説明

炒め物用油脂組成物

【課題】炒め物を行なうに際し、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具及び調理品を乗せた食器の洗浄効果の向上した、炒め物用油脂組成物を提供する。
【解決手段】食用油脂に、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する炒め物用油脂組成物となし、それで炒め物を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒め物用油脂組成物に関する。特には、炒め物を行うに際し、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具及び食器の洗浄効果の向上した、炒め物用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焼き物や炒め物等の調理を行う際には、素材に熱を効率よく伝達すると共に、加熱による調理器具への食品素材や調味料の焦げ付き等を防止し、食品にコク味を付与する等の目的で食用油脂が利用されている。食用油脂のうち、液状油としては菜種油、ハイオレイック菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ミッドオレイックひまわり油、米油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、亜麻仁油等が使用されており、固形脂としては、パーム油、ラード等が使用されてきた。
【0003】
炒め物は、上述したような油脂を少量用いて食品を撹拌しながら加熱を行う調理方法である。炒め物を行う際の油脂の役割は、食品と食品とが、また食品と調理器具とが付着することを防止すると共に、高温加熱による食品及び油脂の風味を向上させることである。味、風味、食感等の調理効果を向上させるための調理用油脂組成物として、特許文献1に、ジグリセリンモノオレイン酸エステルを含有する調理用油脂組成物が開示されている。特許文献1に開示された調理用油脂組成物によれば、上記調理効果の向上は達成することができると記載されているが、調理後の調理器具、及び調理品を乗せた後の食器の洗浄効果は十分なものでなく、これらの洗浄効果を更に向上させることが望まれていた。
【0004】
一方で、炒め物を行なう際には、調理中に油脂がはねやすいため、調理器具の周囲を汚すことがあったり、また、調理を行なう者が火傷をする等の問題が発生している。この問題を解決することを目的とした油脂組成物として、特許文献2には、特定のグリセリン脂肪酸エステルを含有する油脂組成物が開示されている。該特許文献2に開示された油脂組成物によれば、安全かつ快適に調理を行うことができ、得られる調理品の風味を向上させることができるが、調理中の調理器具の食品素材や調味料の焦げ付き防止、及び調理後の調理器具の洗浄効果については更に向上させることが望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平8−131071号公報
【特許文献2】特開2001−240894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、炒め物を行なうに際し、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具及び調理品を乗せた食器の洗浄効果の向上した、炒め物用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討し、ジグリセリンモノオレイン酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを用いた炒め物用油脂組成物、ジグリセリンモノオレイン酸エステルと特定のデカグリセリンオレイン酸エステルとを用いた炒め物用油脂組成物、又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと特定のデカグリセリンオレイン酸エステルとを用いた炒め物用油脂組成物が上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物を提供する。

【発明の効果】
【0009】
本発明により、炒め物を行うに際し、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具及び調理品を乗せた食器の洗浄効果の向上した、炒め物用油脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の炒め物用油脂組成物について説明する。なお、本明細書において、「炒め物」とは、例えば、焼きそば、チンジャオロース、ホイコウロウ、八宝菜、チャーハン等の料理、一般的な肉類、野菜類、魚介類の炒め物、ソテー、焼き肉、餃子等、その他これらに関する料理を意味する。
【0011】
まず、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物について説明する。本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する。
ジグリセリンモノオレイン酸エステルとは、ジグリセリンとオレイン酸とのエステルを意味するものである。
【0012】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを付加した化合物を意味するものであり、特に限定されるものではないが、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを平均で20モル付加したものが好ましく用いられる。具体的には、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等が挙げられる。本発明の炒め物用油脂組成物においては、上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、市販されているものを用いてもよく、例えば、花王株式会社製のエマゾールL120V(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート20)、ロンザジャパン株式会社製のGlycosperse S-20(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート60)、Glycosperse TS-20(トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート65)、Glycosperse O-20(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート80
