炭酸飲料中で「泳ぐ」菓子
透明な炭酸飲料中で浮上・沈降をくり返し行う、すなわち「泳ぐ」菓子。この浮上・沈降は、菓子の表面に炭酸の泡が形成されること、また菓子が飲料の上面に達したとき泡が大気中へ離脱することにより生じる浮力の変化によって起こる。菓子が上昇・下降を行う能力は菓子の密度、体積、および表面積、並びに菓子表面に形成される泡の単位表面積当りの体積に依存する。薄い菓子に対しては、上昇・下降の条件には厚さ以外の他の寸法は実質的に無関係である。短い長さのスケールで粗い表面は泡の核形成を促進し、長い長さのスケールで滑らかな菓子は大きな泡を保持することができる。溶解度の低い菓子が好ましい。その理由は、菓子の寸法およびその表面の特性は時間に関して比較的不変であるし、飲料の炭酸化の度合いやその外観は沈降する菓子により大きな影響を受けないからである。飲料内の菓子の数は、十分多く通常1つ以上の菓子が運動を行っており、しかし多すぎて菓子がお互いの水泳運動を抑止することのないように選択される。好ましい実施例では菓子は柔らかく、色彩豊かで、容易に識別可能な海に関係する物の形状を有する。
【発明の詳細な説明】
炭酸飲料中で「泳ぐ」菓子関連する出願について 本出願は、1996年11月26日に提出されたローレンス・ジェイ・シャー(Laurence Jay Shaw)による同一名称の米国(通常)特許出願08/756,725に基づく特許協カ条約(PCT)出願である。当米国特許出願は、1996年1月29日に提出された同一出願人/発明者による同一名称の特許仮出願0/010,736の一部継続出願であり、さらに当特許仮出願は1995年11月28日に提出された同一出願人/発明者による同一名称の特許仮出願60/007,655の一部継続出願である。
技術技術 本発明は、一般に玩具および娯楽に関係するもので、特に食用玩具および娯楽に関係し、さらに動力学的特性を有する食用玩具および娯楽に関係し、より具体的には炭酸飲料中で動力学的特性を有する食用玩具および娯楽に関係する。
発明の背景 可変浮力のよく知られた実例として、氷が入っていない炭酸飲料中の干しぶどう(「シンク・オア・スイム:水の化学(Sink Or Swim!:The Science of Water)」バーバラ・テイラー(Barbara Taylor)著、Random House Publishing,New York、1990、ページ22を参照)または小さな粘土ボール(「子供の化学(Physics For Every Kid)ジャニース・プラット・バンクリーブ(Janice Pratt VanCleave)著、John Wiley & Sons,Inc.、New York、1991、ページ64-65を参照)がある。(便宜上ここでは干しぶどうの運動について述べるが、粘土ボールも同様な運動をする。)干しぶどうは、比重が1より大きいため最初沈下する。沈んだ干しぶどうの表面に付着した炭酸ガスの泡の全体積が十分大きくなると、干しぶどうは飲料の表面に上がってくる。
飲料の表面でこれらの泡は飲料/大気の界面に達し、大気中に離脱し、したがって干しぶどう/泡の混成体の比重は飲料の比重より大きくなり、干しぶどうは再び沈降し、新しいサイクルを開始する。多くの干しぶどうが透明な飲料中で同時に上昇・下降を行うと、それらは泳いでいるかのごとく見える。本出願では以後、炭酸飲料中の物体が、その物体とそれに付着した泡の浮力が変化することにより繰返して上昇・下降を行うことを「泳ぐ」と呼ぶことにする。
しかし、干しぶどうの比重,大きさ,形,および表面のきめ等は制御が困難で、一般に大きくばらついている。干しぶどうの中には中身が非常に詰まっていて、すなわち表面積が非常に小さく、このため飲料の底に留まったままになるものもある。逆に、中身が十分に詰まってなく、すなわち表面に付着した泡の全体積に比べて表面積が大きすぎ、このため飲料の表面に浮かんだままになるものもある。さらに、干しぶどうとそれに付着した泡の浮力が変化することにより飲料水中で上昇・下降を行う干しぶどうでも、飲料の上表面および底面で停留時間を最短にするよう、干しぶどうの体積,表面積,比重等が最適化されているものではない。さらに、干しぶどうの表面のきめは、泡の核形成や大きな泡の保持に関して最適になってはいない。また、任意の時刻に最大数の干しぶどうが運動状態になるよう飲料中の干しぶどうの数が最適化されてはいない。それに加え、これらの干しぶどうは、小さな子供たちの想像力を刺激するような形状をしていない。
同様な原理で動作するものにプラスチックの玩具があるが、これは潜水艦に似た形状を持ち、ふくらし粉を保持する内室を備えている(一例としてダマート社(DaMert Company、San Leandro、California)製のアンダーシー・エクスプローラ(Undersea ExplorerTM)がある)。ふくらし粉を内室に充填するには、まず潜水艦を水中に入れ内室の底にあるスクリーンを濡らす。その後スクリーンに付いた水をある程度残すように潜水艦を振って大部分の水を内室から取り出し、上部ポートから内室にふくらし粉を充填し、最後に上部ポートをシールする。潜水艦を水に入れると、プラスチックとふくらし粉の比重が水の比重よりも大きいため潜水艦は沈降する。しかし、内室の底にあるスクリーンを通して水が内室に入ると、内室に入った水とふくらし粉の化学反応により気体が発生し、そのため潜水艦の浮力が変化し潜水艦は上昇する。
発生した気体の体積が十分に大きくなると、内室の底にあるスクリーン上に形成された泡は潜水艦から追い出され、潜水艦は再度沈降を始め、新たな運動サイクルが始まる。
この種の玩具の欠点の1つは、その動作はふくらし粉を内室に充填する方法に敏感に影響されるため必ずうまく行くとは限らないことである。ふくらし粉が密度濃く充填されている場合には、水がふくらし粉の内部に到達するには時間が掛かり、この玩具はたまにしか上昇しないことになる。ふくらし粉の充填量が少ない場合には、玩具はほんの数回上昇するだけか、または全く上昇しないことさえある。ふくらし粉を充填する際内室に水が多く残っている場合には、化学反応は急速に起こり玩具の運動は短時間続くだけである。逆に、ふくらし粉の充填時にスクリーンに十分な水が残っていない場合は、水はスクリーンを通過できないのでふくらし粉に到達できず、したがって玩具を上昇させるのに必要な化学反応が起こらない。玩具およびその内室を大きくするとふくらし粉の量およびふくらし粉の充填密度の制御は容易になる。また、玩具が射出成形のプラスチックで作られている場合、玩具を大きくするとスクリーンの製造も容易になる。
したがって、この種の玩具の短所は大きな水の容器が必要なことである。例えば、ダマート社で製造されている潜水艦の形をした玩具は約11.5cmの長さで4.0cmの高さであるため、飲料用コップよりも大きな水容器が必要なことは明らかである。この種の玩具の他の短所は、一般に、ふくらし粉を正しく充填するのが困難なため一つの玩具だけで遊ぶことである。したがって、玩具が水の入った容器の上面および底面で静止状態にあるときは、動くものが何も無く興味がそがれることになる。
したがって、本発明の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・沈降を繰返す、すなわち「泳ぐ」ような密度と形状を持つ製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飲料中、特に飲用コップやガラスコップに入った炭酸飲料中で泳ぐ食用製品、および、特に炭酸飲料の外見を損なわない食用製品を提供することである。
さらに、本発明の目的は、炭酸飽和液体中で浮上・沈降を繰返し、飲料の上表面と底面で短い静止時間を持つ食用製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で浮上・沈降を繰返し、一体に形成された独立した製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を行い、任意の寸法の断面積を持つ製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で、任意の時刻において大部分の製品が一般に運動状態にあるような製品の集合を提供することである。
本発明の他の目的は、他の製品の運動に影響を与えることなく炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す複数の製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、泡の核形成を促進する表面のきめを有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、大きな泡を保持可能な表面きめを有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、興味をもたせ楽しい外見を有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、試行錯誤の実験を行わずに得られる浮力の変化により炭酸飽和液体中で上昇・沈降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的は、長期間にわたって浮力の変化により炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的は、寸法、密度または表面のきめの小さな変化、あるいは液体中の炭酸ガスの量に比較的敏感でない循環時間を有する炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的および利点は以下に説明されており、その説明から明らかであろう、また本発明を実施することにより習得することもできるであろう。本発明の目的および利点は特許請求項で特に示す手段および組み合わせを用いて実現することができる。
本発明の開示 本発明は特定の比重および寸法をもつ菓子に関するもので、炭酸飲料中に入れると炭酸の泡がその菓子に付着し、そのため菓子が上昇・下降する、すなわち「泳ぐ」ような菓子に関するものである。本発明はまた、特定の比重および厚さをもつ薄い菓子に関するもので、炭酸飲料中に入れると炭酸の泡がその菓子に付着し、そのため泳ぐように見える菓子に関するものである。さらに、本発明は上述した菓子の集合に関するもので、集合内の菓子の数は十分小さく菓子はお互いの水泳運動を抑止せず、またその数は十分大きく通常少なくも1つの菓子が運動を行っている。本発明はまた、炭酸飲料中で上昇・下降し、泡の核形成を促進するため小さな長さのスケールで粗い表面きめをもつ菓子に関するものである。さらに本発明は炭酸飲料中で上昇・下降し、中間の長さのスケールで滑らかな表面きめをもつため、任意の場所で大きな泡を保持できる菓子に関するものである。
図面の簡単な説明 本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する図面は、本発明の実施例を図解し、上述した説明および以下で述べる好ましい実施例の詳細を説明すると共に本発明の原理を説明するものである。
図1A、1B、1C、1D、1E、1Fおよび1Gは炭酸飲料中の本発明の菓子の側面を時間の経過に従って示したものである。
図2Aおよび2Bはそれぞれ、菓子の上面および底面に付着した炭酸の泡の単位面積当たりの体積を測定する装置を示す。
図3は、室温と0℃の7-Up中に入れられた厚さが1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対する全下降回数を時間に対してプロットしたものである。
図4は、炭酸飲料中の1つの菓子の1分間当りの下降回数を菓子の厚さに対してプロットしたものである。
図5は、表面上の円柱状ピットで核形成を行う泡の断面図である。
図6Aは半径rの円盤に対する衝突領域を示す。図6Bは、縦軸同士が 互いに角度θをなす、寸法がa×bの矩形に対する衝突領域を示す。
図7は、好ましい範囲の菓子の厚さを決定するために用いる関数を菓子の 他の寸法の関数として表わしたグラフである。
本発明を実践する最良の形態および産業上の応用 本発明の好ましい実施例により以下の特性を有する菓子を実現させることができる。すなわち、 (i)単位時間当り上昇・下降のサイクル数が多い;
(ii)十分大きな断面を持つためその形状は容易に識別可能である;
(iii)飲み込んだときにも、窒息を起こさないよう、または喉に傷を与 えないように軟らかである;
(iv)飲料を混濁させない材料でできている;
ような菓子である。
さらに、そのような菓子を含む以下の特性を有する集合を実現させることができる。すなわち、 (v)十分多数の菓子を含んだ集合で、任意の時刻において一般に少な くも1つの菓子が動いている、しかし、集合に含まれた菓子の数と断面 積はお互いに他の運動を妨げるほど大きくはない。
飲料の上表面と底面に於ける菓子の静止時間を短くする一般的な物理的性質を以下に示す。すなわち、 (i)比重は水の比重より幾分大きい;
(ii)体積に対する表面積の比が大きい;
(iii)泡の核形成および大きな泡の保持を容易にすることにより単位 表面積当りに存在する泡の体積が大きくなるような表面きめを有する;
(iv)菓子同士で他の菓子の泳動を妨げる傾向を小さくするよう菓子の 数と大きさを適当に選択する;
(v)飲料中で菓子が融けていくに伴い菓子の運動が時間と共に劣化し ない、 等である。
炭酸飲料の上表面と底面に於ける菓子の静止時間を短くする物理的性質の数学的関係に付いて以下に詳しく述べる(本明細書は「炭酸飲料」および「菓子」に付いて説明するが、これらは包括的用語として用いられているのであって、本発明は、気体で過飽和状態になった液体および液体中に水没する製品の、すべての液体および製品に関するものである)。
本発明にかかる菓子および炭酸飲料中の菓子の水泳の基礎となる物理学の原理に関して詳しく説明する。以下で、本発明は、好ましい実施例および物理学の原理と関連させて説明されるが、この説明は、本発明をそれらの実施例に限定したり、それらの物理学の原理の説明の正確さや物理学の原理の解析で用いる近似の正確さに依存するものではない。むしろ、逆に本発明は、添付の特許請求項で規定される本発明の精神と範囲内に含まれる代替,変更,および同一物を含むものである。
概観 図1Aに模式的に示すように、本発明によれば、炭酸飲料(16)の入ったコップまたはガラスコップ(14)内に菓子(10)を置くと、菓子の比重が炭酸飲料(16)より大きいと、菓子(10)は炭酸飲料(16)の底(13)に向けて沈降していく。図1Bに示すように、下降していくとき炭酸の泡(18)が菓子(10)上に形成される(コップ(14)の壁にも炭酸の泡が形成されるが、分かりやすくするためそれらの泡は図1A-1Gでは示されていない)。菓子/泡の結合体(10、18)が炭酸飲料(16)の底に到達しても泡(18)は菓子(10)の上で形成し続け、図1Cに示すように大きく成長し、最後には、菓子/泡の結合体(10、18)の全体の密度が炭酸飲料(16)の密度より小さくなり、菓子/泡の結合体(10、18)は図1Dに示すように炭酸飲料(16)中を浮上していく。菓子/泡の結合体(10、18)が炭酸飲料(16)の上部(12)に達すると、菓子(10)の上部表面(20)に付いていた泡は、図1Eに示すように、大気(17)中に離脱する。
菓子(10)が非常に平らでなければ、この時点で、菓子(10)は回転し、前に下になっていた表面(22)もまた炭酸飲料(16)の上部(12)と接触することになる。この表面(22)に付着した泡もまた図1Fに示すように大気(17)中に離脱し、菓子(10)は再び下降を始める。
しかし、菓子(10)が十分に平らであれば、炭酸飲料(16)の上部(12)から下降を開始するまで菓子は回転しない。下降を開始した時点で菓子(10)は回転し、図1Gに示すように、前に底になっていた表面(22)が上部表面になる。菓子/泡の結合体(10、18)は炭酸飲料(16)の底(13)に向けて下降し、菓子(10)の泡(18)が再び十分大きく成長すまで底に留まり、その後菓子/泡の結合体(10、18)は炭酸飲料(16)中を浮上する。
もちろん、菓子(10)の泡(18)は単に連続的にサイズが大きくなるのではない。表面上の2つの隣接した泡が成長し十分な力でお互いに接触するようになれば、それらは、元の2つの泡の体積の和に等しい体積を持つ1つの泡に合体する。一般に新しい泡は、元の2つの泡の内大きい方の泡の位置の近辺に形成される。さらに、垂直ベクトルが絶対的垂直線と角度Ωをなす表面に付着した泡が、最大半径R(Ω)より大きな半径を持つようになるまで成長すると、あるいは2つの泡が合体して最大半径R(Ω)より大きな半径を持つようになると、周りの流体から受ける浮力は泡の表面への付着力より大きくなり、泡はその表面から分離し飲料中を浮上する。最大半径R(Ω)は表面のきめ、ならびに菓子と炭酸ガスとの間、菓子と飲料との間、および飲料と炭酸ガスとの間の表面張力に依存する。表面の垂直ベクトルが垂直線から傾いていくとRの値は通常Ω=90°まで減少し、それを越えるとR(Ω)は増加する。
Ωの関数である最大泡半径R(Ω)は、好ましくは光学機器及び写真機器を用いて視覚的に決定可能である。あるいは、最大泡半径R(Ω)は飲料中を泡が上昇する速度を測定することにより決定可能である。泡の大きさに対する上昇速度の実験曲線が「水中の小さな空気泡の浮上に付いて(On the rise of small airbubbles in water)」と題するピー・ジー・サフマン(P.G.Saffinan)の論文(Journal of Fluid Mechanics、Volume 1、page249、1956)に記載されている。通常、R≡R(0)=1.3±0.2mmである。
泡全体による時刻tにおける全浮力は単位面積当たりの泡の体積、すなわち泡のカバレッジh(t)に依存する。泡のカバレッジh(t)は、 h(t)=∫0R(4/3)πr3f(r,t)dr (1.1)で表わされ、ここでf(r,t)drは単位面積における泡の大きさ分布である。高密度の泡に対するhとRのおおまかな関係を得るには、泡がすべて半径Rを持ち六方細密構造に配列されていれば、単位体積当りの体積は(2√3πR/9)≒1.2Rに等しいことに注意する必要がある。
