点光源装置およびこの点光源装置を用いた写真測量用ターゲット
【課題】 基準点が視認しやすい点光源装置を用いた写真測量用ターゲットを得る。
【解決手段】 正三角形のターゲット10は、枠材12と底板14と遮光板16とを備える。遮光板16は3つの円形穴20、22、24を備える。円形穴20、22、24の下方には点光源装置30、32、34がそれぞれ位置している。各点光源装置は複数のLEDから形成され、各LEDの光軸が写真測量の基準点となる一点で交差することにより、基準点を強調する。ターゲット10の中央には、点光源駆動部26が設けられ、周囲の光量に応じて各LEDの明るさを制御する。
【解決手段】 正三角形のターゲット10は、枠材12と底板14と遮光板16とを備える。遮光板16は3つの円形穴20、22、24を備える。円形穴20、22、24の下方には点光源装置30、32、34がそれぞれ位置している。各点光源装置は複数のLEDから形成され、各LEDの光軸が写真測量の基準点となる一点で交差することにより、基準点を強調する。ターゲット10の中央には、点光源駆動部26が設けられ、周囲の光量に応じて各LEDの明るさを制御する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば写真測量において、撮影時に長さや角度の基準として用いられる写真測量用ターゲットの点光源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来交通事故調査などで行なわれる写真測量において、例えば被写体は銀塩フィルムを用いたカメラ、あるいは電子スチルカメラにより撮影され、記録画像における被写体の2次元座標から、演算により被写体の3次元座標が得られる。
【0003】このような写真測量において、例えば円錐形状の目印(以下コーンという)が3ヵ所に設置され、これらコーンを含めた撮影が行なわれる。そして、記録画像を用いて実際の座標を算出する際には、各コーンの先端を基準点として、これら基準点によって規定される基準平面を擬似的な水平面として演算が行なわれ、得られた座標値に基づき、作図が行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしコーンの先端である基準点は、測量が夜間等に行なわれると特に、方向によっては識別しにくいため、座標値に誤差が生じ、正確な作図ができないという問題が生じる。
【0005】本発明は、この様な問題に鑑みてなされたものであり、基準点の識別が容易な写真測量用ターゲットを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による点光源装置は、指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、複数の光源の各指向軸が一点で交差するように、複数の光源が配置されたことを特徴としている。
【0007】また本発明による写真測量用ターゲットは、記録画像に基づいて任意の原点に対する被写体の座標を求める写真測量に用いられる写真測量用ターゲットであって、基準平面を定義する少なくとも3個の基準点と、基準点に対応し、基準点をそれぞれ強調する少なくとも3個の点光源装置とを備え、この点光源装置が指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、複数の光源の各指向軸が基準点で交差するように配置されたことを特徴とする。
【0008】点光源装置において、好ましくは、光源から射出された光が指向軸に近いほど光度が漸増し、指向軸における光度が最も高い。
【0009】点光源装置において、好ましくは、複数の光源が環状に配置される。さらに好ましくは、各指向軸が交差する点を通り、点光源装置が載置される面に垂直な軸に関して、光源から絞りを介して射出される光が、軸周りの全方向から視認できる。
【0010】点光源装置において、好ましくは、周囲の光量を検出する光検出手段が設けられ、光源の射出光量が、光検出手段から検出された光量に応じて制御される。
【0011】点光源装置において、好ましくは、絞りが光源から射出される光を、光源の輝度が最も高くなるように絞る。
【0012】点光源装置において、好ましくは、絞りが遮光板に形成された円形穴である。
【0013】点光源装置において、好ましくは、絞りの近傍に防水防塵の透明部材が設けられる。さらに好ましくは、透明部材が、光源と絞りとの間に設けられた円筒部材であり、点光源の光を拡散させる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明による写真測量用ターゲットの実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態に用いられるカメラは撮像素子を用いた電子スチルカメラであり、撮像された画像は、記録媒体に電気的あるいは磁気的に記録されるものとする。
【0015】図1は、本発明の実施形態であるターゲット10と、被写体である立方体102と、カメラ100との位置関係を示す図である。カメラ100は立方体102とターゲット10が両方写るように2方向から撮影される。第1及び第2のカメラ位置は、それぞれ撮影レンズの後側主点位置M1、M2で示され、光軸方向はそれぞれO1、O2で示される。なお、第1のカメラ位置M1は実線で示され、第2のカメラ位置M2は破線で示される。
【0016】ターゲット10は、後述するように、正三角形の頂点に位置する3つの基準点P1、P2、P3を有し、これらの基準点P1、P2、P3によって定義される形状(図中、ハッチングで示される)を本明細書では基準形状と呼ぶ。本実施形態では、基準形状を長さLの正三角形とする。
【0017】図2(a) 、図2(b) は2つのカメラ位置M1、M2からそれぞれ撮影されたときの画像である。図2(a) で示す画像1において、撮像中心c1を原点とする2次元直交座標系である第1の写真座標系(x1,y1)が画像上に設定される。この第1の写真座標系における基準点P1の像点はp11(px11, py11)で示される。同様に基準点P2、P3はそれぞれ像点p12(px12, py12)、p13(px13, py13)と対応する。図2(b) の画像2においても、第2の写真座標系(x1,y1)における基準点P1〜P3の像点は、それぞれp21(px21,py21)、p22(px22, py22)、p23(px23, py23)で示される。
【0018】図3は、カメラと2枚の画像、およびターゲットとの位置関係を3次元的に示す図である。図2に示された2枚の画像から立方体の3次元座標を求めるためには、ある3次元の基準座標系を設定し、この基準座標系における2枚の画像の位置を定めることが必要である。第1のカメラ位置M1を原点とし、光軸O1方向をZ軸とする右手系の3次元直交座標系(X、Y、Z)を基準座標系と定め、第2のカメラ位置M2の位置をこの基準座標で表す。即ち第2のカメラ位置M2は、第1のカメラ位置に対する変位量(Xo,Yo,Zo)、および光軸O1に対する回転角(α,β,γ)で示される。
【0019】基準座標系における基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)は、例えば基準点と、その像点と、撮影レンズの後側主点位置とが一直線上にあることを利用した共線方程式((1)式)を用いて求められる。なお、(1)式におけるCは主点距離、即ち焦点距離であり、2枚の画像において同一であることとする。主点距離Cは、図3では撮影レンズの後側主点位置M1と撮像中心c1との距離、あるいは撮影レンズの後側主点位置M2と撮像中心c2との距離である。
