説明

点火電極の保護要素を備えたバーナ

【課題】ガスタービンの主バーナに組み込むための点火器と点火電極とを備えたガスタービン用バーナを提供する。
【解決手段】バーナ2に設けられた点火電極7の輸送中あるいは組立中における損傷ないし曲がりによって、運転中に点火電極7が曲がってしまうか破損してしまうことがある。点火電極7は、保護要素8によって、損傷に対して保護されている。これにより、衝撃時に保護要素8が力を受けても、点火電極7は影響を受けないで済むこととなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点火器と少なくとも1個の点火電極とを備えたバーナに関し、特にガスタービンのバーナとして組み込まれるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
点火器とこの点火器に通じる複数の点火電極とを備えたパイロットバーナとして形成されたバーナは、例えば欧州特許第0193838号明細書に記載されている。その点火器は燃料を点火する目的を有する。点火電極はパイロットバーナの長手軸線に対して平行に延び、その外側に固定されている。燃料供給路はパイロットバーナの内部に存在し、燃料流出開口で終っている。点火電極は燃料流出開口の部分で終り、そこに流出する燃料を点火火花によって着火する。その点火火花は2個の点火電極間の点火電圧によって発生され、全点火時間中にわたり存在する。
【0003】
パイロットバーナに設けられた両点火電極の一方あるいは両方に輸送中や組立中に生じた損傷あるいは曲がりは、点火電極の点火性能に不利な影響を与える。従って、その損傷や曲がりが生じたときには点火電極の取替えが必要となる。
【0004】
電極先端間ではなく、1本の電極導線と他の金属部品との間で、フラッシオーバーが生じ、このために、混合気が発火されなくなるほど大きく電極が曲げられたときも、点火電極の取替えが必要となる。
【0005】
米国特許第2850084号明細書、米国特許第5860804号明細書および米国特許第5865651号明細書に、点火電極の大きな抵抗による点火電極加熱によって点火が行われ、即ち、点火が熱的に行われる点火電極を備えた点火器が記載されている。その点火方式は以下において熱的点火と呼ぶ。例えばフラッシオーバーによる電子式あるいは電気式点火方式は米国特許第5860804号明細書にしか記載されていない。
【0006】
点火電極における点火が行われる近くの部位を保護するために、米国特許第2850084号明細書、米国特許第5860804号明細書および米国特許第5865651号明細書に種々の保護要素や保護被覆が開示されている。それらの保護被覆は、発生する火炎の中に保護被覆が突出し、点火電極の点火部位を特に考え得る汚れや損傷から保護することにより特徴づけられている。点火部位に繋がる点火電極の部位、即ち、点火部位に向かっている部位あるいは点火部位から離れている部位は、その保護要素で保護されていない。
【0007】
米国特許第4029936号明細書、米国特許第6777650号明細書および米国特許第3823345号明細書にも、点火電極付き点火器が記載されている。それらの点火器の場合、少なくとも点火部位に繋がる点火電極の部位、即ち、点火部位に向かっている部位あるいは点火部位から離れている部位も、いずれにせよ部分的にケースで取り囲まれている。しかしそれらの点火器は専ら熱的点火器である。またそれらの点火器はガスタービン用バーナにおける点火器ではない。
尤も、上述の米国特許第2850084号明細書(特許文献1)、米国特許第5860804号明細書(特許文献2)、米国特許第5865651号明細書(特許文献3)、米国特許第4029936号明細書(特許文献4)、米国特許第6777650号明細書(特許文献5)および米国特許第3823345号明細書(特許文献6)には、いずれも、ガスタービン用バーナは開示されていない。ガスタービン用バーナの枠内で利用され点火火花により点火する点火電極は、熱的点火器の点火電極に比べて、考え得る曲がりによってその性能が容易に影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2850084号明細書
【特許文献2】米国特許第5860804号明細書
【特許文献3】米国特許第5865651号明細書
【特許文献4】米国特許第4029936号明細書
【特許文献5】米国特許第6777650号明細書
