説明

炭水化物含有スポーツドリンク

本発明は、炭水化物含有機能性飲料に関し、この飲料は、少なくとも1つのタンパク質加水分解物とイソマルツロースを備える。更に、本発明は、タンパク質加水分解物を含有する機能性飲料中のイソマルツロース及び/又はロイクロースの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物、少なくとも1種類のタンパク質加水分解物並びにイソマルツロース及びロイクロースから選択される少なくとも1種類のサッカロース異性体を含む機能性ドリンク剤に関し、更には、炭水化物含有機能性ドリンク剤におけるイソマルツロース及び/又はロイクロースの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギードリンク剤、スポーツドリンク剤、フィットネスドリンク剤またはその他のソフトドリンクなどの機能性ドリンク剤の人気は高まりつつある。この種のドリンク剤は、その特別な成分に起因して、液体の補給に役立つだけでなく、例えば食品補充物質又は機能増進物質を身体に提供する。
国際公開WO2003/017788号公報は、植物エキス及びイソマルツロースを含有するソフトドリンク飲料又はスポーツドリンク飲料を開示する。これらのドリンク剤は爽やかな味質により特徴付けられる。
国際公開WO2004/084655号公報は、イソマルツロース及びトレハロースを含むソフトドリンク飲料、エネルギードリンク飲料又はスポーツドリンク飲料を開示する。これらのドリンク剤は、消費者体内において低いグリセミック反応をもたらすので、有益である。
【0003】
タンパク質を含有する機能性ドリンク剤も公知であるが、多くの場合、消化性に劣り、消費者にしばしば不快感を生じさせる味質を有する点で特徴付けられる。
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2003/017788号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/084655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、消費者の体力回復機能及び肉体的耐久力の増進機能に優れた従来にない機能性ドリンク剤であるとともに比較的低コストで製造可能であり、特に、消費者に快適性を感じさせる味質をもたらす従来にないドリンク剤に対する一定の需要が存在する。加えて、ドリンク剤は、視覚的にも魅力的なものである必要がある。即ち、できる限り透明であり、貯蔵の際に安定性を維持する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭水化物と、液体媒質中に溶かした少なくとも1種類のタンパク質加水分解物と、サッカロースと比して低いグリセミック指数を備えるとともにイソマルツロースおよびロイクロースからなる群から選択される少なくとも1種類のサッカロース異性体を含有する機能性ドリンク剤を提供することにより、その根底にある技術的問題を解決する。したがって、タンパク質加水分解物に加えて、本発明の進歩性を有する飲料は、a)イソマルツロース又はb)ロイクロース又はc)イソマルツロース及びロイクロースを含有する。本発明の進歩性を有する実施形態において、飲料中にロイクロースとイソマルツロースが混用されている場合には、ロイクロースとイソマルツロースの比は、好ましくは1:99重量%〜99:1重量%、特に好ましくは30:70重量%〜70:30重量%とすることができる(各場合、両異性体の総乾燥物質量を基準として計算)。
【発明の効果】
【0007】
本発明に関連して、機能性ドリンク剤とは、消費者の液体補給の必要性に合致する機能を満たすことに加えて、消費者の身体内における少なくとも追加的な生理学的機能を有することができるドリンク剤を意味するものと理解されるべきである。特に、身体状態の維持又は改善に対する生理学的機能(より詳しくは、消費者の健康状態)を満足するドリンク剤を意味する。したがって、このような機能性ドリンク剤としては、特に、筋肉構造の改善し、筋肉損傷を回避、筋肉損傷を除去、増大するエネルギー需要に対する補充、増大するミネラル分又はビタミン需要に対する補充、脂質代謝の改善、疾病の予防又は治療に用いられるドリンク剤を挙げることができる。特に、血糖値上昇ができる限り少ないドリンク剤、即ち、出来る限り最小のグリセミック指数を有するドリンク剤が該当する。
【0008】
本発明は、驚くべきことに、タンパク質を含有する機能性飲料を提供する。タンパク質加水分解物の存在に起因して、有利にも筋力の増強、再生或いは回復及び/又は筋肉損傷の回避を図ることが可能となる。この独創的な飲料が有するこの有利な同化作用により、特に年輩者、婦人、肥満者、スポーツマン及びその他、特別なダイエットを必要とする人にとって、本発明の飲料が特に適切なものということができる。加えて、使用したタンパク質加水分解物中の特定のアミノ酸配列又はオリゴペプチド配列の存在に起因するものと考えられるが、驚くべきことに、免疫刺激作用が生ずる。
