび5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、ルネピチオスタンおよびテストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタンおよびトリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKR;ラゾキサン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド("Ara-C");シクロホスファミド;チオテパ;タクソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol Myers Squibb Oncology社、ニュージャージー州プリンストン)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer社、フランス・アントニー);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記ののいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。腫瘍へのホルモン作用を調節または抑制するように働く抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプロストンおよびトレミフェン(Fareston)を含む);抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体もまた含まれる。
【0037】
サイトカインもまた治療剤として使用することができる。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカインおよび旧来のポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるものには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH);肝細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF-β;血小板由来成長因子;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF-αおよびTGF-β;インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-βおよび-γ、コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM-CSF);および顆粒球CSF(GCSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15;腫瘍壊死因子、例えばTNF-αまたはTNF-β;ならびに他のポリペプチド因子(LIFおよびキットリガンド(KL)を含む)がある。本明細書において、用語サイトカインは、自然源または組換え細胞培養物からのタンパク質および天然配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗体ベースの治療剤、例えばハーセプチンであることができる。
いくつかの実施形態において、治療剤はナノ粒子であることができる。例えば、いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、熱アブレーションまたは温熱療法に使用することができるナノ粒子であることができる。このようなナノ粒子の例は、鉄および金ナノ粒子を含む。
イメージング剤
イメージング剤は、動物、例えば哺乳動物またはヒトの体内の標的部位に関するイメージング情報を提供できる任意の物質であることができる。核磁気共鳴イメージング(MRI)のためのイメージング剤は、磁性材料、例えば酸化鉄またはガドリニウム含有化合物を含むことができる。光イメージングのためには、活性薬剤は、例えば、半導体ナノ結晶または量子ドットであることができる。光干渉断層撮影のためには、イメージング剤は、金属、例えば金または銀のナノケージ粒子であることができる。イメージング剤はまた、超音波造影剤、例えばミクロまたはナノバブルまたは酸化鉄ミクロまたはナノ粒子であることもできる。
投与
生理的状態、例えば疾患を治療、予防および/またはモニターするために、複数の粒子を含む組成物の一部として、被験者、例えばヒトに適切な投与方法でオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子(単数または複数)を投与することができる。
【0039】
投与によって、被験者の血液中で粒子がオプソニン化されることができるという方式でオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子(単数または複数)が投与される。
