説明

炭素ダクトプレートを備えたインクジェットプリンタで用いるのに適した融解性インク

本発明は、インクを受容側材料に像様に転写するためのインクジェットプリントヘッドと組み合わせられる、室温で固体であるが温度が上昇すると液体になる融解性インクに関するが、プリントヘッドは多数のインクダクトを備え、インクダクトは各々がそのダクトからインク滴を噴出するための開口部に至り、このダクトは基本的に炭素製であるダクトプレートに形成され、インクは炭素中に浸入することが可能であり、この炭素製のエレメントが130℃の温度で20時間にわたってインクに漬けておかれると、このエレメントの質量の増加率が1.5%を超えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受容側材料に対してインクを像様に(image−wise)転写するためのインクジェットプリントヘッドと組み合わせた、室温では固体であり温度が上昇すると液体となる融解性インクに関するが、ここで、プリントヘッドは複数のインクダクトを備えており、インクダクトの各々がこのダクトからインク滴を噴出する開口部に繋がっており、このダクトは主として炭素からなるダクトプレートに形成されている。
【背景技術】
【0002】
炭素ダクトプレート付きのインクジェットプリントヘッドと、この種の融解性インク、すなわちホットメルトインクもしくは相変化インクとしても知られている融解性インクとの組み合わせが、欧州特許第0699137号明細書から知られている。この特許から、炭素をダクトプレートの基本的材料として用いると、用いられるインクが浸透しないようなダクトプレートになるという利点があることが知られている。言い換えれば、ダクトプレートとインクの組み合わせを、インクがダクトプレートの材料に浸入することが不可能であるように用いると有利である。この目的のため、たとえば、インクを通さないタイプの炭素を選択することが可能である。この特許明細書は、上記のプレートがインクを通さなくなるようにダクトプレートの表面を処理することを提案している。インクを通さないコーティングを塗布することを特に提案している。
【0003】
しかしながら、インクジェットプリンタ中のこのようなプリントヘッドを用いて実験すると、このプリントヘッドの噴出特性、すなわちインク滴がインクダクトから噴出する通路を決定するインクジェットヘッドの機能的特徴は、最適なものではないことが分かる。たとえば、好ましくないほど小さいまたは大きい体積を持つインク滴が、ダクトの開口部から噴出される可能性がある。この種の体積の偏差は、必ずしも印刷された画像では気が付かないが、特に、高い画像品質が必要とされる場合には、体積の偏差が目立つ場合がある。噴出特性が悪い結果として発生するもう一つの体積偏差は、対応するインクダクトが起動された時点でインク滴がまったく存在しないためである。この偏差の結果、主として目立つアーティファクトが現れる。また、時として、意図されたインク滴下の直前または直後にダクトから好ましくない衛星インク滴が発生する。また、インク滴が開口部から間違った角度で噴出したり、または噴出することなく開口部から出てきて開口部に沿って流れ出たりするという現象が、しばしば見受けられる。このように、プリントヘッドは開口部がある側が汚れ、したがって受容側材料を汚してしまう可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、炭素ダクトプレートを有するプリントヘッドと組み合わせて用いることによって、上記の欠点が解消されるインクを提供することにある。この目的のため、融解性インクとプリントヘッドの周知の組み合わせを改良するが、この炭素からなるエレメントが130℃の温度で20時間にわたってこのインクに浸されていた場合に、このエレメントの重量の増加率が1.5%を超えるような方法で、炭素に浸入することが可能であるインクが選択される。
【0005】
