説明

炭素繊維前駆体アクリル繊維用重合体粒子及び炭素繊維前駆体アクリル繊維

【課題】溶剤への分散性と溶解性が良好な重合体粒子を得ること、及び未溶解重合体粒子を低減させることによりろ過工程の維持労力を低減し、アクリル繊維の製造工程の安定性を向上させる炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】以下の要件(1)〜(5)を満足する炭素繊維前駆体アクリル繊維用重合体粒子は、上記課題を達成できる。(1)必須成分としてアクリロニトリル単量体単位を95〜99.5質量%、アクリルアミド単量体単位を0.5〜5質量%含む。(2)任意成分としてアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位を0〜4.5質量%含むことができる。(3)嵩比重が0.30g/cmより大きく、0.40g/cm以下である。(4)平均粒径が30μm以上40μm以下である。(5)表面からの厚さが5μm以内である表層部の空孔率が30%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造に用いる重合体粒子、及び炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル繊維は、炭素繊維前駆体繊維の一つである。一般にアクリル繊維の原料重合体は、アクリロニトリル単量体を主原料として、水系析出重合又は溶液重合を行うことにより製造される。
【0003】
溶液重合に対する水系析出重合の特徴は、短い時間で連続生産できること、簡便な構造の重合反応容器を使用して生産できること、である。
【0004】
炭素繊維に要求される性能を満足するためには、アクリロニトリル単量体単位の含量を95質量%以上とすることが好ましい。水系析出重合で生産される重合体粒子は、アクリロニトリル単量体単位が95質量%未満であれば、溶剤への溶解性は良好である。しかしながらアクリロニトリル単量体単位が95質量%以上の場合には、重合体粒子の形状が、溶解性に大きな影響を与える。重合体粒子の溶解性は、アクリル繊維の製造工程の安定性だけでなく、アクリル繊維の性能に対しても大きな影響を与える。
【0005】
特許文献1には、重合体粒子の嵩比重を0.15g/cm以下とすることにより、重合体粒子が溶解し易くなることが開示されている。しかし重合体の嵩比重を低くし過ぎると、溶剤に分散させる際に急激に膨潤し、分散性はかえって悪くなる。
【特許文献1】特開平11−140131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶剤への分散性と溶解性が良好な重合体粒子を得ること、及び未溶解重合体粒子を低減させることによりろ過工程の維持労力を低減し、アクリル繊維の製造工程の安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の第一の要旨は、以下の要件(1)〜(5)を満足する炭素繊維前駆体アクリル繊維用重合体粒子である。
【0008】
(1)必須成分としてアクリロニトリル単量体単位を95〜99.5質量%、アクリルアミド単量体単位を0.5〜5質量%含む。
【0009】
(2)任意成分としてアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位を0〜4.5質量%含むことができる。
【0010】
(3)嵩比重が0.30g/cmより大きく、0.40g/cm以下である。
【0011】
(4)平均粒径が30μm以上40μm以下である。
【0012】
(5)表面からの厚さが5μm以内である表層部の空孔率が30%以下である。
【0013】
本発明の第二の要旨は、以下の工程(1)〜(3)を有する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法である。
【0014】
工程(1):請求項1記載の重合体粒子を溶剤に溶解し、紡糸原液を得る。
【0015】
工程(2):前記紡糸原液を紡糸口金から吐出し、溶剤水溶液中で凝固させ、凝固糸条を得る。
【0016】
工程(3):前記凝固糸条を洗浄し、延伸し、乾燥してアクリル繊維を得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、溶剤への分散性と溶解性が良好な重合体粒子を得ることができる。また溶解重合体粒子を低減させることにより紡糸原液ろ過の労力を低減し、優れた性能のアクリル繊維を安定に製造できる製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らは鋭意検討により以下のことを見出した。即ち、重合体粒子を溶剤に分散する時、重合体粒子の分散均一性が、分散液が均一に溶解するか否かを支配するものであり、その時に重合体粒子嵩比重をある範囲にすることが重要である。更に、溶剤が接触する重合体粒子の表面積を特定範囲にする、即ち重合体粒子の直径を特定範囲にすることが重要である。更に、溶剤の重合体粒子への浸透を抑制するために、粒子表面からの厚さが5μm以内の層である表層部の平均空孔率を特定範囲内にすることが重要である。
