説明

点検口

【課題】内装作業性に優れるとともに、意匠の良好な点検口の提供を目的とする。
【解決手段】設置基部1に開設される開口2の周縁部に固定されて点検用開口3を形成する外枠本体4から設置基部1の表面に受けフランジ5を張り出す外枠6と、
前記点検用開口3内に遊嵌され、受けフランジ5の表面に覆いフランジ7を張り出す内枠8とを有し、
前記受けフランジ5は、点検用開口3内での内枠8の最大位置ずれ量δよりも大きく覆いフランジ7から外方に張り出し、受けフランジ5の覆いフランジ7周りでの露出により内枠8の外枠6に対する位置ずれを視認されにくくして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点検口に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、点検口としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例は天井点検口であり、天井面に形成された開口部に取り付けられる外枠と、この外枠内に収められる内枠とを有する。外枠には下端外側に全周に亘って鍔部が形成され、この鍔部の上面が開口部周りの天井面に当接される。一方、内枠の下端外側にも同様に全周に亘って鍔部が形成され、外枠の鍔部よりも幅が大きな水平の板部の上面にパッキンが装着されるとともに、上記水平な板部の周囲から立ち上がるようにして他の板部が形成される。外枠内に内枠を収めた状態で内枠の鍔部は外枠の鍔部に被さり、パッキンにより内枠と外枠との気密が保持される。
【特許文献1】特許第2690281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来例のように内枠の鍔部を外枠の鍔部よりも外側に飛び出させると、点検口の周囲に壁紙を貼るときに内枠の鍔部が邪魔になってしまい、内枠を開けて壁紙を貼らなければならなくなるために作業性が悪くなる。
【0004】
また、これを防ぐために内枠の鍔部を外枠の鍔部から飛び出さないようにきれいに重ねた場合には、以下の問題が生じる。すなわち、上述したように外枠内に内枠を収める場合、外枠と内枠との間には開閉操作等のために、あるいは各構成部品の許容範囲内での誤差寸法の集積により、多少の隙間が存在し、これによって内枠の外枠内での位置に不規則なずれが生じやすくなる。この不規則なずれは内枠と外枠とのそれぞれの鍔部の重なりを不均一にし、外枠の鍔部の一部が内枠の鍔部から露出すれば点検口の意匠性を悪くする。
【0005】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、内装作業性に優れるとともに、意匠の良好な点検口の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
設置基部1に開設される開口2の周縁部に固定されて点検用開口3を形成する外枠本体4から設置基部1の表面に受けフランジ5を張り出す外枠6と、
前記点検用開口3内に遊嵌され、受けフランジ5の表面に覆いフランジ7を張り出す内枠8とを有し、
前記受けフランジ5は、点検用開口3内での内枠8の最大位置ずれ量δよりも大きく覆いフランジ7から外方に張り出し、受けフランジ5の覆いフランジ7周りでの露出により内枠8の外枠6に対する位置ずれを視認されにくくされる点検口を提供することにより達成される。
【0007】
本発明によれば、内部に点検用開口3を形成する外枠本体4には、点検用開口3内に遊嵌される内枠8の覆いフランジ7よりも大きく外側に張り出す受けフランジ5が形成される。受けフランジ5の覆いフランジ7外側への張り出し量は、内枠8の点検用開口3内での最大位置ずれ量δよりも大きく設定され、したがって内枠8がずれたとしても、覆いフランジ7の外周には受けフランジ5が必ず縁取るように露出する。
【0008】
受けフランジ5と覆いフランジ7との重なり方の不均一による意匠的な違和感は、少なくとも受けフランジ5あるいは覆いフランジ7のいずれか一方が周縁に不均一に露出するようなことがなければ目を凝らさない限りあまり体感されにくく、受けフランジ5の覆いフランジ7周縁での露出を確保すれば、点検口の意匠性が実質的に良好に維持できる。また、受けフランジ5の周囲を縁取るように覆いフランジ7を露出させることにより、段付きの縁取りの装飾を施したような美観が表れる。