特定の炭酸飲料中の特定の菓子の上面に対する浮力の時間変化は図2Aに示すシステムを用いて直接測定可能である。図2Aに示すように菓子(210)は、クレーン構造(230)から吊り下げられた第1のプラットフオーム(220)に取り付けられており、第1のプラットフォーム(220)と菓子(210)はコップまたはガラスコップ(207)に入れられた炭酸飲料(205)中に沈められている。クレーン構造(230)は、軽量にするため、バルサ材のような軽量材料で作られている。それはクロスアーム(232)を備え、該クロスアーム(232)には第1のプラットフォーム(220)とほぼ等しい質量を持つ第2のプラットフォーム(222)が、第1(220)および第2のプラットフォーム(222)が垂直支柱(233)からほぼ等距離になるように取り付けられている。したがって、クレーン(230)のベース(234)は、クレーン(230)を真っ直ぐに保つよう大きな重量を持つ必要はない。
クレーン(230)は、少なくも0.01グラムの精度で重量測定が可能なはかり(250)上に配置される。このはかりはAcculab V-Series J39,719のようなもので、エドモンド・サイエンティフィック社(Edmund Scientific Company、Barrington、New Jersey)から得ることができる。プラットフォーム(220)の底面(227)に泡が形成されるのを防ぐため、底面(227)はすべて水平面から少なくも45°の角度を持つようにし、非溶解性潤滑剤でコ
アンド・コルマン社(Reckitt and Colman,Inc.、Wayne、New Jersey)製)、またはピュア・シリコン・ルブリカント(Pure Silicon Lubricant)(エース・ハードウェア社(Ace Hardware Corporation、Oak Brook、Illinois)製)を用いることができる。好ましい実施例では、プラットフォームは研磨されたアルミニウムを用い円錐状の形状に作られる。プラットフォーム(220)の上面(228)は少なくも1cm2、好ましくは少なくも2cm2の表面積を持つ。プラットフォーム(220)は、上面(228)と底面(227)の間の境界(229)近くに等間隔に設けた4つのボアー(243)を通った1本の糸(240)によりクロス・アーム(232)
から吊り下げられている。ボアー(243)の上端は正方形のかどにあり、菓子(210)は糸(240)とプラットフォーム(220)の上面の間に入れられ、プラットフォーム(220)に固定される。プラットフォーム(220)の上面全体が菓子(210)で覆われているのが好ましい。プラットフォーム(220)の上面(228)で露出している部分は非溶解性潤滑剤でコートし、誤った浮力の発生を抑えなくてはならない。
特定の炭酸飲料中の特定の菓子の底面に対する浮力の時間変化も直接測定可能である。図2Bに示すように、この場合飲料中に沈められたプラットフォーム(220)およびそれに取り付けられた菓子(210)は図2Aの配置とは逆になっており、菓子(210)の露出した面は下向きになっている。
また、ある特定の配向を持つ表面にかかる浮力は、その表面上の泡の集合を写真に取り、各サイズ毎に泡の数を数え分布関数f(r,t)drに近似したヒストグラムを作り、式(1.1)を用いて泡のカバリッジを計算することにより得ることができる。菓子の表面上の泡の集合は、飲料中を浮上している泡や飲料の表面に静止している泡のため、部分的に視界が遮られている可能性があるので、各時間毎に異なった角度から複数の写真撮影を行い完全な状況を把握しなければならない。
小さな被写界深度に設定し菓子の表面に焦点を合わせたカメラを用いると菓子の表面に付着していない泡を簡単に見分けることができるため、異なった写真を組み合わせるのが容易になる。1枚目の写真で、表面にある泡(焦点の合った泡)
に番号を付け、それらのサイズを表にする。菓子の表面にある泡でもその表面から浮上する泡(したがってボケている)により部分的に不明瞭なものがある。できるならこれらの部分的に不明瞭な泡に対しても番号を付けサイズを測定するのがよい。異なった角度から取った2枚目の写真を次に調べ、表面上にあり1枚目の写真にも出ている泡に対しては1枚目の写真で用いたのと同じ番号を付ける。
1枚目の写真で部分的に不明瞭だが2枚目の写真ではより明瞭に写っている泡に対しては、2枚目の写真で測定したサイズを表に記入する。次に、1枚目の写真には写っていなく2枚目の写真に写っている泡のサイズを表にする。最後に、不明瞭でない面積の割合を計算し、式(1.1)に従って泡カバレッジh(t)を計算するときは、f(r,t)をこの割合の逆数でスケールする。
上昇するための物理的条件 沈んでいる菓子とそれに付着した泡の重量が、それらが押しのけた飲料の重量より小さくなるとき、菓子は浮上する。したがって菓子は次の不等式が成立するとき浮上する。
B V+Bg A h(t)<Bl[V+A h(t)] (2.1)
ここで、V、A、Bはそれぞれ菓子の体積,表面積,比重であり、BlおよびBgはそれぞれ炭酸飲料および炭酸泡の比重で、h(t)は、菓子の表面が大気に露出した後の、表面上の泡の集合に対する単位面積当たりの体積の時間変化を表わす。関数h(t)は「泡カバレッジ」と呼ばれる(最大泡半径Rより小さな長さのスケールの表面きめは、表面積Aに寄与するというより泡カバレッジh(t)に影響すると考えられる。詳しくは「表面のきめ」の項を参照のこと)。
BlおよびBはBgに比べて非常に大きいので、式(2.1)の右辺の第2項は無視してよい。Bl≒1という近似をすると、菓子は次の不等式が成立するとき上昇する。
(B-1)V/A h(∞)<h(t)/h(∞) (2.2)
ここでh(∞)はt→∞のときの極限値、すなわち、h(t)の定常値である。通常、1つの独立した泡(すなわち、合体する泡が近くに存在しない泡)の半径が最大半径Rにまで成長する時間の数倍を経過すればh(t)は大体h(∞)に等しくなる(この限界では時刻tは飲料が炭酸飽和を喪失する時間に比べてまだ十分短いことに注意)。泡カバレッジh(t)は時間に対し単調に増加する関数であるため、次式が成立すれば、 (B-1)V/A h(∞)<1 (2.3)
菓子の表面の泡は十分大きく成長し、菓子を浮上させることが可能になる。
したがって、菓子が上昇する能力の尺度は次元のない次式の全体有効比ETで与えられる。
(B-1)V/A h(∞) (2.4)
全体有効比ETが小さな値を持つ菓子は、h(∞)に比べて小さなh(t)の値で表面に浮上する。すなわち、このような菓子は少し沈むだけですぐに浮き上がってくる。
他の有効尺度は次の式で与えられる次元のない幾何学的有効比EGである。
V/A h(∞)) (2.5)
幾何学的有効比EGの値が小さいほど、比重Bは1から大きくずれることができ、しかも全体有効比ETを小さくすることができる。好ましい実施例では幾何学的有効比EGは1/2より小さい。その値は、1/3より小さいのがより好ましく、1/5より小さいのがさらに好ましく、1/8より小さいのがもっと好ましく、1/13より小さいのがさらに好ましい。
巾がW1およびW2で厚さがTの菓子は、その全表面積が側面の表面積に比べて著しく大きいとき「薄い」と見なされる。数学的には、次式が成立するとき菓子は薄いと見なされる。
T<H(W1×W2)/(W1+W2) (2.6)
ここでHは1より小さな正数である。好ましい実施例では菓子は薄く、Hは1/2より小さいのが好ましい。Hの値は、1/3より小さいのがより好ましく、1/5より小さいのがさらに好ましく、1/8より小さいのがもっと好ましく、1/13より小さいのがさらに好ましい。
約W1×W2に等しい面積が見えるように薄い菓子を見る見方は平面景と見なされ、この面積領域を「平面景」領域と名付ける。薄い菓子では、体積は厚さに表面積の半分を乗じたものにほぼ等しい(すなわち、V≒T(A/2))、したがって ET≒T/2h(∞)及びEG≒(B-1)T/2h(∞) (2.7)
そして上昇条件は、 (B-1)T/2h(∞)<1. (2.8)
したがって、特定の比重Bおよび定常泡カバレッジh(∞)に対して上昇が起きる最大厚さTmaxは次のように与えられる。
Tmax=2h(∞)/(B-1) (2.9)
薄い菓子の利点は、全体有効比ETおよび幾何学的有効比EGが菓子の1つの寸法、すなわち厚さTのみの関数になることである。このことにより2つの有効比が簡単に制御でき、菓子の厚さT以外の寸法を任意に大きくでき、菓子の断面を任意の形状にすることができる。
実際の製造環境では、菓子の厚さT,比重B,定常泡カバレッジh(∞)はそれぞれ有限の精度ΔT,ΔB,およびΔh(∞)を持つ。菓子の大部分が上昇することを保証するには、上昇条件(2.8)は以下のようになる。
(B-1)T/2h(∞)× {1+[[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]2+[ΔB/(B-1)]2]1/2} <1(2.10)
ここでT,B,およびh(∞)はそれぞれ厚さ,比重,および定常泡カバレッジのターゲット値または平均値であり、精度,ΔT,ΔB,およびΔh(∞)の統計的独立性が仮定されている。次式 [[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]2+[ΔB/(B-1)]2]1/2 (2.11)
は全体的相対精度ΔΠと呼ばれる。
上の計算では、上向き表面の定常泡カバレッジhtop(∞)と下向き表面のhbot(∞)の値の違いを考慮すべきであるが、一次の近似としてこの差を無視し、上の式でhtop(∞)の値をh(∞)の値として用いる。hbot(∞)の値はhtop(∞)よりも大きいが、hbotがhtopより十分に大きければ、菓子が飲料中を浮上し始めるとき、底面の泡による浮力が上面の浮力より大きいため菓子は回転し、前に底面であった面は上面になる。次に、新しく上面になった面に付着していた泡は菓子から分離し、この面が寄与する浮力はhtop(∞)に等しいかより小さくなる。
下降するための物理的条件 菓子の比重Bが1(炭酸飲料の近似的比重)より大きい場合、飲料中に入れられると最初沈降する。菓子の比重および寸法が前節で述べた境界内にある場合、菓子は次に飲料の表面にまで浮上し、飲料の表面に接触した泡は大気中に離脱していく。
菓子の上面に付着した泡が飲料と大気の境界に接触し大気中に離脱するとき、菓子の形状に依存して、菓子は回転する場合もあるが、回転しない場合もある。
上面の泡が大気中に離脱するとき菓子が回転し、したがって底面に付着した泡もまた離脱することができれば、それは「まるい」と見なされる。したがって、まるい菓子は下の条件が成立すれば下降する。
B>1 (3.1)
丸くない菓子は「平ら」と見なされる。一般に、厚さTが下の条件を満足すれば、菓子は平らである。
T<W1[1-(1-F)G(W2-W1/W1)] (3.2)
ここでW1<W2でFおよびGは1より小さい。本発明の菓子は平らで、0≦F≦1/2および1/2≦G≦1であることが好ましい。0≦F≦1/3または2/3≦G≦1であればさらに好ましい。0≦F≦1/3および2/3≦G≦1であればより好ましく、0≦F≦1/4または3/4≦G≦1はさらに好ましい。0≦F≦1/4および3/4≦G≦1はそれ以上に好ましい。図7にGおよび(W2/W1)を変化させたときの式(2.6)の角括弧内の因子のグラフを示す。W2/W1=1のとき、Gの値に関係なくその因子はFに等しくなり、W2/W1が大きくなると、それは1に近づいていく。
炭酸飲料の表面で菓子の上面から炭酸泡が大気中に離脱するとき回転しない菓子は必ずしも薄いとは限らない(式(2.6)の定義による)。例えば、直方体のW1×W2の表面に付着した泡が大気中に離脱するときこの直方体は回転しない場合があるが、厚さTが、好ましい値Hに対する式(2.6)を満足しない場合もある。あるいは、Lブラケット状の形状をした菓子は、泡が大気と接触した表面(例えば「L」の外部垂直部)から逃げても回転しない場合がある。しかしこの菓子が非平面性を持つため薄いとはいえない。しかし逆に、薄い菓子は一般に平らでもある。
平らな菓子に対して下降の機構は2つある。平らな菓子が十分に重い場合、菓子の上部から泡が離れていくと菓子は下降するが底面で動かなくなる。この場合、下降条件は、 T>hbot(tc)/(B-1) (3.3)
または (B-1)T/hbot(tc)>1 (3.4)
となる。ここで、tcは1サイクルの時間、すなわち、菓子が下降し上昇するのに要する時間である。菓子が下降するとき下を向いている面はサイクル時間のほとんどの間下向きであったため、下向きの面に対する泡カバレッジの値hbotが用いられた。その理由は、菓子が飲料/大気の境界面から最初に下降を始めるとき、下向きの面に付着した泡の集合による浮力のため菓子は回転し、この泡の集合は上向きの面になるからである。
菓子が平らで、条件(3.3)が満足されない(条件(3.1)は満足する)場合、菓子の底面に付着した泡がなくなるまで菓子は沈降しない。この場合、菓子の底面の泡が合体し幾分平らな大きな泡が形成されるまで菓子は飲料の表面に長く留まることになる。これらの泡が十分に大きくなり菓子の底面から離れると、菓子は下降する。この菓子の下降機構には条件(3.3)に関して述べた機構より長い時間を必要とするため、1つの菓子に対し1分当りの下降回数は、条件(3.3)
が満足されるとき大きくなる。
実験結果:厚みと活動度の関係 「活動度」、すなわち、特定の菓子1個に対する1分当りの下降回数は、菓子の寸法、表面のきめおよび材料成分、並びに炭酸飽和度および飲料の流体力学的特性に依存する。(活動度はサイクル時間tcの逆数であることに注意。)薄い菓子の活動度は、計算またはコンピュータ・シミュレーションにより評価するか、このセクションで述べるように実験的に測定される。
非溶解物を用いて図3および4のグラフに対するデータが得られた。小さい溶解度または中間の溶解度を持つものでも同じ全体有効比ETおよび幾何学的有効比EGをもつものであれば同様な振る舞いを示す。菓子の溶解度は広い範囲で変わる。例えば、チョコレートのようなオイル系の菓子は非常に小さな溶解度を持ち、トロリ・ガミー・ベア(Trolli Gummi Bears;GPA Incorporated(St.Louis、Missouri)により販売されている)のようなゼラチン系の菓子は中間の溶解度を持ち、砂糖またはコーン・シロップが主成分の菓子は高い溶解度を持つ。
非溶解物を用いてデータを収集する利点は、同一のものを複数の実験に使用可能であること、および、寸法や表面の特性の時間変化が菓子の動力学的性質に影響を与えないことである。特に、実験で用いたものは、ステットラー社(Staedtler Company(Nuremberg、Germany))製造の白色のマース・プラスチック(Mars Plastic)消しゴム、製品番号52650である。消しゴムの断面積は2.2cmx1.1cmで、比重は約1.54であった。名称の一貫性を保つため、本明細書の当節では使用される消しゴムを「菓子」と呼ぶことがある。
データ収集を行うには、室温に保った1つの新しいカンまたはビンのソーダを開け、7.5cmから8.0cmの間の径のコップに注いで始められた。水溶性の菓子と違って消しゴム材料は水に「濡れ」ないため、キッチン用洗剤(例えば、Procter and Gamble(Cincinnati、Ohio州)で製造のドーン(Dawn))を少量飲料の表面に添加し、表面張力が動力学に影響を与えないようにした。キッチン用洗剤は、作業者の指の先に少量を付け、その指と親指を飲料中でこすり、飲料の表面全体が一時的に薄い泡で覆われるようにして添加された。飲料を開けて30秒以内、キッチン用洗剤を添加して直ちに、8個の菓子が飲料中に入れられ、その後5分間下降の回数が数えられた。飲料の表面にある菓子が飲料中を底に向けて半分以下に下降したとき1回の下降と勘定した。
図3は、種々の厚さを持つ8個の菓子の全下降回数を時間(分)に対してプ
(Seven-Up Company(Dallas、Texas)製の355ccカン)である。特に、曲線210、220、230および240は、室温の7-UP中に入れられた厚さ1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対するもので、曲線215,225,235および245は、0℃の7-UP中に入れられた厚さ1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対するものである。菓子の厚さの誤差は±0.08mmである。曲線210,215,220,225,230,235,240および245はほぼ直線であるが、これは少なくも最初の5分間はほぼ一定の活動をすることを示している。(温度および厚さに対する依存性は以下で述べる。)
図4は、室温の7-Up中に入れられた8個の菓子の活動度をその厚さに対してプロットしたものである。ここでも菓子の厚さの誤差は±0.08mmである。図4から分かるように、活動度は、厚さが約4mmになるまで厚さに対して単調に増加している。明らかに、約2.0mmと2.25mmの間に第1の活動平坦部があり、2.5mmと3.0mmの間に第2の活動平坦部があり、3.5mmと4.25mmの間に第3の活動平坦部がある。厚さがTmax=4.5mmに等しいか、それ以上の場合には菓子は重過ぎて上昇しない。
B=1.54and Tmax=4.5mmとして式(2.9)のh(∞)を解くと約1.2mmを得る。運動1サイクルの時間tcが十分長くhbot(tc)がおおまかにh(∞)に等しいときは、式(3.2)の条件はT>2.25mmに対して満足する。
第1の活動平坦部に対応する厚さおよびそれ以下の厚さに対しては、菓子が下降するためにはその両面から泡が離れなくてはならないことが観察により確認された。図3の曲線210と215および曲線220と225を比較して分かるように、1.0mmおよび2.0mmの菓子に対しては、室温の飲料の方が活動が大きい。これは、室温での泡の成長速度が速いためで、これにより菓子の底面の泡は速く成長して大きくなり底面から離れ、下降を早くするからである。
第2または第3の活動平坦部に対応する厚さに対しては、菓子が下降するためには菓子上面の泡だけが逃げるだけでよい。さらに、第3の活動平坦部に対応するものより大きな厚さに対しては、菓子が下降するためには菓子上面の泡の一部のみが逃げるだけでよい。図3の曲線240および245を比較すると分かるように、第3の活動平坦部に対応する大きな厚さに対しては、低温で泡の成長速度が遅い場合に大きな活動度が得られる。これは、菓子に付着した泡が十分早く成長し菓子に浮力を与えるなら、菓子は1つまたは数個の泡を離して短い距離しか下降しないからである。厚さが3.0mmの菓子の活動は、曲線230および235を比較して分かるように、飲料の温度に対して比較的不変で、この厚さが、上で述べた2種類の振る舞いのちようど中間領域に対応することを示している。
