説明

炭酸カルシウムの製造方法

炭酸カルシウムの製造方法。本方法では、複数の炭酸化ユニットにおいて酸化カルシウム材料を二酸化炭素と水相中で接触させる。本発明では、酸化カルシウム材料を第1の炭酸化ユニットにおけるpH11.0超の水性スラリー中で炭酸化させ、該水性スラリー中に炭酸カルシウムを生成し、第1の炭酸化ユニットから、炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムを含有する水性スラリーにより形成される排出物を取り出し、その後取り出した排出物中の水酸化カルシウムを第2の炭酸化ユニットにおいて炭酸化させて、pH6.9未満の炭酸カルシウムスラリーを生成する。本方法では、狭い分子量分布を有する単分散粒子と、広い分子量分布を有する多分散粒子の両方の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸カルシウムの製造に関する。本発明は特に、請求項1の前提部に記載した炭酸カルシウムの製造方法、好ましくは沈降炭酸カルシウムの製造方法に関する。
【0002】
本発明の方法では、複数の炭酸化ユニットにおいて酸化カルシウム原料を二酸化炭素と水相中で接触させる。
【背景技術】
【0003】
当業界では、炭酸カルシウム(本明細書では沈降炭酸カルシウム(precipitated calcium carbonate:PCC)とも称する)を製造する複数のプロセスが知られている。従来技術の解決策では、一般に気体の二酸化炭素を水酸化カルシウムの水性スラリーに通して起泡させ、これを大型槽に入れて混合する。槽型反応器の動作は通常「用量原理(dose principle)」に基づくものであり、製造時間は温度に応じて2〜8時間である。酸化カルシウム(CaO)を出発点とする場合は、CaOを処理してCaCOを得ることができる。一方、天然石灰石を出発点とすることもできる。その場合は、天然石灰石を焼成して酸化カルシウムと二酸化炭素に分解することができる。
【0004】
反応式1 CaCO→CaO+CO
【0005】
酸化カルシウムの水和プロセス後は、反応式2のとおり水酸化カルシウムが生成される。
【0006】
反応式2 CaO+HO→Ca(OH)
【0007】
これを反応式3に従って炭酸化させることにより炭酸カルシウムが得られる。
【0008】
反応式3 Ca(OH)+CO→CaCO+H
【0009】
本出願人は、以前の国際特許出願(国際公開第2007/057509号)において炭酸カルシウムを製造する改良型機器セットを開示した。この機器セットでは、炭酸化反応を過圧下で行うことができる密閉反応容器を含む炭酸化ユニットにおいて、水和した酸化カルシウムの炭酸化が行われる。この装置は好ましくは内部循環を備え、生成物の再循環量は最大で、炭酸化ユニットに供給される水和した酸化カルシウムの量の5〜20倍となる。国際公開第2007/057509号に開示した炭酸化ユニットは、典型的にはループ反応器である。国際公開第2007/057509号に開示したように、複数のループ反応器を直列配置または並列配置することも可能である。
【0010】
既知のプロセスにより、最大約500nmおよび1nm超の平均粒径を有する粒子を製造することができる。好ましい粒径範囲は2〜500nm、特に約10〜500nmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、炭酸カルシウムを製造する新規な方法を提供することである。特に、本発明の目的は、基本的に同一の装置において多種多様な炭酸カルシウム製品を製造することを可能にする代替的な炭酸化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、pH値が異なる2つの炭酸化領域またはユニットにおいて炭酸化を実施するというアイデアに基づく。一般に、第1の炭酸化ゾーンではpHがアルカリ性範囲に維持され、第2の炭酸化ゾーンではpHが酸性または中性範囲に維持される。
【0013】
酸化カルシウムを(そのまま、または水和形態で)水相中で炭酸化させることによる炭酸カルシウムの製造方法は、
‐第1の炭酸化ユニットから、炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムを含有するpH11.0超のスラリーを取り出すステップと、
‐第2の炭酸化ユニットにおける水酸化カルシウムの炭酸化を、pHが6.9を下回るまで継続するステップとを含むことが好ましい。
【0014】
より詳細には、本発明に係る方法は請求項1の特徴部の記載によって特徴付けられる。
【0015】
