説明

点灯装置の製造方法、点灯装置および照明器具

【課題】防水性能を有するとともに小形でかつ安価な点灯装置を提供する。
【解決手段】回路基板22に搭載されて点灯回路をなすアース端子を含む各種の電気部品を備えた回路モジュールと21を絶縁性を有したトレー41に収容し、導電性を有したカバーに収納する。そうして回路モジュール21のアース端子27とトレー41とともにカバー15を固定し、カバーと電気的に接続し、回路モジュール充填材にて全体を埋めて点灯装置を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性、防塵性を向上させた蛍光ランプ等の放電灯を点灯させる点灯装置の製造方法、点灯装置および照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外や高湿度環境下に設置される照明器具では、この器具が備える放電灯を点灯させる点灯装置も高湿度に晒されることがあるため、点灯装置には防水性能が求められる。従来、こうした防水性能を得るために、断面において継ぎ目がない一体成形品からなる筒状ケース内にインバータ点灯装置を収容するとともに、筒状ケースの両端開口部を側板で閉じて、これら筒状ケースと側板とで外郭となる防水ケースを形成し、この防水ケースでインバータ点灯装置に対する防水を図った技術が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−7122号公報(段落0004、0005、0008−0019、図1−図14、図17、図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術では、インバータ点灯装置自体がその外郭をなすケースを有して組立てられており、こうした点灯装置を防水ケースに収容しているので、点灯装置全体の外郭をなす防水ケースが大形である。又、インバータ点灯装置の組立ての他に、この装置を筒状ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が必要であるため、組立ての工数が多い。したがって、既述のように大形な防水ケースを用いること自体でのコスト増加に加えて組立て上のコストも多く掛かるので、コスト高である。
【0004】
本発明の目的は、防水性能を有するとともに組立て作業性を向上させた点灯装置及びこれを備えた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、請求項1の発明は、回路基板、この基板に搭載されて点灯回路をなすアース端子を含む各種の電気部品、及び点灯回路に接続して回路基板に搭載され、コネクタキャップをはめた電線コネクタを備えた回路モジュールを作製し;絶縁性を有したトレーに回路モジュールを収容し;回路モジュールのコネクタキャップを露出させ、回路モジュールを収納したトレーを導電性カバーに収納し;回路モジュールのアース端子とトレーとともにカバーを固定し、カバーと電気的に接続し;防水性及び電気絶縁性を有し、回路モジュール全体を埋めてトレーに充填された充填材と;充填材を覆うケースとカバーに連結し;製造すること特徴とする点灯装置の製造方法である。
【0006】
請求項2の発明は、回路基板、この基板に搭載されて点灯回路をなすアース端子を含む各種の電気部品、及び点灯回路に接続して回路基板に搭載され、コネクタキャップをはめた電線コネクタを備えた回路モジュールと;回路モジュールを収容する絶縁性を有したトレーと;コネクタキャップを露出させ、回路モジュールを収納したトレーを収納する導電性を有したカバーと;回路モジュールのアース端子とカバーを電気的に接続する固定手段と;防水性及び電気絶縁性を有し、固定手段の一部と回路モジュール全体を埋めてトレーに充填された充填材と;カバーに連結し充填材を覆うケースと;を具備したことを特徴とする点灯装置である。
【0007】
本発明において、トレーは、合成樹脂のように材料コストが安価でかつ充填材の加熱硬化処理の温度に耐える耐熱性を有する樹脂例えばPET樹脂を好適に用いることができる。トレーは回路基板に配置される電気部品のそれぞれの大きさなどに合わせて形成する事が好ましい。電気部品の大きさに合わせてトレーを形成した結果トレーの表面が凸凹を生じさせることによって回路モジュールの放熱に効果がある。
【0008】
また、トレーにはコネクタキャップを露出させる大きさの穴を設ける事もできる。コネクタキャップはEPDM等のゴム製が好適であり、トレーから露出させている部分に段差を設けたり、先端に向かってテーパを設けたりするなどしてトレーから露出しやすく、さらにトレーとコネクタキャップを密着しやすくすることができるので後から充填する充填材を漏出することがない。