)等が使用可能である。
【0014】
本発明の炒め物用油脂組成物における、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのそれぞれの配合量は特に制限はないが、合計配合量について以下に説明する。
本発明の炒め物用油脂組成物においては、上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及び上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量は、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは2〜20質量%であり、更に好ましくは2〜10質量%である。また、好ましくは2.5質量%以上であり、更に好ましくは2.5〜20質量%であり、更に好ましくは2.5〜10質量%である。ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、少なくとも上記範囲にあると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、20質量%を超えると、低温で結晶が析出したり、調理中に不快な臭いが発生したり、調理品の風味が悪くなる場合がある。
【0015】
また、本発明の炒め物用油脂組成物においては、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)については特に制限はなく、0.1以上の範囲でよく、好ましくは0.1〜50であり、更に好ましくは0.1〜20であり、更に好ましくは0.1〜10である。また、0.5以上の範囲でよく、好ましくは0.5〜50であり、更に好ましくは0.5〜20であり、更に好ましくは0.5〜10である。また、1以上の範囲でよく、好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜20であり、更に好ましくは1〜10である。
また、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量との関係が、以下の(1)〜(5)のいずれかの関係を有することが、焦げ付きの防止及び洗浄性を向上させる観点から好ましい。
(1)ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、5.5質量%以上であり、好ましくは5.5〜20質量%であり、更に好ましくは5.5〜10質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が0.5以上であり、好ましくは0.5〜50であり、更に好ましくは0.5〜10である、(2)ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、5.5質量%以上であり、好ましくは5.5〜20質量%であり、更に好ましくは5.5〜10質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が2.5以上であり、好ましくは2.5〜50であり、更に好ましくは2.5〜10である、(3)ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2.5〜4質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が1.5以上であり、好ましくは1.5〜50であり、更に好ましくは1.5〜10であり、更に好ましくは3〜10である、(4)ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、5.5質量%以上であり、好ましくは5.5〜20質量%であり、更に好ましくは5.5〜10質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が1以上であり、好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜10である、(5)ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2.5〜7質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が2.5以上であり、好ましくは2.5〜50であり、更に好ましくは2.5〜10である。
【0016】
本発明の炒め物用油脂組成物は、上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが食用油脂に含有されたものである。本発明において用いられる食用油脂としては、通常に炒め物用油脂組成物を製造するために用いられる油脂が用いられ、例えば、菜種油、キャノーラ油、ハイオレイック菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ミッドオレイックひまわり油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、亜麻仁油等の液状油やパーム油、ラード等の固形脂等が挙げられる。上記油脂は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の炒め物用油脂組成物には、従来より炒め物用油脂組成物に含有されている副資材や食品添加物を含有してもよい。上記副資材や食品添加物としては、例えば、耐冷剤、抗酸化剤、苦味マスキング剤等が挙げられる。上記耐冷剤とは、炒め物用油脂組成物を冷蔵庫等に保管した場合に、炒め物用油脂組成物中に含まれる成分が析出し、結晶化することを防止するためのものであり、例えば、阪本薬品工業(株)製、「THL-15」等が使用可能である。また、抗酸化剤とは、油脂の酸化を防止するためのものであり、例えばビタミンE等が用いられる。抗酸化剤としては、例えば、エーザイ(株)製、「イーミックスD」等が使用可能である。苦味マスキング剤としては、例えば、花王株式会社製、「ベネコートBMI−40L」等が使用可能である。上記副資材や食品添加物以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、油脂に用いる食品添加物を用いることができる。このような食品添加物としては、例えば、高級脂肪酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル(親油性ポリグリエステル、親水性ポリグリエステル、ポリグリセリンポリリシノレート(PGPR))、有機酸モノグリセリド(酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド)、シュガーエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン等が挙げられる。
