説明

無方向性ロボット

【課題】 人間に代わって悪環境下での移動・複雑な作業を行うために利用される無方向ロボットを提供する。
【解決手段】 サーボモータを二個用いた二自由度のアームによって任意の方向に重りを移動させ、進行方向に重心位置をずらして任意の方向に進む手段と、対面する頂点に駆動輪とキャスタを持ち、全ての面が同様の移動機構を持ち、各面に二つの駆動輪で旋回と移動を行い、箱の内部に姿勢認識装置を組み込んで、機体の姿勢が変化する際に転がり重さによってセンサーの認識した方向の面を接地面として対応した動輪を回転させる手段と、三角錐全ての頂点に動輪を配置し、車輪方向へ回転するローラを8個備えた特殊なホイールを使用しており、ホイールを各面に3個配置されてその駆動輪のベクトルの合力を任意の進行方向に向ける全方向移動を行う手段、を備える。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、人間に代わって悪環境下での移動・複雑な作業を行うために利用される無方向ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間にとって厳しい環境は「極限環境」と呼ばれており、そのような極限環境下において、人間に代わって複雑な作業を実行できる高度な作業システム、「極限作業ロボット」の開発が近年、活発に行われている。
【0003】
極限作業ロボットとして、壁面移動ロボット、レスキューロボット、海洋ロボット、宇宙ロボットなどが挙げられる。これらの環境作業ロボットに共通して求められることは、いずれも悪環境下での移動・動作を要求されるということである。例えば、惑星探査をおこなう宇宙ロボットなどは凹凸のある複雑な地形下で、移動し作業をおこなわなければならない。レスキューロボットにしても人命救助をおこなうため地震などで崩れた瓦礫上などでの移動が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような複雑な地形上を移動するとき地盤が安定していないこともあり、必然的にロボットは倒れやすくなる。一般的にいうと、この世に存在するロボットの移動機構は倒れるとその移動機能が働かなくなることが多い。このように倒れると移動機能が働かなくなる原因としてはそのロボット自体に有方向性の概念があるからだと考えられる。従ってロボットから有方向性の概念を取り除いていると倒れるといった概念自体がなくなり、その移動能力が失われるということがなくなる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、上下・前後・左右といった方向性の概念がそのロボット自体に存在しない無方向性ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、3次元空間内のX軸,Y軸,Z軸にあたる面と、それらの軸の対称軸にあたるX’軸,Y’軸,Z’軸にあたる相対面どうしの無方向性(対面無方向性)と、XY平面,YZ平面,ZX平面における無方向性(平面無方向性)と、静止状態において無方向性と関節軸・アクチュエータ駆動の動作状態において無方向性(静・動的無方向性)を備えていることを特徴とする無方向性ロボットに関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、サーボモータを二個用いた二自由度のアームによって任意の方向に重りを移動させ、サーボモータ2個の駆動によって、進行方向に重心位置をずらし、任意の方向に進む手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の球型無方向性ロボットに関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、対面する頂点に駆動輪とキャスタを持ち,全ての面が同様の移動機構を持ち、各面に二つの駆動輪で旋回と移動を行い、箱の内部にモータを別々に制御するモータドライバと切角の八面体の姿勢認識装置を組み込んでおり、姿勢認識装置の内部が空洞になっており、この空洞内に鉛球が1個,各正方形面に1個ずつ計六個のタッチセンサを内蔵し、タッチセンサのある面が箱型ロボットの外装部立方体の各面と平行になるように内蔵されており、機体がどのような姿勢のときでもボタン設置面が下方に位置し、鉛球が機体の姿勢が変化する際に転がり重さによってセンサーの認識した方向の面を接地面として対応した動輪を回転させる手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の箱型無方向性ロボット。
【0009】
請求項4に係る発明は、三角錐全ての頂点に動輪を配置し,各面で全方向移動を行い、全ての接地輪が駆動することでキャスタ使用時よりも段差走破能力が向上でき、全方向移動のために円周に車輪方向へ回転するローラを8個備えた特殊なホイールを使用しており、ホイールを各面に3個配置されてその駆動輪のベクトルの合力を任意の進行方向に向ける全方向移動を行う手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の三角錐型無方向性ロボット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無方向性ロボットによれば、人間にとって厳しい極限環境下においても,人間に代わって複雑な作業を実行し、例えば災害時に障害物を乗り越え,火煙下で状況把握して消化作業を行い、人命救助のために瓦礫上での動作・作業を行い、惑星探査などのために,クレータなどの凹凸のある複雑な地形上での動作・作業を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の無方向性ロボットの例を示す図である。
【図2】 本発明の球型無方向性ロボットの移動方法と機構を示す図である。
【図3】 本発明の箱型無方向性ロボットの機構を示す図である。
【図4】 箱型無方向性ロボットの姿勢認識方法を示す図である。
【図5】 本発明の三角錐型無方向性ロボットの例を示す図である。
【図6】 本発明の全方向移動機構の例を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
1 球型無方向性ロボット
2 箱型無方向性ロボット3 データベース
3 三角錐型無方向性ロボット
4 重り
5 動輪
6 キャスタ
7 姿勢認識部
8 タッチセンサ
9 箱型無方向性ロボットの外装部
10 駆動輪
11 ローラ
12 三角錐型無方向性ロボットの外装部
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る無方向性ロボットの実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る本発明の無方向性ロボットの実施例、球型無方向性ロボット(1)、箱型無方向性ロボット(2)と三角錐型無方向性ロボット(3)の外観を示す図である。
【0013】
図2は球型無方向性ロボットの移動方法と機構を示す。移動の際には内部アクチュエータを用いて重りを動かすことで進行方向に重心を移動し、本体を転がすことで移動する。この移動方法は移動速度が速く、消費電力を少なくすることが可能であると考えられる。サーボモータを二個備えた二自由度のアームによって任意の方向に重り(4)を移動させる。すなわちサーボモータ2個の駆動によって、進行方向に重心位置をずらし、任意の方向に進む手法を取っている。この球型ロボットの動作環境は平地に限定される。球型ロボットはその形状・性質において、無方向性の概念を完璧に満たし、無方向性ロボットの代表格ともいえる。球型ロボットに作業をさせるということを考えると、ロボットアーム・変形機構などを球内部に組み込む必要がある。しかし、唯でさえ球内部はアクチュエータ、制御部、エネルギー源、移動機構などが密集しており、作業要素を球内部に組む込むことは困難を極める。
【0014】
図3は箱型無方向性ロボットの機構を示す。図3に示すように対面する頂点に駆動輪(5)とキャスタ(6)を持ち、全ての面(9)が同様の移動機構を持つ。各面は二つの駆動輪で旋回と移動を行う。この形状と構造により、どの姿勢でも同様に移動ができる点で転倒状態が無く、無方向であると考えられる。箱の内部にロボット制御装置組み込んだ。4個のモータを別々に制御するモータドライバ、切角の八面体が箱型ロボットの姿勢を判別する姿勢認識装置(7)、プログラムに基づきセンサー(8)とアクチュエータに入出力を行うPIC回路である.
【0015】
箱型ロボットは高度な無方向性を持つことをコンセプトとしているが、ロボットが動作する上で自らの姿勢、進行方向を認識することが必要となる。箱型ロボットはどの様な姿勢でも同様の性質をもち、同じように作業を行うことができる。その際、機体のどの面が地上方向に向いており、どの動輪が接地しているかを認識して。各アクチュエータの正転逆転を正確に制御する必要がある。そのために示すような姿勢認識装置を作って,中央下の切角の八面体は箱型ロボットの姿勢認識を行う認識装置であり,正方形6個,六角形8個によって構成されるものである.姿勢認識装置の内部は空洞になっている。この空洞内に約200gの鉛球が1個、各正方形面に1個ずつ計六個のタッチセンサを内蔵する。姿勢認識装置は正方形面、つまりタッチセンサのある面は箱型ロボットの外装部立方体の各面と平行になるように内蔵されている。そのため、機体がどのような姿勢のときでもボタン設置面が下方に位置する。鉛球は機体の姿勢が変化する際に転がり重さによってタッチセンサをON状態にするためのものである。これによってセンサーの認識した方向の面を接地面として対応した動輪を回転させる。また姿勢認識装置の内部に鉛球があるため、その重量が大きくなる。ロボットのバランスを崩さないために、図3に示すように姿勢認識装置を中央部に配置した
【0016】
図4は箱型無方向性ロボットの姿勢認識方法を示す。箱型無方向性ロボットに本来、方向の区別が無いが、図内では説明のために外装部各面をA〜D面と定義する。またそれらに対応した姿勢認識装置の各タッチセンサをS−A〜Dと定義する。図内1の通常状態では接地面となっているA面と対応したS−Aが装置内でも底面に位置し、鉛球が乗ることでON状態にあり、制御器は接地面をA面と認識する。図4に示すように姿勢が崩れると装置内でも方向の逆転が起こり鉛球はS−Aを押し続けることができず、S−AはOFF状態となる。これによりA面は接地面と認識されなくなる。機体の状態が安定するとB面が接地面となり対応したS−Bが装置内で底部となり鉛球は底部に転がり、S−Bを押さえON状態に制御器はB面を接地面と認識する。これを他の面が接地面になった際にも行えば同様に時機の姿勢を認識することができる。