【0009】
したがって本発明によれば、内枠8の覆いフランジ7は外枠6の受けフランジ5の内方に配置され、受けフランジ5の周縁に周縁を合わせて壁紙を貼り付ける場合にも内枠8を外す必要がないことから、壁紙の貼り付け作業性を向上させることができる。また、内枠8の位置ずれが生じても受けフランジ5による覆いフランジ7の縁取りが確保されているために点検口の意匠が実質的に損ねられることはなく、点検口の開閉操作性と意匠性を同時に良好にすることができ、点検口の寸法精度管理を軽減することができる。さらに、内枠8の覆いフランジ7を外枠6の受けフランジ5の表面に張り出させることにより、フランジ間でパッキン等を挟み付けることができ、気密性を容易に高めることが可能になる。
【0010】
受けフランジ5の覆いフランジ7外方への張り出し量と内枠8の点検用開口3内での最大位置ずれ量δとの差は、通常時に点検口を見るときの距離、違和感を視認しやすい割合や寸法を考慮して適宜決定することができる。例えば、天井点検口であれば眺めるようなやや離れた距離になるために張り出し量と最大位置ずれ量δとの差を比較的大きくとらなくとも意匠を良好にすることができるし、また、最大位置ずれ量δが張り出し量に対して非常に小さい割合であれば、ほぼ位置ずれを見分けることはできなくなる。
【0011】
また、点検用開口3内の中央、すなわち正規の位置に内枠8をガイドするガイド部9を点検用開口3内に設ければ、受けフランジ5の露出幅をその周囲にほぼ均一化させることが可能で、点検口の意匠性をより高く維持することができる。この場合、ガイド部9は、内枠8の開放動作方向に行くに従って点検用開口3の内壁面に漸次近接する傾斜面により構成すれば、点検口のスムーズな開閉を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、内装作業性に優れるとともに、意匠の良好な点検口を提供することができ、よりよい内装を造り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1ないし図5に本発明の実施の形態を示す。この実施の形態は本発明を天井点検口に適用した場合を示すもので、天井点検口Aは、天井(設置基部1)に開設される開口2の周縁部に固定される外枠6と、この外枠6内に装着される内枠8とを有する。
【0014】
図2に示すように、外枠6は、アルミニウムの押し出し成形品からなる枠材の四本を枠組みして形成される平面視正方形の枠体で、各枠材間はL字状のコーナーピース6aを外側からリベットで止めて連結される。この外枠6は、平面視において正方形をなすように縦壁を四方に立て並べて略筒状に形成される外枠本体4の下端縁から外側に向かって受けフランジ5を張り出して形成される。
【0015】
外枠本体4は設置対象である天井1の見切りに対峙し、内部に点検用開口3を形成するもので、天井1への固定を考慮して天井材の厚さよりもやや大きい程度の高さ寸法に形成される。外周面には上述したコーナーピース6aを嵌合固定するためのスロット27が形成され、内周面には後述する吊り金具11による支持のためのスロット27’が形成される。また、対向する一対の縦壁には、互いに隣接する一の縦壁に近接する端部寄りの位置において、内枠8と連結する回転軸12を通すための軸受け口13が開設される。この軸受け口13は、図4(a)等に示すように倒J字形状で、縦壁の長手方向に沿って長い長孔13a.の端縁に大径の挿入孔13bを備えるとともに、この長孔13aから上記位置の縦壁側において折り返すようにして延設され、長孔13aよりもやや短く形成されるスライド孔13cを備える。
【0016】
受けフランジ5は、後述する覆いフランジ7との衝接により内枠8を外枠本体4の内部に収容できるようにするもので、外枠本体4から直角に張り出して形成される。外枠本体4からの張り出し寸法は、覆いフランジ7との衝接、天井1の見切りを隠す化粧材としての役目等を考慮して適宜決定される。また、天井1の開口2との位置ずれを防止するために上面には突起が形成され、この突起の外側には、図3等に示すように、天井材との接触によって気密性を高めるために上面に周方向に連続してパッキン14が取り付けられる。