特定の用途のために用いる特定の方法は、担当医が決めることができる。一般的には、本組成物は、以下の経路の1つによって投与することができる:局所、非経口、吸入/経肺、経口、膣内および直腸内。
【0040】
本粒子は、腫瘍学的応用、すなわち、癌または健康状態、例えば癌と関連する腫瘍の治療および/またはモニターに特に有用であることができる。
治療的投与の大部分は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)および皮下(s.c.)注射を含む何らかのタイプの非経口投与を含むことができる。
【0041】
粒子の投与は、全身または局所であることができる。上記の非-非経口的投与例は、局所投与の例である。血管内投与は、局所または全身性のいずれかであることができる。局所血管内送達は、ガイドカテーテルシステム、例えばCTスキャンガイドカテーテルの使用によって既知の部位の近傍に治療物質を添加するために使用することができる。一般的な注射、例えばボーラス静注または持続/点滴静注は、一般的には全身性である。
【0042】
好ましくは、オプソニン化性粒子を含む組成物は、静注、管腔内投与または腫瘍内経路によって投与される。
オプソニン化性粒子は、複数の粒子を含む懸濁液として製剤化できる。好ましくは、粒子は、その寸法および含有量は均一である。懸濁液を調製するために、任意の適切な水性担体ビヒクルに前述の粒子を懸濁させることができる。適切な医薬担体は、用いられる投与量および濃度ではレシピエントに無毒であり、製剤中の他の成分と適合する。ミクロ加工粒子の懸濁液の調製法は、例えば、米国特許出願公開第20030114366号に開示されている。
【0043】
本明細書記載の実施形態は、限定するものではないが、以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0044】
ナノ多孔質半球状シリコンミクロ粒子は、Microelectronics Research Center(テキサス大学オースチン校)において設計し、操作し、加工した。平均径1.6±0.2μmと3.2±0.2μmとを有し、孔径5〜10nmまたは30〜40nmを有する2つのサイズのミクロ粒子を作成した(多孔性は、異なる用途によって変えることができる)。処理の詳細は、Tasciotti E. et al, 2008 Nature Nano Technologies 3, 151 - 157 に開示されている。
【0045】
簡潔に言えば、抵抗率0.005Ω・cmを有する高ドープp++型(100)シリコンウェハー(Silicon Quest社、カリフォルニア州サンタクララ)をシリコン源として用いた。低圧化学蒸着(LPCVD)システムを用いて100nmの低応力窒化ケイ素層を蒸着させた。標準的なフォトリソグラフィーにより、コンタクトアライナ(EVG620アライナ)およびAZ5209フォトレジストを用いてウェハー上でミクロ粒子をパターニングした。粒子パターン上の窒化物を、反応性イオンエッチング(RIE)に基づき、CF4によって選択的に除去した。フォトレジストをピラニア溶液中に挿入した後、2段階の電気化学エッチングのためにウェハーを手製のテフロンセル中に入れた。第1に、フッ化水素酸(HF)とエタノールとの混合物(1:1(v/v))中で、3.2μmの粒子には105秒間、1.6μmの粒子には40秒間、それぞれ電流密度6mA/cm2を加えてウェハーを蝕刻した。次いで、HFとエタノールとの2:5(v/v)混合物中で電流密度を320mA/cm2に変えることによって多孔性剥離層を形成させた。最後に、エッチング後、窒化物層をHFで除去し、イソプロピルアルコール(IPA)中で1分間超音波処理することによってミクロ粒子を剥離させた。多孔質シリコンミクロ粒子を含有するIPA溶液を採取し、4℃で保存した。ミクロ粒子の形態は、SEMによって検査した。
シリコンミクロ粒子の酸化
イソプロピルアルコール(IPA)中のシリコンミクロ粒子を、ホットプレート(110℃)上に置いたガラスビーカー中で乾燥した。次いで、乾燥したミクロ粒子をピラニア溶液(1倍量のH2O2および2倍量のH2SO4)で処理した。ミクロ粒子を分散させるために時々超音波処理を行いながら、この懸濁液を110〜120℃で2時間加熱した。次いで、この懸濁液のpHがおよそ5.5〜6になるまで、脱イオン(DI)水でこの懸濁液を洗浄した。
APTESによるシリコンミクロ粒子の表面の修飾
酸化されたミクロ粒子をIPA中で3〜4回洗浄した。次いで、APTES(Sigma社)を0.5%(v/v)含有するIPA中に室温で2時間これを懸濁した。APTESによって修飾されたミクロ粒子を洗浄し、IPA中に保存した。ゼータ電位の測定と、アミン密度の比色分析によってAPTES修飾を評価した。後者は、ゼータ電位測定値と相関することが見いだされた。
PEG結合