【0020】
【数1】
【0021】図5のフローチャートに沿って2枚の画像から平面図を得るステップを説明する。これらのステップは、例えば外部のコンピュータ(図示しない)により行なわれる。
【0022】まず処理がスタートすると、ステップS102で(1)式における未知変量、即ち基準座標系における第2のカメラ位置(Xo,Yo,Zo)、および光軸O2の光軸O1に対する回転角(α,β,γ)は0でない適当な数値が与えられる。ステップS104では、前述したように基準点P1の2枚の画像における像点p11、p21がペアに指定され、それぞれの写真座標系で表される(図2参照)。基準点P2、P3についても同様に像点のペアp12とp22、p13とp23が指定される。
【0023】次にステップS106において、初期値を1とする変数kが与えられる。ステップS108では、2枚の画像に共通して写る任意の物点、例えば図1に示す立方体の頂点Qk(k=1)を決定する。そして物点Q1の画像1(図2(a) 参照)における像点をq11、画像2(図2(b) 参照)における像点をq21とし、この2点をペアに指定する。
【0024】ステップS110において、共線方程式を例えば逐次近似解法などの手法を用いて解き、基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)、および物点Q1の3次元座標(QX1,QY1,QZ1)を求める。逐次近似解法とは、前述の共線方程式において未知変量Xo、Yo、Zo、α、β、γに初期値を与え、この初期値の周りにテーラー展開して線形化し、最小二乗法により未知変量の補正量を求める手法である。この演算により未知変量のより誤差の少ない近似値が求められる。
【0025】上述のように基準座標系における基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)は、2つの写真座標p1i(px1i,py1i)、p2i(px2i,py2i)から変換されると同時に、Xo、Yo、Zo、α、β、γの近似値が求められる。また物点Q1も、2つの写真座標q11(qx11,qy11)、q21(qx21,qy21)から、3次元の基準座標(QX1,QY1,QZ1)に変換される。
【0026】ステップS112では、座標値による距離を実際の距離に補正するための補正倍率mを求める。この演算には既知の長さ、例えば基準点P1とP2との距離が用いられる。P1とP2の実際の距離はターゲット10の一辺の長さLであることから、基準座標系(X,Y,Z)におけるP1とP2の距離L’(図3参照)とLとの間には次の関係式が成り立つ。
【0027】L=L’×m (m:補正倍率)
【0028】ステップS114では、上式で求められた補正倍率mを用いて実際の長さにスケーリングされる。
【0029】ステップS116では、図4に示すようにP1とP2を結ぶ直線をX軸とし、基準形状を含む平面PsをX−Z平面とする3次元座標系(X’,Y’,Z’)が設定され、基準点P1を原点として基準点P2、P3、および物点Q1が基準座標系から座標変換される。なお、原点は基準形状を含む面内であれば、任意の点でも構わない。この座標変換は、例えばベクトル変換などを用いて行なわれる。
【0030】ステップS118では図示しないモニタなどに、例えばX−Z平面図として基準点P1〜P3とともに物点Q1が図示される。なお、特にX−Z平面図に限定されることはなく、X−Y平面図あるいは立体斜視図でもよい。
【0031】ステップS120ではペア指定を継続するか否か、即ちさらに別の物点の3次元座標を求めるか否かを判定する。ペア指定を継続しない場合は処理が終了する。さらにペア指定を行なう場合はステップS122においてkが1つカウントされ、ステップS108から再実行される。
【0032】このように任意の物点Qkの数、即ちkの回数分だけステップS108からステップS122まで繰り返し行なわれ、2枚の画像から基準点から形成される基準平面を基に作図される。なお物点Qkの数kは、Xo、Yo、Zo、α、β、γを誤差の少ない値に近似するために最低2つ(基準点の3点と合わせて5点)必要であり、2つ以上が好ましい。
【0033】図6から図9には、第1実施形態である点光源装置が写真測量用ターゲットと共に示される。図6はターゲット10を分解して示す斜視図である。ターゲット10は幅3〜5cm、高さ5cmの木材が1辺1mの正三角形になるように形成された枠材12と、この枠材12の底を閉密する三角形の底板14と、枠材12上に載置される三角形の遮光板16を備えている。
【0034】遮光板16は1辺1m、厚さ2〜3mmの正三角形の板であり、光を遮断する鋼材から成る。遮光板16の各頂点近傍には、約10mm程度の円形穴20、22、24がそれぞれ形成される。円形穴の口径は、5m離れて見たときに擬似的に点として視認される大きさ、即ち10mm以下が好ましい。円形穴20、22、24の中心をそれぞれ基準点P1とすると、この3点P1は測量の基準形状となる正確な正三角形を形成する。なお基準形状は正三角形に限定されることはなく、一定の形状を有していればよい。例えば四角形でもよく、大きさも限定されない。また遮光板16の材料は鋼材に限ることなく、木材などでもよい。
【0035】円形穴20、22、24の下方の底板14には、それぞれ点光源装置30、32、34が設けられる。各点光源装置30、32、34は円環状に配置された複数の高輝度LED(発光ダイオード)を備えており、対応する円形穴20、22、24から光が射出することにより、基準点P1が強調される。
【0036】遮光板16の中央には、3つの点光源装置30、32、34を駆動する光源駆動部26が埋め込まれる。光源駆動部26は、受光量によって抵抗が変化するCdS素子(図示しない)を備え、周囲の光量に応じて各点光源装置30、32、34の光量を制御する。
【0037】図7は点光源装置30を底板14側から見た平面図であり、図8は図6のI−I線に沿った断面における点光源装置を示す。点光源装置30は、12個のLED301〜312を備えている。12個のLED301〜312は底板14に環状に等間隔に配置されており、また底板14から円形穴20に向かって斜め上方に光を射出するように設けられている。
【0038】図9はLEDの指向特性を示す図である。LEDは指向性を有しており、指向軸BLに沿って、図中実線で示される光度が分布している。なお指向軸BLは、本明細書中においては、LEDの発光点B1を起点とし、所定平面上で発光点B1から所定距離はなれた発光点周囲の最も放射強度の大きい点B2(以下ピーク点という)を結ぶ直線として定義する。図9では、発光点B1を原点に放射状に延びた目盛りが、指向軸BLに対して時計回り及び反時計回りに90°の範囲で10°刻みに記される。一方、径方向の目盛りは指向軸BLの放射強度を1とした時の放射強度比を示し、0.1刻みに記される。例えば、指向軸BLから10°成す角の点における放射強度は、ピーク点の放射強度に対して約0.7倍である。
【0039】指向軸BLに対する光の広がり角は、例えば半値角および半値全角で示される。放射強度比が0.5の時の、指向軸BLに対する光の広がり角を半値角という。指向軸BLの左右の半値角を合わせた角、即ち図中矢印で示す角ηを半値全角という。図9において、実線と放射強度比0.5の太目盛り線との交点をB3とし、この交点B3と発光点B1とを結ぶ一点破線と、指向軸Blとの成す角が半値角である。図9に示すLEDの半値角は約13°であるから、半値全角ηは約26°である。