【0018】
本発明の炒め物用油脂組成物を製造する方法としては特に制限はなく、常法に従って製造することができる。例えば、上述した原料をミキサー等に入れて、必要により加温しながら撹拌混合することによって、本発明の炒め物用油脂組成物を製造することができる。
【0019】
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物について説明する。本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有する。
【0020】
本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物に含有されるジグリセリンモノオレイン酸エステルとしては、上述した、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物に含まれるものが用いられる。
【0021】
次に、デカグリセリンオレイン酸エステルについて説明する。デカグリセリンオレイン酸エステルとは、グリセリンが平均10個縮合したポリグリセリンに、オレイン酸がエステル結合した化合物である。デカグリセリンオレイン酸エステルとしては、蒸留等によって精製されたものを用いてもよいが、蒸留等によって精製することは必ずしも必要でなく、デカグリセリンオレイン酸エステルを主成分として含む反応混合物であってもよい。
【0022】
本発明の炒め物用油脂組成物に用いられるデカグリセリンオレイン酸エステルのHLB値は、4〜9であり、好ましくは5〜9であり、更に好ましくは7〜9であり、更に好ましくは7〜8である。HLB値の範囲が、少なくとも上記範囲にあるデカグリセリンオレイン酸エステルを用いると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。
【0023】
上記デカグリセリンオレイン酸エステルは、その水酸基価が好ましくは140〜250mgKOH/gであり、更に好ましくは160〜250mgKOH/gであり、更に好ましくは180〜250mgKOH/gであり、更に好ましくは190〜250mgKOH/gである。水酸基価の範囲が、少なくとも上記範囲にあるデカグリセリンオレイン酸エステルを用いると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。
デカグリセリンオレイン酸エステルの水酸基価は、重合度が平均10個のポリグリセリンに結合する脂肪酸の数によって決まるものであるが、脂肪酸の数については一定でなくてもよく、結合する数が分布をもったものであってもよい。
【0024】
また、用いられるデカグリセリンオレイン酸エステルのケン化価は、好ましくは115〜175mgKOH/gであり、更に好ましくは115〜165mgKOH/gであり、更に好ましくは115〜155mgKOH/gであり、更に好ましくは115〜140mgKOH/gである。ケン化価の範囲が、少なくとも上記範囲にあるデカグリセリンオレイン酸エステルを用いると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する
【0025】
上記デカグリセリンオレイン酸エステルとしては、HLB値、水酸基価及びケン化価が上記範囲となるように製造して用いることができ、また、HLB値、水酸基価及びケン化価が上記範囲である市販品を用いることもできる。
デカグリセリンオレイン酸エステルは、HLB値、水酸基価及びケン化価が明らかな場合、当業者であれば適宜調整して製造することができるが、例えば以下の方法によって製造することができる。
常法により製造したポリグリセリン(平均重合度:10)と、市販のオレイン酸(オレイン酸濃度:60%以上)とを、適当な比率で反応容器に仕込み、触媒として水酸化ナトリウム溶液を添加する。触媒を添加する時に、触媒量を極力少なくすることにより、石けん分残存量の少ない油脂組成物を得ることが可能となる。窒素気流下で、200℃以上の温度に加熱し、1〜3時間程度反応させる。さらに、内温を250℃以上として3〜5時間反応させた後、常温まで冷却し、常法により精製を行い、デカグリセリンオレイン酸エステルを得る。得られたデカグリセリンオレイン酸エステルは、必要に応じて、分子量による分画を行ってもよい。
【0026】
本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物についても、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルのそれぞれの配合量は特に制限はないが、合計配合量について以下に説明する
本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物においては、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、好ましくは2質量%以上であり、好ましくは2〜20質量%であり、更に好ましくは2〜10質量%である。また、好ましくは2.5質量%以上であり、更に好ましくは2.5〜20質量%であり、更に好ましくは2.5〜10質量%である。ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、少なくとも上記範囲にあると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。炒め物用油脂組成物の全質量に対し、20質量%を超えると、低温で結晶が析出したり、調理中に不快な臭いが発生したり、調理品の風味が悪くなる場合がある。
【0027】
