説明

炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー工法又はロックボルト工法

【目的】
地盤状況に合わせたアンカー長の自由な変更、テンドンの現地での加工の容易さ、アンカーの運搬搬入を容易にするための方法を提供するものである。
【解決手段】
炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー工法又はロックボルト工法において、高引張強度の炭素繊維の素材で腐食抵抗性を持たせ、さらに炭素繊維からなるプレートを1枚あるいは複数枚を用いてテンドンとして、当該テンドンを途中で切断・接合することにより、使用時に必要な長さのテンドンをつなぎ合わせて、利用に適した長さに調整し、また、アンカー体部分やアンカー頭部部分など高引張強度の炭素繊維の素材からなるプレートのテンドンを途中で切り離なし、使用時に必要な長さのテンドンをつなぎ合わせて、利用に適した長さに調整することにより、運搬や搬入、組み立てを容易にした構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーのテンドンに炭素繊維プレートを用いたアンカー工法又はロックボルト工法において、そのアンカーの材質・形状・接続の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアンカーは、PC鋼より線を用いるもの、炭素繊維より線を用いるもので、より線を用いるものである。
PC鋼より線や炭素繊維より線を用いる場合、より線を複数本用いるものと、より線の複数本をさらに1本にまとめて使用するものがある。
【特許文献1】特開平09−310346号公報
【特許文献2】特開平06− 2500号公報
【非特許文献1】(社)地盤工学会基準:グランドアンカー設計・施工基準、同解説書(72〜76、199〜219頁)(平成12年5月22日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(1) 従前の技術のうち、アンカーは工場で加工した長さの状態で用いるか、短くして用いるかであり、延長して用いる場合は接続用のカップラーなどを用いるため、アンカーの口径が大きくなり所定の削孔径では挿入できないことがあり、高コストであった。また、PC鋼より線は腐食抵抗性が高くないため、防食を行う必要もあった。
(2) アンカーの施工場所は、急斜面や山地など施工性が良い場所ではなく、PC鋼より線によるアンカーはアンカー体などが一体となり、アンカーの形状が大きく、また重量が重いため、現地への運搬や施工場所への搬入が容易ではなく、クレーンなどが必要となっていた。
【0004】
以上のように、アンカーを定着させる定着地盤は深さや地質状況は一定でないため、アンカー長を地盤にあわせて変更する必要があり、また、施工場所が急斜面などで良好ではないため運搬搬入も容易ではなく、現地での加工の簡便さ、延長の自由性、運搬の容易さ、防食性などの面で十分な技術とはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は上記の課題を解決するために、地盤状況に合わせたアンカー長の自由な変更、テンドンの現地での加工の容易さ、アンカーの運搬搬入を容易にするための方法を提供するものである。
【0006】
本発明の第1は、炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー工法又はロックボルト工法において、高強度で腐食抵抗性を有した炭素繊維をプレート状に加工したものを単数枚から複数枚をテンドンとして用い、このテンドンにアンカー体やスペーサーなどを固定し、アンカーとして用いるようにしたもので、炭素繊維のプレートのため切断、延長などの加工が容易で腐食抵抗性も優れている。
【0007】
本発明の第2は、第1の発明に係る炭素繊維プレートを用いたアンカー工法又はロックボルト工法において、山間部や急斜面などの運搬・搬入の困難な場所では、アンカーをアンカー体部分、引っ張り部、アンカーヘッド部などに分割し加工し、現地でこれらを組み立てることで、アンカー体を搬入・運搬することができるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は上記の構造であるから、腐食抵抗性の高い炭素繊維を用いることで、長期的な使用が可能となり、また、炭素繊維をプレート状に加工していることから切断、接着が容易に行え、テンドン長を自由に変更できることから、自由性に優れ、現地の地質状況に適した加工が可能である。
【0009】
また、山間部や急斜面などの運搬・搬入の困難な場所でも、アンカーを分割し現地でこれらを組み立てることで、搬入・運搬を容易にし、施工性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態を図に即して示す。図1の実施形態では標準的なアンカーを示しているが、炭素繊維プレートの形状、長さ、枚数を多少変更することにより、最適なアンカー構造をあらゆる使用現地に適用できる。
さらに、地質状況の変化などに伴い、炭素繊維プレートを切断・接合することで、自由なアンカー長を作成することできる。
【0011】
炭素繊維プレートのテンドンは重量が軽く、また接合が容易なため、図4のようにアンカーをアンカー体部分、引張り部、アンカー頭部部分などに分割・加工し、現地でこれらを組み立てることで、アンカーを容易に搬入・運搬することができる。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に即して説明する。図1において、1はテンドンで炭素繊維プレート、2はシースであり、テンドンが注入材12に固定されないためのものでFRPなどからなる。3はアンカーに緊張を与えるアンカー頭部、5はアンカー頭部を固定するナット、6は受圧板7に引っ張り力を伝えるアンカープレート、8はアンカー頭部3を保護するためのアンカー頭部キャップ、9はテンドン3が注入材12と付着し易いようにスペースを空けるスペーサー、10はスペーサー9により開いたテンドン1を結束する結束具、11はアンカー挿入時に挿入先端がばらばらにならないように一つにまとめ、挿入し易くしているアンカー体キャップ、13は先端支圧式アンカーの場合にシース2に挿通して荷重を負担するスパイラル筋である。