本発明から多くの利点が得られる。したがって、本発明を用いると、1組の処理ユニットにおいて基本的に同じ出発材料を使用して異なる種類の製品を製造すること、例えば狭い分子量分布を有する単分散粒子と広い分子量分布を有する多分散粒子の両方を製造することが可能となる。これらの製品は様々な用途で使用される可能性があり、例えば塗料、紙、ボール紙、ゴム、プラスチック中の顔料や充填剤、水硬性結合剤の混合物を含めた各種建材成分等が挙げられる。
【0016】
したがって、本発明の一実施形態によれば、第1の製造期間中に第1の顔料または充填剤グレードを製造し、第2の製造期間中に第2の顔料または充填剤グレードを製造することが可能となる。
【0017】
好ましい一実施形態によれば、本発明は、第1の炭酸化ゾーンおよび随意選択で第2の炭酸化ゾーンにおける、少なくとも1つのループ反応器を含む反応器カスケードの形で実施される。本実施形態では、ループ反応器は高い熱伝達率を達成することができ、加圧条件下での操作が可能である。
【0018】
以下の詳細な説明と効果的な実施例を読めば、本発明の更なる特徴および利点が理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の処理構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の処理構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の処理構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の処理構成を示す概略図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の処理構成を示す概略図である。
【図6】実施例1の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【図7】実施例2の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【図8】実施例3の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【図9】実施例4の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【図10】実施例5の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【図11】実施例6の製品の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記で簡単に説明したように、本発明は、適切な酸化カルシウム出発材料を水性環境下で炭酸化することによる炭酸カルシウム、特に沈降炭酸カルシウムの製造に関する。炭酸化プロセスは、pHに関する条件が異なり、随意選択で温度、圧力、滞留時間のような他の処理条件に関する実施条件も異なる少なくとも2つの部分に分けられる。
【0021】
炭酸化中の反応速度はプロセスの初期段階が高く、時間の経過とともに低くなる。したがって、本発明ではまず第1の期間中に炭酸化をアルカリ性条件で実施し、この第1のステップに続く第2の期間中に反応ゾーンの排出物を除去し、第2の反応ステップを酸性条件で実施する。典型的には、第1の反応期間は第2の反応期間よりも短い。特に、第1の反応期間の第2の反応期間に対する長さの比は、1:1000〜1:1.5、好ましくは1:100〜1:2である。
【0022】
本プロセスの出発材料/原料は、
‐酸化カルシウム源と、
‐二酸化炭素源と、
‐水とを含む。
【0023】
使用する水は、随意選択で従来の手段により脱イオン化された従来の処理水であってよい。
【0024】
酸化カルシウム源は、典型的には石灰石(CaCO)等の炭酸塩鉱物または種々の炭酸塩鉱物の混合物から誘導され、焼成または燃焼(一般には「熱処理」)により二酸化炭素を除去して酸化カルシウムを得ることができる。酸化カルシウム源は、後に第1の反応器(図5の実施形態参照)に粉末形態で添加される焼成材料、または第1の反応器にスラリーとして供給される水和物である水酸化カルシウム(Ca(OH)または消石灰)を含むことができる。酸化カルシウムを焼成により粉末として得る場合は、酸化カルシウムを消化する別個のユニット、前処理または消化ユニットを本発明の反応機器に含めることができる。かかるユニットを含めることは熱制御の観点から有利である。というのも、酸化カルシウムの消化により過剰な熱が放出されるからである。
【0025】
酸化カルシウムが粉末として添加されるのか消石灰として添加されるのかに関わらず、第1の炭酸化ユニットでは水性酸化カルシウムスラリーが形成され、全スラリーの合計重量から計算される酸化カルシウムの濃度は約2%〜約25%、好ましくは約5〜15%である。一方、付加的な水を炭酸化ユニットに供給すること、またはスラリーの水に消化スラリーを加えることもできる。