また、ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)は、特に制限はないが、0.1以上の範囲でよく、好ましくは0.1〜50、更に好ましくは0.1〜20、更に好ましくは0.1〜2であり、更に好ましくは0.1〜1.5であり、更に好ましくは0.1〜1.2である。また、0.2以上の範囲でよく、好ましくは0.2〜50、更に好ましくは0.2〜20、更に好ましくは0.2〜2であり、更に好ましくは0.2〜1.5であり、更に好ましくは0.2〜1.2である。また、0.5以上の範囲でよく、好ましくは0.5〜50、更に好ましくは0.5〜20、更に好ましくは0.5〜2であり、更に好ましくは0.5〜1.5であり、更に好ましくは0.5〜1.2である。上記質量比が、少なくとも上記範囲にあると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。
本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物に含まれるデカグリセリンオレイン酸エステルとしては、石けん分残存量が少ないものの方が、洗浄性の効果の向上に優れている傾向にある。例えば、石けん分残存量が1000ppm未満であるものが好ましく、500ppm以下のものが更に好ましい。
【0028】
また、ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)は、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量との関係が、以下の関係を有することが、焦げ付きの防止及び洗浄性を向上させる観点から好ましい。
ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2.5質量%以上であり、好ましくは2.5〜20質量%であり、更に好ましくは2.5〜10質量%であり、かつジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)が0.1〜2であり、好ましくは0.5〜1.5である。
【0029】
本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物は、上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが食用油脂に含有されたものである。該食用油脂としては、上述した、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるものが同様に用いられる。
【0030】
また、本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物には、従来より炒め物用油脂組成物に含有されている副資材や食品添加物を含有してもよい。このような副資材や食品添加物としては、上述した、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるものが同様に用いられる。また、本発明の第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物の製造方法についても、第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物と同様の方法で製造することができる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物について説明する。本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有する。
本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びデカグリセリンオレイン酸エステルについては、上述した第1及び第2の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるものが同様に使用される。
【0032】
本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物についても、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルのそれぞれの配合量は特に制限はないが、合計配合量について以下に説明する。
本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物においては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは2〜20質量%であり、更に好ましくは2〜10質量%である。また、好ましくは2.5質量%以上であり、更に好ましくは2.5〜20質量%であり、更に好ましくは2.5〜10質量%であり、更に好ましくは3〜10質量%であり、更に好ましくは5〜10質量%である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、少なくとも上記範囲にあると、炒め物を行う際の、食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。炒め物用油脂組成物の全質量に対し、20質量%を超えると、低温で結晶が析出したり、調理中に不快な臭いが発生したり、調理品の風味が悪くなる場合がある。
【0033】
また、上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに対する上記デカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)は、特に制限はないが、0.02以上の範囲でよく、好ましくは0.02〜50であり、更に好ましくは0.02〜20であり、更に好ましくは0.02〜10であり更に好ましくは0.02〜2.5であり、更に好ましくは0.02〜2であり、更に好ましくは0.02〜1.8であり、更に好ましくは0.02〜1.5である。また、0.05以上の範囲でよく、好ましくは0.05〜50であり、更に好ましくは0.05〜20であり、更に好ましくは0.05〜10であり、更に好ましくは0.05〜2.5であり、更に好ましくは0.05〜2であり、更に好ましくは0.05〜1.8であり、更に好ましくは0.05〜1.5である。また、0.08以上の範囲でよく、好ましくは0.08〜50であり、更に好ましくは0.08〜20であり更に好ましくは0.08〜10であり、更に好ましくは0.08〜2.5であり、更に好ましくは0.08〜2であり、好ましくは0.08〜1.8であり、更に好ましくは0.08〜1.5である。また、0.1以上の範囲でよく、好ましくは0.1〜50であり、更に好ましくは0.1〜20であり、更に好ましくは0.1〜10であり、更に好ましくは0.1〜2.5であり、更に好ましくは0.1〜2であり、更に好ましくは0.1〜1.8であり、更に好ましくは0.1〜1.5である。上記質量比が、少なくとも上記範囲にあると、炒め物を行う際の食品素材や調味料の焦げ付きを少なくし、調理後の調理器具、調理品を乗せた食器の洗浄効果が向上する。
