説明

炭酸水製造装置

【課題】少ない炭酸ガス量で高濃度に炭酸ガスが溶解した炭酸水を短時間で製造することができ、また孔詰りの問題もない炭酸水製造装置を提供する。
【解決手段】水を圧送する加圧部1と、水に炭酸ガスを注入するガス注入部2と、炭酸ガスを注入された水が加圧部1で圧送されることによる加圧で水に炭酸ガスを溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3で炭酸ガスを溶解させた炭酸水の圧力を、炭酸水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備える。加圧部1、ガス注入部2、加圧溶解部3の各部を連続的に運転させて、減圧部4に炭酸水を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のない炭酸水を連続的に吐出させるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸水は、飲料水として利用される他、血管拡張による血行促進効果を狙って業務用や家庭用の風呂の水として、また化粧水として、さらに化学プラントでのpH調整水として、各分野において広く利用されている。
【0003】
そしてこのような炭酸水を製造する装置として、特許文献1などが提案されている。この特許文献1では、多孔管の外周に中空糸膜を設け、中空糸膜内に炭酸ガスを供給しながら多孔管内に水を通し、多孔管の孔から流出した水が中空糸膜の表面を通過する際に、炭酸ガスを水に溶解させるようにしたものである。
【特許文献1】特開平7−313856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のように水に炭酸ガスを溶解させて炭酸水を製造するにあたって、水と炭酸ガスは接触しているだけであるので、炭酸ガスの溶解効率が低い。このため、高濃度に炭酸ガスが溶解した炭酸水を得ることは難しく、また水に溶解しない炭酸ガスの量が多いために、炭酸ガスの消費量が多くなるという問題があった。また多孔管や中空糸膜を用いるために、孔詰りの問題があってメンテナンスが頻繁に必要になるものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、少ない炭酸ガス量で高濃度に炭酸ガスが溶解した炭酸水を短時間で製造することができ、また孔詰りの問題もない炭酸水製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炭酸水製造装置は、水を圧送する加圧部1と、水に炭酸ガスを注入するガス注入部2と、炭酸ガスを注入された水が加圧部1で圧送されることによる加圧で水に炭酸ガスを溶解させる加圧溶解部3と、加圧溶解部3で炭酸ガスを溶解させた炭酸水の圧力を、炭酸水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部4とを備え、加圧部1、ガス注入部2、加圧溶解部3の各部を連続的に運転させて、減圧部4に炭酸水を連続的に供給し、減圧部4の流出側から気泡の発生のない炭酸水を連続的に吐出させるようにして成ることを特徴とするものである。
【0007】
この発明によれば、加圧部1による加圧によって水に炭酸ガスを溶解させるため、炭酸ガスを水に効率高く、高濃度に短時間で溶解させることができるものであり、また炭酸ガスを高濃度で溶解した炭酸水の圧力を、減圧部4で流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、炭酸水に気泡が発生することを防止して、高濃度で炭酸ガスが溶解した炭酸水をそのまま取り出すことができるものである。またガス注入部2で炭酸ガスを注入された水を加圧することによって加圧溶解部3で炭酸水を生成させるため、多孔管や中空糸膜などを用いる必要が無く、孔詰りの問題が発生することもないものである。
【0008】
また請求項2の発明は、加圧溶解部3で水に溶解しない余剰炭酸ガスを排出する余剰炭酸ガス排出部5を備えて成ることを特徴とするものである。
【0009】
この発明によれば、水に溶解しない余剰炭酸ガスを加圧溶解部3から排出することによって、余剰炭酸ガスが残留することによる加圧溶解部3内の炭酸ガスと水の比率を安定させて圧力変動を防ぐことができ、炭酸ガスの溶解効率を高く維持することができるものである。
【0010】
