説明

炭化水素を脱塩させる低圧混合システム

原油の流れの塩分を低減させる方法及びシステムは、クイールを用いて水流を原油の中に分散させることと、混合された原油/水の流れを複数の混合ステージを通るように送ることとを含む。該水流は排出される回収水で前処理された洗浄水を含み得る。各混合ステージは、混合された油/水の流れ均質性を増加させる。好ましくは、第1混合ステージ及び第3混合ステージは第2の混合ステージに比べ低圧段階であり、これによって該混合された原油/水の流れを第3及び第4の混合ステージを通すために効果的な圧力が提供される。第4段階を出ると、該混合された原油/水の流れは二重周波数分離容器又は二重極性分離容器において静電的に処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる2008年3月27日出願の米国仮出願61/039,897の優先権及び利益を請求するものである。
【0002】
本発明は、原油を脱塩させる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
原油の脱塩に関する典型的な処理は、原油の流れに新鮮な水を混合することと、混合バルブにわたる減圧を用いることとを含む。原油と水とが混合されると、その混合物を静電式脱水機に通すことで水分が抽出される。静電場によって処理できないエマルジョンが作られることを防ぐために、混合バルブをわたる圧力の低下は一般的に15psi(1.0バール)以下に制限される。原油の生成及び処理に関する技術の進化とともに、これらの技術において原油の中に塩の結晶を形成させることが普及された。これらの結晶は静電的処理では直接取り除くことができないため、まず新鮮な水に結晶を溶かすか、湿潤させる必要がある。しかし、結晶は油によって覆われているため、水に溶かすことは困難である。したがって、静電場による抽出の前に塩を溶かして油から取り出すためには、15psi(1.0バール)以上の減圧が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より多く起こる第2の問題としては腐食及び触媒汚染を回避するために塩の量を極めて低いレベルまで低減させる必要がある製油所において発生する。製油所に届く油は、製油所の合格仕様を満たすように前処理されているが、塩を含む残留水が微細分散液として残っており、取り除くことはとても難しい。したがって、このような油も大きい圧力低下を用いる混合システムによってさらに精製できる。
【0005】
最後に、混合バルブにわたってより大きい圧力低下を用いることは、原油チャージポンプにより高い逆圧をかけることになる。この逆圧はポンプの性能を低下させ、原油のチャージ速度に影響を及ぼす。したがって、混合条件に達するためには高圧混合システムが必要となるが、そのようなシステムは原油チャ−ジ速度の低下を回避するために自分の圧力低下を克服するようにデザインされなければならない。
【0006】
表1に示されているように、塩の限度である1ptb(1000バレル当たりの塩、パウンド、0.45kg/バレル)を満たすために45psi(3.1バール)以上の圧力低下が必要であることが結晶塩を含む原油のテストから明らかになっている。通常の原油には結晶塩が含まれないことと、1つの混合ステージを用いること(15psi(1.0バール)の減圧につながる)とを前提とすると、原油における0.3%のBSW容量は1ptbの塩分をもたらすはずである。テストによると、45psi(3.1バール)につながる3つの混合ステージ用いて、二重極性静電場に原油を通すことでは、1ptb(0.45kg/バレル)のレベルに至ることはできなかったことが明らかになっている。より高い混合エネルギは、二重周波数処理のようなより強力な静電脱水技術を必要とした。二重周波数は新たな静電技術であり、二重極性は古い技術である。このデータは、結晶塩を溶かすためにはより高い混合機エネルギが必要であることを支持するが、解決し難いエマルジョンを同時につくってしまう。このテストは、混合エネルギの一部はポンプによって提供され得ることを示唆している(表1)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
原油の流れの塩分を低減させる方法及びシステムは、クイールを用いて水流を原油の中に分散させることと、混合された原油/水の流れを複数の混合ステージを通るように送ることとを含む。該水流は排出される回収水で前処理された洗浄水を含み得る。各混合ステージは、混合された油/水の流れ均質性を増加させる。第1混合ステージは、原油チャージポンプが克服するべき唯一の逆圧を発生させる。第4段階を出ると、該混合された原油/水の流れは分離容器において静電的に処理される。分離容器は二重周波数分離容器又は二重極性分離容器(脱塩機)であり得る。脱塩された油は、容器の上部から取り除かれ、排出水は容器の底部から抽出される。第1及び第3の混合ステージにおける圧力低下は3〜5psi(0.2〜0.3バール)であり得る。第2の混合手段は、混合された油/水の流れを第3及び第4の混合手段を通すために効果的な圧力増加を提供する。この第2の段階は好ましくはブーストポンプを含み、約25psi(1.7バール)の圧力増加を提供する。第4の混合ステージは混合バルブを含み、第3段階より高い混合エネルギを提供することができる。バルブにわたる圧力低下は5〜20psi(0.3〜1.4バール)の範囲であり得る。
