説明

無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法

【課題】エレベータ装置を利用する無人搬送車について、乗りかごへの入出庫に関して異常が発生した場合に適切な異常検出オペレーションを行うことによって、無人搬送車の保護監視機能の向上を図るとともに、複数の無人搬送車の制御にも対応した無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法を提供する。
【解決手段】無人搬送車4の運行を制御する無人搬送車制御手段5と、無人搬送車4が乗車する乗りかご1を制御するエレベータ制御手段3と、を備える無人搬送車対応エレベータ装置Eにおいて、エレベータ制御手段3は、無人搬送車4が乗りかご1へ乗車する際、無人搬送車4の乗りかご1への入庫の完了を示す信号及び無人搬送車4のかご呼びを示す信号を予め定められた時間内に受信しない場合に、無人搬送車4に異常が生じたと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自立走行を行う無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicles)(以下、適宜「AGV」と表わす。)を用いて種々の荷物を運ぶシステムが数多く利用されている。このシステムは、エレベータ装置を利用して複数階に跨って利用されることもある。無人搬送車がエレベータ装置を利用する場合には、例えば、無線や光電検知装置等を利用し、無人搬送車の移動や乗場呼びやかご呼びを自動登録する。
【0003】
例えば、特許文献1に示す無人搬送車システムにおいては、光電スイッチを用いて無人搬送車の乗場、或いは、乗りかご内での定位置到着を検出し、無線を用いて各定位置間の移動開始、終了の制御、及び各呼びの制御を行っている。
【0004】
このような無人搬送車システムを採用することによって、エレベータの改造を伴うことなく低廉なコストで無人搬送車のエレベータを利用した移動を自動的に実現し得る、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−230938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された無人搬送車システムには、以下の点に配慮がなされていない。
【0007】
すなわち、無人搬送車がエレベータを利用して複数の階床を移動するには、無人搬送車が正常に乗りかごに入庫し、行き先階において正常に出庫することが求められる。上記特許文献1に開示される無人搬送車システムでは、光電スイッチを用いた位置情報の取得について述べられているが、これはあくまでも無人搬送車の乗りかごへの入出庫が正常に行われることを前提とし、異常が発生した場合の制御には触れられていない。
【0008】
また、無人搬送車システムの規模によっては複数台の無人搬送車の制御が行われることになるが、この点についても上記特許文献1には開示されていない。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、エレベータ装置を利用する無人搬送車について、乗りかごへの入出庫に関して異常が発生した場合に適切な異常検出オペレーションを行うことによって、無人搬送車の保護監視機能の向上を図るとともに、複数の無人搬送車の制御にも対応した無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、無人搬送車の運行を制御する無人搬送車制御手段と、無人搬送車が乗車する乗りかごを制御するエレベータ制御手段と、を備える無人搬送車対応エレベータ装置において、エレベータ制御手段は、無人搬送車が乗りかごへ乗車する際、無人搬送車の乗りかごへの入庫の完了を示す信号及び無人搬送車のかご呼びを示す信号を予め定められた時間内に受信しない場合に、無人搬送車に異常が生じたと判断する。
