説明

焙焼デンプンの製造方法

【課題】高温焙焼により、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下である焙焼デンプンの製造方法を提供する。
【解決手段】化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態のデンプン粉末を130℃〜220℃の高温で焙焼し、焙焼後のブラベンダー粘度が、原料デンプンのブラベンダー粘度の50%以下、水分含有量は重量%で20%以下である焙焼デンプンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙焼デンプンの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、以下に示す方法を有する焙焼デンプンの製造方法に関するものである。
<方法1>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、焙焼温度が180℃〜210℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上210℃未満の際には30分以上、焙焼温度が210℃で10分以上であり、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法2>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、焙焼温度が180℃〜220℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上220℃未満の際には32分以上、焙焼温度が220℃で11分以上であり、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法3>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、最終品温が130℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法4>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法5>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがタピオカデンプンの際には、最終品温が170℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるタピオカデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法6>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがコーンスターチの際には、最終品温が160℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるコーンスターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法7>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがワキシースターチの際には、最終品温が140℃〜170℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるワキシースターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法8>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが甘藷デンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである甘藷デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<方法9>
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度が、焙焼前の原料デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度の50%以下の焙焼デンプンを得ることを特徴とする方法1あるいは方法2あるいは方法3あるいは方法4あるいは方法5あるいは方法6あるいは方法7あるいは方法8に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<方法10>
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によるブラベンダー粘度の測定を50℃から開始し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させ、95℃で10分間保持して、測定中の焙焼デンプンのブラベンダー粘度の最高値が、同じ方法にて測定した原料デンプンのブラベンダー粘度の最高値の50%以下である焙焼デンプンを得ることを特徴とする方法9に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<方法11>
焙焼後の焙焼デンプンの水分含有率が20重量%未満であることを特徴とする方法1あるいは方法2あるいは方法3あるいは方法4あるいは方法5あるいは方法6あるいは方法7あるいは方法8あるいは方法9あるいは方法10に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<方法12>
焙焼後の焙焼デンプンのpH値が原料デンプンのpH値を上回らないことを特徴とする方法1あるいは方法2あるいは方法3あるいは方法4あるいは方法5あるいは方法6あるいは方法7あるいは方法8あるいは方法9あるいは方法10あるいは方法11に記載の焙焼デンプンの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、デンプンは、食品やその他各種工業製品の材料として用いられてきたが、様々な方法で加工されたデンプンのうち、粘度を低く調整されたものは、麺類の打ち粉用として、あるいは食品用の希釈材や粉末基剤、さらには医薬用の薬剤(錠剤)の賦型剤として用いられてきた。なお、食品用の希釈剤とは、一例をあげるなら粉胡椒に用いられている希釈剤であり、また食品用の粉末基剤とは、一例をあげるならインスタントラーメンのスープに用いられている粉末基剤である。
【0003】
この場合、加工後のデンプンの粘度は通常ブラベンダー粘度測定器で測定するが、その場合、試料を水に溶かして熱し、水溶液の温度が50℃になったところから測定を開始して、1分間に1.5℃ずつ昇温させ、95℃になったところで10分間保持し、その間の最高粘度をもってブラベンダー粘度とするのが一般的な方法である。なお、粘度の単位はブラベンダーユニットが用いられる。ブラベンダーユニットは通常B.U.という記号で表示されるので、この明細書にても以後は記号B.U.を使用する。
【0004】
麺類の打ち粉用として、あるいは食品用の希釈材や粉末基剤として用いられる場合のデンプンのブラベンダー粘度は、上記方法で測定した最高粘度が原料となるデンプンのブラベンダー粘度の最高粘度の半分以下であることが製品として使用できる条件となる。例えば、原料となるデンプンが馬鈴薯デンプンの場合は原料となるデンプンのブラベンダー粘度は最高粘度で一般的に1200B.U.程度であるが、その場合には、加工されたデンプンのブラベンダー粘度は最高粘度で半分の600B.U.以下であることが必要である。
【0005】
この理由は次のとおりである。すなわち、原料となるデンプンの多くは輸入品であるが、この場合、食品用デンプンとしても用いることのできる生デンプン、すなわち非加工用の生デンプンとして輸入した場合には関税がかかる。しかし、非加工用の生デンプンではなく加工用デンプンとして輸入すれば、生デンプンであっても無関税となる。むろん、加工用原料デンプンとして輸入した生デンプンを何等加工せずにそのまま食品用デンプンとして用いるわけにはいかないので、これを製品として使用する際には粘度の検査が行われる。
【0006】
すなわち、食品用の生デンプンとして用いる場合には、デンプンの粘度を下げることは行われないので、原料のデンプンの粘度と製品として使用されるデンプンの粘度は基本的に同一である。しかし、麺類の打ち粉用として、あるいは食品用の希釈材や粉末基剤用の加工用の原料デンプンとして等の用途で出荷される場合には、あらかじめ粘度を下げた状態で出荷される。この際、あまり粘度の低下がみられない場合、すなわち原料のデンプンの粘度に近い状態であれば、検査にて、食品としても用いることができるものと看做される場合がある。
【0007】
この場合の特に定められた基準というものは存在しないが、原料デンプンの粘度の半分以下に粘度が低下されている場合には、食品用としてそのまま用いることができるものと看做されることはないといいうる。したがって、最高粘度を原料となるデンプンのブラベンダー粘度の半分以下にすることにより、検査で食品用として看做される事態を確実に回避できるわけである。
【0008】
粘度の測定にあたって水溶液を加熱するのは、デンプンの粘性の判断は、デンプンを熱して完全糊化状態に至るまでの粘度の変化がデンプンの粘性を判断する基準となっているからである。このため、デンプンの粒子を熱で膨潤させ、完全糊化させるために徐々に温度を上昇させて95℃で10分間保持するという方法を採る。この方法によれば、大部分のデンプンにおいてほぼ完全糊化が達成される。
【0009】
なお、製品として出荷される際のデンプンの水分含有量は使用状態によって異なるが、要求される水分含有量の範囲は重量%で0%〜20%程度が多い。これくらいの水分含有量に調整しておけば、あとは最終工程で水分含有量の調節は自在となるという理由による。
【0010】
このような低粘度のデンプンの製造方法としては、大きく分けて酸化剤(一例として次亜塩素酸)等の化学薬品を使う方法と、デンプン分解酵素を使う方法の2種類があった。
【0011】
酸化剤等の化学薬品を使う方法で一般的なものは、デンプンに水を加えて固形分が30%〜40%(重量%)の懸濁水とし、攪拌器で攪拌しながら次亜塩素酸を加え、一定時間(24時間程度)放置し、その間に次亜塩素酸によってデンプン分子の結合を切って粘度を低下させる方法である。このようにして得られた低粘度のデンプン水溶液は濃縮され、脱水機にかけられて「ケーキ」と呼ばれる固形物にされる。この段階で水分が30〜40%程度に減少され、後に熱風乾燥機(温度85℃〜170℃程度)で水分含有量を13〜18%に下げて粉末状態とし、製品として出荷される。
【0012】
あるいはまた、酵素を使う方法では、α−アミラーゼやグルコアミラーゼのようなデンプン分解酵素をデンプン水溶液に添加して、酵素の働きでデンプン分子の結合を切って粘度を低下させる。この際の特色としては、製品に甘みと吸湿性が出るという点があげられる。
【0013】
したがって、麺類の打ち粉用や食品の希釈材や粉末基剤、医薬用の薬剤(錠剤)の賦型剤として用いる際には、このように酵素を用いてデンプン分子の結合を切った加工デンプンは用いにくい場合も出てくる。その理由としては、酵素を用いたデンプンには、上記のように、製品に甘みや吸湿性があるからである。
【0014】
したがって、麺類の打ち粉用や食品の希釈材や粉末基剤、医薬用の薬剤(錠剤)の賦型剤として用いられる加工デンプンは、わが国においては略酸化剤等の化学薬品を用いた加工デンプンがその大部分を占めていた。しかしながら、平成20年10月1日に食品衛生法施行規則の一部を改正する省令が公布されたことにより、ここに一つの問題が発生してきた。
【0015】
従来、わが国では、食品表示の際に、次亜塩素酸などの化学薬品を添加して粘度を低下させる方法を採っていても、最終加工食品の原材料欄には食品として「でん粉」という表示が可能であった。しかし、平成20年10月1日に食品衛生法施行規則の一部を改正する省令が公布され、化学薬品で処理をしたデンプンが食品添加物として扱われるようになった。この結果として、次亜塩素酸などの化学薬品を添加した場合には、原材料欄に食品添加物として「加工でん粉」と記載する必要が生じることとなった。酵素を用いた場合には従来どおり「でん粉」という表示で良いが、この場合には「甘み」と吸湿性によって用途が限定されるのは上に述べたとおりである。
【0016】
最近の消費者は自然志向が強く、食品表示の原材料欄に「加工でん粉」と記載されていると購入を敬遠する人も多い。したがって、粘度を低下させる際に化学薬品を添加することなくデンプンのみを物理的な方法で処理して低粘度化する技術が希求されることとなった。この場合には、食品表示の原材料欄は、単に「でん粉」と記載すればよく、消費者の自然志向に合致するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
以下、デンプンの粘度を低下させる方法について記載された特許文献をいくつか紹介する。いずれも何らかの薬品あるいは酵素によって粘度を低下させる方法を開示するものである。すなわち、下記特許文献1の発明は、酸化剤として過酸化水素を用い、アシル化多糖類を活性剤として原料デンプンの粘度を低下させるものである。また、下記特許文献2の発明も同じく過酸化水素を酸化剤として用いている。さらに、下記特許文献3の発明は、ニューロスポラ・クラッサに属するカビの生産する枝切り酵素を用いて粘度の低下を図るものであり、下記特許文献4の発明は、馬鈴薯デンプンにアミラーゼやビオザイム等のデンプン分解酵素を作用させて粘度を低下させる技術を開示している。下記特許文献5にては、塩基類を添加して原料デンプンのpH値を上昇させて120℃〜180℃の温度で焼成することにより糊化を抑制する焼成デンプンの製法が開示されている。
【特許文献1】特表2000−506197号公報
【特許文献2】特表2002−530487号公報
【特許文献3】特開2001−294601号公報
【特許文献4】特開2004−24213号公報
【特許文献5】特表平9−503549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上より、発明が解決しようとする課題は次のとおりである。
<課題1>
物理的な方法のみによってデンプンを処理することによって、低粘度のデンプンを製造する方法を開発する。すなわち、酸化剤や塩基類、酵素等を一切使用せず、物理的な方法のみを用いて原料デンプンの粘度を半分以下に低下させる方法を開発する。
<課題2>
その際、処理後のデンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定したブラベンダー粘度が、測定を50℃から開始し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させ、95℃で10分間保持し、測定中の最高粘度が、原料となるデンプンの最高粘度の半分以下のデンプンを得るものとする。なお、原料となるデンプンの粘度の測定も同じ方法で行うものであることは当然のことである。
<課題3>