驚くべきことに、この種のインクを用いると非常に良好な噴出特性を得ることが可能であることが分かった。上記の条件下でインクの炭素ダクトプレート中への移動が少なくとも1.5%であるだけで、インクが炭素ダクトプレート中に移動することが利点となるであろうとは、まったく期待されていない。引き込まれるインクの量がこれより少なければ、噴出特性が目に見えるほどには改善されない。さらに、滴体積の偏差の問題は実際上存在しない。この理由は明瞭ではないが、インクダクトの壁がインクで濡れやすいことと関連がある可能性がある。濡れやすいことによって、ダクトの壁に付着する気泡の問題を軽減することが可能である。一般的に、このような気泡はプリントヘッドの噴出特性に逆効果を持つことが知られている。また、本発明の利点を利用するために、ダクトプレート全体を炭素から作る必要はないことが明らかであるはずである。特にインクと接触するダクトプレートの部品が主として炭素から作られているようなダクトプレートは、適用可能な限り独立請求項で言い表される。必要であれば、このような部品には、一般的に知られているような物理的および/または化学的表面処理を施すことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による一実施形態では、上記の条件の下でインクが浸入した場合の重量の増加は2.5%から3%の間である。インクが炭素中に過度に浸入すると、すなわち、炭素ダクトプレートの質量が3%より大きく増加すると、逆効果が発生する。一方では、噴出特性がさらに改善されるようには見えない。この理由は明瞭ではないが、ダクトプレート中のインクのかなりの分量が、このプレートの熱的特性と機械的特性に影響するという事実と関連している可能性がある。他方、この場合、インク自体がダクトプレート中に激しく移動し、そのため、ダクトプレートの外側を汚してしまうものと思われる。また、このプレートの少なくとも1つの外側はしばしばプリントヘッドの外側でもあるので、その結果、従来技術から知られている問題と匹敵するような問題が発生することになる。まったく予期しなかったことであるが、発見された領域、すなわち質量が2.5%から3%増加する領域の頂部には、噴出特性が非常に良好な領域が存在することが分かった。本実施形態では、プリンタの必要なスタートアップ時間は短い。これは、プリントヘッドがインクで満たされると、迅速に印刷を開始することが可能であることを意味する。
【0007】
本発明の別の実施形態では、インクは結晶質の基本的材料とアモルファスな結合剤を含んでいる。市販のインクはしばしば結晶性材料を含んでいないことがあるが、その理由は、このような材料を含むとくすんだ色のインクになってしまうことがあり、これはまた非常にもろく、したがって、ゴム糊貼り付けや、引っかきや、折り曲げなどの機械的動作によって、受容側材料から比較的容易にはがれてしまうからである。このような結晶質材料は、アモルファスな結合剤と化合すると、本発明がさらに改善されることが分かった。これは、物質の混合物が浸入するとその結果、通常は、本発明にとって原則として欠点となりかねないようなクロマトグラフィ効果が顕れるという事実にもかかわらず、成立する。驚くべきことに、これは今まで分かっていなかった。
【0008】
別の実施形態では、本発明はインクジェットプリントヘッドで用いられる融解性インクに関連するが、インクダクトは、振動プレートを介してダクトと動作可能に接続されている圧電アクチュエータを用いることによって、制御することが可能である。本実施形態では、ダクトプレート中に炭素が浸入すると、その結果、特に利点となる特性が得られる。場合により、インクがダクトプレートに浸入すると、その結果、炭素と圧電材料間でのそれぞれの材料特性のコーディネーションがさらに良好となる。これによって、噴出特性が促進されるだけでなく、プリントヘッドの寿命が延びる。
【0009】
本発明はまた、炭素ダクトプレートを備えたプリントヘッド中でのインクの使用と、インクジェットプリンタで用いられるインクの固形物ユニットを生成する融解性インク組成物の使用とを含む。
【0010】
次に本発明を、以下の図面と例とを参照してさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
例1に、本発明による多数のインクと炭素を示す。
【0012】
例2に、比較の対象となる多数のインクを示す。
【0013】
例3に、融解性インクの基本的成分を作成する方法を説明する。
【0014】
(図1)
図1に、インクジェットプリンタを図解的に示す。本実施形態では、プリンタは、受容側材料2、たとえば紙シートまたは透明シートを支持し、それを走査キャリッジ3に沿って移動させる、ローラ1を備えている。このキャリッジは、4つのプリントヘッド4a、4b、4cおよび4dが固定されているキャリア手段5を備えている。各々のプリントヘッドは、それ自体の色、この場合はそれぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)および黒(K)のインクを備えている。プリントヘッドは、各々のプリントヘッド4の背後でキャリア手段5の上に配置されている、加熱手段9によって加熱される。さらに、温度センサ(図示せず)がキャリッジに取り付けられている。プリントヘッドは、センサで測定された温度に基づいて加熱手段を個別に制御することを可能とする制御ユニット11によって正確な温度に保たれている。
