炭素繊維複合材料、油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法
【課題】 カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料、炭素繊維複合材料を用いた油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる炭素繊維複合材料50は、エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散している。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔dが0.5mm以下のオープンロール2を用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料50を得る。
【解決手段】 本発明にかかる炭素繊維複合材料50は、エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散している。本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔dが0.5mm以下のオープンロール2を用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料50を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料、炭素繊維複合材料を用いた油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝集しやすいカーボンナノファイバーを解繊して、エラストマーなどのマトリックス中に均一に分散させることは困難であったが、エラストマーに強いせん断力を加えることで、エラストマーの弾性と粘性とカーボンナノファイバーに対する化学的相互作用とによってカーボンナノファイバーを解繊してエラストマー中に均一に分散することができる画期的な炭素繊維複合材料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、カーボンナノファイバーの中でも特に細い、例えば、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは、高価なカーボンナノファイバーの中でも特に高価であり、商業的利用のための研究があまり進んでいない。例えば、比較的太い多層カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料は、引張試験における引張強さを向上させるためにたくさん配合することによって切断時伸びが低下する。ゴム組成物に対して高い柔軟性が要求される用途においては、炭素繊維複合材料における切断時伸びの向上が望まれている。また、引張強さを向上させるためにカーボンナノファイバーを大量に配合した炭素繊維複合材料は、絶縁性が低くなる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−97525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料、炭素繊維複合材料を用いた油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散したことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、カーボンナノファイバーの配合量が少量であっても引張試験における引張強さだけではなく切断時伸びの値も大きくすることができる。しかも、本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、比較的高価なカーボンナノファイバーを少量配合しただけで大きな引張強さ及び切断時伸びの値を有することができるので、経済的にも有利である。
【0008】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができる。
【0009】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmであることができる。
【0010】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多く含むことができる。
【0011】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エラストマーが天然ゴムであって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが480%以上であることができる。
【0012】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体であって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが230%以上であることができる。
【0013】
本発明にかかる油田装置は、前記炭素繊維複合材料を用いることができる。
【0014】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーの配合量が少量であっても引張試験における引張強さだけでなく切断時伸びの値も大きい炭素繊維複合材料を製造することができる。しかも、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、比較的高価なカーボンナノファイバーを少量配合しただけで炭素繊維複合材料の引張強さ及び切断時伸びの値を大きくすることができるので、経済的にも有利である。
【0016】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができる。
【0017】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmであることができる。
【0018】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多く含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図3】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】一実施の形態にかかる掘削同時検層装置を模式的に示す断面図である。
【図5】一実施の形態にかかる検層装置を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例に用いたDWCNTの電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例に用いたDWCNTの電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する引張強さを表わすグラフである。
【図11】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する切断時伸びを表わすグラフである。
【図12】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する引張強さを表わすグラフである。
【図13】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する切断時伸びを表わすグラフである。
【図14】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する体積抵抗率を表わすグラフである。
【図15】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する体積抵抗率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散したことを特徴とする。
【0022】
炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーの配合量がエラストマー100質量部に対して0.01質量部以上0.70質量部以下であれば、引張試験における引張強さ及び切断時伸びの値を大きくすることができる。すなわち、柔軟性と強度に優れた炭素繊維複合材料とすることができる。カーボンナノファイバーは一般に高価な材料であることが知られているが、特に平均直径が0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバーはその中でも高価であり、少量を配合するだけで材料物性を向上させることは経済的に有利である。また、炭素繊維複合材料は、例えばカーボンナノファイバーを含まず、それ以外は炭素繊維複合材料と同じ配合のゴム組成物に比べて、引張試験における切断時伸びを低下させることなく引張強さを向上することができる。炭素繊維複合材料は、引張試験における引張強さの値がエラストマー単体に比べて2.0MPa以上向上することができ、さらに3.0MPa以上向上することができ、特に3.5MPa以上向上することができる。なお、炭素繊維複合材料の引張試験は、JIS K6251に基づいて行い、炭素繊維複合材料におけるエラストマーを架橋した状態で評価する。
【0023】
炭素繊維複合材料は、絶縁性能に優れることができ、例えば、体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができ、さらに1.0×1012Ω・cm以上であることができ、特に1.0×1014Ω・cm以上であることができる。体積抵抗率は、炭素繊維複合材料の単位体積当たりの抵抗であり、体積抵抗率が例えば1.0×104Ω・cm以上の試料については、JIS K6271の二重リング電極法に基づいて測定することができる。また、体積抵抗率が例えば1.0×104Ω・cm未満の試料については、JIS K7194の四端子四探針法に基づいて測定することができる。エラストマーは一般に絶縁性に優れているが、カーボンナノファイバーを配合して引張強さを向上させると体積抵抗率が低くなり、導電性を示す傾向がある。しかしながら、例えばセンサなどの電子部品に直接接触するシール部材やダンパーなどの用途においては絶縁性が要求されることがあり、高い引張強さを有しながら高い体積抵抗率を有する炭素繊維複合材料が望まれる分野において特に有用である。