【0008】
脱塩の条件によって、1つ以上の4段階混合システム及び分離容器を直列で用いることが必要であり得る。同様に、第1及び第2混合ステージはバイパスされ得る。
【0009】
水流は排出水で前処理された洗浄水を含み得る。分離容器から抽出された排出水は回収され、前処理工程で使用され得る。洗浄水と排出水とを混合することで、静的混合機を用いて洗浄水を前処理し得る。回収された排出水の一部は第2の4段階混合システム及び分離容器に送られ得る。
【0010】
本発明の方法及びシステムの更なる理解は、次の好ましい実施形態の詳細な説明と図面、及び添付された請求の範囲から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】水混合機と、水注入クイールと、ブーストポンプと、ブーストポンプの上流及び下流に配置された2つのオイル/水混合機と、混合バルブとを含む混合システムを示す図である。
【図2】2段階の脱塩過程を示す図である。第1の点線輪郭で表わされた、混合バルブを含む図1の第1混合システムは、第1の分離容器の前に配置される。第2の点線輪郭で表わされた、洗浄水及び混合バルブを含む図1の第2混合システムは、第2の分離容器の前に配置される。
【図3】1つの混合システムを用いる1段階脱塩過程を示す図である。混合システムは、洗浄水と混合バルブとを含む点線輪郭で表わされている。
【図4】混合システムの様々な要素を接続させるように設定された配管システムの構成を示している。圧力ゲージ、分離バルブ、及びバイパス配管が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず図1を引用すると、油/水混合システム10はブーストポンプ36と、静的混合機24,28、38と、混合バルブ46とを含む。原油チャージポンプ12は、所定の速度で熱交換器16を通り、水注入クイール18に入る原油の流れを提供する。クイール18は、原油に水を分散することにおいては周知のものである。クイール18の主な機能は、水混合機24から受け取った水を原油の流れの中央に分散させ、最大限の混合効果を得ることである。
【0013】
水混合機24は、2つの水20、22が原油の流れに注入される前に回収水22と洗浄水20とを混合させる。水混合機24は、好ましくは実質的に均等な水流が作られるように構成されている。回収水22は、好ましくは脱塩容器(図2を参照)の底部から引かれている。回収水22の塩分が低い場合は、原油の流れに含まれる追加的な塩を効果的に抽出及び希釈するために用いられる。洗浄水20は好ましくは新鮮な水であり、如何なる数の水源から得られる。洗浄水20は新鮮な水であるため、原油において回収水22のように素早く分散され、結晶塩に接触することはできない。回収水22は、既に原油に接触したことがあるためより早く分散され得るため、原油に対してより適合している。注入の前に2つの水源20及び22を混合することは、洗浄水20を前処理し、洗浄水20が原油の中に分散し、結晶塩に接触やすくする。水滴と結晶との接触効率を改善させるために洗浄水20に湿潤剤を加え得る。混合機24における圧力低下は好ましくは3〜5psi(0.2〜0.3バール)の範囲内である。
【0014】
水混合機24から出る水流は、注入クイール18を通り、油/水混合機28に至るように送られる。混合機28はこの分野では周知のものであり、好ましくは直列に配置された、いくつかの固定された短い羽根を含む。各羽根は油/水エマルジョンの流れを90°回転させ、次にくる羽は、流れを分裂させるために90°の角度で設定される。混合機28は油/水のエマルジョンの均質性を増加させるための第1混合ステージを提供する。混合機28における圧力低下は好ましくは3〜5psi(0.2〜0.3バール)の範囲内である。この圧力低下は、原油チャージポンプ12が克服しなければならない唯一の減圧である。
【0015】
混合機28を出る油/水エマルジョンの流れは遠心ブーストポンプ36に送られる。ポンプ36はこの分野において周知のものであり、配管における圧力を増加させるために通常用いられる。ポンプ36は好ましくは可変周波数ドライブポンプであり、ポンプ36における差圧は好ましくは25psi(1.7バール)である。ポンプ36は、混合システム10に主に2つの機能を提供する。最初に、ポンプ36原油と、実質的に均質である水20及び22とを混合する第2段階を提供する。過剰なせん断を避けるために、ポンプ36はクローズド(closed)インペラータイプのポンプが用いられるが、ポンプ38は混合と同時にポンプも行うため、オープンインペラの方が場合によってより適合であり得る。二番目に、ポンプ36は、流れる油/水のエマルジョンの圧力を増加させる。この圧力の増加は、エマルジョンを第2混合機28に通過させ混合バルブ46に届くように押す。混合機38(好ましくは混合機28に類似している)は、油/水エマルジョンをさらに均質化(homogenize)する。ポンプ36によって原油から水20及び22が遠心分離される恐れがあるため、混合機38は必要である。混合機38は混合の第3段階に相当する。