また請求項3の発明は、余剰炭酸ガス排出部5から余剰炭酸ガスをガス注入部2に供給する連結部10を備えて成ることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、加圧溶解部3で水に溶解しない余剰炭酸ガスをガス注入部2で再度水に注入することができ、余剰炭酸ガスの無駄がなくなるものである。
【0012】
また請求項4の発明は、上記の減圧部4を、加圧溶解部3から炭酸水を送り出す流路6に設けられ、炭酸水の圧力を大気圧にまで段階的に減圧する複数の圧力調整弁7で構成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、圧力調整弁7による圧力調整で炭酸水の圧力を下げることができ、加圧溶解部3における圧力に応じて圧力調整弁7で減圧調整することによって、炭酸水に気泡が発生することを安定して防ぐことができるものである。
【0014】
また請求項5の発明は、上記の減圧部4を、流路断面積と流路長さの少なくとも一方の調整で炭酸水の圧力を大気圧にまで減圧するように形成された、加圧溶解部3から炭酸水を送り出す流路6で構成して成ることを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、加圧溶解部3から炭酸水を送り出す流路6の流路断面積と流路長によって、炭酸水の圧力を下げることができ、装置の構造を簡単なものに形成することができるものである。
【0016】
また請求項6の発明は、上記の減圧部4は、一つの流路で形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、複数の流路を設けて減圧部4を形成する場合のような、装置構成が複雑になることがないものである。
【0018】
また請求項7の発明は、加圧溶解部3から炭酸水を送り出す流路6の圧力損失とこの流路6に付加した延長流路8の圧力損失の和が、加圧部1で圧送される水と炭酸ガスの押し込み圧によって加圧溶解部3内で水と炭酸ガスを加圧するのに必要な圧力となるように、流路6に延長流路8を付加して成ることを特徴とするものある。
【0019】
この発明によれば、流路6に延長流路8を付加することによって、絞り弁を用いる必要なく、加圧部1からの押し込み圧で加圧溶解部3内の圧力を確保することができ、この圧力で水に炭酸ガスを溶解させることができるものである。
【0020】
また本発明は、炭酸水の炭酸ガス溶解濃度を測定すると共に、測定結果に基づいて加圧部で圧送される水の圧力と加圧部で圧送される水の流量の少なくとも一方を制御する濃度検出制御部9を備えて成ることを特徴とするものである。
【0021】
この発明によれば、濃度検出制御部9で測定した炭酸ガス溶解濃度に基づいて、水圧力やの流量をフィードバック制御することによって、必要とされる炭酸ガス濃度に調整しながら炭酸水を生成することができるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加圧部1による加圧によって水に炭酸ガスを溶解させるようにしたので、炭酸ガスを水に効率高く、高濃度に短時間で溶解させることができるものであり、また炭酸ガスを高濃度で溶解した炭酸水の圧力を、減圧部4で流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するようにしたので、炭酸水に気泡が発生することを防止して、高濃度で炭酸ガスが溶解した炭酸水をそのまま供給することができるものである。またガス注入部2で炭酸ガスを注入された水を加圧することによって加圧溶解部3で炭酸水を生成させるようにしているので、多孔管や中空糸膜などを用いる必要が無くなり、孔詰りの問題が発生することもないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、加圧溶解部3の流出側と流入側にそれぞれ配管で形成される流路15,6が接続してある。流入側の流路15は一端を加圧溶解部3に接続してあり、他端は水道配管17a、浴槽等の貯水槽17bなど、任意の水供給源17に接続してある。また流路15の途中には加圧部1が設けてある。加圧部1は、例えば、水供給源17から供給される水を加圧溶解部3に圧送するポンプ18などで形成されるものである。
【0025】