【0019】
本発明の重合体粒子は、アクリロニトリル単量体単位及びアクリルアミド単量体単位を必須成分とする。アクリロニトリル単量体単位の含量は、上述したように95質量%以上である。
【0020】
アクリロニトリル組成95%以上のポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル組成95%未満の重合体に比べ、紡糸溶剤に対する溶解可能な条件範囲が狭いのが一般的である。そのため、溶解に適した嵩比重と平均粒子径の保持が重合体の溶解性に重要な要素となっている。
【0021】
一方、アクリロニトリル組成95%以下のポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル組成が95%より多い重合体に比べ、紡糸溶剤に対する溶解が一般的に容易である。しかし、その反面溶解が低温から始まることによって、溶剤溶解初期に重合体分散液の重合体溶解濃度が高くなり、溶剤中の重合体粒子の分散が不均一になり、継粉が出来やすい傾向にある。
【0022】
アクリルアミド単量体単位は、紡糸時の凝固過程において、凝固を緩慢にする効果があり、その結果繊維構造が密な構造を形成しやすいので炭素繊維の性能向上に効果があるので好ましく用いられ、凝固を緩慢にするには0.5質量%以上あれば十分な効果が得られる。
【0023】
本発明の重合体粒子は、任意成分としてアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量単位を0〜4.5質量%含むことができる。このビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、無水マレイン酸、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン等を挙げることができる。この中でも、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸が好ましい。
【0024】
重合体粒子の嵩比重が小さければ、その粒子は疎な構造であり、嵩比重が大きければ、その粒子は密な構造である。ここで嵩比重は、重合体粒子の集合体の質量を、重合体粒子の集合体が占有する体積で割ることにより得られる。
【0025】
嵩比重の値が小さいと、即ち重合体粒子が疎であると、重合体粒子を溶剤に分散させたときに、溶剤が重合体粒子の内部に浸透し易いので、一粒の重合体粒子は溶解し易い。しかしながら重合体粒子が溶剤に分散するや否や、すぐに溶剤に溶解し始める。このため分散液の粘度が上昇し、分散性が悪化し、分散液が不均一となる。
【0026】
更に、部分的に溶解した重合体粒子は凝集して継粉を形成する。継粉がいったん形成されると、溶解工程においても継子は溶解しない。このため紡糸工程中で紡糸原液をろ過するとき、継子がろ過器を閉塞させる。よって重合体粒子の嵩比重は0.30g/cm以上とすべきであり、これにより溶剤が重合体粒子の内部に浸透する速度を適度な範囲に制御すること可能となり、重合体粒子は継粉を形成しない。
【0027】
嵩比重の値が大きいと、重合体粒子は緻密になり、重合体粒子を溶剤に分散させたときに、溶剤が重合体粒子の内部に浸透し難いので、一粒の重合体粒子は溶解し難い。しかしながら重合体粒子を溶剤に分散するとき、重合体粒子は溶剤に溶解しない。このため良好な分散性を保つので、凝集して継粉を形成することがない。
【0028】
ただし嵩比重の値が大きくなりすぎると、溶剤が重合体粒子の内部に極めて浸透し難くなり、溶解性の悪化をもたらす。よって重合体粒子の嵩比重は0.40g/cm以下とすべきであり、これにより重合体粒子の内部に浸透する溶剤の速度を適切な範囲とすることが可能となり、重合体粒子の未溶解物は発生しない。
【0029】
重合体粒子の嵩比重は、重合体粒子の分散性に対し上述の影響を及ぼすが、重合体粒子の平均粒径もまた、非常に重要である。重合体粒子の嵩比重が0.30g/cm以上0.40g/cm以下の範囲であっても、平均粒径が30μmより小さければ、単位質量あたりの粒子数が多くなり、その結果表面積が大きくなるため、重合体粒子中の溶剤に接触する部位の割合が多くなる。このため一粒の重合体粒子は分散時に溶解し易く、分散液の粘度が上昇して分散性が悪化し、分散液が不均一となる。平均粒径が30μm以上であれば、単位質量あたりの粒子数は適度な範囲の数となり、重合体粒子中の溶剤に接触する部位の割合もまた適度な範囲になる。