【0015】
ローラ1は、矢印Aで示すようにそれ自体の軸の周りを回転することが可能である。このようにして、受容側材料は、キャリア手段5に対して、したがってプリントヘッド4に対しても副走査方向(X方向)に移動することが可能である。キャリッジ3は、ローラ1と平行な二重矢印Bで示す方向に適切な駆動手段(図示せず)によって、往復運動させることが可能である。この目的のため、キャリア手段5は誘導ロッド6と7の上を移動する。この方向を、主走査方向またはY方向と呼ぶ。このようにして、受容側材料をプリントヘッド4で完全に走査することが可能である。図に示す本実施形態では、各々のプリントヘッド4は、各々がそれ自体の出口開口部すなわちノズル8を備えた多数の内部インクダクト(図示せず)を備えている。本実施形態では、これらのノズルは、ローラ1の軸に対して直交して(副走査方向)、プリントヘッド1つについて1つの行を形成している。インクジェットプリンタの実用的な実施形態では、プリントヘッド1つ当たりのインクダクトの数は何倍も多く、またノズルは2つ以上の行にわたって分布している。インクダクトはその各々が、インクダクト内の圧力を急に増し、これによって、インク滴を関連するダクトのノズルによって受容側材料の方向に放出することを可能とするような手段(図示せず)を備えている。この例によれば、この手段は、関連の電気駆動回路(図示せず)によって像様に起動可能なように作られている圧電エレメントを、プリントヘッドの中に含んでいる。このようにして、画像を、受容側材料2上にインク滴から形成することが可能となる。
【0016】
受容側材料に、滴がインクダクトから放出されるこの種のプリンタで印刷すると、受容側材料またはその一部が、点の行と点の列から規則的なフィールドを形成する、固定したロケーションに(仮想的に)分割される。一実施形態では、点の行は点の列に対して直交している。結果として得られる互いに分離したロケーションは、その各々に1つ以上のインク滴を提供することが可能である。点の行と点の列に対して平行な方向の単位長当たりの回転数を、印刷された画像の解像度と呼び、たとえば400×600dpi(ドットパーインチ)と示す。インクジェットプリンタのプリントヘッドのノズル行がキャリア手段5をずらすことによって受容側材料に対して移動する際に、それを像様に制御することによって、受容側材料上に、ノズル行の長さが幅に等しい少なくとも1つの条片、すなわちインク滴で形成された(副)画像が形成される。
【0017】
(図2)
図2は、炭素ダクトプレート12と圧電エレメント30とを備えるプリントヘッド4を示す図である。ダクトプレートは、壁18によって横方向に画定されているインクダクト16を含んでいる。インクダクトはその各々が、プリントヘッドの前部にあるノズル8のところで終端している。ダクトプレートの頂部は、インクダクトが実質的に閉じられるように振動プレート20で覆われている。本実施形態では、振動プレート20はダム24と溝22を含んでいる。
【0018】
プリントヘッドは頂部のところで、台形の断面積形状を有する長手方向部材34を備えたキャリアエレメント32と境界を接している。圧電ブロック30は、キャリアエレメント32の下側に固定されている。ブロック30は、圧電材料の溝38と40をミリング(milling)することによって形成されたフィンガ26と28を備えている。フィンガ26と28を互いに分離している溝38は圧電材料中で終端しているが、ブロック30を互いに分離している溝40はキャリアエレメント32の内部まで続いており、これで、それ自体も長手方向部材34同士を互いに分離するようにしている。したがって、長手方向部材34の幅は、分離されたブロック30の幅と実質的に等しい。その結果、部材34は、ブロック30の頂部が、圧電アクチュエータ26が膨張収縮する際に弾性的に変形することを、効率的に防止する。実際、キャリアエレメント32は、横材(cross−member)36によって並行側だけが相互接続されている分離した部材34からなっており、また、これらの横材もまた、溝40によって脆弱なものとなっているため、屈曲力が、その発生源であるブロック30に主として閉じ込められる。このようにして、横材をかなりの距離に渡って巧みに抑圧することが可能となる。図示する実施形態では、溝40の幅は溝38の幅に等しく、フィンガ26と28は等間隔に位置している。