APTES修飾ミクロ粒子と10mM mPEG-SCM-5000(メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルカルボキシメチル;Laysan Bio社から購入した)とを、アセトニトリル中、1.5時間反応させた。次いで、蒸留水でミクロ粒子を4〜6回洗浄して、未反応のmPEGを全て除去した。ゼータ電位測定値を用いて、表面コーティングが十分であることを示した。
【0046】
1.6μmと3.2μmのシリコンミクロ粒子をピラニア溶液[30:70(v/v);H2O2:H2SO4]で酸化して、負電荷を持つ、水酸化ミクロ粒子を作製した。次いで、酸化されたミクロ粒子を3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)で表面修飾し、これにより正に荷電した、アミン修飾ミクロ粒子を得た。比較のために、APTES修飾ミクロ粒子を、さらにPEGと結合させた。
【0047】
全部で、以下の3つのタイプのシリコンミクロ粒子を比較した:1)負電荷を持つ水酸化ミクロ粒子;2)正に荷電したアミノ修飾ミクロ粒子;3)PEG化ミクロ粒子。
血管内皮モデルとして知られているヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Klein et al., Pathobiology, 1994, 62, 199-208 を参照のこと)を用いて、ミクロ粒子とのインキュベーション後の細胞の電子顕微鏡(SEM)画像を撮像した。HUVECはLonza Walkersville社(メリーランド州ウォーカーズビル)から購入し、EBMR-2培地(Clonetics(登録商標)、CC-3156)中で培養した。加湿5%CO2雰囲気下、37℃で細胞を維持した。Plasma Sciences CrC-150スパッタリング装置(Torr International社)を用いて、10nmの金の層でHUVEC試料をスパッターコーティングした。ETD(SE)検出器を備えたFEI Quanta 400 FEG ESEMを用いて、高真空下、20.00kV、スポットサイズ3.0〜5.0でSEM画像を得た。
【0048】
37℃で1時間後、正および負のミクロ粒子は、共に、無血清培地中でHUVECによって内在化された(図IA)。正および負のミクロ粒子は、共に無血清培地中でHUVECによって内在化されるが、驚くべきことに、血清オプソニン化は、負の(酸化された)ミクロ粒子の取り込みを抑制するのに対し、正に荷電したアミノ修飾粒子には明確には影響を及ぼさなかった。
【0049】
オプソニン化のために、氷上で100%血清中に粒子を1時間懸濁化した。実験での血清には、Clonetics(登録商標)のウシ胎児血清を用いた。PEGでのシリコンミクロ粒子の表面修飾により、HUVECによるミクロ粒子の内在化が抑制された(図IB)。図1Bにおいて、y軸は内在化された粒子の百分率である。図1Bにおける内在化実験は、37℃で1時間行った。各実験において、粒子に対する細胞の比率は、20粒子当たり1細胞であった。
【0050】
炎症性サイトカインによる内皮細胞の活性化により、細胞表面受容体の発現を変化させることができ、従って、粒子への結合を変化させることができる。 Klein et al., Pathobiology, 1994, 62, 199-208 を参照のこと。内皮細胞(HUVEC)をサイトカイン[TNF-α(10ng/ml)およびIFN-γ(100U/ml)(共にInvitrogen社から入手した)]で48時間刺激した。続いて、粒子の血清オプソニン化後に、負の(酸化された)または正の[アミン(APTES)修飾]粒子のいずれかのシリコン粒子を、刺激されたHUVECと共にインキュベートした。TNF-αおよびIFN-γへの暴露後に、ミクロ粒子のすべての群について、HUVECによる血清オプソニン化されたシリコンミクロ粒子の内在化の亢進が見られた。しかしながら、オプソニン化された正のミクロ粒子についての明確な選択性の存在が持続していた。図3Aを参照されたい。内皮細胞とは対照的に、マクロファージ(J774細胞)は、選択的に血清オプソニン化された負のミクロ粒子と相互作用した。マクロファージによる、オプソニン化された負の酸化されたミクロ粒子に対するこの選択性は、サイトカインの存在下で有意に増加した(11%)(p=0.045)。図3Bを参照のこと。他方では、マクロファージによるAPTESおよびPEG修飾ミクロ粒子の取り込みは、TNF-αおよびIFN-γへの暴露に影響されなかった。
【0051】
TNF-αおよびIFN-γへ暴露されたHUVECおよびJ774細胞に関する実験は、以下のように行った。