【0030】
また平均粒径が40μm以上であれば、溶剤が重合体粒子中心部まで浸透し難く、重合体粒子が溶解し難くなる。平均粒径が40μm以下であれば、上述の問題が発生することはない。
【0031】
重合体粒子の表層部の平均空孔率が高いと、重合体粒子の表面が疎になり、平均空孔率が低いと、重合体粒子の表面が密になる。ここで言う表層部の平均空孔率とは、重合体粒子表面から5μm以内の層の平均空孔率を言う。
【0032】
重合体粒子の表面が疎であると、重合体粒子を溶剤に分散させたときに、溶剤が重合体粒子の内部に浸透し易いので、一粒の重合体粒子は溶解し易い。しかしながら重合体粒子が溶剤に分散するや否や、すぐに溶剤に溶解し始める。このため分散液の粘度が上昇し、分散性が悪化し、分散液が不均一となる。
【0033】
更に、部分的に溶解した重合体粒子は凝集して継粉を形成する。継粉がいったん形成されると、溶解工程においても継粉は溶解しない。このため紡糸工程中で紡糸原液をろ過するとき、継子がろ過器を閉塞させる。よって重合体粒子の表層部の平均空孔率は30%以下とすべきであり、これにより溶剤が重合体粒子の内部に浸透する速度を適度な範囲に制御すること可能となり、重合体粒子は継粉を形成しない。
【0034】
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法は、まず工程(1)として、前述の嵩比重及び平均粒径を有する重合体粒子を、溶剤に分散し溶解して紡糸原液を得る。
【0035】
溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、γ−ブチロラクトン、硝酸水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液等を挙げることができる。中でもジメチルアセトアミドが、アクリロニトリル系重合体の溶解性が優れること、かつ紡糸時に凝固状態を制御しやすいことから好ましい。
【0036】
重合体粒子を溶剤に分散する方法としては、撹拌装置を備えたタンク等に、所定量を計量した溶剤を入れ、これに所定量を計量した重合体粒子を投入し、分散液を調製する方法や、溶剤を連続的に流下させ、これに所定量の重合体を投入し分散液を調製する方法等を用いることができる。均一な分散液とするためには、撹拌設備や攪拌条件、温度条件等に注意する必要がある。
【0037】
次いで分散液を加熱して溶解させ、紡糸原液を得る。加熱の方法は、分散液を均一に加熱できればよい。例えば熱交換器、熱媒が循環するジャケット構造、等を有した二軸押出機等を採用することができる。紡糸したときに緻密な凝固糸を得るためには、重合体の濃度は17質量%以上が好ましく、19質量%以上がさらに好ましい。また、通常重合体濃度は25質量%以下であることが好ましい。
【0038】
次に工程(2)として、前記紡糸原液を紡糸口金から吐出し、溶剤水溶液中で凝固させ、凝固糸条を得る。紡糸方式としては、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法が紡糸の生産性の観点、炭素繊維の強度発現性の観点から好ましく用いられる。
【0039】
次に工程(3)として、前記凝固糸条を洗浄し、延伸し、乾燥してアクリル繊維を得る。凝固糸条は、洗浄により脱溶剤する。この際浴中で湿潤状態のまま延伸してもよい。また、油剤付着処理を行うことが好ましい。この後乾燥を行う。また乾燥した後更にスチーム延伸あるいは乾熱延伸等の延伸を施してもよい。
【0040】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
【0041】
<重合体粒子の嵩比重>
1.嵩比重測定用容器の容積(A)と質量(B)を測定する。
【0042】
2.嵩比重測定用容器に重合体をあふれるまで入れ、嵩比重測定用容器と同じ形状の底に穴の開いた蓋をかぶせる。
【0043】
3.蓋の穴を指で押さえ嵩比重測定用容器を蓋と一緒に上下にゆっくり5回振る。
【0044】
4.蓋を取り、容器に山盛りの重合体が容器すりきり一杯になるように棒ですばやく除去する。
【0045】
5.重合体の入った嵩比重測定用容器の質量(C)を測定する。
【0046】
上記操作を5回実施する。
【0047】
6.下記の式により重合体粒子の嵩比重を求め、5回の測定値の平均値をその重合体粒子の嵩比重とする。
【0048】
重合体粒子の嵩比重(ρ)=(C−B)/A
<重合体粒子の平均粒径>