支持エレメント28のピッチaはノズル8のピッチbより2倍大きい。フィンガは三つ目毎に支持エレメント28となっているため、フィンガ26と28のピッチは2b/3に等しい。その結果、ノズルのピッチb、したがってプリントヘッドの解像度を、製造プロセスで課せられるような圧電アクチュエータと支持エレメントとの制限を越えることなく、小さくすることが可能である。実用的な一実施形態では、ノズル8のピッチbを250μm(すなわち、1ミリメートル当たりノズルが4個)にできることが好ましい。したがって、支持エレメント28のピッチaは500μmとなり、全てのフィンガ(アクチュエータ26を含む)ピッチは167μmとなる。その場合、分離した各々のフィンガ26または28の幅は、たとえば87μmであり、溝38と40の幅は80μm、深さは約0.5mmとなる。
【0019】
(図3)
図3は、融解性インクの固形物ユニットを生成することが可能な方法を示す図である。各々が頂部60と底部62とを含む、多数のモールド50、52、54、56および58を示す。これらの部分が一緒になって、融解性インク66で充填される空洞64が形成される。頂部60は、液体インクが充填エレメント72によって空洞64中に導入され得るように、充填用開口部70を含んでいる。
【0020】
モールドの底部62は、ベルト80によって担持される。ベルト80は、トンネル形状のチャンバ82の内部を示す方向Cに、モールド50から58を一つずつ搬送する。モールドが充填エレメント72(図3ではモールド52)と同じ高さで停止するとすぐに、充填エレメントは充填用開口部70に接続されて、融解したインク66が空洞64中に流れ込む。空洞が完全に充填されるとすぐに、次のモールドが充填エレメント72に接続可能となるように、ベルト80がワンステップ移動する。
【0021】
固形インクユニット86が完全にセットされると、モールドがチャンバ82から離れる。次に、モールド56と58のものとして示されている頂部60が、グリッパエレメント90によって外される。ユニット86は頂部60に付着したままである。インクユニット86を取り外すには、ノズル92を頂部60の上に置いて、その後でユニットを圧縮空気によって頂部から吹き飛ばす。ユニット86を集めてエレメント94で輸送する。この方法は欧州特許出願第1260562号明細書に詳細に説明されている。
【0022】
(図4)
この例は、どのようにすれば融解性インクが炭素に浸入する度合いを測定することが可能であるかを示している。この目的のため、制御ユニット113を備えた制御可能オーブン100を利用する。オーブンは通常の圧力(1気圧)と空気湿度(60%)の下で操作され、ドア107によって閉じることが可能である。オーブンは、インク110で充填されたガラス製ビーカー101を含んでいる。リグの温度は130℃に保たれている。この目的のため、熱電対112がインク内に置かれ、制御ユニット113に動作可能に接続されている。ガラス製ビーカーはその頂部が、リッド102(リッドの中心部は、明瞭化するため図面から省かれている)によって綴じられている。リッドの中に、ホルダ103が置かれている。フレキシブルコード104はこのホルダに固定されており、また、このコードによって、炭素製のエレメント105をインク中に浮遊させておくことが可能である。
【0023】
この試験のため、Messrs SGL Carbon AG(ドイツ、ウィースバーデン)製のSGL5710タイプの炭素製のエレメント105を利用する。エレメントは矩形形状をしており、長さと幅が3cmであって、高さは2cmである。これで、エレメントは18cmの体積と42cmの面積を有する。この種のエレメントは大きい炭素片からそれをミリングすることによって作成される。ミリングの後、エレメントは、脱塩水で充填された超音波清浄浴槽で清浄化される。エレメントはグリッパによって浴槽からとり外され、その後、コード104を取り付けてエレメント105をこのコードに固定する。次に、エレメント105を脱塩水ですすぎ洗いする。試験は、図面に示すようにエレメント105をインク中に浮遊させることによって実行される。所定の時間後、エレメントをインクから出して、まだ暖かいうちに、通常クリーンルームで用いられる種類の無繊維布、たとえばMessrs Texwipe社製のalphawipe TX1004のような布で清浄化する。次に、エレメントを清浄な環境下で室温まで冷却し、その後エレメントを計量する。このようにして、エレメントの質量の増加を決定することが可能である。次に試験を、再度エレメント105をインク中に浮遊させることによって継続する。