【0026】
二酸化炭素源は、少なくとも第1の炭酸化ユニットに供給される。二酸化炭素源は、二酸化炭素を含有するまたは二酸化炭素を放出可能な気体または液体を含むことができる。少なくとも第1の炭酸化ユニットおよび随意選択で第2の炭酸化ユニットは、二酸化炭素含有雰囲気中で操作されることが好ましい。二酸化炭素ガスは純粋であっても二酸化炭素濃度の高い気体であってもよい。二酸化炭素ガスの例としては、二酸化炭素濃度の高い空気、随意選択で不活性ガス成分を含む気体状の二酸化炭素、および煙道ガスが挙げられる。過剰圧力を使用することにより、随意選択で超臨界条件下でも、二酸化炭素を液体形態で提供することが可能となる。
【0027】
典型的には、炭酸化ガスは少なくとも5体積%、好ましくは少なくとも10体積%、特に約15〜100体積%の二酸化炭素を含有する。
【0028】
次に添付図面について説明する。なお、図1〜図4の各図面で使用する参照符号は以下のとおりである。
【0029】
10、20、30、50 消化器
11、12、21〜23、31〜33、71〜73 第1のユニットにおけるループ反応器
51〜53 第1のユニットにおけるプラグフロー反応器
13、14、24〜26、34〜36、74〜76 第1のユニットにおけるループ反応器の循環ポンプ
16 第2のユニットにおけるループ反応器
17 第2のユニットにおけるループ反応器の循環ポンプ
28、43、63、83 第2のユニットにおけるバッチ式反応器
15、27、42、61、77 第1のユニットから第2のユニットに排出物を移送するための導管
18、29、44、64 消石灰用の供給管
38〜40、58〜60 消石灰用の供給ノズル
70、72、78 粉末化した酸化カルシウム用の供給管
54〜56、82 第1のユニットにおける反応器の排出物用アウトレットノズル
3、41、81、84、85 バルブ
【0030】
酸化カルシウムを水で消化するのに使用される消化器(10、20、30、50)は、好ましくは消化反応の強力な発熱特性を考えて、冷却/熱回収が可能な任意の種類の攪拌槽型反応器を備えることができる。消化器において形成されたスラリーは、添付図面中の参照符号「A」で示した第1の炭酸化ゾーンまたはユニットに供給される。第2の炭酸化ゾーンまたはユニットは、添付図面中の参照符号「B」で示してある。
【0031】
説明を簡潔にするために、プロセスに対する二酸化炭素の供給は、第1のユニットAの供給管18、29、44、64を指す矢印で示した。しかしながら、後述するように、二酸化炭素は第1のユニットと第2のユニットに同時に供給することも、反応器毎に別々に供給することも、炭酸化反応器のうちの1つだけに供給することも可能であることに留意されたい。
【0032】
反応ユニットAおよびBは、バッチ式反応器、連続操作反応器またはセミバッチ式反応器として操作することができる。好ましい一実施形態によれば、第1のユニットは連続操作される。別の実施形態によれば、第2のユニットは連続操作される。また別の実施形態によれば、第2のユニットはバッチ操作される。
【0033】
各炭酸化ユニット、特に第1の炭酸化ユニットは、単一の反応器を備えることも好ましくは少なくとも2つの反応器を備えることもでき、特に2〜10個の反応器を含むカスケードを備えることができる。これらの反応器は並列配置としても直列/並列配置としてもよいが、一般には反応器の少なくとも主要部をカスケードとして操作することが好ましい。
【0034】
後述するように、本発明は、1〜10個またはそれ以上の第1の反応器と1〜10個またはそれ以上の第2の反応器の組合せによって実施することができる。
【0035】
「カスケード」とは、先行する反応器の排出物が後続の反応器のインレットまたはフィードとなることを意味する。
【0036】
本発明の特に好ましい一実施形態は、プロセスの第1フェーズにおいてループ反応器または少なくとも2つのループ反応器11、12のカスケードを使用し、プロセスの第2フェーズにおいてループ反応器16を使用することを含む。この実施形態は図1に示したものに相当する。
【0037】
本発明に関連して、ループ反応器は均質且つ効率的な混合を実現する故に、上記の目的に特に有用な反応器であることが分かった。効率的な混合は、温度勾配および濃度勾配の形成を最小限に抑える。所望の生成物または生成物分布が得られるようにプロセスを制御し調整することが可能となる。効率的な混合は、すべての凝集状態で達成されるので炭酸化反応に適している。
【0038】
内部再循環は、図1に示すように各反応器ユニットに設けることができる(参照符号13、14、17)。一方、内部再循環はループ反応器だけに設けることもできる(図2(参照番号24〜26)および図3(参照番号34〜36)参照)。後者の場合は、後続の反応器に排出物の一部だけが供給され、バッチ操作の場合は排出物がまったく供給されないことになる。