レーザー回折散乱法を原理としたセイシン企業製SKレーザーマイクロンサイザーLMS−350の装置を用いて、重合体粒子の粒度分布を屈折率1.330−0.01i、形状係数1.000にて測定し、体積平均から算出された50%正規分布の値を平均粒径とする。
【0049】
<昇圧度:重合体粒子の溶解性評価>
−15℃に冷却したジメチルアセドアミドに、重合体粒子を固形分21質量%で均一に分散させて分散液を得る。この分散液を、熱媒を循環可能なジャケット付きの内径12mmの配管に通過させ、滞在時間9分で110℃まで加熱して溶解させる、重合体溶液を得る。この重合体溶液を、90%捕集効率5μmの金属不織布のフィルター(日本精線製ナスロン)に、1kg/mm・hrの割合にて1kg通過させた時の差圧上昇の値を昇圧度(MPa)として、重合体粒子の溶解性の指標とする。昇圧度はその値が小さいほどフィルターに捕捉される未溶解物が少なく溶解性に優れる。
【0050】
<空孔率の測定方法>
ポリマーの乾燥粉をUV硬化型アクリル系樹脂で重合包埋したのち、ダイヤモンドナイフを装着したミクロトームにより、0.5mm×0.5mmの大きさで約70nmの厚さの切片を切り出し、TEM観察用グリッド上に回収した。酢酸イソアミルに浸して包埋樹脂を溶解除去したのち、(株)日立製、H−7600透過型電子顕微鏡により、加速電圧80kV、観察倍率3,000〜5,000倍の条件で観察した。空孔率の計測には画像解析ソフト(株)日本ローパー「Image−Pro Plus」を用い、画像上で2μm×2μmの計測範囲を設定して、その範囲を粉体の半径線上で最表層から中心に順次移動しながら、粒子表面から5μm以内を表層部とし、その部分において空孔が占める比率を計測して空孔率(%)を求めた。このとき、ポリマー部分と空孔部分との区別は画像のコントラストに基づいて行った。空孔率の求め方は、まず、1試料について5枚の切片を観察し、各切片について粒子径の大きいものから順に10個の粉体粒子を選んで合計50個の粒子を得る。次に、この50個の中から粒子径の大きいものから順に10個を選んで空孔率の平均値を求め、これを空孔率とした。
【0051】
本手法では必ずしも粉体粒子の中心を通る断面が得られているとは限らないが、1枚の切片の中でみかけの粒径の大きいものを計測することとした。このようにして、粒子表面から5μm以内を表層部と定義し、表層部の空孔率を求めた。
【0052】
<実施例1>
容量80リットルのステンレス製でグラスライニングした、2段4枚羽のタービン撹拌翼付き重合釜に、脱イオン交換水52.6kg、表1に示した組成比の単量体23.9kgをあらかじめ仕込み、水/モノマー=2.2(w/w)、単量体に対してレドックス重合開始剤過硫酸アンモニウム0.35質量%、亜硫酸水素アンモニウム0.5質量%、硫酸第一鉄(FeSO ・7HO)0.3ppm、硫酸0.1質量%をそれぞれ脱イオン交換水に溶解し、連続的に供給した。反応液のpHを硫酸で3.0になるように調節し、重合反応液温度を50℃に保ち、タービン撹拌翼を用い200rpmにて撹拌を行い、平均滞在時間87分になるように、重合釜オーバーフロー口より連続的に重合体水分散液(重合スラリー)を取り出した。
【0053】
重合スラリーには、シュウ酸ナトリウム0.5質量%、重炭酸ナトリウム1.5質量%を脱イオン交換水に溶解した重合停止剤水溶液を、重合スラリーのpHが5.5〜6.0になるように加えた。この重合スラリーをオリバー型連続フィルターによって脱水処理した後、重合体に対して10倍量の70℃の脱イオン交換水を加え、再び分散させた。再分散後の重合スラリーを再度オリバー型連続フィルターによって脱水処理し、ペレット成形して80℃にて8時間熱風循環型の乾燥機で乾燥後、ハンマーミルで粉砕した。得られた重合体粒子の形状は表3に記す通りであった。
【0054】
この重合体粒子を−15℃に冷却したジメチルアセドアミドに固形分21質量%になるように分散して分散液を得た。この分散液には重合体粒子が凝集したダマ、いわゆる継粉がなく均一な分散液が得られた。この分散液を、熱媒を循環可能なジャケット付きの内径12mmの配管に通過させ、滞在時間9分で110℃まで加熱して溶解し紡糸原液を得て溶解性の評価を行った。評価結果は表2に記す通りであった。紡糸原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は小さく安定にろ過工程を運転可能であった。
【0055】
<実施例2>
重合条件を表1の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表3に記す通りであった。評価結果は、表2に示すとおりであった。紡糸原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は小さく安定にろ過工程を運転可能であった。