【特許文献6】米国特許第3823345号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述した問題が全く生じないかあるいはほんの僅かしか生じない、少なくとも1個の点火電極を備えたガスタービン用バーナを提供することにある。本発明のもう1つの課題は、有利なガスタービン用バーナを備えたガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、特許請求の範囲に記載の特徴を有するガスタービン用バーナおよびガスタービンによって解決される。そのガスタービン用バーナは特にパイロットバーナとして形成される。
【0011】
上述の課題の解決策は、本発明に基づいて、バーナがその外側面に沿って延びる少なくとも1個の点火電極を装備し、その点火電極にバーナの外側面および点火電極を越えて突出する保護要素が付設されていることにある。本発明に基づくガスタービンは、かかるガスタービン用バーナが装備されている。
【0012】
本発明に基づく解決策の利点は、複数の点火電極が保護され、これにより、点火電極の輸送中ないし組立中における損傷が防止されることにある。確かに欧州特許第0193838号明細書に、バーナを備えたガスタービンの燃焼器が記載されているが、そこではバーナの点火電極に保護要素は装備されていない。
【0013】
なお、本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0014】
また、本発明の有利な実施態様においては、例えば、保護要素は、バーナの外側面に結合され、これによって、必要な安定性が保証されることが可能である。
【0015】
他の有利な実施態様は、保護要素が複数の点火電極を包囲し、その点火電極が少なくともその長さの一部にわたり覆われていることにあり、これによって、少なくとも1個の点火電極が最良に保護されることが可能である。
【0016】
また、保護要素は断面U状に形成され、開口側がバーナの外側面に固定されている。これによって、点火電極は三方面が外側に向けて保護される。保護要素は、複数の点火電極を、その少なくとも電極先端近くの前部部位において包囲しているようにすることが可能である。
【0017】
あるいはまた、保護要素は、少なくとも1つのリブで形成することができ、これによって、点火電極への良好な接近性が保証されるようにすることが可能である。そのリブは、点火電極に対して平行に延びるようにすることが可能である。点火電極の両側面にそれぞれ少なくとも1つのリブが存在するようにすることもできる。
【0018】
好適には、保護要素は曲がりにくく耐衝撃性の材料で作られ、これによって、内部に位置する点火電極を変形させてしまう保護要素の変形を防止することができる。
【0019】
他の有利な実施態様は、点火電極と保護要素との間のフラッシオーバーが確実に防止されるようにするために、保護要素と点火電極との距離が、少なくとも、点火電極への点火電圧の印加時に保護要素と点火電極との間でフラッシオーバーが生じないような大きさであることにある。
【0020】
また、ガスタービン用バーナは、それぞれ1つの電極先端を備えた2個の点火電極を有することができる。この場合、点火は、両点火電極間における点火電圧の印加時の電極先端におけるフラッシオーバーによって行われる。即ち、その点火は、熱的に生じさせられるのではない。確かに、米国特許第5860804号明細書および米国特許第5865651号明細書には、全般的に熱的点火器とは異なった点火器についても述べられているが、それらの文献には、両電極間でフラッシオーバーが生ずる点火器は記載されていない。他の上述した文献には、熱的点火器しか記載されていない。
【0021】
本発明に基づく保護要素は、好適には、点火電極における電極先端に通じている部位に付設することができる。即ち、この場合、保護要素は電極先端まで到達せず、また電極先端より突き出してもいない。むしろ、点火電極のガスタービン用バーナの外側面に沿って延びる部位が保護され、換言すれば、電極先端における本来の点火部位への導線だけが保護される。
【0022】
さらに、本発明に基づくガスタービン用バーナは、基本的には、回転対称形であり、バーナ外側面に沿って延びる少なくとも1個の点火電極が、ガスタービン用バーナの対称軸線に対して平行に延びている。
【0023】
本発明に基づくガスタービンは、上述したいずれかの形態の本発明に基づくガスタービン用バーナが装備されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】点火電極付きバーナの断面図。
【図2】断面U形で点火電極の前部を包囲する1つの保護要素と複数の点火電極とを備えたバーナの斜視図。
【図3】複数の点火電極に対して平行に延びる複数のリブで形成された1つの保護要素と複数の点火電極とを備えたバーナの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の図を参照した実施例の説明から、本発明の他の特徴、特性および利点が理解できる。