【0024】
炭素繊維複合材料に用いられるエラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーの末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有することができる。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
【0025】
カーボンナノファイバーは、先端が5員環が導入されて閉じた構造となっているため、ラジカルや官能基を生成しやすくなっている。エラストマーの分子の主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーの分子とカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
【0026】
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FFKM、FEPMなど)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。エラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、カーボンナノファイバーとの混合時にはエラストマーは未架橋体が好ましい。例えば、エラストマーが天然ゴムである場合には、炭素繊維複合材料の引張試験における切断時伸びが480%以上であることができ、さらに490%以上であることができる。天然ゴムは主鎖に不飽和結合を含むため、素練り及び混練中にラジカルが生成しやすく、カーボンナノファイバーを比較的分散させやすい。また、例えば、エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)である場合には、炭素繊維複合材料の引張試験における切断時伸びが230%以上であることができる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は非極性であって、主鎖内に不飽和結合がないため天然ゴムに比べてカーボンナノファイバーを分散させにくいエラストマーである。
【0027】
炭素繊維複合材料に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm以上7.0nm以下であり、さらに、平均直径が0.4nm以上5.0nm以下であって、単層カーボンナノファイバー及び2層カーボンナノファイバーの少なくとも一方であることができる。特に、炭素繊維複合材料に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径が1.0nm以上3.0nm以下であって、単層カーボンナノファイバー及び2層カーボンナノファイバーの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブより多数含むことができる。カーボンナノファイバーの平均直径が0.4nm以上7.0nm以下であることによって、配合量が少なくても引張試験における引張強さを向上させることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、繊維の外径である。カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状、あるいは湾曲繊維状であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
【0028】
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWCNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWCNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などがあり、本実施の形態においては、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含むカーボンナノファイバーを用いることができる。例えば、単層カーボンナノチューブとして市場で流通しているカーボンナノファイバーであっても、単層カーボンナノチューブよりも少ない本数ではあるものの多層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブを含むことがあり、全てが単層カーボンナノチューブではないことがあるが純度50%以上の単層カーボンナノチューブであれば単層カーボンナノチューブとして用いることができる。また、2層カーボンナノチューブについても同様に純度50%以上の2層カーボンナノチューブであれば2層カーボンナノチューブとして用いることができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブや気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
【0029】
単層カーボンナノチューブもしくは2層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造することができる。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0030】
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得ることを特徴とする。
【0031】
図1〜図3は、一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【0032】
炭素繊維複合材料の製造方法は、例えば、図1〜図3に示すようにオープンロール2を用いて行うことができる。2本ロールのオープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
【0033】
まず、図1に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマーの分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
【0034】
次に、図2に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、カーボンナノファイバー80を投入し、混練して図3に示す第1の混合物36を得ることができる。図1〜図2の第1の混合物36を得る工程については、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
【0035】
さらに、図3に示すように、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、図2で得られた第1の混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回〜複数回行なうことができる。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、さらにエラストマー30の弾性による復元力で図3のように大きく変形し、その際にエラストマー30と共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm〜500μmのシート状に分出しされる。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃に設定して行うことができ、さらに5〜30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。エラストマー30の実測温度も0〜50℃に調整されることができ、さらに5〜30℃調整されることができる。このような温度範囲に調整することによって、エラストマー30の弾性を利用してカーボンナノファイバーを分散することができる。このようにして得られた剪断力により、エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマーの分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30中に分散される。特に、エラストマー30は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
【0036】
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの分子の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマーの分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマーの分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。このようにして得られた炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーが均一に分散しているため、例えばその引張破断面や切断面を電子顕微鏡で観察してもカーボンナノファイバーの凝集体が見られない。
【0037】
本発明の一実施の形態にかかる油田装置(Oilfield Apparatus)について説明する。前記炭素繊維複合材料は、油田装置に用いることができる。油田装置としては、例えば、検層装置(logging tool)などに用いることができる。油田装置の代表的な実施形態について以下に説明する。
【0038】
検層装置は、例えば掘削された坑井(borehole)内及び坑井周辺の地層、油層などの物理的特性や坑井あるいはケーシングの幾何学的特性(孔径、方位、傾斜等)、油層の流れの挙動などを深度毎に記録するための装置であって、例えば油田(oilfield)において用いることができる。油田用途の検層装置としては、例えば、図4に示す地下(underground)用途と、図5に示す海底(subsea)用途と、を挙げることができる。検層装置には、ワイヤーライン検層(Wireline log/logging)や泥水検層(Mud logging)などがあり、測定機器が掘削編成に装備されている掘削同時検層(LWD:Logging While Drilling)や掘削同時測定(MWD:Measurement While Drilling)などがある。これらの検層装置は、地中の深い位置で作業するため、周囲環境はシール材などに用いられる炭素繊維複合材料にとって苛酷になり、例えば、高い引張強さ及び切断時伸びが要求されることがあり、さらに、絶縁性能が要求されることがある。
