説明

炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法

【課題】 微細かつ分散性に優れた炭酸ストロンチウム微粒子を製造する方法の提供。
【解決手段】 その製造する方法は、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入することにより炭酸ストロンチウムを製造するにあたり、炭酸ガスの導入開始後又は開始前5分以内に水酸化アルカリの第1段添加を行い、その後炭酸ガスの導入によりpHが0.5以上低下した後、再び水酸化アルカリの第2段添加を行うことを特徴とするものである。
本製造方法により得られる炭酸ストロンチウムは微細かつ分散性に優れたものであり、また、その製造方法は、従来方法のようにエチレングリコール等の凝固点降下物質や尿素分解酵素を必要とせず、簡便でかつ工業的製造にも適した方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ストロンチウム化合物から炭酸ストロンチウム微粒子を製造する方法に関する。
より詳しくは、水溶性ストロンチウム化合物、水酸化アルカリ、及び炭酸ガスを原料とし、微細かつ分散性に優れた炭酸ストロンチウムの微粒子を得ることのできる製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
炭酸ストロンチウムは、工業的に、ブラウン管やフェライト磁石の原料、蛍光体、光学レンズ、あるいは真空管陰極材などに使用されている。
その製造方法としては、硫化ストロンチウムまたは硫酸ストロンチウムと、炭酸アンモニウムまたは炭酸ナトリウムとの反応により、炭酸ストロンチウムを沈殿させる方法が一般的である。
そのほか、炭酸ストロンチウムの製造に関しては、古くから種々の検討がなされてきており、特許文献において多くの方法の提案がなされている。
【0003】
[先行技術文献]
【特許文献1】特開昭55−23055号公報
【特許文献2】特開昭59−83934号公報
【特許文献3】特開平9−77516号公報
【特許文献4】特許第3585603号
【特許文献5】特公昭54−19400号公報
【特許文献6】特開昭49−47295号公報
【特許文献7】特開2004−35347号公報
【特許文献8】特開2004−109355号公報
【0004】
例えば、高純度の炭酸ストロンチウムを製造する方法としては、特許文献1に記載の微粉化した硫酸ストロンチウム鉱石を浮遊選鉱して得た精鉱を硫酸とともに加熱した後炭酸ナトリウムと反応させる方法や、特許文献2に記載の硫酸ストロンチウム鉱石から炭酸ストロンチウムを調製後仮焼して酸化物とした後加水により水酸化物として抽出し再び炭酸化する方法がある。
さらに、特許文献3に記載のストロンチウム含有溶液に酸を添加してストロンチウム塩を析出させた後炭酸化を行う方法、特許文献4に記載のストロンチウム含有溶液にアンモニウム塩の存在下で硫酸または硫酸塩を添加して硫酸ストロンチウムを生成させた後炭酸下を行う方法などが提案されている。
【0005】
また、炭酸ストロンチウムの粒子径の調節を目的とした方法としては、特許文献5に記載の予め調製された炭酸ストロンチウムの存在下で硫化ストロンチウムと炭酸ナトリウムの水溶液を混合するにあたり硫化ストロンチウムと炭酸ナトリウムの割合を調節することで1〜7μmの範囲で炭酸ストロンチウムの粒子径を調節する方法や、特許文献6に記載の当モルの硫化ストロンチウムと炭酸アルカリの水溶液とから特定条件下において連続的に反応を行うことにより炭酸ストロンチウムの粗大粒子を得る方法などが挙げられる。
【0006】
さらに、近年、ナノテクロノジーに代表される超微細化技術について注目が集まっており、炭酸ストロンチウムについても、形態制御技術や微粒子化が求められるようになってきている。
例えば、特許文献7や特許文献8には、非複屈折性光学樹脂材料に使用される炭酸ストロンチウムが開示されており、それは針状形状を有し、かつ可視光域において透明性を確保するのに十分な程度の微粒子であることが求められている。
【0007】
そして、同特許文献7においては、上記性能を満足させるための炭酸ストロンチウムの製造方法も開示されている。
この製造方法は、ストロンチウム塩の水溶液中で尿素を加水分解させることによりストロンチウムイオンと炭酸イオンとを反応させる方法、あるいは水酸化ストロンチウムの水懸濁液に炭酸ガスを吹き込みストロンチウムイオンと炭酸イオンとを反応させる方法において、エチレングリコールなどの凝固点降下物質を添加し、炭酸ストロンチウムの生成反応を氷点下で行うことにより、長軸に沿った平均粒子サイズが500nm以下の炭酸ストロンチウム微粒子を製造するものである。
【0008】
しかしながら、この後者の方法では反応系にエチレングリコールなどを添加する必要があることや、冷却のために多大のエネルギーを要するなど問題点もあり、必ずしも工業的に適した方法とは言い難いのが現状である。
また、前者の尿素の加水分解を利用する方法では低温下での反応が必要であることから尿素分解酵素を使用する必要があるほか、エチレングリコールなどの凝固点降下物質の使用も必要であり廃水処理などの面でも問題があった。
【0009】
そこで、本発明者らは、炭酸ストロンチウムの合成について検討を行し、その結果、水溶性ストロンチウム化合物と水酸化アルカリとを混合した後、炭酸ガスを導入することにより、炭酸ストロンチウムの微粒子が得られることを見出し、特許出願(特願2005−182319号)している。
この方法によると、径10〜100nm、長15〜2000nm、アスペクト比1.5〜20の柱状の微粒子が得られる。
【0010】
しかしながら、この炭酸ストロンチウム微粒子は、上記サイズの一次粒子が凝集した状態のものであるほか、特許文献7あるいは8に記載されている光学樹脂材料の分野においては、炭酸ストロンチウム微粒子のさらなる微細化が求められるようになってきており、これらを解決できるような分散性が高く、より微細な炭酸ストロンチウムの合成技術が嘱望されている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した背景技術に記載した通り、炭酸ストロンチウムの微粒子を製造する方法に関しては、既に多くの提案がなされており、特に特許文献7ではナノサイズの微粒子を製造する方法が提案されているものの、この方法では反応系にエチレングリコールなどを添加する必要があることや、冷却のために多大のエネルギーを要するなど問題点もあり、必ずしも工業的に適した方法とは言い難いのが現状である。