【0011】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法において、エレベータ制御手段が、無人搬送車からのエレベータの利用要求信号を受信するステップと、無人搬送車からの乗場呼びを受信するステップと、乗場呼びを受けて一般乗場呼びの登録受付を禁止するステップと、複数の無人搬送車の複数の階床からの乗場呼びを受信した場合に、複数の乗場呼びに対して応答する順序を定める順位付けを行うステップと、全ての既一般乗場呼びに応答した後、無人搬送車専用運転モードへと移行するステップと、無人搬送車からの乗場呼びに応答して乗りかごを目的階へと移動させるステップと、乗りかご内への無人搬送車の入庫完了信号を受信し、さら記無人搬送車からの行先階呼びを受信するステップと、入庫完了信号或いは、行先階呼びの受信が所定の時間内に行われなかったときには、無人搬送車の前記乗りかごへの入庫に異常が発生したと判断し、異常検出オペレーションへと移行するステップとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エレベータ装置を利用する無人搬送車について、乗りかごへの入出庫に関して異常が発生した場合に適切な異常検出オペレーションを行うことによって、無人搬送車の保護監視機能の向上を図るとともに、複数の無人搬送車の制御にも対応した無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における無人搬送車対応エレベータ装置の全体構成を示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるエレベータ制御手段の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態における無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、無人搬送車対応エレベータ装置Eの全体構成を示す全体図である。エレベータ装置Eは、乗客或いは後述する無人搬送車が乗る乗りかご1と、この乗りかご1にその一端が連結され図示しない他端に釣り合い重りが連結されるロープRとから構成される。なお、図示されてはいないが、ロープRが巻き掛けられ乗りかご1を昇降路H内において昇降させるための巻上機や調速機等、通常エレベータ装置Eを構成する各要素は当然設けられている。
【0016】
なお、図1に示すように、本発明の実施の形態におけるエレベータ装置Eは、4階建ての建物に設置されているが、設置される建物の階数は問わない。また、示されているエレベータ装置Eの数は1基であるが、エレベータ装置Eは複数基設置されていても良い。
【0017】
乗りかご1内には、かご内呼び登録ボタン2が設けられており、乗りかご1に乗り込んだ乗客が目的とする階床を登録するために使用する。
【0018】
乗りかご1の運転制御は、エレベータ制御手段3によって行われる。図1においては、昇降路Hの横に示されているが、エレベータ装置Eのどの場所に設けられていても良い。また、図1におけるエレベータ制御手段3には、このエレベータ制御手段3に向かう破線で示される矢印と、エレベータ制御手段3から外に向かう破線の矢印とが表わされている。これは、前者がエレベータ制御手段3に送信される各種信号の流れを示し、後者は、エレベータ制御手段3からエレベータ装置Eの各要素に対して出される制御信号の流れを示すものである。
【0019】
図2は、エレベータ制御手段3の内部構成を示すブロック図である。エレベータ制御手段3は、受信手段3aと、判断手段3bと、計時手段3cと、送信手段3dとから構成される。なお、図2で示す受信手段3aに向かう矢印、及び送信手段3dからエレベータ制御手段3の外で向かう矢印がそれぞれ上述した図1におけるエレベータ制御手段3の前者、後者の破線の矢印に該当する。
【0020】
判断手段3bは、エレベータ装置Eの各要素から送信された信号を基に必要な判断及び制御内容を選択し、送信手段3dを介してエレベータ装置Eの各要素へと制御信号として送信する。計時手段3cは、各要素の制御に当たって必要となる時間を計測する手段である。なお、エレベータ制御手段3へは、後述するAGV制御手段からの信号も送信され、判断手段3bは、判断する際この送信された信号も考慮する。
【0021】
無人搬送車4は、建物内を人の手を煩わすことなく自動で移動する。ここでは「無人搬送車」という語句を使用しているが、物を搬送するものだけではなく、何かを搬送することを目的としない、例えば、建物の警備を行うものも含まれる。建物内を移動する無人搬送車4は、図1では1台のみ描かれているが、その台数は単数でも複数でも良い。また、無人搬送車4は、エレベータ装置Eを用いて複数階に跨って移動する。この複数階に跨る移動は乗りかご1に乗って行われるが、基本的に乗客と一緒に乗りかご1に乗ることはないように制御される。