【0039】
一実施形態によれば、上述の炭酸化ユニットはそれぞれ複数のループ反応器を備える。これらの反応器をカスケード配置もしくは並列配置とすること、または一部の反応器が他の反応器と並列に配置されるカスケード配置とすることにより、反応器の動作を中断しないメンテナンスを実現することができる。
【0040】
図2に示す実施形態は、第1の反応ユニットがカスケード24〜26における3つのループ反応器を含み、第2の反応ユニットがバッチ式反応器、即ち攪拌槽型反応器28を含む点を除けば、図1の実施形態と同様である。第2の反応器は貯蔵槽とすることもできる。
【0041】
どちらの実施形態においても、第1のユニットAにおける反応器カスケードの最初の反応器13、24に消石灰が供給され、該ユニットの最後の反応器14、26から第2のユニットBの反応器17、28に排出物が直接伝達される。
【0042】
別の実施形態では、第1のユニットがバッチ式反応器として操作され、第2のユニットがバッチモードまたは連続モードで操作される。この第1のユニットのバッチ式反応器は、図2のユニットBに関して先に説明した種類の攪拌型槽反応器とすることができるが、バッチ形式で操作される少なくとも1つのループ反応器によって提供することもできる。この実施形態を図3に示す。図3は、それぞれ個別の消石灰用インレットノズル38〜40と、バッチ操作を可能にする内部循環とが設けられた3つの並列ループ反応器31〜33を示す。各反応器は、それぞれ循環ポンプ34〜36に連結して配置された排気口により独立して空にすることができる。無論、図1、図2および図4のループ反応器Aをそれぞれバッチ形式で操作することも可能である。
【0043】
更に、図4は第4の実施形態を示す。本実施形態では、第1のユニットの各反応器がプラグフロー反応器51〜53によって提供される。
【0044】
図5は第5の実施形態を示す。本実施形態は図3の実施形態と同様である。図3の実施形態との違いは、反応ゾーンAおよびBにおける処理反応器に先行する消化ユニットが存在しないことである。その代わりに、酸化カルシウムが乾燥した粉末の形態で導管78、72、73を通され、循環ポンプ74〜76を有するループ反応器71〜73を含む第1の反応ユニットに直接供給される。第1の反応ユニットは、後で実施例6に関して説明するようにバッチ形式で操作することができるが、無論連続処理も可能である。ループ反応器の排出物は、導管77を経て第2のユニットに伝達される。第2のユニットは、図5に示すバッチ式反応器83とすることができる。石灰/炭酸カルシウムスラリーの流れはバルブで調節され、供給ノズルはバッチ式反応器に対する任意の適切な場所(反応器内の撹拌混合物表面よりも低いまたは高い任意の高さ)に設置可能である。
【0045】
実施例6に関して説明したように、図5の反応器構成をカスケード形式の2つのバッチプロセスとして操作することにより単分散生成物を製造することができる。
【0046】
上記のすべての実施形態および本発明に係るプロセスの全体において、温度、圧力、滞留時間等の反応条件は自由に変更することができる。
【0047】
上述の任意の実施形態、特にループ反応器を用いる実施形態と組み合わせることが可能な一実施形態では、炭酸化反応は炭酸化ユニットのうちの少なくとも1つにおいて加圧条件下で実行される。特に、炭酸化反応は0.1〜25bar(0.01〜2.5MPa)、特に約0.5〜10bar(0.05〜1MPa)の過圧下で実行される。
【0048】
一般には、上述のどの実施形態においても、第1の炭酸化ユニットA内の酸化カルシウム材料の滞留時間は短く、典型的には約0.1〜1000秒、特に約1〜300秒となる。
【0049】
一実施形態によれば、第2の炭酸化ユニットB内の水酸化カルシウムの滞留時間は約1分よりも長い。したがって、第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約3分よりも長く、特に約5分よりも長くなることもある。このことは特に、貯蔵タンクを含む第2の炭酸化ユニットに当てはまる。
【0050】
第1の反応段階Aおよび第2の反応段階Bにおける炭酸化のpH度および反応物の滞留時間を制御することにより、生成物の品質を調整することが可能となる。一実施形態によれば、単分散炭酸カルシウム製品を製造するための、第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約30分よりも長い。特に、単分散炭酸カルシウム製品を製造するための、第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約0.1〜100時間とする。
【0051】