さらに、尿素の加水分解を利用する方法では低温下での反応が必要であることから尿素分解酵素を使用する必要があるほか、エチレングリコールなどの凝固点降下物質の使用は廃水処理などの面でも問題がある。
【0012】
また、前記技術を改良した本発明者らが開発した特願2005−182319号に記載の技術では、水系溶媒中にて氷点以上の温度において炭酸ストロンチウムの微粒子が得られる技術ではあるものの、凝集体を形成するという問題点がある。
本発明の課題は、上記問題点を解決することで、より簡便で工業的製造にも適した方法にて分散性に優れた炭酸ストロンチウムの微粒子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を達成することができる炭酸ストロンチウム微粒子を製造する方法を提供するものであり、その方法は、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入することにより炭酸ストロンチウムを製造するにあたり、炭酸ガスの導入開始後又は開始前5分以内に水酸化アルカリの第1段添加を行い、その後炭酸ガスの導入によりpHが0.5以上低下した後、再び水酸化アルカリの第2段添加を行うことを特徴とするものである。
【0014】
そして、本発明では、望ましくは、炭酸ガスの導入を氷点以上25℃以下、炭酸ガスの導入速度をストロンチウム1モルに対して、0.5L/分以上、水酸化アルカリの添加量を、第1段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜1.0モル、第2段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜2.0モル、水酸化アルカリの第2段添加を、2〜5回にわけて行うのがよく、それらにより、短径5〜50nm、長径15〜500nm、アスペクト比1.5〜20の柱状粒子である炭酸ストロンチウム微粒子を好適に得ることができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法は、水系において、水溶性ストロンチウム化合物と水酸化アルカリ、炭酸ガスとから分散性に優れた炭酸ストロンチウムの微粒子を製造することができるほか、エチレングリコールなどの凝固点降下物質や尿素分解酵素を必要せず、氷点以上の温度下にて反応させることから、簡便かつ工業的製造に適しており、より広範な用途へ優れた性状の炭酸ストロンチウム微粒子を提供することが可能となる。
かつ、本発明では、本発明者らが既に出願した特願2005−182319号の方法と比較して、より微粒でかつ分散性に優れた炭酸ストロンチウム微粒子が得られることから、該微粒子の特性をより効果的に発現させることを可能とするものである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を記すが、本発明はそれらによって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によってのみ特定されるものであることはいうまでもない。
本発明の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法は、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入することにより炭酸ストロンチウムを製造するにあたり、炭酸ガスの導入開始後又は開始前5分以内に水酸化アルカリの第1段添加を行い、その後炭酸ガスの導入によりpHが0.5以上低下した後、再び水酸化アルカリの第2段添加を行うことを特徴とする。
【0017】
原料とする水溶性ストロンチウム化合物としては、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム等の水溶性化合物が使用できる。 この水溶液については、ストロンチウム濃度として、0.02〜5モル/Lとすることが好適であり、そのため0.02モル/L未満であると、製造効率が悪くなり支障をきたすことがある。
他方、5モル/Lを超えると、炭酸ストロンチウム生成後の液粘度が上昇しハンドリングの面で問題が生じることがあるほか、その他の条件によっては炭酸ストロンチウムの粒子が粗大化することがある。
【0018】
これら水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入することにより、炭酸ストロンチウムを沈殿させる。
その水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入する際の液温は、50℃以下、好ましくは25℃以下とすることがよい。
50℃を超える高温化でこの操作を行った場合、炭酸ストロンチウムの粗大粒子が生成することがある。
【0019】
また、炭酸ガスの導入速度は、液中に含有されるストロンチウム1モルに対して、0.5L/分以上、より好適には1L/分以上とすることが望ましい。
その際には、導入速度をより速めることで、より微細な炭酸ストロンチウム微粒子が得られる。
そのため0.5L/分未満の場合、目的とする微粒子が得られず、炭酸ストロンチウムの粗大粒子が生成することがある。
【0020】
その際における炭酸ガス導入速度の上限については特段の制約はなく、より微細な炭酸ストロンチウムを製造したい場合には、可能な範囲で導入速度を速めることが好適であるが、液中への炭酸ガスの溶解速度にもある程度の限界があるため、反応液1Lに対して、炭酸ガス導入速度を10L/分以下とすることが炭酸ガスの利用効率の面では好ましい。
このように、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入するに当たっては、炭酸ガスの導入開始前5分以内または導入開始後に水酸化アルカリの第1段添加を行った後、再び水酸化アルカリの第2段添加を行う。