【0039】
図4は、一実施の形態にかかる掘削同時検層装置検層装置を模式的に示す断面図である。図5は、一実施の形態にかかる検層装置を模式的に示す断面図である。
【0040】
図4に示すように、地表155における、掘削編成に装備された測定機器による地下資源の探査は、例えば坑井(borehole)156の上方に配置されたプラットホーム及びデリック編成151と、デリック編成151から地下に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に配置された検層装置として例えば坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160と、を有する。デリック編成151は、例えば、フック151aと、回転スイベル(rotary swivel)151bと、ケリー(kelly)151cと、回転テーブル151dと、を含むことができる。坑底機器編成160は、例えばデリック編成151から延びる長いドリル・ストリング(drill string)153の先端に固定される。ドリル・ストリング153の内部には、図示していないポンプから回転スイベル151bを介して泥水が送り込まれ、坑底機器編成160の流体駆動モータを駆動させることができる。坑底機器編成160は、複数のモジュールを有し、例えば、先端から順に、ドリルビット162、回転操作システム(RSS:rotary steerable system)164、マッドモータ(Mud moter)166、掘削同時測定モジュール168、及び掘削同時検層モジュール170を連結して有することができる。ドリルビット162は、坑井156の坑底部156aにおいて回転によって掘削を進めることができる。坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160を坑井156へ進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。
【0041】
掘削同時測定モジュール168は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しないを掘削同時測定器具が配置されている。掘削同時測定器具は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、方位、傾斜、ビットの向き、荷重、トルク、温度、圧力等の坑底データを計測するとともに、これらの計測データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0042】
掘削同時検層モジュール170は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しない掘削同時検層機器が配置されている。掘削同時検層機器は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、比抵抗、孔隙率、音波速度及びガンマ線等を測定し、物理検層データを取得することができ、この物理検層データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0043】
炭素繊維複合材料は、例えば、坑底機器編成160における動的シール部材、静的シール部材、マッドモータ166、パッカー、免振・放熱部材などに用いることができる。
【0044】
なお、坑底機器編成160は、一実施形態として、ドリルビット162と、回転操作システム164と、マッドモータ166と、掘削同時測定モジュール168と、掘削同時検層モジュール170と、を有する例について説明したが、これに限らず、検層用途に合わせて選択して組み合わせることができる。
【0045】
図5に示すように、海洋でのワイヤーライン検層を用いた地下資源の探査は、例えば海152に浮くプラットホーム150から海底154に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に検層装置として例えばダウンホール装置(Downhole Apparatus)160’を進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。ダウンホール装置160’は、例えばプラットホームから延びる長いケーブルもしくはコミュニケーション・リンクの先端に固定され、図示しない複数の圧力容器などの筐体を内部に有する。筐体の内部には、例えば電気検層(SP検層、ノルマル検層、インダクション検層、ラテロ検層、マイクロ比抵抗検層など)、放射能検層(ガンマ線検層、中性子検層、密度検層、核磁気共鳴検層など)、音波検層(弾性波検層、アレー音波検層、セメント・ボンド検層など)、地質情報検層(ディップメーター、FMIなど)、坑内地震探査(チェックショット速度検層、VSPなど)、サンプリング検層(サイドウォール・コアリング検層、流体分析検層、RFT,MDTなど)、補助検層(キャリパー(坑径)測定、坑井幾何学特性検層、温度検層など)、特殊目的検層(過酷条件下での検層(Logs in hostile environment)、掘削管経由検層(measurement through drill pipe)など)などの探査用電子機器が探査の目的に合わせて選択して封入されて配置され、地中の地質構造などを探査することが可能であるが、地下深く掘削された坑井156内部では高温にさらされるとともに、坑井156へ進入する際の振動や衝撃を受ける。
【0046】
炭素繊維複合材料は、例えば、ダウンホール装置160’における動的シール部材、静的シール部材、パッカー、免振・放熱部材などに用いることができる。特に、炭素繊維複合材料は、優れた絶縁性能を要求される用途、例えば、ダウンホール装置160’における各種センサ類のような電子部品に直接接触するシール部材やダンパーなどに使用することができる。
【0047】
炭素繊維複合材料は、公知の方法で架橋することができる。また、炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤、受酸剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、混合の過程の適切な時期にエラストマーに投入することができる。
【0048】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0049】
(1)実施例1〜8及び比較例1〜8のサンプルの作成
6インチオープンロール(ロール温度10〜30℃、ロール間隔1.0mm以下)に、100質量部(phr)の重量平均分子量が約300万の天然ゴムを投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、表1〜表3に示す所定量のカーボンナノファイバー(表1〜3では「DWCNT」、「SWCNT」または「MWCNT」と示した)を投入し、第1の混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を0.1mm以下と狭くして、第1の混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。さらに、この炭素繊維複合材料に所定量の架橋剤を混合して分出し、金型にセットして165℃、100kgf/cm2にて20分間プレス架橋することで実施例1〜8及び比較例1〜8の炭素繊維複合材料のサンプルを得た。なお、比較例1はカーボンナノファイバーを配合していない天然ゴム単体の架橋体サンプルであった。
【0050】
実施例1〜8に用いた2層カーボンナノチューブ(原料)の電子顕微鏡写真を図6(50倍)、図7(20,000倍)に示した。また、実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真を図8(50倍)、図9(20,000倍)に示した。図8及び図9に示すように、2層カーボンナノチューブは天然ゴム中に均一に分散していたため、炭素繊維複合材料の引張破断面には2層カーボンナノチューブの凝集塊は観察されなかった。
【0051】
(2)実施例9〜10及び比較例9〜14のサンプルの作成
6インチオープンロール(ロール温度10〜30℃、ロール間隔1.0mm以下)に、100質量部(phr)のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(表4〜5では「EPDM」と示した)を投入して、ロールに巻き付かせ、表4〜5に示す所定量のカーボンナノファイバー(表4〜5では「DWCNT」または「MWCNT」と示した)を混合した後、第1の混練工程を行いロールから取り出した。さらに、その混合物をロール温度100℃に設定されたオープンロールに再度投入し、第2の混練工程を行って取り出した。次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)で薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しして得られた無架橋のシートに有機過酸化物と共架橋剤とを配合して混合し、ロール間隙を1.1mmにセットしたオープンロールに投入し、分出しした。分出しして金型サイズに切り取ったシートを金型にセットし、175℃、100kgf/cm2、20分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例9〜10及び比較例9〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。「EPDM」はJSR社製のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)の商品名EP24(ムーニー粘度(ML1+4、125℃)が42、エチレン含量54質量%、ジエン含量4.5質量%)であった。
【0052】
また、実施例及び比較例のカーボンナノファイバーは、平均直径が3.0nmの2層カーボンナノチューブ(表1では「DWCNT」と示した)と、平均直径が1.0nmの単層カーボンナノチューブ(表2では「SWCNT」と示した)と、平均直径が13.0nmの多層カーボンナノチューブ(表3及び表5では「MWCNT」と示した)と、であった。