【0022】
無人搬送車4は、無人搬送車制御手段5(以下の説明及び図面においては、この「無人搬送車制御手段5」を、「AGV制御手段5」と表わす。)によって運転制御される。AGV制御手段5は、エレベータ制御手段3と接続されており、例えば、無人搬送車4の乗場呼びやかご呼びの信号がAGV制御手段5からエレベータ制御手段3へと送信される。また、図1におけるAGV制御手段5には、このAGV制御手段5に向かう破線で示される矢印と、AGV制御手段5から外に向かう破線の矢印とが表わされている。これは、前者がAGV制御手段5に送信される無人搬送車4からの各種信号の流れを示し、後者は、AGV制御手段5から無人搬送車4に対して出される制御信号の流れを示すものである。
【0023】
各階床には、乗場呼びボタン6が設置されている。乗場呼びボタン6は各階床に設けられており(1階から4階に向けて乗場呼びボタン6aないし6d)、エレベータ装置Eを利用する乗客は、いずれかの階床においてこの乗場呼びボタン6を押して乗りかご1を呼ぶ。この乗場呼びボタン6は、乗客が乗りかご1を呼ぶためのボタンであり、無人搬送車4は、後述するように、AGV制御手段5を介してエレベータ制御手段3へと乗場呼びの信号を送信する。
【0024】
なお、図1には示されていないが、各階床の乗場には、さらに、現在エレベータ装置Eがどのような運転モードにおいて運転されているかを示す報知手段が設けられていてもよい。
【0025】
本発明の実施の形態においては、エレベータ装置Eは、乗客が乗りかご1に乗る際のモードである平常運転モードと無人搬送車4が乗りかご1に乗る際のモードであるAGV専用運転モードと、2種類の運転モードが規定されている。これらの運転モードは、エレベータ制御手段3によって切り替えられ、一方のモードで運転されている場合は、他方のモードは選択できないようにされている。これは、同じ乗りかご1に対して、基本的に乗客と無人搬送車4とを一緒に乗せないようにして安全性を確保するため、或いは、エレベータ装置Eの運転効率を上げるためである。
【0026】
次に、本発明の実施の形態におけるエレベータ装置Eの異常検出方法を含む運転制御の流れについて、図3ないし図5を使用して説明する。また、エレベータ制御手段3内の各手段の働きについても併せて説明する。
【0027】
まず、前提としてエレベータ装置Eは平常運転モードにて運転制御されている。この状態では、乗客のみが乗りかご1に乗降することができる。反対に無人搬送車4は基本的に人が乗っている乗りかご1には乗ることができない。
【0028】
エレベータ装置Eの判断手段3bは、この状態で、AGV制御手段5からエレベータ制御手段3へとエレベータ装置Eを無人搬送車4が利用したい旨の要求信号(AGV利用要求信号)が出されるか否かを判断する(ST1)。AGV利用要求信号がAGV制御手段5からエレベータ制御手段3へ出されないと判断できる場合には(ST1のNO)、判断手段3bはこのまま継続して平常運転モードにてエレベータ装置Eを運転制御するよう指令を出す。
【0029】
なお、このAGV利用要求信号については、例えば、無人搬送車4が各階床に設けられている待機場所に到着したことをもって、或いは、無人搬送車4が移動する軌道上に設けられたスイッチをONすることによって、出される。但し、このAGV利用要求信号の発信については、無人搬送車4が使用される場所によって自由に設定することができる。或いは、無人搬送車4の移動目的が例えば、警備を行うことであった場合には、所定の時間、例えば、人がエレベータ装置Eを利用しなくなる深夜の時間になるとAGV利用要求信号を発信するようにしても良い。
【0030】
AGV利用要求信号が出された後、さらに無人搬送車4からの乗場呼びを受信したか否かが判断される(ST3)。AGV利用要求信号は無人搬送車4がエレベータ装置Eの利用を占有したい旨の信号であるが、乗場呼びはさらに踏み込んでAGV利用要求信号を出した無人搬送車4がいずれの階床に存在するかを明らかにする信号である。特に、無人搬送車4が複数運転制御されている状態においては、これらの無人搬送車4がそれぞれ乗場呼びの発信を行うことも考えられることから、いずれの階床からの乗場呼びであるか否かの判断は重要である。