【0021】
ここで使用する水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが適用でき、その添加は固体のままあるいは水溶液の状態で行われる。
水酸化アルカリの添加量は、第1段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜1.0モル、第2段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜2.0モルとすることが望ましい。
なお、炭酸ガス導入下での水酸化アルカリの第1段添加、又は水酸化アルカリの第1段添加後5分以内に開始される炭酸ガスの導入により、炭酸ストロンチウムの微細な核が形成していると推察され、その後、第2段添加により、この核が柱状粒子へと成長していると考えられる。
【0022】
ここで、第1段の添加量をストロンチウム1モルに対して0.3モル未満とすると、炭酸ストロンチウム微粒子の分散性が悪化することがあり、逆に1.0モルを超える添加量の場合には、炭酸ストロンチウム粒子が粗大化する傾向にある。
なお、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液のpHは、通常中性付近であるが、水酸化アルカリの第1段添加により、pHは11〜14に上昇する。
【0023】
そして、第1段添加後の第2段の水酸化アルカリの添加量に関しても前記した範囲が望ましく、ストロンチウム1モルに対して0.3モル未満であると、生成する炭酸ストロンチウム微粒子の凝集が激しくなり、逆に2.0モルを超えると、柱状の炭酸ストロンチウム微粒子が得られない場合がある。
その際の第2段での水酸化アルカリ添加は、その添加操作を2〜5回に分けて行うことがより望ましい。
【0024】
このように添加操作を分けて行うことにより、炭酸ストロンチウムのより微細な柱状粒子をより分散した状態で得ることができるが、5回を超える添加回数とすると、生成する炭酸ストロンチウムが凝集する傾向にある。
第2段添加を2〜5回に分けて行う場合、各回における添加量は、ストロンチウム1モルに対して0.1モル以上とすることがよく、より望ましくは、第2段添加量を添加回数で均等に割った量とすることがよい。
【0025】
そうすることで、生成する炭酸ストロンチウム微粒子の一次粒子をより均一にすることができ、例えば、第2段添加量がストロンチウム1モルに対して0.9モルで、添加回数を3回とする場合には、1回の添加量を0.3モルとすることがよい。
なお、第2段の水酸化アルカリの添加を行うタイミングは、第1段添加の後炭酸ガスの導入により液のpHが0.5以上低下してから行うことが好適であり、望ましくはpHが10.5以下、より望ましくは10以下となった時点で行うことが好適である。
さらに、第2段添加を複数回に分けて行う場合にも、上記したpHとなってから次の添加操作を行うことが良い。
【0026】
また、水溶液の状態で水酸化アルカリを添加する場合には、その温度を、水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入する際の温度域に、予め調節しておくことが良い。
例えば、炭酸ガスの導入を5℃で行う場合に、液温が高い状態の水酸化アルカリを添加すると、ストロンチウム溶液の液温が上昇してしまい、均一な反応が行えないばかりでなく、所定温度に調節しようとすると、温度制御に時間がかかり、本発明で必要な、水酸化アルカリ添加後5分以内に炭酸ガスを導入する操作ができなくなることもある。
【0027】
本発明者らが既に出願した特願2005−182319号の技術では、水溶性ストロンチウム化合物と水酸化アルカリとを混合して水酸化ストロンチウムを析出させ、この水酸化ストロンチウムが析出した液に直接炭酸ガスを導入することで、微粒な水酸化ストロンチウムの懸濁液から炭酸ストロンチウムを沈殿させることができ、その結果、微細な炭酸ストロンチウムが得られる。
これに対して、本発明においては、炭酸ガスの導入下、又は炭酸ガスの導入前開始5分以内に水酸化アルカリを添加することから、水酸化ストロンチウムの析出が起こらない状態で炭酸ガスが導入されることで、より微細かつ分散性に優れた炭酸ストロンチウム微粒子が得られると考察される。
【0028】
炭酸ガスの導入は反応が終了するまで行われるが、その導入は、液のpHが10.5以下、望ましくは10以下となるまで継続させることが好適である。
10.5を超えるpHで導入を停止すると、一部未反応のストロンチウム化合物またはイオンが存在することになり、製造量の低下につながるほか、これらが不純分として含有される場合がある。
さらに、炭酸ガスの導入を完了した後に、加熱攪拌や室温放置などの方法で熟成工程を設けることもでき、該熟成を行うことにより炭酸ストロンチウム微粒子の分散性をさらに向上させることも可能である。
【0029】
このようにして得られる炭酸ストロンチウムは、短径5〜50nm、長径15〜500nmで、アスペクト比が1.5〜20の範囲の柱状形状の微細粒子となる。
また、特願2005−182319号の方法と比較して、より分散性に優れた微粒子が製造できる。
その分散性については、レーザー回折法や光散乱法により測定される粒度分布により判断することができる。
【0030】
生成後の炭酸ストロンチウム微粒子は、その用途に応じて、スラリーの状態や脱水乾燥した乾燥粉の状態で使用することができる。
また、高純度のものが求められる用途においては、精製水などにて十分に洗浄することが好適であり、更に湿式あるいは乾式において、一般に炭酸塩粒子の表面改質に使用される各種の表面処理剤にて表面処理を施すことも何ら問題ない。
以上のとおり、本発明の製造方法により得られる炭酸ストロンチウム微粒子は、特許文献7に記載されている非複屈折性光学樹脂材料など、微細な炭酸ストロンチウム微粒子が所望される用途に好適に使用することができる。

【実施例1】
【0031】
以下において、実施例及び比較例を示して本発明に関しさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例又は比較例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることは言うまでもない。