【0040】図8に特によく示すように、LED301〜312から射出された光は円形穴20を通って外部に向うが、このとき円形穴20が絞りの役目を果たし、射出光の輝度が最も高くなるように絞られる。円形穴20で絞られた光の広がる角度φは、LEDの半値全角、例えば約30°(図中、実線で示す)であることが望ましい。
【0041】LEDの数は特に限定されないが、どの方向から見ても光が視認できる数があればよい。例えば射出光の広がり角度φが30°であれば、12個以上設ければ全方向から視認できる。LED301〜312は、360°のどの方向からでも視認できるようにするために調整されて配置される。
【0042】LED301の指向軸をA1(図中一点鎖線で示される)とすると、指向軸A1は円形穴20の中心軸上に位置する基準点P1を通っている。同様にLED302の指向軸A2、LED303の指向軸A3、(以下同様)も基準点P1を通っている。即ち、12個のLEDの各指向軸は、基準点P1で交差している。また、各指向軸は遮光板16に対して角度θを成している。角度θは、5m離れた場所から水平面に置かれた基準点が視認しやすい角度、即ち約15°から20°が好ましいが、特に限定されない。
【0043】点光源32、34は点光源30と同じ構成である。なお点光源32のLEDは、対応する点光源30のLEDの番号に12を加算して示し、点光源34のLEDは、対応する点光源30のLEDの番号に24を加算して示す。
【0044】各LEDの指向軸の角度θによって決定される基準点の高さは、3つの基準点P1において等しければよく、それぞれの基準点P1において点光源装置の12個のLED指向軸が交差していればよい。また点光源装置30、32、34の中心、即ち基準点P1が正確な正三角形を形成していればよい。従って、枠14や遮光板16の形状は正確でなくてもよく、精度を要求されない。
【0045】図9は点光源装置と光源駆動部との電気的構成を示す図である。本実施形態の点光源装置では、光源の駆動電圧を制御することにより、各LEDの発光光量が制御される。LEDの発光光量は、同一電流でもLED毎に異なるため、光量を一定にするために制限抵抗をそれぞれの発光光量に応じて調整し、光量が均一になるようにしている。従って、全体の駆動電圧を制御して各々のLEDに流れる電流を変化させると、発光光量は各LEDにおいて同様に変化する。
【0046】光源駆動部26は、電源262と、スイッチ264と、直列に接続された抵抗261と光伝導素子266と、固定抵抗263と、トランジスタ268とを備える。光伝導素子266は例えば可視光を検出するCdS(硫化カドミウム)から成り、ターゲット10が設置された場所が暗くなる、即ち周囲の光量が小さくなると抵抗値が下がり、明るくなると抵抗値は増大する。LED301〜312は、それぞれ対応した制限抵抗401〜412と直列に連結され、各LEDと制限抵抗とが1セットにされる。そして、12セットが並列に連結される。即ち、トランジスタ268から出力された電流は、36個のLED301〜336に同じ電流量で流れる。
【0047】なお図示しないが、他の発光量の制御手段として、個々のLEDに流す電流値を制御してもよい。例えば、個々のLEDに直列に連結された抵抗の値を変化させてもよいし、抵抗部を電流源に置き換えて制御してもよい。
【0048】次に回路の動作を説明する。スイッチ264をONにすると、駆動電流が回路内を流れ、各LED301〜336が一斉に点灯する。その後、例えばターゲット10の周囲が電源ON直後より暗くなると、光伝導素子266の抵抗が下がり、光伝導素子266と抵抗261との分圧比が変化する。抵抗261の電圧は下がるので、トランジスタ268のベース電圧も下がる。ベース電圧が低下すると、LEDを駆動する駆動電圧が低くなり、LEDに流れる電流も減少するので、従ってLEDの発光量は押さえられる。
【0049】即ち、周囲が暗くなるとLEDの輝度は小さくなり、夜間や曇り等の環境でターゲットを使用する場合は、消費電流が少ないので昼間の晴れの時に使用する場合に比べ長時間使用でき、電池が節約できる。逆に、周囲が明るくなるとLEDの輝度は大きくなるので、例えば日中の測量時においても、容易に識別できる正確な基準点が得られる。
【0050】本実施形態の点光源装置を用いたターゲットでは、複数のLEDにより、基準点が明るく強調され、また円形穴が絞りになっているので、基準点が更に強調される。また、周囲の明るさによって各LEDの明るさを制御するので、昼間の明るいところでも基準点が視認しやすく、暗いところでの省電力が図られ、電池を有効に活用できる。
【0051】LEDはその指向軸が斜め上方に向かうように配置されるので、射出光が人の目の高さにおいて視認しやすく、環状に配置することにより、ターゲットをどの方角から見ても基準点が容易に視認できる。また各LEDの指向軸が1点、即ち基準点を通っているので正確な基準点が得られる。
【0052】上述のように、本実施形態のターゲットを用いて測量を行なうと、周囲の光り条件に左右されることなく、常に正確な基準点が得られるので、演算値の誤差は少なく、実像に近い平面図が容易に作成できる。
【0053】図10から図16は、点光源装置の他の実施形態を示す図である。点光源装置30、32、34(図6参照)は明るい場所での撮影でも識別が容易であり、またどの方向から撮影しても視認できる構成であればよい。なおこれら実施形態において、第1実施形態と実質的に同一の部材については同番号が付している。
【0054】図10から図12は、点光源装置の第2実施形態を示す。第2実施形態は円形穴の下方に円筒部材40を設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成であり、他の構成はここでは詳述しない。図10は部分断面図であり、図11は円筒部材の斜視図、図12は1つのLEDを円筒部材と共に示す部分平面図である。
【0055】中空の円筒部材40は例えば透明のガラスを材料とする。円筒部材40の内径は、遮光板16の円形穴20の径と一致しており、円筒部材40は遮光板16の直下に設けられ、遮光板16と底板14と枠材12によりターゲット内が閉密される。従ってターゲット内部あるいはLED301〜336に対する防塵、防水が可能になる。
【0056】図12によく示すように、LED310から射出した光は、円筒部材40の曲面により屈折し、実際の半値全角より左右に角度λずつ拡大する。以下、角度λを拡散量という。即ち、円筒部材40を設けたことにより、LEDの半値全角は2λ分だけ広くなり、視認性が高まる。また、例えば半値全角30°のLEDを12個配置した場合、360°のどの方向からでも視認できるが、死角ができないようにLEDの環状配置を微調整しなければならない。しかし、光拡散効果を有する第2実施形態においては、この微調整が容易になる。
【0057】なお拡散量λは、円筒部材40の径および材料固有の屈折率により決定されるが、例えば屈折率1.47のパイレックスガラスを用いた10mmの直径の円筒部材であれば、拡散量λは約2〜3°であり、視認性を高める十分な効果が得られる。
【0058】図13は、点光源装置の第3実施形態を示す部分断面図である。第3実施形態は、円形穴の上方にカバーを設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成であり、他の構成はここでは詳述しない。カバー42は円形穴20の上方に設けられ、下方側が開口したカップ型である。下方の開口部の内径と円形穴20の径とが一致し、上に行くにしたがって径が漸減している。第3実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められ、またカバー側面による拡散効果が得られ、視認性が高まる。