炭酸飲料中で上昇するためには菓子の厚さはTmaxより小さくなくてはならない。図4で見られるように、大きな活動が得られるよう、第1、第2、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの45%から100%の厚さの菓子が好ましい。さらに、第2、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの55%から100%の厚さの菓子が、より大きな活動が得られるので、さらに好ましい。さらに、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの70%から100%の厚さの菓子が、より一層大きな活動が得られるので、さらに好ましい。Tmaxの75%から95%の厚さは、第3の平坦部のピークに近いので、それ以上に好ましい。Tmaxの80%から90%の厚さは、第3の平坦部のピークにより近いので、なおさら好ましい。最も好ましい厚さはTmaxの約85%である。この厚さは第3の平坦部の中央に対応し、したがって活動は菓子の厚さ、密度、表面のきめの小さな変動に対して比較的敏感でないからである。さらに、主にTmaxに近い厚さの範囲(Tmaxの75%〜95%の範囲、Tmaxの80%〜90%の範囲、またはTmaxの約85%を中心にした比較的狭い範囲)では、冷やした、すなわち室温以下に温度を下げた炭酸飲料を用いるのが好ましい。その理由は、図3に関連して上で述べたように、ある厚さにおいて活動がより活発になるからである。
式(2.10)を用いると全体的相対標準偏差ΔΠが約18%より小さいときには、目標の厚さTを最も好ましい厚さ0.85*Tmaxに設定可能で、菓子が式(2.9)を満足せず、したがって上昇できないという可能性を少なくさせることが可能である。しかし、全体的相対標準偏差ΔΠが約18%より大きいときには、目標の厚さTはTmax/(1+ΔΠ)に設定し、菓子の厚さが好ましい厚さの範囲内にあり上昇不可能にならないようにすべきである。
表面のきめ 液体を炭酸飽和させるには、炭酸ガスの大きな分圧Pを持つ高圧大気に液体をさらせばよい。液体中の炭酸ガスの分圧Pはヘンリーの法則を用いて決定できる。ヘンリーの法則とは、ある温度での分圧Pは溶解した炭酸ガスの量Xに比例するというもので、定数Kを用いて次のようになる。
P=K X (4.1)
温度0℃および25℃の水に対する比例定数はそれぞれ2.98x10-4atm*liter/mgおよび6.69x10-4atm*hter/mgである(「泡の化学」("Surface Chemistry of Froth Flotation"、Jan Leja著、Plenum Press、New York、1982を参照)。氷点と室温において比例定数が約2の因子異なっているのは、室温では約2倍泡の成長が速いことを示唆している。
炭酸飽和した炭酸飲料中に溶解した炭酸ガスの量は、ビンまたはカンから出した直後の飲料の重量と炭酸ガスが出てしまった後の飲料の重量の差を測定することにより評価できる。食塩を飲料に加えることにより炭酸ガスの放出を早めこの重量差の測定を早めることができる。食塩は水中で高い溶解度を持ち、30/1000の重量モル濃度の食塩で炭酸ガスの溶解度を約10%減少させることができる。したがって十分な食塩を添加すると溶解した炭酸ガスのほとんどすべてを放出することができるのである。
以下の表Iに、市販の炭酸飲料のいくつかに溶解している炭酸ガスの量X(およびそれに対応する分圧P)の比較をする。ここでXは炭酸ガスを溶解していない飲料の質量に対する溶解した炭酸ガスの質量の比である。飲料を注ぐとき、コップを傾け飲料がコップの側面に沿って底まで流れるようにし攪拌を最小限にし、カンからコップへ飲料を移し替えるときの炭酸ガスの損失が最小になるように注意した。注ぐときに注意を怠ると通常20-40%の炭酸ガスが減少することが測定された。表Iの値Xは室温で以下の要領で測定された。すなわち、約40グラムの食塩を計量する;開けた直後の炭酸飲料の約80ミリリットルを静かにコップに注ぐ;
コップに入れられた飲料を計量する;食塩を飲料に添加する;飲料の重量(すなわち、飲料/食塩の重量から食塩の重量を差し引いたもの)を決定する。(40グラムの食塩が80ミリリットルの飲料に添加されるとき、一部の食塩が溶解されずに残るが、これは、食塩の水に対する飽和溶解値が室温で100ミリリットルに対して35グラムであるからである。)食塩はゆっくりと添加し、できたあぶく(フォーム)がコップの上部近くまで上らないよう、したがって、フォームの中の泡がはじけて飲料の損失がないように注意した。
炭酸飲料が大気にさらされると、地球大気の炭酸ガスの海面での分圧は飲料内の分圧Pよりも著しく低いため、炭酸ガス分子が溶解液から出てきて飲料/大気の境界から直接逃げていく。さらに、海面での大気全体の圧力は密封したビン(またはカン)の圧力より低いため、ビンを開けると炭酸ガス分子は溶解液から出てきて飲料中に泡を形成する。泡の核形成は、溶解した炭酸ガス密度の不規則な揺らぎにより多数の分子が集まるため、表面または飲料バルク内で行われる。従って、大きな泡より小さい泡の核形成が生じやすい。
小さな体積vを持つ泡は、泡が表面のピットや溝で形成されると泡内部の圧力が非常に低いので、バルク内より表面で核形成が行われる傾向がある。半径rの炭酸の泡が飲料のバルク内で形成されるとき、境界の表面張力σが泡の内部のガスに付加的な圧力(2σ/r)を及ぼす。したがって、核形成の最小半径rnuc-bulkは、 rnuc-bulk=2σ/P (4.2)
となる。その理由は、もし泡の半径がrnuc-bulkより小さい場合には、泡の内部の圧力は液体内の炭酸ガスの分圧より大きくなるため、泡内部の炭酸ガスが溶解液中に溶解するからである。しかし、泡の半径がrnnuc-bulkより大きい場合には、炭酸ガスが液体から拡散してきて泡は連続して大きくなる。したがって、球状の泡に対しては、最小の核の体積vnuc-bulkは次のようになる。
vnuc-bulk=(32/3)π(σ/P)3≒33.5(σ/P)3 (4.3)
泡が、図5に断面で示されている半径rの円柱ピット(415)のようなピットまたは溝の中で核形成を行う場合には、泡の境界面(425)の曲率半径r'はr/cosθで、泡(410)のピット(415)の底(432)から頂上までの距離は次のようになる。
d=r'-rtanθ=r secθ(1-sinθ) (4.4)
ここでθはピット(415)の側壁(430)と泡の表面(425)とがなす接触角度である。それ故、飲料/泡の境界は泡内の炭酸ガスに2σcosθ/rの圧力を加えピット(415)の半径が核形成の最小半径rnuc-surfより大きい場合、泡がピット(415)内に形成される。ここで、 rnuc-surf=2σcosθ/P (4.5)
大きな泡のカバレッジhを得るため、好ましい実施例の菓子は、泡の核形成を促進するよう[2σcosθ/P]のオーダーの長さのスケールで粗くした表面を持つように製造される。接触角度θは、液体−固体,液体−気体,固体−気体の表面張力に依存し、特定の菓子に対するθは、好ましくは顕微鏡または拡大鏡を用い、観察により決定することができる。水と炭酸ガスの境界に対する表面張力σは約80dynes/cmで、炭酸飲料中の菓子のθは一般に45°である。Pが3気圧、すなわち、約3x106dynes/cm2であれば、rnuc-bulkは約40ミクロンである。
式(4.4)および(4.5)より、最小核形成体積は以下のようになる。
vnuc-surf=(1/3)π d2(3r'-d)
=(1/3)π(rnuc-surf)3sec3θ(1-sinθ)2(2+sinθ) =(813)π(σ/P)3(1-sinθ)2(2+sinθ)(4.6)
θは一般に約 45°であるから、vnuc-surfは約1.95(σ/P)3である。したがって、泡がバルクでなく表面で核形成を行うと、その体積をほとんど2桁も小さくすることが可能になる。
炭酸化が減少するにつれ、炭酸ガスの分圧Pが減少し、核形成の最小半径rnuc-surfが増大する。炭酸化の半減期、すなわち、カンを開けてから飲料中の炭酸ガスが半分にまで減少する時間は通常約半時間である。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも5分間核形成が促進されるのが好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]から[2σcosθ/P(5)]ほどの粗さを持つのが好ましい。ここでP(t)は炭酸飲料が注がれてからt分後の炭酸ガスの分圧である。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも10分間核形成が促進されるのがより好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]
から[2σcosθ/P(10)]ほどの粗さを持つのがより好ましい。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも15分間核形成が促進されるのがさらに好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]から[2σcosθ/P(15)]ほどの粗さを持つのがさらに好ましい。
泡が粗い表面で成長する場合は、泡の形状および泡と表面の間の接触部分が急に変化し、泡の境界と表面の間が接触する部分全体にわたって接触角度θの値を一定に保とうとするときがある。この突然の遷移を行うときに、泡にかかる流体力学的力および泡を表面に拘束している表面張力の力の変化により、泡は上向きの表面から離れることが多い。したがって、泡は(核が生成されれば)、成長する表面が滑らかであれば、任意の場所で泡の大きさの上限まで成長する可能性が高い、すなわち、泡の上限半径R*近辺の長さの尺度で表面がなめらかであれば、上限半径R*の近くの半径を持つ泡が多く存在することになる。好ましい実施例では、菓子はR*/3toR*の長さのスケールで滑らかであることが好ましく、R*/10toR*がより好ましく、R*/30toR*がさらに好ましい。(巾λの領域にわたって波長λを中心にしたフーリエ振幅の積分が波長λに比べて小さいとき、表面は長さのスケールλで滑らかであるという。)
表面上の泡の上限半径R*は泡の境界の表面張力σおよびその表面と泡の境界との間の接触角度θにより決まる。完全に滑らかな上向きの表面では、下が切り取られた球状の泡の浮力は、泡を表面に拘束する表面張力と丁度釣り合う。
したがって、 {ρgπR*3/3}[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]=2πR*σsin2θ (4.7)
泡の上限半径R*を求めると、 R*={6σsin2θ/ρg[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]}1/2 (4.8)
本発明のもう一つの実施例では、菓子の表面全面にきめを付け定常状態泡カバレッジh(∞)を最大にする代りに、表面の一部にきめを付けh(∞)を最大にする、したがって菓子が飲料の表面へ上昇するとき、きめを付けた部分が先に昇っていくようにする。例えば、菓子が鯨の形のように海に関係した形状をしていれば、鯨の前部にきめを付けh(∞)を増加させる(または後部にるh(∞)を減少させるようにきめを付ける)、したがって、鯨は飲料中を頭を先頭にして上昇する(しかし、このように選択的にきめを付けても、きめを付けた方が先に沈む保証はない)。
重ならないための条件 本発明の第1の好ましい実施例では、菓子は十分に大きく約20-30cm離れた距離から容易に識別可能で、また飲料中には十分な数の菓子があり、通常任意の時刻に少なくも1つの菓子は動いている。しかし、菓子が大きすぎたり、飲料中に多く入れすぎたりすると、菓子は互いの運動に干渉し合うことになる。例えば、飲料の上面に菓子が多くあれば、浮上してくる菓子は空気/飲料境界面に到達できず、菓子上の泡は大気中に離脱することができない。したがって、浮上してきた菓子もその直ぐ上にある菓子も下降することができなくなる。同様に、飲料の底面に多くの菓子が存在すれば、第1の菓子が下降してき、底面で留まっていた第2の菓子の上に留まる場合が生じる。その場合第1の菓子の重量により第2の菓子が浮上できなくなり、これら2つの菓子の接触部分で炭酸泡の形成が不可能になることもある。飲料の上面または底面でくっ付き合った菓子を「重なった」
菓子と呼ぶ。以下の条件を最適に満たすような妥協が可能である。すなわち、(i)菓子は十分大きくてその形状は容易に識別可能である、(ii)十分な数の菓子があり、1つ以上の菓子が動いている、(iii)菓子は十分小さく、その数は十分少なく重なりは起こらない、という条件である。
今、N個の菓子があり、これらの菓子は平均して、サイクル時間のp部分の時間は飲料の上面にあり、サイクル時間のq部分の時間は飲料の底面にあり、サイクル時間のs部分の時間は上面と底面の間の遷移状態にあるとすると、p+q+s=1である。そのとき、ある特定の数の菓子が上面、底面、または遷移状態にある確率は二項分布で与えられ、平均として、飲料の上面にはpNの数の菓子、飲料の下面にはqNの数の菓子、遷移状態にはsNの数の菓子が存在する。
飲料上面にある菓子の平均数に、菓子1つ当りの平均衝突面積Zを乗じ、補正因子μで除したものが飲料の上面の面積Ctopにほぼ等しいか、それより小さい場合には、上面での重なりは起こらない傾向にある。すなわち、 N≦μCtop/pZ (5.1)
同様に、飲料底面にある菓子の平均数に、菓子1つ当りの平均衝突面積Zを乗じ、補正因子μで除したものが飲料の上面の面積Cbotにほぼ等しいか、それより小さい場合には、底面での重なりは起こらない傾向にある。すなわち、 N≦μCbot/qZ (5.2)
好しい実施例では式(5.1)および(5.2)が満足されているので、飲料の上面と底面の両方で菓子が重なり合うのが避けられる。菓子の数Nは、pおよびqが小さいとき、すなわち、菓子がサイクル時間の内の多くの時間の間飲料の上面と底面の間で遷移状態にあるとき最大になる。したがって、好ましい実施例ではs>pまたはs>qである。s>pおよびs>qであればより好ましい。また、カップ、またはガラスコップで底面の面積Cbotが上面の面積Ctopに比べて非常に小さいものは避けなくてはならない。その理由は、pおよびqがほぼ等しいとき、条件(5.2)
を満足するのは、条件(5.1)に比べて非常に難しくなるからである。
無限に大きなコップ内の同一平面上にある2つの薄い菓子に対する衝突領域は以下のように定義される。すなわち、第1の菓子の中心が第2の菓子を取り囲む衝突領域内にあるとき、2つの菓子は接触しているという。図6Aに示すよう、半径rの薄い円形の菓子(あるいは、円形の断面積をもつ菓子)の衝突面積(410)は4πr2である。すなわち、1つの菓子の面積の4倍である。
円形でない菓子の場合には、衝突領域は菓子の角度配向による。図6Bに、同一平面上にある2つの薄い矩形の菓子(あるいは、2つの矩形の断面積をもつ菓子)に対する八角形の衝突領域(430)を示す。矩形の2辺の長さはaとbで、2つの矩形の縦軸は角度θをなすとする。角度の関数としての衝突面積Z(θ)は以下のようになる。
Z(θ)=(a+a cosθ+bsinθ)(b+b cosθ+a sinθ) -b2sinθcosθ-a2sinθcosθ =2ab+(a2+b2)sinθ+2ab cosθ (5.3)
また、衝突面積の角度平均は、 Z=2ab[1+(2+e+1/e)/π] (5.4)
ここで、e=b/aは菓子のアスペクト比である。不規則な形状を持つ菓子に対しては、aおよびbは菓子の特性長および特性巾である。
補正因子μは形状補正因子μgとトレランス因子μtとの積である。すなわち、 μ=μg*μt (5.5)
トレランス因子μtの値は許容可能な重なりの度合いに依存する。形状補正因子μgはいくつかの効果を補償する。その効果の中には、菓子の衝突領域は重なり合っている可能性があり、個々の衝突面積の和と全衝突面積(これは個々の衝突面積の和より小さい)に差がある効果、カップやガラスコップの形状や有限の大きさのために生じる効果がある。後者の効果を補正することを「有限サイズ補正」とよぶ。飲料の上面に対する形状補正因子μgは、菓子の数N、菓子が飲料の上面にある確率p、飲料の上面の面積Ctop、衝突面積Zの関数である。同様に、飲料の底面に対する形状補正因子μgは、菓子の数N、菓子が飲料の底面にある確率q、飲料の底面の面積Cbot、衝突面積Zの関数である。実験的に、1<μ<4が好ましく、1.5<μ<3がより好ましく、2.0<μ<2.5がさらに好ましく、μ≒2.25が最も好ましいことが判明している。
例えば、特性寸法a=2.2cmおよびb=1.1cmをもつ薄い菓子に対する衝突面積は11.8cm2である。大部分のカップやガラスコップは内径約3.5cmなので、Ctop=Cbot≒38.5cm2である。補正因子μの値を2.25とし、平均として、40%の菓子が飲料の上面にあり、30%の菓子が飲料の底面にあり、30%の菓子が飲料の上面と底面の間の遷移状態にあるとすると、重なりを避けるための菓子の最適な数は式(5.1)と(5.2)により18以下となる。
本発明を実行するための最適なモードの他の詳細および産業への応用性 本発明によると菓子と共に用いられる炭酸飲料は半透明、好ましくは透明で、少なくも5分、より好ましくは10分、さらに好ましくは15分間炭酸化が保たれているのが好ましい。菓子が飲料の上面に到達し、菓子の泡が大気中に離脱していけるようにするには、飲料に氷を入れてはならない。
菓子は、不注意で飲み込んだとき窒息や喉に傷害を生じるのを防ぐため軟らか且つ柔軟でなくてはならない。5分間、より好ましくは10分間、さらに好ましくは15分間、炭酸ガスの泡の核生成速度は時間と共に大きく減少してはならなく、菓子の表面への泡の付着力が時間と共に弱くなってはならない。本発明の好ましい実施例では、菓子は、人魚,スキューバダイバー,潜水艦,サメ,蛸,鯨のような海にある物体や生物に似せた形状をしている。菓子が薄い場合には、上述の海の物体はシルエットとして描かれる。上で述べた条件に従う薄い菓子は、薄くない菓子に比べ非常に大きな断面積をもつことが可能である。したがって、薄い菓子の形状は、薄くない菓子の形状に比べ、はるかに容易に識別が可能である。
楽しい外観をもたせるため、菓子には種々の明るい色を持たせる。菓子が溶けるとき、食欲を減退させる褐色の色が飲料に出ないよう、減色法色ホイール中で補色(例えば、赤と緑,または青とオレンジ色)になるものは避けるのがよい。
好ましい実施例では菓子は主に赤色、オレンジ色、黄色に着色され、それぞれの補色(緑,青,紫)が出てくる頻度を少なくしている。