【0031】
そのため、無人搬送車4から乗場呼びが発せられることによって、無人搬送車4がどの階床から乗りかご1に乗り込む予定であるかが理解できる。なお、この乗場呼びには、さらに乗場呼びを発した無人搬送車4がいずれの方向に行きたいかを示す信号を含めていても良い。また、無人搬送車4が1台のみ制御されている場合には、AGV利用要求信号とこの乗場呼びとをまとめて1つの信号とすることも可能である。
【0032】
AGV利用要求信号の受信はあったものの、無人搬送車4(AGV制御手段5)からの乗場呼びがない場合には(ST3のNO)、さらに計時手段3cにて予め定められている所定の時間が計測される(ST4)。これは、例えば、AGV利用要求信号が発信される場所と乗場呼びを行う場所とが位置的に離れており、AGV利用要求信号を発した無人搬送車4が未だ乗場呼びを行う場所に到達していないような場合が考えられる。無人搬送車4から乗場呼びがないまま所定の時間が経過した場合には(ST4のYES)、そのまま平常運転モードにてエレベータ装置Eは運転制御される(ST2)。
【0033】
一方、無人搬送車4からの乗場呼びが受信された場合には(ST3のYES)、判断手段3bは乗客が乗りかご1に乗るための一般乗場呼びの登録受付を禁止する(ST5)。これは上述したように、乗りかご1に乗客と無人搬送車4とを一緒に乗せないための措置である。但し、一般乗場呼びの登録の受付は禁止するものの、乗りかご1に乗客が乗っている場合もあるので、全ての乗客が降りるまではエレベータ装置Eは平常運転モードにて運転制御される。
【0034】
判断手段3bは、特に複数の階床から無人搬送車4の乗場呼びを受け付けた場合には、それら複数の乗場呼びに対して優先順位付けを行う(ST6)。どの階床からの乗場呼びを優先させるか、という優先順位付けについては、無人搬送車4とエレベータ装置Eが設置されている建物、或いは、無人搬送車4の運転制御によって異なる。従って、優先順位はそれぞれの事情に応じて任意に設定することが可能である。
【0035】
優先順位が付けられた乗場呼びにおいて、下位に順位付けされた乗場呼びについては、先に乗場呼びの登録がなされていたとしても後に乗場呼びの登録がなされた上位に順位付けされた乗場呼びにはかなわず、応答は遅くなることになる。或いは、ある順位以下の乗場呼びに関しては応答せず無視する、といった対応を取ることとしても良い。なお、無人搬送車4が1台のみの場合には、特に優先順位付けを行わなくても構わない。
【0036】
エレベータ制御手段3は、乗りかご1に乗っている乗客をそれぞれの行き先階にて降ろし、或いは、上述した一般乗場呼びの登録受付が禁止されるまでに受け付けた既登録の一般乗場呼びの全てに対応する。判断手段3bは、随時この全ての一般乗場呼びの全てに応答したか否かを判断し(ST7)、応答した場合は(ST7のYES)平常運転モードを切り替えて、無人搬送車(AGV)専用運転モードへと移行する(ST8)。このモードは無人搬送車4をエレベータ装置Eを介して移動させるものであり、基本的に乗客は乗りかご1に乗ることができない。従って、このAGV専用運転モードに移行した直後には乗りかご1内には乗客はおらず、無人である。
【0037】
AGV専用運転モードに移行すると、判断手段3bは、無人搬送車4からの乗場呼び、順位付けがなされている場合には、最上位に位置づけられた乗場呼びに応答する(ST9)。乗りかご1は、目的階に到着するとエレベータドアを開く(ST10、ST11)。エレベータドアが開くと、判断手段3bは計時手段3cに対して計時を開始するよう指示する。ここでの計時は、判断手段3bが予め定められている時間が経過したか否かを判断するために行われるものである。所定の時間とは、例えば、無人搬送車4が乗りかご1に正常に入庫し、行先階を示すかご呼びがなされるまでに必要な時間である。
【0038】
所定の時間が経過する前に(ST12のYES)、判断手段3bは、乗りかご1に無人搬送車4が無事入庫し、AGV制御手段5を介して入庫完了信号を受信したか否か(ST13)、及び、正常に乗りかご1に無人搬送車4が入庫した場合に、かご呼びがなされたか否か(ST14)を判断する。これら両者が所定の時間内に行われることによって、無人搬送車4が乗りかご1に正常に乗り込み、行き先階を指定したことになる。
【0039】