本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物に含まれるデカグリセリンオレイン酸エステルとしては、石けん分残存量が少ないものの方が、洗浄性の効果の向上に優れている傾向にある。例えば、石けん分残存量が1000ppm未満のものが好ましく、500ppm以下のものが更に好ましい。
【0034】
本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物は、上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルが食用油脂に含有されたものである。該食用油脂としては、上述した、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるものが同様に用いられる。
【0035】
また、本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物には、従来より炒め物用油脂組成物に含有されている副資材や食品添加物を含有してもよい。このような副資材や食品添加物としては、上述した、本発明の第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるものが同様に用いられる。また、本発明の第3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物の製造方法についても、第1の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物と同様の方法で製造することができる。
【0036】
また、本発明は、第4の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物として、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物を提供する。各成分及び製造方法等については、本発明の第1〜3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物において用いられるもの及び製造方法等を使用することができる。上記3種の合計配合量は、特に制限はないが、本発明の第1〜3の実施の形態にかかる炒め物用油脂組成物を考慮すれば、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2質量%以上の範囲でよく、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下の実施例において、部および%は、特に断りのない限り質量部又は質量%を表す。
【0038】
本実施例では、以下の方法で炒め物用油脂組成物の評価を行った。
(1)焦げの評価
強火で30秒間予備加熱したテフロン(登録商標)製フライパン(直径:24cm)に、炒め物用油脂組成物を15ml測りとり、フライパン内に、豚バラ肉(30g)、キャベツ(50g)、人参(30g)、玉葱(50g)を入れて炒め、蒸し中華麺(150g)を入れて30秒間炒め、次いで水40gを加えた後、1分間炒めた後、粉末ソース(10g)を加え、30秒間加熱して味付けを行い、焼きそばを作製した。なお、焼きそばの中華麺及び粉末ソースは、東洋水産(株)製の「焼きそば3人前」の1人分のものを用いた。
焼きそばを作製した後のフライパンの焦げ付きの状態を肉眼で観察し、下記評価基準に従って評価を行った。
5点:焦げ付きがない。
4点:焦げ付きがほとんどない。
3点:焦げ付きが少量ある。
2点:焦げ付きがあるが許容範囲内である。
1点:焦げ付きが目立つ。
0点:焦げ付きがひどい。
【0039】
(2)フライパン洗浄時の手の感触
(1)において焼きそばを作製したフライパンを、水道水の流水(100ml/秒)で、5秒間すすぎ洗いをした後、フライパンの調理面を、手のひらで直接こすりながら、更に5秒間すすぎ洗いを継続した。そのときの手の感触を点数化し、評価を行った。
5点:瞬時に油が落ちる。
4点:油が良く落ちる。
3点:油が少し落ちる。
2点:油がわずかに落ちる。
1点:油のべたつきが気になる。
0点:油のべたつきが多い。
【0040】
(3)漬け洗い
正方形に成型したポリプロピレンの板(50×50cm)に、炒め物用油脂組成物5gを塗布し、20℃の温度の水道水をためたバット中にゆっくりと沈め、油の経時変化を肉眼により観察し、下記評価基準に従って点数化を行った。
6点:5分以内に油が全量浮いてくる。
5点:10分以内に油が全量浮いてくる。
4点:10分以内に、油が全量の3/4程度浮いてくる。
3点:10分以内に、油が全量の2/3程度浮いてくる。
2点:15分以内に、油が半分程度浮いてくる。
1点:30分以内に油が半分程度浮いてくる。
0点:30分経過しても油がほとんど浮いてこない。
【0041】
参考例1〜10
食用油脂(キャノーラ油、日清オイリオグループ(株)製)に、表1に示す成分を表1に示す配合割合(数値は質量%を意味するものであり、炒め物用油脂組成物の全質量に対する配合割合を示す。なお、以下の実施例において全て同様である)で加え、必要により加温しながら混合撹拌を行い、炒め物用油脂組成物を得た。得られた炒め物用油脂組成物について上述の評価を行った。なお、市販の炒め油(炒め物用油脂組成物)についても同様に評価を行った(参考例11)。評価結果を表2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1において、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ロンザジャパン株式会社製の「Glycosperse O-20」(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン,ポリソルベート80)を、ジグリセリンモノオレイン酸エステルとしては、理研ビタミン(株)製の「ポエムDO−100V」を、デカグリセリンオレイン酸エステルとしては、水酸基価が220mgKOH/gであり、HLB値が7.5であり、ケン化価が128mgKOH/gであり、石けん分残存量が500ppmである市販品を用いた。
【0044】
【表2】

【0045】