【0026】
図1に示されたバーナ装置は本発明の好適な用途分野であるガスタービン設備に属する。しかしこのバーナ装置は気体燃料燃焼式のボイラにも適用できる。
このバーナ装置は支持板(図1には図示せず、図2と図3参照)に固定された少なくとも1つの第1バーナ2と第2バーナ1から成り、その第1バーナ2はパイロットバーナとして用いられ、第2バーナ1は主バーナとして用いられ、その中心部に第1バーナ2が同軸的に配置されている。第1バーナ2は旋回羽根3付きのバーナヘッド4を有し、燃料として天然ガスEおよび/又は燃料油Hで運転することができる。第1バーナ2のバーナヘッド4はバーナ軸線に関して同軸的に空気供給路6によって取り囲まれている。その空気供給路6はバーナヘッド4の下流に形成される燃焼域(図示せず)に燃焼空気Lの大部分を供給するために用いられる。ガスタービン設備の圧縮機によって加圧燃焼空気Lが環状隙間に導入される。高温燃焼ガスがタービン翼に向けて流れる。
【0027】
主バーナとして用いられる第2バーナ1は、パイロットバーナとして用いられる第1バーナ2によって補足され、即ち、天然ガス燃料運転時にパイロットバーナによる始動後および暖機後に、NOx値が低い主バーナ運転に切り換えることができる。その場合、第1バーナ2は火炎を安定するのに役立つ。
【0028】
第2バーナは複数のノズル管5と1つの空気供給路6を有している。これらのノズル管は燃料供給管系(図示せず)に接続され、供給された燃焼空気Lと石油、天然ガスあるいは他の気体燃料や液体燃料とを混合するために用いられる。空気供給路6は燃焼空気Lを場合によっては混合済み燃料と共に火炎域に導く。
【0029】
第1バーナ2に供給された空気・燃料混合気の点火は、2個の点火電極7を備えた棒状あるいは管状の電極装置を介して行われる。それらの点火電極7は主に第1バーナ2の軸線に対して平行に延びている。しかし、点火電極7で貫通されている支持板9の部位においては、第1バーナの外側壁から点火電極7までの距離はあきらかにより大きい。点火電極7の相互間隔も支持板の範囲において、第1バーナ2の外側壁の範囲におけるよりも大きい。これらの点火電極は第1バーナ2の外側面における接続部材11に固定されている。
【0030】
図2に、本発明に基づくバーナの実施例として、バーナ長手方向に延びる2個の点火電極7がバーナ外側壁に設けられているバーナ2が示されている。そのバーナ2は特に図1で述べたバーナ装置における第1バーナとして用いることができる。
【0031】
バーナ2の複数の点火電極は1つの保護要素8によって覆われている。この実施例においてその保護要素8はU形に曲げられた薄板8として形成されている。この薄板8の脚部は両側にそれぞれバーナ2の外側壁に固定される折り曲げ部位を有している。その固定10は、必要に応じて点火電極7に近づくことができるようにするために、有利には解除可能な適切な固定要素例えばねじによって行われる。基本的には、解除可能な固定要素の代わりに、解除不能な継手例えば溶接継手も利用できる。U形薄板8は点火電極7の少なくとも前方部位に、即ち、電極先端12の近くに位置する部位にわたり延びている。
【0032】
この薄板8は耐衝撃性を有し曲がりにくい材料、例えば鋼板でできている。この薄板8の点火電極7からの間隔は少なくとも、両点火電極7に点火電圧が印加された時に保護薄板8と点火電極7との間にフラッシオーバーが生じないような大きさでなければならない。この間隔の具体的な値は、点火電極7と保護薄板8との間の媒体のフラッシオーバー耐量および点火電極の幾何学的形状と点火電圧を印加する際の温度に依存する。空気を媒体とするこの実施例では、点火電圧が5kVの場合には最小でも5mmの安全間隔が保たれねばならない。
【0033】
図3はバーナ外側壁に2個の点火電極7が設けられたバーナ2を示している。このバーナ2も、特に図1に関連して述べたバーナ装置の第1バーナとして用いることができる。
【0034】
図3に示されたバーナ2の両点火電極7の左右をそれぞれ縦リブ8が延びている。それらの縦リブ8は、点火電極7が衝突から保護されるように、バーナ2の外側表面から点火電極7を越えて突出している。それらの縦リブ8はバーナ2の外側壁に固く結合されている。その固定10は例えば溶接やろう付けによって行うことができる。確かに、縦リブ8とバーナ2との例えばねじによる解除可能な結合も行えるが、この電極装置の場合、点火電極7への接近がほとんど制限されず、従って、電極7に接近するためにリブ8を取り外す必要がないので、解除不能な継手も十分に利用できる。
【0035】