【0009】
充填材には、合成樹脂例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることができ、好適には材料コストが安価なウレタン樹脂を用いることができ、より高い放熱性も得るためにはシリコン樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などを用いるとよい。本発明において、カバーとケースからなる外郭ケースは、回路モジュールのアース端子と電気的に接続させて、アースとして機能できるように、また、外部への放熱性能を得るために熱伝導性が良好なアルミニューム合金などの金属製とするとよい。
【0010】
回路基板には、アース端子が設けられており、回路基板と垂直に起立して配設されることが好ましい。回路基板をトレーおよびカバーに挿入したときに、アース端子をカバーの側面からネジなどで固定して回路基板を固定させ、さらにはカバーとアース端子を電気的に接続させている。
【0011】
そうして、固定手段によって、回路モジュールのアース端子は導電性のカバーと電気的に接続されて固定されたうえで充電材に充填される。固定手段として固定ネジを使用してもネジ部は充填材に埋没される。こうする事によって、外郭ケースにアースの機能を備えながら十分な防水機能を得ることができる。
【0012】
請求項3の発明は、器具本体と;この器具本体に取付けられたランプソケットと;このソケットに取り外し可能に支持された放電灯と;器具本体に取付けられて放電灯を点灯させる請求項1又は2に記載の点灯装置と;を具備したことを特徴としている。この発明の照明器具が備えた点灯装置は、請求項1又は2に記載のものであるので、防水性能を有するとともに小形でかつ安価な点灯装置を備えた照明器具を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、回路モジュールと外郭ケースの接地を行いながら、所定の防水性能を有する点灯装置を製造できる。請求項2の発明によれば、回路モジュールと外郭ケースの接地を行いながら、所定の防水性能を有する点灯装置を提供できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の防水性能を有するとともに組立て作業性が向上された点灯装置を備える照明器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図4を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1中符号1で示す照明器具は、屋外灯、又はトンネル内に設置されるトンネル灯、或いは駅舎の軒下灯等として、好ましい防水性を備えて使用される。この照明器具1は、器具本体2と、ランプソケット3と、放電灯例えば直管型の蛍光ランプ4と、電子安定器として機能する防水型の点灯装置5とを備えている。
【0017】
図1に例示された器具本体2は、金属製であって直方体形状をなし、その長手方向両端部にランプソケット3がたとえば下向きに突設されている。蛍光ランプ4はランプソケット3に取外し可能に支持されている。蛍光ランプ4を点灯させる点灯装置5は器具本体2に内蔵されている。この点灯装置5は、以下のように構成されている。
【0018】
図2〜図4に示すように点灯装置5は、収容ベース12と、これに連結されたカバー15とを有している外郭ケース11と、回路モジュール21と、トレー41と、充填材55とを具備している。
【0019】
外郭ケース11は。収容ベース12及びカバー15は、金属製例えば放熱性に優れたアルミニューム合金製とすることが好ましいが、材料コストが安い鉄製とすることも可能である。
【0020】
図4に示すように回路モジュール21は、基板22上に点灯回路を構成するパワートランジスタ等の半導体、抵抗、コンデンサ、コイル、トランス、ダイオード、その他の各種のチップ部品等の電気部品23によってインバータ回路部を含んで構成されている。なお、符号26は電気部品23の一つである発熱を伴うパワートランジスタを示している。又、符号27はパワートランジスタ26に熱的に接続された放熱板を示している。また、放熱板27は基板22の回路部分のアースとしての機能を兼用している。そうして放熱板27は基板22に対して直角となるように側縁に起立されている。
【0021】
