説明

点火装置

【課題】点火電極での煤付着による不着火の予知を容易に行えるようにすることを目的としている。
【解決手段】点火電極2,2と、この点火電極2,2へ電圧を供給する点火トランス3と、前記点火電極2,2の煤付着を判定する煤付着判定手段4とを備えることを特徴とする。また、前記煤付着判定手段4が、前記点火トランス3の一次側の電力を検出する電力検出手段7を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラ等の燃焼機器に用いるスパーク式点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の点火装置において、スパークの発生状況を確認するために、電圧の変化に基づいて点火装置の異常を判定する技術が知られている。(特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開2002−13733号公報
【0004】
特許文献1における点火装置は、点火電極に付着する油膜等の汚れを検出することができる。しかしながら、この特許文献1は、不着火が起こる原因の一つである前記点火電極の煤付着を判定することができず、前記点火電極の煤付着による不着火を予知することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、点火電極での煤付着による不着火の予知を容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、点火電極と、この点火電極へ電圧を供給する点火トランスと、前記点火電極の煤付着を判定する煤付着判定手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記煤付着判定手段が、前記点火トランスの一次側の電力を検出する電力検出手段を有することを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成要件に加えて、前記煤付着判定手段が、前記点火トランスの二次側の電圧を検出する電圧検出手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、点火電極の煤付着を予知することができ、未然に不着火を防止することができる。また、点火装置のメンテナンス性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の点火装置は、特にボイラや焼却炉等の燃焼機器に備えるスパーク式点火装置において適用される。
【0011】
この実施の形態は、点火電極と、この点火電極へ高電圧を供給する点火トランスと、前記点火電極の煤付着を判定する煤付着判定手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
この実施の形態において、前記点火トランスは、前記点火電極に対して高圧の交流電圧を印加することで、前記点火電極にてスパークを生じさせる。そして、前記煤付着判定手段は、前記点火電極にて煤が付着しているか否かを判定する。その結果、不着火原因の一つである前記点火電極の煤付着を予知することで、前記点火装置での不着火を未然に防止
することができる。
【0013】
つぎに、この実施の形態の構成要素について説明する。まず、前記点火電極は、好ましくは、2本の点火電極を用いるが、そのうちの1本を接地電極としてバーナノズルとすることができる。
【0014】
前記点火トランスは、前記点火電極に電圧を印加し、前記点火電極の先端間にスパークを発生させるものである。
【0015】
前記煤付着判定手段は、前記点火電極に煤が付着しているか判定するものである。前記煤付着判定手段は、好ましくは、前記点火トランスの一次側の電力を検出する電力検出手段によって煤付着を判定する構成とするが、前記点火トランスの二次側の電圧を検出する電圧検出手段によって煤付着を判定する構成とすることができる。
【0016】
まず、前記電力検出手段によって煤付着を判定する構成について説明する。前記電力検出手段は、前記点火トランス一次側の電力値の変化を検出するものである。前記煤付着判定手段は、前記電力検出手段の一次側電力値に基づいて、煤の付着の有無を判定する。すなわち、前記点火電極にて煤が付着している場合の前記電力検出手段の一次側電力値は、所定の範囲内に収まっている。しかしながら、前記点火電極に煤が付着していない場合の前記電力検出手段の一次側電力値は、前記所定の範囲よりも高い値となる。したがって、前記煤付着判定手段は、前記点火トランス一次側の電力値の変化を検出することにより、前記点火電極で煤が付着しているか否かの判定をすることができる。
【0017】
前記電圧検出手段によって煤付着を判定する構成について説明する。前記電圧検出手段は、前記点火トランスの二次側、すなわち前記点火電極側の電圧の変化を検出するものである。前記煤付着判定手段は、前記電圧検出手段の二次側電圧値に基づいて、前記点火電極での煤付着の有無を判定する。前記点火装置において、前記点火電極における電圧の変化と煤付着の状況とは、密接に関係しているため、前記点火電極における電圧の変化を監視することにより、煤付着状況の判定をする。前記点火電極にて煤が付着している場合の前記電圧検出手段の電圧値は、所定の範囲内に収まっている。しかし、前記点火電極に煤が付着してしない場合の前記電圧検出手段の電圧値は、前記所定の範囲よりも高い値となる。したがって、前記煤付着判定手段は、前記点火トランス二次側の電圧値の変化を検出することにより、前記点火電極で煤が付着しているか否かの判定をすることができる。
【0018】