【0017】
一方、内枠8は、アルミニウムの押し出し成形品からなる枠材の四本を外枠6よりもひとまわり小さい正方形になるように枠組みした枠体であり、リベットによって固定されて枠材間を連結するコーナーピース8aは外枠6の反対側となる内側に配置される。この内枠8は内部に天井材等の適宜の蓋板15を取り付けて点検用開口3を開閉できるようにするためのもので、外枠本体4の内面にほぼ重なるようにして対向可能な筒状の内枠本体16と、この内枠本体16の下端縁から内方に向かって張り出す内向きフランジ17と、外方に向かって張り出す上述した覆いフランジ7とを有する。
【0018】
内枠本体16は、蓋板15を保持し、蓋板15の周縁を隠して保護するもので、この実施の形態においては外枠本体4内部に収容された状態から回転によって点検用開口3を開放できるようにするために、外枠本体4の内壁面との間に回転軌跡を考慮した一定のクリアランスを外周側に隔てることができる外形サイズに形成される。平面視において正方形をなすように縦壁を四方に立て並べて形成され、その内周面には、上述したコーナーピース8aを嵌合固定するためのスロット27”が形成されるとともに、蓋板15を上方から抑えるためのL字状の押さえ金具18が取り付けられる。
【0019】
また、外枠本体4における軸受け口13の配置に対応して、内枠本体16の対向する一対の縦壁のそれぞれの外面には、回転レバー19が垂直回転自在に装着される。回転レバー19は、図4(a)等に示すように、板状のレバー片19aの両端部に芯をずらすようにして回転軸12、12’を表裏反対向きに立設させたクランク状の部材であり、内枠本体16に線対称に配置されて対をなすことによりそれぞれの一方の回転軸12、12が同一直線上を中心に回転し、この直線とずれた位置でそれぞれの他方の回転軸12’、12’を同一直線上に並べる。
【0020】
この回転レバー19の対は、装着される各々の縦壁に直角な直線上を中心にして回転し、外枠本体4の対向する一対の縦壁のそれぞれに形成される軸受け口13、13に他方の回転軸12’12’を連結させることにより、内枠本体16を外枠本体4に対してそれぞれの特定の位置の縦壁を中心にするようにして複合的に回転できるようにされる。
【0021】
さらに、回転レバー19による外枠6に対する回転を制御するために、内枠本体16の回転レバー19による回転軸12に対して直交する縦壁の対には、一方に受け金具20が、他方に開閉レバー21が装着される。受け金具20は、図3等に示すように、内枠本体16の外面に固定される固定片20aの上端から内枠本体16の外側に向かって水平片20bを直角に延設し、さらにこの水平片20bの先端から外側に向かってく字状をなすガイド片20cを延設して形成される。この受け金具20は内枠本体16の縦壁に複数設置されて外枠6に対する内枠8の傾斜が禁止される。
【0022】
また、開閉レバー21は、図3等に示すように、内枠本体16の下面に露出するねじ状の頭部から内枠本体16外面に沿って上方まで延びる操作軸21aの先端、すなわち外枠本体4の上面に相当する位置に係止片21bを直交方向に張り出して形成される。ねじ状の頭部を介して操作軸21aを回転させることにより、係止片21bが外枠本体4の上面に飛び出す閉扉位置と、外枠本体4の内方に退避する開扉位置との間で移動する。この係止片21bの外枠本体4側に飛び出す側の辺縁は傾斜面にされ、外枠本体4が上方に多少ずれていたときにはその位置を修正して係止できるようにされる。なお、図3において21cは操作軸21aを回転自在に内枠8に固定するねじ受け、21dは操作軸21aを内枠本体16の外面に固定する操作軸止めである。
【0023】
また、内向きフランジ17は、蓋板15の周縁を支持するもので、内枠本体16から直角に張り出して形成される。張り出し寸法は蓋板15の支持、蓋板15の見切りを隠す化粧材としての役目等を考慮して適宜決定される。また、蓋板15との接触によって気密性を高めるために、図3等に示すように、上面には周方向に連続してパッキン14’が取り付けられる。