【0013】
図2はアンカー体部の断面図で炭素繊維プレートからなるテンドン1をスペーサー9に所定の間隔をあけて注入材12と付着し易いようにしてある。
【0014】
図3は炭素繊維プレートからなるテンドン1の接合状況で、テンドン1と接合する側のテンドン1bを接合部1aで接合している。接合部の接着剤はエポキシ系などを用いている。
【0015】
図4は先端支圧式アンカーの場合において、山間部や急斜面などの運搬・搬入の困難な場所でも、アンカーLをアンカー頭部部分Lhと引っ張り部分Lp、アンカー体Lt2に分割し搬入・運搬するために、アンカーを分割した図である。シース2は運搬し易いように所定の長さで接続でき、これに挿通するテンドン1は図5のように円形に丸めることができる。また、アンカー体部分も形式に合わせ、テンドン部において分割することができる。
【0016】
「発明に係る設置工程」
本発明に係る炭素繊維プレートを用いたアンカーの設置工程は次のとおりである。
(1) アンカー組み立て工場にて、施工に必要な長さに炭素繊維プレートを切断し、テンドン1を作成する。このプレート状のテンドンを必要な枚数を用いて、アンカー頭部3に膨張剤で固定する。アンカー頭部にはシース2と接合できる接合部を取り付けておく。これでアンカー頭部3に固定されたテンドン1が作成できる。これを円形に巻き運搬し易い形状にする。
(2) 円形状に巻いたテンドン1とアンカー頭部3をこの状態で施工現場に搬入する。搬入したテンドンを直線上に伸ばし、テンドン長が地盤条件に整合している場合はシース2を取り付け、さらにスペーサー9と結束具10を取り付け、最後にアンカー体キャップ11を取り付ける。
(3) テンドン長が地盤条件より長い場合は、アンカー体部分の先端から不必要な長さを切断し利用し、以下、上記第(2)項の手順でアンカーLを作成する。
(4) テンドン長が地盤条件より短い場合は、アンカー体部分の先端に不足している長さのテンドンを接着剤により接合するか、あるいはテンドンの任意の箇所を切断し、所定の長さのものを接着剤により接合し用いる。以下、上記第(2)項の手順でアンカーLを作成する。
(5) アンカーLの作成が完了したら、削孔済みの挿入孔に注入材を充填し、アンカー体キャップ11から挿入して行く。注入材をアンカー挿入後に行う場合は、注入材を注入するパイプを共に挿入し注入する。
(6) 注入材が固化した後、受圧板7とアンカープレート6を挟むようにしてアンカー頭部を油圧ジャッキ等で緊張を与え、ナット5で固定する。
(7) ナット5による固定が完了したら、アンカーキャップ8に防食オイルを入れてアンカー頭部を保護する。
【0017】
「本発明装置による作用」
本発明による具体的な作用は次のとおりである。
(1) テンドン1に炭素繊維のプレートを用いているため、腐食環境にある地盤内でも耐久性が向上し、耐腐食性の注入材を利用することで、さらに耐久性が向上する。
(2) テンドン1は炭素繊維のプレートを用いるため、切断や接合が容易になり、地盤状況に応じて現地で必要な長さに加工することができる。
(3) テンドン1に高強度炭素繊維のプレートを用いているため軽量化が果たせ、また、部材を分解して搬入できるため、運搬・搬入が困難な場所でも搬入が容易になっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー構造の側面図である。
【図2】図1のアンカー体部のうち、スペーサーを用いた部分の拡大切断面図である。
【図3】炭素繊維プレートの接合部分を示した図である。
【図4】アンカー頭部部分(Lh)、引っ張り部部分(Lp)、アンカー体(Lt2)に分割した図である。
【図5】テンドンを円形に丸めた状態の図である。
【符号の説明】
【0019】
1……テンドン(炭素繊維プレート)
1a……テンドンの接合部(接着剤の塗布部)
1b……テンドン1を接合するテンドン
2……シース管
3……アンカー頭部
4……シースと頭部の接合部
5……ナット
6……受圧板
7……アンカープレート
8……アンカー頭部キャップ
9……スペーサー
10……結束具
11……アンカー体キャップ
12……注入材(セメントミルク等)
13……スパイラル筋
L……アンカー
Lh……アンカー頭部
Lp……引張り部
Lt……アンカー体(摩擦型)
Lt2……アンカー体(支圧型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高引張強度の炭素繊維の素材で腐食抵抗性を持たせ、さらに炭素繊維からなるプレートを1枚あるいは複数枚を用いてテンドンとして、当該テンドンを途中で切断・接合することにより、使用時に必要な長さのテンドンをつなぎ合わせて、利用に適した長さに調整することを特徴とする炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー工法又はロックボルト工法。
【請求項2】
アンカー体部分やアンカー頭部部分など高引張強度の炭素繊維の素材からなるプレートのテンドンを途中で切り離なし、使用時に必要な長さのテンドンをつなぎ合わせて、利用に適した長さに調整することにより、運搬や搬入、組み立てを容易にしたことを特徴とする炭素繊維プレートをテンドンに用いたアンカー工法又はロックボルト工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−236688(P2011−236688A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110656(P2010−110656)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000170646)国土防災技術株式会社 (23)
【Fターム(参考)】