またこの流入側の流路15にはガス注入部2が接続してある。ガス注入部2は炭酸ガスを流路15に供給して注入するためのものであり、炭酸ガスを封入したボンベ11から炭酸ガスを供給して注入する場合には、ボンベ11を圧力調整弁12を介して流路15に接続することによってガス注入部2を形成することができる。流路15へのガス注入部2の接続位置は、加圧溶解部3より上流側の位置であればよく、図1のように加圧部1より上流側の流路15に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路15に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0026】
一方、流出側の流路6は一端を加圧溶解部3に接続し、他端は炭酸水回収槽(図示省略)などに接続して大気に開放してある。この流路6には減圧部4が設けてある。また加圧溶解部3には余剰炭酸ガス排出部5が設けてある。余剰炭酸ガス排出部5は、例えば、加圧溶解部3内の気圧が所定の圧力以上になると開口するガス抜き弁などを備えて形成してあり、この余剰炭酸ガス排出部5は連結部10によってガス注入部2に連通接続してある。連結部10は圧力調整弁12よりも流路15の側の位置においてガス注入部2に接続されるものである。
【0027】
上記のように形成される炭酸水製造装置にあって、ポンプ18で形成される加圧部1を作動させると、水供給源17から供給される水が流路15を通して加圧溶解部3へ圧送して供給される。このように流路15内を水が流れる際に、ガス注入部2から炭酸ガスが流路15内に吸引されて水に炭酸ガスが注入される。そしてこのように炭酸ガスが注入された水を加圧部1で加圧溶解部3へ圧送して送り込むことによって、この圧送による押し込み力で加圧溶解部3内において水と炭酸ガスに圧力が加わって高圧になる。このように加圧溶解部3内で水と炭酸ガスを加圧することによって、水に炭酸ガスを効率高く飽和量以上に溶解させることができるものである。従って、多量の炭酸ガスを消費することなく、少量の炭酸ガスの供給で、炭酸ガスが高濃度で溶解した炭酸水を得ることができるものである。また炭酸ガスを水に溶解させるための多孔管や中空糸膜などを用いる必要が無くなり、孔詰りの問題が発生することもないものである。
【0028】
さらに、このように加圧溶解部3内において水と炭酸ガスを加圧して強制的に効率良く溶解させ、高濃度で炭酸ガスが溶解した炭酸水を短時間で生成することができるため、加圧溶解部3内で生成された炭酸水を流路6を通して送り出しながら、加圧溶解部3内で水に炭酸ガスを溶解させるようにすることができるものである。従って、加圧溶解部3をタンクのような容積の大きなもので形成する必要がなくなるものであり、装置規模を小さくして装置のコストを低減することが可能になるものである。
【0029】
ここで、ガス注入部2から注入される炭酸ガスの全量が水に溶解しないと、加圧溶解部3内で水に溶解しない余剰炭酸ガスが生じるが、加圧溶解部3に余剰炭酸ガス排出部5を設け、炭酸ガスの溶解飽和量以上の溶解できない余剰炭酸ガスを加圧溶解部3から排出することによって、余剰炭酸ガスが残留することによる加圧溶解部3内の炭酸ガスと水の比率を安定させて圧力変動を防ぐことができ、炭酸ガスの溶解効率を高く維持することができるものである。
【0030】
また、このように余剰炭酸ガス排出部5から排出された余剰炭酸ガスは連結部10を通してガス注入部2に返送し、ガス注入部2から再度、水に注入するようにしてある。従って、加圧溶解部3で溶解しなかった炭酸ガスを捨てることなく有効利用することができるものである。このとき、余剰炭酸ガス排出部5から返送された余剰炭酸ガスだけではガス注入部2で注入するガス圧が不足することがあるので、圧力調整弁12を調整してボンベ11から不足分の炭酸ガスを供給して、所定のガス圧で炭酸ガスを注入するようにしてある。
【0031】
そして、上記のように加圧溶解部3で生成された炭酸水は、流路6を通して送り出されるが、加圧溶解部3内で炭酸水は高圧に加圧された状態にあるので、そのまま大気圧下に送り出されると、急激な圧力低下によって、炭酸水中に気泡が発生するおそれがあり、炭酸ガス溶解量が減少し、またキャビテーションが発生することがある。このために本発明では、流路6に減圧部4を設け、加圧溶解部3内で加圧された状態の炭酸水を流路6を通して送り出す際に、減圧部4で大気圧まで気泡を発生させることなく減圧をした後に吐出するようにしてある。
【0032】