【0024】
このように、例1で示したようにインクが試験される。図5に、インクがどのように炭素中に移動するかを示す。これらのインクが炭素中に同等に移動し、すべてがその結果、少なくとも20時間後に1.5%を超えて質量が増加していることが分かる。従来技術からわかるような上記の欠点を結果としてもたらすインクを試験すると、それは示された範囲から外れる。表2のインクを試験すると、これらが炭素試験ブロックの質量に測定可能な増加を実際にはまったくもたらさないことが明らかである。インクの浸入の度合いを、炭素とインクの物理的および/または化学的特性に基づいて予測することは不可能である。また、本発明を単に炭素の多孔性のためとすることも不可能である。そうであるとすると、質量の増加は、同じタイプの炭素を用いた実験で実質的に同じ密度を持つ全てのインクでは、ほぼ同じであるはずである。また、上記のエレメントでの上記の試験におけるインクが、結果として1.5%を超えて質量増加をもたらす場合には、別のタイプの浸入可能炭素を利用したプリントヘッドでこのインクを用いても、良好な噴出特性をもたらすことが可能であることに留意されたい。明らかに、このプロセスでは複雑な要因の集合が重要であり、このような要因はまたプリントヘッドの噴出特性に関連している。インクの基本的成分やこの基本的成分の分量が少し変化しても、炭素中へのこのインクの浸入性にかなり影響する。本発明の重要な利点は、このインクが炭素ダクトプレートを有するプリントヘッドで用いることに適しているかどうかを、単純で容易に制御可能な試験によって前もって検査することが可能であるという点にある。試験はまた、上記のエレメントのディメンジョン、すなわち2×2×3cm(長さ×幅×高さ)とは異なったディメンジョンを有するエレメントで実行された。上記の条件下における2つのブロック間での重量の増加の相違は、無視し得るほどに小さいことが分かった。
【0025】
(図5)
図5に、融解性インクが炭素に浸入する様子を図解して示す。垂直軸は、エレメント105の(初期質量に対してパーセンテージで)質量の増加を示す。水平軸は、インク中でのエレメントの滞留時間(時間単位)を示す。8個の曲線1から8は、例1による8種類のインク1から8の浸入の度合いを示す。
【0026】
(例1)
表1に、さまざまな種類のインクの例、少なくともこれらのインクの融解可能留分(またはキャリア留分もしくは基本的成分)を示すが、これらのインクは室温では固体で、温度が上昇すると液体になり、また、たとえば図2に示すタイプの炭素から主として作られたダクトプレートと一緒に用いると、良好な噴出特性を有するプリントヘッドとなる。実際には、これらのインクに対して、ピグメント、染料、粘性制御剤、界面活性剤、安定剤などの物質が添加されている。このような物質を少量だけ付加しても、炭素中へのインクの浸入性にはたいして影響しない。以下に示すパーセンテージは重量パーセンテージである。
【表1】

【0027】
本発明で用いることが可能な炭素は、融解性インクの浸入に適している。このような適切な炭素(または黒鉛)の例には、Messrs UCAR(フランス)のTS5223、Messrs Xycarb(オランダ)のUTR85、Messrs Intech(オランダ)製のG1300、Messrs Morganite(ルクセンブルグ)のEY365、Messrs SGL Carbon(ドイツ)のSGL5710およびMessrs Carbonne Lorraine(フランス)のEllor+50がある。この種の炭素が本発明にしたがって実際に用いることが可能であるかどうかは、この炭素で作られたダクトプレートを用いて印刷されるインクと、この炭素との相互作用次第である。これは、インクと炭素の各々の可能な組み合わせに対して実験で判定しなければならない。これを判定する方法を図4を参照して説明する。
【0028】
(例2)
表2に、炭素ダクトプレートと一緒に用いると、不合格とされる噴出特性を有するプリントヘッドをもたらすいくつかの種類のインク、またはその少なくとも融解可能留分を示す。
【表2】

【0029】
(例3)
