説明

無機質ジンクリッチペイント及びそれを用いた複層塗膜形成方法

【課題】ミストコート工程を行うことなく、バブルの発生を抑制し得る塗膜を形成できる無機質ジンクリッチペイント及びその塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素系無機結合剤、(B)ポリビニルブチラール樹脂、(C)有機ホウ素化合物及び(D)亜鉛末を含有する無機質ジンクリッチペイントであって、(A)と(B)の配合比が(A)成分中のSiO成分:(B)成分=85:15〜15:85(重量比)であり、且つ(C)成分の含有量が(A)及び(B)成分の合計重量に対して5〜30重量%であり、(D)成分が(d1)平均粒子径10〜50μmの亜鉛末及び(d2)平均粒子径10μm未満の亜鉛末からなり、両者の配合比が(d1):(d2)=5:95〜70:30(重量比)であり、さらに(D)成分が乾燥塗膜固形分中に60〜90重量%となるよう含有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストコート工程を行うことなく、バブルの発生を抑制し得る塗膜を形成できる無機質ジンクリッチペイント及びそれを用いた複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、橋梁、タンク、プラントなどの鉄鋼構造物の重防食塗装には、無機質ジンクリッチペイントが汎用されている。該無機質ジンクリッチペイントによる塗膜には、通常、空隙(ボイド)が多数存在するため、この上に下塗り塗膜や上塗り塗膜を形成すると、空隙中の空気による塗膜の発泡やピンホールなどの欠陥が発生する。従来、これを防止するため、該下塗り塗膜を形成する前に、該下塗塗料を多量の溶剤で希釈した低粘度液を塗装し、無機質ジンクリッチペイント塗膜の空隙中の空気を追い出す、いわゆる「ミストコート工程」を行っていた。しかしながら該ミストコートによっても上記欠陥が完全になくなったわけではなく、また工数削減の面からもミストコートなしでバブルの発生を抑制することが求められていた。
【0003】
例えば特許文献1には、シリケート系展色剤及び亜鉛末に、フレーク顔料を配合してなる無機質亜鉛塗料組成物が開示されている。これによれば塗膜表層にフレーク顔料が偏在し、空隙中への溶剤の侵入を防ぎ空隙中の空気との置換が生じないために塗膜の発泡やピンホールなどの発生を防ぐというものである。
【0004】
しかしながら該手法では、垂直面の塗装において塗膜表層にフレーク顔料が偏在し難く、この塗膜の上層に形成した塗膜にバブルが発生する、さらにはスプレー塗装においてエアレスチップ、フィルター、ストレーナー等の塗装機内でフレーク顔料がつまり塗装が中断してしまうという不具合があった。
【0005】
そこで本出願人は、特許文献2において、特定粒径の亜鉛末に特定の微粉末を併用した無機質ジンクリッチペイントを提案した。これによれば、特定の微粉末の使用により塗膜内を緻密にすることで塗膜内の空隙率を低くし、ミストコート工程を行うことなくバブルの発生が抑制でき、しかも接合部塗装時には一定水準以上のすべり係数も確保することが可能である。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−51951号公報
【特許文献2】特開2002−194284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら該手法では、次工程までの塗装インターバルが長い場合に結合剤の硬化収縮に伴う塗膜のワレが発生したり、次工程の塗料を厚膜で塗装した場合にバブルが発生するおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、次工程の塗料を厚膜で塗装した場合でも、ミストコート工程を行うことなくバブルの発生を抑制し得る塗膜を形成できる無機質ジンクリッチペイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究の結果、粒子径の異なる亜鉛末を併用し、さらにポリビニルブチラール樹脂を無機結合剤に対し特定割合で併用し、加えて有機ホウ素化合物を特定量配合することによって、緻密かつ硬化収縮の少ない塗膜を作成し得る無機質ジンクリッチペイントを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(A)ケイ素系無機結合剤、(B)ポリビニルブチラール樹脂、(C)有機ホウ素化合物及び(D)亜鉛末を含有する無機質ジンクリッチペイントであって、(A)と(B)の配合比が(A)成分中のSiO成分:(B)成分=85:15〜15:85(重量比)であり、且つ(C)成分の含有量が(A)及び(B)成分の合計重量に対して5〜30重量%であり、(D)成分が(d1)平均粒子径10〜50μmの亜鉛末及び(d2)平均粒子径10μm未満の亜鉛末からなり、両者の配合比が(d1):(d2)=5:95〜70:30(重量比)であり、さらに(D)成分の含有量が乾燥塗膜固形分中に60〜90重量%であることを特徴とする無機質ジンクリッチペイント、及び該無機質ジンクリッチペイントを基材表面に塗装した後、その上にミストコート工程を行わずに次工程の塗料を塗装することを特徴とする複層塗膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無機質ジンクリッチペイントによれば、次工程の塗料を厚膜で塗装した場合でも、ミストコート工程を行なうことなくバブルの発生を抑制する塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