ここで、加圧溶解部3内で生成されるのと同じ濃度の炭酸水について、加圧溶解部3内で加圧されている圧力と同じ圧力から大気圧まで減圧する際に、気泡が発生しない減圧度を、予め計算や測定で求めておき、減圧部4をこの予め求めた減圧度で、炭酸水が流入する側から流出する側に向かって、炭酸水の圧力を段階的に、あるいは連続的に、徐々に大気圧まで減圧できるように設定してある。従って、加圧溶解部3内で加圧された炭酸水を、減圧部4において気泡が発生しない減圧度で徐々に大気圧まで減圧した後に、流路6の先端から吐出することによって、炭酸水に気泡が発生することなく炭酸水を吐出することができるものであり、加圧溶解部3で飽和量以上に炭酸ガスが溶解された炭酸水を、安定した高濃度の状態のまま送り出して利用することが可能になるものである。
【0033】
図2は、減圧部4の具体的な実施の形態の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6に、水の流れ方向に沿って複数の圧力調整弁7(7a,7b,7c)を設けることによって、減圧部4を形成するようにしてある。このように減圧部4を複数の圧力調整弁7を備えて形成することによって、気泡が発生しない減圧度で炭酸水の圧力を段階的に徐々に下げることができるものである。
【0034】
各圧力調整弁7a,7b,7cは、炭酸水に気泡発生が生じない減圧度で減圧するように設定されているものであり、この減圧度は予め計算や測定で求めた数値に設定されるものである。例えば、加圧溶解部3から流路6に送り出された炭酸水の加圧圧力が0.5MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.12MPaであると測定によって判明しているとすると、圧力調整弁7aで炭酸水の圧力を0.12MPa減圧して、0.38MPaに落とす。また炭酸水の加圧圧力が0.38MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.16MPaであると測定によって判明しているとすると、次の圧力調整弁7bで炭酸水の圧力を0.16MPa減圧して、0.22MPaに落とす。さらに炭酸水の加圧圧力が0.22MPaであるとき、気泡が発生しない減圧量が0.22MPa以上であると測定によって判明しているとすると、次の圧力調整弁7cで炭酸水の圧力を0.22MPa減圧して、加圧圧力を0MPaに落とし、大気圧まで減圧することができるものである。尚、圧力調整弁7による減圧量は、水温、炭酸ガスの溶解濃度、加圧溶解部3内の圧力、流路6の径などに応じて変動するものであり、装置毎に、計算や測定をして、適宜設定されるものである。
【0035】
図3は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を流路断面積が異なる複数の管体20a,20b,20cを備えて形成し、この流路断面積の異なる複数の管体20a,20b,20cで減圧部4が形成されるようにしてある。
【0036】
図3(a)の実施の形態では、流路断面積が異なる、つまり内径の異なる複数の管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてあり、炭酸水の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。また図3(b)の実施の形態では、内径の異なる複数の管体20a,20b,20cをレジューサ21を介して接続して連ねるようにしてあり、炭酸水の流れの上流側から下流側へと、徐々に管体20a,20b,20cの径が小さくなるようにしてある。さらに図3(c)の実施の形態では、炭酸水の流れの上流側から下流側へと連続的に径が小さくなる管体20a,20b,20cを一体に連ねるようにしてある。
【0037】
この図3のものにあって、各管体20a,20b,20cの内径はφd>φd>φdであるので、各管体20a,20b,20c内の炭酸水の流速はV<V<Vとなり、各管体20a,20b,20c内の炭酸水の圧力はP>P>Pとなる。従って、加圧溶解部3から送り出される炭酸水の圧力Pを気泡が発生しない減圧度で、図3(a)(b)のものでは段階的に減圧して、また図3(c)のものでは連続的に減圧して、Pの大気圧まで徐々に下げることができるものである。
【0038】