なお、乗りかご1内に無人搬送車4が正常に入庫したか否かの判断は、無人搬送車4が乗りかご1内の所定の位置に停止しているか否かをもって行われる。所定の位置に停止しているか否かの検出は、例えば、光電スイッチを用いる等、どのような方法であっても良い。
【0040】
一方、所定の時間が経過してしまい、上述した入庫完了信号の受信、またはかご呼びの受信がなされなかった場合には、異常が発生したものと判断することができる。例えば、無人搬送車4が乗りかご1に正常に乗り込むことができなかった、無人搬送車4が乗りかご1内において所定の位置で停止していない、或いは、乗りかご1に乗り込んだものの無人搬送車4に何らかの故障が発生しかご呼びがなされなかった、といった異常である。そこで、所定の時間内に入庫完了信号の受信、及びかご呼びの受信がなされなかった場合には(ST12のYES)、入庫の異常が検出されたと判断される(ST15)。
【0041】
入庫の異常が検出された場合には、異常が検出された日時が記録される(ST16)。この記録は、エレベータ制御手段3内の図示しない記憶手段に記憶されても、或いは、例えば、AGV制御手段5内に設けられる記憶手段、別途設けられる異常情報を収集するサーバ等に記憶されても良い。ここで、異常検出日時の記録を行うのは、後述するように、一旦異常が検出された後に平常運転モードに復帰してしまうと、異常が検出された事実が不明になってしまうからである。そこで、異常が検出された事実を残すために記録が行われる。
【0042】
そして、この段階で一旦異常信号を発し(ST17)、エレベータ装置Eに何らかの異常が生じていることを報知する。報知は、例えば、エレベータ装置Eの管理センタに対して行っても良く、或いは、上述したように各階床に設けられた報知手段を通してエレベータ装置Eを利用する乗客に対して行っても良い。
【0043】
なお、この後の異常検出後のオペレーションへの移行に関しては、乗りかご1からの無人搬送車4の出庫異常が発生した場合も同じ対応となるので、併せて後述する。
【0044】
乗りかご1に無人搬送車4が正常に乗り込み、かご呼びがなされると(ST14のYES)、エレベータドアが閉まる(図4のフローチャート、ST18を参照)。乗りかご1は無人搬送車4のかご呼びに応答し行き先階へと移動し、到着後エレベータドアが開く(ST19ないしST21)。
【0045】
エレベータドアが開くことによって、乗りかご1内の無人搬送車4は、行き先階の乗場に降車することになる。そこで、判断手段3bは、計時手段3cに対して所定の時間の計時を指示する。ここでの計時は、判断手段3bが予め定められている時間が経過したか否かを判断するために行われるもので、所定の時間とは、例えば、無人搬送車4が乗りかご1から正常に出庫するのに必要な時間である。
【0046】
所定の時間が経過する前に(ST22のYES)、判断手段3bは、乗りかご1に無人搬送車4が正常に出庫し、AGV制御手段5を介して出庫完了信号を受信したか否か(ST23)を判断する。出庫完了信号がONとなり判断手段3bがこの信号の受信を所定の時間に行うことによって、無人搬送車4が乗りかご1から正常に降りたと判断することができる。
【0047】
なお、行き先階の階床において、無人搬送車4が乗場呼びの登録を行い乗場にて待機している状態である場合には、まず、乗りかご1に乗車している無人搬送車4の出庫制御を行い、出庫が確認された後、待機していた無人搬送車4の乗りかご1への入庫制御が行われる。
【0048】
所定の時間内に出庫完了信号が受信できなかった場合には(ST23のNO、ST22のYES)、無人搬送車4が乗りかご1から出庫するに当たって、何らかの異常が発生したと判断できる。そこで、出庫異常を検出するとともに(ST24)、この異常が検出された日時が記録され、異常信号が管理センタ等に送信される(ST25、ST26)。この流れは上述した入庫の異常が検出された場合と同様である。従って、この後の異常検出後のオペレーションへの移行に関しては、乗りかご1への無人搬送車4の入庫異常の場合と併せて後述する。
【0049】
無人搬送車4が乗りかご1から正常に出庫し、出庫完了信号がONになったのを確認して(ST23のYES)、エレベータドアが閉まる(ST27)。判断手段3bは、ここでその他の無人搬送車4からの利用要求信号がないかを確認する(ST28)。
【0050】