【0024】
さらに、覆いフランジ7は、上述した受けフランジ5との衝接により内枠本体16を外枠本体4の内部に収容できるようにするもので、内向きフランジ17の反対向きに内枠本体16から張り出して形成される。内枠本体16からの張り出し寸法は、内枠本体16と外枠本体4との間の上述したクリアランスによる内枠本体16の外枠本体4内での位置ずれ、並びに内枠8や外枠6の単体、およびこれらの組み付けの際に要求される許容範囲内での寸法誤差の集積に基づいて決定される最大位置ずれ量δを考慮して、少なくとも内枠本体16と外枠本体4との隙間を確実に隠すことができる程度にされる。すなわち、内枠本体16の周囲にクリアランスが均等に形成される場合以外に、本来対向する縦壁の各々の外側に形成されるはずのクリアランスが一方の縦壁の外側に偏倚した場合にもこれを覆うことができるように、少なくとも正規のクリアランスの倍以上で、かつ、これに寸法誤差の集積を合算した下限寸法が設定される。
【0025】
また、この張り出し寸法は、上述した下限寸法により受けフランジ5表面に張り出すことになる覆いフランジ7の外周縁が、受けフランジ5の外周縁との間に受けフランジ5外周縁部の露出を確保するように上限寸法が設定される。上限寸法は、上述したクリアランスの偏倚、寸法誤差の集積に基づいて決定される最大位置ずれ量δを考慮して、正規のクリアランスの倍以上で、かつ、これに寸法誤差の集積を合算した間隔を受けフランジ5の周縁と覆いフランジ7の周縁との間に確保するように決定され、これにより受けフランジ5は、その周縁を覆いフランジ7の周縁よりも正規のクリアランスの倍以上で、かつ、これに寸法誤差の集積を合算した寸法だけ外側に張り出し、内枠8が外枠6に対して位置ずれを生じても、平面視において常に外枠6の受けフランジ5の周縁を縁取るように露出することが確保される。
【0026】
さらに、以上の覆いフランジ7の上面、すなわち受けフランジ5との当接面には、受けフランジ5との接触によって気密性を高めるために、図3等に示すように、外周縁部に周方向に連続してパッキン14”が取り付けられる。
【0027】
以上の外枠6と内枠8は、外枠6の軸受け口13に内枠8の回転レバー19の外枠用回転軸12’を挿入し、外枠6と内枠8を回転レバー19により回転自在に連結して形成される。図1(a)に示すように、内枠8は、外枠6の上面に受け金具20の水平片20bを乗せるとともに、開閉レバー21を閉扉位置にすることにより、受けフランジ5と覆いフランジ7とが衝接して外枠本体4内方に内枠本体16が収容される収容姿勢に維持され、ここから操作軸21aを回転操作して開閉レバー21を開扉位置にすることにより、図1(b)に示すように外枠6に対して直角になる突出姿勢まで回転可能となり、これらの姿勢が蓋板15による点検用開口3の閉塞と開放とに対応する。
【0028】
このとき、回転レバー19は、図1および図5(b)に示すように、レバー片19aを収納姿勢において装着される内枠8の縦壁の端部から中央部に向かって受けフランジ5とほぼ平行な姿勢から、突出姿勢における直交する姿勢まで回転し、また、外枠用回転軸12’をスライド孔13c内で移動させ、レバー片19aの回転とスライド孔13c内での外枠用回転軸12’のスライドによる内枠8と外枠6とのそれぞれの回転軸12の相対位置の変位により、内枠8の回転軌跡が小さくされる。また、受け金具20のガイド片20cは内枠本体16の回転に伴って外枠本体4の上面、内面に対して内枠本体16の内方に向かって斜めになる姿勢をとって摺接し、内枠8の小さい回転軌跡での回転をスムーズにする。
【0029】
以上のように構成される天井点検口Aの天井1の開口2への取り付け、開閉動作について以下に詳述する。天井点検口Aの取り付けに際しては、天井1に開口2を開設し、また同時に、施工現場に搬入される枠材を枠組みして内枠8および外枠6を形成するとともに、これらを開口2に固定してなされる。
【0030】
まず最初に、天井1に開口2を開設するとともに、枠材を組み付けて内枠8を形成し、天井1に開口2を開設した際に生じる開口2のサイズにほぼ合致する天井材の切れ端を適宜寸法調整して形成される蓋板15を内枠8の内部に固定する。蓋板15は、内枠本体16に周縁を包囲され、内向きフランジ17に周縁部を支承されるとともに、押さえ金具18により上面を押さえられる。押さえ金具18による押圧によってパッキン14’が潰れて蓋板15と内枠8との気密性が確保される。