【0053】
(3)常態物性の測定
常態物性として、実施例1〜10及び比較例1〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、室温における硬度、引張強さ及び切断時伸びを測定した。測定結果を表1〜5に示した。また、測定結果をカーボンナノファイバーの配合量に対する引張強さ、または、カーボンナノファイバーに対する切断時伸びの関係を図10〜図13に示した。図10及び図11において、実施例1〜5は■、実施例6−8は▲、比較例1は破線、比較例2は□、比較例3は△、比較例4〜8は●で示した。図12及び図13において、実施例9〜10は■、比較例9は破線、比較例10は□、比較例11−14は●で示した。
ゴム硬度(表1〜5において「Hs(JIS−A)」で示した。)は、JIS K 6253に基づいて測定した。
【0054】
引張強さ(表1〜5において「TS(MPa)」で示した。)及び切断時伸び(表1〜5において「Eb(%)」で示した。)は、JIS6号形のダンベル形状に切り出した試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い測定した。
【0055】
(4)体積抵抗率の測定
実施例1〜10及び比較例1〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、JIS K6271またはJIS K7194に基づいて、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。より詳細には、炭素繊維複合材料サンプルから厚さ1mmの試験片を作成し、体積抵抗率が1.0×104Ω・cm以上の試験片についてはアジレント・テクノロジー株式会社製のAgilent4339/Bを用いてJIS K7194に基づいて測定し、1.0×104Ω・cm未満の試験片については三菱化学株式会社製の体積抵抗率測定機(Loresta−GP MCP−T610)を用いてJIS K6271に基づいて測定した。測定条件は、23±2℃、印加電圧10V〜1000Vの範囲で測定した。測定結果を表1〜5に示した。また、測定結果をカーボンナノファイバーの配合量に対する体積抵抗率の関係を図14及び図15に示した。図14において、実施例1〜5は■、実施例6−8は▲、比較例2は□、比較例3は△、比較例4〜8は●で示し、比較例1(1.0×1016Ω・cm)は破線で示した。図15において、実施例9〜10は■、比較例9は破線、比較例10は□、比較例11−14は●で示し、比較例9(2.0×1016Ω・cm)は破線で示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1及び図10〜図11によれば、DWCNTを配合した実施例1〜5は、カーボンナノファイバーの配合量が0.01質量部〜0.7質量部において、天然ゴム単体の比較例1よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例2のようにDWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例1〜5に比べて、引張強さはあまり変わらないものの切断時伸びの値が比較例1よりも160%も小さく、体積抵抗率が15.0Ω・cmだった。
【0060】
表2及び図10〜図11によれば、SWCNTを配合した実施例6〜8は、カーボンナノファイバーの配合量が0.01質量部〜0.7質量部において、天然ゴム単体の比較例1よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例3のようにSWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例6〜8に比べて、引張強さは向上したものの切断時伸びの値が比較例1よりも130%も小さく、体積抵抗率が20.0Ω・cmだった。
【0061】
さらに、表1〜3及び図10〜図14によれば、比較例4,5のようにMWCNTを0.7質量部〜1.0質量部配合しただけでは引張強さが比較例1とほとんど変わらず、切断時伸びの値が比較例1よりも150%以上小さかった。また、比較例6〜8は、MWCNTを10質量部以上配合することで引張強さが実施例1〜8と同程度またはそれ以上になるが、切断時伸びの値が170%以上小さくなった。さらに、実施例1〜8は体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していたのに対し、実施例1〜8と同程度またはそれ以上の引張強さを有するようにMWCNTを配合した比較例6〜8は、体積抵抗率が25Ω・cm以下であった。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4及び図12〜図13によれば、DWCNTを配合した実施例9〜10は、カーボンナノファイバーの配合量が0.1質量部〜0.7質量部において、EPDM単体の比較例9よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例10のようにDWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例9〜10に比べて、引張強さはあまり変わらないものの切断時伸びが比較例9よりも小さかった。実施例1〜10によれば、炭素繊維複合材料の引張強さと切断時伸びは非極性のEPDMであっても天然ゴムと同様の傾向を示した。
【0065】
さらに、表4,5及び図12〜図13、図15によれば、比較例11,12のようにMWCNTを0.7質量部〜1.0質量部配合しただけでは引張強さが比較例9より顕著に大きくならず、切断時伸びの値が比較例9と同じであった。また、比較例13〜14は、MWCNTを10質量部以上配合することで引張強さが大きくなるが、切断時伸びの値が20%以上小さくなった。さらに、実施例9〜10は体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上の絶縁性能を有していたのに対し、実施例9〜10と同程度またはそれ以上の引張強さを有するようにMWCNTを配合した比較例13〜14は体積抵抗率が8.9×107Ω・cm以下であった。
【符号の説明】
【0066】
2 オープンロール、10 第1のロール、20 第2のロール、30 エラストマー、34 バンク、36 混合物、50 炭素繊維複合材料、80 カーボンナノファイバー、V1,V2 回転速度、150 プラットホーム、151 デリック編成、151a フック、151b 回転スイベル、151c ケリー、151d 回転テーブル、152 海、153 ドリル・ストリング、154 海底、155 地表、156 坑井、156a 坑底部、160 坑底機器編成、160’ ダウンホール装置、162 ドリルビット、164 回転操作システム、166 マッドモータ、168 掘削同時測定モジュール、170 掘削同時検層モジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料、炭素繊維複合材料を用いた油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝集しやすいカーボンナノファイバーを解繊して、エラストマーなどのマトリックス中に均一に分散させることは困難であったが、エラストマーに強いせん断力を加えることで、エラストマーの弾性と粘性とカーボンナノファイバーに対する化学的相互作用とによってカーボンナノファイバーを解繊してエラストマー中に均一に分散することができる画期的な炭素繊維複合材料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、カーボンナノファイバーの中でも特に細い、例えば、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは、高価なカーボンナノファイバーの中でも特に高価であり、商業的利用のための研究があまり進んでいない。例えば、比較的太い多層カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料は、引張試験における引張強さを向上させるためにたくさん配合することによって切断時伸びが低下する。ゴム組成物に対して高い柔軟性が要求される用途においては、炭素繊維複合材料における切断時伸びの向上が望まれている。また、引張強さを向上させるためにカーボンナノファイバーを大量に配合した炭素繊維複合材料は、絶縁性が低くなる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−97525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カーボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合材料、炭素繊維複合材料を用いた油田装置及び炭素繊維複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散したことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、カーボンナノファイバーの配合量が少量であっても引張試験における引張強さだけではなく切断時伸びの値も大きくすることができる。しかも、本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、比較的高価なカーボンナノファイバーを少量配合しただけで大きな引張強さ及び切断時伸びの値を有することができるので、経済的にも有利である。
【0008】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができる。
【0009】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmであることができる。
【0010】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多く含むことができる。