【0059】図14は、点光源装置の第4実施形態を示す部分断面図である。円形穴の上方にボールレンズを設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成である。ボールレンズ44は蛍光物質が混入したアクリル樹脂から形成され、12個のLED301〜312から入射した光を周囲に拡散する。各LEDの指向軸がこのボールレンズ44の中心を通るように、即ち、ボールレンズ44の中心が基準点になるように、LED301〜312は配置される。第4実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。またボールレンズ44による拡散効果および蛍光物質による発光により、視認性が高まる。
【0060】図15は、点光源装置の第5実施形態を示す部分断面図である。円形穴の上方に円錐プリズム部材を設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成である。円錐プリズム部材50はカップ状の外壁52と、カップの底面から突出する円錐プリズム54とが一体的に形成された透明のガラス部材である。円錐プリズム部材50は開口部が下方になるように円形穴20上に載置され、円形穴20をカバーする。各LEDから射出された光は円錐プリズム54の側面により反射され、外壁52を通って外部へ拡散する。円錐プリズム部材50からの射出光軸と水平面とが成す角θは、円錐プリズム52の頂角の大きさと各LEDの配置方向により決定される。第5実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。また円錐プリズム部材50による拡散効果により視認性が高まる。
【0061】図16は、点光源装置の第6実施形態を示す部分断面図である。円形穴に円錐プリズムを設けたこととLEDの配置方向以外は第1実施形態と同様の構成である。各LED301〜312は遮光板16から斜め下方に向かって環状に配置される。円錐プリズム60は下方に突出した円錐形のプリズム62と、一部が円形穴20から上方に突出した円錐台形のプリズム64とを備える。
【0062】指向軸が一点破線で示されるように、LED304から出射した光はまずプリズム64の下方側面に入射し、プリズム62の側面62aにより内部反射する。次にプリズム64の側面64aにより内部反射した光は、側面64aの円形穴20から突出した部分から射出する。この時、射出方向はLEDの入射方向とほぼ反対になる。2つのプリズム62、64の頂角は内面反射時に全反射をするように設定される。第6実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。
【0063】以上のように本発明の各実施形態によれば、複数の光源を環状に配置させることにより基準点を強調させるので、基準点が容易に識別できる。従って基準点の正確な位置が得られるので、水平面を基準に画像を幾何学演算により求めることにより、演算値の信頼性を高めることができる。
【0064】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、視認性の高い点光源装置およびターゲットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である写真測量用ターゲットと被写体とカメラとの位置関係を示す斜視図である。
【図2】第1及び第2のカメラ位置から撮影したときの画像を示す図である。
【図3】基準点とその像点と撮影レンズの後側主点位置との位置関係を3次元座標で示す図である。
【図4】基準形状を含む平面に基づく3次元座標を示す図である。
【図5】2枚の画像から被写体の平面図を得るステップを示すフローチャートである。
【図6】図1に示す写真測量用ターゲットを分解して示す拡大斜視図である。
【図7】図1に示す写真測量用ターゲットの点光源装置を示す平面図である。
【図8】図1に示す写真測量用ターゲットの点光源装置を示す部分断面図である。
【図9】図8に示す点光源装置をLEDの指向特性を示す図である。
【図10】図1に示す写真測量用ターゲットの回路構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図12】図11に示す点光源装置の円筒部材を示す斜視図である。
【図13】図11に示す点光源装置のLEDと円筒部材を共に示す部分平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図17】本発明の第6実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ターゲット
12 枠材
14 底板
16 遮光板
20、22、24 円形穴
30、32、34 点光源装置
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば写真測量において、撮影時に長さや角度の基準として用いられる写真測量用ターゲットの点光源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来交通事故調査などで行なわれる写真測量において、例えば被写体は銀塩フィルムを用いたカメラ、あるいは電子スチルカメラにより撮影され、記録画像における被写体の2次元座標から、演算により被写体の3次元座標が得られる。
【0003】このような写真測量において、例えば円錐形状の目印(以下コーンという)が3ヵ所に設置され、これらコーンを含めた撮影が行なわれる。そして、記録画像を用いて実際の座標を算出する際には、各コーンの先端を基準点として、これら基準点によって規定される基準平面を擬似的な水平面として演算が行なわれ、得られた座標値に基づき、作図が行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしコーンの先端である基準点は、測量が夜間等に行なわれると特に、方向によっては識別しにくいため、座標値に誤差が生じ、正確な作図ができないという問題が生じる。
【0005】本発明は、この様な問題に鑑みてなされたものであり、基準点の識別が容易な写真測量用ターゲットを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による点光源装置は、指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、複数の光源の各指向軸が一点で交差するように、複数の光源が配置されたことを特徴としている。
【0007】また本発明による写真測量用ターゲットは、記録画像に基づいて任意の原点に対する被写体の座標を求める写真測量に用いられる写真測量用ターゲットであって、基準平面を定義する少なくとも3個の基準点と、基準点に対応し、基準点をそれぞれ強調する少なくとも3個の点光源装置とを備え、この点光源装置が指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、複数の光源の各指向軸が基準点で交差するように配置されたことを特徴とする。
【0008】点光源装置において、好ましくは、光源から射出された光が指向軸に近いほど光度が漸増し、指向軸における光度が最も高い。