またさらに、処理後のデンプンの水分含有量は重量%で20%以下とするのが望ましい。この理由は、上記のように水分含有量が低ければ低いほどその後の水分調整が楽にできるので、できるだけ水分含有量の低い製品が望まれるからである。
<課題4>
得られる焙焼デンプンのpH値は、原料デンプンのpH値を上回っていないことが望ましい。その理由は、pH値が高くなると、食用として用いにくいケースが出てくるからである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、下記に示す解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、焙焼温度が180℃〜210℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上210℃未満の際には30分以上、焙焼温度が210℃で10分以上であり、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段2>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、焙焼温度が180℃〜220℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上220℃未満の際には32分以上、焙焼温度が220℃で11分以上であり、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段3>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、最終品温が130℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段4>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段5>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがタピオカデンプンの際には、最終品温が170℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるタピオカデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段6>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがコーンスターチの際には、最終品温が160℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるコーンスターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段7>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがワキシースターチの際には、最終品温が140℃〜170℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるワキシースターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段8>
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが甘藷デンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである甘藷デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段9>
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度が、焙焼前の原料デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度の50%以下の焙焼デンプンを得ることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3あるいは解決手段4あるいは解決手段5あるいは解決手段6あるいは解決手段7あるいは解決手段8に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段10>
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によるブラベンダー粘度の測定を50℃から開始し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させ、95℃で10分間保持して、測定中の焙焼デンプンのブラベンダー粘度の最高値が、同じ方法にて測定した原料デンプンのブラベンダー粘度の最高値の50%以下である焙焼デンプンを得ることを特徴とする解決手段9に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段11>
焙焼後の焙焼デンプンの水分含有率が20重量%未満であることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3あるいは解決手段4あるいは解決手段5あるいは解決手段6あるいは解決手段7あるいは解決手段8あるいは解決手段9あるいは解決手段10に記載の焙焼デンプンの製造方法。
<解決手段12>
焙焼後の焙焼デンプンのpH値が原料デンプンのpH値を上回らないことを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3あるいは解決手段4あるいは解決手段5あるいは解決手段6あるいは解決手段7あるいは解決手段8あるいは解決手段9あるいは解決手段10あるいは解決手段11に記載の焙焼デンプンの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の解決手段1〜8の発明によれば、化学薬品を添加することなく焙焼という物理的な処理のみでブラベンダー粘度が原料デンプンの半分以下の低粘度のデンプン粉末を得ることができる。このデンプン粉末は、麺類の打ち粉用や食品の希釈材や粉末基剤、医薬用の薬剤(錠剤)の賦型剤として最適であり、特に打ち粉や食品の希釈材や粉末基剤として使用された場合、最終販売製品の原材料欄に食品添加物の「加工でん粉」ではなく単に「でん粉」とだけ表示すれば良いので、ナチュラル嗜好の強い消費者においても抵抗なく受け入れられる。
【0021】
同じく本発明の解決手段1〜8の発明によれば、処理の際に酵素を用いていないので、得られる低粘度のデンプンに甘みが付与されてしまうことがなく、また吸湿性を生じることもなく、麺類の打ち粉用や食品の希釈材や粉末基剤、医薬用の薬剤(錠剤)の賦型剤として問題なく使用できる。
【0022】
本発明の解決手段9の発明によれば、粘度の測定方法として、デンプンの粘度の測定に最も普通に用いられているブラベンダー粘土測定器を用いることが開示されているので、当業者であれば誰でも簡単に焙焼デンプンと原料デンプンの粘度の比較を行うことが可能である。
【0023】
本発明の解決手段10の発明によれば、ブラベンダー粘度の測定の際に、測定を50℃から開始し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させ、95℃で10分間保持し、測定中の最高粘度が原料デンプンの半分以下の焙焼デンプンを得ることとしているので、デンプンの粒子が完全糊化状態に至るまでのすべての状態を計測しており、測定方法としては最も適切なものである。
【0024】
このように、デンプンの粒子が完全糊化状態に至るまでのすべての状態を計測して、最高粘度が原料デンプンの半分以下の焙焼デンプンを得ることとすれば、たとえば、最終製品が打ち粉であった場合においても、麺類を茹でている間に粘度が高くなって茹汁がドロドロになるようなことがない。あるいは例えば胡椒のような高温の食品(例としてラーメンなど)に使われる可能性のあるものが最終製品であっても、スープに振りかけてもスープの粘度が高くならないので、安心して用いることができる。
【0025】
また、得られる焙焼デンプンの粘度が原料のデンプンの粘度半分以下であるので、原料デンプンが輸入デンプンであった場合においても、出荷される製品の検査において問題は生じない。すなわち、加工用デンプンとして輸入しておいてそれを食品用に使用したと看做されるおそれがない。
【0026】
本発明の解決手段11の発明によれば、焙焼後の焙焼デンプンの水分含有率が20重量%未満であるので、本発明のデンプンを使用した製品は、粉体の流動性や拡散性の改善、また保存中の吸湿によるカタマリの発生などの製品の劣化を防ぐことが可能となる。さらに、本発明の解決手段12の発明によれば、焙焼後の焙焼デンプンのpH値が原料デンプンのpH値を上回ることがないので、食品用として用いる際にも何等問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図2】本発明の実施例1の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図3】本発明の実施例1の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図4】本発明の実施例2の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図5】本発明の実施例3の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図6】本発明の実施例4の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図7】本発明の実施例4の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図8】本発明の実施例5の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図9】本発明の実施例6の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図10】本発明の実施例6の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図11】本発明の実施例7の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図12】本発明の実施例7の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図13】本発明の実施例8の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図14】本発明の実施例8の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図15】本発明の実施例9の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図16】本発明の実施例9の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図17】本発明の実施例10の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図18】本発明の実施例10の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図19】本発明の実施例11の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【図20】本発明の実施例11の方法によって得られた試料の粘度曲線グラフとデータである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、デンプンを低粘度化する方法として、熱による焙焼という物理的手段のみを用いたものであって、酸化剤や塩基類等の化学薬品はもとより酵素の類も一切添加しない。また水分も添加せず、原料となるデンプン粉末を焙焼装置に入れて、原料デンプンの粉体(粉末)を連続式の焙焼装置あるいはバッチ式の焙焼装置にて焙焼するのみである。以下に記載する実施例1〜5は連続式の焙焼装置(パドルドライヤー)、実施例6〜11はバッチ式の焙焼装置(ブーノドライヤー)を用いている。
【0029】
原料としては、ごく一般的に用いられるデンプンとして、本実施例では馬鈴薯デンプン(実施例1〜3、6、)、サゴデンプン(実施例4、5、7)、タピオカデンプン(実施例8)、コーンスターチ(実施例9)、ワキシースターチ(実施例10)、甘藷デンプン(実施例11)を用いたが、この他にも、小麦デンプン等を用いることが可能である。いずれも加工用デンプンの原料として一般的に用いられるものである。
【0030】
実施例1〜5に関しては、連続的な焙焼装置として一般的に用いられるパドルドライヤーを用いたが、連続的な焙焼装置としてはこれに代えて例えばロータリーキルン等を用いても問題はない。いずれの装置も胴部に容れた原料を攪拌し、原料デンプンの粉体(粉末)を流動(移動)させながら焙焼を行うので、原料の焙焼が満遍なく効率的に行えるという特徴を有する。また、原料デンプンが焦げ付いたりする事態もバッチ式の焙焼装置に比較すれば回避しやすい。したがって、このような特徴を有する装置や方法であれば、パドルドライヤーやロータリーキルン以外の装置や方法を用いてもむろん構わない。連続的な焙焼装置においては、原料デンプンの粉体(粉末)を流動(移動)させながら焙焼することが肝要となる。
【0031】
実施例1〜5に関しては、馬鈴薯デンプンにては焙焼温度が180℃〜210℃の範囲内のもので有意な結果が得られた。また、サゴデンプンにおいては、焙焼温度が180℃〜220℃の範囲内のもので有意な結果が得られた。これは、一般的に行われるデンプンの焙焼温度(100℃〜170℃程度)に比較するとかなり高温である。一般に行われるデンプンの焙焼は、水分含有量の減少、すなわち乾燥を目的として行われるため、100℃〜170℃程度の低温で良いが、本発明の目的は、焙焼によりデンプン分子の鎖に結合力の低下した部分をつくって、これによりデンプン全体を低粘度化するところにあるので、上記のような高温にて焙焼されるものである。
【0032】
実施例1〜5に関しては、温度が180℃に満たないとデンプン分子の鎖に結合力の低下した部分をつくる作用が充分に働かず、得られた焙焼デンプンの最高粘度が原料デンプンの最高粘度の50%の数値を上回ることとなって製品としては使用できない。しかるに、温度が210℃(馬鈴薯デンプン)あるいは220℃(サゴデンプン)を超えてしまうと、流動させながら焙焼していてもデンプンが焦げはじめ、やはり得られた焙焼デンプンは製品としては使用できなくなる。この事情は原料となるデンプンの種類にも当然関係する。
【0033】
連続式の装置においては、焙焼時間は、焙焼温度と密接な関連を持っている。すなわち、焙焼温度が低くなれば焙焼時間を長くする必要があり、逆に焙焼温度を高くすれば焙焼時間は短くて済む。今回、馬鈴薯デンプンを原料に用いて焙焼温度を180℃や182℃と低くしたケースでは、焙焼時間を30分〜70分と長くしなければ有意な結果は得られなかった。一方、サゴデンプンで焙焼温度を上限の220℃とした場合には、焙焼時間11分で有意な結果が得られた。