図4は、減圧部4の具体的な実施の形態の他の一例を示すものであり、加圧溶解部3に接続される流路6を通して炭酸水を排出する際に、流路6内を炭酸水が流れる際の圧力損失によって、炭酸水に気泡が発生しない減圧速度で炭酸水の圧力を徐々に連続的に低下させ、炭酸水の圧力を大気圧にまで低下させるようにしてある。従って図4(a)の実施の形態では、加圧溶解部3内での圧力がPの炭酸水を、流路6内を通過させる際にP〜Pn−1へと、炭酸水に気泡が発生しない減圧速度で徐々に連続的に圧力を低下させ(P>P>Pn−1)、流路6の終端では炭酸水の圧力Pが大気圧にまで低下するように、流路6の流路断面積と管路長さLを設定するようにしてあり、このような流路断面積と管路長さLを有する流路6によって減圧部4が形成されるものである。
【0039】
この管路長さLは、次の式から設定することができる。すなわち、
流体の関係式P=λ・(L/d)・(v/2g)
[Pは加圧溶解部3内の圧力、λは管摩擦係数、dは内径、vは流速、gは加速度]
から、L=(P・d・2g)/(λ・v)を導くことができ、この式から計算して流路6の管路長さLを求めることができるものである。このように、流路6の管路長さLを所定長さに形成するだけで減圧部4を形成することができるものであり、装置の構造をより簡単なものに形成することができるものである。このような管路長さLが長い流路6で形成される減圧部4は、例えば図4(b)のような長いホース4aで形成することができる。
【0040】
上記のように本発明では加圧部1によって水と炭酸ガスを加圧溶解部3に圧送し、この際の押し込み圧によって加圧溶解部3内で水と炭酸ガスを加圧して炭酸ガスを溶解させるようにしているが、この押し込み圧を受けて加圧溶解部3内に必要な圧力が発生するようにする必要がある。このように加圧部1からの押し込み圧を受ける圧力を確保するために、加圧溶解部3の流出側の流路6に絞り弁などの絞り部を設けることが考えられるが、このように絞り部を流路6に設けると、加圧溶解部3で生成された炭酸水を流路6に送り出して排出する際に、絞り部の前後で大きな圧力差が生じ、炭酸水が急激に減圧されることになり、炭酸水に気泡が発生するおそれがある。
【0041】
そこで図5の実施の形態では、流路6の圧力損失を利用して、流路6に絞り部を設ける必要なく、押し込み圧を受ける圧力を確保するようにしている。このとき、上記各実施形態の流路6の長さでは、流路6の圧力損失で押し込み圧を受ける圧力を確保することは難しいので、流路6の加圧溶解部3と反対側の端部に延長流路8を付加するようにしてある。すなわち、流路6の減圧部4も含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって加圧溶解部3内で水と炭酸ガスを加圧するのに必要な圧力と、この流路6の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じる管路の長さを上記の式から算出して、この管路長さの延長流路8を流路6に付加するようにしてある。このように、流路6の圧力損失と延長流路8の圧力損失の和が、加圧部1で圧送される炭酸ガスと水の押し込み圧によって加圧溶解部3内で水と炭酸ガスを加圧するのに必要な圧力となるように、流路6に延長流路8を付加することによって、絞り弁などの絞り部を用いる必要なく、加圧部1からの押し込み圧で加圧溶解部3内の加圧力を確保して、水に炭酸ガスを溶解させることができるものである。
【0042】
図6は炭酸水製造装置の具体的な一例を示すものであり、水は流路15に導入口30から導入される。流路15には炭酸ガスが導入されるガス注入部2が接続してあり、炭酸ガスが注入された水はポンプで形成される加圧部1によって、小容量のタンクで形成される加圧溶解部3に圧送される。このように炭酸ガスが注入された水が加圧溶解部3に圧送されることによって、加圧溶解部3内で水に炭酸ガスが溶解された炭酸水が生成される。そしてこの炭酸水は加圧溶解部3から流路6に送り出され、流路6の先端の吐出口31から送り出される。この流路6には減圧部4が設けてあり、加圧溶解部3から送り出された炭酸水は大気圧まで減圧された後に流路6の端部の吐出口31から吐出され、気泡が発生しない状態で炭酸水を送り出すことができる。図6の実施の形態では、減圧部4は、図3(a)の内径が異なる管体20a,20b,20cを連ねたもので形成してある。
【0043】