【0009】点光源装置において、好ましくは、複数の光源が環状に配置される。さらに好ましくは、各指向軸が交差する点を通り、点光源装置が載置される面に垂直な軸に関して、光源から絞りを介して射出される光が、軸周りの全方向から視認できる。
【0010】点光源装置において、好ましくは、周囲の光量を検出する光検出手段が設けられ、光源の射出光量が、光検出手段から検出された光量に応じて制御される。
【0011】点光源装置において、好ましくは、絞りが光源から射出される光を、光源の輝度が最も高くなるように絞る。
【0012】点光源装置において、好ましくは、絞りが遮光板に形成された円形穴である。
【0013】点光源装置において、好ましくは、絞りの近傍に防水防塵の透明部材が設けられる。さらに好ましくは、透明部材が、光源と絞りとの間に設けられた円筒部材であり、点光源の光を拡散させる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明による写真測量用ターゲットの実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態に用いられるカメラは撮像素子を用いた電子スチルカメラであり、撮像された画像は、記録媒体に電気的あるいは磁気的に記録されるものとする。
【0015】図1は、本発明の実施形態であるターゲット10と、被写体である立方体102と、カメラ100との位置関係を示す図である。カメラ100は立方体102とターゲット10が両方写るように2方向から撮影される。第1及び第2のカメラ位置は、それぞれ撮影レンズの後側主点位置M1、M2で示され、光軸方向はそれぞれO1、O2で示される。なお、第1のカメラ位置M1は実線で示され、第2のカメラ位置M2は破線で示される。
【0016】ターゲット10は、後述するように、正三角形の頂点に位置する3つの基準点P1、P2、P3を有し、これらの基準点P1、P2、P3によって定義される形状(図中、ハッチングで示される)を本明細書では基準形状と呼ぶ。本実施形態では、基準形状を長さLの正三角形とする。
【0017】図2(a) 、図2(b) は2つのカメラ位置M1、M2からそれぞれ撮影されたときの画像である。図2(a) で示す画像1において、撮像中心c1を原点とする2次元直交座標系である第1の写真座標系(x1,y1)が画像上に設定される。この第1の写真座標系における基準点P1の像点はp11(px11, py11)で示される。同様に基準点P2、P3はそれぞれ像点p12(px12, py12)、p13(px13, py13)と対応する。図2(b) の画像2においても、第2の写真座標系(x1,y1)における基準点P1〜P3の像点は、それぞれp21(px21,py21)、p22(px22, py22)、p23(px23, py23)で示される。
【0018】図3は、カメラと2枚の画像、およびターゲットとの位置関係を3次元的に示す図である。図2に示された2枚の画像から立方体の3次元座標を求めるためには、ある3次元の基準座標系を設定し、この基準座標系における2枚の画像の位置を定めることが必要である。第1のカメラ位置M1を原点とし、光軸O1方向をZ軸とする右手系の3次元直交座標系(X、Y、Z)を基準座標系と定め、第2のカメラ位置M2の位置をこの基準座標で表す。即ち第2のカメラ位置M2は、第1のカメラ位置に対する変位量(Xo,Yo,Zo)、および光軸O1に対する回転角(α,β,γ)で示される。
【0019】基準座標系における基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)は、例えば基準点と、その像点と、撮影レンズの後側主点位置とが一直線上にあることを利用した共線方程式((1)式)を用いて求められる。なお、(1)式におけるCは主点距離、即ち焦点距離であり、2枚の画像において同一であることとする。主点距離Cは、図3では撮影レンズの後側主点位置M1と撮像中心c1との距離、あるいは撮影レンズの後側主点位置M2と撮像中心c2との距離である。
【0020】
【数1】
【0021】図5のフローチャートに沿って2枚の画像から平面図を得るステップを説明する。これらのステップは、例えば外部のコンピュータ(図示しない)により行なわれる。
【0022】まず処理がスタートすると、ステップS102で(1)式における未知変量、即ち基準座標系における第2のカメラ位置(Xo,Yo,Zo)、および光軸O2の光軸O1に対する回転角(α,β,γ)は0でない適当な数値が与えられる。ステップS104では、前述したように基準点P1の2枚の画像における像点p11、p21がペアに指定され、それぞれの写真座標系で表される(図2参照)。基準点P2、P3についても同様に像点のペアp12とp22、p13とp23が指定される。
【0023】次にステップS106において、初期値を1とする変数kが与えられる。ステップS108では、2枚の画像に共通して写る任意の物点、例えば図1に示す立方体の頂点Qk(k=1)を決定する。そして物点Q1の画像1(図2(a) 参照)における像点をq11、画像2(図2(b) 参照)における像点をq21とし、この2点をペアに指定する。
【0024】ステップS110において、共線方程式を例えば逐次近似解法などの手法を用いて解き、基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)、および物点Q1の3次元座標(QX1,QY1,QZ1)を求める。逐次近似解法とは、前述の共線方程式において未知変量Xo、Yo、Zo、α、β、γに初期値を与え、この初期値の周りにテーラー展開して線形化し、最小二乗法により未知変量の補正量を求める手法である。この演算により未知変量のより誤差の少ない近似値が求められる。
【0025】上述のように基準座標系における基準点Pi(i= 1〜3)の3次元座標(PXi,PYi,PZi)は、2つの写真座標p1i(px1i,py1i)、p2i(px2i,py2i)から変換されると同時に、Xo、Yo、Zo、α、β、γの近似値が求められる。また物点Q1も、2つの写真座標q11(qx11,qy11)、q21(qx21,qy21)から、3次元の基準座標(QX1,QY1,QZ1)に変換される。
【0026】ステップS112では、座標値による距離を実際の距離に補正するための補正倍率mを求める。この演算には既知の長さ、例えば基準点P1とP2との距離が用いられる。P1とP2の実際の距離はターゲット10の一辺の長さLであることから、基準座標系(X,Y,Z)におけるP1とP2の距離L’(図3参照)とLとの間には次の関係式が成り立つ。
【0027】L=L’×m (m:補正倍率)
【0028】ステップS114では、上式で求められた補正倍率mを用いて実際の長さにスケーリングされる。
【0029】ステップS116では、図4に示すようにP1とP2を結ぶ直線をX軸とし、基準形状を含む平面PsをX−Z平面とする3次元座標系(X’,Y’,Z’)が設定され、基準点P1を原点として基準点P2、P3、および物点Q1が基準座標系から座標変換される。なお、原点は基準形状を含む面内であれば、任意の点でも構わない。この座標変換は、例えばベクトル変換などを用いて行なわれる。
【0030】ステップS118では図示しないモニタなどに、例えばX−Z平面図として基準点P1〜P3とともに物点Q1が図示される。なお、特にX−Z平面図に限定されることはなく、X−Y平面図あるいは立体斜視図でもよい。