菓子が溶けるとき飲料の炭酸化を急速に減少させるようなものは避けるべきである。5分間,より好ましくは10分間,さらに好ましくは15分間,炭酸ガスの泡の核生成速度は時間と共に大きく減少してはならなく、菓子の表面への泡の付着力が時間と共に弱くなってはならない。さらに、例えば、トッフィーとかマジパンのような、飲料中に入れると飲料を「濁らせる」ような菓子は、飲料が食欲を減退させるような外観になるため用いるべきではない。
したがって、溶解性の低い菓子が好ましい。その理由は、寸法および泡のカバレッジ関数h(t)は菓子が飲料中にある間相対的に不変であり、炭酸化や飲料の色に小さな影響しか与えないからである。ゼラチン系の菓子、すなわち、砂糖シロップをゼラチン溶液に入れ、その混合物を固化させ、トロリ・ガミ(Trolli Gummi:GPA社(St.Louis,Missouri)から販売)に類似の組成をもたせて作る菓子が、外観と弾性的性質の点から最も好ましい。
結論 したがって、ここで述べた改良は炭酸飲料中で泳ぐ菓子に対する本発明の目的と一致し、以下の特徴を持つ菓子を実現する。すなわち、 (i)単位時間当り上昇と下降の多くのサイクルを繰返す;
(ii)泡の核生成を容易にし且つ大きな泡を保持することにより単位表面 積当りの泡の体積を大きくするような表面きめを有する;
(iii)十分大きな断面積をもち、その形状が容易に識別可能である;
(iv)飲み込んだとき窒息や喉に傷害を生じないよう軟らかである;
(v)飲料を「濁らせ」ない材料で作られる。
さらに、そのような菓子の集合は、 (vi)十分大きな数の菓子をもち、任意の時刻に通常少なくも1つの菓子 が動いており、またその数は、飲料の上面および底面で菓子の重なりが起 きやすくなるほど多くはない。
特にゼラチン系の菓子のような溶解性の小さな菓子が好ましい。その理由として以下のことが挙げられる、 (vii)菓子が飲料中に浸けられている間寸法が比較的不変である;
(viii)菓子が飲料中に浸けられている間泡のカバレッジ関数h(t)は相対的 に不変である;
(ix)飲料の炭酸化に小さな影響しか与えない (x)飲料の色に小さな影響しか与えない (xi)透明な飲料中にあるとき魅力的な外観を呈する;
(xii)魅力的な弾性的性質を持つである。
上述した本発明の個々の実施例に対する説明は単に例として挙げられたものである。それらはすべてを網羅するものではなく、本発明を開示された形態に正確に限定するものでもない。また、上の教示に照らして多くの修正や変更が可能である。これらの実施例は、本発明の原理および実際の応用を最も分かりやすく説明するように選ばれたもので、当業者が、個々の応用に合うよう、本発明や種々の修正を行った種々の実施例の使用を可能にするためである。多くの変化が考えられる。例えば、液体は炭酸ガス以外のガスで過飽和にしてもよい;菓子は、速く溶解し過飽和溶液から炭酸ガスの泡の放出を起こさすことにより泡の核形成を促進するようにしてもよい;食用でない材料またはチューイングガムを菓子の代りに用いてもよい;(i)カルナルバろうのような比重が1に近い材料を用いるか、または(ii)レシピ中に泡立てた卵、酢および重ソウ、または同種のものを用い発泡体性構造を作り、菓子の比重が1に近くなるようにしてもよい;菓子の縦軸に垂直な軸に沿った断面は重心から前方よりも後方により多くの面積があるため、流体力学的力により菓子は「頭を先にして」泳ぐようにしてもよい;菓子の前部を後部より溶解しやすくなるように作り、前部での核形成を後部より容易にすることにより、菓子が「頭を先にして」上昇するようにしてもよい;菓子の密度が一様にならないように作り、飲料中で溶解し体積および表面積が小さくなっても菓子は上昇・下降する条件を満足するようにしてもよい;菓子は第2の菓子材料中で異なった溶解速度を持つ第1の菓子材料を吊るして作られるもので、溶解過程中は、菓子の表面きめは小さな長さのスケールで粗く泡の核形成を促進するようにしてもよい;泡のカバレッジを測るクレーンはクロス−アームを備える必要はない;泡のカバレッジを測るクレーンは木材で作る必要はない、等々である。
上述した本発明の動作および性能の基礎になる物理的原理もまた単に例として挙げられたものであり、すべてを網羅するものではなく、限定するものでもない。これらの説明には、基礎的な概念を数学的に取り扱いやすい形で示すため、多くの近似、簡易化、仮定がなされており、動作および性能に影響を与える多くの効果も説明を簡単にするため無視されている。例えば、ソーダのような炭酸飲料の比重は正確に1ではなく、炭酸ガスが飲料からなくなるにつれ変化する;薄い菓子の側面にできる炭酸ガスの泡の効果は無視されている;炭酸ガスの比重はゼロでない;菓子の表面に付着する炭酸ガスの泡は正確に球状ではない;菓子の厚さの関数としての活動度のプロットで、平坦部は存在しないかもしれないし、あるいは、平坦部の数は3より大きい、または小さいかもしれない;上昇条件、全体有効比、および幾何学的有効比は、表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジに依存しており、上向きの水平面に対するカバレッジの定常状態の値に依存するだけではない;下降条件は、表面の配向角度と時間の関数としての単位面積当たりの泡の体積に依存しており、1サイクルした後の下向きの水平面に対するその値に依存するだけではない;菓子の表面が飲料容器に接触している場合は、上昇条件は単位面積当たりの泡の体積に依存している;表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジは飲料の炭酸化の度合いに依存する;表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジは菓子が湿気に曝されていた時間(通常飲料の湿気)に依存する;飲料の上面および底面で重ならないようにして使用できる菓子の数もまた、菓子の断面積および飲料の上面および底面の菓子の数の標準偏差に依存する;等々である。
したがって、本発明の範囲は、例として挙げられた実施例や実施例に対する物理解析により決められるのではなく、以下のクレームおよびその法律的均等物によって決められるのである。
炭酸飲料中で「泳ぐ」菓子関連する出願について 本出願は、1996年11月26日に提出されたローレンス・ジェイ・シャー(Laurence Jay Shaw)による同一名称の米国(通常)特許出願08/756,725に基づく特許協カ条約(PCT)出願である。当米国特許出願は、1996年1月29日に提出された同一出願人/発明者による同一名称の特許仮出願0/010,736の一部継続出願であり、さらに当特許仮出願は1995年11月28日に提出された同一出願人/発明者による同一名称の特許仮出願60/007,655の一部継続出願である。
技術技術 本発明は、一般に玩具および娯楽に関係するもので、特に食用玩具および娯楽に関係し、さらに動力学的特性を有する食用玩具および娯楽に関係し、より具体的には炭酸飲料中で動力学的特性を有する食用玩具および娯楽に関係する。
発明の背景 可変浮力のよく知られた実例として、氷が入っていない炭酸飲料中の干しぶどう(「シンク・オア・スイム:水の化学(Sink Or Swim!:The Science of Water)」バーバラ・テイラー(Barbara Taylor)著、Random House Publishing,New York、1990、ページ22を参照)または小さな粘土ボール(「子供の化学(Physics For Every Kid)ジャニース・プラット・バンクリーブ(Janice Pratt VanCleave)著、John Wiley & Sons,Inc.、New York、1991、ページ64-65を参照)がある。(便宜上ここでは干しぶどうの運動について述べるが、粘土ボールも同様な運動をする。)干しぶどうは、比重が1より大きいため最初沈下する。沈んだ干しぶどうの表面に付着した炭酸ガスの泡の全体積が十分大きくなると、干しぶどうは飲料の表面に上がってくる。
飲料の表面でこれらの泡は飲料/大気の界面に達し、大気中に離脱し、したがって干しぶどう/泡の混成体の比重は飲料の比重より大きくなり、干しぶどうは再び沈降し、新しいサイクルを開始する。多くの干しぶどうが透明な飲料中で同時に上昇・下降を行うと、それらは泳いでいるかのごとく見える。本出願では以後、炭酸飲料中の物体が、その物体とそれに付着した泡の浮力が変化することにより繰返して上昇・下降を行うことを「泳ぐ」と呼ぶことにする。
しかし、干しぶどうの比重,大きさ,形,および表面のきめ等は制御が困難で、一般に大きくばらついている。干しぶどうの中には中身が非常に詰まっていて、すなわち表面積が非常に小さく、このため飲料の底に留まったままになるものもある。逆に、中身が十分に詰まってなく、すなわち表面に付着した泡の全体積に比べて表面積が大きすぎ、このため飲料の表面に浮かんだままになるものもある。さらに、干しぶどうとそれに付着した泡の浮力が変化することにより飲料水中で上昇・下降を行う干しぶどうでも、飲料の上表面および底面で停留時間を最短にするよう、干しぶどうの体積,表面積,比重等が最適化されているものではない。さらに、干しぶどうの表面のきめは、泡の核形成や大きな泡の保持に関して最適になってはいない。また、任意の時刻に最大数の干しぶどうが運動状態になるよう飲料中の干しぶどうの数が最適化されてはいない。それに加え、これらの干しぶどうは、小さな子供たちの想像力を刺激するような形状をしていない。
同様な原理で動作するものにプラスチックの玩具があるが、これは潜水艦に似た形状を持ち、ふくらし粉を保持する内室を備えている(一例としてダマート社(DaMert Company、San Leandro、California)製のアンダーシー・エクスプローラ(Undersea ExplorerTM)がある)。ふくらし粉を内室に充填するには、まず潜水艦を水中に入れ内室の底にあるスクリーンを濡らす。その後スクリーンに付いた水をある程度残すように潜水艦を振って大部分の水を内室から取り出し、上部ポートから内室にふくらし粉を充填し、最後に上部ポートをシールする。潜水艦を水に入れると、プラスチックとふくらし粉の比重が水の比重よりも大きいため潜水艦は沈降する。しかし、内室の底にあるスクリーンを通して水が内室に入ると、内室に入った水とふくらし粉の化学反応により気体が発生し、そのため潜水艦の浮力が変化し潜水艦は上昇する。
発生した気体の体積が十分に大きくなると、内室の底にあるスクリーン上に形成された泡は潜水艦から追い出され、潜水艦は再度沈降を始め、新たな運動サイクルが始まる。
この種の玩具の欠点の1つは、その動作はふくらし粉を内室に充填する方法に敏感に影響されるため必ずうまく行くとは限らないことである。ふくらし粉が密度濃く充填されている場合には、水がふくらし粉の内部に到達するには時間が掛かり、この玩具はたまにしか上昇しないことになる。ふくらし粉の充填量が少ない場合には、玩具はほんの数回上昇するだけか、または全く上昇しないことさえある。ふくらし粉を充填する際内室に水が多く残っている場合には、化学反応は急速に起こり玩具の運動は短時間続くだけである。逆に、ふくらし粉の充填時にスクリーンに十分な水が残っていない場合は、水はスクリーンを通過できないのでふくらし粉に到達できず、したがって玩具を上昇させるのに必要な化学反応が起こらない。玩具およびその内室を大きくするとふくらし粉の量およびふくらし粉の充填密度の制御は容易になる。また、玩具が射出成形のプラスチックで作られている場合、玩具を大きくするとスクリーンの製造も容易になる。
したがって、この種の玩具の短所は大きな水の容器が必要なことである。例えば、ダマート社で製造されている潜水艦の形をした玩具は約11.5cmの長さで4.0cmの高さであるため、飲料用コップよりも大きな水容器が必要なことは明らかである。この種の玩具の他の短所は、一般に、ふくらし粉を正しく充填するのが困難なため一つの玩具だけで遊ぶことである。したがって、玩具が水の入った容器の上面および底面で静止状態にあるときは、動くものが何も無く興味がそがれることになる。
したがって、本発明の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・沈降を繰返す、すなわち「泳ぐ」ような密度と形状を持つ製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飲料中、特に飲用コップやガラスコップに入った炭酸飲料中で泳ぐ食用製品、および、特に炭酸飲料の外見を損なわない食用製品を提供することである。
さらに、本発明の目的は、炭酸飽和液体中で浮上・沈降を繰返し、飲料の上表面と底面で短い静止時間を持つ食用製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で浮上・沈降を繰返し、一体に形成された独立した製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を行い、任意の寸法の断面積を持つ製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で、任意の時刻において大部分の製品が一般に運動状態にあるような製品の集合を提供することである。
本発明の他の目的は、他の製品の運動に影響を与えることなく炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す複数の製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、泡の核形成を促進する表面のきめを有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、大きな泡を保持可能な表面きめを有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、興味をもたせ楽しい外見を有する製品を提供することである。
本発明の他の目的は、試行錯誤の実験を行わずに得られる浮力の変化により炭酸飽和液体中で上昇・沈降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的は、長期間にわたって浮力の変化により炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的は、寸法、密度または表面のきめの小さな変化、あるいは液体中の炭酸ガスの量に比較的敏感でない循環時間を有する炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返す製品を提供することである。
本発明の他の目的および利点は以下に説明されており、その説明から明らかであろう、また本発明を実施することにより習得することもできるであろう。本発明の目的および利点は特許請求項で特に示す手段および組み合わせを用いて実現することができる。
本発明の開示 本発明は特定の比重および寸法をもつ菓子に関するもので、炭酸飲料中に入れると炭酸の泡がその菓子に付着し、そのため菓子が上昇・下降する、すなわち「泳ぐ」ような菓子に関するものである。本発明はまた、特定の比重および厚さをもつ薄い菓子に関するもので、炭酸飲料中に入れると炭酸の泡がその菓子に付着し、そのため泳ぐように見える菓子に関するものである。さらに、本発明は上述した菓子の集合に関するもので、集合内の菓子の数は十分小さく菓子はお互いの水泳運動を抑止せず、またその数は十分大きく通常少なくも1つの菓子が運動を行っている。本発明はまた、炭酸飲料中で上昇・下降し、泡の核形成を促進するため小さな長さのスケールで粗い表面きめをもつ菓子に関するものである。さらに本発明は炭酸飲料中で上昇・下降し、中間の長さのスケールで滑らかな表面きめをもつため、任意の場所で大きな泡を保持できる菓子に関するものである。
図面の簡単な説明 本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する図面は、本発明の実施例を図解し、上述した説明および以下で述べる好ましい実施例の詳細を説明すると共に本発明の原理を説明するものである。
図1A、1B、1C、1D、1E、1Fおよび1Gは炭酸飲料中の本発明の菓子の側面を時間の経過に従って示したものである。
図2Aおよび2Bはそれぞれ、菓子の上面および底面に付着した炭酸の泡の単位面積当たりの体積を測定する装置を示す。
図3は、室温と0℃の7-Up中に入れられた厚さが1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対する全下降回数を時間に対してプロットしたものである。
図4は、炭酸飲料中の1つの菓子の1分間当りの下降回数を菓子の厚さに対してプロットしたものである。
図5は、表面上の円柱状ピットで核形成を行う泡の断面図である。
図6Aは半径rの円盤に対する衝突領域を示す。図6Bは、縦軸同士が 互いに角度θをなす、寸法がa×bの矩形に対する衝突領域を示す。
図7は、好ましい範囲の菓子の厚さを決定するために用いる関数を菓子の 他の寸法の関数として表わしたグラフである。
本発明を実践する最良の形態および産業上の応用 本発明の好ましい実施例により以下の特性を有する菓子を実現させることができる。すなわち、 (i)単位時間当り上昇・下降のサイクル数が多い;
(ii)十分大きな断面を持つためその形状は容易に識別可能である;
(iii)飲み込んだときにも、窒息を起こさないよう、または喉に傷を与 えないように軟らかである;
(iv)飲料を混濁させない材料でできている;
ような菓子である。
さらに、そのような菓子を含む以下の特性を有する集合を実現させることができる。すなわち、 (v)十分多数の菓子を含んだ集合で、任意の時刻において一般に少な くも1つの菓子が動いている、しかし、集合に含まれた菓子の数と断面 積はお互いに他の運動を妨げるほど大きくはない。
飲料の上表面と底面に於ける菓子の静止時間を短くする一般的な物理的性質を以下に示す。すなわち、 (i)比重は水の比重より幾分大きい;
(ii)体積に対する表面積の比が大きい;
(iii)泡の核形成および大きな泡の保持を容易にすることにより単位 表面積当りに存在する泡の体積が大きくなるような表面きめを有する;
(iv)菓子同士で他の菓子の泳動を妨げる傾向を小さくするよう菓子の 数と大きさを適当に選択する;
(v)飲料中で菓子が融けていくに伴い菓子の運動が時間と共に劣化し ない、 等である。
炭酸飲料の上表面と底面に於ける菓子の静止時間を短くする物理的性質の数学的関係に付いて以下に詳しく述べる(本明細書は「炭酸飲料」および「菓子」に付いて説明するが、これらは包括的用語として用いられているのであって、本発明は、気体で過飽和状態になった液体および液体中に水没する製品の、すべての液体および製品に関するものである)。