【0034】
また、上述のように、本発明の方法では通常の焙焼よりさらに高温で焙焼を行うため、水分含有量も通常の焙焼工程(100℃〜170℃程度)において得られるデンプン製品の水分含有量に比較してさらに小となる(この場合、同一焙焼時間での比較である)。すなわち、通常の焙焼工程(100℃〜170℃程度)の場合には、水分含有量は13〜18%程度であるが、本発明の実施例1〜5の方法(180℃〜220℃)では数%以下となり、0%の場合もある。これは、そのまま出荷しても対応可能な用途がさらに広がることを意味しており、この点においても本発明の方法により得られる焙焼デンプンは、従来の製品に比較して大きな長所を有するものといえる。
【0035】
実施例6〜11に関しては、バッチ式の焙焼装置として一般的に用いられるブーノドライヤーを用いたが、バッチ式の焙焼装置としてはこれに代えて例えばトンネルキルン等を用いても問題はない。いずれの装置も容器に容れた原料を、一定の割合で温度を上昇させながら一定時間焙焼を行うので、連続式の焙焼装置のように材料を常に流動(移動)させながら焙焼するということはない。したがって、長時間に亘り高温焙焼すると、原料デンプンが焦げ付いたりする事態も連続式の焙焼装置に比較すれば発生しやすい。また、装置の温度がある程度一定に保持される点では連続式の焙焼装置と同様であるが、バッチ式の焙焼装置においては材料の移動がないため、容器の中の材料の品温をセンサで測り、その温度があらかじめ設定した温度に達したときに焙焼を停止するという方法をとる。したがって実施例6〜11に関しては、実施例1〜5と異なり、温度は加熱を停止させたときの最終的な品温を表わすと考えることができる。連続式の焙焼装置では、品温を表示するのではなくあくまで機械内部の温度表示であるが、バッチ式の焙焼装置においては、品温そのものを特定できる点が長所となる。
【0036】
実施例6〜11に関しては、馬鈴薯デンプンにては焙焼温度が130℃〜180℃の範囲内のもので有意な結果が得られた。また、サゴデンプンにおいては、焙焼温度が140℃〜180℃の範囲内のもので有意な結果が得られた。さらにタピオカデンプンにおいては、焙焼温度が170℃〜180℃の範囲内のもので有意な結果が得られ、コーンスターチにおいては焙焼温度が160℃〜180℃の範囲内のもので有意な結果が得られ、ワキシースターチにおいては、焙焼温度が140℃〜170℃の範囲内のもので有意な結果が得られ、甘藷デンプンにおいては、焙焼温度が140℃〜180℃の範囲内のもので有意な結果が得られた。実施例1〜5に比較すると、馬鈴薯デンプンにてもサゴデンプンにても温度範囲は下方に遷移しているが、これは、材料が装置内部にて移動されることがないので当然サンプルが吸収する単位時間当たりの熱量は連続式の装置による焙焼の場合に比べて大きくなるからであると考えられる。
【0037】
実施例6〜11に関しては、温度が130℃(馬鈴薯デンプン)あるいは140℃(サゴデンプン、ワキシースターチ、甘藷デンプン)あるいは160℃(コーンスターチ)あるいは170℃(タピオカデンプン)に満たないとデンプン分子の鎖に結合力の低下した部分をつくる作用が充分に働かず、得られた焙焼デンプンの最高粘度が原料デンプンの最高粘度の50%の数値を上回ることとなって製品としては使用できない。一方、温度が170℃(ワキシースターチ)あるいは180℃(馬鈴薯デンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、コーンスターチ、甘藷デンプン)を超えてしまうとデンプンが焦げはじめ、やはり得られた焙焼デンプンは製品としては使用できなくなる。
【0038】
バッチ式の焙焼装置を用いた実施例6〜11においては、焙焼時間と焙焼温度の関連は、連続式の焙焼装置を用いた実施例1〜5とは異なっている。すなわち、実施例1〜5においては装置内部にて絶えず材料を移送しながら焙焼するため、焙焼温度は装置内部の温度を表示するので、焙焼時間と焙焼温度の間には反比例に近い関係が生じた。即ち、焙焼温度を低くすれば焙焼時間を長くする必要があり、焙焼温度を高くすれば焙焼時間は短くてすむ。しかるに、実施例6〜11においては、焙焼温度は材料の最終温度(最終品温)を表示しており、焙焼時間が長くなれば焙焼温度も高くなるという正比例に近い関係が生じている。
【0039】
なお、水分含有量が通常の焙焼工程(100℃〜170℃程度)において得られるデンプン製品の水分含有量に比較してさらに小となる点については、実施例1〜5と同様である。したがって、そのまま出荷しても対応可能な用途がさらに広がることを意味している点も、実施例1〜5と同様である。
【0040】
本発明の方法による焙焼デンプンの粘度を計測するにあたっては、どの実施例においても、デンプン類の粘度計測において普通に用いられているブラベンダー粘度測定器を用いた。その理由は、ブラベンダー粘度測定器による結果で表示すれば当業者には最も分かりやすい点と、さらには、ブラベンダー粘度測定器は製品の温度を変化させていった場合の粘度の変化を連続的に計測できる点の2点である。すなわち、徐々に温度を上昇させて95℃で10分間保持することにより、デンプン粒子が完全糊化するまでの粘度を連続的に計測できるという特徴を有している。本発明の方法による焙焼デンプンの粘度を計測においては、デンプン粒子が完全糊化しても粘度が高くならないという部分を計測できることが重要である。
【0041】
本発明の方法によって得られる焙焼デンプンの用途は、既に述べたように麺類の打ち粉、食品用の希釈剤や粉末基剤、そして医薬用(錠剤)の賦型剤である。これらの用途のうち、医薬用の賦型剤としての用途以外においては高温下の状況で用いられる可能性があるため、上記のような高温下における粘度測定には、こういった使用形態上の意味合いも含まれている。
【0042】
ブラベンダー測定器による粘度の計測は、デンプン粉末を水に溶いて水溶液の状態で行われる。その際の固形物(デンプン成分)の比率は、原料デンプンの種類によって最適値が決まっているが、通常凡そ数%程度である。本発明の実施例においては、馬鈴薯デンプンにては固形物が4%の水溶液、サゴデンプン、タピオカデンプン、ワキシースターチ、甘藷デンプンにおいては固形物が6%の水溶液、コーンスターチにおいては固形物が8%の水溶液を用いたが、これは、夫々のデンプンにおける最適値である。なお、ブラベンダー測定器による温度の上昇及び降下は通常は1分間に1.5℃として設定される。
【0043】
なお、粘度の測定は、試料の温度が50℃を超えた時点から開始することとした。これは、本発明の実施例にて使用した馬鈴薯やサゴなどのデンプン粉末の水溶液は一般的に50℃未満では糊化が始まらす、粘度が出ないからである。
【実施例1】
【0044】
実施例1は、原料1に馬鈴薯デンプンを、焙焼装置に、連続式の焙焼装置であるパドルドライヤーを用い、焙焼温度をまず182℃と比較的低めに設定して、焙焼時間を変化させて3種類の試料を得た。夫々、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3とする。この3つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図1参照)。なお、固形分(デンプン成分)4%は、馬鈴薯デンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0045】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例1−1が2.56%、実施例1−2が1.56%、実施例1−3が1.00%であった。焙焼時間は実施例1−1が38分、実施例1−2が40分、実施例1−3が42分であるので、焙焼時間を長くすればするほど水分含有量が顕著に減少することがわかる。また、pH値は実施例1−1が6.24、実施例1−2が6.08、実施例1−3が5.97であった。
【0046】
なお、比較のために、焙焼前の原料1も同じ条件にて測定した。原料1は水分含有量が18.89%(重量%)、pH値が7.00であったが、これを固形分(デンプン成分)が4%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。なお、原料1の焙焼にても、焙焼装置としては、連続式の焙焼装置であるパドルドライヤーを使用した。実施例1にては、原料1の最高粘度が1223B.U.であるので、その50%は611.5B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が611.5B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0047】
実施例1−1(182℃で38分間焙焼)においては、63.8℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は200B.U.に達した。その後もわずかに粘度は上昇したが、95℃の温度保持区間の終わり(測定開始後40分)で記録した最高粘度でも218B.U.であり、611.5B.U.以下という条件からすれば充分に有意の結果が得られた。
【0048】
実施例1−2(182℃で40分間焙焼)においては、73.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は100B.U.近くに達した。その後もわずかに粘度は上昇したが、95℃の温度保持区間の終わり(測定開始後40分)で記録した最高粘度でも117B.U.であり、実施例1よりさらに有意の結果が得られた。
【0049】
実施例1−3(182℃で42分間焙焼)においては、95.0℃の温度保持区間に入ってもしばらくは粘度が出ず、測定開始後32分頃、95.0℃の温度保持区間に入って約2分後から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、95.0℃の温度保持区間の終わり(測定開始後40分)で記録した最高粘度でも57B.U.であり、実施例1−2よりさらに有意の結果が得られた。実施例1の焙焼温度182℃の3種の実施例の中では最高の成績であった。
【0050】
図1には、比較のために原料1(馬鈴薯デンプン)を同一条件(固形物4%)で測定した結果も掲げてある。原料1は、61.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約13分で温度が70.3℃になった時点で最高粘度1223B.U.を記録した。その後はゆっくりと粘度が下がり続け、95℃保持区間では約600〜440B.U.程度となった。
【0051】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料1と各実施例の最高粘度比率(各実施例の最高粘度/原料1の最高粘度)を出してみると、実施例1−1は17.8%、実施例1−2は9.6%、実施例1−3は4.7%となった。最高粘度比率は小さければ小さいほど原料から焙焼によって低粘度の試料が得られたことを示しており、焙焼効果が高いことを表しているものと考えることができる。この3種の実施例では、一番粘度が高かった実施例1−1でも最高粘度比率が20%以下であり、3種とも製品として充分に使用できるものであることが示された。
【0052】
次に、実施例1−4として、原料に実施例1−1〜1−3と同じ馬鈴薯デンプン(原料1)を用い、温度を少し高めの201℃として30分間焙焼した(図2)。この試料に水を加えて固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図2参照)。この際、デンプン粉末の水分含有量は、2.00%であった。また、pH値は6.17であった。
【0053】
実施例1−4(201℃で30分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度63.4℃で粘度が出始めたが、粘度曲線の上昇は緩やかで、温度が95.0℃になった時点(測定開始後30.0分)で最高粘度147B.U.を記録し、その後はわずかに粘度が下がり、95℃での10分間の温度保持区間の最後においても、粘度は145B.U.程度であった。実施例1−4は最高粘度が147B.U.であり、本発明の範囲内に充分入る(最高粘度比率12.0%)。製品としては熱をかけてデンプン粒子が完全糊化しても粘度が150B.U.以下の優秀なものであるということができる。
【0054】
実施例1−4の原料1は、実施例1−1〜1−3の原料1と同じものである。実施例1−1〜1−3では焙焼温度が182℃とかなり低めであったので、焙焼時間を38分〜42分と長めに設定した。しかるに、実施例1−4では焙焼温度が201℃と実施例1−1〜1−3よりはかなり高めであるので、焙焼時間を30分と短く設定した。結果は、実施例1−4は実施例1−2(焙焼温度182℃、焙焼時間40分)と略似た粘度曲線を描くこととなった。
【0055】
図3に示す2つの例は、得られた2つの試料が両方とも本発明の要件を満たすものではなかったため、内容としては比較例として参考に掲げるものである。ここでは、原料として実施例1−1〜1−4と同じ馬鈴薯デンプン(原料1)を用い、焙焼温度を120℃とかなり低めに設定し、かわりに焙焼時間を90分と長めに設定して、2種類の試料を得た。夫々、比較例1−1、比較例1−2とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した。この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例1−1が0.78%、比較例1−2が0.00%であった。また、pH値は比較例1−1が6.76、比較例1−2が6.79であった。
【0056】
比較例1−1(120℃で90分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度58.1℃で粘度が出始め、粘度は急激に上昇して、温度が81.8℃になった時点(測定開始後21.2分)で最高粘度1008B.U.を記録し、その後はゆるやかに粘度が下がり続けた。95℃での10分間の温度保持区間において粘度が600B.U.を下回り、500B.U.をわずかに下回ったところで終了した。比較例1−1は最高粘度が1008B.U.であり、最高粘度比率は82.4%で本発明の範囲内からはすれる結果となった。
【0057】
比較例1−2(120℃で90分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度58.3℃で粘度が出始め、急速に粘性が増加して、測定開始後22.2分、温度83.3℃で最高粘度901B.U.を記録した。その後、粘度曲線は緩やかに下降し、95℃での10分間の温度保持区間においても下がり続けて、温度保持区間の最後においては粘度450B.U.程度となった。比較例1−2も最高粘度が原料1の最高粘度の50%を超えているため(最高粘度比率73.7%)、本発明の圏外となる。
【0058】