さらに、前記煤付着判定手段は、光を検出する光センサによって煤付着を判定する構成にすることができる。この光センサは、前記点火電極でのスパーク時、煤が一時的に燃焼することで発生する光を検出することが可能なように配置される。そして、この煤付着判定手段は、光を受光した前記光センサの信号を受けて、前記点火電極に対して煤が付着していていることを判定する。これにより、未然に不着火を防止することができる。
【0019】
以上のように、この実施の形態によれば、前記点火電極に煤が付着している場合、前記煤付着判定手段により不着火原因である煤付着を予知することができるため、未然に不着火を防止することができる。また、ボイラや焼却炉等の燃焼機器をメンテナンスする際の助けとなる。
【実施例1】
【0020】
この発明の実施例における点火装置は、ボイラに適用されている。前記ボイラの構成としては、周知の構造のものであるので、詳細な説明について省略する。
【0021】
以下、この発明の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明
の実施例1の点火装置の概略構成図である。図2は、この発明の実施例1の制御手順を示すフローチャートである。
【0022】
前記ボイラ(図示省略)に設置される点火装置1は、一対の点火電極2,2と、この点火電極2,2へ高電圧を供給する点火トランス3と、この点火電極2,2の煤付着を判定する煤付着判定手段4とから主に構成される。
【0023】
前記点火電極2,2は、高電圧に昇圧された電流を放電することによりスパークを発生させるものである。前記点火電極2,2は、先端部を対向させた状態で取付けられている。
【0024】
前記点火トランス3は、一次側の電源を昇圧し、昇圧した二次側の電圧を前記点火電極2,2に供給するものである。前記点火トランス3は、交流電源(図示省略)と接続されており、前記点火電極2,2と前記点火トランス3との間は、2本の第一配線5,5によって接続されている。
【0025】
前記煤付着判定手段4は、電流検出手段6と、電力検出手段7と、制御器8とにより構成され、前記点火電極2,2の煤付着を判定する機能を有している。前記電流検出手段6は、前記点火トランス3の励磁中における一次側電流値を検出するもので、前記点火トランス3と前記制御器8との間の2本の第二配線9,9のうちの1本に接続されている。
【0026】
前記電力検出手段7は、前記点火トランス3の励磁中における一次側電力値を検出するもので、前記第二配線9,9に接続されている。
【0027】
前記制御器8は、前記煤付着判定手段4として機能するだけでなく、前記電流検出手段6および前記電力検出手段7からの検出値に基づいて、前記点火電極2,2のミススパークを判定するミススパーク判定手段として機能するとともに、前記点火トランス3の二次側の配線、すなわち前記第一配線5,5の短絡を判定する短絡判定手段としても機能する。また、前記制御器8は、各判定結果に基づいて、バーナ10への燃料供給を調整する電磁弁11と、使用者に対して各判定結果を伝える報知機12とを制御するように構成されている。
【0028】
以下に、この実施例1の不着火原因の判定を図2にしたがって説明する。まず、前記点火電極2,2でのミススパークの判定について説明する。まず、前記点火トランス3は、ステップS1にて、交流電源(図示省略)からの給電により励磁され、前記点火電極2,2へのスパーク動作に入る。そして、ステップS2にて、前記電流検出手段6は、一次側電流値をT1時間検出する。そして、前記制御器8は、T1時間内において、一次側電流値がk1(k1の値は0.5Aとする。)以下である場合、前記点火電極2,2にてミススパークが発生していると判定する(ステップS3)。また、前記制御器8は、ミススパークの判定をすると、前記報知機12にて警報を出力し、前記点火トランス3への給電を停止する(ステップS4)。
【0029】
前記制御器8は、T1時間内において、前記電流検出手段6での一次側電流値がk1以上である場合、前記点火電極2,2にて正常にスパークが発生したと判定する。そして、ステップS5に移行する。
【0030】
つぎに、前記点火トランス3の二次側である前記第一配線5,5の短絡の判定について説明する。前記点火トランス3を励磁している時間帯において、前記電力検出手段7は、一次側電力値を検出する(ステップS5)。そして、前記制御器8は、一次側電力値がk2(k2の値は30Wとする。)以下である場合、前記第一配線5,5の短絡が発生して
いると判定する(ステップS6)。また、前記制御器8は、前記第一配線5,5の短絡の判定をすると、前記報知機12にて警報を出力し、前記点火トランス3への給電を停止する(ステップS7)。
【0031】
前記制御器8は、前記電力検出手段7での一次側電力値がk2以上である場合、前記第一配線5,5の短絡が無く、正常であることを判定する。そして、ステップS8に移行する。
【0032】
つぎに、前記点火電極2,2の煤付着の判定について説明する。前記点火トランス3を励磁している時間帯において、前記電力検出手段7は、一次側電力値を検出する(ステップS8)。そして、前記制御器8は、一次側電力値がk2以上、k3(k3の値は50Wとする。)以下であれば、前記点火電極2,2に煤が付着していると判定する(ステップS9)。そして、前記制御器8は、前記報知機12にて予知情報を出力する(ステップS10)。ここで云う予知情報とは、警報とは異なり、前記点火トランス3への給電を停止することなく、使用者に対する予知のみを意味する。予知情報出力後、前記制御器8は、ステップS11にて、前記電磁弁11を開くことにより、前記バーナ10へ燃料が供給されて、着火動作に入る。
【0033】