この装置にあって、ポンプで形成される加圧部1を連続運転することによって、ガス注入部2、加圧溶解部3を連続的に運転させて、減圧部4に炭酸水を連続的に供給するようにすることができるものであり、減圧部4の流出側である吐出口31から気泡の発生のない炭酸水を連続的に吐出させることができるものである。また、減圧部4は加圧溶解部3から炭酸水を送り出す流路6の一部として設けられており、そしてこの減圧部4は炭酸水の圧力を流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧するものであるため、減圧部4を例えば内径2〜50mm程度の比較的大きい流路として形成することができるものであり、異物が混入しても減圧部4内が詰まるようなことがないものである。さらにこのような構成の減圧部4を設けることによって、減圧部4を流れる炭酸水のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(Re=2320)より小さなレイノズル数である層流状態だけではなく、臨界レイノルズ数より大きなレイノルズ数である乱流状態でも対応することが可能になるものである。さらに、減圧部4をこのように内径の大きな流路として形成することによって、炭酸水の供給量を多くすることができ、減圧部4を一つの流路のみで形成することが可能になるものであり、装置構成を簡単なものに形成することができるものである。
【0044】
図7は、本発明の装置において加圧溶解部3で水に炭酸ガスを溶解し、さらに減圧部4で大気圧にまで減圧して得られた炭酸水について、炭酸水の水温と炭酸ガス濃度の関係を示すものである。例えば水温が25℃の水を用いて炭酸水を製造すると、6600mg/L程度の高い濃度で炭酸ガスが溶解しており、高濃度で炭酸ガスが溶解した炭酸水を容易に得ることができるものである。
【0045】
図8は本発明の他の実施の形態を示すものであり、減圧部4よりも水の流れの下流側において流路6に炭酸ガス濃度計によって形成される濃度検出部37が設けてある。この濃度検出部37は制御部38に電気的に接続してあり、さらに制御部38は加圧部1に電気的に接続してあり、制御部38によって加圧部1の作動を制御することができるようにしてある。この濃度検出部37と制御部38によって濃度検出制御部9が形成されるものである。その他の構成は図1のものと同じである。
【0046】
このものにあって、上記のように減圧部4で圧力が減圧された炭酸水が流路6を通過する際に、濃度検出部37によって炭酸水の炭酸ガス溶解濃度が測定されるようになっており、濃度検出部37で測定された炭酸ガス濃度のデータは制御部38に入力されるようになっている。制御部38はCPUやメモリー等を備えて形成されるものであり、濃度検出部37から入力された炭酸ガス濃度値に基づいて、加圧部1で圧送される水の圧力と加圧部1で圧送される水の流量の少なくとも一方を制御するようにしてある。すなわち、濃度検出部37で測定される炭酸ガス濃度が制御部38のメモリーに登録された値より小さいときには、制御部38で加圧部1の作動を制御して、圧送される水の圧力を高めたり、圧送される水の流量を少なくしたりすることによって、加圧溶解部3で溶解される炭酸ガスの溶解濃度を高め、また、濃度検出部37で測定される炭酸ガス濃度が制御部38のメモリーに登録された値より大きいときには、制御部38で加圧部1の作動を制御して、圧送される水の圧力を低くしたり、圧送される水の流量を多くしたりすることによって、加圧溶解部3で溶解される炭酸ガスの濃度を低下させ、制御部38のメモリーに登録された炭酸ガス濃度の値に炭酸水の濃度を調整するものである。従って、用途に応じて炭酸水において必要とされる炭酸ガス濃度は異なるが、必要な炭酸ガス濃度のデータを制御部38のメモリーに登録しておくことによって、必要とされる炭酸ガス濃度に調整しながら炭酸水を生成することができるものである。
【0047】
図9は、流量一定条件下で、加圧部4を制御して所定圧力において加圧溶解部3で生成した炭酸水を、減圧部4で気泡を発生させることなく大気圧にまで減圧したときの、炭酸水の炭酸ガス濃度と水温との関係を示すグラフである。流量が一定であれば、炭酸ガス濃度は水の温度に依存する相関関係があり、再現性もある。従って、必要とされる炭酸ガス濃度の炭酸水を得るには、水温を測定してその水温に応じて加圧部1による加圧を所要圧力に制御すれば、再現性高く所定濃度の炭酸水を得ることができるものである。例えば、20℃の水に対して、インバータ等を使って加圧部1のポンプ18の圧力特性を0.4MPaに設定し、この0.4MPaの加圧下で炭酸ガスを溶解させると、6800mg/Lの濃度の炭酸水を得ることができるものであり、また0.3MPaの圧力に変更すると、5300mg/Lの濃度の炭酸水を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】同上の一部の一例を示す概略図である。