この例では、融解性インクの基本的成分を作成する方法を説明する。この樹脂のような成分は、ジイソプロパノールアミン、安息香酸および無水琥珀酸の反応生成物である。1リットルの反応フラスコに、機械式攪拌機、温度計およびDeanStarkリグを装備した。ジイソプロパノールアミン(BASF社のタイプS)261.06g(1.960mol)と、安息香酸(アルドリッチ社)540.88g(4.429mol)と、無水琥珀酸(アルドリッチ社)69.69g(0.696mol)とが、フラスコ中に導入された。少量のo−キシレン約60mlが、発生した水を除去するために添加溶剤(entraining agent)として添加された。反応混合物は窒素雰囲気中に保たれて165℃で1時間にわたって加熱され、その後、反応温度を180℃にした。6時間後に、o−キシレンを除去するために、温度を160℃に下げてフラスコを空にした。約1時間後に反応混合物を取り出すことが可能であった。分析の結果、成分の数平均分子量(M)は583であり、重量平均の分子量(M)は733であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インクジェットプリンタを示す図である。
【図2】インクジェットプリンタのプリントヘッドの構造を示す図である。
【図3】インクの固形物ユニットを作成するためのリグを示す図である。
【図4】炭素中へのインクの浸入の度合いを決定するためのリグを示す図である。
【図5】融解性インクが炭素に浸入する様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に炭素製であるダクトプレートに形成され、インク滴を噴出するための開口部に至る、多数のインクダクトを備えた、インクを受容側材料に像様に転写するためのインクジェットプリントヘッドと組み合わせられる、室温では固体であるが、温度が上昇すると液体になる融解性インクであって、インクは炭素中に浸入することが可能であり、これによって、この炭素製のエレメントが130℃の温度で20時間にわたってインクに漬けておかれると、前記エレメントの質量の増加率が1.5%を超えることを特徴とする、融解性インク。
【請求項2】
質量の増加率は2.5%から3%の間であることを特徴とする、請求項1に記載の融解性インク。
【請求項3】
インクが、結晶質の基本的材料とアモルファス結合剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の融解性インク。
【請求項4】
インクダクトが、振動プレートを介してダクトに動作可能に接続されている圧電アクチュエータを用いて制御される、インクジェットプリントヘッドで用いられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の融解性インク。
【請求項5】
基本的に炭素製であるダクトプレートに形成され、インク滴を噴出するための開口部に至る、多数のインクダクトを備えた、インクを受容側材料に像様に転写するためのインクジェットプリントヘッドにおける、室温では固体であるが、温度が上昇すると液体になる融解性インクの使用であって、インクは炭素中に浸入することが可能であり、これによって、この炭素製のエレメントを130℃の温度で20時間にわたってインクに漬けておくと、前記エレメントの質量の増加率が1.5%を超えることを特徴とする、融解性インクの使用。
【請求項6】
実質的に炭素製であるダクトプレートに形成され、インク滴を噴出するための開口部に至る、多数のインクダクトを備えた、インクを受容側材料に像様に転写するためのプリントヘッドを有するインクジェットプリンタで用いられるようにインクの固形物ユニットを生成するための、室温では固体であるが、温度が上昇すると液体になる融解性インク組成物の使用であって、インクは炭素中に浸入することが可能であり、これによって、この炭素製のエレメントを130℃の温度で20時間にわたってインクに漬けておくと、前記エレメントの質量の増加率が1.5%を超える、融解性インク組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−521346(P2007−521346A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507789(P2005−507789)
【出願日】平成15年8月18日(2003.8.18)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000588
【国際公開番号】WO2005/016650
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390039435)オセ−テクノロジーズ・ベー・ヴエー (103)
【氏名又は名称原語表記】OCE’−NEDERLAND BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】