前記制御器8は、前記電力検出手段7での一次側電力値がk3以上である場合、前記点火電極2,2に煤が付着していないことを判定して、ステップS11に移行する。
【0034】
このように、この実施例1によれば、前記制御器8が前記電流検出手段6および前記電力検出手段7の一次側検出値に基づいて、ミススパーク判定,短絡判定,煤付着判定をすることができる。そのため、前記点火装置1は、ボイラの内部を開けて確認することなく、不着火原因の特定を容易に行え、メンテナンス性を向上することができる。また、不着火原因を着火動作前に特定することができるので、燃料がボイラの内部に垂れ込む危険性がなくなり、安全な判定をすることができる。
【実施例2】
【0035】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではない。前記実施例1において、前記煤付着判定手段4は、前記電力検出手段7により前記点火電極2,2の煤付着の判定をしているが、前記電圧検出手段13でも前記点火電極2,2の煤付着の判定をすることができる。図3は、この発明の実施例2の点火装置の概略構成図である。図4は、この発明の実施例2の制御手順を示すフローチャートである。
【0036】
この実施例2において、前記実施例1と異なるのは、前記実施例1が前記電力検出手段7を前記点火トランス3の一次側に備えているのに対し、実施例2では、電圧検出手段13を前記点火トランス3の二次側に備えた点である。以下、図3にしたがって前記実施例1と異なる部分のみを説明し、その他の説明は省略する。
【0037】
前記煤付着判定手段4は、制御器8と、電圧検出手段13とで構成されている。前記電圧検出手段13は、前記点火電極2,2における電圧、すなわち前記点火トランス3の二次側の電圧を検出するものである。前記電圧検出手段13は、前記点火電極2,2と前記点火トランス3との間であって、前記第一配線5,5間に接続されている。
【0038】
以下に、この実施例2の不着火原因の判定を前記実施例1と異なる部分のみ図4にしたがって説明する。まず、前記点火電極2,2でのミススパークの判定について説明する。前記電圧検出手段13は、二次側電圧値をT2時間検出する(ステップS13)。そして、前記制御器8は、T2時間内において、二次側電圧値がk4(k4の値は8kVとする。)以上である場合、前記点火電極2,2にてミススパークが発生していると判定する(ス
テップS14)。また、前記制御器8は、T2時間内において、前記電圧検出手段13での二次側電圧値がk4以下である場合、前記点火電極2,2にて正常にスパークが発生したと判定する。
【0039】
つぎに、前記点火トランス3の二次側である前記第一配線5,5の短絡の判定について説明する。前記点火トランス3を励磁している時間帯において、前記電圧検出手段13は、二次側電圧値を検出する(ステップS16)。そして、前記制御器8は、二次側電圧値がk5(k5の値は0.5kVとする。)以下である場合、前記第一配線5,5の短絡が発生していると判定する(ステップS17)。また、前記制御器8は、前記電圧検出手段13での二次側電力値がk5以上である場合、前記第一配線5,5の短絡が無く、正常であることを判定する。
【0040】
つぎに、前記点火電極2,2の煤付着の判定について説明する。前記点火トランス3を励磁している時間帯において、前記電圧検出手段13は、二次側電圧値を検出する(ステップS19)。そして、前記制御器8は、二次側電圧値がk5以上、k6(k6の値は2kWとする。)以下であれば、前各点火電極2,2に煤が付着していると判定する(ステップS20)。また、前記制御器8は、前記電圧検出手段13での二次側電圧値がk6以上である場合、前記点火電極2,2に煤が付着していないことを判定する。
【0041】
このように、この実施例2によれば、前記制御器8が前記電圧検出手段13の二次側電圧値に基づいて、ミススパーク判定,短絡判定,煤付着判定をすることができる。そして、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施例1の点火装置の概略構成図である。
【図2】この発明の実施例1の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施例2の点火装置の概略構成図である。
【図4】この発明の実施例2の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
2 点火電極
3 点火トランス
4 煤付着判定手段
7 電力検出手段
13 電圧検出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火電極2,2と、この点火電極2,2へ電圧を供給する点火トランス3と、前記点火電極2,2の煤付着を判定する煤付着判定手段4とを備えることを特徴とする点火装置。
【請求項2】
前記煤付着判定手段4が、前記点火トランス3の一次側の電力を検出する電力検出手段7を有することを特徴とする請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
前記煤付着判定手段4が、前記点火トランス3の二次側の電圧を検出する電圧検出手段13を有することを特徴とする請求項1に記載の点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−38371(P2006−38371A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221080(P2004−221080)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)