【図3】同上の一部の他の一例を示すものであり、(a)(b)(c)はそれぞれ概略図である。
【図4】同上の一部の他の一例を示すものであり、(a)は概略図、(b)は斜視図である。
【図5】同上の一部の他の一例を示す概略図である。
【図6】(a)(b)は本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図7】炭酸水の炭酸ガス濃度と温度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の他の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図9】炭酸水の炭酸ガス濃度と温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1 加圧部
2 ガス注入部
3 加圧溶解部
4 減圧部
5 余剰炭酸ガス排出部
6 流路
7 圧力調整弁
8 延長流路
9 濃度検出制御部
10 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を圧送する加圧部と、水に炭酸ガスを注入するガス注入部と、炭酸ガスを注入された水が加圧部で圧送されることによる加圧で水に炭酸ガスを溶解させる加圧溶解部と、加圧溶解部で炭酸ガスを溶解させた炭酸水の圧力を、炭酸水の流入側から流出側に向かって順次大気圧まで減圧する減圧部とを備え、加圧部、ガス注入部、加圧溶解部の各部を連続的に運転させて、減圧部に炭酸水を連続的に供給し、減圧部の流出側から気泡の発生のない炭酸水を連続的に吐出させるようにして成ることを特徴とする炭酸水製造装置。
【請求項2】
加圧溶解部で水に溶解しない余剰炭酸ガスを排出する余剰炭酸ガス排出部を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の炭酸水製造装置。
【請求項3】
余剰炭酸ガス排出部から余剰炭酸ガスをガス注入部に供給する連結部を備えて成ることを特徴とする請求項2に記載の炭酸水製造装置。
【請求項4】
減圧部を、加圧溶解部から炭酸水を送り出す流路に設けられ、炭酸水の圧力を大気圧にまで段階的に減圧する複数の圧力調整弁で構成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭酸水製造装置。
【請求項5】
減圧部を、流路断面積と流路長さの少なくとも一方の調整で炭酸水の圧力を大気圧にまで減圧するように形成された、加圧溶解部から炭酸水を送り出す流路で構成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の炭酸水製造装置。
【請求項6】
減圧部は、一つの流路で形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の炭酸水製造装置。
【請求項7】
加圧溶解部から炭酸水を送り出す流路の圧力損失とこの流路に付加した延長流路の圧力損失の和が、加圧部で圧送される水と炭酸ガスの押し込み圧によって加圧溶解部内で水と炭酸ガスを加圧するのに必要な圧力となるように、流路に延長流路を付加して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の炭酸水製造装置。
【請求項8】
炭酸水の炭酸ガス溶解濃度を測定すると共に、測定結果に基づいて加圧部で圧送される水の圧力と加圧部で圧送される水の流量の少なくとも一方を制御する濃度検出制御部を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の炭酸水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−195812(P2009−195812A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39207(P2008−39207)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】