説明

炭酸飲料の製造方法及び製造装置

【課題】炭酸飲料の炭酸ガス圧入工程において、液体を過度に冷却せずとも泡立ちによる炭酸ガスの損失や液の噴きこぼれを防ぎ、省エネ高効率の製造方法と装置を提供する。
【解決手段】液中のマイクロ・ナノバブルが長時間に亘って滞留し泡立ちしない性質に着目して、飲料原液に炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを添加する方法。
第一の実施形態は、原液を通すエゼクタ又はベンチュリ管に炭酸ガスを供給して発生したバブルを多段のキャビテーション発生機でマイクロ・ナノバブル化する装置。
第二の実施形態は、高圧炭酸ガスを共鳴空洞に噴射して発生する超音波を該高圧炭酸ガスで駆動するエゼクタの噴射ノズルに導入した超音波発振エゼクタを原液の流路に設け、エゼクタと超音波の両効果を同時相乗的に作用させて生成する炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを原液に添加する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーラや発泡酒など炭酸ガスを含有する炭酸飲料のビン詰めや缶詰めに係わる製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭酸飲料の製造においては、例えば非特許文献1に示すように、炭酸ガス圧入は一般に液体を冷却して行っていた。この理由は、高温では炭酸ガスの圧力が高まるので、ビン詰め充填時に液の泡立ちによって炭酸ガスが損失したり、液体の噴出しによって内容物が噴きこぼれて量目不足を生じたり、またこぼれた液が周囲を汚して余計な洗浄を必要とする等々の運転効率の低下を防ぐためである。このためには、低ガス圧の炭酸飲料でも15℃近辺、高ガス圧のものでは5℃以下の低温で炭酸ガス圧入を行うことが多く、このような低温維持に伴う冷却装置の設備維持や電力損失が問題視されていた。
【0003】
特に缶詰めの場合は、缶詰め後に加温工程があるので過度の冷却は極力避けねばならない。また、缶詰めはビン詰めに比べて開口部が大きく泡立ちが起こり易い上に、液面の多少の差でも内容量の差を生じるなどの不都合があるので、炭酸ガス圧入の過程で効率的な運転操作を行うために特に注意を払う必要があった。
【先行技術文献】
【0004】
【非特許文献1】 「食料工業」藤巻正生ら編集・恒星社厚生閣発行・1985年9月初版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に鑑み本発明は、炭酸飲料のビン詰めや缶詰め工程における炭酸ガスの圧入工程において、液体を過度に冷却する必要がなく、しかも液の泡立ちによる炭酸ガスの損失や液の噴きこぼれに伴う量目不足や汚染等々の不都合を防いで、冷却電力の損失を低減すると共に高い運転効率を維持し得る方法及び装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、炭酸ガスの圧入工程において飲料原液に炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを添加することを特徴とする、炭酸飲料の製造方法である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、飲料原液を通すエゼクタ又はベンチュリ管の低圧部に炭酸ガスを供給して炭酸ガスバブルを発生せしめた後に、多段のキャビテーション発生機によって液中に存在する炭酸ガスバブルをマイクロ・ナノバブル化することを特徴とする、炭酸飲料の製造装置である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、高圧炭酸ガスを共鳴空洞に噴射して発生する超音波を該高圧炭酸ガスで駆動するエゼクタの噴射ノズルに導入した超音波発振エゼクタを飲料原液の流路に設け、エゼクタと超音波の両効果を同時相乗的に作用せしめて生成する炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを飲料原液に添加することを特徴とする、炭酸飲料の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、周知のように液中のマイクロ・ナノバブルは滞留時間が極めて長く長時間に亘って液の泡立ちを防止する効果があるので、製造過程において液体を過度に冷却せずとも液の泡立ちによる炭酸ガスの損失や液の噴きこぼれ等々に伴う不都合を生ずることなく、冷却電力の損失を低減すると同時に高い運転効率を維持できる利点がある。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、飲料原液中に発生した炭酸ガスバブルは多段のキャビテーション発生機において繰り返してキャビテーションによるせん断作用を受けて微細化されるので、繰り返し回数すなわち段数を最適設定することにより、キャビテーション発生に伴う動力損失を最小に抑えた状態でマイクロ・ナノバブル化の程度を最適化できる利点がある。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、炭酸ガスの噴気によりエゼクタ効果に起因する炭酸ガスのバブル化と超音波に起因するバブルの微細化・分散効果とが同時相乗的に作用し、炭酸ガスが効果的にマイクロ・ナノバブル化されると同時に液中に均等に混合分散されるので、簡単な付加装置で均質なマイクロ・ナノバブルを含む炭酸飲料を製造できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は、本発明の製造方法の説明図。
【図2】は、本発明の第一の実施例を示す装置の説明図。
【図3】は、本発明の第二の実施例を示す装置の説明図。