その他の無人搬送車4からの利用要求信号がある場合には(ST28のNO)、再度上述したステップ3に戻り、無人搬送車4を所定の階床まで移動させる。その他の無人搬送車4からの利用要求信号がない場合には(ST28のYES)、無人搬送車(AGV)専用運転モードを終了し、平常運転モードへと移行する(ST29)。
【0051】
次に、異常が検出された後のオペレーション選択への移行について述べる。図5はオペレーションの流れを示すフローチャートである。上述した無人搬送車4が乗りかご1に乗り込む際の異常(入庫異常)が検出された場合(ST15ないしST17)、或いは、無人搬送車4が乗りかご1から降りる際の異常(出庫異常)が検出された場合(ST24ないしST26)には、判断手段3bは、異常検出オペレーションの選択へと移行する(ST41)。
【0052】
この異常検出オペレーションは、無人搬送車4に対して乗りかご1との関係で何らかの異常が発生した場合に、エレベータ制御手段3が採用するオペレーションである。本発明の実施の形態においては、乗りかご1を移動(昇降)させることができるか否かに基づいて判断される(ST42)。判断手段3bは、エレベータドアを閉めることが可能であり、さらに乗りかご1を移動させることができると判断した場合は(ST42のYES)、無人搬送車(AGV)専用運転モードを終了し、平常運転モードへと移行する(ST43)。併せて、異常信号の送信を取りやめ、報知を終了させる(ST44)。
【0053】
この乗りかご1を移動させることができると判断できる場合とは、例えば、乗りかご1内における無人搬送車4の停止位置が正常ではないもののエレベータドアは閉めることができる、といった場合である。この場合には、エレベータ装置Eの運転の効率を考慮し、無人搬送車4が乗りかご1内に残った状態ではあるが、平常運転モードへと移行し、できるだけ乗客を乗せることができるようにするものである。
【0054】
この場合は、乗りかご1内に乗客と無人搬送車4とが同時に乗り込むことになるが、乗りかご1を移動(昇降)させることができるにも拘わらず乗りかご1内に無人搬送車4が存在するだけでそのエレベータ装置Eを停止させてしまうのは、運転効率からしても無駄であると考えられるからである。その意味で、この場合が乗りかご1内に乗客と無人搬送車4とを同乗させないことの例外に該当する。但し、可能な限り早く乗りかご1から無人搬送車4を退避させる必要があるのはもちろんである。
【0055】
一方、判断手段3bが乗りかご1の移動(昇降)は不可能であると判断した場合には(ST42のNO)、異常が検出された状態をその状態のまま保持するように指示する(ST45)。この状態は、例えば、乗りかご1内に無人搬送車4の一部が残り、その他の部分が乗りかご1の外に出ているような状態であると考えられる。このような場合には安全性の観点から無理に乗りかご1を移動(昇降)させることはできないので、判断手段3bはこの状態を保持し、AGV制御手段5に対しても対象となる無人搬送車4の移動を禁ずるように指示する。
【0056】
併せて、エレベータ制御手段3は、エレベータ装置Eを構成する各要素、或いは、AGV制御手段5からの信号の受信を一切拒否する(ST46)。このようにすることで、乗りかご1が移動してしまうことを防止することができ、安全性を確保することができる。
【0057】
その上で、再度異常信号を出力し、管理センタ等へ報知する(ST47)。なお、ここでの報知は、エレベータ装置Eにおける重篤な異常を報知するものであることから、上述した報知(ST17、或いはST26)とは別の報知の方法を採用し、例えば、エレベータ装置Eの管理者に対してより明確に異常を知らせることができる態様を採用することができる。
【0058】
以上、エレベータ装置を利用する無人搬送車について、乗りかごへの入出庫に関して異常が発生した場合に適切な異常検出オペレーションを行うことによって、無人搬送車の保護監視機能の向上を図るとともに、複数の無人搬送車の制御にも対応した無人搬送車対応エレベータ装置及び該エレベータ装置の異常検出方法を提供することができる。
【0059】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 乗りかご
2 かご内呼び登録ボタン
3 エレベータ制御手段
4 無人搬送車
5 AGV制御手段
6 乗場呼びボタン