本発明にかかる菓子および炭酸飲料中の菓子の水泳の基礎となる物理学の原理に関して詳しく説明する。以下で、本発明は、好ましい実施例および物理学の原理と関連させて説明されるが、この説明は、本発明をそれらの実施例に限定したり、それらの物理学の原理の説明の正確さや物理学の原理の解析で用いる近似の正確さに依存するものではない。むしろ、逆に本発明は、添付の特許請求項で規定される本発明の精神と範囲内に含まれる代替,変更,および同一物を含むものである。
概観 図1Aに模式的に示すように、本発明によれば、炭酸飲料(16)の入ったコップまたはガラスコップ(14)内に菓子(10)を置くと、菓子の比重が炭酸飲料(16)より大きいと、菓子(10)は炭酸飲料(16)の底(13)に向けて沈降していく。図1Bに示すように、下降していくとき炭酸の泡(18)が菓子(10)上に形成される(コップ(14)の壁にも炭酸の泡が形成されるが、分かりやすくするためそれらの泡は図1A-1Gでは示されていない)。菓子/泡の結合体(10、18)が炭酸飲料(16)の底に到達しても泡(18)は菓子(10)の上で形成し続け、図1Cに示すように大きく成長し、最後には、菓子/泡の結合体(10、18)の全体の密度が炭酸飲料(16)の密度より小さくなり、菓子/泡の結合体(10、18)は図1Dに示すように炭酸飲料(16)中を浮上していく。菓子/泡の結合体(10、18)が炭酸飲料(16)の上部(12)に達すると、菓子(10)の上部表面(20)に付いていた泡は、図1Eに示すように、大気(17)中に離脱する。
菓子(10)が非常に平らでなければ、この時点で、菓子(10)は回転し、前に下になっていた表面(22)もまた炭酸飲料(16)の上部(12)と接触することになる。この表面(22)に付着した泡もまた図1Fに示すように大気(17)中に離脱し、菓子(10)は再び下降を始める。
しかし、菓子(10)が十分に平らであれば、炭酸飲料(16)の上部(12)から下降を開始するまで菓子は回転しない。下降を開始した時点で菓子(10)は回転し、図1Gに示すように、前に底になっていた表面(22)が上部表面になる。菓子/泡の結合体(10、18)は炭酸飲料(16)の底(13)に向けて下降し、菓子(10)の泡(18)が再び十分大きく成長すまで底に留まり、その後菓子/泡の結合体(10、18)は炭酸飲料(16)中を浮上する。
もちろん、菓子(10)の泡(18)は単に連続的にサイズが大きくなるのではない。表面上の2つの隣接した泡が成長し十分な力でお互いに接触するようになれば、それらは、元の2つの泡の体積の和に等しい体積を持つ1つの泡に合体する。一般に新しい泡は、元の2つの泡の内大きい方の泡の位置の近辺に形成される。さらに、垂直ベクトルが絶対的垂直線と角度Ωをなす表面に付着した泡が、最大半径R(Ω)より大きな半径を持つようになるまで成長すると、あるいは2つの泡が合体して最大半径R(Ω)より大きな半径を持つようになると、周りの流体から受ける浮力は泡の表面への付着力より大きくなり、泡はその表面から分離し飲料中を浮上する。最大半径R(Ω)は表面のきめ、ならびに菓子と炭酸ガスとの間、菓子と飲料との間、および飲料と炭酸ガスとの間の表面張力に依存する。表面の垂直ベクトルが垂直線から傾いていくとRの値は通常Ω=90°まで減少し、それを越えるとR(Ω)は増加する。
Ωの関数である最大泡半径R(Ω)は、好ましくは光学機器及び写真機器を用いて視覚的に決定可能である。あるいは、最大泡半径R(Ω)は飲料中を泡が上昇する速度を測定することにより決定可能である。泡の大きさに対する上昇速度の実験曲線が「水中の小さな空気泡の浮上に付いて(On the rise of small airbubbles in water)」と題するピー・ジー・サフマン(P.G.Saffinan)の論文(Journal of Fluid Mechanics、Volume 1、page249、1956)に記載されている。通常、R≡R(0)=1.3±0.2mmである。
泡全体による時刻tにおける全浮力は単位面積当たりの泡の体積、すなわち泡のカバレッジh(t)に依存する。泡のカバレッジh(t)は、 h(t)=∫0R(4/3)πr3f(r,t)dr (1.1)で表わされ、ここでf(r,t)drは単位面積における泡の大きさ分布である。高密度の泡に対するhとRのおおまかな関係を得るには、泡がすべて半径Rを持ち六方細密構造に配列されていれば、単位体積当りの体積は(2√3πR/9)≒1.2Rに等しいことに注意する必要がある。
特定の炭酸飲料中の特定の菓子の上面に対する浮力の時間変化は図2Aに示すシステムを用いて直接測定可能である。図2Aに示すように菓子(210)は、クレーン構造(230)から吊り下げられた第1のプラットフオーム(220)に取り付けられており、第1のプラットフォーム(220)と菓子(210)はコップまたはガラスコップ(207)に入れられた炭酸飲料(205)中に沈められている。クレーン構造(230)は、軽量にするため、バルサ材のような軽量材料で作られている。それはクロスアーム(232)を備え、該クロスアーム(232)には第1のプラットフォーム(220)とほぼ等しい質量を持つ第2のプラットフォーム(222)が、第1(220)および第2のプラットフォーム(222)が垂直支柱(233)からほぼ等距離になるように取り付けられている。したがって、クレーン(230)のベース(234)は、クレーン(230)を真っ直ぐに保つよう大きな重量を持つ必要はない。
クレーン(230)は、少なくも0.01グラムの精度で重量測定が可能なはかり(250)上に配置される。このはかりはAcculab V-Series J39,719のようなもので、エドモンド・サイエンティフィック社(Edmund Scientific Company、Barrington、New Jersey)から得ることができる。プラットフォーム(220)の底面(227)に泡が形成されるのを防ぐため、底面(227)はすべて水平面から少なくも45°の角度を持つようにし、非溶解性潤滑剤でコ
アンド・コルマン社(Reckitt and Colman,Inc.、Wayne、New Jersey)製)、またはピュア・シリコン・ルブリカント(Pure Silicon Lubricant)(エース・ハードウェア社(Ace Hardware Corporation、Oak Brook、Illinois)製)を用いることができる。好ましい実施例では、プラットフォームは研磨されたアルミニウムを用い円錐状の形状に作られる。プラットフォーム(220)の上面(228)は少なくも1cm2、好ましくは少なくも2cm2の表面積を持つ。プラットフォーム(220)は、上面(228)と底面(227)の間の境界(229)近くに等間隔に設けた4つのボアー(243)を通った1本の糸(240)によりクロス・アーム(232)
から吊り下げられている。ボアー(243)の上端は正方形のかどにあり、菓子(210)は糸(240)とプラットフォーム(220)の上面の間に入れられ、プラットフォーム(220)に固定される。プラットフォーム(220)の上面全体が菓子(210)で覆われているのが好ましい。プラットフォーム(220)の上面(228)で露出している部分は非溶解性潤滑剤でコートし、誤った浮力の発生を抑えなくてはならない。
特定の炭酸飲料中の特定の菓子の底面に対する浮力の時間変化も直接測定可能である。図2Bに示すように、この場合飲料中に沈められたプラットフォーム(220)およびそれに取り付けられた菓子(210)は図2Aの配置とは逆になっており、菓子(210)の露出した面は下向きになっている。
また、ある特定の配向を持つ表面にかかる浮力は、その表面上の泡の集合を写真に取り、各サイズ毎に泡の数を数え分布関数f(r,t)drに近似したヒストグラムを作り、式(1.1)を用いて泡のカバリッジを計算することにより得ることができる。菓子の表面上の泡の集合は、飲料中を浮上している泡や飲料の表面に静止している泡のため、部分的に視界が遮られている可能性があるので、各時間毎に異なった角度から複数の写真撮影を行い完全な状況を把握しなければならない。
小さな被写界深度に設定し菓子の表面に焦点を合わせたカメラを用いると菓子の表面に付着していない泡を簡単に見分けることができるため、異なった写真を組み合わせるのが容易になる。1枚目の写真で、表面にある泡(焦点の合った泡)
に番号を付け、それらのサイズを表にする。菓子の表面にある泡でもその表面から浮上する泡(したがってボケている)により部分的に不明瞭なものがある。できるならこれらの部分的に不明瞭な泡に対しても番号を付けサイズを測定するのがよい。異なった角度から取った2枚目の写真を次に調べ、表面上にあり1枚目の写真にも出ている泡に対しては1枚目の写真で用いたのと同じ番号を付ける。
1枚目の写真で部分的に不明瞭だが2枚目の写真ではより明瞭に写っている泡に対しては、2枚目の写真で測定したサイズを表に記入する。次に、1枚目の写真には写っていなく2枚目の写真に写っている泡のサイズを表にする。最後に、不明瞭でない面積の割合を計算し、式(1.1)に従って泡カバレッジh(t)を計算するときは、f(r,t)をこの割合の逆数でスケールする。
上昇するための物理的条件 沈んでいる菓子とそれに付着した泡の重量が、それらが押しのけた飲料の重量より小さくなるとき、菓子は浮上する。したがって菓子は次の不等式が成立するとき浮上する。
B V+Bg A h(t)<Bl[V+A h(t)] (2.1)
ここで、V、A、Bはそれぞれ菓子の体積,表面積,比重であり、BlおよびBgはそれぞれ炭酸飲料および炭酸泡の比重で、h(t)は、菓子の表面が大気に露出した後の、表面上の泡の集合に対する単位面積当たりの体積の時間変化を表わす。関数h(t)は「泡カバレッジ」と呼ばれる(最大泡半径Rより小さな長さのスケールの表面きめは、表面積Aに寄与するというより泡カバレッジh(t)に影響すると考えられる。詳しくは「表面のきめ」の項を参照のこと)。
BlおよびBはBgに比べて非常に大きいので、式(2.1)の右辺の第2項は無視してよい。Bl≒1という近似をすると、菓子は次の不等式が成立するとき上昇する。
(B-1)V/A h(∞)<h(t)/h(∞) (2.2)
ここでh(∞)はt→∞のときの極限値、すなわち、h(t)の定常値である。通常、1つの独立した泡(すなわち、合体する泡が近くに存在しない泡)の半径が最大半径Rにまで成長する時間の数倍を経過すればh(t)は大体h(∞)に等しくなる(この限界では時刻tは飲料が炭酸飽和を喪失する時間に比べてまだ十分短いことに注意)。泡カバレッジh(t)は時間に対し単調に増加する関数であるため、次式が成立すれば、 (B-1)V/A h(∞)<1 (2.3)
菓子の表面の泡は十分大きく成長し、菓子を浮上させることが可能になる。
したがって、菓子が上昇する能力の尺度は次元のない次式の全体有効比ETで与えられる。
(B-1)V/A h(∞) (2.4)
全体有効比ETが小さな値を持つ菓子は、h(∞)に比べて小さなh(t)の値で表面に浮上する。すなわち、このような菓子は少し沈むだけですぐに浮き上がってくる。
他の有効尺度は次の式で与えられる次元のない幾何学的有効比EGである。
V/A h(∞)) (2.5)
幾何学的有効比EGの値が小さいほど、比重Bは1から大きくずれることができ、しかも全体有効比ETを小さくすることができる。好ましい実施例では幾何学的有効比EGは1/2より小さい。その値は、1/3より小さいのがより好ましく、1/5より小さいのがさらに好ましく、1/8より小さいのがもっと好ましく、1/13より小さいのがさらに好ましい。
巾がW1およびW2で厚さがTの菓子は、その全表面積が側面の表面積に比べて著しく大きいとき「薄い」と見なされる。数学的には、次式が成立するとき菓子は薄いと見なされる。
T<H(W1×W2)/(W1+W2) (2.6)
ここでHは1より小さな正数である。好ましい実施例では菓子は薄く、Hは1/2より小さいのが好ましい。Hの値は、1/3より小さいのがより好ましく、1/5より小さいのがさらに好ましく、1/8より小さいのがもっと好ましく、1/13より小さいのがさらに好ましい。
約W1×W2に等しい面積が見えるように薄い菓子を見る見方は平面景と見なされ、この面積領域を「平面景」領域と名付ける。薄い菓子では、体積は厚さに表面積の半分を乗じたものにほぼ等しい(すなわち、V≒T(A/2))、したがって ET≒T/2h(∞)及びEG≒(B-1)T/2h(∞) (2.7)
そして上昇条件は、 (B-1)T/2h(∞)<1. (2.8)
したがって、特定の比重Bおよび定常泡カバレッジh(∞)に対して上昇が起きる最大厚さTmaxは次のように与えられる。
Tmax=2h(∞)/(B-1) (2.9)
薄い菓子の利点は、全体有効比ETおよび幾何学的有効比EGが菓子の1つの寸法、すなわち厚さTのみの関数になることである。このことにより2つの有効比が簡単に制御でき、菓子の厚さT以外の寸法を任意に大きくでき、菓子の断面を任意の形状にすることができる。
実際の製造環境では、菓子の厚さT,比重B,定常泡カバレッジh(∞)はそれぞれ有限の精度ΔT,ΔB,およびΔh(∞)を持つ。菓子の大部分が上昇することを保証するには、上昇条件(2.8)は以下のようになる。
(B-1)T/2h(∞)× {1+[[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]2+[ΔB/(B-1)]2]1/2} <1(2.10)
ここでT,B,およびh(∞)はそれぞれ厚さ,比重,および定常泡カバレッジのターゲット値または平均値であり、精度,ΔT,ΔB,およびΔh(∞)の統計的独立性が仮定されている。次式 [[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]2+[ΔB/(B-1)]2]1/2 (2.11)
は全体的相対精度ΔΠと呼ばれる。
上の計算では、上向き表面の定常泡カバレッジhtop(∞)と下向き表面のhbot(∞)の値の違いを考慮すべきであるが、一次の近似としてこの差を無視し、上の式でhtop(∞)の値をh(∞)の値として用いる。hbot(∞)の値はhtop(∞)よりも大きいが、hbotがhtopより十分に大きければ、菓子が飲料中を浮上し始めるとき、底面の泡による浮力が上面の浮力より大きいため菓子は回転し、前に底面であった面は上面になる。次に、新しく上面になった面に付着していた泡は菓子から分離し、この面が寄与する浮力はhtop(∞)に等しいかより小さくなる。
下降するための物理的条件 菓子の比重Bが1(炭酸飲料の近似的比重)より大きい場合、飲料中に入れられると最初沈降する。菓子の比重および寸法が前節で述べた境界内にある場合、菓子は次に飲料の表面にまで浮上し、飲料の表面に接触した泡は大気中に離脱していく。
菓子の上面に付着した泡が飲料と大気の境界に接触し大気中に離脱するとき、菓子の形状に依存して、菓子は回転する場合もあるが、回転しない場合もある。
上面の泡が大気中に離脱するとき菓子が回転し、したがって底面に付着した泡もまた離脱することができれば、それは「まるい」と見なされる。したがって、まるい菓子は下の条件が成立すれば下降する。
B>1 (3.1)
丸くない菓子は「平ら」と見なされる。一般に、厚さTが下の条件を満足すれば、菓子は平らである。
T<W1[1-(1-F)G(W2-W1/W1)] (3.2)
ここでW1<W2でFおよびGは1より小さい。本発明の菓子は平らで、0≦F≦1/2および1/2≦G≦1であることが好ましい。0≦F≦1/3または2/3≦G≦1であればさらに好ましい。0≦F≦1/3および2/3≦G≦1であればより好ましく、0≦F≦1/4または3/4≦G≦1はさらに好ましい。0≦F≦1/4および3/4≦G≦1はそれ以上に好ましい。図7にGおよび(W2/W1)を変化させたときの式(2.6)の角括弧内の因子のグラフを示す。W2/W1=1のとき、Gの値に関係なくその因子はFに等しくなり、W2/W1が大きくなると、それは1に近づいていく。
炭酸飲料の表面で菓子の上面から炭酸泡が大気中に離脱するとき回転しない菓子は必ずしも薄いとは限らない(式(2.6)の定義による)。例えば、直方体のW1×W2の表面に付着した泡が大気中に離脱するときこの直方体は回転しない場合があるが、厚さTが、好ましい値Hに対する式(2.6)を満足しない場合もある。あるいは、Lブラケット状の形状をした菓子は、泡が大気と接触した表面(例えば「L」の外部垂直部)から逃げても回転しない場合がある。しかしこの菓子が非平面性を持つため薄いとはいえない。しかし逆に、薄い菓子は一般に平らでもある。
平らな菓子に対して下降の機構は2つある。平らな菓子が十分に重い場合、菓子の上部から泡が離れていくと菓子は下降するが底面で動かなくなる。この場合、下降条件は、 T>hbot(tc)/(B-1) (3.3)
または (B-1)T/hbot(tc)>1 (3.4)
となる。ここで、tcは1サイクルの時間、すなわち、菓子が下降し上昇するのに要する時間である。菓子が下降するとき下を向いている面はサイクル時間のほとんどの間下向きであったため、下向きの面に対する泡カバレッジの値hbotが用いられた。その理由は、菓子が飲料/大気の境界面から最初に下降を始めるとき、下向きの面に付着した泡の集合による浮力のため菓子は回転し、この泡の集合は上向きの面になるからである。
菓子が平らで、条件(3.3)が満足されない(条件(3.1)は満足する)場合、菓子の底面に付着した泡がなくなるまで菓子は沈降しない。この場合、菓子の底面の泡が合体し幾分平らな大きな泡が形成されるまで菓子は飲料の表面に長く留まることになる。これらの泡が十分に大きくなり菓子の底面から離れると、菓子は下降する。この菓子の下降機構には条件(3.3)に関して述べた機構より長い時間を必要とするため、1つの菓子に対し1分当りの下降回数は、条件(3.3)
が満足されるとき大きくなる。
実験結果:厚みと活動度の関係 「活動度」、すなわち、特定の菓子1個に対する1分当りの下降回数は、菓子の寸法、表面のきめおよび材料成分、並びに炭酸飽和度および飲料の流体力学的特性に依存する。(活動度はサイクル時間tcの逆数であることに注意。)薄い菓子の活動度は、計算またはコンピュータ・シミュレーションにより評価するか、このセクションで述べるように実験的に測定される。
非溶解物を用いて図3および4のグラフに対するデータが得られた。小さい溶解度または中間の溶解度を持つものでも同じ全体有効比ETおよび幾何学的有効比EGをもつものであれば同様な振る舞いを示す。菓子の溶解度は広い範囲で変わる。例えば、チョコレートのようなオイル系の菓子は非常に小さな溶解度を持ち、トロリ・ガミー・ベア(Trolli Gummi Bears;GPA Incorporated(St.Louis、Missouri)により販売されている)のようなゼラチン系の菓子は中間の溶解度を持ち、砂糖またはコーン・シロップが主成分の菓子は高い溶解度を持つ。