比較例1−1、1−2は、焙焼時間を90分とかなり長めに設定したが、焙焼温度を120℃と低く抑えたため、最高粘度が原料1の最高粘度1223B.U.の50%である611.5B.U.をはるかに超えてしまい、本発明の範囲から外れた。同じ馬鈴薯デンプン(原料1)を原料とする実施例1−1〜1−3では、焙焼温度を182℃としたため、焙焼時間は38分から42分と短くても、3例の試料がいずれも本発明の範囲に入っている。なお、比較例1−1、1−2の2試料は焙焼時間も焙焼温度も同一であるが水分含有量0%であった比較例1−2の方が最高粘度も若干低めであった。ここから、120℃という温度では、水分含有量を0%することはできても、原料デンプンの粘度を充分に下げることはできないということが明らかとなった。
【実施例2】
【0059】
図4に示す実施例2は、原料2に馬鈴薯デンプン(原料1の馬鈴薯デンプンとは異なるもの)を用い、焙焼温度を210℃とやや高めに設定して、焙焼時間を変化させて2種類の試料を得た。夫々、実施例2−1、実施例2−2とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した。
【0060】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例2−1が0.33%、実施例2−2が1.33%であった。焙焼時間は実施例2−1が40分、実施例2−2が10分であった。また、pH値は実施例2−1が4.79、実施例2−2が6.32であった。
【0061】
なお、比較のために、焙焼前の原料2も同じ条件にて測定した。原料2は水分含有量が20.74%(重量%)、pH値が6.87であったが、これを固形分(デンプン成分)が4%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。なお、実施例2にて使用した焙焼装置はパドルドライヤーである。実施例2にては、原料2の最高粘度が1340B.U.であるので、その50%は670B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が670B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0062】
実施例2−1(210℃で40分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間においても、95℃での10分間の温度保持区間においても、粘度は0B.U.のままであった。すなわち、実施例2−1は測定の全区間において粘度は0B.U.のままであり、文句なく本発明の範囲に属するものである。製品としては熱をかけても粘度が全く出ない、すなわち粒子が完全糊化しても粘度が全く出ない略理想的なものであるということができる。
【0063】
これに対して実施例2−2は、焙焼温度を10分とかなり短めにした試料である。この場合は、測定開始後29分経過、95.0℃の温度保持区間に入る直前において、温度が93.5℃になったところで最高粘度417B.U.を記録し、その後95℃での10分間の温度保持区間においては若干粘度が低下する傾向が見られた。したがって、実施例2−2も本発明の範囲内となる。
【0064】
なお、原料2の粘度曲線を見ておくと、原料2は、61.6℃で粘度が出はじめ、粘度は急激に上昇して、測定開始後13分少々(温度70.0℃)で最高粘度1340B.U.を記録した。その後、粘度は急速に下降し、95℃での10分間の温度保持区間の最後においては粘度が450B.U.をやや超えるところまで降下した。
【0065】
実施例2−2は、焙焼温度は210℃と設定範囲内の中の高温域であったものの、焙焼温度が10分と短かったため、最高粘度が400B.U.を超える値となった。これは、実施例1の4例と比較するとやや高めの値であるが、原料2の最高粘度が1340B.U.と原料1の1223B.U.より高いためもあると考えられる。同じ馬鈴薯デンプンを原料としていても、実施例1−1のように焙焼時間を40分近いものにすれば、温度が182℃と低くても最高粘度は200B.U.そこそことなる。
【実施例3】
【0066】
実施例3は、原料3に実施例1、実施例2とは別の馬鈴薯デンプンを用い、まず、焙焼温度を200℃に設定して、焙焼時間を変化させて2種類の試料を得た。夫々、実施例3−1、実施例3−2とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図5参照)。
【0067】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例3−1が0.00%、実施例3−2が0.89%であった。焙焼時間は実施例3−1が45分、実施例3−2が30分であった。また、pH値は実施例3−1が6.27、実施例3−2が6.40であった。
【0068】
実施例3−1(200℃で45分間焙焼)においては、59.2℃になった時点から粘度が出始め、実施例3−2(200℃で30分間焙焼)においては、58.0℃になった時点から粘度が出始めた。粘度曲線は双方とも当初急激に、測定後15分を越えたあたりからゆるやかに上昇し、どちらも測定後22分経過して温度が83.0℃になったところで最高粘度となり、粘度曲線はその後ゆるやかに降下した。最高粘度は実施例3−1が310B.U.、実施例3−2が328B.U.で、いずれも原料3の最高粘度1372B.U.の半分以下(約4分の1)であった。したがって、実施例3−1、3−2とも充分に本発明の範囲内とすることができる。
【0069】
なお、95.0℃の温度保持区間においては、実施例3−1が373B.U.から314B.U.にまで粘度が低下、実施例3−2は380B.U.から332B.U.にまで粘度が低下した。
【0070】
次に、原料として実施例3−1、3−2と同じ原料3(馬鈴薯デンプン)を用い、焙焼温度を180℃に設定して、焙焼時間を変化させて2種類の試料を得た。夫々、実施例3−3、実施例3−4とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図5参照)。
【0071】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例3−3、3−4共に0.00%であった。焙焼時間は実施例3−3が30分、実施例3−4が70分とした。また、pH値は実施例3−3が6.60、実施例3−4が6.78であった。
【0072】
実施例3−3(180℃で30分間焙焼)においては、57.8℃になった時点から粘度が出始め、実施例3−4(180℃で70分間焙焼)においては、59.0℃になった時点から粘度が出始めた。粘度曲線は、双方ともに当初急激に、測定後15分頃からゆるやかに上昇し、実施例3−3は測定後25.6分経過、温度が88.4℃となったところで最高粘度642B.U.を記録し、実施例3−4は測定後25.2分経過、温度が87.8℃となったところで最高粘度630B.U.を記録した。
【0073】
粘度曲線はその後両方ともゆるやかに降下し、95.0℃の温度保持区間においては、両例の粘度曲線が略重なり、600B.U.程度から440B.U.程度まで落ちている。
【0074】
実施例3−3、3−4は、焙焼温度が180℃と低かったため、全体に粘度が高く、最高粘度は両例ともに上限(原料3の最高粘度の半分)に迫るものである。しかし、上限値(686B.U.)を超えることはなく、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0075】
なお、比較のために、焙焼前の原料3も同じ条件にて測定した。原料3は水分含有量が20.78%(重量%)、pH値が6.84であったが、これを固形分(デンプン成分)が4%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。なお、実施例3にて使用した焙焼装置はパドルドライヤーである。
【0076】
実施例3と実施例1を比較してみると、両者は同じ馬鈴薯デンプンを原料とするが、原料1と原料3ではやや性質が異なり、原料3は原料1に比べて最高粘度が150B.U.ほど高く出ている。この原料段階での粘度の差が、実施例3と実施例1の粘度曲線の差となって現われているものと考えられる。すなわち、原料3は当初から高粘度であったので、実施例3−1、3−2は実施例1(1−1〜1−3)より高い温度で焙焼しているにもかかわらず最高粘度が高めに出る結果となった。また、粘度曲線も実施例1の4例とは明白に異なり、原料の粘度曲線にやや相似した形状を呈している。
【0077】
実施例1と実施例3−3、3−4を比べてみると、焙焼温度は実施例1−1〜1−3が182℃、実施例3−3、3−4が180℃と2℃の違いしかないのに、実施例1では38分の焙焼(実施例1−1)でも最高粘度が218B.U.でかなり低い値であるが、実施例3−4では70分焙焼しても最高粘度が630B.U.とかなり高い値であった。この原因としては、上記のように原料1と原料3の元々の最高粘度の差(約150B.U.)が第一に考えられるが、それに加えて、実施例1で用いたパドルドライヤーと比較例3で用いたパドルドライヤーが別の装置であった点も関連するものと考えられる。すなわち、装置の性能によっても若干の差異が生じるものと考えられる。
【実施例4】
【0078】
実施例4は、原料4にサゴデンプンを用い、焙焼温度を180℃に設定し、焙焼時間を変化させて2種類の試料を得た。夫々、実施例4−1、実施例4−2とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図6参照)。なお、固形分(デンプン成分)6%は、サゴデンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0079】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例4−1が3.44%、実施例4−2が4.00%であった。焙焼時間は実施例4−1が32分、実施例4−2が38分であった。この実施例4では、焙焼時間が長い実施例4−2の方が水分含有量が多くなっているが、これは、何らかの原因で実施例4−2の方に焙焼後吸湿が発生したせいであると考えられる。また、pH値は実施例2−1が4.07、実施例2−2が4.05であった。
【0080】
なお、比較のために、焙焼前の原料4も同じ条件にて測定した。原料4は水分含有量が15.78%(重量%)、pH値が6.26であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。なお、実施例4にては、焙焼装置としてパドルドライヤーを使用した。実施例4にては、原料4の最高粘度が728B.U.であるので、その50%は364B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が364B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0081】
実施例4−1(180℃で32分間焙焼)においては、78.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はきわめてゆっくりと上昇したが、測定開始後30分で温度が95℃になった時点でも粘度は12B.U.であった。その後も粘度は上昇したが、95℃の温度保持区間の終わり(測定開始後40分)で記録した最高粘度でも30B.U.であり、364B.U.以下という条件からすれば充分に有意の結果が得られた。
【0082】
実施例4−2(180℃で38分間焙焼)においては、温度が上昇して95℃の温度保持区間に入っても粘度は0B.U.のままであり、95℃の温度保持区間の終了時点でも粘度は0B.U.のままであった。したがって、実施例4−2は、製品としては熱をかけても粘度が全く出ない、すなわち粒子が完全糊化しても粘度が全く出ない略理想的なものであるということができる。
【0083】
図6には、比較のために原料4(サゴデンプン)を同一条件(固形物6%)で測定した結果も掲げてある。原料4は、69.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約21分で温度が81.2℃になった時点で最高粘度728B.U.を記録した。その後はゆっくりと粘度が下がり続け、95℃保持区間では500B.U.を切り、95℃保持区間の終端(40分経過)で最低粘度の381B.U.を記録した。
【0084】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料4と各実施例の最高粘度比率(実施例の最高粘度/原料4の最高粘度)を出してみると、実施例4−1は4.1%、実施例4−2は全区間で粘度が0B.U.であったので0%である。実施例4−1の4.1%という数字はきわめて優秀な値であるが、実施例4−2は粘度が全く出ていないので、これをさらに上回ることとなる。
【0085】
図7に示す2つの例は、得られた2つの試料が両方とも本発明の要件を満たすものではなかったため、内容としては比較例として参考に掲げるものである。原料は実施例4−1、4−2と同じサゴデンプン(原料4)であるが、焙焼温度を120℃とかなり低めに設定し、かわりに焙焼時間を60分と長めに設定して、2種類の試料を得た。夫々、比較例4−1、比較例4−2とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図7参照)。この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例4−1が0.78%、比較例4−2が0.33%であった。また、pH値は比較例4−1が5.87、比較例4−2が5.88であった。
【0086】
比較例4−1(120℃で60分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度67.4℃で粘度が出始め、粘度は急激に上昇して、温度が73.3℃になった時点(測定開始後15.5分)で最高粘度649B.U.を記録し、その後はゆるやかに粘度が下がり続けた。95℃での10分間の温度保持区間においても、粘度が520B.U.くらいから緩やかに下がり、400B.U.をわずかに下回ったところで終了した。比較例4−1は最高粘度が649B.U.であり、最高粘度比率は89.1%で本発明の範囲内からはずれる結果となった。
【0087】
比較例4−2(120℃で60分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度67.1℃で粘度が出始め、急速に粘性が増加して、測定開始後15.1分、温度72.7℃で最高粘度630B.U.を記録した。その後、粘度曲線は緩やかに下降し、95℃での10分間の温度保持区間においても下がり続けて、温度保持区間の最後においては粘度400B.U.を下回った。比較例4−2も最高粘度が原料4の最高粘度の50%を超えているため(最高粘度比率86.5%)、本発明の圏外となる。
【0088】