【0011】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エラストマーが天然ゴムであって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが480%以上であることができる。
【0012】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体であって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが230%以上であることができる。
【0013】
本発明にかかる油田装置は、前記炭素繊維複合材料を用いることができる。
【0014】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、カーボンナノファイバーの配合量が少量であっても引張試験における引張強さだけでなく切断時伸びの値も大きい炭素繊維複合材料を製造することができる。しかも、本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法によれば、比較的高価なカーボンナノファイバーを少量配合しただけで炭素繊維複合材料の引張強さ及び切断時伸びの値を大きくすることができるので、経済的にも有利である。
【0016】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができる。
【0017】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmであることができる。
【0018】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多く含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図2】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図3】炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】一実施の形態にかかる掘削同時検層装置を模式的に示す断面図である。
【図5】一実施の形態にかかる検層装置を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例に用いたDWCNTの電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例に用いたDWCNTの電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する引張強さを表わすグラフである。
【図11】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する切断時伸びを表わすグラフである。
【図12】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する引張強さを表わすグラフである。
【図13】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する切断時伸びを表わすグラフである。
【図14】実施例1〜8及び比較例1〜8のカーボンナノファイバーの充填量に対する体積抵抗率を表わすグラフである。
【図15】実施例9〜10及び比較例9〜14のカーボンナノファイバーの充填量に対する体積抵抗率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散したことを特徴とする。
【0022】
炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーの配合量がエラストマー100質量部に対して0.01質量部以上0.70質量部以下であれば、引張試験における引張強さ及び切断時伸びの値を大きくすることができる。すなわち、柔軟性と強度に優れた炭素繊維複合材料とすることができる。カーボンナノファイバーは一般に高価な材料であることが知られているが、特に平均直径が0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバーはその中でも高価であり、少量を配合するだけで材料物性を向上させることは経済的に有利である。また、炭素繊維複合材料は、例えばカーボンナノファイバーを含まず、それ以外は炭素繊維複合材料と同じ配合のゴム組成物に比べて、引張試験における切断時伸びを低下させることなく引張強さを向上することができる。炭素繊維複合材料は、引張試験における引張強さの値がエラストマー単体に比べて2.0MPa以上向上することができ、さらに3.0MPa以上向上することができ、特に3.5MPa以上向上することができる。なお、炭素繊維複合材料の引張試験は、JIS K6251に基づいて行い、炭素繊維複合材料におけるエラストマーを架橋した状態で評価する。
【0023】
炭素繊維複合材料は、絶縁性能に優れることができ、例えば、体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上であることができ、さらに1.0×1012Ω・cm以上であることができ、特に1.0×1014Ω・cm以上であることができる。体積抵抗率は、炭素繊維複合材料の単位体積当たりの抵抗であり、体積抵抗率が例えば1.0×104Ω・cm以上の試料については、JIS K6271の二重リング電極法に基づいて測定することができる。また、体積抵抗率が例えば1.0×104Ω・cm未満の試料については、JIS K7194の四端子四探針法に基づいて測定することができる。エラストマーは一般に絶縁性に優れているが、カーボンナノファイバーを配合して引張強さを向上させると体積抵抗率が低くなり、導電性を示す傾向がある。しかしながら、例えばセンサなどの電子部品に直接接触するシール部材やダンパーなどの用途においては絶縁性が要求されることがあり、高い引張強さを有しながら高い体積抵抗率を有する炭素繊維複合材料が望まれる分野において特に有用である。
【0024】
炭素繊維複合材料に用いられるエラストマーは、主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーの末端のラジカルに対して親和性を有する不飽和結合または基を有するか、もしくは、このようなラジカルまたは基を生成しやすい性質を有することができる。かかる不飽和結合または基としては、二重結合、三重結合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、アロファネート基および尿素基などの官能基から選択される少なくともひとつであることができる。
【0025】
カーボンナノファイバーは、先端が5員環が導入されて閉じた構造となっているため、ラジカルや官能基を生成しやすくなっている。エラストマーの分子の主鎖、側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、カーボンナノファイバーのラジカルと親和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や基を有することにより、エラストマーの分子とカーボンナノファイバーとを結合することができる。このことにより、カーボンナノファイバーの凝集力にうち勝ってその分散を容易にすることができる。そして、エラストマーと、カーボンナノファイバーと、を混練する際に、エラストマーの分子鎖が切断されて生成したフリーラジカルは、カーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、カーボンナノファイバーの表面にラジカルを生成すると推測できる。
【0026】
エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FFKM、FEPMなど)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物を用いることができる。エラストマーは、ゴム系エラストマーあるいは熱可塑性エラストマーのいずれであってもよい。また、ゴム系エラストマーの場合、カーボンナノファイバーとの混合時にはエラストマーは未架橋体が好ましい。例えば、エラストマーが天然ゴムである場合には、炭素繊維複合材料の引張試験における切断時伸びが480%以上であることができ、さらに490%以上であることができる。天然ゴムは主鎖に不飽和結合を含むため、素練り及び混練中にラジカルが生成しやすく、カーボンナノファイバーを比較的分散させやすい。また、例えば、エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)である場合には、炭素繊維複合材料の引張試験における切断時伸びが230%以上であることができる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は非極性であって、主鎖内に不飽和結合がないため天然ゴムに比べてカーボンナノファイバーを分散させにくいエラストマーである。
【0027】
炭素繊維複合材料に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm以上7.0nm以下であり、さらに、平均直径が0.4nm以上5.0nm以下であって、単層カーボンナノファイバー及び2層カーボンナノファイバーの少なくとも一方であることができる。特に、炭素繊維複合材料に用いるカーボンナノファイバーは、平均直径が1.0nm以上3.0nm以下であって、単層カーボンナノファイバー及び2層カーボンナノファイバーの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブより多数含むことができる。カーボンナノファイバーの平均直径が0.4nm以上7.0nm以下であることによって、配合量が少なくても引張試験における引張強さを向上させることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、繊維の外径である。カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状、あるいは湾曲繊維状であることができる。カーボンナノファイバーの平均直径は、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノファイバーのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