【0031】
天井1の開口2への天井点検口Aの取り付けは、図3に示すように、開口2周縁部に上述した吊り金具11によって外枠6を吊り下げ固定してなされ、図3に示すように、吊り金具11は野縁22に図示しない取付用チャンネル等を介して天井1裏に適宜固定される。この吊り金具11は、野縁22に固定される団扇ボルト11aに装着される倒J字状の中継金具11bを介して外枠本体4の内側のスロット27’に挿入されるあて板11cを支持し、これにより外枠6を吊り下げ固定する。予め受けフランジ5を開口2周縁部の天井1表面に張り出しておくことにより、団扇ボルト11aを回して中継金具11bを上方に引き上げれば、受けフランジ5上のパッキン14が天井1面との間で潰れて外枠6と天井1との気密性が確保される。
【0032】
この外枠6の開口2周縁部への取り付けは、枠材を枠組みして外枠6を形成する作業と並行して行われ、この枠組みの際に、内枠8に取り付けられた回転レバー19の外枠用回転軸12’が軸受け口13の挿入口13bからスライド孔13c内に挿入されて外枠6に係止される。これにより、図3に示すように、枠組みが完了して外枠6が完成すると同時に外枠6が開口2周縁部に固定され、さらに、この外枠6に対して内枠8が回転自在に連結され、天井点検口Aの完成と同時にその開閉が可能になる。
【0033】
天井点検口Aの閉塞は、開閉レバー21を開扉位置にした上で、覆いフランジ7と受けフランジ5が衝接するまで内枠8を外枠6内に押し込み、収納姿勢にすることによりなされる。この状態で回転レバー19を閉扉位置にすれば、内枠本体16がその上面を受け金具20の水平片20bと開閉レバー21の係止片21bにより、その下面を内向きフランジ17により挟まれて内枠8は収納姿勢を維持し、このときパッキン14”が覆いフランジと内向きフランジ5との間で潰されてこれらの間での気密性が確保される。なお、内枠8を突出姿勢から収納姿勢に移行させる際には、移行途上において内枠8が外枠6に対して傾いた状態で予め受け金具20を外枠本体4の上面に係止させることにより、回転レバー19やスライド孔13cによる変則的な回転軌跡を適宜拘束して容易に内枠8を収納姿勢にすることができる。
【0034】
収納姿勢において、外枠6の受けフランジ5の周縁部は内枠8の覆いフランジ7の先端から露出し、室内側には、正方形の蓋板15の周囲を覆いフランジ7が額縁のように縁取り、さらにこの覆いフランジ7の周囲を受けフランジ5が縁取る意匠性の高い体裁が表れる。また、内枠8は、外枠6との間のクリアランスとスライド孔13cの存在、および各部品の許容範囲内での寸法誤差の集積により外枠6内で位置ずれを生じることが考えられるが、この最大位置ずれ量δよりも内向きフランジ17の覆いフランジ7からの張り出し量が大きいために、縁取りが確保される。
【0035】
一方、天井点検口Aの開放は上述とは逆の手順であれば足り、開閉レバー21を操作すれば内枠8は自重によって収納姿勢から突出姿勢に移行する。回転レバー19のレバー片19aの長さによって、内枠8の回転軌跡が小さくなり、また、突出姿勢の内枠8が外枠6の端部に近接して点検用開口3が大きくなる。
【0036】
また、この実施の形態において、上述した最大位置ずれ量δをより小さくするために、外枠本体4の内面にはガイド部9が形成される。ガイド部9は内枠8の突出姿勢側から収納姿勢側に行くに従って、すなわち外枠本体4の上方に行くに従って内方に突出する傾斜面23を有し、内枠8を傾斜面23により点検用開口3内の中央部にガイドする。このガイド部9は、外枠本体4の内側にガイド体24を取り付けて形成される。
【0037】
ガイド体24は、図4に示すように、外枠本体4の下方から上方に行くに従って外枠本体4内方に漸次突出するように上述した傾斜する傾斜面23と、この傾斜面23の上端から点検用開口3の内壁面と平行に延びる平面25とを外枠本体4の内部に形成するブロック状の部材であり、例えば合成樹脂材等適宜の弾性体を射出成形して形成される。また、ガイド体24は、上記傾斜面23をほぼ延長するようにして片持ち梁状に平面25の内側に飛び出すばね片26を備える。このガイド体24は,図4(a)等に示すように、上下端を外枠本体4の内側のスロット27’に係止させるとともに、外枠本体4に穿孔される取付穴に裏面の膨隆部24aを嵌入させて外枠本体4に対して固定される。