比較例4−1、4−2は、焙焼時間は60分と長いものの、焙焼温度が120℃とかなり低めであったため、最高粘度が364B.U.を超えてしまい、本発明の範囲から外れた。同じサゴデンプンを原料とする実施例4−1、4−2では、焙焼温度を180℃としたため、焙焼時間は実施例4−1が32分、実施例4−2が38分で、いずれも比較例4−1、4−2の2試料より短いものの本発明の範囲に入っている。なお、比較例4−1、4−2の2試料は焙焼時間も焙焼温度も同一であるが水分含有量がやや低めであった比較例4−2の方が最高粘度も若干低めであった。いずれにせよ、120℃という低温では、水分含有量は1%以下にできるが、すなわち乾燥は充分に行われるが、原料デンプンの粘度を充分に下げることはできないということが明らかとなった。
【実施例5】
【0089】
図8に示す実施例5は、原料5として原料4とは異なるサゴデンプンを用い、焙焼時間を11分と短めに設定して、焙焼温度を220℃と、206℃とやや高めの温度に設定して、2種類の試料を得た。夫々、実施例5−1、比較例5−1とする。この2つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した。この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例5−1が1.11%、比較例5−1が1.22%であった。また、pH値は実施例5−1が4.39、比較例5−1が4.35であった。
【0090】
なお、比較のために、焙焼前の原料5も同じ条件にて測定した。原料5は水分含有量が13.11%(重量%)、pH値が5.90であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。なお、実施例5にて使用した焙焼装置はパドルドライヤーである。実施例5にては、原料5の最高粘度が594B.U.であるので、その50%は297B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が297B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0091】
実施例5−1(220℃で11分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度66.8℃で粘度が出始めたが、粘度曲線の上昇は緩やかで、温度が73.1℃になった時点(測定開始後15.4分)で最高粘度52B.U.を記録し、その後はゆるやかに粘度が下がり続けた。95℃での10分間の温度保持区間においても、粘度が30B.U.くらいから緩やかに下がり、粘度20B.U.程度で終了した。実施例5−1は最高粘度でも52B.U.であり、最高粘度比率は8.8%で本発明の範囲内に充分入る有意の測定結果であり、製品としては熱をかけても粘度が殆ど出ない、すなわち粒子が完全糊化しても粘度が殆ど出ない優秀なものであるということができる。
【0092】
比較例5−1(206℃で11分間焙焼)においては、50℃〜95℃までの温度上昇区間において、温度68.0℃で粘度が出始め、急速に粘性が増加して、測定開始後15分半、温度73.3℃で最高粘度388B.U.を記録した。その後、粘度曲線は緩やかに下降し、95℃での10分間の温度保持区間においても下がり続けて、温度保持区間の最後においては粘度200B.U.を下回った。比較例5−1は最高粘度が原料5の最高粘度の50%を超えているため(最高粘度比率65.3%)、本発明の圏外となる。
【0093】
なお、原料5の粘度曲線を見ておくと、原料5は、69.4℃で粘度が出はじめ、粘度は急激に上昇して、測定開始後17分弱(温度75.2℃)で最高粘度594B.U.を記録した。その後、粘度は緩やかに下降し、95℃での10分間の温度保持区間の最後には約300B.U.程度にまで降下した。
【0094】
比較例5−1は、焙焼時間は11分と実施例5−1と同じであったが、焙焼温度が206℃で実施例5−1より14℃低い。このため、最高粘度が297B.U.を超えてしまい、本発明の範囲から外れた。同じサゴデンプンを原料とするケースは、実施例4−1、4−2であるが、実施例4−1、4−2では、焙焼温度は180℃と低いものの、焙焼時間は実施例4−1が32分、実施例4−2が38分で、いずれも比較例5−1の約3倍の時間をかけて焙焼している。サゴデンプンは馬鈴薯デンプンに比べて短い焙焼時間でも、比較的有意な結果となる傾向があるものの、11分というかなり短い焙焼時間では、焙焼温度を220℃にまで高めないと有意な結果が得られないことが判明した。ただし、実施例5−1の粘度曲線を見ると、相当低いレベルで推移しているので、実際には11分より短い時間でも焙焼温度が高ければ有意な結果となることは予測できる。
【実施例6】
【0095】
実施例6は、原料6に馬鈴薯デンプンを、焙焼装置に、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを用い、焙焼温度を、最終品温が130℃から10℃刻みに180℃まで変化させて、実施例6−1〜6−6まで6種類の試料を得た。以下、実施例6以降については、最終品温のことを焙焼温度と称する。焙焼時間は、焙焼装置がバッチ式であるので、焙焼温度に略正比例するかたちとなるが、実際には、焙焼温度が高くなるにつれて温度の上昇の仕方が鈍化したので、10℃上昇させるに要する時間も少しずつ増加した。すなわち、実施例6−1(130℃/24分)と実施例6−2(140℃/29分)の焙焼時間の差は5分であるが、実施例6−5(170℃/51分)と実施例6−6(180℃/63分)の焙焼時間の差は12分にも伸びている。
【0096】
実施例6−1〜6−6の6つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が4%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図9、図10参照)。なお、固形分(デンプン成分)4%は、前述のように馬鈴薯デンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0097】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、実施例6−1が3.89%、実施例6−2が2.67%、実施例6−3が1.56%、実施例6−4が1.33%、実施例6−5が1.44%、実施例6−6が1.50%であった。また、焙焼温度/時間は実施例6−1が130℃/24分、実施例6−2が140℃/29分、実施例6−3が150℃/36分、実施例6−4が160℃/43分、実施例6−5が170℃/51分、実施例6−6が180℃/63分であった。理論的には焙焼温度を高く、焙焼時間を長くすればするほど水分含有量が減少するはずであるが、実際には水分含有量の減少が目立つのは140℃までで、それ以上は水分含有量が1.5%前後であまり変化しない結果となった。また、pH値は実施例6−1が6.61、実施例6−2が6.32、実施例6−3が6.25、実施例6−4が6.28、実施例6−5が6.09、実施例6−6が5.98であった。
【0098】
なお、比較のために、焙焼前の原料6も同じ条件にて測定した。原料6は水分含有量が18.33%(重量%)、pH値が7.30であったが、これを固形分(デンプン成分)が4%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例6にては、原料6の最高粘度が1285B.U.であるので、その50%は642.5B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が642.5B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0099】
実施例6−1(焙焼温度130℃/焙焼時間24分)においては、61.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は600B.U.に達した(図9参照)。その後もわずかに粘度は上昇し、測定開始後32分で最高粘度が626B.U.に達した。642.5B.U.以下という条件からすればぎりぎりで有意の結果といえる。
【0100】
実施例6−2(焙焼温度140℃/焙焼時間29分)においては、61.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は250B.U.に達した。その後もわずかに粘度は上昇し、95℃の温度保持区間の終わり近く(測定開始後38分)で最高粘度287B.U.を記録した。これは、限界数値の642.5B.U.の半分以下であって、実施例6−1よりかなり有意の結果が得られたといえる。
【0101】
実施例6−3(焙焼温度150℃/焙焼時間36分)は、63.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は200B.U.を少し越えた。その後もわずかに粘度は上昇し、95℃の温度保持区間の終わり(測定開始後40分)で最高粘度245B.U.を記録した。これも限界数値の642.5B.U.の半分以下であって、実施例6−1よりかなり有意の結果である。ただ、実施例6−2と比較すれば、やや粘度は低いものの顕著な差が生じているとはいえない。
【0102】
実施例6−4(焙焼温度160℃/焙焼時間43分)は、62.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくりと上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は200B.U.に迫ったが、その後は粘度は略一定で推移した。最高粘度は95℃の温度保持区間の始まった2分後(測定開始後32分)で記録され、194B.U.であった。これは、実施例6−3より51B.U.も低く、かなり有意の結果であるといえる。
【0103】
実施例6−5(焙焼温度170℃/焙焼時間51分)は、62.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆるやかに上昇して、測定開始後30分で温度が95℃になった時点で粘度は100B.U.を越えたが、その後は略一定で推移した。最高粘度は95℃の温度保持区間の始まった2分後(測定開始後32分)で記録され、118B.U.であった。これは、実施例6−4より76B.U.も低く、さらに有意の結果であるといえる。
【0104】
実施例6−6(焙焼温度180℃/焙焼時間63分)は、61.6℃になった時点から粘度が出始めたが、粘度曲線の上昇は非常に緩やかであり、測定開始後30分で温度が95℃になった時点でも50B.U.以下であり、その後は略一定で推移した。最高粘度は95℃の温度保持区間の始まった2分後(測定開始後32分)で記録され、わずかに39B.U.であった。これは、実施例6−4よりさらに79B.U.も低く、非常に有意の結果であるといえる。
【0105】
図9、図10には、比較のために原料6(馬鈴薯デンプン)を同一条件(固形物4%)で測定した結果も掲げてある。原料6は、62.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約13.7分で温度が70.6℃になった時点で最高粘度1285B.U.を記録した。その後はゆっくりと粘度が下がり続け、95℃保持区間に入ってすぐに半分(642.5B.U.)以下の粘度となった。
【0106】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料6と各実施例の最高粘度比率(実施例の最高粘度/原料6の最高粘度)を出してみると、実施例6−1は48.7%、実施例6−2は22.3%、実施例6−3は19.1%、実施例6−4は15.1%、実施例6−5は9.2%、実施例6−6は3.0%となった。最高粘度比率は小さければ小さいほど原料から焙焼によって低粘度の試料が得られたことを示しており、焙焼効果が高いことを表しているものと考えることができる。
【0107】
実施例6の6例は、粘度の低下具合によって3つのグループに分けることができる。まず第1グループは実施例6−1であり、これは最高粘度比率が48.7%とぎりぎりの値である。次の第2グループは実施例6−2と実施例6−3であり、最高粘度比率は実施例6−1の半分程度に低下する。最後の第3グループには実施例6−4〜6―5の3例が入り、焙焼温度が10℃上がるごとに一定割合で顕著な粘度低下が見られる。この結果からすれば、第1グループの実施例6−1は、最高粘度が原料6の最高粘度の50%ぎりぎりなので、実際には使用できるかどうかわからないが、実施例6−2以降は充分に製品化が可能である。
【実施例7】
【0108】
次に、デンプンの種類をサゴデンプンに変えて、同様の試験を行った。すなわち、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを使用して、焙焼温度を10℃刻みで上昇させて焙焼した試料をブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の測定を行った。この場合は、焙焼温度を130℃から開始して、180℃に至るまで6つのサンプルを得たが、結果的には130℃のサンプルは最高粘度が原料の最高粘度の50%を超えてしまい、比較例となった(比較例7−1)。残る5サンプルはすべて有意の結果を見た(実施例7−1〜7−5)。
【0109】
粘度の測定方法は、具体的には以下のとおりである。7つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図11、図12参照)。なお、固形分(デンプン成分)6%は、前述のようにサゴデンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0110】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例7−1が4.33%、実施例7−1が2.67%、実施例7−2が3.33%、実施例7−3が2.00%、実施例7−4が2.00%、実施例7−5が1.33%であった。また、焙焼温度/時間は比較例7−1が130℃/22分、実施例7−1が140℃/25分、実施例7−2が150℃/32分、実施例7−3が160℃/35分、実施例7−4が170℃/40分、比較例7−5が180℃/50分であった。さらに、pH値は比較例7−1が4.21、実施例7−1が4.42、実施例7−2が4.08、実施例7−3が4.09、実施例7−4が4.06、実施例7−5が4.29であった。
【0111】
なお、比較のために、焙焼前の原料7も同じ条件にて測定した。原料7は水分含有量が14.67%(重量%)、pH値が4.60であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例7にては、原料7の最高粘度が501B.U.であるので、その50%は250.5B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が250.5B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0112】