非溶解物を用いてデータを収集する利点は、同一のものを複数の実験に使用可能であること、および、寸法や表面の特性の時間変化が菓子の動力学的性質に影響を与えないことである。特に、実験で用いたものは、ステットラー社(Staedtler Company(Nuremberg、Germany))製造の白色のマース・プラスチック(Mars Plastic)消しゴム、製品番号52650である。消しゴムの断面積は2.2cmx1.1cmで、比重は約1.54であった。名称の一貫性を保つため、本明細書の当節では使用される消しゴムを「菓子」と呼ぶことがある。
データ収集を行うには、室温に保った1つの新しいカンまたはビンのソーダを開け、7.5cmから8.0cmの間の径のコップに注いで始められた。水溶性の菓子と違って消しゴム材料は水に「濡れ」ないため、キッチン用洗剤(例えば、Procter and Gamble(Cincinnati、Ohio州)で製造のドーン(Dawn))を少量飲料の表面に添加し、表面張力が動力学に影響を与えないようにした。キッチン用洗剤は、作業者の指の先に少量を付け、その指と親指を飲料中でこすり、飲料の表面全体が一時的に薄い泡で覆われるようにして添加された。飲料を開けて30秒以内、キッチン用洗剤を添加して直ちに、8個の菓子が飲料中に入れられ、その後5分間下降の回数が数えられた。飲料の表面にある菓子が飲料中を底に向けて半分以下に下降したとき1回の下降と勘定した。
図3は、種々の厚さを持つ8個の菓子の全下降回数を時間(分)に対してプ
(Seven-Up Company(Dallas、Texas)製の355ccカン)である。特に、曲線210、220、230および240は、室温の7-UP中に入れられた厚さ1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対するもので、曲線215,225,235および245は、0℃の7-UP中に入れられた厚さ1.0mm,2.0mm,3.0mmおよび4.0mmの菓子に対するものである。菓子の厚さの誤差は±0.08mmである。曲線210,215,220,225,230,235,240および245はほぼ直線であるが、これは少なくも最初の5分間はほぼ一定の活動をすることを示している。(温度および厚さに対する依存性は以下で述べる。)
図4は、室温の7-Up中に入れられた8個の菓子の活動度をその厚さに対してプロットしたものである。ここでも菓子の厚さの誤差は±0.08mmである。図4から分かるように、活動度は、厚さが約4mmになるまで厚さに対して単調に増加している。明らかに、約2.0mmと2.25mmの間に第1の活動平坦部があり、2.5mmと3.0mmの間に第2の活動平坦部があり、3.5mmと4.25mmの間に第3の活動平坦部がある。厚さがTmax=4.5mmに等しいか、それ以上の場合には菓子は重過ぎて上昇しない。
B=1.54and Tmax=4.5mmとして式(2.9)のh(∞)を解くと約1.2mmを得る。運動1サイクルの時間tcが十分長くhbot(tc)がおおまかにh(∞)に等しいときは、式(3.2)の条件はT>2.25mmに対して満足する。
第1の活動平坦部に対応する厚さおよびそれ以下の厚さに対しては、菓子が下降するためにはその両面から泡が離れなくてはならないことが観察により確認された。図3の曲線210と215および曲線220と225を比較して分かるように、1.0mmおよび2.0mmの菓子に対しては、室温の飲料の方が活動が大きい。これは、室温での泡の成長速度が速いためで、これにより菓子の底面の泡は速く成長して大きくなり底面から離れ、下降を早くするからである。
第2または第3の活動平坦部に対応する厚さに対しては、菓子が下降するためには菓子上面の泡だけが逃げるだけでよい。さらに、第3の活動平坦部に対応するものより大きな厚さに対しては、菓子が下降するためには菓子上面の泡の一部のみが逃げるだけでよい。図3の曲線240および245を比較すると分かるように、第3の活動平坦部に対応する大きな厚さに対しては、低温で泡の成長速度が遅い場合に大きな活動度が得られる。これは、菓子に付着した泡が十分早く成長し菓子に浮力を与えるなら、菓子は1つまたは数個の泡を離して短い距離しか下降しないからである。厚さが3.0mmの菓子の活動は、曲線230および235を比較して分かるように、飲料の温度に対して比較的不変で、この厚さが、上で述べた2種類の振る舞いのちようど中間領域に対応することを示している。
炭酸飲料中で上昇するためには菓子の厚さはTmaxより小さくなくてはならない。図4で見られるように、大きな活動が得られるよう、第1、第2、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの45%から100%の厚さの菓子が好ましい。さらに、第2、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの55%から100%の厚さの菓子が、より大きな活動が得られるので、さらに好ましい。さらに、第3の平坦部に対応する厚さ、すなわちTmaxの70%から100%の厚さの菓子が、より一層大きな活動が得られるので、さらに好ましい。Tmaxの75%から95%の厚さは、第3の平坦部のピークに近いので、それ以上に好ましい。Tmaxの80%から90%の厚さは、第3の平坦部のピークにより近いので、なおさら好ましい。最も好ましい厚さはTmaxの約85%である。この厚さは第3の平坦部の中央に対応し、したがって活動は菓子の厚さ、密度、表面のきめの小さな変動に対して比較的敏感でないからである。さらに、主にTmaxに近い厚さの範囲(Tmaxの75%〜95%の範囲、Tmaxの80%〜90%の範囲、またはTmaxの約85%を中心にした比較的狭い範囲)では、冷やした、すなわち室温以下に温度を下げた炭酸飲料を用いるのが好ましい。その理由は、図3に関連して上で述べたように、ある厚さにおいて活動がより活発になるからである。
式(2.10)を用いると全体的相対標準偏差ΔΠが約18%より小さいときには、目標の厚さTを最も好ましい厚さ0.85*Tmaxに設定可能で、菓子が式(2.9)を満足せず、したがって上昇できないという可能性を少なくさせることが可能である。しかし、全体的相対標準偏差ΔΠが約18%より大きいときには、目標の厚さTはTmax/(1+ΔΠ)に設定し、菓子の厚さが好ましい厚さの範囲内にあり上昇不可能にならないようにすべきである。
表面のきめ 液体を炭酸飽和させるには、炭酸ガスの大きな分圧Pを持つ高圧大気に液体をさらせばよい。液体中の炭酸ガスの分圧Pはヘンリーの法則を用いて決定できる。ヘンリーの法則とは、ある温度での分圧Pは溶解した炭酸ガスの量Xに比例するというもので、定数Kを用いて次のようになる。
P=K X (4.1)
温度0℃および25℃の水に対する比例定数はそれぞれ2.98x10-4atm*liter/mgおよび6.69x10-4atm*hter/mgである(「泡の化学」("Surface Chemistry of Froth Flotation"、Jan Leja著、Plenum Press、New York、1982を参照)。氷点と室温において比例定数が約2の因子異なっているのは、室温では約2倍泡の成長が速いことを示唆している。
炭酸飽和した炭酸飲料中に溶解した炭酸ガスの量は、ビンまたはカンから出した直後の飲料の重量と炭酸ガスが出てしまった後の飲料の重量の差を測定することにより評価できる。食塩を飲料に加えることにより炭酸ガスの放出を早めこの重量差の測定を早めることができる。食塩は水中で高い溶解度を持ち、30/1000の重量モル濃度の食塩で炭酸ガスの溶解度を約10%減少させることができる。したがって十分な食塩を添加すると溶解した炭酸ガスのほとんどすべてを放出することができるのである。
以下の表Iに、市販の炭酸飲料のいくつかに溶解している炭酸ガスの量X(およびそれに対応する分圧P)の比較をする。ここでXは炭酸ガスを溶解していない飲料の質量に対する溶解した炭酸ガスの質量の比である。飲料を注ぐとき、コップを傾け飲料がコップの側面に沿って底まで流れるようにし攪拌を最小限にし、カンからコップへ飲料を移し替えるときの炭酸ガスの損失が最小になるように注意した。注ぐときに注意を怠ると通常20-40%の炭酸ガスが減少することが測定された。表Iの値Xは室温で以下の要領で測定された。すなわち、約40グラムの食塩を計量する;開けた直後の炭酸飲料の約80ミリリットルを静かにコップに注ぐ;
コップに入れられた飲料を計量する;食塩を飲料に添加する;飲料の重量(すなわち、飲料/食塩の重量から食塩の重量を差し引いたもの)を決定する。(40グラムの食塩が80ミリリットルの飲料に添加されるとき、一部の食塩が溶解されずに残るが、これは、食塩の水に対する飽和溶解値が室温で100ミリリットルに対して35グラムであるからである。)食塩はゆっくりと添加し、できたあぶく(フォーム)がコップの上部近くまで上らないよう、したがって、フォームの中の泡がはじけて飲料の損失がないように注意した。
炭酸飲料が大気にさらされると、地球大気の炭酸ガスの海面での分圧は飲料内の分圧Pよりも著しく低いため、炭酸ガス分子が溶解液から出てきて飲料/大気の境界から直接逃げていく。さらに、海面での大気全体の圧力は密封したビン(またはカン)の圧力より低いため、ビンを開けると炭酸ガス分子は溶解液から出てきて飲料中に泡を形成する。泡の核形成は、溶解した炭酸ガス密度の不規則な揺らぎにより多数の分子が集まるため、表面または飲料バルク内で行われる。従って、大きな泡より小さい泡の核形成が生じやすい。
小さな体積vを持つ泡は、泡が表面のピットや溝で形成されると泡内部の圧力が非常に低いので、バルク内より表面で核形成が行われる傾向がある。半径rの炭酸の泡が飲料のバルク内で形成されるとき、境界の表面張力σが泡の内部のガスに付加的な圧力(2σ/r)を及ぼす。したがって、核形成の最小半径rnuc-bulkは、 rnuc-bulk=2σ/P (4.2)
となる。その理由は、もし泡の半径がrnuc-bulkより小さい場合には、泡の内部の圧力は液体内の炭酸ガスの分圧より大きくなるため、泡内部の炭酸ガスが溶解液中に溶解するからである。しかし、泡の半径がrnnuc-bulkより大きい場合には、炭酸ガスが液体から拡散してきて泡は連続して大きくなる。したがって、球状の泡に対しては、最小の核の体積vnuc-bulkは次のようになる。
vnuc-bulk=(32/3)π(σ/P)3≒33.5(σ/P)3 (4.3)
泡が、図5に断面で示されている半径rの円柱ピット(415)のようなピットまたは溝の中で核形成を行う場合には、泡の境界面(425)の曲率半径r'はr/cosθで、泡(410)のピット(415)の底(432)から頂上までの距離は次のようになる。
d=r'-rtanθ=r secθ(1-sinθ) (4.4)
ここでθはピット(415)の側壁(430)と泡の表面(425)とがなす接触角度である。それ故、飲料/泡の境界は泡内の炭酸ガスに2σcosθ/rの圧力を加えピット(415)の半径が核形成の最小半径rnuc-surfより大きい場合、泡がピット(415)内に形成される。ここで、 rnuc-surf=2σcosθ/P (4.5)
大きな泡のカバレッジhを得るため、好ましい実施例の菓子は、泡の核形成を促進するよう[2σcosθ/P]のオーダーの長さのスケールで粗くした表面を持つように製造される。接触角度θは、液体−固体,液体−気体,固体−気体の表面張力に依存し、特定の菓子に対するθは、好ましくは顕微鏡または拡大鏡を用い、観察により決定することができる。水と炭酸ガスの境界に対する表面張力σは約80dynes/cmで、炭酸飲料中の菓子のθは一般に45°である。Pが3気圧、すなわち、約3x106dynes/cm2であれば、rnuc-bulkは約40ミクロンである。
式(4.4)および(4.5)より、最小核形成体積は以下のようになる。
vnuc-surf=(1/3)π d2(3r'-d)
=(1/3)π(rnuc-surf)3sec3θ(1-sinθ)2(2+sinθ) =(813)π(σ/P)3(1-sinθ)2(2+sinθ)(4.6)
θは一般に約 45°であるから、vnuc-surfは約1.95(σ/P)3である。したがって、泡がバルクでなく表面で核形成を行うと、その体積をほとんど2桁も小さくすることが可能になる。
炭酸化が減少するにつれ、炭酸ガスの分圧Pが減少し、核形成の最小半径rnuc-surfが増大する。炭酸化の半減期、すなわち、カンを開けてから飲料中の炭酸ガスが半分にまで減少する時間は通常約半時間である。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも5分間核形成が促進されるのが好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]から[2σcosθ/P(5)]ほどの粗さを持つのが好ましい。ここでP(t)は炭酸飲料が注がれてからt分後の炭酸ガスの分圧である。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも10分間核形成が促進されるのがより好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]
から[2σcosθ/P(10)]ほどの粗さを持つのがより好ましい。飲料が開けられ、カップまたはガラスコップに注がれてから少なくも15分間核形成が促進されるのがさらに好ましく、長さのスケールで[2σcosθ/P(0)]から[2σcosθ/P(15)]ほどの粗さを持つのがさらに好ましい。
泡が粗い表面で成長する場合は、泡の形状および泡と表面の間の接触部分が急に変化し、泡の境界と表面の間が接触する部分全体にわたって接触角度θの値を一定に保とうとするときがある。この突然の遷移を行うときに、泡にかかる流体力学的力および泡を表面に拘束している表面張力の力の変化により、泡は上向きの表面から離れることが多い。したがって、泡は(核が生成されれば)、成長する表面が滑らかであれば、任意の場所で泡の大きさの上限まで成長する可能性が高い、すなわち、泡の上限半径R*近辺の長さの尺度で表面がなめらかであれば、上限半径R*の近くの半径を持つ泡が多く存在することになる。好ましい実施例では、菓子はR*/3toR*の長さのスケールで滑らかであることが好ましく、R*/10toR*がより好ましく、R*/30toR*がさらに好ましい。(巾λの領域にわたって波長λを中心にしたフーリエ振幅の積分が波長λに比べて小さいとき、表面は長さのスケールλで滑らかであるという。)
表面上の泡の上限半径R*は泡の境界の表面張力σおよびその表面と泡の境界との間の接触角度θにより決まる。完全に滑らかな上向きの表面では、下が切り取られた球状の泡の浮力は、泡を表面に拘束する表面張力と丁度釣り合う。
したがって、 {ρgπR*3/3}[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]=2πR*σsin2θ (4.7)
泡の上限半径R*を求めると、 R*={6σsin2θ/ρg[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]}1/2 (4.8)
本発明のもう一つの実施例では、菓子の表面全面にきめを付け定常状態泡カバレッジh(∞)を最大にする代りに、表面の一部にきめを付けh(∞)を最大にする、したがって菓子が飲料の表面へ上昇するとき、きめを付けた部分が先に昇っていくようにする。例えば、菓子が鯨の形のように海に関係した形状をしていれば、鯨の前部にきめを付けh(∞)を増加させる(または後部にるh(∞)を減少させるようにきめを付ける)、したがって、鯨は飲料中を頭を先頭にして上昇する(しかし、このように選択的にきめを付けても、きめを付けた方が先に沈む保証はない)。
重ならないための条件 本発明の第1の好ましい実施例では、菓子は十分に大きく約20-30cm離れた距離から容易に識別可能で、また飲料中には十分な数の菓子があり、通常任意の時刻に少なくも1つの菓子は動いている。しかし、菓子が大きすぎたり、飲料中に多く入れすぎたりすると、菓子は互いの運動に干渉し合うことになる。例えば、飲料の上面に菓子が多くあれば、浮上してくる菓子は空気/飲料境界面に到達できず、菓子上の泡は大気中に離脱することができない。したがって、浮上してきた菓子もその直ぐ上にある菓子も下降することができなくなる。同様に、飲料の底面に多くの菓子が存在すれば、第1の菓子が下降してき、底面で留まっていた第2の菓子の上に留まる場合が生じる。その場合第1の菓子の重量により第2の菓子が浮上できなくなり、これら2つの菓子の接触部分で炭酸泡の形成が不可能になることもある。飲料の上面または底面でくっ付き合った菓子を「重なった」
菓子と呼ぶ。以下の条件を最適に満たすような妥協が可能である。すなわち、(i)菓子は十分大きくてその形状は容易に識別可能である、(ii)十分な数の菓子があり、1つ以上の菓子が動いている、(iii)菓子は十分小さく、その数は十分少なく重なりは起こらない、という条件である。
今、N個の菓子があり、これらの菓子は平均して、サイクル時間のp部分の時間は飲料の上面にあり、サイクル時間のq部分の時間は飲料の底面にあり、サイクル時間のs部分の時間は上面と底面の間の遷移状態にあるとすると、p+q+s=1である。そのとき、ある特定の数の菓子が上面、底面、または遷移状態にある確率は二項分布で与えられ、平均として、飲料の上面にはpNの数の菓子、飲料の下面にはqNの数の菓子、遷移状態にはsNの数の菓子が存在する。
飲料上面にある菓子の平均数に、菓子1つ当りの平均衝突面積Zを乗じ、補正因子μで除したものが飲料の上面の面積Ctopにほぼ等しいか、それより小さい場合には、上面での重なりは起こらない傾向にある。すなわち、 N≦μCtop/pZ (5.1)
同様に、飲料底面にある菓子の平均数に、菓子1つ当りの平均衝突面積Zを乗じ、補正因子μで除したものが飲料の上面の面積Cbotにほぼ等しいか、それより小さい場合には、底面での重なりは起こらない傾向にある。すなわち、 N≦μCbot/qZ (5.2)
好しい実施例では式(5.1)および(5.2)が満足されているので、飲料の上面と底面の両方で菓子が重なり合うのが避けられる。菓子の数Nは、pおよびqが小さいとき、すなわち、菓子がサイクル時間の内の多くの時間の間飲料の上面と底面の間で遷移状態にあるとき最大になる。したがって、好ましい実施例ではs>pまたはs>qである。s>pおよびs>qであればより好ましい。また、カップ、またはガラスコップで底面の面積Cbotが上面の面積Ctopに比べて非常に小さいものは避けなくてはならない。その理由は、pおよびqがほぼ等しいとき、条件(5.2)