E エレベータ装置
H 昇降路
R ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車の運行を制御する無人搬送車制御手段と、
前記無人搬送車が乗車する乗りかごを制御するエレベータ制御手段と、を備える無人搬送車対応エレベータ装置において、
前記エレベータ制御手段は、前記無人搬送車が前記乗りかごへ乗車する際、前記無人搬送車の前記乗りかごへの入庫の完了を示す信号及び前記無人搬送車のかご呼びを示す信号を予め定められた時間内に受信しない場合に、前記無人搬送車に異常が生じたと判断することを特徴とする無人搬送車対応エレベータ装置。
【請求項2】
前記エレベータ制御手段は、前記無人搬送車が前記乗りかごから降車する際、前記無人搬送車の前記乗りかごへの出庫の完了を示す信号を予め定められた時間内に受信しない場合に、前記無人搬送車に異常が生じたと判断することを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車対応エレベータ装置。
【請求項3】
前記エレベータ制御手段は、前記無人搬送車の前記乗りかごへの入出庫に関して異常が発生したと判断した場合に、前記乗りかごが昇降できるか否かを基準に平常運転モードへの移行、または、異常が発生した状態の保持、のいずれかを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無人搬送車対応エレベータ装置。
【請求項4】
前記エレベータ制御手段は、複数の前記無人搬送車の複数の階床からの乗場呼びを受信した場合に、前記複数の乗場呼びに対して応答する順序を定める順位付けを行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無人搬送車対応エレベータ装置。
【請求項5】
エレベータ制御手段が、無人搬送車からのエレベータの利用要求信号を受信するステップと、
前記無人搬送車からの乗場呼びを受信するステップと、
前記乗場呼びを受けて一般乗場呼びの登録受付を禁止するステップと、
複数の前記無人搬送車の複数の階床からの前記乗場呼びを受信した場合に、前記複数の乗場呼びに対して応答する順序を定める順位付けを行うステップと、
全ての既一般乗場呼びに応答した後、無人搬送車専用運転モードへと移行するステップと、
前記無人搬送車からの乗場呼びに応答して乗りかごを目的階へと移動させるステップと、
前記乗りかご内への前記無人搬送車の入庫完了信号を受信し、さらに前記無人搬送車からの行先階呼びを受信するステップと、
前記入庫完了信号或いは、行先階呼びの受信が所定の時間内に行われなかったときには、前記無人搬送車の前記乗りかごへの入庫に異常が発生したと判断し、異常検出オペレーションへと移行するステップと、
を備えることを特徴とする無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法。
【請求項6】
前記異常検出オペレーションのステップへは、前記無人搬送車が前記乗りかごから出庫したことを示す出庫完了信号を前記エレベータ制御手段が受信しない場合にも移行することを特徴とする請求項5に記載の無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法。
【請求項7】
前記異常検出オペレーションは、
前記乗りかごが移動できるか否かを判断するステップと、
前記乗りかごが移動できると判断された場合には、平常運転モードへと移行するステップと、
前記乗りかごが移動できないと判断された場合には、異常が検出された状態を保持するために、前記エレベータ制御手段は一切の信号受信を拒否するとともに、異常信号を出力して報知するステップと、
を備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無人搬送車対応エレベータ装置の異常検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−42444(P2011−42444A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191042(P2009−191042)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】