また、基板22長手方向両端部に電線コネクタ24が半田付けされ、電線コネクタ24には図示しない電源側の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。電線コネクタ25には器具内配線用の絶縁被覆電線(図示しない)の芯線が差し込み接続される。また、基板22には側面に切り欠き22aおよび貫通穴22bが数箇所設けられている。この切り欠き22aや貫通穴22bは3mm以下の小さなものであるが、後述する充填材55を充填する際に、充填材55を流し込むのに役に立つ。
【0022】
図2及び図3に示すように収容ベース12は、横断面コ字形の樋状をなしている。この収容ベース12の全長は後述する回路基板22より長い。ベース壁12aの長手方向両端部には夫々孔又は切欠きからなる固定部13が夫々形成されている。これらの固定部13を通るねじ等の固定部品により、ベース壁12aを器具本体2の金属部分に接触させて、点灯装置5が器具本体2に取付けられている。したがって、収容ベース12は器具本体2への伝熱面として機能している。カバー15の長手方向一端部及び他端部には四角形状の孔16,17が個別に開けられている。一方の孔16は後述の入力側のコネクタキャップ43を露出させるために設けられ、他方の孔17は後述の出力側のコネクタキャップ44を露出させるために設けられている。
【0023】
トレー41は充填材55を充填するための充填容器として機能するものである。図3に示すようにトレー41は、カバー15より僅かに小さく、好ましくは耐熱性を有する廉価な電気絶縁材、例えばPET樹脂製のフィルム状成形品である。
【0024】
コネクタキャップ43,44は例えばゴム製である。コネクタキャップ43、44は、その弾性変形により入出力用の電線コネクタ24、25に密に被嵌可能に形成され、外側面下方には段差が設けられ、先端に向かってテーパ-が設けられている。そうして、コネクタキャップ43、44を回路モジュール21の電線コネクタ24,25に被嵌された状態で、回路モジュール21は、トレー41に収容されている。トレー41には、予めコネクタキャップ43、44が露出可能な開口穴がトレー41の両端にあけられており、この開口穴と、コネクタキャップ43、44に設けられている段差が当接して、トレー41とコネクタキャップ43、44もまた弾性的に密着できる。これらの被嵌によりトレー41に対して回路モジュール21が位置決めされる。
【0025】
充填材55は、電気絶縁性及び防水性を有する合成樹脂であって、本実施形態では放熱性を高めるために酸化アルミニュームのフィラー(図示しない)が混入されたウレタン樹脂を用いている。充填材55は、トレー41に収容された回路モジュール21全体を埋設してトレー41に充填されている。
【0026】
この点灯装置の製造方法を説明する。まず、回路基板22に回路部品23を装填して回路モジュール21を完成させる。そうして回路モジュール21を挿入したトレー41をカバー15の内側に嵌合させて収納しカバー15の外側から固定ネジ18によってカバー15とアースの機能を兼用している放熱板27を固定し、そうすることによって、回路基板22、トレー41およびカバー15が固定され、カバー15とアース端子27が電気的に接続される。
【0027】
次に、トレー41内に充填材55の充填を行う。トレー41をカバー15内に嵌合させた状態で充填材55の充填を行うので、トレー41がカバー15で支持されているので、充填が行いやすい。充填材55は、回路モジュール21の基板22に設けられた両側縁に夫々複数の切欠き22aや貫通穴22bを通じてトレー41内部全域に充填される。そして、充填材55をトレー41に充填した後に加熱硬化炉に通すことによって、充填材55は硬化される。この加熱処理で与えられる熱に対してPET製のトレー41は十分な耐熱性を発揮できる。
【0028】
また、発熱量が多いパワートランジスタ26aに接続されて回路基板22に取付けられた放熱板27は、カバー15の側壁と固定ネジ18を介しているので、この放熱板27からカバー15への熱伝導およびカバー15とのアース接続は確実である。充填材55は、電気絶縁性でかつ防水性を有しているので、この充填材55によって回路モジュール21の回路基板22、電気部品26、及びそれらの半田付け面等を防水できる。さらに、カバー15とアース端子27を固定した後に充填時にて充填されているので、固定ネジ18の周囲にも充填材が充填されているので外郭カバー15に露出している固定ネジ18の周囲から湿気、水分等が回路基板に接触させる虞もない。
【0029】