イソマルツロース、つまり、6−O−α−D−グルコピラノシル−フルクトース(Palatinose(登録商標)としても知られている)は、サッカロースの約半分の甘味力を持つ甘味剤である。イソマルツロースは、酸化的代謝を維持するためのスポーツマン用の特殊な食品にも使用される。なぜなら、イソマルツロースの分解が遅いためである。イソマルツロースの分解は、小腸領域でのみ生ずるものである。イソマルツロースは、人間の小腸壁に存在するグルコシダーゼにより、時間的遅れを以って分解され、分解の結果生ずるグルコース及びフルクトースが吸収される。その結果として、迅速に消化される炭水化物と比較すると、血中のグルコースレベルの増加は緩やかなものとなる。したがって、迅速な消化性を有する高グリセミック物質とは対照的に、イソマルツロースは物質代謝に殆どインスリンを必要としない。
そのため、炭水化物を含有する独創的な飲料中のイソマルツロースの使用により、本発明の飲料は、有利な低グリセミック飲料となる。この低グリセミック飲料は、消費者への優れたアミノ酸供給が可能であるという利点と低グリセミック飲料であるという利点を兼ね備えている。
ポリオールとは対照的に、イソマルツロースは緩下剤効果を有さない点において有利である。驚くべきことに、イソマルツロースは、タンパク質加水分解物の味質を隠す作用を有する。タンパク質加水分解物の味質は、特に長時間保存された飲料などの場合、多くの消費者にとって敬遠されるものである。
ロイクロースは、イソマルツロースと同様、サッカロースに比べて低グリセミックのサッカロース異性体である。フルクトース/グルコース含有ドリンクと比較して、本発明に係る炭水化物含有機能性ドリンク剤は、同甘味力とした場合、メイラード反応生成物の形成性向に関しては低レベルである。
最後に、この独創的なドリンク剤は、タンパク質加水分解物が完全に溶解しているので、仕上がりが透明で、酸の存在下で安定であるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の特に好ましい実施形態の1つにおいて、タンパク質加水分解物はカゼイン加水分解物である。特に好ましい実施形態は、プロテアーゼの作用により、ミルクのカゼインタンパク質から調製されたものである。好ましい実施形態の1つにおいて、カゼイン加水分解物は、平均鎖長が最大で4アミノ酸相当の短鎖ペプチド、特にジペプチド及びトリペプチドからなる。本発明に係る好ましいカゼイン加水分解物は水溶性である。好ましい実施形態において、カゼイン加水分解物は、20の必須アミノ酸全てを含む。本発明の特に好ましいカゼイン加水分解物のアミノ酸組成は次の通りである。
【0010】


*1) アスパラギンとアスパラギン酸の総量に対する値である。
*2) グルタミンとグルタミン酸の総量に対する値である。
【0011】
本発明の他のもう1つの好ましい実施形態において、液体媒質は水である。本発明の更に他のもう1つの好ましい実施形態において、ドリンク剤は、0.1〜20重量%、好ましくは、0.3〜10重量%(それぞれドリンク剤総重量に対する値)のタンパク質加水分解物を含む。本発明の更に他のもう1つの好ましい実施形態において、本発明の機能性ドリンク剤は、0.1〜20重量%、好ましくは、0.3〜10重量%(それぞれドリンク剤総重量に対する値)のイソマルツロースを含む。本発明の更に他のもう1つの好ましい実施形態において、本発明の機能性ドリンクは、0.1〜20重量%、好ましくは0.3〜10重量%(それぞれドリンク剤総重量に対する値)のロイクロースを含む。
【0012】
本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、ドリンク剤は、インスタントドリンク剤、コーラ含有ドリンク剤、整腸溶液、清涼ドリンク剤、スポーツドリンク剤、エネルギードリンク剤、等張飲料、ソフトドリンクなどとすることができる。
【0013】
本発明の他のもう1つの好適な実施形態は、炭水化物を含むとともに、例えば、例えば食品と相容する酸、食品と相容する塩、強力甘味料、ミネラル成分、微量元素、フルーツエキス、抗酸化剤、安定剤、味覚物質、芳香剤又は香料及びその他の甘味剤、カフェイン、ビタミン、脂質などを追加的に含有する機能性ドリンク剤に関連する。
【0014】
本発明にしたがうと、強力甘味料として、アセスルファムH、アスパルタム、ステヴェオシド、モネリン、シクラメート、シクラメン酸ナトリウム、スクラロース、タウマチン、ズルチン、サッカリン、ネオタメ、ナリンギン−ジヒドロカルコン、ネオへスペリジン−ジヒドロカルコン、グリシルヒジン、又は、上記2物質若しくはそれ以上の物質からなる混合物を使用することができる。