表2より、市販の炒め物用油脂組成物は、参考例1〜10と比較して、洗浄性に優れたものでないことがわかった。
以下の実施例においては、評価(1)〜(3)のいずれかが、参考例1〜11の結果を超えた場合に、効果があると判断できる。
実施例1〜11
表3に記載した成分を、表3に記載した量(数値は質量%を意味する)配合した以外は、参考例1〜10と同様に操作を行い、炒め物用油脂組成物を得た。得られた炒め物用油脂組成物について上述の評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、表3における、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びジグリセリンモノオレイン酸エステルは、参考例1〜10で用いたものと同じものを用いた。表3中には、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量、ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)を併せて記載した。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
表4から以下のことがわかる。
実施例1〜5の炒め物用油脂組成物は、フライパン洗浄時の手の感触及び漬け洗い、すなわち洗浄性においても効果が向上することが認められ、実施例3〜5の炒め物用油脂組成物においては、特に、洗浄性の効果が向上することが認められた。
実施例6〜11の炒め物用油脂組成物においても、同様に洗浄性の効果が向上することが認められ、実施例7〜11の炒め物用油脂組成物は、特にフライパン洗浄時の手の感触が良好であり、洗浄性が向上することが認められ、実施例9〜11の炒め物用油脂組成物は、更に洗浄性が向上し、特に漬け洗いの際の洗浄性の向上が認められた。
なお、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、花王株式会社製のエマゾールL120V(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート20)、ロンザジャパン株式会社製のGlycosperse S-20(モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート60)、及びGlycosperse TS-20(トリステアリン酸ポリオ
キシエチレンソルビタン、ポリソルベート65)を用いて同様の評価を行ったところ、全てGlycosperse O-20(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート80)を用いた場合と同様の評価結果が得られた。
【0049】
実施例12〜19
表5に記載した成分を、表5に記載した量(質量%)配合した以外は、参考例1〜10と同様に操作を行い、炒め物用油脂組成物を得た。得られた炒め物用油脂組成物について上述の評価を行った。評価結果を表6に示す。なお、表5における、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルは、参考例1〜10で用いたものと同じものを用いた。その他の成分として、高級脂肪酸モノグリセリド(蒸留モノグリセリド)を、実施例16に0.5%、実施例17に1%配合した。表5中には、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量、ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)を併せて記載した。
【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
表6から以下のことがわかる。
実施例12〜19の炒め物用油脂組成物は、焦げ付きの防止効果に優れるとともに、洗浄性(フライパン洗浄時の手の感触及び漬け洗い)の効果が向上することが認められた。特に、実施例15〜19においては、その効果が顕著なものであった。
【0053】
比較例1〜4
下記表7に示す成分を、それぞれ5質量%の濃度になるように配合した以外は、参考例1〜10と同様に操作を行い、炒め物用油脂組成物を得た。得られた炒め物用油脂組成物について上述の評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0054】
【表7】

【0055】
表7において、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルAは、参考例1〜10と同様のものを用い、ペンタグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンエルカ酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルB及びジグリセリンモノ/ジオレイン酸エステルは以下のものを用いた。
ペンタグリセリンオレイン酸エステル:市販品(水酸基価:220mgKOH/g、ケン化価:125mgKOH/g、HLB値:7.0、石けん分残存量:1000ppm)
デカグリセリンエルカ酸エステル:市販品(水酸基価:140mgKOH/g、ケン化価:120mgKOH/g、HLB値:7.0、石けん分残存量:500ppm)
デカグリセリンオレイン酸エステルB:市販品(水酸基価:67mgKOH/g、ケン化価:160mgKOH/g、HLB値:3.0、石けん分残存量:1000ppm)
ジグリセリンモノ/ジオレイン酸エステル:太陽化学(株)製、商品名「サンソフトQ−17B」
【0056】
【表8】

【0057】
表8から明らかなように、比較例1〜4の炒め物用油脂組成物は、上述した実施例1〜19の炒め物用油脂組成物と比較し、効果は良好なものではなかった。また、比較例1〜4の炒め物用油脂組成物は、参考例1〜11の炒め物用油脂組成物と比較し、効果に差はなかった。また、実施例と比較例とを比較すると、石けん分残存量が少ないデカグリセリンオレイン酸エステルの方が、洗浄性の効果に優れている傾向にあった。
なお、石けん分残存量の分析方法は以下の通りに実施することができる。
すなわち、油化学(第39巻、1056-1061、1990)を参照し、油脂試料100gに2%含水アセトン100mL及び0.4%ブロムフェノール指示薬0.5mLを加え、0.01N塩酸標準液で滴定することにより求めた。
使用した乳化剤を市販のキャノーラ油に溶解し、石けん分残存量を測定し、乳化剤あたりの量に換算した。
【0058】
実施例20〜25