を満足するのは、条件(5.1)に比べて非常に難しくなるからである。
無限に大きなコップ内の同一平面上にある2つの薄い菓子に対する衝突領域は以下のように定義される。すなわち、第1の菓子の中心が第2の菓子を取り囲む衝突領域内にあるとき、2つの菓子は接触しているという。図6Aに示すよう、半径rの薄い円形の菓子(あるいは、円形の断面積をもつ菓子)の衝突面積(410)は4πr2である。すなわち、1つの菓子の面積の4倍である。
円形でない菓子の場合には、衝突領域は菓子の角度配向による。図6Bに、同一平面上にある2つの薄い矩形の菓子(あるいは、2つの矩形の断面積をもつ菓子)に対する八角形の衝突領域(430)を示す。矩形の2辺の長さはaとbで、2つの矩形の縦軸は角度θをなすとする。角度の関数としての衝突面積Z(θ)は以下のようになる。
Z(θ)=(a+a cosθ+bsinθ)(b+b cosθ+a sinθ) -b2sinθcosθ-a2sinθcosθ =2ab+(a2+b2)sinθ+2ab cosθ (5.3)
また、衝突面積の角度平均は、 Z=2ab[1+(2+e+1/e)/π] (5.4)
ここで、e=b/aは菓子のアスペクト比である。不規則な形状を持つ菓子に対しては、aおよびbは菓子の特性長および特性巾である。
補正因子μは形状補正因子μgとトレランス因子μtとの積である。すなわち、 μ=μg*μt (5.5)
トレランス因子μtの値は許容可能な重なりの度合いに依存する。形状補正因子μgはいくつかの効果を補償する。その効果の中には、菓子の衝突領域は重なり合っている可能性があり、個々の衝突面積の和と全衝突面積(これは個々の衝突面積の和より小さい)に差がある効果、カップやガラスコップの形状や有限の大きさのために生じる効果がある。後者の効果を補正することを「有限サイズ補正」とよぶ。飲料の上面に対する形状補正因子μgは、菓子の数N、菓子が飲料の上面にある確率p、飲料の上面の面積Ctop、衝突面積Zの関数である。同様に、飲料の底面に対する形状補正因子μgは、菓子の数N、菓子が飲料の底面にある確率q、飲料の底面の面積Cbot、衝突面積Zの関数である。実験的に、1<μ<4が好ましく、1.5<μ<3がより好ましく、2.0<μ<2.5がさらに好ましく、μ≒2.25が最も好ましいことが判明している。
例えば、特性寸法a=2.2cmおよびb=1.1cmをもつ薄い菓子に対する衝突面積は11.8cm2である。大部分のカップやガラスコップは内径約3.5cmなので、Ctop=Cbot≒38.5cm2である。補正因子μの値を2.25とし、平均として、40%の菓子が飲料の上面にあり、30%の菓子が飲料の底面にあり、30%の菓子が飲料の上面と底面の間の遷移状態にあるとすると、重なりを避けるための菓子の最適な数は式(5.1)と(5.2)により18以下となる。
本発明を実行するための最適なモードの他の詳細および産業への応用性 本発明によると菓子と共に用いられる炭酸飲料は半透明、好ましくは透明で、少なくも5分、より好ましくは10分、さらに好ましくは15分間炭酸化が保たれているのが好ましい。菓子が飲料の上面に到達し、菓子の泡が大気中に離脱していけるようにするには、飲料に氷を入れてはならない。
菓子は、不注意で飲み込んだとき窒息や喉に傷害を生じるのを防ぐため軟らか且つ柔軟でなくてはならない。5分間、より好ましくは10分間、さらに好ましくは15分間、炭酸ガスの泡の核生成速度は時間と共に大きく減少してはならなく、菓子の表面への泡の付着力が時間と共に弱くなってはならない。本発明の好ましい実施例では、菓子は、人魚,スキューバダイバー,潜水艦,サメ,蛸,鯨のような海にある物体や生物に似せた形状をしている。菓子が薄い場合には、上述の海の物体はシルエットとして描かれる。上で述べた条件に従う薄い菓子は、薄くない菓子に比べ非常に大きな断面積をもつことが可能である。したがって、薄い菓子の形状は、薄くない菓子の形状に比べ、はるかに容易に識別が可能である。
楽しい外観をもたせるため、菓子には種々の明るい色を持たせる。菓子が溶けるとき、食欲を減退させる褐色の色が飲料に出ないよう、減色法色ホイール中で補色(例えば、赤と緑,または青とオレンジ色)になるものは避けるのがよい。
好ましい実施例では菓子は主に赤色、オレンジ色、黄色に着色され、それぞれの補色(緑,青,紫)が出てくる頻度を少なくしている。
菓子が溶けるとき飲料の炭酸化を急速に減少させるようなものは避けるべきである。5分間,より好ましくは10分間,さらに好ましくは15分間,炭酸ガスの泡の核生成速度は時間と共に大きく減少してはならなく、菓子の表面への泡の付着力が時間と共に弱くなってはならない。さらに、例えば、トッフィーとかマジパンのような、飲料中に入れると飲料を「濁らせる」ような菓子は、飲料が食欲を減退させるような外観になるため用いるべきではない。
したがって、溶解性の低い菓子が好ましい。その理由は、寸法および泡のカバレッジ関数h(t)は菓子が飲料中にある間相対的に不変であり、炭酸化や飲料の色に小さな影響しか与えないからである。ゼラチン系の菓子、すなわち、砂糖シロップをゼラチン溶液に入れ、その混合物を固化させ、トロリ・ガミ(Trolli Gummi:GPA社(St.Louis,Missouri)から販売)に類似の組成をもたせて作る菓子が、外観と弾性的性質の点から最も好ましい。
結論 したがって、ここで述べた改良は炭酸飲料中で泳ぐ菓子に対する本発明の目的と一致し、以下の特徴を持つ菓子を実現する。すなわち、 (i)単位時間当り上昇と下降の多くのサイクルを繰返す;
(ii)泡の核生成を容易にし且つ大きな泡を保持することにより単位表面 積当りの泡の体積を大きくするような表面きめを有する;
(iii)十分大きな断面積をもち、その形状が容易に識別可能である;
(iv)飲み込んだとき窒息や喉に傷害を生じないよう軟らかである;
(v)飲料を「濁らせ」ない材料で作られる。
さらに、そのような菓子の集合は、 (vi)十分大きな数の菓子をもち、任意の時刻に通常少なくも1つの菓子 が動いており、またその数は、飲料の上面および底面で菓子の重なりが起 きやすくなるほど多くはない。
特にゼラチン系の菓子のような溶解性の小さな菓子が好ましい。その理由として以下のことが挙げられる、 (vii)菓子が飲料中に浸けられている間寸法が比較的不変である;
(viii)菓子が飲料中に浸けられている間泡のカバレッジ関数h(t)は相対的 に不変である;
(ix)飲料の炭酸化に小さな影響しか与えない (x)飲料の色に小さな影響しか与えない (xi)透明な飲料中にあるとき魅力的な外観を呈する;
(xii)魅力的な弾性的性質を持つである。
上述した本発明の個々の実施例に対する説明は単に例として挙げられたものである。それらはすべてを網羅するものではなく、本発明を開示された形態に正確に限定するものでもない。また、上の教示に照らして多くの修正や変更が可能である。これらの実施例は、本発明の原理および実際の応用を最も分かりやすく説明するように選ばれたもので、当業者が、個々の応用に合うよう、本発明や種々の修正を行った種々の実施例の使用を可能にするためである。多くの変化が考えられる。例えば、液体は炭酸ガス以外のガスで過飽和にしてもよい;菓子は、速く溶解し過飽和溶液から炭酸ガスの泡の放出を起こさすことにより泡の核形成を促進するようにしてもよい;食用でない材料またはチューイングガムを菓子の代りに用いてもよい;(i)カルナルバろうのような比重が1に近い材料を用いるか、または(ii)レシピ中に泡立てた卵、酢および重ソウ、または同種のものを用い発泡体性構造を作り、菓子の比重が1に近くなるようにしてもよい;菓子の縦軸に垂直な軸に沿った断面は重心から前方よりも後方により多くの面積があるため、流体力学的力により菓子は「頭を先にして」泳ぐようにしてもよい;菓子の前部を後部より溶解しやすくなるように作り、前部での核形成を後部より容易にすることにより、菓子が「頭を先にして」上昇するようにしてもよい;菓子の密度が一様にならないように作り、飲料中で溶解し体積および表面積が小さくなっても菓子は上昇・下降する条件を満足するようにしてもよい;菓子は第2の菓子材料中で異なった溶解速度を持つ第1の菓子材料を吊るして作られるもので、溶解過程中は、菓子の表面きめは小さな長さのスケールで粗く泡の核形成を促進するようにしてもよい;泡のカバレッジを測るクレーンはクロス−アームを備える必要はない;泡のカバレッジを測るクレーンは木材で作る必要はない、等々である。
上述した本発明の動作および性能の基礎になる物理的原理もまた単に例として挙げられたものであり、すべてを網羅するものではなく、限定するものでもない。これらの説明には、基礎的な概念を数学的に取り扱いやすい形で示すため、多くの近似、簡易化、仮定がなされており、動作および性能に影響を与える多くの効果も説明を簡単にするため無視されている。例えば、ソーダのような炭酸飲料の比重は正確に1ではなく、炭酸ガスが飲料からなくなるにつれ変化する;薄い菓子の側面にできる炭酸ガスの泡の効果は無視されている;炭酸ガスの比重はゼロでない;菓子の表面に付着する炭酸ガスの泡は正確に球状ではない;菓子の厚さの関数としての活動度のプロットで、平坦部は存在しないかもしれないし、あるいは、平坦部の数は3より大きい、または小さいかもしれない;上昇条件、全体有効比、および幾何学的有効比は、表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジに依存しており、上向きの水平面に対するカバレッジの定常状態の値に依存するだけではない;下降条件は、表面の配向角度と時間の関数としての単位面積当たりの泡の体積に依存しており、1サイクルした後の下向きの水平面に対するその値に依存するだけではない;菓子の表面が飲料容器に接触している場合は、上昇条件は単位面積当たりの泡の体積に依存している;表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジは飲料の炭酸化の度合いに依存する;表面の配向角度と時間の関数としての泡のカバレッジは菓子が湿気に曝されていた時間(通常飲料の湿気)に依存する;飲料の上面および底面で重ならないようにして使用できる菓子の数もまた、菓子の断面積および飲料の上面および底面の菓子の数の標準偏差に依存する;等々である。
したがって、本発明の範囲は、例として挙げられた実施例や実施例に対する物理解析により決められるのではなく、以下のクレームおよびその法律的均等物によって決められるのである。
【特許請求の範囲】
1.比重B,体積V,および表面積Aをもつ炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係をもち、 0<(B-1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき前記表面部Aに付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、(V/Ah(∞))で定義される幾何学的有効比EGは1/2以下であり、したがって、前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合には、前記炭酸飽和液体中で該製品は沈降し、前記炭酸泡が該製品に付着した場合には前記炭酸飽和液体中で該製品が浮かぶ、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
2.前記幾何学的有効比EGは1/3より小さい、請求項1に記載の製品。
3.前記幾何学的有効比EGは1/5より小さい、請求項1に記載の製品。
4.前記表面部は、前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)に大きな値をもたらす表面きめを有する表面部分を備えている、請求項1に記載の製品。
5.単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は該製品の上向き表面に対応する値を有する、請求項1に記載の製品。
6.前記製品は食用菓子である、請求項1に記載の製品。
7.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項6に記載の製品。
8.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項7に記載の製品。
9.前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項6に記載の製品。
10.前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は、前記製品が前記炭酸飽和液体中に沈降した後の最初の5分間実質的に不変である、請求項1に記載の製品。
11.前記製品は海に関係したものの形状をしている、請求項1に記載の製品。
12.前記海に関係したものの形状は重心と、前記重心の第1の側に通常前記海に関係したものの形状の進行方向に関連した前方部と、前記重心の前記第1の側の反対側にある第2の側に後方部とを備え、前記後方部は後方断面部を、前記前方部は前方断面部を有し、前記後方および前方断面部は前記進行方向に平行な軸と同一平面上にあり、前記後方断面部は前記前方断面部に比べ大きく、したがって、前記形状は、前記製品にかかる流体力学的力のため、前記前方部が前記後方部より先に進む傾向がある、請求項11に記載の製品。
13.比重B,厚さTを有する十分薄い炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係を有し、 0<(B-1)T/2h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき該製品に付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、したがって前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合は、前記炭酸飽和液体中で該製品は沈降し、前記炭酸泡が該製品に付着した場合は、前記炭酸飽和液体中で該製品は浮かぶ、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
14.前記製品の第1の特性巾W1および該製品の第2の特性巾W2はそれぞれ直交する方向で測定され、 T<H(W1×W2)/(W1+W2)、および0<H<1/2 なる関係を有する、請求項13に記載の製品。
15.0<H<1/3である、請求項14に記載の製品。
16.前記厚さT、該製品の第1の特性巾W1および該製品の第2の特性巾W2はそれぞれ直交する方向で測定され、前記第1の特性巾W1は前記第2の特性巾W2より小さく、且つ T<W1[ 1-(1-F)G(W2-W1/W1)]
が成立し、ここで0≦F≦1/2および1/2≦G≦1である、請求項13に記載の製品。
17.0≦F≦1/3である、請求項16に記載の製品。
18.2/3≦G≦1である、請求項16に記載の製品。
19.単位面積当たりの定常状態の体積である前記h(∞)は該製品の上向き表面に対して評価される、請求項13に記載の製品。
20.次の関係が成立し、 T>h(tc)/(B-1) ここで、h(tc)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で下降・上昇を行うのに必 要な1サイクル時間tc後の単位面積当たりの前記炭酸泡の体積で、したがっ て、前記炭酸泡が該製品の上面から離れると該製品は下降する、請求項13 に記載の製品。
21.前記サイクル時間tc後の単位面積当たりの体積である前記h(tc)は、該製品の上向き表面に対して評価される、請求項20に記載の製品。
22.前記厚さTは、上昇に対する最大厚さTmax Tmax=2h(∞)/(B-1) の45%と100%の間にある、請求項13に記載の製品。
23.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの55%と100%の間にある、請求項22に記載の製品。
24.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの70%と100%の間にある、請求項22に記載の製品。
25.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの75%と95%の間にある、請求項22に記載の製品。
26.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項25に記載の製品。
27.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの80%と90%の間にある、請求項22に記載の製品。
28.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項27に記載の製品。
29.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの約85%である、請求項22に記載の製品。
30.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項29に記載の製品。
31.前記厚さT,前記比重B,および前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は、それぞれΔT,ΔB,andΔh(∞)の精度をもち、全体的相対精度ΔΠは次式で表わされ、 [[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]+[ΔB/(B-1)]2]1/2 また、条件 (B-1)T/2h(∞)[1+ΔΠ]<1 を満足し、したがって該製品が上昇不能になる確率は小さい、請求項13に記 載の製品。
32.前記全体的相対精度ΔΠは約18%より小さく、前記厚さTは、 Tmax=2h(∞)/(B-1) で表わされる上昇に対する最大厚さTmaxの約85%である、請求項31に記載の 製品。
33.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項32に記載の製品。
34.前記全体的相対精度ΔΠは約18%より大きく、上昇に対する最大厚さTmaxは次式で表わされ、 Tmax=2h(∞)/(B-1) 前記厚さはTmax/(1+ΔΠ)にほぼ等しい、請求項31に記載の製品。