【0038】
したがって突出姿勢から収納姿勢にする際に内枠8が外枠本体4の中央部からずれていたときには、ガイド体24の傾斜面23およびばね片26が内枠本体16の外面に摺接し、内枠8を外枠本体4の中央部にガイドする。また、収納姿勢においては、平面およびばね片26が内枠本体16の中央部からの過剰な位置ずれを規制する。
【0039】
以上のガイド体24は、外枠本体4における内枠8による開放側端縁に配置され、図4(a)に2点鎖線で示すように、スライド孔13cで許容された回転軸12に対する直交方向のずれを制限し、また、外枠本体4における回転軸12の両端側の辺縁にもそれぞれ配置され、図4(b)に示すように、回転レバー19により生じやすい回転軸12方向のずれを制限する。また、内枠8の収納姿勢から突出姿勢への移行時には、一時的にばね片26が撓むことにより内枠8の回転軌跡をやや大きく確保することができる。
【0040】
したがって、受けフランジ5は、図4(a)および(b)に示すように、上記ばね片26に衝接しない範囲が点検用開口3内での最大位置ずれ量δとなり、覆いフランジ7の周縁からの突出量Dよりも最大位置ずれ量が小さいために、点検用開口Aの閉扉状態において常時、覆いフランジ7の外周に全周に渡って露出する。したがって図5(a)に示すように内枠8がやや紙面左側に位置ずれしていたとしても、室内側からの点検用開口Aの外観は受けフランジ5の覆いフランジ7に対する縁取りにより良好に維持され、内枠8の点検用開口3内での位置ずれをほとんど意識させることはない。
【0041】
なお、以上においては外枠6等の部品の許容範囲内での寸法誤差を集積して最大位置ずれ量δを決定する場合を示したが、最大位置ずれ量δを経験などに基づいて予測して決定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を示す全体斜視図で、(a)は閉扉状態を示す図、(b)は開扉状態を示す図である。
【図2】本発明を示す分解斜視図である。
【図3】天井への取り付け状態を示す要部断面図である。
【図4】内枠の位置ずれと受けフランジの露出の関係を説明する図で、(a)は回転軸に対する直交方向の要部断面図、(b)は回転軸方向の要部断面図ある。
【図5】設置基部との関係を示す図で、(a)は閉扉状態の外観、(b)は内枠の開扉動作を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 設置基部
2 開口
3 点検用開口
4 外枠本体
5 受けフランジ
6 外枠
7 覆いフランジ
8 内枠
9 ガイド部
δ 最大位置ずれ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置基部に開設される開口の周縁部に固定されて点検用開口を形成する外枠本体から設置基部の表面に受けフランジを張り出す外枠と、
前記点検用開口内に遊嵌され、受けフランジの表面に覆いフランジを張り出す内枠とを有し、
前記受けフランジは、点検用開口内での内枠の最大位置ずれ量よりも大きく覆いフランジから外方に張り出し、受けフランジの覆いフランジ周りでの露出により内枠の外枠に対する位置ずれを視認されにくくされる点検口。
【請求項2】
前記外枠本体内には、内枠をガイドして受けフランジの覆いフランジからの露出幅を点検用開口周りにほぼ均一化させるガイド部が形成される請求項1記載の点検口。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−121201(P2008−121201A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303204(P2006−303204)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)