【0031】ステップS120ではペア指定を継続するか否か、即ちさらに別の物点の3次元座標を求めるか否かを判定する。ペア指定を継続しない場合は処理が終了する。さらにペア指定を行なう場合はステップS122においてkが1つカウントされ、ステップS108から再実行される。
【0032】このように任意の物点Qkの数、即ちkの回数分だけステップS108からステップS122まで繰り返し行なわれ、2枚の画像から基準点から形成される基準平面を基に作図される。なお物点Qkの数kは、Xo、Yo、Zo、α、β、γを誤差の少ない値に近似するために最低2つ(基準点の3点と合わせて5点)必要であり、2つ以上が好ましい。
【0033】図6から図9には、第1実施形態である点光源装置が写真測量用ターゲットと共に示される。図6はターゲット10を分解して示す斜視図である。ターゲット10は幅3〜5cm、高さ5cmの木材が1辺1mの正三角形になるように形成された枠材12と、この枠材12の底を閉密する三角形の底板14と、枠材12上に載置される三角形の遮光板16を備えている。
【0034】遮光板16は1辺1m、厚さ2〜3mmの正三角形の板であり、光を遮断する鋼材から成る。遮光板16の各頂点近傍には、約10mm程度の円形穴20、22、24がそれぞれ形成される。円形穴の口径は、5m離れて見たときに擬似的に点として視認される大きさ、即ち10mm以下が好ましい。円形穴20、22、24の中心をそれぞれ基準点P1とすると、この3点P1は測量の基準形状となる正確な正三角形を形成する。なお基準形状は正三角形に限定されることはなく、一定の形状を有していればよい。例えば四角形でもよく、大きさも限定されない。また遮光板16の材料は鋼材に限ることなく、木材などでもよい。
【0035】円形穴20、22、24の下方の底板14には、それぞれ点光源装置30、32、34が設けられる。各点光源装置30、32、34は円環状に配置された複数の高輝度LED(発光ダイオード)を備えており、対応する円形穴20、22、24から光が射出することにより、基準点P1が強調される。
【0036】遮光板16の中央には、3つの点光源装置30、32、34を駆動する光源駆動部26が埋め込まれる。光源駆動部26は、受光量によって抵抗が変化するCdS素子(図示しない)を備え、周囲の光量に応じて各点光源装置30、32、34の光量を制御する。
【0037】図7は点光源装置30を底板14側から見た平面図であり、図8は図6のI−I線に沿った断面における点光源装置を示す。点光源装置30は、12個のLED301〜312を備えている。12個のLED301〜312は底板14に環状に等間隔に配置されており、また底板14から円形穴20に向かって斜め上方に光を射出するように設けられている。
【0038】図9はLEDの指向特性を示す図である。LEDは指向性を有しており、指向軸BLに沿って、図中実線で示される光度が分布している。なお指向軸BLは、本明細書中においては、LEDの発光点B1を起点とし、所定平面上で発光点B1から所定距離はなれた発光点周囲の最も放射強度の大きい点B2(以下ピーク点という)を結ぶ直線として定義する。図9では、発光点B1を原点に放射状に延びた目盛りが、指向軸BLに対して時計回り及び反時計回りに90°の範囲で10°刻みに記される。一方、径方向の目盛りは指向軸BLの放射強度を1とした時の放射強度比を示し、0.1刻みに記される。例えば、指向軸BLから10°成す角の点における放射強度は、ピーク点の放射強度に対して約0.7倍である。
【0039】指向軸BLに対する光の広がり角は、例えば半値角および半値全角で示される。放射強度比が0.5の時の、指向軸BLに対する光の広がり角を半値角という。指向軸BLの左右の半値角を合わせた角、即ち図中矢印で示す角ηを半値全角という。図9において、実線と放射強度比0.5の太目盛り線との交点をB3とし、この交点B3と発光点B1とを結ぶ一点破線と、指向軸Blとの成す角が半値角である。図9に示すLEDの半値角は約13°であるから、半値全角ηは約26°である。
【0040】図8に特によく示すように、LED301〜312から射出された光は円形穴20を通って外部に向うが、このとき円形穴20が絞りの役目を果たし、射出光の輝度が最も高くなるように絞られる。円形穴20で絞られた光の広がる角度φは、LEDの半値全角、例えば約30°(図中、実線で示す)であることが望ましい。
【0041】LEDの数は特に限定されないが、どの方向から見ても光が視認できる数があればよい。例えば射出光の広がり角度φが30°であれば、12個以上設ければ全方向から視認できる。LED301〜312は、360°のどの方向からでも視認できるようにするために調整されて配置される。
【0042】LED301の指向軸をA1(図中一点鎖線で示される)とすると、指向軸A1は円形穴20の中心軸上に位置する基準点P1を通っている。同様にLED302の指向軸A2、LED303の指向軸A3、(以下同様)も基準点P1を通っている。即ち、12個のLEDの各指向軸は、基準点P1で交差している。また、各指向軸は遮光板16に対して角度θを成している。角度θは、5m離れた場所から水平面に置かれた基準点が視認しやすい角度、即ち約15°から20°が好ましいが、特に限定されない。
【0043】点光源32、34は点光源30と同じ構成である。なお点光源32のLEDは、対応する点光源30のLEDの番号に12を加算して示し、点光源34のLEDは、対応する点光源30のLEDの番号に24を加算して示す。
【0044】各LEDの指向軸の角度θによって決定される基準点の高さは、3つの基準点P1において等しければよく、それぞれの基準点P1において点光源装置の12個のLED指向軸が交差していればよい。また点光源装置30、32、34の中心、即ち基準点P1が正確な正三角形を形成していればよい。従って、枠14や遮光板16の形状は正確でなくてもよく、精度を要求されない。
【0045】図9は点光源装置と光源駆動部との電気的構成を示す図である。本実施形態の点光源装置では、光源の駆動電圧を制御することにより、各LEDの発光光量が制御される。LEDの発光光量は、同一電流でもLED毎に異なるため、光量を一定にするために制限抵抗をそれぞれの発光光量に応じて調整し、光量が均一になるようにしている。従って、全体の駆動電圧を制御して各々のLEDに流れる電流を変化させると、発光光量は各LEDにおいて同様に変化する。
【0046】光源駆動部26は、電源262と、スイッチ264と、直列に接続された抵抗261と光伝導素子266と、固定抵抗263と、トランジスタ268とを備える。光伝導素子266は例えば可視光を検出するCdS(硫化カドミウム)から成り、ターゲット10が設置された場所が暗くなる、即ち周囲の光量が小さくなると抵抗値が下がり、明るくなると抵抗値は増大する。LED301〜312は、それぞれ対応した制限抵抗401〜412と直列に連結され、各LEDと制限抵抗とが1セットにされる。そして、12セットが並列に連結される。即ち、トランジスタ268から出力された電流は、36個のLED301〜336に同じ電流量で流れる。
【0047】なお図示しないが、他の発光量の制御手段として、個々のLEDに流す電流値を制御してもよい。例えば、個々のLEDに直列に連結された抵抗の値を変化させてもよいし、抵抗部を電流源に置き換えて制御してもよい。