【0016】
混合機38から出る油/水エマルジョンは混合バルブ46に送られる。混合バルブ46はこの分野では周知のものであり、典型的にシングル又はダブルのポートグローブバルブ又はボールバルブである。用いられるバルブの種類は工程において重要ではないが、好ましくは混合バルブ46は5〜20psi(0.3〜1.4バール)の範囲の圧力低下をもたらすために適したものである。混合バルブ46は混合の最終段階である第4段階に相当する。
【0017】
図2の参照すると、上記に説明された混合システム10は、2段階の脱塩過程の各段階の前に用いられ得る。第1段階は、混合バルブ46につながっている分離容器48を含む。分離容器48はこの分野において周知のものであり、静電的過程を用いる(and oys an electrostatic process)。本発明のシステムをテストする際には、分離容器48としてナショナルタンクコンパニーのDUAL POLARITY(登録商標)が用いられた。第1段階で洗浄水を使用しない場合もあるため、第1段階の水混合機24は混合システム10から排除又は隔離され得る。回収ポンプ62は、第2分離容器58の底部から引かれた回収水22を提供する。容器48から抽出された塩水は放出下水管に送られ得る。容器48の上部から抽出された原油は、第2段階容器58の前に配置された第2混合システム10に送られる。
【0018】
第2段階は、第2混合バルブ46につながっている分離容器58を含む。分離容器58は好ましくは容器48に類似している。第2段階は一般的に洗浄水20及び回収水22を用いるため、第2混合システム10には水混合機24(不図示9)が含まれる。脱塩された油は容器58の上部から放出される。
【0019】
図3を参照すると、混合システム10は1つの段階の脱塩過程の前においても使用され得る。回収ポンプ62は、分離容器48の底部から引かれた回収水22を提供する。洗浄水20も提供されるため、混合システム10は好ましくは水混合機24を含む。脱塩された油は容器48の上部から放出される。容器48は好ましくはナショナルタンクコンパニーのDUAL FREQUENCY(登録商標)の静電的過程のような二重周波数分離過程を含む。
【0020】
図4を参照すると、第1の油/水混合機28およびポンプ38を、クイール18を出る油/水エマルジョンから隔離するための隔離バルブ26及び40のセットが提供され得る。次に、油/水エマルジョンはバイパス配管64を通り、第2の油/水混合機38に送られる。オイル/水エマルジョンの流れはバイパスバルブ32によって制御される。圧力ゲージ30及び34は、バイパスバルブ32の上流及び下流のバイパス配管64内の圧力を監視する。圧力ゲージ42はポンプ36における圧力を監視する。追加的に、洗浄水20及び回収水22をそれぞれ混合機24から隔離するために隔離バルブ50及び52が提供され得る。
【0021】
上記の説明は本発明のある好ましい実施形態を詳細に説明したものであり、考えられた最良の形態を説明している。しかし、記載の意図及び範囲から離れることなく、構成要素の構成及び配置の詳細を変更させることが可能である。したがって、ここに示された説明は限定ではなく例として考えられるべきであり、本発明の真の範囲は次に来る特許請求の範囲及び各要素の全ての同等物によって定義される。
【符号の説明】
【0022】
上記に説明された発明の応用は、添付の図面に示された具体例に限られない。本発明は他の形態で実施でき、様々な形で実行され得る。ここに使われている表現は、説明を目的としており、限定を目的とするものではない。図面に示された要素は次の符号で同定されている。
10 油/水混合システム
12 原油チャージポンプ
16 熱交換機
18 クイール
20 洗浄水
22 回収水
24 静的水混合機
26 隔離バルブ
28 油/水静的混合機
30 圧力ゲージ
32 バイパスバルブ
34 圧力ゲージ
36 APIブーストポンプ
38 油/水静的混合機
40 隔離バルブ
42 圧力ゲージ
46 混合バルブ
48 分離容器
50 隔離バルブ
52 隔離バルブ
58 分離容器
62 回収ポンプ
64 バイパス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油の流れに含まれる塩分を低減させる方法であって、
混合された油/水の流れを生成するために、水流を前記原油の流れの中に分散させる工程と、
前記混合された油/水の流れの均質性を増加させるために、前記混合された油/水の流れを複数の混合ステージに送る工程と、
前記混合された油/水の流れを分離容器に送る工程と、
前記分離容器において前記混合された油/水の流れを静電的に処理する工程と、
前記分離容器の下部から水を抽出する工程と、
前記分離容器の上部から処理された油を抽出する工程と、を含み、