比較例7−1(焙焼温度130℃/焙焼時間22分)においては、69.4℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後16.3分で温度が74.5℃になった時点で最高粘度252B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで130B.U.程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで略100B.U.となった。最高粘度252B.U.は、原料7の最高粘度の50%である250.5B.U.をわずかに上回っており、比較例となった。
【0113】
実施例7−1(焙焼温度140℃/焙焼時間25分)においては、70.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後16.5分で温度が74.8℃になった時点で最高粘度170B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで略80B.U.となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで70B.U.程度となった。最高粘度170B.U.は、最高粘度比率では33.9%であり、充分に製品として通用するものである。
【0114】
実施例7−2(焙焼温度150℃/焙焼時間32分)においては、70.3℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後16.4分で温度が74.6℃になった時点で最高粘度49B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで略50B.U.となった。その後の粘度低下はきわめてゆるやかであった。最高粘度49B.U.は、実施例7−1の170B.U.よりかなり低く、実施例7−2は温度をかけても粘度がほとんど出ない優秀な製品となると考えられる。
【0115】
実施例7−3(焙焼温度160℃/焙焼時間35分)は、70.9℃になった時点から粘度が出始めたが、粘度曲線はほとんど上昇することなく、測定開始後16.2分で温度が74.3℃になった時点で最高粘度10B.U.を記録した。これは、原料7の最高粘度の50%である250.5B.U.から見れば無視しえるくらいの数値であって、実施例7−3は実施例7−2よりさらに製品としては優秀であるといえる。
【0116】
実施例7−4(焙焼温度170℃/焙焼時間40分)は、測定区間中を通して粘度は0B.U.であった。これは、非常に有意の結果で、製品としては理想的なものであるといえる。
【0117】
実施例7−5(焙焼温度180℃/焙焼時間50分)は、粘度の出始めが測定不能であったが、測定開始後15.3分で温度が73.0℃になった時点で最高粘度4B.U.を記録した。この程度になると、実際は略粘度が0B.U.とみなしてよく、実施例7−5は、製品としては全く粘度が出ていない実施例7−4と同列に扱うことが可能である。
【0118】
図11、図12には、比較のために原料7(サゴデンプン)を同一条件(固形物6%)で測定した結果も掲げてある。原料7は、69.8℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約16.7分で温度が75.1℃になった時点で最高粘度501B.U.を記録した。その後はゆっくりと粘度が下がり続け、95℃保持区間に入ってすぐに300B.U.を切った。
【0119】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料7と各実施例の最高粘度比率(実施例の最高粘度/原料7の最高粘度)をまとめて掲げれば、以下のとおりである。比較例7−1は50.3%、実施例7−1は33.9%、実施例7−2は9.8%、実施例7−3は2.0%、実施例7−4は0.0%、実施例7−5は0.8%である。
【0120】
実施例7においては、焙焼温度が130℃(比較例7−1)でも最高粘度比率が50.3%であり、原料7の最高粘度の略半分となっている。半分をわずかに上回ったので比較例となったが、ここからすると、焙焼温度の下限は130℃を少し上回るところにあるのではないかと想定される。以後、焙焼温度が10℃上昇するごとに最高粘度は急激に低下し、実施例7−3〜7−5では実質的には粘度が0の理想的な製品が得られたといえる。
【実施例8】
【0121】
次に、デンプンの種類をタピオカデンプンに変えて、同様の試験を行った。すなわち、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを使用して、焙焼温度を10℃刻みで上昇させて焙焼した試料をブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の測定を行った。この場合は、焙焼温度を130℃から開始して、180℃に至るまで6つのサンプルを得たが、結果的には160℃以下の4サンプルは最高粘度が原料の最高粘度の50%を超えてしまい、比較例となった(比較例8−1〜8−4)。残る2サンプルは有意の結果を見た(実施例8−1、8−2)。
【0122】
粘度の測定方法は、具体的には以下のとおりである。6つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図13、図14参照)。なお、固形分(デンプン成分)6%は、タピオカデンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0123】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例8−1が5.22%、比較例8−2が3.78%、比較例8−3が2.67%、比較例8−4が1.78%、実施例8−1が1.89%、実施例8−2が1.78%であった。また、焙焼温度/時間は比較例8−1が130℃/16分、比較例8−2が140℃/19分、比較例8−3が150℃/26分、比較例8−4が160℃/29分、実施例8−1が170℃/36分、実施例8−2が180℃/48分であった。さらに、pH値は比較例8−1が6.14、比較例8−2が6.12、比較例8−3が5.93、比較例8−4が5.77、実施例8−1が5.64、実施例8−2が5.39であった。
【0124】
なお、比較のために、焙焼前の原料8も同じ条件にて測定した。原料8は水分含有量が11.44%(重量%)、pH値が6.49であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例8にては、原料8の最高粘度が786B.U.であるので、その50%は393B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が393B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0125】
比較例8−1(焙焼温度130℃/焙焼時間16分)においては、64.4℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後15.5分で温度が73.3℃になった時点で最高粘度722B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで400B.U.を少し上回る程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで350B.U.を下回った。最高粘度722B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.を大幅に上回っており、比較例となった。
【0126】
比較例8−2(焙焼温度140℃/焙焼時間19分)においては、65.3℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後16.2分で温度が74.3℃になった時点で最高粘度658B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで400B.U.を少し上回る程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで350B.U.を下回った。最高粘度658B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.を大幅に上回っており、比較例となった。
【0127】
比較例8−3(焙焼温度150℃/焙焼時間26分)においては、64.4℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後15.1分で温度が72.7℃になった時点で最高粘度529B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで350B.U.をやや上回る程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで略300B.U.となった。最高粘度529B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.をかなり上回っており、これも比較例となった。
【0128】
比較例8−4(焙焼温度160℃/焙焼時間29分)においては、64.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後14.2分で温度が71.3℃になった時点で最高粘度426B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで300B.U.を切り、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで250B.U.をやや上回る程度となった。最高粘度426B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.に近いもののやはり上回っており、これも比較例となった。ただ、最高粘度数値からすれば、実施例8の原料8においては、比較例と実施例の間のボーダーラインは160℃をやや上回るところにあると推定できる。
【0129】
実施例8−1(焙焼温度170℃/焙焼時間36分)においては、64.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後14.3分で温度が71.5℃になった時点で最高粘度326B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで200B.U.をやや上回る程度となり、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで200B.U.を下回った。最高粘度326B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.を70B.U.近く下回っており、実施例となった。
【0130】
実施例8−2(焙焼温度180℃/焙焼時間48分)においては、63.2℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はやや急激に上昇して、測定開始後15.8分で温度が73.7℃になった時点で最高粘度155B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで100B.U.をやや上回る程度となり、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで略100B.U.となった。最高粘度155B.U.は、原料8の最高粘度の50%である393B.U.の半分以下であり、充分に有意な実施例であるといえる。
【0131】
図13、図14には、比較のために原料8(タピオカデンプン)を同一条件(固形物6%)で測定した結果も掲げてある。原料8は、64.9℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約15.6分で温度が73.4℃になった時点で最高粘度786B.U.を記録した。その後はゆっくりと粘度が下がり続け、95℃保持区間に入ってすぐに400B.U.を切り、95℃保持区間の終わりでは350B.U.を下回った。
【0132】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料8と各実施例、比較例の最高粘度比率(実施例の最高粘度/原料8の最高粘度)をまとめて掲げれば、以下のとおりである。比較例8−1は91.9%、比較例8−2は83.7%、比較例8−3は67.3%、比較例8−4は54.2%、実施例8−1は41.5%、実施例8−2は19.7%である。
【0133】
実施例8においては、焙焼温度が160℃までは最高粘度が原料8の最高粘度の半分を上回ってしまい、比較例となった。サゴデンプン(実施例7)が140℃から有意の結果となったのと比べると20℃以上の開きがあり、タピオカデンプンは比較的粘度を落としにくいデンプン種であるということがいえる。これは、サゴデンプンなどに比べると、タピオカデンプンの粒子が細かく、焙焼をしてデンプン分子の鎖を切っても、粒子の大きなデンプン分子に比べると粘度が落ちにくいということであると考えられる。
【0134】
タピオカデンプンにおいては、有意な結果は170℃からであったが、160℃においても最高粘度比率は54.2%であるので、境界数値は上述のように160℃を少し越えたところにあるのではないかと推定される。
【実施例9】
【0135】
次に、デンプンの種類をコーンスターチ(トウモロコシデンプン)に変えて、同様の試験を行った。すなわち、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを使用して、焙焼温度を10℃刻みで上昇させて焙焼した試料をブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の測定を行った。この場合は、焙焼温度を130℃から開始して、180℃に至るまで6つのサンプルを得たが、結果的には150℃以下の3サンプルは最高粘度が原料の最高粘度の50%を超えてしまい、比較例となった(比較例9−1〜9−3)。残る3サンプルは有意の結果を見た(実施例9−1〜9−3)。
【0136】
粘度の測定方法は、具体的には以下のとおりである。6つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が8%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図15、図16参照)。なお、固形分(デンプン成分)8%は、コーンスターチをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0137】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例9−1が4.33%、比較例9−2が1.33%、比較例9−3が1.56%、実施例9−1が0.67%、実施例9−2が0.00%、実施例9−3が0.00%であった。また、焙焼温度/時間は比較例9−1が130℃/21分、比較例9−2が140℃/25分、比較例9−3が150℃/29分、実施例9−1が160℃/35分、実施例9−2が170℃/42分、実施例9−3が180℃/53分であった。さらに、pH値は比較例9−1が4.37、比較例9−2が4.34、比較例9−3が4.35、実施例9−1が4.36、実施例9−2が4.22、実施例9−3が4.16であった。