なお、実施例については、以下において1ないし4の各実施例を順に示す。
【0032】
まず、実施例1を示すに、塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させた後、液温を5℃に調節した。
そこに5℃に調節した5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第1段添加:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)した後、直ちに炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入した。
なお、水酸化ナトリウム水溶液混合後のpHは14.0であった。
【0033】
次いで、液のpHが10になった時点で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の1回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、再びpHが10になった時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の2回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、引き続きpHが10になるまで炭酸ガスを導入して炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径10〜30nm、長径50〜250nm、柱状形状の一次粒子を有しており、またレーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径240nmとほぼ一次粒子のサイズと等しいことから分散性に優れていることが確認された。
【実施例2】
【0034】
塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させた後、液温を5℃に調節した。
そこに5℃に調節した5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第1段添加:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)した後、直ちに炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入した。
【0035】
次いで、液のpHが10になった時点で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLを混合(第2段添加:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ1.0モル)、引き続きpHが10になるまで炭酸ガスを導入して炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径7〜30nm、長径30〜250nm、柱状形状の一次粒子を有しており、またレーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径230nmとほぼ一次粒子のサイズと等しいことから分散性に優れていることが確認された。
【実施例3】
【0036】
塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させた後、液温を5℃に調節した。
そこに炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入した後、直ちに5℃に調節した5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第1段添加:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)した。
なお、水酸化ナトリウム水溶液混合直後のpHは13.9であった。
【0037】
次いで、液のpHが10になった時点で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の1回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、再びpHが10になった時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の2回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、引き続きpHが10になるまで炭酸ガスを導入して炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径10〜30nm、長径100〜300nm、柱状形状の一次粒子を有しており、またレーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径270nmとほぼ一次粒子のサイズと等しいことから分散性に優れていることが確認された。
【実施例4】
【0038】
塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させた後、液温を5℃に調節した。
そこに5℃に調節した5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第1段添加:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)した後、直ちに炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入した。
【0039】