前記分離容器に送る工程によって少なくとも前記塩分の実質的な部分は前記混合された油/水の流れに含まれる水に吸収されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記混合ステージには3乃至5psi(0.2乃至0.3バール)の範囲内の差圧があることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記混合ステージには約25psi(1.7バール)の差圧があることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合ステージはブーストポンプを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合ステージの1つには、5乃至20Psi(0.3乃至1.4バール)の差圧があることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水流を排出水の流れで前処理する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分離容器から抽出された前記水の一部を前記水流に回収し、前記油/水の流れを生産することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の混合ステージは、第1混合ステージ、第2混合ステージ、第3混合ステージ、及び第4混合ステージを含み、各混合ステージは前記混合された油/水の流れの均質性を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分離容器において前記混合された油/水の流れを静電的に処理する前記工程は、二重極性分離容器及び二重周波数分離容器から選択された分離容器を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
湿潤剤を前記水流に加える工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
炭化水素を脱塩させるシステムであって、
原油の流れと、
水流と、
クイールと、
第1混合ステージ、第2混合ステージ、第3混合ステージ、及び第4混合ステージと、
前記第4混合ステージの下流に位置する分離容器と、を含み、
前記分離容器は、二重極性分離容器と二重周波数分離容器とのグループから選択され、
前記混合ステージの各々は、混合された油/水の流れの均質性を増加させるために効果的であり、
前記第1混合ステージ及び前記第3混合ステージは静的混合機を含み、前記第2混合ステージよりそれぞれ圧力の低い混合ステージであり、
前記第2混合ステージは、前記混合された油/水の流れを前記第3段階及び前記第4段階に通すために効果的な圧力上昇を提供し、
前記第4混合ステージは混合バルブを含み、前記第3混合ステージより比較的に増加された混合エネルギを提供可能である、
ことを特徴とする、システム。
【請求項12】
洗浄水及び排出水を含む前記水流をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
静的混合機を含む水混合ステージをさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
3乃至5Psi(0.2乃至0.3バール)の範囲内の差圧がある、前記第1混合ステージ及び前記第3混合ステージの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
ブーストポンプを含む前記第2混合ステージをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
約25Psi(1.7バール)の差圧がある前記第2混合ステージをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
5乃至20Psi(0.3乃至1.4バール)の範囲内の差圧がある前記第2混合ステージをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1混合ステージ及び前記第2混合ステージを回避するためのバイパス配管をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
湿潤剤を含む前記水流をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−515568(P2011−515568A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502037(P2011−502037)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/038336
【国際公開番号】WO2009/120822
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505047706)ナショナル・タンク・カンパニー (7)
【Fターム(参考)】