【0028】
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWCNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWCNT)、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)などがあり、本実施の形態においては、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含むカーボンナノファイバーを用いることができる。例えば、単層カーボンナノチューブとして市場で流通しているカーボンナノファイバーであっても、単層カーボンナノチューブよりも少ない本数ではあるものの多層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブを含むことがあり、全てが単層カーボンナノチューブではないことがあるが純度50%以上の単層カーボンナノチューブであれば単層カーボンナノチューブとして用いることができる。また、2層カーボンナノチューブについても同様に純度50%以上の2層カーボンナノチューブであれば2層カーボンナノチューブとして用いることができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブや気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
【0029】
単層カーボンナノチューブもしくは2層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造することができる。なお、カーボンナノファイバーは、エラストマーと混練される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、エラストマーとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0030】
本発明の一実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得ることを特徴とする。
【0031】
図1〜図3は、一実施の形態に係る炭素繊維複合材料の製造方法を模式的に示す図である。
【0032】
炭素繊維複合材料の製造方法は、例えば、図1〜図3に示すようにオープンロール2を用いて行うことができる。2本ロールのオープンロール2における第1のロール10と第2のロール20とは、所定の間隔d、例えば0.5mm〜1.5mmの間隔で配置され、矢印で示す方向に回転速度V1,V2で正転あるいは逆転で回転する。
【0033】
まず、図1に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30の素練りを行ない、エラストマーの分子鎖を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたエラストマーのフリーラジカルがカーボンナノファイバーと結びつきやすい状態となる。
【0034】
次に、図2に示すように、第1のロール10に巻き付けられたエラストマー30のバンク34に、カーボンナノファイバー80を投入し、混練して図3に示す第1の混合物36を得ることができる。図1〜図2の第1の混合物36を得る工程については、オープンロール法に限定されず、例えば密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。
【0035】
さらに、図3に示すように、第1のロール10と第2のロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0〜0.5mmの間隔に設定し、図2で得られた第1の混合物36をオープンロール2に投入して薄通しを1回〜複数回行なうことができる。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロール20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。このように狭いロール間から押し出された炭素繊維複合材料50は、さらにエラストマー30の弾性による復元力で図3のように大きく変形し、その際にエラストマー30と共にカーボンナノファイバーが大きく移動する。薄通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロールで圧延されて所定厚さ、例えば100μm〜500μmのシート状に分出しされる。この薄通しの工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0〜50℃に設定して行うことができ、さらに5〜30℃の比較的低い温度に設定して行うことができる。エラストマー30の実測温度も0〜50℃に調整されることができ、さらに5〜30℃調整されることができる。このような温度範囲に調整することによって、エラストマー30の弾性を利用してカーボンナノファイバーを分散することができる。このようにして得られた剪断力により、エラストマー30に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノファイバーがエラストマーの分子に1本ずつ引き抜かれるように相互に分離し、エラストマー30中に分散される。特に、エラストマー30は、弾性と、粘性と、カーボンナノファイバーとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノファイバーを容易に分散することができる。そして、カーボンナノファイバーの分散性および分散安定性(カーボンナノファイバーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維複合材料50を得ることができる。
【0036】
より具体的には、オープンロールでエラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの分子の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合する。カーボンナノファイバーの表面が例えば酸化処理によって適度に活性が高いと、特にエラストマーの分子と結合し易くできる。次に、エラストマーに強い剪断力が作用すると、エラストマーの分子の移動に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散されることになる。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。このようにして得られた炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーが均一に分散しているため、例えばその引張破断面や切断面を電子顕微鏡で観察してもカーボンナノファイバーの凝集体が見られない。
【0037】
本発明の一実施の形態にかかる油田装置(Oilfield Apparatus)について説明する。前記炭素繊維複合材料は、油田装置に用いることができる。油田装置としては、例えば、検層装置(logging tool)などに用いることができる。油田装置の代表的な実施形態について以下に説明する。
【0038】
検層装置は、例えば掘削された坑井(borehole)内及び坑井周辺の地層、油層などの物理的特性や坑井あるいはケーシングの幾何学的特性(孔径、方位、傾斜等)、油層の流れの挙動などを深度毎に記録するための装置であって、例えば油田(oilfield)において用いることができる。油田用途の検層装置としては、例えば、図4に示す地下(underground)用途と、図5に示す海底(subsea)用途と、を挙げることができる。検層装置には、ワイヤーライン検層(Wireline log/logging)や泥水検層(Mud logging)などがあり、測定機器が掘削編成に装備されている掘削同時検層(LWD:Logging While Drilling)や掘削同時測定(MWD:Measurement While Drilling)などがある。これらの検層装置は、地中の深い位置で作業するため、周囲環境はシール材などに用いられる炭素繊維複合材料にとって苛酷になり、例えば、高い引張強さ及び切断時伸びが要求されることがあり、さらに、絶縁性能が要求されることがある。
【0039】
図4は、一実施の形態にかかる掘削同時検層装置検層装置を模式的に示す断面図である。図5は、一実施の形態にかかる検層装置を模式的に示す断面図である。
【0040】
図4に示すように、地表155における、掘削編成に装備された測定機器による地下資源の探査は、例えば坑井(borehole)156の上方に配置されたプラットホーム及びデリック編成151と、デリック編成151から地下に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に配置された検層装置として例えば坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160と、を有する。デリック編成151は、例えば、フック151aと、回転スイベル(rotary swivel)151bと、ケリー(kelly)151cと、回転テーブル151dと、を含むことができる。坑底機器編成160は、例えばデリック編成151から延びる長いドリル・ストリング(drill string)153の先端に固定される。ドリル・ストリング153の内部には、図示していないポンプから回転スイベル151bを介して泥水が送り込まれ、坑底機器編成160の流体駆動モータを駆動させることができる。坑底機器編成160は、複数のモジュールを有し、例えば、先端から順に、ドリルビット162、回転操作システム(RSS:rotary steerable system)164、マッドモータ(Mud moter)166、掘削同時測定モジュール168、及び掘削同時検層モジュール170を連結して有することができる。ドリルビット162は、坑井156の坑底部156aにおいて回転によって掘削を進めることができる。坑底機器編成(BHA:bottom hole assembly)160を坑井156へ進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。