そのリブ8は、第1実施例の薄板と同様に、例えば鋼のような耐衝撃性を有する曲がりにくい材料で作られる。リブと点火電極7との間隔は、点火電極とリブとの間でフラッシオーバーが生じないようにするために、点火電圧が5kVである場合、少なくとも5mmにする。
【0036】
なお、本件出願書類および特に従属請求項で述べられたすべての特徴事項は、1つあるいは複数の請求項に従属先が特定されているけれど、個々にあるいは相互の任意の組合せにも独自の特許保護が与えられるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 第2バーナ(主バーナ)
2 第1バーナ(パイロットバーナ)
7 点火電極
8 保護要素(薄板、リブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ1つの電極先端を備えた2個の点火電極(7)を有し、点火電圧の印加時に両点火電極間において電極先端でフラッシオーバーが生ずるバーナであって、これらの点火電極(7)がバーナ外側面に沿って延びるガスタービン用バーナ(2)において、
これらの点火電極(7)に、バーナ(2)の外側面および点火電極(7)を越えて突出する保護要素(8)が付設されており、
この保護要素(8)とこれらの点火電極(7)との間隔が少なくとも、これらの点火電極(7)への点火電圧の印加時に保護要素(8)とこれらの点火電極(7)との間でフラッシオーバーが生じない大きさである
ことを特徴とするガスタービン用バーナ。
【請求項2】
保護要素(8)が、バーナ(2)の外側面に結合されている
ことを特徴とする請求項1記載のガスタービン用バーナ(2)。
【請求項3】
保護要素(8)が、複数の点火電極(7)を包囲し、それらの点火電極(7)が、少なくともその長さの一部にわたり覆われている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のガスタービン用バーナ。
【請求項4】
保護要素(8)が、断面U状に形成され、その開口側がバーナ(2)の外側面に固定されている
ことを特徴とする請求項3記載のガスタービン用バーナ。
【請求項5】
保護要素(8)が、複数の点火電極(7)をその少なくとも電極先端近くの前部部位において包囲している
ことを特徴とする請求項4記載のガスタービン用バーナ。
【請求項6】
保護要素(8)が、少なくとも1つのリブを有している
ことを特徴とする請求項1又は2記載のガスタービン用バーナ。
【請求項7】
リブ(8)が、複数の点火電極(7)に対して平行に延びている
ことを特徴とする請求項6記載のガスタービン用バーナ。
【請求項8】
点火電極の両側に、それぞれ少なくとも1つのリブが存在している
ことを特徴とする請求項6又は7記載のガスタービン用バーナ。
【請求項9】
保護要素(8)が、耐衝撃性の材料からなるものである
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載のガスタービン用バーナ。
【請求項10】
バーナ装置に対するパイロットバーナとして形成されている
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載のガスタービン用バーナ。
【請求項11】
保護要素が、複数の点火電極(7)における複数の電極先端に通じている部位に付設されている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載のガスタービン用バーナ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載のガスタービン用バーナ(2)であって、このバーナが回転対称形であり、少なくとも1つの点火電極(7)が、ガスタービン用バーナ(2)の対称軸線に対して平行に延びていることを特徴とするガスタービン用バーナ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載のガスタービン用バーナ(2)を備えている
ことを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−107624(P2012−107624A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281519(P2011−281519)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2009−525023(P2009−525023)の分割
【原出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany