説明

無塵紙

【課題】 半導体関連分野で使用される合紙や、電子部品や電気製品の合紙、ならびに包装紙等の包装材料として特に好適、かつ、生産性やコスト的に優れる導電性を備えた無塵紙の提供する。
【解決手段】 天然パルプを主成分とする基紙にガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子化合物を含浸させて得たシート表面に、23℃、50%RH条件下における表面抵抗値が10Ω以下である帯電防止剤を含有する導電性塗工層が設けられており、透気度が100秒以上である無塵紙。帯電防止剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩類、分子中にカルボキシル基、スルホン基、硫酸基の少なくともいずれかを有するアニオン性高分子、またはアミノ基、第4級アンモニウム基の少なくともいずれかの塩基を有するカチオン性高分子からなる群より選ばれた1以上の物質等である前項記載の無塵紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーンルーム内で使用される低発塵紙や無塵紙(本発明においては以下両者を併せて無塵紙と称する)に関するものであり、更に詳しくは、LSI等の半導体素子を装着する電子回路用リードフレームに代表される半導体関連分野で使われる合紙や、液晶モジュール搬送用の合紙ならびに梱包材として用いる包装材料として特に好適な無塵紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内では、塵で空気を汚染しないよう無塵紙が使用される。無塵紙は、一般的に填料を含まないか、又は、発塵性が許される範囲で不透明度向上を目的として微量の填料を含む基紙に、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂エマルジョンや水溶液を含浸して発塵を抑えている樹脂含浸紙からなるものが一般的であり、これらの無塵紙はクリーンルーム内の記録紙としてコピー用紙、フォーム用紙、レポート・メモ用紙、計測記録紙、伝票などの用途に用いられる。
【0003】
また、近年、無塵紙は記録用途だけでなく、クリーンルーム内でLSI等の電子部品を実装する電子回路用リードフレームやシャドウマスク等に用いる金属薄板を重ね合せる際の合紙、液晶モジュール組立工程中に各種部材を保護する際の合紙や、組立てが完了した液晶モジュールを輸送する際に梱包する包装紙等の包装材料としての用途にも利用されるようになっている。
包装材料として無塵紙を使用する場合は、梱包時や輸送時に力が加わるため、記録紙用途以上に、擦り、揉み、破りといった外力が加わった場合の低発塵性が要求される。また、電子回路用リードフレームの合紙として無塵紙を使用する場合には、無塵紙がリードフレームの形状に打ち抜かれて使用されるため、打抜き加工時の発塵が無いことや、リードフレームと無塵紙が擦れた場合の発塵が無いことが重要な要求特性となる。
【0004】
一方で、無塵紙自体が帯電しにくく、静電気障害の原因とならない事も重要である。
摩擦帯電や剥離帯電等により無塵紙に静電気が誘起した場合には、大気中に浮遊する塵を集塵しやすくなり発塵を誘発してリードフレームを汚染させる原因の一つとなるばかりでなく、小型の電子部品等に接触させた場合には部品を損傷させる恐れがある。
従来の無塵紙は、一般に紙基材に樹脂エマルジョンを含浸させ紙層内部まで樹脂分を浸透させることによって天然パルプ由来の発塵を抑えるものであるが、新たに導電性能を付与し、このような静電気障害を回避させる必要が高まっている。
【0005】
従来の無塵紙に導電性を付与し、静電気障害を発生させないようにする技術としては、導電性の化学メッキを施した繊維を含む紙にバインダーと防錆物質を含浸させる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、化学メッキ処理された繊維は、導電性には富むが、パルプとの結合力に乏しく抄紙適性が良くないため生産性が悪く、またこのような繊維は製造コストが高いという問題があった。
他には、導電性無機質粉末や導電性繊維をセルロースパルプに混合して抄紙した後、高分子樹脂を含浸またはコートする方法が開示されている(特許文献2、特許文献3)。しかし、導電性無機粉末は抄紙時に歩留りが悪く、また、導電性繊維は前述した化学メッキ処理された繊維同様、パルプとの結合力に乏しいため生産性が悪い。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−141196号公報
【特許文献2】特開昭60−146100号公報
【特許文献3】特開2005−256218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の無塵紙の導電化技術は、抄紙適性が悪くなって生産性に劣り、コスト高となるという問題があった。
従って、電子回路用リードフレームに代表される半導体関連分野で使用される合紙や、電子部品や電気製品の合紙、ならびに包装紙等の包装材料として特に好適、かつ、生産性やコスト的に優れる導電性を備えた無塵紙を提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含包する。
即ち、本発明の第1は、天然パルプを主成分とする基紙にガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子化合物を含浸させて得たシート表面に、23℃、50%RH条件下における表面抵抗値が10Ω以下である帯電防止剤を含有する導電性塗工層が設けられており、透気度が100秒以上である無塵紙である。
【0009】
本発明の第2は、帯電防止剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩類、分子中にカルボキシル基、スルホン基、硫酸基の少なくともいずれかを有するアニオン性高分子、またはアミノ基、第4級アンモニウム基の少なくともいずれかの塩基を有するカチオン性高分子からなる群より選ばれた1以上の物質である本発明の第1に記載された無塵紙である。
【0010】
本発明の第3は、帯電防止剤が、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリチオフェン系高分子からなる群より選ばれた1以上の物質である本発明の第1〜2のいずれかに記載された無塵紙である。
【0011】
本発明の第4は、帯電防止剤が、カーボンブラックもしくは導電性酸化チタンである本発明の第1〜3のいずれかに記載された無塵紙である。
【0012】
本発明の第5は、揉み、擦り、破りの各クリーン度試験において、吸引体積0.02立方フィート中において0.3μm以上の塵の数が10個以下である本発明の第1〜4のいずれかに記載された無塵紙である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電子回路用リードフレームに代表される半導体関連分野で使用される合紙や、電子部品や電気製品の合紙、ならびに包装紙等の包装材料として特に好適、かつ、生産性やコスト的に優れる導電性を備えた無塵紙の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されるものではない。
まず、本発明の無塵紙に使用する基紙について説明する。
本発明の無塵紙の基紙の原料となる天然パルプは、針葉樹パルプと広葉樹パルプのいずれも使用可能である。また、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP),等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ等が挙げられる。なお、パルプに漂白を施す場合は、塩素を用いないECF、またはTCF漂白が、紙中の塩素イオンを減らすことができるため好ましい。
なお、その他のパルプとしては、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが使用可能である。
また、本発明の趣旨を損ねない範囲において、上記天然パルプに加えて、ナイロン、レーヨン、ポリエステル等の各種合成繊維を必要に応じて適宜添加して使用することが可能である。
本発明においては、上記の天然パルプを単独又は2種以上を適宜混合して使用することが可能である。基材紙の強度、地合及びコストの面から、広葉樹パルプと針葉樹パルプを混合して使用することが好ましい。
なお、本発明の無塵紙においては、厚み精度が高いことや平滑性が高いこと、地合が良好であることが要求される。
なお、本発明において使用するパルプは、カナダ標準ろ水度300〜500mlC.S.F.に叩解したものが、地合の面から特に好適に用いることができる。
また、本発明の無塵紙となる基材紙の抄紙方法としては、公知の抄紙方法が必要に応じて任意に採用可能である。
【0015】
本発明の無塵紙となる基材紙においては、発塵性の面から許される範囲において、一般に公知である填料が使用可能である。鉱物質填料としては、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、焼成カオリン、クレー、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸塩、ベントナイト等が挙げられる。また、有機合成填料としては、ポリスチレン粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等が挙げられる。以上の填料は、単独でも使用可能であり、また、必要に応じて適宜選択して複数併用することも可能である。
さらに、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も必要に応じて適宜使用可能である。
【0016】
また、本発明においては、基材紙に、後述する高分子化合物を含浸して無塵紙とするため、基材紙にはある程度の湿潤紙力が必要である。従って、抄紙時に、内添薬品として、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂等の湿潤紙力増強剤を使用する。
また、前述の湿潤紙力増強剤の他に、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、澱粉、カチオン化澱粉等の乾燥紙力増強剤を併用することができる。なお、薬品歩留の向上、薬品硬化速度の向上の効果によって、湿潤紙力増強剤の添加量を削減することが可能になるため、カチオン系の湿潤紙力増強剤とアニオン系の乾燥紙力増強剤の併用することが好ましい。
【0017】
本発明においては、必要に応じてサイズ剤を使用することも可能である。酸性抄紙用サイズ剤としてはロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性抄紙用サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤等の各種サイズ剤を挙げることができる。但し、高分子化合物を含浸させるためにはサイズ剤を含まない方が好ましい。
【0018】
次に、基材紙に含浸させる高分子化合物について説明する。
本発明において使用する高分子化合物は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のものを使用するものとする。−10℃以下であることがさらに好ましい。
具体的には、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂エマルジョンもしくは水溶液が使用可能である。
なお、本発明の無塵紙を易離解性として古紙として再生容易なものとする場合は、特開2001−207397号、特開2003−49392号に開示されている樹脂エマルジョンを使用することが望ましい。
【0019】
高分子化合物の基材紙への含浸量は、固型分で、含浸後の無塵紙100質量%に対して、5〜15質量%であり、好ましくは8〜12質量%である。含浸量が5質量%未満の場合は発塵を抑える効果が十分ではないおそれがある。また、15質量%を超えた場合は、発塵を抑える効果は変わらず、樹脂分の増加の影響によってブロッキングが発生しやすくなる。また、離解性が悪くなるという問題も発生する。
高分子化合物の基材紙への含浸方法は、オンマシンでのサイズプレス、スプレーによる塗工や、オフマシンでのディッピング含浸、各種コーティングマシン等、公知の方法を必要に応じて適宜選択して行なうことが可能である。
【0020】
本発明の無塵紙は、以上述べた方法で基材紙に高分子物質を含浸した後、さらに帯電防止剤を含有する導電性塗工層を設けることで得られる。このように基材紙に高分子化合物を先に含浸させた後、導電性塗工層を設けることによって帯電防止剤が表層に分布しやすくなり、本発明においては、少量の帯電防止剤でも大きな効果が発揮される。
なお、導電性塗工層は、基材紙の片面、もしくは両面に設けることが可能である。
【0021】
なお、本発明における導電性塗工層とは、23℃、50%RH条件下における表面抵抗値が10Ω以下であるものとする。好ましくは10Ω以下である。10Ωを超えた場合には、静電気障害の防止において十分な効果が期待できない。
【0022】
本発明で使用可能な帯電防止剤としては、リチウム化合物、アルミン酸ソーダ、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、ギ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム等の有機塩類が挙げられる。
また、他の帯電防止剤としては、分子中にカルボキシル基、スルホン基、硫酸基の少なくともいずれかを有するアニオン性高分子、アミノ基、第4級アンモニウム基の少なくともいずれかの塩基を有するカチオン性高分子が挙げられる。
【0023】
また、他の帯電防止剤としては、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリチオフェン系高分子が挙げられる。
なお、ここで例えばポリアニリン系高分子と表現する場合の「系」とは、高分子の基本主鎖構造がポリアニリンであって、これに各種の化学修飾が行われていて導電性を示すことのできるものが含まれることを意味するものとする。
【0024】
また、他の帯電防止剤としては、導電性を有する導電フィラー等の導電性材料を用いることができる。導電性材料の中でも、特に、カーボンブラックや、酸化チタンを電子導電性に優れた材料で表面処理した導電性酸化チタンを好適に用いることができる。導電性酸化チタンは、金属あるいは金属酸化物を被覆したものが好適に用いられ、さらに好ましくは、耐腐食性に優れ、あるいは安価な、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル等を主体とした材料で表面被覆したものが好ましく用いられる。
なお、導電性材料の形状は、球状タイプや、針状タイプ、繊維状タイプ等様々なものがあるが、針状タイプ、繊維状タイプの方が、少ない量で所望の導電性を得やすいためより好ましい。
【0025】
なお、これらの帯電防止剤は、シート表面にしっかりと接着させるために前述した高分子化合物であるアクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂エマルジョンや水溶液に混合して塗工するとより好ましい。また、高分子化合物に比べ接着性能は劣るが、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール化合物やポリアクリルアミド類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類を併用することもできる。
【0026】
特に、導電性粒子を帯電防止剤として使用する場合は、発塵量が問題となる場合があるため、上記の通り、高分子化合物と混合して導電性塗工層を設けることが好ましい。この場合、あらかじめ無塵紙に含浸する高分子化合物の量は少なく設定しておくことが好ましい。具体的には無塵紙100質量%に対して3〜10質量%、好ましくは5〜10質量%に設定すると良い。3質量%未満であるとシート内部まで導電性塗工層が形成されるため多量の導電性粒子が必要となる。一方、10質量%超では、シート表面に対する接着力が得られないことや、発塵量が多くなる問題がある。
高分子化合物中における導電性粒子の比率は、塗工する量によって適宜選択でき、高分子化合物100質量%に対して、乾燥質量で5〜90質量%で混合すると良い。
【0027】
導電性塗工層を設ける方法は特に限定はなく、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ゲートロールコータ、ハミルトンコータ、KCMコータ、サイズプレスコータ、メタードサイズプレス、メタードフィルムトランスファーロールコータ等の塗布設備装置を備えたオンマシンやオフマシンコータを使用することが可能である。
【0028】
また、導電性塗工層を片面のみに設けた場合、無塵紙のカールが問題となる。その場合には、デカーラー処理や蒸気ダンピング処理、水塗布等の一般的なカール矯正方法が採用される。
【0029】
なお、本発明の無塵紙においては、その透気度(JIS P8117で測定)は100秒以上とする。その理由としては、例えば、リードフレームの合紙として使用された場合、合紙を取り除く場合にバキューム圧を用いるが、透気度が100秒未満の場合は、バキューム圧が不足して搬送不良となる恐れがある。また、その他包装材料として使用される場合、自動包装装置においては通常バキュームにより包装材料を搬送するために、透気度が100秒未満の場合は同様に搬送不良を起こす恐れがある。
なお、無塵紙の透気度100秒以上を達成するためには基材紙の密度を高くする、含浸する高分子化合物の量を多くする方法がある。前者には高分子化合物の浸透性が悪化し発塵性が多くなるという問題があり、後者には離解性の悪化や製造コストが上昇するという問題があるが、本発明の無塵紙は、表面に導電性塗工層を設けることによって、高いバリア性を付与できるため透気度100秒以上を達成することは容易である。
【0030】
本発明の無塵紙の表面のpH(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.49−86により測定)は、6.0〜8.0が適する。pHが6.0未満の場合、紙中の酸性物質により、該紙と接触した金属部品が腐食する恐れがある。また、pHが8.0を越える場合にはアルカリ性のため潮解性を有するため空気中の水分を集めるので金属部品表面を汚染すること恐れがある。
【0031】
本発明の無塵紙においては、揉み、擦り、破りの各クリーン度試験において、吸引体積0.02立方フィート中において0.3μm以上の塵の数が10個以下であることが望ましい。
【0032】
本発明の導電化無塵紙は電子回路用リードフレームに代表される半導体関連分野の合紙として使用される場合には、銅製のリードフレームの腐食や錆の原因になる塩素イオン、ナトリウムイオン等のあらゆるイオン分が少ない方が良く、各イオン100ppm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、以下表示する「%」は、特記のないかぎり「固形分質量%」を示す。
【0034】
<実施例1>
針葉樹晒クラフトパルプ30質量%と広葉樹晒クラフトパルプ70質量%をカナダ標準ろ水度400mlまで叩解し、酸化チタンを対原料固形分1質量%、AF−255(荒川化学工業社製:ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂,湿潤紙力増強剤)を対パルプ0.1質量%、ポリストロン117(荒川化学工業社製:ポリアクリルアミド系紙力剤)を対パルプ0.05質量%添加して得た紙料を抄紙して基材紙(56g/m)とする。該基材紙に、AM−507SG(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)の塗工液をサイズプレスにより含浸量が6g/mになるように含浸し、乾燥させて62g/mの無塵紙を得た。
該無塵紙の片面に、ゴーセファイマーOKS3376(日本合成化学工業株式会社製:スチレン系樹脂スルホン酸塩)をエアナイフコータにより片面に2.0g/m塗工後、乾燥させて64g/mの無塵紙を得た。
【0035】
<実施例2>
実施例1のパルプのフリーネスをカナダ標準ろ水度500mlにして基材紙を抄紙し、ゴーセファイマーOKS3376の代わりにゴーセファイマーC-820(日本合成化学工業株式会社製:アクリル系樹脂含四級アンモニウム塩)をエアナイフコータにより片面に2.0g/m塗工した以外は、実施例1と同様にして64g/mの無塵紙を得た。
【0036】
<実施例3>
実施例1の塗工液をサイズプレスにより含浸量が4g/mになるように含浸し、乾燥させて60g/mの無塵紙を得た。該無塵紙の片面に、AM−507SG(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)50質量%とゴーセファイマーOKS3376(日本合成化学工業株式会社製:スチレン系樹脂スルホン酸塩)50質量%をエアナイフコータにより片面に4.0g/m塗工後、乾燥させて64g/mの無塵紙を得た。
【0037】
<実施例4>
実施例1で得たものと同様の基材紙に、AM−277(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)50質量%とAM−507SG(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)50質量%を混合した塗工液をサイズプレスにて含浸量が4.0g/mになるように含浸し、60g/mの無塵紙を得た。
該無塵紙の片面に、AM−277(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)85質量%と導電性粒子であるT-YP232(星光PMC株式会社製:ポリアニリン系高分子)を15質量%混合した塗工液を、エアナイフコータにより片面に4.0g/m塗工後、乾燥させて64g/mの無塵紙を得た。
【0038】
<実施例5>
実施例1で得たものと同様の基材紙に、AM−290(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)をサイズプレスにて含浸量が4.0g/mになるように含浸し、60g/mの無塵紙を得た。
該無塵紙の片面に、AM−290(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)50質量%と導電性粒子であるBlack S−T43(大日精化工業株式会社製:カーボンブラック、一次粒子径25nm)を50質量%混合した塗工液を、バーコータにより片面に4.0g/m塗工後、乾燥させて64g/mの無塵紙を得た。
【0039】
<実施例6>
実施例2で得たものと同様の基材紙に、AM−290(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)をサイズプレスにて含浸量が4.0g/mになるように含浸し、60g/mの無塵紙を得た。
該無塵紙の片面に、AM−290(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)50質量%と導電性粒子であるFT-2000(石原産業株式会社製:針状導電性酸化チタン、短軸0.21μm、長軸2.86μm)を50質量%混合した塗工液を、バーコータにより片面に4.0g/m塗工後、乾燥させて64g/mの無塵紙を得た。
【0040】
<比較例1>
実施例1で得たものと同様の基材紙に、AM−507SG(昭和高分子株式会社製:アクリル酸エステル樹脂)をサイズプレスにて含浸量が8g/mになるように含浸し64g/mの無塵紙を得た。
【0041】
実施例、及び、比較例で得た無塵紙の、表面電気抵抗、透気度、発塵性、ブロッキング性を、以下の方法で評価した。その結果を1に示す。
【0042】
(表面電気抵抗)
アドバンテスト社製 ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340Aを用いて23℃・50%RH及び10℃・30%RHの環境条件下で測定した。
尚、測定機器の条件は、電圧100V・加電時間60秒・加電より120秒後の表面電気抵抗値を計測した。
【0043】
(透気度)
JIS P8117に従って測定した。
【0044】
(発塵性)
クリーンベンチ内で試験片を、揉んだとき、擦ったとき、引裂いたときの3パターン(各々の試験条件は後述)の発塵量を測定した。
各々の試験条件で発生した塵を吸引管で集め、光散乱型微粒子計数計(リオン製、KC−14)で、吸引体積0.02立方フィート(cf)中の0.3μm以上の塵の数を記録した。
【0045】
(1)揉み試験:A4サイズの試験片を5秒毎に1回、1分間揉む。
(2)擦り試験:直径14cmの円径と10cm角に切り取った試験片を用意する。円形の試験片を円盤に貼付け、回転数600rpmで回転させる。10cm角の試験片を回転する円盤に貼付けた試験片と接触させ1分間擦り付ける。
(3)破り試験:A4サイズの試験片2枚を用意し、長さ21cmの片を20mm間隔で20mm破る。1枚で9ヶ所破り合計18ヶ所の切れ目を2分間で引裂く。
【0046】
(ブロッキング性)
10cm角にカットした試験片10枚を積層し、70g/cmに相当する重りを乗せ、その状態で、40℃×85%RH条件下の環境チャンバー内で50時間静置した後、ブロッキングの発生状態を確認した。
ブロッキングが生じていない場合を○、ブロッキングが生じている場合を×とした。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜6で得られる無塵紙は表面電気抵抗を低下させることが可能で、発塵量が少なく、透気度が高く、又、ブロッキングが発生しないという優れた特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然パルプを主成分とする基紙にガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子化合物を含浸させて得たシート表面に、23℃、50%RH条件下における表面抵抗値が10Ω以下である帯電防止剤を含有する導電性塗工層が設けられており、透気度が100秒以上であることを特徴とする無塵紙。
【請求項2】
帯電防止剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩類、分子中にカルボキシル基、スルホン基、硫酸基の少なくともいずれかを有するアニオン性高分子、またはアミノ基、第4級アンモニウム基の少なくともいずれかの塩基を有するカチオン性高分子からなる群より選ばれた1以上の物質であることを特徴とする請求項1に記載された無塵紙。
【請求項3】
帯電防止剤が、ポリアニリン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリチオフェン系高分子からなる群より選ばれた1以上の物質であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載された無塵紙。
【請求項4】
帯電防止剤が、カーボンブラックもしくは導電性酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された無塵紙。
【請求項5】
揉み、擦り、破りの各クリーン度試験において、吸引体積0.02立方フィート中において0.3μm以上の塵の数が10個以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された無塵紙。

【公開番号】特開2008−223180(P2008−223180A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64882(P2007−64882)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】