HUVEC(1.5x105細胞/ウェル)を6ウェルプレートに播種し、24時間後、37℃で1時間、血清オプソニン化されたシリコンミクロ粒子と共に細胞をインキュベートした(20ミクロ粒子/細胞)。次いで、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理(HUVEC)または擦過(J774)によって採取し、BSA1.0%およびアジ化ナトリウム0.1%を含有するPBS(FACS洗浄用緩衝液)に再懸濁した。488nmアルゴンレーザーおよびCellQuestソフトウェアを備えたBecton Dickinson FACSCalibur Flow(Becton Dickinson社;カリフォルニア州サンノゼ)を用いて側方散乱を測定することによって、細胞とミクロ粒子との結合を測定した。ミクロ粒子を有する細胞の百分率(強い側方散乱を示す細胞のパーセント)としてデータを示す。粒子の非存在下での細胞による側方散乱を、示されたデータから差し引いた。
【0052】
J774A.1マクロファージ細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナッサス)から購入した。増殖培地には、10% FBS、100μg/ml ストレプトマイシンおよび100U/ml ペニシリン(Invitrogen社;カリフォルニア州カールスバート)を含むダルベッコ変法イーグル培地を用いた。細胞は擦過によって採取した。
【0053】
図3C〜Dは、血清の存在下でのHUVEC(C)およびJ774(D)細胞によるシリコンミクロ粒子取り込み(30分、37℃)のSEM画像である。5x7mm Silicon Chip Specimen Supports(Ted Pella社、カリフォルニア州レディング)を含む24ウェルプレートに5x104細胞/ウェルで細胞をプレーティングした。細胞が集密的になったとき、ミクロ粒子を含む培地(1:10、細胞:ミクロ粒子、0.5ml/ウェル)を添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。試料をPBSで洗浄し、2.5%グルタルアルデヒドで固定した(Sigma-Aldrich社;ミズーリ州セントルイス)。PBSで洗浄した後、漸増濃度のエタノール(30%、50%、70%、90%、95%および100%)中で各10分間、細胞を脱水した。次いで、HUVECを50%アルコール-ヘキサメチルジシラザン(Sigma社)溶液中で10分間インキュベートし、次いで5分間純粋なHMDS中でインキュベートし、次いでデシケーター中で終夜インキュベートした。導電性粘着テープ(12mm OD PELCO Tabs、Ted Pella社)を用いてSEMスタブ(Ted Pella社)上に検体を乗せた。Plasma Sciences CrC-150スパッタリング装置(Torr International社)を用いて、10nmの金の層でHUVEC試料をスパッターコーティングした。ETD(SE)検出器を備えたFEI Quanta 400 FEG ESEMを用いて、高真空下、20.00kV、スポットサイズ3.0〜5.0でSEM画像を得た。この研究は、血管の内皮細胞の標的化は、正に荷電したミクロ粒子に選択的に結合する血清オプソニンによって増強されうることを示唆している。対照的に、負電荷を持つミクロ粒子に結合する血清オプソニンは、内皮細胞による取り込みを強く抑制する。幸いに、専門の食細胞、例えばマクロファージは、負電荷を持つオプソニン化されたミクロ粒子に選択性を示した。本発明が理論によって限定されるわけではないが、負電荷を持つミクロ粒子に結合するオプソニンは、細菌およびアポトーシス細胞(共に、負の正味表面電荷を有し、好中球およびマクロファージによる取り込みの標的となりうる)を修飾しうる血清成分を反映しうることが示唆できる。例えば Fadok,V.A. et al. J. Immunol. 148, 2207 '-2216 (1992) およびDickson, J.S. & Koohmaraie, M. Appl. Environ. Microbiol. 55, 832-836 (1989) を参照のこと。指向性血清オプソニン化によるミクロ粒子取り込みの指示によって、PEG化の必要性ならびにそれに伴う標的化の障害および分解速度の変化を阻止することができる。
【0054】
内皮細胞によるミクロ粒子の内在化は、炎症性サイトカイン刺激によって亢進されることができるが、このことは、慢性炎症部位での正に荷電したミクロ粒子の優れた取り込みを支持している。従って、正の表面電荷を有する、オプソニン化されたミクロ設計された(microengineered)粒子は、炎症を起こした病状、例えば冠動脈疾患、血管炎および癌と関連する内皮を選択的に標的化することができる。
さらなる参考文献
1. Campos S. The oncologist 2003;8 Suppl 2: 10-6.
2. Lyass O, Uziely B, Ben-Yosef R, et al. Cancer 2000;89: 1037-47.
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4. Blum JL, Savin MA, Edelman G, et al. Clinical breast cancer 2007;7:850-6.