上述のとおり、本プロセスによれば数種の異なる炭酸カルシウム材料を製造することができる。したがって、一実施形態では、第2の炭酸化ユニットから平均粒径40〜1000nmの炭酸カルシウム粒子を含有する炭酸カルシウムスラリーが取り出され、随意選択で回収される。
【0052】
その場合は、第1の炭酸化ユニットから好ましくは5〜50wt%の未反応の水酸化カルシウムを含有するスラリーが取り出され、その後第2の炭酸化ユニットにおいて炭酸化反応が本質的に完了するまで炭酸化が継続される。
【0053】
第2の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウム粒子は、40〜2000nmの広範な粒子サイズ分布を有する。
【0054】
別の実施形態は、酸化カルシウム材料のモルベースで少なくとも90%を炭酸化させるために第1の炭酸化ユニットをバッチ操作するステップと、第1の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウムスラリーの炭酸化を継続して、平均粒径40〜90nmの炭酸カルシウム粒子を含有する炭酸カルシウムスラリーを生成するステップとを含む。
【0055】
第2の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウム粒子は、典型的には狭い粒子サイズ分布を有し、120nmよりも大きい粒子部分は、全粒子の、20wt%未満、特に、10wt%未満となる。
【0056】
一実施形態によれば、本プロセスは結晶炭酸カルシウム粒子、典型的には方解石またはバテライトを製造する。
【0057】
以下、非限定的な実施例により本発明の説明を行う。
【実施例1】
【0058】
連続攪拌槽消化器およびループ反応器炭酸化セットアップで実験を行った。炭酸化ユニットの効果に応じて300グラム/分の生石灰および3L/分の水を石灰消化器にパルス添加した。消化器の温度は90℃に維持した。第1の炭酸化ユニットにおいてスラリーとCOガスを6bar(0.6MPa)の圧力下で反応させた。炭酸化の58%を1つのループ反応器を含む第1のユニットにおいて行い、滞留時間を炭酸化の程度に従って調整した。第1のユニットにおける炭酸化に続き、石灰混合を第2のユニットに移して最終的な炭酸化を行った。第1および第2のユニットにおけるpHは、それぞれ11.4および6.2であった。炭酸化温度は40℃未満に維持した。
【0059】
粒径範囲は50〜1000nm、d90%=750nm未満であった(走査電子顕微鏡画像に基づく。図1参照。)。
【実施例2】
【0060】
実施例2の実験手順は、第1のユニットが直列に結合された複数のループ反応器を含む点を除けば、実施例1で提示したのと同様である。68g/LのCa(OH)を含有する石灰スラリーをpH11.6超の第1のユニットに供給し、炭酸化の80%超を滞留時間2分未満で行った。第2のユニットにおいてpH6.3で最終的な炭酸化を行い、その後生成物を取り出した。
【0061】
生成物の粒径範囲は50〜1000nm、d90%=約400nmであった(走査電子顕微鏡画像に基づく。図2参照。)。
【実施例3】
【0062】
第1の炭酸化ユニットをアルカリ性条件(pH11.6)でバッチ操作し、第2のユニットをpHレベル6.3の連続モードで操作することにより炭酸化実験を行った。68g/LのCa(OH)のスラリーを複数のループ反応器を含む第1のユニットに供給した。8%のCa(OH)が未反応のままとなるまで反応を進行させた。その後、スラリー混合物を第2のユニットに移して最終的な炭酸化を行った。
【0063】
その結果、50nm前後の粒径を有する単分散生成物が得られた(走査電子顕微鏡画像に基づく。図3参照。)。
【実施例4】
【0064】
第1の炭酸化ユニットを連続操作し、第2のユニットをバッチモードで操作することにより炭酸化実験を行った。68g/LのCa(OH)のスラリーをループ反応器を含む第1のユニットに供給した。pH11.6のアルカリ性環境において、滞留時間を0.25分超として40%転換点まで反応を進行させた。その後、スラリー混合物を第2のユニットに移して最終的な炭酸化を行い、pHをアルカリ性から6.5未満に変化させた。
【0065】
生成物は針状粒子を含み、粒径は50〜500nmであった(走査電子顕微鏡画像に基づく。図4を参照。)。
【実施例5】
【0066】
管状反応器セットアップを含む第1のユニットおよびバッチ式反応器を含む第2のユニットにおいて炭酸化実験を行った。42g/LのCa(OH)のスラリーを第1のユニットに供給して部分的に炭酸化させた(95%転換)。その後、このスラリーを第2のユニットに供給して最終的な炭酸化を行い、pHをアルカリ性から6.5未満に変化させた。
【0067】
生成物の粒径は50〜1000nmであった(走査電子顕微鏡画像に基づく。図5参照。)。