表9に記載した成分を、表9に記載した量(質量%)配合した以外は、参考例1〜10と同様に操作を行い、炒め物用油脂組成物を得た。得られた炒め物用油脂組成物について上述の評価を行った。評価結果を表10に示す。なお、表9における、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルは、参考例1〜10で用いたものと同じものを用いた。表9中には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)を併せて記載した。
【0059】
【表9】

【0060】
【表10】

【0061】
表10から以下のことがわかる。
実施例20〜25の炒め物用油脂組成物は、焦げ付きの防止効果に優れるとともに、洗浄性(フライパン洗浄時の手の感触及び漬け洗い)の効果が向上することが認められた。
【0062】
実施例26
豚ロース肉200g(食べやすいサイズに切ったもの)、酒大さじ1杯、みりん大さじ1杯、醤油大さじ1杯、及び生姜1片をバットに入れ、下味をつけた。次いで、鉄製のフライパンを加熱し、実施例11の炒め物用油脂組成物14gをフライパンに添加した後、下味をつけた豚ロース肉をフライパンに入れ、約2分間、豚ロース肉を炒めた。炒め終わった豚ロース肉を、直径15cmのメラミン樹脂製の皿に3切れずつ盛り、そのままの状態で室温(25℃)に30分間放置した。30分経過した後、皿の上に盛った豚ロース肉を取り除いた。豚ロース肉を取り除いた皿を、20℃の温度の水を張り込んだトレイに漬け、付着した油の浮き具合を観察した。対照として市販の炒め油(炒め物用油脂組成物)についても同様に炒め物を行い、観察を行った。その結果は、実施例11の炒め物用油脂組成物は、市販の炒め油(炒め物用油脂組成物)と比べ、炒め物を食した後の食器を漬け洗いをする場合に、油の浮き上がりが多く、洗浄性に優れたものと言える。
【0063】
実施例27
テフロン(登録商標)製のフライパンを加熱し、実施例11の炒め物用油脂組成物14gをフライパンに添加した後、100gのカット野菜を、約3分間炒め、野菜炒めを作製した。炒め終わった野菜炒めをプラスチック製の弁当箱(15cm×10cm×4cm)に詰め、室温(25℃)に3時間放置した。3時間経過した後、弁当箱から野菜炒めを取り除いた。野菜炒めを取り除いた弁当箱を、20℃の温度の水を張り込んだトレイに漬け、付着した油の浮き具合を観察した。対照として市販の炒め油(炒め物用油脂組成物)についても同様に炒め物を行い、観察を行った。その結果は、実施例11の炒め物用油脂組成物は、市販の炒め油(炒め物用油脂組成物)と比べ、炒め物を食した後の食器(弁当箱)を漬け洗いをする場合に、油の浮き上がりが多く、洗浄性に優れたものと言える。
【0064】
実施例28
実施例27の方法で作製した野菜炒めを、直径15cmのメラミン樹脂製の皿に載せ、室温(25℃)に30分間放置した。30分間経過した後、皿から野菜炒めを取り除き、皿を室温(25℃)に更に24時間放置した後、食器洗い乾燥機(松下電器産業(株)製、「NP-60SS5」)で洗浄を行った。洗浄の条件は、20℃の水で25分間洗浄し、その後、すすぎを3回(34分)、乾燥を30分間行なう、洗剤不使用のコースを選択した。洗浄の度合いの確認は、オイルレッド(Sigma製)1gをエタノール1Lに溶解した指示薬
を、食器洗い洗浄機使用後の皿の表面にスプレーし、赤色の呈色を確認した。市販のサラダ油を用いて同様に野菜炒めを作製して同様に洗浄し、対照とした。結果を表11に示す。
【0065】
【表11】

【0066】
表11から以下のことがわかる。
実施例28に用いた実施例11の炒め物用油脂組成物は、市販のサラダ油と比べ、食器洗い乾燥機を用いて洗浄した場合、洗剤を使用しない場合でも、洗浄性に優れたものであることが認められた。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物。
【請求項2】
上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及び上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2質量%以上である、請求項1に記載の炒め物用油脂組成物。
【請求項3】
上記ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)が0.1以上である、請求項1又は2に記載の炒め物用油脂組成物。
【請求項4】
ジグリセリンモノオレイン酸エステル、及びHLB値が4〜9であるデカグリセリンオレイン酸エステルを含有することを特徴とする、炒め物用油脂組成物。
【請求項5】
デカグリセリンオレイン酸エステルの水酸基価が140〜250mgKOH/gであり、ケン化価が115〜175mgKOH/gである、請求項4に記載の炒め物用油脂組成物。
【請求項6】
上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及び上記デカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2質量%以上である、請求項4又は5に記載の炒め物用油脂組成物。
【請求項7】
上記ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)が0.1以上である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の炒め物用油脂組成物。
【請求項8】
上記ジグリセリンモノオレイン酸エステル及び上記デカグリセリンオレイン酸エステルの合計配合量が、炒め物用油脂組成物の全質量に対し、2.5質量%以上であり、ジグリセリンモノオレイン酸エステルに対するデカグリセリンオレイン酸エステルの質量比(デカグリセリンオレイン酸エステル/ジグリセリンモノオレイン酸エステル)が0.1〜2である、請求項4又は5に記載の炒め物用油脂組成物。


【公開番号】特開2011−36265(P2011−36265A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235146(P2010−235146)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【分割の表示】特願2006−245063(P2006−245063)の分割
【原出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】