次いで、液のpHが10になった時点で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の1回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、再びpHが10になった時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の2回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、再度pHが10になった時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(第2段添加の3回目:ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、引き続きpHが10になるまで炭酸ガスを導入して炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径10〜40nm、長径100〜400nm、柱状形状の一次粒子を有しており、またレーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径300nmと分散性が良好であることが確認された。
【0040】
[比較例1]
塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させ、その後、そこに5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合した(ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)。
その後液温を5℃に調節し(温度調節に約10分が経過した)、そこに撹拌しながら炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入した。
【0041】
次いで、pHが10となった時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)、再びpHが10となって時点で5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合(ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)し、引き続きpHが10になるまで炭酸ガスを導入して炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径60〜120nm、長径200〜500nm、短柱状形状の一次粒子を有していたが、レーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径700nmであり、凝集体を形成していることが確認された。
【0042】
[比較例2]
塩化ストロンチウム6水和物0.5モルを2.0Lのイオン交換水に溶解させ、その後、そこに5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液50mLを混合した(ストロンチウム1モルに対して水酸化アルカリ0.5モル)。
その後液温を5℃に調節し(温度調節に約10分が経過した)、そこに撹拌しながら炭酸ガスを2.0L/分の速度(ストロンチウム1モルに対して4.0L/分)で導入し、炭酸ストロンチウムを生成させた。
得られた炭酸ストロンチウムは、SEMによる観察では短径20〜50nm、長径50〜300nm、短柱状形状の一次粒子を有していたが、レーザー回折法による粒度分布測定では、平均粒子径500nmであり、凝集体を形成していることが確認された。
【0043】
[粒度分布の比較]
実施例1及び比較例1で得られた炭酸ストロンチウムの粒度分布を図1及び2に示す。 これらの両図から明らかなように、実施例にて得られた炭酸ストロンチウム微粒子は、比較例と比べて、より微粒側にピークをもち、かつそのピーク形状もシャープであることから、分散性に優れたものであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1で得られた炭酸ストロンチウム微粒子のレーザー回折法による粒度分布測定結果
【図2】比較例1で得られた炭酸ストロンチウム微粒子のレーザー回折法による粒度分布測定結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ストロンチウム化合物の水溶液に炭酸ガスを導入することにより炭酸ストロンチウムを製造するにあたり、炭酸ガスの導入開始後又は開始前5分以内に水酸化アルカリの第1段添加を行い、その後炭酸ガスの導入によりpHが0.5以上低下した後、再び水酸化アルカリの第2段添加を行うことを特徴とする炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項2】
炭酸ガスの導入を、氷点以上、25℃以下で行う請求項1に記載の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項3】
炭酸ガスの導入速度を、ストロンチウム1モルに対して、0.5L/分以上とする請求項1又は2に記載の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項4】
水酸化アルカリの添加量を、第1段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜1.0モル、第2段においてストロンチウム1モルに対して0.3〜2.0モルとする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項5】
水酸化アルカリの第2段添加を、2〜5回にわけて行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項6】
炭酸ストロンチウムが、短径5〜50nm、長径15〜500nm、アスペクト比1.5〜20の柱状粒子である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−19108(P2008−19108A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190455(P2006−190455)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】