【実施例6】
【0068】
実施例6の実験手順は、別個の消化プロセス(図5参照)が存在しない点を除けば、実施例3で提示した手順と同様である。水(HO)1L当たり50gの石灰(CaO)を管型反応器セットアップに直接投入し、バッチ式で炭酸化させた。第1のユニットにおける炭酸化中、pHは11.6超であった。第2のユニットにおいて最終的な炭酸化を行うと、pHは6.3前後となった。
【0069】
その結果、50nm前後の粒径を有する単分散生成物が得られた(走査電子顕微鏡画像に基づく。図11参照。)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭酸化ユニットにおいて酸化カルシウム材料を二酸化炭素と水相中で接触させる炭酸カルシウムの製造方法であり、
‐酸化カルシウム材料を第1の炭酸化ユニットにおけるpH11.0超の水性スラリー中で炭酸化させ、該水性スラリー中に炭酸カルシウムを生成するステップと、
‐前記第1の炭酸化ユニットから、炭酸カルシウムおよび水酸化カルシウムを含有する水性スラリーにより形成される排出物を取り出すステップと、
‐取り出した前記排出物中の水酸化カルシウムを第2の炭酸化ユニットにおいて炭酸化させて、pH6.9未満の炭酸カルシウムスラリーを生成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の炭酸化ユニットからpH11.5超、特にpH約12.0〜13.0のスラリーを取り出すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水酸化カルシウムを前記第2の炭酸化ユニットにおいてpH6.5未満、特にpH5.5〜6.3に達するまで炭酸化させるステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の炭酸化ユニットは酸化カルシウムスラリーを含み、全スラリーの合計重量から計算される酸化カルシウムの濃度は約2%〜約25%、好ましくは約5〜15%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも前記第1の炭酸化ユニットに二酸化炭素源を提供するステップを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記二酸化炭素源は二酸化炭素を含有する気体または液体を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記第1の炭酸化ユニットおよび随意選択で前記第2の炭酸化ユニットを二酸化炭素含有雰囲気中で操作するステップを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも5体積%、好ましくは少なくとも10体積%、特に約15〜100体積%の二酸化炭素を含有する気体を提供するステップを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記気体は、二酸化炭素濃度の高い空気、随意選択で不活性ガス成分を含有する気体状の二酸化炭素、および煙道ガスのうちから選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のユニットをバッチ反応器として操作するステップを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1のユニットを連続操作するステップを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の炭酸化ユニットは、少なくとも2つの反応器、好ましくは2〜10個の反応器で構成されるカスケードを備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのループ反応器を炭酸化ユニットとして使用するステップを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
各炭酸化ユニットはそれぞれ複数のループ反応器を備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の炭酸化ユニットから、平均粒径40〜1000nmの炭酸カルシウム粒子を含有する炭酸カルシウムスラリーを取り出すステップを含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1の炭酸化ユニットから、5〜50wt%の未反応の水酸化カルシウムを含有するスラリーを連続的に取り出すステップと、前記第2の炭酸化ユニットにおいて炭酸化反応が本質的に完了するまで炭酸化を継続するステップとを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウム粒子は広い粒子サイズ分布を有し、粒子の20%は240nm未満であり、全粒子の80%は1300nm未満であることを特徴とする請求項15または16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