【図4】は、図3の超音波発振エゼクタ21の詳細と”X”視矢一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は本発明の製造方法の説明図で、炭酸飲料の原液1は炭酸ガスのマイクロ・ナノバブル添加装置2を経て炭酸飲料3としてビン詰め又は缶詰め装置4に送られ、製品5として完成する。このうち炭酸ガスのマイクロ・ナノバブル添加装置2に該当する第一の実施例を図2に、第二の実施例を図3,4、にそれぞれ示している。
【実施例1】
【0014】
本発明の製造装置の第一の実施例を示す図2において、原液1はポンプ6により収縮管7喉部8拡大管9で構成したエゼクタ又はベンチュリ管10に圧送され、喉部8に供給した炭酸ガス11は原液1に吸引されてバブル化する。拡大管9の端末には漸縮管12と円錐状の多数の邪魔板13とで構築されたキャビテーション発生機14を設け、邪魔板13の外周は漸縮管12の内面と微小隙間15を維持するようステイ16と中軸17で漸縮管12に固定されている。
【0015】
以上の構成により、エゼクタ又はベンチュリ管10の喉部8において原液1に吸引された炭酸ガス11はバブル化し、更にキャビテーション発生機14の多数の邪魔板13外周の微小隙間15を高速で通過する際に生ずるキャビテーションによって繰り返しせん断力を受けて微細化しマイクロ・ナノ化される。邪魔板13の段数即ち繰り返し数を増加すればマイクロ・ナノ化の程度は向上するが動力損失の増加を伴うので、邪魔板13の段数を最適に設定することにより動力損失を最小に抑えた状態で液の泡立ちを防ぎ得るマイクロ・ナノ化の程度を最適化することができる。
【実施例2】
【0016】
図3,4は本発明の製造装置の第二の実施例を示す。図において、原液1はポンプ6により飲料原液の流路20に配備した超音波発振エゼクタ21に導入される。該超音波発振エゼクタ21は特願2008−185373の技術思想を取り入れたもので、放出された高圧炭酸ガス22は、放射状に多数設けられた噴気口23とこれに対峙する共鳴空洞24とにより超音波25を発振し、高圧炭酸ガス22と超音波25とは円環室26、収縮円錐管27を経てエゼクタの噴射ノズル28に達する。共鳴空洞24の直径d=3mm,深さL=2mm、炭酸ガスの音速V≒270m/秒とした場合、発振音波はN≒V/4(L+0.3d)≒23kHzとなり、バブルの微細化・分散化処理に適した低周波領域の超音波が発振される。更に噴射ノズル28から放出された高速炭酸ガスは収縮管29と咽喉管30で構成された混合ノズル31内で、エゼクタ効果と前記超音波効果との相乗効果で、マイクロ・ナノバブル化されると同時に原液の一部32と混合攪拌され、拡大ノズル33から拡散放出されて原液の残部34を吸引混合し、炭酸飲料3として排出される。
【0017】
実施例2の場合は以上で明らかなように、簡単な付加装置で同一の高圧炭酸ガスにより、エゼクタ効果と超音波効果とを同時相乗的に発現せしめて炭酸ガスの微細化と原液との均質混合を可能にするので、炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを高効率で原液に添加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係る方法と装置によれば、炭酸ガスを含有する炭酸飲料のビン詰めや缶詰め工程における炭酸ガスの圧入工程において、液体を過度に冷却せずとも炭酸ガスの損失や液の泡立ちに伴う不都合を解消するので、冷却電力の低減と高い運転効率を維持することが可能となり、コーラや発泡酒など炭酸飲料産業の省エネと合理化に広く貢献できる。
【符号の説明】
【0019】
1 原液
2 炭酸ガスのマイクロ・ナノバブル添加装置
3 炭酸飲料
4 ビン詰め又は缶詰め装置
5 製品
6 ポンプ
7 収縮管
8 喉部
9 拡大管
10 エゼクタ又はベンチュリ管
11 炭酸ガス
12 漸縮管
13 邪魔板
14 キャビテーション発生機
15 微小隙間
16 ステイ
17 中軸
20 流路
21 超音波発振エゼクタ
22 高圧炭酸ガス
23 噴気口
24 共鳴空洞
25 超音波
26 円環室
27 収縮円錐管
28 噴射ノズル
29 収縮管
30 咽喉管
31 混合ノズル
32 原液の一部
33 拡大ノズル
34 原液の残部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスの圧入工程において飲料原液に炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを添加することを特徴とする、炭酸飲料の製造方法。
【請求項2】
飲料原液を通すエゼクタ又はベンチュリ管の低圧部に炭酸ガスを供給して炭酸ガスバブルを発生せしめた後に、多段のキャビテーション発生機によって液中に存在する炭酸ガスバブルをマイクロ・ナノバブル化することを特徴とする、請求項1の方法における炭酸飲料の製造装置。
【請求項3】
高圧炭酸ガスを共鳴空洞に噴射して発生する超音波を該高圧炭酸ガスで駆動するエゼクタの噴射ノズルに導入した超音波発振エゼクタを飲料原液の流路に設け、エゼクタと超音波の両効果を同時相乗的に作用せしめて生成する炭酸ガスのマイクロ・ナノバブルを飲料原液に添加することを特徴とする、請求項1の方法における炭酸飲料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110040(P2011−110040A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284503(P2009−284503)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(594081157)株式会社平岩鐵工所 (2)
【Fターム(参考)】