【0041】
掘削同時測定モジュール168は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しないを掘削同時測定器具が配置されている。掘削同時測定器具は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、方位、傾斜、ビットの向き、荷重、トルク、温度、圧力等の坑底データを計測するとともに、これらの計測データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0042】
掘削同時検層モジュール170は、ドリルカラー(drill collar)と呼ばれる厚い壁を有するパイプの壁部に設けられたチャンバー内に図示しない掘削同時検層機器が配置されている。掘削同時検層機器は、電池、コンデンサ及び各種センサを探査の目的に合わせて選択して含み、例えば、比抵抗、孔隙率、音波速度及びガンマ線等を測定し、物理検層データを取得することができ、この物理検層データをリアルタイムに地上へ伝送することができる。
【0043】
炭素繊維複合材料は、例えば、坑底機器編成160における動的シール部材、静的シール部材、マッドモータ166、パッカー、免振・放熱部材などに用いることができる。
【0044】
なお、坑底機器編成160は、一実施形態として、ドリルビット162と、回転操作システム164と、マッドモータ166と、掘削同時測定モジュール168と、掘削同時検層モジュール170と、を有する例について説明したが、これに限らず、検層用途に合わせて選択して組み合わせることができる。
【0045】
図5に示すように、海洋でのワイヤーライン検層を用いた地下資源の探査は、例えば海152に浮くプラットホーム150から海底154に設けられた縦穴や横穴などで構成される坑井156内に検層装置として例えばダウンホール装置(Downhole Apparatus)160’を進入させ、地中の地質構造などを探査し、目標物質である例えば石油の有無を探査する。ダウンホール装置160’は、例えばプラットホームから延びる長いケーブルもしくはコミュニケーション・リンクの先端に固定され、図示しない複数の圧力容器などの筐体を内部に有する。筐体の内部には、例えば電気検層(SP検層、ノルマル検層、インダクション検層、ラテロ検層、マイクロ比抵抗検層など)、放射能検層(ガンマ線検層、中性子検層、密度検層、核磁気共鳴検層など)、音波検層(弾性波検層、アレー音波検層、セメント・ボンド検層など)、地質情報検層(ディップメーター、FMIなど)、坑内地震探査(チェックショット速度検層、VSPなど)、サンプリング検層(サイドウォール・コアリング検層、流体分析検層、RFT,MDTなど)、補助検層(キャリパー(坑径)測定、坑井幾何学特性検層、温度検層など)、特殊目的検層(過酷条件下での検層(Logs in hostile environment)、掘削管経由検層(measurement through drill pipe)など)などの探査用電子機器が探査の目的に合わせて選択して封入されて配置され、地中の地質構造などを探査することが可能であるが、地下深く掘削された坑井156内部では高温にさらされるとともに、坑井156へ進入する際の振動や衝撃を受ける。
【0046】
炭素繊維複合材料は、例えば、ダウンホール装置160’における動的シール部材、静的シール部材、パッカー、免振・放熱部材などに用いることができる。特に、炭素繊維複合材料は、優れた絶縁性能を要求される用途、例えば、ダウンホール装置160’における各種センサ類のような電子部品に直接接触するシール部材やダンパーなどに使用することができる。
【0047】
炭素繊維複合材料は、公知の方法で架橋することができる。また、炭素繊維複合材料の製造方法において、通常、エラストマーの加工で用いられる配合剤を加えることができる。配合剤としては公知のものを用いることができる。配合剤としては、例えば、架橋剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、着色剤、受酸剤などを挙げることができる。これらの配合剤は、混合の過程の適切な時期にエラストマーに投入することができる。
【0048】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて、本発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0049】
(1)実施例1〜8及び比較例1〜8のサンプルの作成
6インチオープンロール(ロール温度10〜30℃、ロール間隔1.0mm以下)に、100質量部(phr)の重量平均分子量が約300万の天然ゴムを投入して、ロールに巻き付かせ、5分間素練りした後、表1〜表3に示す所定量のカーボンナノファイバー(表1〜3では「DWCNT」、「SWCNT」または「MWCNT」と示した)を投入し、第1の混合物をオープンロールから取り出した。そして、ロール間隔を0.1mm以下と狭くして、第1の混合物を再びオープンロールに投入して薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。さらに、この炭素繊維複合材料に所定量の架橋剤を混合して分出し、金型にセットして165℃、100kgf/cm2にて20分間プレス架橋することで実施例1〜8及び比較例1〜8の炭素繊維複合材料のサンプルを得た。なお、比較例1はカーボンナノファイバーを配合していない天然ゴム単体の架橋体サンプルであった。
【0050】
実施例1〜8に用いた2層カーボンナノチューブ(原料)の電子顕微鏡写真を図6(50倍)、図7(20,000倍)に示した。また、実施例5の炭素繊維複合材料の引張破断面の電子顕微鏡写真を図8(50倍)、図9(20,000倍)に示した。図8及び図9に示すように、2層カーボンナノチューブは天然ゴム中に均一に分散していたため、炭素繊維複合材料の引張破断面には2層カーボンナノチューブの凝集塊は観察されなかった。
【0051】
(2)実施例9〜10及び比較例9〜14のサンプルの作成
6インチオープンロール(ロール温度10〜30℃、ロール間隔1.0mm以下)に、100質量部(phr)のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(表4〜5では「EPDM」と示した)を投入して、ロールに巻き付かせ、表4〜5に示す所定量のカーボンナノファイバー(表4〜5では「DWCNT」または「MWCNT」と示した)を混合した後、第1の混練工程を行いロールから取り出した。さらに、その混合物をロール温度100℃に設定されたオープンロールに再度投入し、第2の混練工程を行って取り出した。次に、この混合物をオープンロール(ロール温度10〜20℃、ロール間隔0.3mm)で薄通しを繰り返し5回行なった。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しして得られた無架橋のシートに有機過酸化物と共架橋剤とを配合して混合し、ロール間隙を1.1mmにセットしたオープンロールに投入し、分出しした。分出しして金型サイズに切り取ったシートを金型にセットし、175℃、100kgf/cm2、20分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例9〜10及び比較例9〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを得た。「EPDM」はJSR社製のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)の商品名EP24(ムーニー粘度(ML1+4、125℃)が42、エチレン含量54質量%、ジエン含量4.5質量%)であった。
【0052】
また、実施例及び比較例のカーボンナノファイバーは、平均直径が3.0nmの2層カーボンナノチューブ(表1では「DWCNT」と示した)と、平均直径が1.0nmの単層カーボンナノチューブ(表2では「SWCNT」と示した)と、平均直径が13.0nmの多層カーボンナノチューブ(表3及び表5では「MWCNT」と示した)と、であった。
【0053】
(3)常態物性の測定
常態物性として、実施例1〜10及び比較例1〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、室温における硬度、引張強さ及び切断時伸びを測定した。測定結果を表1〜5に示した。また、測定結果をカーボンナノファイバーの配合量に対する引張強さ、または、カーボンナノファイバーに対する切断時伸びの関係を図10〜図13に示した。図10及び図11において、実施例1〜5は■、実施例6−8は▲、比較例1は破線、比較例2は□、比較例3は△、比較例4〜8は●で示した。図12及び図13において、実施例9〜10は■、比較例9は破線、比較例10は□、比較例11−14は●で示した。
ゴム硬度(表1〜5において「Hs(JIS−A)」で示した。)は、JIS K 6253に基づいて測定した。
【0054】
引張強さ(表1〜5において「TS(MPa)」で示した。)及び切断時伸び(表1〜5において「Eb(%)」で示した。)は、JIS6号形のダンベル形状に切り出した試験片について、島津製作所社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い測定した。
【0055】
(4)体積抵抗率の測定
実施例1〜10及び比較例1〜14の架橋体の炭素繊維複合材料サンプルについて、JIS K6271またはJIS K7194に基づいて、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。より詳細には、炭素繊維複合材料サンプルから厚さ1mmの試験片を作成し、体積抵抗率が1.0×104Ω・cm以上の試験片についてはアジレント・テクノロジー株式会社製のAgilent4339/Bを用いてJIS K7194に基づいて測定し、1.0×104Ω・cm未満の試験片については三菱化学株式会社製の体積抵抗率測定機(Loresta−GP MCP−T610)を用いてJIS K6271に基づいて測定した。測定条件は、23±2℃、印加電圧10V〜1000Vの範囲で測定した。測定結果を表1〜5に示した。また、測定結果をカーボンナノファイバーの配合量に対する体積抵抗率の関係を図14及び図15に示した。図14において、実施例1〜5は■、実施例6−8は▲、比較例2は□、比較例3は△、比較例4〜8は●で示し、比較例1(1.0×1016Ω・cm)は破線で示した。図15において、実施例9〜10は■、比較例9は破線、比較例10は□、比較例11−14は●で示し、比較例9(2.0×1016Ω・cm)は破線で示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