【0056】
<実施例3>
重合条件を表1の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表3に記す通りであった。評価結果は、表2に示すとおりであった。紡糸原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は小さく安定にろ過工程を運転可能であった。
【0057】
<比較例1>
重合条件を表2の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表4に記す通りであった。この重合体粒子は実施例1に比べ継粉がやや多い場合があった。溶解性も実施例1に比べ悪い傾向であった。該分散液を溶解し得た紡糸原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は実施例に比べ大きく、フィルターの交換頻度が実施例1に比べ3倍であった。
【0058】
<比較例2>
重合条件を表2の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表4に記す通りであった。この重合体粒子は実施例1に比べ継粉が多い場合があった。溶解性も実施例1に比べ悪い傾向であった。該分散液を溶解し得た紡糸用の原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は実施例に比べ大きくフィルターの交換頻度が実施例1に比べ7倍であった。
【0059】
<比較例3>
重合条件を表2の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表4に記す通りであった。この重合体粒子は実施例1に比べ継粉が多い場合があった。溶解性も実施例1に比べ悪い傾向であった。該分散液を溶解し得た紡糸用の原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は実施例に比べ大きくフィルターの交換頻度が8倍であった。
【0060】
<比較例4>
重合条件を表2の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表4に記す通りであった。この重合体粒子は実施例1に比べ継粉が多い場合があった。溶解性も実施例1に比べ悪い傾向であった。該分散液を溶解し得た紡糸用の原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は実施例に比べ大きくフィルターの交換頻度が4倍であった。
【0061】
<比較例5>
重合条件を表2の記載のように変更した以外は実施例1と同様に重合し重合体粒子を製造し溶解性評価を行った。得られた重合体粒子の形状は表4に記す通りであった。この重合体粒子は実施例1に比べ継粉が多い場合があった。溶解性も実施例1に比べ悪い傾向であった。該分散液を溶解し得た紡糸用の原液をろ過工程のフィルターに通液したところフィルターの差圧上昇は実施例に比べ大きくフィルターの交換頻度が3倍であった。
【表1】

【0062】
AN アクリロニトリル
AAm アクリルアミド
MAA メタクリル酸
【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件(1)〜(5)を満足する炭素繊維前駆体アクリル繊維用重合体粒子。
(1)必須成分としてアクリロニトリル単量体単位を95〜99.5質量%、アクリルアミド単量体単位を0.5〜5質量%含む。
(2)任意成分としてアクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体単位を0〜4.5質量%含むことができる。
(3)嵩比重が0.30g/cmより大きく、0.40g/cm以下である。
(4)平均粒径が30μm以上40μm以下である。
(5)表面からの厚さが5μm以内である表層部の空孔率が30%以下である。
【請求項2】
以下の工程(1)〜(3)を有する炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法。
工程(1):請求項1記載の重合体粒子を溶剤に溶解し、紡糸原液を得る。
工程(2):前記紡糸原液を紡糸口金から吐出し、溶剤水溶液中で凝固させ、凝固糸条を得る。
工程(3):前記凝固糸条を洗浄し、延伸し、乾燥してアクリル繊維を得る。

【公開番号】特開2009−185273(P2009−185273A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181309(P2008−181309)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】