【0017】
図5は三角錐型無方向性ロボットの例を示す。立方体同様、安定性が高く無方向性を持つ形状に三角錐(正四面体)がある。三角錐の場合、面の総数が立方体より少ないため、姿勢認識も単純になり制御が容易にできる。ただし,立方体型無方向性ロボットと同様の方式を用いる場合、各面が低面となった際に接地する頂点(動輪,キャスタを配置する箇所)が三箇所となる。この場合二つの駆動輪とそれを補助するキャスタを用いた移動方式では各面に同様の移動機能を持たせるのは不可能である。よって図5に示すように、三角錐全ての頂点に動輪(10)を配置し、各面(12)で全方向移動を行うことでこの問題を解決する。また、全ての接地輪が駆動することでキャスタ使用時よりも段差走破能力が向上すると考えられる。
【0018】
三角錐無方向性ロボットの全方向移動には図5に示すような特殊なホイールを用いる。このホイールは円周部にホイールの円周に車輪方向に回転するローラ(11)を8個備える。三角錐型無方向性ロボットは各面に配置されたこのホイールを3個使用して全方向移動を行う。三角錐無方向性ロボットに使用する全方向移動は三個の駆動輪のベクトルの合力を任意の進行方向に向けることで移動を行う。そのベクトルがホイールのスラスト方向にかかり、移動の抵抗となりうる場合でも上記のホイールならば、円周部のローラによって抵抗を無くしスムーズに全方向移動を行うことが可能である。
【0019】
三角錐無方向性ロボットの全方向移動機構では3個の動輪の速度を任意に調整しその合成ベクトルを進行方向、進行速度に合わせることで移動する。以下に回転比の主なパターンである.前後方向,左右方向,旋回の例を示す。
・前後移動
3個の動輪のうちの2個を使用したて上下方向へ移動する。進行方向に直行する辺に接 する動輪を進行方向に回転することで移動する。同様の方式で前後,左右の斜め上下方 向合計8方向への移動が可能である。
・左右移動
3個の動輪を使用して左右方向へ移動する。進行方向ベクトルを進行方向に平行する辺 に接する動輪の回転によるベクトル和が残りの動輪のベクトルと等しくなるように調整 することで左右方向へと移動する。同様の方式で左右他6方向への移動が可能である.
・旋回
旋回の際は3個の動輪の同様の歩行に回転させる.同様の方式で左右他6方向への移動 が可能である.
【0020】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間内のX軸,Y軸,Z軸にあたる面と、それらの軸の対称軸にあたるX’軸,Y’軸,Z’軸にあたる相対面どうしの無方向性(対面無方向性)と、XY平面,YZ平面,ZX平面における無方向性(平面無方向性)と、静止状態において無方向性と関節軸・アクチュエータ駆動の動作状態において無方向性(静・動的無方向性)を備えていることを特徴とする無方向性ロボット。
【請求項2】
サーボモータを二個用いた二自由度のアームによって任意の方向に重りを移動させ、すなわちサーボモータ2個の駆動によって、進行方向に重心位置をずらし、任意の方向に進む手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の球型無方向性ロボット。
【請求項3】
対面する頂点に駆動輪とキャスタを持ち,全ての面が同様の移動機構を持ち、各面に二つの駆動輪で旋回と移動を行い、
箱の内部にモータを別々に制御するモータドライバと切角の八面体の姿勢認識装置を組み込んでおり、
姿勢認識装置の内部が空洞になっており、この空洞内に鉛球が1個,各正方形面に1個ずつ計六個のタッチセンサを内蔵し、タッチセンサのある面が箱型ロボットの外装部立方体の各面と平行になるように内蔵されており、機体がどのような姿勢のときでもボタン設置面が下方に位置し、鉛球が機体の姿勢が変化する際に転がり重さによってセンサーの認識した方向の面を接地面として対応した動輪を回転させる手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の箱型無方向性ロボット。
【請求項4】
三角錐全ての頂点に動輪を配置し,各面で全方向移動を行い、全ての接地輪が駆動することでキャスタ使用時よりも段差走破能力が向上でき、
全方向移動のために円周に車輪方向へ回転するローラを8個備えた特殊なホイールを使用しており、ホイールを各面に3個配置されてその駆動輪のベクトルの合力を任意の進行方向に向ける全方向移動を行う手段を取っていることを特徴とする請求項1記載の三角錐型無方向性ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−152910(P2011−152910A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31763(P2010−31763)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)