5. Gradishar WJ. Expert Opin Pharmacother 2006;7: 1041-53.
6. Iyer AK, Khaled G, Fang J, Maeda H. Drug Discov Today 2006; 11 :812-8.
7. 米国特許出願公開第20070237827号。
【0055】
以上、特定の好ましい実施形態を参照して本発明を説明したが、当然のことながら本発明はそれに限定されない。開示された実施形態に種々の修飾を行うことできることは当業者には明らかであり、このような修飾は本発明の範囲内であるものとする。本明細書に引用したすべての公報、特許出願および特許は、その全体が参照により本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含む組成物を、それを必要とする被験者に投与することを含む、炎症と関連する健康状態を治療またはモニターする方法であって、ミクロまたはナノ粒子の表面が、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない前記方法。
【請求項2】
炎症がサイトカイン刺激による炎症である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
健康状態が冠動脈疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
健康状態が血管炎である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
健康状態が癌である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
血管内投与が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
被験者がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
組成物がオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含む懸濁液である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ミクロまたはナノ粒子の表面が親水性ポリマー鎖を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ミクロまたはナノ粒子がミクロまたはナノ加工粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質粒子である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ミクロまたはナノ粒子がナノ多孔質粒子である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質シリコン粒子である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質酸化物粒子である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質酸化ケイ素粒子である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ミクロまたはナノ粒子の表面がアミノ修飾表面である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ミクロまたはナノ粒子の表面がアミノシランによってアミノ修飾される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記活性薬剤が治療剤である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記活性薬剤がイメージング剤である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記投与が前記ミクロまたはナノ粒子のオプソニン化を引き起こし、オプソニン化されたミクロまたはナノ粒子による、炎症に関連する細胞の標的化を引き起こす、請求項1記載の方法。
【請求項21】
炎症と関連する細胞が内皮細胞である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
オプソニン化されたミクロまたはナノ粒子が、被験者のマクロファージによる取り込みを逃れる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含む組成物であって、ミクロまたはナノ粒子の表面が、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない前記組成物。
【請求項24】
溶液をさらに含み、その溶液にミクロまたはナノ粒子が懸濁される、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
ミクロまたはナノ粒子の表面が親水性ポリマー鎖を含まない、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
ミクロまたはナノ粒子がミクロまたはナノ加工粒子である、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質粒子である、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
ミクロまたはナノ粒子がナノ多孔質粒子である、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質シリコン粒子である、請求項27記載の組成物。
【請求項30】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質酸化物粒子である、請求項27記載の組成物。
【請求項31】
ミクロまたはナノ粒子が多孔質酸化ケイ素粒子である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
ミクロまたはナノ粒子の表面がアミノ修飾表面である、請求項23記載の組成物。
【請求項33】
ミクロまたはナノ粒子の表面がアミノシランによって修飾される、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
前記活性薬剤が治療剤である、請求項23記載の組成物。
【請求項35】
前記活性薬剤がイメージング剤である、請求項23記載の組成物。
【請求項36】
請求項23記載の組成物を含むキット。
【請求項37】
少なくとも1つの活性薬剤を含有するオプソニン化性ミクロまたはナノ粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む、被験者における炎症を起こした細胞を標的化する方法であって、ミクロまたはナノ粒子の表面が、a)正電荷を有し、b)標的化リガンドを含まない前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513462(P2012−513462A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543481(P2011−543481)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/014001
【国際公開番号】WO2010/074675
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506140479)ボード・オブ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・テキサス・システム (5)
【Fターム(参考)】