【0048】次に回路の動作を説明する。スイッチ264をONにすると、駆動電流が回路内を流れ、各LED301〜336が一斉に点灯する。その後、例えばターゲット10の周囲が電源ON直後より暗くなると、光伝導素子266の抵抗が下がり、光伝導素子266と抵抗261との分圧比が変化する。抵抗261の電圧は下がるので、トランジスタ268のベース電圧も下がる。ベース電圧が低下すると、LEDを駆動する駆動電圧が低くなり、LEDに流れる電流も減少するので、従ってLEDの発光量は押さえられる。
【0049】即ち、周囲が暗くなるとLEDの輝度は小さくなり、夜間や曇り等の環境でターゲットを使用する場合は、消費電流が少ないので昼間の晴れの時に使用する場合に比べ長時間使用でき、電池が節約できる。逆に、周囲が明るくなるとLEDの輝度は大きくなるので、例えば日中の測量時においても、容易に識別できる正確な基準点が得られる。
【0050】本実施形態の点光源装置を用いたターゲットでは、複数のLEDにより、基準点が明るく強調され、また円形穴が絞りになっているので、基準点が更に強調される。また、周囲の明るさによって各LEDの明るさを制御するので、昼間の明るいところでも基準点が視認しやすく、暗いところでの省電力が図られ、電池を有効に活用できる。
【0051】LEDはその指向軸が斜め上方に向かうように配置されるので、射出光が人の目の高さにおいて視認しやすく、環状に配置することにより、ターゲットをどの方角から見ても基準点が容易に視認できる。また各LEDの指向軸が1点、即ち基準点を通っているので正確な基準点が得られる。
【0052】上述のように、本実施形態のターゲットを用いて測量を行なうと、周囲の光り条件に左右されることなく、常に正確な基準点が得られるので、演算値の誤差は少なく、実像に近い平面図が容易に作成できる。
【0053】図10から図16は、点光源装置の他の実施形態を示す図である。点光源装置30、32、34(図6参照)は明るい場所での撮影でも識別が容易であり、またどの方向から撮影しても視認できる構成であればよい。なおこれら実施形態において、第1実施形態と実質的に同一の部材については同番号が付している。
【0054】図10から図12は、点光源装置の第2実施形態を示す。第2実施形態は円形穴の下方に円筒部材40を設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成であり、他の構成はここでは詳述しない。図10は部分断面図であり、図11は円筒部材の斜視図、図12は1つのLEDを円筒部材と共に示す部分平面図である。
【0055】中空の円筒部材40は例えば透明のガラスを材料とする。円筒部材40の内径は、遮光板16の円形穴20の径と一致しており、円筒部材40は遮光板16の直下に設けられ、遮光板16と底板14と枠材12によりターゲット内が閉密される。従ってターゲット内部あるいはLED301〜336に対する防塵、防水が可能になる。
【0056】図12によく示すように、LED310から射出した光は、円筒部材40の曲面により屈折し、実際の半値全角より左右に角度λずつ拡大する。以下、角度λを拡散量という。即ち、円筒部材40を設けたことにより、LEDの半値全角は2λ分だけ広くなり、視認性が高まる。また、例えば半値全角30°のLEDを12個配置した場合、360°のどの方向からでも視認できるが、死角ができないようにLEDの環状配置を微調整しなければならない。しかし、光拡散効果を有する第2実施形態においては、この微調整が容易になる。
【0057】なお拡散量λは、円筒部材40の径および材料固有の屈折率により決定されるが、例えば屈折率1.47のパイレックスガラスを用いた10mmの直径の円筒部材であれば、拡散量λは約2〜3°であり、視認性を高める十分な効果が得られる。
【0058】図13は、点光源装置の第3実施形態を示す部分断面図である。第3実施形態は、円形穴の上方にカバーを設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成であり、他の構成はここでは詳述しない。カバー42は円形穴20の上方に設けられ、下方側が開口したカップ型である。下方の開口部の内径と円形穴20の径とが一致し、上に行くにしたがって径が漸減している。第3実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められ、またカバー側面による拡散効果が得られ、視認性が高まる。
【0059】図14は、点光源装置の第4実施形態を示す部分断面図である。円形穴の上方にボールレンズを設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成である。ボールレンズ44は蛍光物質が混入したアクリル樹脂から形成され、12個のLED301〜312から入射した光を周囲に拡散する。各LEDの指向軸がこのボールレンズ44の中心を通るように、即ち、ボールレンズ44の中心が基準点になるように、LED301〜312は配置される。第4実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。またボールレンズ44による拡散効果および蛍光物質による発光により、視認性が高まる。
【0060】図15は、点光源装置の第5実施形態を示す部分断面図である。円形穴の上方に円錐プリズム部材を設けたこと以外は第1実施形態と同様の構成である。円錐プリズム部材50はカップ状の外壁52と、カップの底面から突出する円錐プリズム54とが一体的に形成された透明のガラス部材である。円錐プリズム部材50は開口部が下方になるように円形穴20上に載置され、円形穴20をカバーする。各LEDから射出された光は円錐プリズム54の側面により反射され、外壁52を通って外部へ拡散する。円錐プリズム部材50からの射出光軸と水平面とが成す角θは、円錐プリズム52の頂角の大きさと各LEDの配置方向により決定される。第5実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。また円錐プリズム部材50による拡散効果により視認性が高まる。
【0061】図16は、点光源装置の第6実施形態を示す部分断面図である。円形穴に円錐プリズムを設けたこととLEDの配置方向以外は第1実施形態と同様の構成である。各LED301〜312は遮光板16から斜め下方に向かって環状に配置される。円錐プリズム60は下方に突出した円錐形のプリズム62と、一部が円形穴20から上方に突出した円錐台形のプリズム64とを備える。
【0062】指向軸が一点破線で示されるように、LED304から出射した光はまずプリズム64の下方側面に入射し、プリズム62の側面62aにより内部反射する。次にプリズム64の側面64aにより内部反射した光は、側面64aの円形穴20から突出した部分から射出する。この時、射出方向はLEDの入射方向とほぼ反対になる。2つのプリズム62、64の頂角は内面反射時に全反射をするように設定される。第6実施形態においても、第2実施形態と同様、防水・防塵効果が高められる。
【0063】以上のように本発明の各実施形態によれば、複数の光源を環状に配置させることにより基準点を強調させるので、基準点が容易に識別できる。従って基準点の正確な位置が得られるので、水平面を基準に画像を幾何学演算により求めることにより、演算値の信頼性を高めることができる。
【0064】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、視認性の高い点光源装置およびターゲットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である写真測量用ターゲットと被写体とカメラとの位置関係を示す斜視図である。