酸化カルシウム材料のモルベースで少なくとも90%を炭酸化させるために前記第1の炭酸化ユニットをバッチ操作するステップと、前記第1の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウムスラリーの炭酸化を継続して、平均粒径40〜90nmの炭酸カルシウム粒子を含有する炭酸カルシウムスラリーを生成するステップとを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第2の炭酸化ユニットから取り出される炭酸カルシウム粒子は狭い粒子サイズ分布を有し、120nmよりも大きい粒子部分は、全粒子の、20wt%未満、特に、10wt%未満であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1および第2の炭酸化ユニットを連続操作するステップを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1の炭酸化ユニットをバッチ反応器として操作し、前記第2の炭酸化ユニットをバッチモードまたは連続モードで操作するステップを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記第2の反応器は貯蔵槽であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結晶炭酸カルシウム粒子が生成されることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
炭酸化反応は前記炭酸化ユニットのうちの少なくとも1つにおいて加圧条件下で実行されることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
炭酸化反応は0.1〜25bar(0.01〜2.5MPa)、特に約0.5〜10bar(0.05〜1MPa)の過圧下で実行されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の炭酸化ユニット内の酸化カルシウム材料の滞留時間は約0.1〜1000秒、特に約1〜300秒であることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約1分よりも長いことを特徴とする請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約3分よりも長く、特に約5分よりも長いことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
単分散炭酸カルシウム製品を製造するための、前記第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約30分よりも長いことを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
単分散炭酸カルシウム製品を製造するための、前記第2の炭酸化ユニット内の水酸化カルシウムの滞留時間は約0.1〜100時間であることを特徴とする請求項27または28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の炭酸化ユニットにおける酸化カルシウム材料として水酸化カルシウムを使用することを特徴とする請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記第1の炭酸化ユニットにおける酸化カルシウム材料として好ましくは酸化カルシウム粉末の形態である酸化カルシウムを使用することを特徴とする請求項1〜31のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2012−529418(P2012−529418A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514504(P2012−514504)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050488
【国際公開番号】WO2010/142859
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508148127)ノードカルク オサケ ユキチュア アーベー (2)
【Fターム(参考)】