表1及び図10〜図11によれば、DWCNTを配合した実施例1〜5は、カーボンナノファイバーの配合量が0.01質量部〜0.7質量部において、天然ゴム単体の比較例1よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例2のようにDWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例1〜5に比べて、引張強さはあまり変わらないものの切断時伸びの値が比較例1よりも160%も小さく、体積抵抗率が15.0Ω・cmだった。
【0060】
表2及び図10〜図11によれば、SWCNTを配合した実施例6〜8は、カーボンナノファイバーの配合量が0.01質量部〜0.7質量部において、天然ゴム単体の比較例1よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例3のようにSWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例6〜8に比べて、引張強さは向上したものの切断時伸びの値が比較例1よりも130%も小さく、体積抵抗率が20.0Ω・cmだった。
【0061】
さらに、表1〜3及び図10〜図14によれば、比較例4,5のようにMWCNTを0.7質量部〜1.0質量部配合しただけでは引張強さが比較例1とほとんど変わらず、切断時伸びの値が比較例1よりも150%以上小さかった。また、比較例6〜8は、MWCNTを10質量部以上配合することで引張強さが実施例1〜8と同程度またはそれ以上になるが、切断時伸びの値が170%以上小さくなった。さらに、実施例1〜8は体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上の絶縁性能を有していたのに対し、実施例1〜8と同程度またはそれ以上の引張強さを有するようにMWCNTを配合した比較例6〜8は、体積抵抗率が25Ω・cm以下であった。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
表4及び図12〜図13によれば、DWCNTを配合した実施例9〜10は、カーボンナノファイバーの配合量が0.1質量部〜0.7質量部において、EPDM単体の比較例9よりも引張強さが大きく、カーボンナノファイバーを配合したにもかかわらず大きい値の切断時伸びを有し、体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上の絶縁性能を有していた。また、比較例10のようにDWCNTを20質量部配合した炭素繊維複合材料は、実施例9〜10に比べて、引張強さはあまり変わらないものの切断時伸びが比較例9よりも小さかった。実施例1〜10によれば、炭素繊維複合材料の引張強さと切断時伸びは非極性のEPDMであっても天然ゴムと同様の傾向を示した。
【0065】
さらに、表4,5及び図12〜図13、図15によれば、比較例11,12のようにMWCNTを0.7質量部〜1.0質量部配合しただけでは引張強さが比較例9より顕著に大きくならず、切断時伸びの値が比較例9と同じであった。また、比較例13〜14は、MWCNTを10質量部以上配合することで引張強さが大きくなるが、切断時伸びの値が20%以上小さくなった。さらに、実施例9〜10は体積抵抗率が1.0×1016Ω・cm以上の絶縁性能を有していたのに対し、実施例9〜10と同程度またはそれ以上の引張強さを有するようにMWCNTを配合した比較例13〜14は体積抵抗率が8.9×107Ω・cm以下であった。
【符号の説明】
【0066】
2 オープンロール、10 第1のロール、20 第2のロール、30 エラストマー、34 バンク、36 混合物、50 炭素繊維複合材料、80 カーボンナノファイバー、V1,V2 回転速度、150 プラットホーム、151 デリック編成、151a フック、151b 回転スイベル、151c ケリー、151d 回転テーブル、152 海、153 ドリル・ストリング、154 海底、155 地表、156 坑井、156a 坑底部、160 坑底機器編成、160’ ダウンホール装置、162 ドリルビット、164 回転操作システム、166 マッドモータ、168 掘削同時測定モジュール、170 掘削同時検層モジュール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散した、炭素繊維複合材料。
【請求項2】
請求項1において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmである、炭素繊維複合材料。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含む、炭素繊維複合材料。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記エラストマーが天然ゴムであって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが480%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体であって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが230%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の炭素繊維複合材料を用いた油田装置。
【請求項8】
エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得る、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上である、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項1】
エラストマー100質量部に平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下が分散した、炭素繊維複合材料。
【請求項2】
請求項1において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmである、炭素繊維複合材料。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含む、炭素繊維複合材料。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記エラストマーが天然ゴムであって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが480%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエン共重合体であって、
前記炭素繊維複合材料の切断時伸びが230%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の炭素繊維複合材料を用いた油田装置。
【請求項8】
エラストマー100質量部に、平均直径0.4nm以上7.0nm以下のカーボンナノファイバー0.01質量部以上0.70質量部以下を混合した後、ロール間隔が0.5mm以下のオープンロールを用いて、0℃ないし50℃で薄通しを行って炭素繊維複合材料を得る、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
体積抵抗率が1.0×108Ω・cm以上である、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.4nm〜5.0nmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項において、
前記カーボンナノファイバーは、単層カーボンナノチューブ及び2層カーボンナノチューブの少なくとも一方を多層カーボンナノチューブよりも多数含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−14699(P2013−14699A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148881(P2011−148881)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構「地域卓越研究者戦略的結集プログラム(エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト)」委託研究、 平成23年度、経済産業省「地域イノベーション創出研究開発事業(MWCNTセル・タイ技術を用いたスーパーシールの実用化)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(500017863)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Schlumberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構「地域卓越研究者戦略的結集プログラム(エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト)」委託研究、 平成23年度、経済産業省「地域イノベーション創出研究開発事業(MWCNTセル・タイ技術を用いたスーパーシールの実用化)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(500017863)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Schlumberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】
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