【0138】
なお、比較のために、焙焼前の原料9も同じ条件にて測定した。原料9は水分含有量が11.90%(重量%)、pH値が4.39であったが、これを固形分(デンプン成分)が8%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例9にては、原料9の最高粘度が763B.U.であるので、その50%は381.5B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が381.5B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0139】
比較例9−1(焙焼温度130℃/焙焼時間21分)においては、71.6℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後26.1分で温度が89.2℃になった時点で最高粘度629B.U.を記録した。その後は粘度は下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで500B.U.を少し下回る程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで400B.U.を下回った。最高粘度629B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.を大幅に上回っており、比較例となった。
【0140】
比較例9−2(焙焼温度140℃/焙焼時間25分)においては、71.8℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後25.4分で温度が88.1℃になった時点で最高粘度460B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入る直前で400B.U.を下回る程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで300B.U.に近づいた。最高粘度460B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.を80B.U.近く上回っており、比較例となった。
【0141】
比較例9−3(焙焼温度150℃/焙焼時間29分)においては、70.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後24.9分で温度が87.4℃になった時点で最高粘度413B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで300B.U.に近づいた。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで250B.U.をやや上回る程度となった。最高粘度413B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.をわずかに上回っており、これも比較例となった。
【0142】
実施例9−1(焙焼温度160℃/焙焼時間35分)においては、69.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はやや急激に上昇して、測定開始後24.9分で温度が87.4℃になった時点で最高粘度320B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで250B.U.を切り、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで200B.U.をやや下回る程度となった。最高粘度320B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.を60B.U.程度下回っており、これは実施例となった。最高粘度数値からすれば、実施例9の原料9においては、比較例と実施例の間のボーダーラインは150℃をやや上回るところにあると推定できる。
【0143】
実施例9−2(焙焼温度170℃/焙焼時間42分)においては、69.8℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆっくり上昇して、測定開始後25.5分で温度が88.3℃になった時点で最高粘度219B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで150B.U.をやや下回る程度となり、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで100B.U.を下回った。最高粘度219B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.のさらに半分近い数値であり、充分に有意な成果であるといえる。
【0144】
実施例9−3(焙焼温度180℃/焙焼時間53分)においては、68.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はゆるやかに上昇して、測定開始後24.0分で温度が86.0℃になった時点で最高粘度87B.U.を記録した。その後は粘度はゆるやかに下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで50B.U.を下回り、その後も粘度はゆるやかに低下して温度保持区間の終わりで略30B.U.を切った。最高粘度87B.U.は、原料9の最高粘度の50%である381.5B.U.の2割程度の値であり、非常に優秀な実施例であるといえる。
【0145】
図15、図16には、比較のために原料9(コーンスターチ)を同一条件(固形物8%)で測定した結果も掲げてある。原料9は、71.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約26.7分で温度が90.1℃になった時点で最高粘度763B.U.を記録した。その後はやや急に粘度が下がり、95℃保持区間に入る前に700B.U.を切り、95℃保持区間ではゆっくりと粘度が低下して、95℃保持区間の終わりでは500B.U.に近づいた。
【0146】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料9と各実施例、比較例の最高粘度比率(各試料の最高粘度/原料9の最高粘度)をまとめて掲げれば、以下のとおりである。比較例9−1は82.4%、比較例9−2は60.3%、比較例9−3は54.1%、実施例9−1は41.9%、実施例9−2は28.7%、実施例9−3は13.8%である。
【0147】
実施例9においては、焙焼温度が150℃までは最高粘度が原料9の最高粘度の半分を上回ってしまい、比較例となった。コーンスターチは、実施例8のタピオカデンプンに比べると粘度は落としやすいが、それでもサゴデンプン(実施例7)に比べると10℃の開きがあり、やはりやや粘度を落としにくいデンプン種である。コーンスターチにおいては、有意な結果は160℃からであったが、150℃においても最高粘度比率は54.1%であるので、境界数値は150℃を少し越えたところにあるのではないかと推定される。
【実施例10】
【0148】
次に、デンプンの種類をワキシースターチに変えて、同様の試験を行った。すなわち、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを使用して、焙焼温度を10℃刻みで上昇させて焙焼した試料をブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の測定を行った。なお、ワキシースターチはワキシーコーンスターチともいい、コーンスターチと同じくトウモロコシデンプンの一種であるが、糯(もち)トウモロコシデンプンともいわれ、アミロースをほとんど含んでいないのが特色である(コーンスターチはアミロースを27%程度含有)。うるち米に対して糯米が対応する場合、トウモロコシではコーンスターチに対してワキシースターチが対応することになる。
【0149】
この場合は、焙焼温度を130℃から開始して、10℃刻みに170℃に至るまで5つのサンプルを得た。180℃にした場合には試料が焦げ始めたので、これは外すこととなった。結果的には130℃のサンプルが最高粘度が原料の最高粘度の50%を超えてしまい、比較例となった(比較例10−1)が、残る4サンプルは有意の結果を見た(実施例10−1〜10−4)。
【0150】
粘度の測定方法は、具体的には以下のとおりである。5つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図17、図18参照)。なお、固形分(デンプン成分)6%は、ワキシースターチをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0151】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例10−1が3.89%、実施例10−1が2.44%、実施例10−2が1.00%、実施例10−3が0.67%、実施例10−4が0.00%、であった。また、焙焼温度/時間は比較例10−1が130℃/21分、実施例10−1が140℃/25分、実施例10−2が150℃/30分、実施例10−3が160℃/35分、実施例10−4が170℃/42分であった。さらに、pH値は比較例10−1が4.38、実施例10−1が4.46、実施例10−2が4.46、実施例10−3が4.46、実施例10−4が4.30であった。
【0152】
なお、比較のために、焙焼前の原料10も同じ条件にて測定した。原料10は水分含有量が13.78%(重量%)、pH値が4.50であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例10にては、原料10の最高粘度が857B.U.であるので、その50%は428.5B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が428.5B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0153】
比較例10−1(焙焼温度130℃/焙焼時間21分)においては、67.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は垂直に近い角度で上昇して、測定開始後14.9分で温度が72.4℃になった時点で最高粘度458B.U.を記録した。その後は粘度は下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで200B.U.を切った。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりでは150B.U.程度となった。最高粘度458B.U.は、原料10の最高粘度の50%である428.5B.U.をわずかに上回っており、比較例となった。
【0154】
実施例10−1(焙焼温度140℃/焙焼時間25分)においては、67.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後15.4分で温度が73.1℃になった時点で最高粘度372B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで150B.U.程度となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで100B.U.に近づいた。最高粘度372B.U.は、原料10の最高粘度の50%である428.5B.U.を50B.U.近く下回っており、有意な結果であり、実施例となった。
【0155】
実施例10−2(焙焼温度150℃/焙焼時間30分)においては、67.1℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後15.3分で温度が73.0℃になった時点で最高粘度243B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで100B.U.を下回った。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで略75B.U.程度となった。最高粘度243B.U.は、原料10の最高粘度の50%である428.5B.U.の約半分であり、充分に有意な実施例であるということができる。
【0156】
実施例10−3(焙焼温度160℃/焙焼時間35分)においては、66.5℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はやや急角度に上昇して、測定開始後15.0分で温度が72.5℃になった時点で最高粘度150B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入る前に50B.U.を切り、その後も粘度は僅かに低下した。最高粘度150B.U.は、原料10の最高粘度の50%である428.5B.U.の3分の1程度であり、実施例10−2よりさらに有意な結果となった。
【0157】
実施例10−4(焙焼温度170℃/焙焼時間42分)においては、69.2℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はわずかに上昇して、測定開始後15.2分で温度が72.8℃になった時点で最高粘度34B.U.を記録した。その後は粘度は略一定ながらわずかに低下し、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ってからは略水平状態で推移した。最高粘度34B.U.は、原料10の最高粘度の50%である428.5B.U.から見ればほとんど無視しえる値であり、きわめて優秀な実施例であるといえる。
【0158】
図17、図18には、比較のために原料10(ワキシースターチ)を同一条件(固形物6%)で測定した結果も掲げてある。原料10は、67.7℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は垂直に近い角度で上昇して、測定開始後約15.4分で温度が73.1℃になった時点で最高粘度857B.U.を記録した。その後はややゆっくりと粘度が下がり、95℃保持区間に入ったところでは350B.U.を切り、95℃保持区間の終わりでは300B.U.を下回った。
【0159】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料10と各実施例、比較例の最高粘度比率(各試料の最高粘度/原料10の最高粘度)をまとめて掲げれば、以下のとおりである。比較例10−1は53.4%、実施例10−1は43.4%、実施例10−2は28.4%、実施例10−3は17.5%、実施例10−4は4.0%である。