【0015】
他のもう1つの好ましい実施形態において、ドリンク剤は天然色素剤及び/又は合成色素剤、天然ビタミン及び/又は合成ビタミン、ミネラル成分及び/又は微量元素を含む。
【0016】
本発明の特に好ましい実施形態において、ドリンク剤に含まれる食品相容性のある酸の割合は0.1〜10重量%である(ドリンク剤総重量に対する値)。
【0017】
本発明の他のもう1つの好ましい実施形態において、強力甘味料のドリンク剤に占める割合は0.1〜1重量%である(ドリンク剤総重量に対する値)。本発明の更に他のもう1つの好ましい実施形態において、味覚剤、芳香剤または香料のドリンク剤に占める割合は0.5〜10重量%である(ドリンク剤総重量に対する値)。
【0018】
本発明に関連して、「タンパク質加水分解物含有ドリンク剤の味質を覆い隠す」とは、例えば、タンパク加水分解物含有組成物と統計指標上重要な比較甘味料とを含む比較調製物において、例えば、熟練検査員が不快に、又は、苦く感じるタンパク質加水分解物含有組成物の味質が、比較調製物ではなく本発明のドリンク剤中にタンパク質加水分解物含有組成物が存在し、これがイソマルツロース及び/又はロイクロースと一緒に存在する場合には、極めて顕著に減退し、好ましくはそれにも増して、もはや全く感じられなくなる効果を意味する。
本発明によれば、イソマルツロース及び/又はロイクロースが用いられ、これらが、本発明に係る飲料中で使用されるタンパク質加水分解物を含有する組成物の苦味のある味質を覆い隠すということは好適である。即ち、識別又は知覚できない程度までに苦味のある味質を消し去り、或いは、大幅に減退させるために、イソマルツロース及び/又はロイクロースが使用される。
【0019】
更に他のもう1つの好ましい実施形態において、本発明のドリンク剤は、イソマルツロース及び/又はロイクロース以外に、糖、特にサッカロース、フルクトース、タガトース及び/又はグルコースなどの添加物を一切含んでいない。好ましくは、イソマルツロース及び/又はロイクロースが調製物に含まれる唯一単独の糖であり、特にドリンク剤に含まれる唯一単独の甘味料である。
【0020】
本発明に関連して、「甘味料」との用語は、甘味力を有するとともに食品又は飲料に添加され、例えば、甘味質を作り出す物質と解釈されるべきである。本発明に関連して、甘味料は、イソマルツロース、サッカロース、グルコース又はフルクトースなどのコクと甘味力を与える糖と、糖ではないが、甘味力のある物質としての「甘味剤」とに区分される。この甘味剤は更に、甘味力に加えてコクと生理的燃焼価を生ずる甘味作用物質(コク提供甘味剤)としての「糖代替物質」と、通例非常に高い甘味力を持つがコクを持たず、通例生理的燃焼価を全く或いは極僅かしか生じない物質としての「強力甘味物質」とに細分される。
【0021】
本発明に基づくドリンク剤は、特に好ましい実施形態の1つにおいて、歯にやさしく抗カリエス及び/又はダイエット効果を有する。
【0022】
他のもう1つの実施形態において、本発明にしたがって、イソマルツロース及び/又はロイクロースを強力甘味物質とともにドリンク剤に使用することができる。加えて/或いは、必要に応じて、例えば、イソマルト又はマルトデキシトリン、ラクチット、マルチット、エリトリット、キシリット、マンニット、ソルビット、マルチットシロップ、澱粉加水分解物、1,1−GPM(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−マンニット)、1,6−GPS(6−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビット)又は1,1−GPS(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−ソルビット)などの糖代替物質とともに、イソマルツロース及び/又はロイクロースを使用することも、もちろん想定することができる。
【0023】
上記のほかに、本発明の有利な実施形態は従属請求項にも記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒質中に溶かされた少なくとも1種類のタンパク質加水分解物と、
ロイクロースとイソマルツロースからなる群から選択される少なくとも1種類のサッカロース異性体を含有することを特徴とする炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項2】
前記タンパク加水分解物がカゼイン加水分解物であることを特徴とする請求項1に記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項3】