【図2】第1及び第2のカメラ位置から撮影したときの画像を示す図である。
【図3】基準点とその像点と撮影レンズの後側主点位置との位置関係を3次元座標で示す図である。
【図4】基準形状を含む平面に基づく3次元座標を示す図である。
【図5】2枚の画像から被写体の平面図を得るステップを示すフローチャートである。
【図6】図1に示す写真測量用ターゲットを分解して示す拡大斜視図である。
【図7】図1に示す写真測量用ターゲットの点光源装置を示す平面図である。
【図8】図1に示す写真測量用ターゲットの点光源装置を示す部分断面図である。
【図9】図8に示す点光源装置をLEDの指向特性を示す図である。
【図10】図1に示す写真測量用ターゲットの回路構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図12】図11に示す点光源装置の円筒部材を示す斜視図である。
【図13】図11に示す点光源装置のLEDと円筒部材を共に示す部分平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【図17】本発明の第6実施形態である点光源装置を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ターゲット
12 枠材
14 底板
16 遮光板
20、22、24 円形穴
30、32、34 点光源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、前記光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、前記複数の光源の各指向軸が一点で交差するように、前記複数の光源が配置されたことを特徴とする点光源装置。
【請求項2】 記録画像に基づいて任意の原点に対する被写体の座標を求める写真測量に用いられる写真測量用ターゲットであって、基準平面を定義する少なくとも3個の基準点と、前記基準点に対応し、前記基準点をそれぞれ強調する少なくとも3個の点光源装置とを備え、この点光源装置が、指向性を有し指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、前記光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、前記複数の光源の各指向軸が基準点で交差するように配置されたことを特徴とする写真測量用ターゲット。
【請求項3】 前記光源から射出された光が前記指向軸に近いほど光度が漸増し、前記指向軸における光度が最も高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点光源装置。
【請求項4】 前記複数の光源が環状に配置されることを特徴とする請求項3に記載の点光源装置。
【請求項5】 前記各指向軸が交差する点を通り、前記点光源装置が載置される面に垂直な軸に関して、前記光源から前記絞りを介して射出される光が、前記軸周りの全方向から視認できることを特徴とする請求項4に記載の点光源装置。
【請求項6】 周囲の光量を検出する光検出手段が設けられ、前記光源の射出光量が、光検出手段から検出された光量に応じて制御されることを特徴とする請求項3に記載の点光源装置。
【請求項7】 前記絞りが前記光源から射出される光を、前記光源の輝度が最も高くなるように絞ることを特徴とする請求項3に記載の写真測量用ターゲット。
【請求項8】 前記絞りが遮光板に形成された円形穴であることを特徴とする請求項7に記載の点光源装置。
【請求項9】 前記絞りの近傍に、防水防塵の透明部材が設けられることを特徴とする請求項7に記載の写真測量用ターゲット。
【請求項10】 前記透明部材が、前記光源と前記絞りとの間に設けられた円筒部材であり、点光源の光を拡散させることを特徴とする請求項9に記載の点光源装置。
【請求項1】 指向性を有し、指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、前記光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、前記複数の光源の各指向軸が一点で交差するように、前記複数の光源が配置されたことを特徴とする点光源装置。
【請求項2】 記録画像に基づいて任意の原点に対する被写体の座標を求める写真測量に用いられる写真測量用ターゲットであって、基準平面を定義する少なくとも3個の基準点と、前記基準点に対応し、前記基準点をそれぞれ強調する少なくとも3個の点光源装置とを備え、この点光源装置が、指向性を有し指向軸に対して所定の角度範囲で光が射出する複数の光源と、前記光源に対し光が射出する側に設けられた絞りとを備え、前記複数の光源の各指向軸が基準点で交差するように配置されたことを特徴とする写真測量用ターゲット。
【請求項3】 前記光源から射出された光が前記指向軸に近いほど光度が漸増し、前記指向軸における光度が最も高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点光源装置。
【請求項4】 前記複数の光源が環状に配置されることを特徴とする請求項3に記載の点光源装置。
【請求項5】 前記各指向軸が交差する点を通り、前記点光源装置が載置される面に垂直な軸に関して、前記光源から前記絞りを介して射出される光が、前記軸周りの全方向から視認できることを特徴とする請求項4に記載の点光源装置。
【請求項6】 周囲の光量を検出する光検出手段が設けられ、前記光源の射出光量が、光検出手段から検出された光量に応じて制御されることを特徴とする請求項3に記載の点光源装置。
【請求項7】 前記絞りが前記光源から射出される光を、前記光源の輝度が最も高くなるように絞ることを特徴とする請求項3に記載の写真測量用ターゲット。
【請求項8】 前記絞りが遮光板に形成された円形穴であることを特徴とする請求項7に記載の点光源装置。
【請求項9】 前記絞りの近傍に、防水防塵の透明部材が設けられることを特徴とする請求項7に記載の写真測量用ターゲット。
【請求項10】 前記透明部材が、前記光源と前記絞りとの間に設けられた円筒部材であり、点光源の光を拡散させることを特徴とする請求項9に記載の点光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図12】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8】
【図12】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図10】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開平10−307025
【公開日】平成10年(1998)11月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−132795
【出願日】平成9年(1997)5月7日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)
【公開日】平成10年(1998)11月17日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)5月7日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)
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