35.前記製品は食用菓子であり、前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項1 3に記載の製品。
36.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項35に記載の製品。
37.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項36に記載の製品。
38.容器に入った炭酸飽和液体中で沈降する製品の集合であって、前記炭酸飽和液体は面積Ctopの上面および面積Cbotの底面を有し、また該集合を構成する製品の数はNで、該製品の各々は比重B、体積V、および表面積Aをもち、それらの間には次の関係が成立し、 0<(B- 1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、前記表面Aに付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、前記製品は前記炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、平均として前記製品の各々は上昇・下降サイクル時間の第1の部分pの時間は前記液体の上面にあり、前記上昇・下降サイクル時間の第2の部分qの時間は前記液体の底面にあり、前記上昇・下降サイクル時間の第3の部分sの時間は前記液体の前記上面と前記底面の間で遷移状態にあり、また前記製品は平均衝突面積Zをもち、次の関係を満足し、 N≦μCtop/pZ 且つ N≦μCbot/qZ ここで、1<μ<4である、沈降する製品のグループ。
39.1.5<μ<3であることを特徴とする、請求項38に記載の製品のグループ。
40.2.0<μ<2.5である、請求項38に記載の製品のグループ。
41.μ≒2.25である、請求項38に記載の製品のグループ。
42.s>qである、請求項38に記載の製品のグループ。
43.s>pである、請求項38に記載の製品のグループ。
44.前記製品は食用菓子であり、前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項38に記載の製品のグループ。
45.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項44に記載の製品のグループ。
46.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項45に記載の製品のグループ47.前記製品は、減色法色ホイールの主に一方の側にある種々のカラーを持ち、したがって、前記製品が前記炭酸飲料中に溶解するとき前記炭酸飲料の外観が濁った色にならない、請求項38に記載の製品のグループ。。
48.比重B,体積V,および表面積Aを有する炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係をもち、 0<(B-1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき前記表面 部Aに付着する炭酸泡が占める単位表面積当たりの定常状態の泡の体積で、 該製品は前記炭酸泡が占める単位表面積当りの定常状態の泡の体積である前 記h(∞)に大きな値をもたらす表面きめを有する表面部分を有し、したがっ て前記炭酸泡が該製品に付着した場合には、前記液体中で該製品は浮かび、 前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合には、前記液体中で該製 品は沈降する、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
49.前記最適化した滑らかな表面きめに対する泡の上限半径R*は R*={6σsin2θ/ρg[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]}1/2 で表わされ、 ここでσは前記炭酸飽和液体と炭酸ガスとの間の泡の境界の表面張力で、 θは前記表面部と前記泡の境界との間の接触角度で、前記表面部はR*に近い 長さスケールで滑らかである、請求項48に記載の製品。
50.前記表面部はR*/3とR*の間の長さスケールで滑らかである、請求項49に記載の製品。
51.前記表面きめは[2σcosθ/P]の長さのスケールで粗く、ここでσは前記炭酸飽和液体と炭酸ガスとの間の泡の境界の表面張力で、θは前記表面部と前記泡の境界との間の接触角度で、Pは前記炭酸飽和液体に溶解した炭酸ガスの分圧である、請求項50に記載の製品。
52.前記製品は、通常進行方向に関連した前方部および前記前方部の反対にある後方部を備えた形状を有し、単位表面積当りの定常状態の泡の体積である前記h(∞)に前記の大きな値をもたらす前記表面きめを有する前記表面部分は前記前方部に位置し、したがって、前記前方部は前記後方部に比べ大きな浮力を受け、前記形状は前記液体中を前記前方部が前記後方部より先になり上昇する、請求項48に記載の製品。
53.前記形状は海に関係したものの形状をしている、請求項52に記載の製品。
1.比重B,体積V,および表面積Aをもつ炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係をもち、 0<(B-1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき前記表面部Aに付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、(V/Ah(∞))で定義される幾何学的有効比EGは1/2以下であり、したがって、前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合には、前記炭酸飽和液体中で該製品は沈降し、前記炭酸泡が該製品に付着した場合には前記炭酸飽和液体中で該製品が浮かぶ、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
2.前記幾何学的有効比EGは1/3より小さい、請求項1に記載の製品。
3.前記幾何学的有効比EGは1/5より小さい、請求項1に記載の製品。
4.前記表面部は、前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)に大きな値をもたらす表面きめを有する表面部分を備えている、請求項1に記載の製品。
5.単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は該製品の上向き表面に対応する値を有する、請求項1に記載の製品。
6.前記製品は食用菓子である、請求項1に記載の製品。
7.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項6に記載の製品。
8.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項7に記載の製品。
9.前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項6に記載の製品。
10.前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は、前記製品が前記炭酸飽和液体中に沈降した後の最初の5分間実質的に不変である、請求項1に記載の製品。
11.前記製品は海に関係したものの形状をしている、請求項1に記載の製品。
12.前記海に関係したものの形状は重心と、前記重心の第1の側に通常前記海に関係したものの形状の進行方向に関連した前方部と、前記重心の前記第1の側の反対側にある第2の側に後方部とを備え、前記後方部は後方断面部を、前記前方部は前方断面部を有し、前記後方および前方断面部は前記進行方向に平行な軸と同一平面上にあり、前記後方断面部は前記前方断面部に比べ大きく、したがって、前記形状は、前記製品にかかる流体力学的力のため、前記前方部が前記後方部より先に進む傾向がある、請求項11に記載の製品。
13.比重B,厚さTを有する十分薄い炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係を有し、 0<(B-1)T/2h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき該製品に付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、したがって前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合は、前記炭酸飽和液体中で該製品は沈降し、前記炭酸泡が該製品に付着した場合は、前記炭酸飽和液体中で該製品は浮かぶ、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
14.前記製品の第1の特性巾W1および該製品の第2の特性巾W2はそれぞれ直交する方向で測定され、 T<H(W1×W2)/(W1+W2)、および0<H<1/2 なる関係を有する、請求項13に記載の製品。
15.0<H<1/3である、請求項14に記載の製品。
16.前記厚さT、該製品の第1の特性巾W1および該製品の第2の特性巾W2はそれぞれ直交する方向で測定され、前記第1の特性巾W1は前記第2の特性巾W2より小さく、且つ T<W1[ 1-(1-F)G(W2-W1/W1)]
が成立し、ここで0≦F≦1/2および1/2≦G≦1である、請求項13に記載の製品。
17.0≦F≦1/3である、請求項16に記載の製品。
18.2/3≦G≦1である、請求項16に記載の製品。
19.単位面積当たりの定常状態の体積である前記h(∞)は該製品の上向き表面に対して評価される、請求項13に記載の製品。
20.次の関係が成立し、 T>h(tc)/(B-1) ここで、h(tc)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で下降・上昇を行うのに必 要な1サイクル時間tc後の単位面積当たりの前記炭酸泡の体積で、したがっ て、前記炭酸泡が該製品の上面から離れると該製品は下降する、請求項13 に記載の製品。
21.前記サイクル時間tc後の単位面積当たりの体積である前記h(tc)は、該製品の上向き表面に対して評価される、請求項20に記載の製品。
22.前記厚さTは、上昇に対する最大厚さTmax Tmax=2h(∞)/(B-1) の45%と100%の間にある、請求項13に記載の製品。
23.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの55%と100%の間にある、請求項22に記載の製品。
24.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの70%と100%の間にある、請求項22に記載の製品。
25.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの75%と95%の間にある、請求項22に記載の製品。
26.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項25に記載の製品。
27.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの80%と90%の間にある、請求項22に記載の製品。
28.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項27に記載の製品。
29.前記厚さTは、前記上昇に対する最大厚さTmaxの約85%である、請求項22に記載の製品。
30.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項29に記載の製品。
31.前記厚さT,前記比重B,および前記炭酸泡が占める単位面積当りの定常状態の体積である前記h(∞)は、それぞれΔT,ΔB,andΔh(∞)の精度をもち、全体的相対精度ΔΠは次式で表わされ、 [[ΔT/T]2+[Δh(∞)/h(∞)]+[ΔB/(B-1)]2]1/2 また、条件 (B-1)T/2h(∞)[1+ΔΠ]<1 を満足し、したがって該製品が上昇不能になる確率は小さい、請求項13に記 載の製品。
32.前記全体的相対精度ΔΠは約18%より小さく、前記厚さTは、 Tmax=2h(∞)/(B-1) で表わされる上昇に対する最大厚さTmaxの約85%である、請求項31に記載の 製品。
33.前記炭酸飽和液体は冷やされている、請求項32に記載の製品。
34.前記全体的相対精度ΔΠは約18%より大きく、上昇に対する最大厚さTmaxは次式で表わされ、 Tmax=2h(∞)/(B-1) 前記厚さはTmax/(1+ΔΠ)にほぼ等しい、請求項31に記載の製品。
35.前記製品は食用菓子であり、前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項1 3に記載の製品。
36.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項35に記載の製品。
37.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項36に記載の製品。
38.容器に入った炭酸飽和液体中で沈降する製品の集合であって、前記炭酸飽和液体は面積Ctopの上面および面積Cbotの底面を有し、また該集合を構成する製品の数はNで、該製品の各々は比重B、体積V、および表面積Aをもち、それらの間には次の関係が成立し、 0<(B- 1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、前記表面Aに付着する炭酸泡が占める単位面積当たりの定常状態の体積で、前記製品は前記炭酸飽和液体中で上昇・下降を繰返し、平均として前記製品の各々は上昇・下降サイクル時間の第1の部分pの時間は前記液体の上面にあり、前記上昇・下降サイクル時間の第2の部分qの時間は前記液体の底面にあり、前記上昇・下降サイクル時間の第3の部分sの時間は前記液体の前記上面と前記底面の間で遷移状態にあり、また前記製品は平均衝突面積Zをもち、次の関係を満足し、 N≦μCtop/pZ 且つ N≦μCbot/qZ ここで、1<μ<4である、沈降する製品のグループ。
39.1.5<μ<3であることを特徴とする、請求項38に記載の製品のグループ。
40.2.0<μ<2.5である、請求項38に記載の製品のグループ。
41.μ≒2.25である、請求項38に記載の製品のグループ。
42.s>qである、請求項38に記載の製品のグループ。
43.s>pである、請求項38に記載の製品のグループ。
44.前記製品は食用菓子であり、前記炭酸飽和液体は炭酸飲料である、請求項38に記載の製品のグループ。
45.前記食用菓子は低い溶解度を有する、請求項44に記載の製品のグループ。
46.前記食用菓子はゼラチン系の菓子である、請求項45に記載の製品のグループ47.前記製品は、減色法色ホイールの主に一方の側にある種々のカラーを持ち、したがって、前記製品が前記炭酸飲料中に溶解するとき前記炭酸飲料の外観が濁った色にならない、請求項38に記載の製品のグループ。。
48.比重B,体積V,および表面積Aを有する炭酸飽和液体中で沈降する製品であって、次の関係をもち、 0<(B-1)V/A h(∞)<1 ここで、h(∞)は、該製品が前記炭酸飽和液体中で沈降するとき前記表面 部Aに付着する炭酸泡が占める単位表面積当たりの定常状態の泡の体積で、 該製品は前記炭酸泡が占める単位表面積当りの定常状態の泡の体積である前 記h(∞)に大きな値をもたらす表面きめを有する表面部分を有し、したがっ て前記炭酸泡が該製品に付着した場合には、前記液体中で該製品は浮かび、 前記炭酸泡がひとつも該製品に付着していない場合には、前記液体中で該製 品は沈降する、炭酸飽和液体中で沈降する製品。
49.前記最適化した滑らかな表面きめに対する泡の上限半径R*は R*={6σsin2θ/ρg[4-(1-cosθ)2(2+cosθ)]}1/2 で表わされ、 ここでσは前記炭酸飽和液体と炭酸ガスとの間の泡の境界の表面張力で、 θは前記表面部と前記泡の境界との間の接触角度で、前記表面部はR*に近い 長さスケールで滑らかである、請求項48に記載の製品。
50.前記表面部はR*/3とR*の間の長さスケールで滑らかである、請求項49に記載の製品。
51.前記表面きめは[2σcosθ/P]の長さのスケールで粗く、ここでσは前記炭酸飽和液体と炭酸ガスとの間の泡の境界の表面張力で、θは前記表面部と前記泡の境界との間の接触角度で、Pは前記炭酸飽和液体に溶解した炭酸ガスの分圧である、請求項50に記載の製品。
52.前記製品は、通常進行方向に関連した前方部および前記前方部の反対にある後方部を備えた形状を有し、単位表面積当りの定常状態の泡の体積である前記h(∞)に前記の大きな値をもたらす前記表面きめを有する前記表面部分は前記前方部に位置し、したがって、前記前方部は前記後方部に比べ大きな浮力を受け、前記形状は前記液体中を前記前方部が前記後方部より先になり上昇する、請求項48に記載の製品。
53.前記形状は海に関係したものの形状をしている、請求項52に記載の製品。
【図1】
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【図2】
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【図6】
【図7】
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【公表番号】特表2001−507236(P2001−507236A)
【公表日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−540896
【出願日】平成9年11月21日(1997.11.21)
【国際出願番号】PCT/US97/21455
【国際公開番号】WO98/47387
【国際公開日】平成10年10月29日(1998.10.29)
【出願人】
【氏名又は名称】シャウ,ローレンス,ジェイ
【公表日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成9年11月21日(1997.11.21)
【国際出願番号】PCT/US97/21455
【国際公開番号】WO98/47387
【国際公開日】平成10年10月29日(1998.10.29)
【出願人】
【氏名又は名称】シャウ,ローレンス,ジェイ
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