【0160】
実施例10においては、焙焼温度が130℃の試料のみが最高粘度が原料10の最高粘度の半分を上回って比較例となったが、後の4試料はすべて有意の結果で実施例となった。ワキシースターチは、実施例9のコーンスターチに比べるとさらに粘度が落としやすいデンプン種であるといえる。焙焼温度が130℃の試料(比較例10−1)でも最高粘度比率は53.4%であるので、境界数値は130℃を少し越えたところにあるのではないかと推定される。
【実施例11】
【0161】
次に、デンプンの種類を甘藷デンプンに変えて、同様の試験を行った。すなわち、バッチ式の焙焼装置であるブーノドライヤーを使用して、焙焼温度を10℃刻みで上昇させて焙焼した試料をブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の測定を行った。この場合は、焙焼温度を130℃から開始して、180℃に至るまで6つのサンプルを得た。結果的には130℃のサンプルが最高粘度が原料の最高粘度の50%を超えてしまい、比較例となった(比較例11−1)が、残る5サンプルは有意の結果を見た(実施例11−1〜11−5)。
【0162】
粘度の測定方法は、具体的には以下のとおりである。6つの試料に水を加えていずれも固形分(デンプン成分)が6%になるように調整してブラベンダー粘度測定器にて温度変化に伴う粘度の変化を測定した(図19、図20参照)。なお、固形分(デンプン成分)6%は、甘藷デンプンをブラベンダー粘度測定器にかける際に選択される標準的な値である。
【0163】
この際、デンプン粉末の水分含有量は、比較例11−1が2.00%、実施例11−1が2.44%、実施例11−2が1.11%、実施例11−3が0.33%、実施例11−4が0.00%、実施例11−5が1.67%であった。また、焙焼温度/時間は比較例11−1が130℃/25分、実施例11−1が140℃/30分、実施例11−2が150℃/34分、実施例11−3が160℃/39分、実施例11−4が170℃/47分、実施例11−5が180℃/58分であった。さらに、pH値は比較例11−1が5.60、実施例11−1が5.51、実施例11−2が5.53、実施例11−3が5.24、実施例11−4が4.97、実施例11−5が5.06であった。
【0164】
なお、比較のために、焙焼前の原料11も同じ条件にて測定した。原料11は水分含有量が15.00%(重量%)、pH値が6.47であったが、これを固形分(デンプン成分)が6%になるように水分調整し、ブラベンダー粘度測定器にかけて粘度の変化曲線を得た。実施例11にては、原料11の最高粘度が786B.U.であるので、その50%は393B.U.となる。したがって、試料の最高粘度が393B.U.を上回らなければその試料は実施例となり、上回ればその試料は比較例ということになる。
【0165】
比較例11−1(焙焼温度130℃/焙焼時間25分)においては、74.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急角度で上昇して、測定開始後21.2分で温度が81.8℃になった時点で最高粘度438B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくりと下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで略400B.U.となった。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりでは370B.U.程度となった。最高粘度438B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.をわずかに上回っており、比較例となった。
【0166】
実施例11−1(焙焼温度140℃/焙焼時間30分)においては、74.2℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後21.1分で温度が81.7℃になった時点で最高粘度362B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで300B.U.に近づいた。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりには300B.U.を下回った。最高粘度362B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.をわずかであるが下回っており、これは実施例となった。
【0167】
実施例11−2(焙焼温度150℃/焙焼時間34分)においては、73.9℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後21.1分で温度が81.7℃になった時点で最高粘度267B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところで200B.U.に近づいた。その後も粘度はゆるやかに低下し、温度保持区間の終わりで略200B.U.となった。最高粘度267B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.より100B.U.以上低く、有意な実施例であるということができる。
【0168】
実施例11−3(焙焼温度160℃/焙焼時間39分)においては、74.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はやや急角度に上昇して、測定開始後20.5分で温度が80.8℃になった時点で最高粘度160B.U.を記録した。その後は粘度はゆっくり下がりはじめ、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ったところでは150B.U.以下となり、その後も粘度は僅かに低下して95℃の温度保持区間の終わりでは略100B.U.となった。最高粘度160B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.のさらに半分以下であり、実施例11−2よりさらに有意な結果となった。
【0169】
実施例11−4(焙焼温度170℃/焙焼時間47分)においては、74.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はわずかに上昇して、測定開始後19.7分で温度が79.6℃になった時点で最高粘度46B.U.を記録した。その後は粘度は略一定ながらわずかに低下し、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ってからは略水平状態で推移した。最高粘度46B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.から見れば1割強であり、きわめて優秀な実施例であるといえる。
【0170】
実施例11−5(焙焼温度180℃/焙焼時間58分)においては、71.0℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線はほんのわずか上昇して、測定開始後18.3分で温度が77.5℃になった時点で最高粘度4B.U.を記録した。その後は粘度はわずかに低下し、測定開始後30分で95℃の温度保持区間に入ってからは略水平状態で推移した。最高粘度4B.U.は、原料11の最高粘度の50%である393B.U.から見れば無視しえる程度であり、実施例11−4を上回る優秀な実施例であるといえる。
【0171】
図19、図20には、比較のために原料11(甘藷デンプン)を同一条件(固形物6%)で測定した結果も掲げてある。原料11は、73.6℃になった時点から粘度が出始め、粘度曲線は急激に上昇して、測定開始後約20.4分で温度が80.6℃になった時点で最高粘度786B.U.を記録した。その後はややゆっくりと粘度が下がり、95℃保持区間に入ったところでは750B.U.を切り、95℃保持区間の終わりでは650B.U.を下回った。
【0172】
温度上昇区間及び温度保存区間にて、原料11と各実施例、比較例の最高粘度比率(各試料の最高粘度/原料11の最高粘度)をまとめて掲げれば、以下のとおりである。比較例11−1は55.7%、実施例11−1は46.1%、実施例11−2は34.0%、実施例11−3は20.4%、実施例11−4は5.9%、実施例11−5は0.5%である。
【0173】
実施例11においては、焙焼温度が130℃の試料のみが最高粘度が原料11の最高粘度の半分を上回って比較例となったが、後の5試料はすべて有意の結果で実施例となった。この結果からすれば甘藷デンプンは、比較的粘度が落としやすいデンプン種であるといえる。焙焼温度が130℃の試料(比較例11−1)で最高粘度比率は55.7%、焙焼温度が140℃の試料(実施例11−1)で最高粘度比率は46.1%であるので、境界数値は130℃と140℃の中間くらいにあるのではないかと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、低粘度のデンプン粉末を得る方法として従来行われていた酸化剤による加水分解、あるいは酵素による加水分解に代わる画期的な方法、すなわち、高温焙焼による低粘度デンプンの製造方法を開示するものであり、産業上大きな意義を有するものである。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、焙焼温度が180℃〜210℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上210℃未満の際には30分以上、焙焼温度が210℃で10分以上であり、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項2】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、原料デンプンを連続的に供給し製品を連続的に取り出す連続式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、焙焼温度が180℃〜220℃の範囲内から選択され、焙焼時間は、焙焼温度が180℃以上220℃未満の際には32分以上、焙焼温度が220℃で11分以上であり、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項3】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが馬鈴薯デンプンの際には、最終品温が130℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである馬鈴薯デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項4】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがサゴデンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるサゴデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項5】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがタピオカデンプンの際には、最終品温が170℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるタピオカデンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項6】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがコーンスターチの際には、最終品温が160℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるコーンスターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項7】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンがワキシースターチの際には、最終品温が140℃〜170℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンであるワキシースターチの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項8】
高温焙焼により焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得る方法であって、
化学薬品や酵素や水を一切添加しない状態の原料デンプンを、一定量の原料デンプンを容器に収納して装置内にて焙焼し、焙焼後に製品を取り出すバッチ式の焙焼装置にて焙焼し、焙焼後の焙焼デンプンの粘度が、原料デンプンの粘度の50%以下の焙焼デンプンを得るものであり、
原料デンプンが甘藷デンプンの際には、最終品温が140℃〜180℃の範囲内から選択される温度となるように焙焼し、
原料デンプンである甘藷デンプンの粘度の50%以下の粘度である焙焼デンプンを得ることを特徴とする
焙焼デンプンの製造方法。
【請求項9】
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度が、焙焼前の原料デンプンのブラベンダー粘度測定器によって測定されたブラベンダー粘度の50%以下の焙焼デンプンを得ることを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5あるいは請求項6あるいは請求項7あるいは請求項8に記載の焙焼デンプンの製造方法。
【請求項10】
焙焼後の焙焼デンプンのブラベンダー粘度測定器によるブラベンダー粘度の測定を50℃から開始し、1分間に1.5℃ずつ温度を上昇させ、95℃で10分間保持して、測定中の焙焼デンプンのブラベンダー粘度の最高値が、同じ方法にて測定した原料デンプンのブラベンダー粘度の最高値の50%以下である焙焼デンプンを得ることを特徴とする請求項9に記載の焙焼デンプンの製造方法。
【請求項11】
焙焼後の焙焼デンプンの水分含有率が20重量%未満であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5あるいは請求項6あるいは請求項7あるいは請求項8あるいは請求項9あるいは請求項10に記載の焙焼デンプンの製造方法。
【請求項12】
焙焼後の焙焼デンプンのpH値が原料デンプンのpH値を上回らないことを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5あるいは請求項6あるいは請求項7あるいは請求項8あるいは請求項9あるいは請求項10あるいは請求項11に記載の焙焼デンプンの製造方法。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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