その後、カバー15は収納ベース12連結される。これは、例えば図示しないが収容ベース12とカバー15との一方に形成されて内側に起こされた切起し片を、他方に形成された孔や切欠き等の受け部に引っ掛けことなどにより行われている。そうして外郭ケース11が形成され外郭ケース11内での防水構成により、外郭ケース11を収容する大形な防水ケースを要しないで、高湿度環境に耐える防水性能を得ることができる。
【0030】
このため、点灯装置5を小形に構成できる。しかも、この点灯装置5の組立ての他に、この装置5を防水ケースに収容する手間、及びこの後に防水ケースを組立てる手間が不要であるので、容易に組立てることができる。以上のように防水ケースを用いること自体でのコスト増加をなくすことができることに加えて、組立てコスト上のコスト低減できるので、点灯装置5ひいてはこの装置5を備える照明器具1を低コスト化できる。
【0031】
又、点灯装置5の充填材55は防水性能だけではなく放熱性能も備えているので、パワートランジスタ26aその他発熱を伴う電気部品の熱を、充填材55に通して外郭ケース11に伝導できる。この場合、充填材55の容量が大であるとともに、この充填材55から外郭ケース11への熱伝導面積も大きいので、優れた放熱特性を得ることができる。特に、金属フィラーを混入した充填材55の採用により、より放熱特性を向上できる。又、既述のように充填材55が回路モジュール21全体を埋設しているので、充填材55によって確実な防塵ができる。これにより、塵が多い場所で使用される点灯装置5ひいてはこの装置5を備える照明器具1としても好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る照明器具を示す斜視図。
【図2】図1の照明器具が備える本発明の一実施形態に係る点灯装置を示す斜視図。
【図3】図2中F3−F3線に沿う断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る点灯装置のアセンブリを示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1…照明器具、2…器具本体、3…ランプソケット、4…蛍光ランプ、5…点灯装置、11…外郭ケース、12…収容ベース、15…カバー、16,17…孔、21…回路モジュール、22…回路基板、23…点灯回路、24…電線コネクタ、26…電気部品、27・・・アース兼放熱板、18・・・固定ネジ、41…トレー、55…充填材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板、この基板に搭載されて点灯回路をなすアース端子を含む各種の電気部品、及び点灯回路に接続して回路基板に搭載され、コネクタキャップをはめた電線コネクタを備えた回路モジュールを作製し;
絶縁性を有したトレーに回路モジュールを収容し;
回路モジュールのコネクタキャップを露出させ、回路モジュールを収納したトレーを導電性カバーに収納し;
回路モジュールのアース端子とトレーとともにカバーを固定し、カバーと電気的に接続し;
防水性及び電気絶縁性を有し、回路モジュール全体を埋めてトレーに充填された充填材と;
充填材を覆うケースとカバーに連結し;
製造すること特徴とする点灯装置の製造方法。
【請求項2】
回路基板、この基板に搭載されて点灯回路をなすアース端子を含む各種の電気部品、及び点灯回路に接続して回路基板に搭載され、コネクタキャップをはめた電線コネクタを備えた回路モジュールと;
回路モジュールを収容する絶縁性を有したトレーと;
コネクタキャップを露出させ、回路モジュールを収納したトレーを収納する導電性を有したカバーと;
回路モジュールのアース端子とカバーを電気的に接続する固定手段と;
防水性及び電気絶縁性を有し、固定手段の一部と回路モジュール全体を埋めてトレーに充填された充填材と;
カバーに連結し充填材を覆うケースと;
を具備したことを特徴とする点灯装置。
【請求項3】
器具本体と;
この器具本体に取付けられたランプソケットと;
このソケットに取外し可能に支持された放電灯と;
器具本体に取付けられて放電灯を点灯させる請求項2に記載の点灯装置と;
を具備したことを特徴とする照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−114363(P2006−114363A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300931(P2004−300931)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】