前記カゼイン加水分解物が、最大平均鎖長4アミノ酸相当の短鎖ペプチドからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項4】
前記液体媒質が水であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項5】
前記ドリンク剤が0.1〜20重量%(対ドリンク剤総重量)のタンパク質加水分解物を含むことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項6】
前記ドリンク剤が0.1〜20重量%(対ドリンク剤総重量)のイソマルツロースを含んでいることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項7】
前記ドリンク剤が0.1〜20重量%(対ドリンク剤総重量)のロイクロースを含んでいることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項8】
前記ドリンク剤が0.3〜10重量%(対ドリンク剤総重量)のタンパク質加水分解物を含んでいることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項9】
前記ドリンク剤が0.3〜10重量%(対ドリンク剤総重量)のイソマルツロースを含んでいることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項10】
前記ドリンク剤が0.3〜10重量%(対ドリンク剤総重量)のロイクロースを含んでいることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項11】
前記ドリンク剤が、インスタントドリンク、清涼ドリンク、コーラ含有ドリンク、整腸溶液、スポーツドリンク、等張飲料、エネルギードリンク又はソフトドリンクであることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項12】
前記ドリンク剤が、食品と相容する酸、食品と相容する塩、強力甘味料、ミネラル成分、微量元素、フルーツエキス、抗酸化剤、安定剤、味覚物質、芳香剤又は香料、ビタミン、モルトエキス、甘味剤及び/又はカフェインを含んでいることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項13】
前記ドリンク剤に含まれる前記食品相容性の酸の割合が0.1〜10重量%(対ドリンク剤総重量)であることを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項14】
前記ドリンク剤に含まれる前記強力甘味料の割合が0.1〜1重量%(対ドリンク剤総重量)であることを特徴とする請求項1乃至13いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項15】
前記ドリンク剤に含まれる前記味覚物質、芳香剤又は香料の割合が0.5〜10重量%(対ドリンク剤総重量)であることを特徴とする請求項1乃至14いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項16】
前記ドリンク剤が天然色素剤及び/又は合成色素剤を含んでいることを特徴とする請求項1乃至15いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項17】
前記ドリンク剤が天然ビタミン及び/又は合成ビタミンを含んでいることを特徴とする請求項1乃至16いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項18】
前記ドリンク剤がミネラル成分及び微量元素を含んでいることを特徴とする請求項1乃至17いずれかに記載の炭水化物含有機能性ドリンク剤。
【請求項19】
タンパク質加水分解物含有ドリンク剤における味質改良のためのイソマルツロースの使用。
【請求項20】
タンパク質加水分解物含有ドリンク剤における味質改良のためのロイクロースの使用。

【公表番号】特表2009−533032(P2009−533032A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504615(P2009−504615)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003019
【国際公開番号】WO2007/118610
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508304309)
【Fターム(参考)】