においてケイ素系無機結合剤(A)には、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、これらの部分縮合体及び/又はそれらを水及び酸触媒の存在下で縮合反応させた加水分解初期縮合物が使用でき、テトラアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が挙げられ、これらの部分縮合体としては、シリケート40、Mシリケート51(いずれも多摩化学工業株式会社製)、メチルシリケート51、エチルシリケート40、エチルシリケート48(いずれもコルコート株式会社製)、アルキルトリアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられ、ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用できる。また上記アルコキシシラン類に水分散型コロイダルシリカ、溶剤分散型コロイダルシリカを併用してもよい。
【0013】
ポリビニルブチラール樹脂(B)としては、特に制限なく従来公知のものが使用可能であり、特に耐溶剤性及び貯蔵性の点から、ブチラール化度が58〜77mol%、好ましくは58〜71mol%の範囲で、重量平均分子量は3万〜30万、好ましくは3万〜20万の範囲であることが好ましい。具体的には、例えばエスレックBL−1、同BL−2、同BL−3、同BL−S、同BX−L、同BM−1、同BM−2、同BM−5、同BM−S、同BH−3、同BX−1、同BX−7(いずれも積水化学工業株式会社製)、デンカブチラール #3000、同#4000、同#5000(いずれも電気化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのポリビニルブチラール樹脂は単独でまたは2種類以上混合して使用できる。
【0014】
ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー株式会社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー株式会社社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0015】
ケイ素系無機結合剤(A)とポリビニルブチラール樹脂(B)の配合比は、(A)成分中のSiO成分:(B)成分=85:15〜15:85(重量比)の範囲であり、好ましくは70:30〜30:70、より好ましくは60:40〜40:60の範囲である。上記配合比において、SiO成分の比率が15:85より小さいと得られる塗膜の耐溶剤性が劣り、SiO成分の比率が85:15より大きいと塗膜中の空隙が多くなるため好ましくない。
【0016】
また結合剤成分として、上記ケイ素系無機結合剤(A)及びポリビニルブチラール樹脂(B)に加えて、必要に応じてケイ素系及びホウ素系以外の金属アルコキシド、金属コロイド、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂などを混合して用いてもよい。
【0017】
有機ホウ素化合物(C)としては、アルキルボレートが適用でき、例えばトリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート、トリアミルボレート、トリヘキシルボレート、トリデシルボレートなどが挙げられる。これらのうち、特にトリメチルボレート、トリエチルボレート、トリブチルボレートが好ましい。有機ホウ素化合物(C)の配合量は(A)及び(B)の合計重量に対して5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%の範囲である。5重量%未満では得られる塗膜の耐溶剤性が劣るため好ましくなく、30重量%を越えても耐溶剤性はそれ以上変わらない。
【0018】
亜鉛末(D)は、(d1)平均粒子径10〜50μm、好ましくは10〜30μmの亜鉛末及び(d2)平均粒子径10μm未満、好ましくは1〜5μmの亜鉛末からなる。前記粒子径の亜鉛末であれば特に制限なく使用することができるが、特に球形状の粒子が好適である。(d1)と(d2)の配合比は(d1):(d2)=5:95〜70:30(重量比)、好ましくは20:80〜60:40の範囲内であることが好適である。前記配合比において(d1)の重量比が5:95より小さいと、接合部塗装時の耐摩擦力が十分に得られず、また(d1)の重量比が70:30より大きいと、塗膜中の空隙が多くなるため好ましくない。該亜鉛末(D)は乾燥塗膜中に、60〜90重量%、好ましくは75〜85重量%の範囲で含有されることが好適である。該亜鉛末(D)の含有量が60重量%未満では、得られる塗膜の防錆性が劣り、90重量%を越えると塗膜が脆くなるので好ましくない。
【0019】
本発明の無機質ジンクリッチペイントは(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有するものであり、さらに必要に応じて顔料分散剤(E)を含有することができる。顔料分散剤(E)は、常温で固体であっても良く又液体であっても良い。顔料分散剤(E)としては、アニオン性顔料分散剤(例えば、脂肪族アルコール硫酸塩;スルホン化物;アルキルスルホン酸塩;リグニンスルホン酸化合物;ポリカルボン酸系化合物;アクリル酸基、スルホン酸基又はリン酸基を含有する高分子量化合物)、ノニオン性顔料分散剤(例えば、オレイルアミノオレエート;ポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖を含有する高分子量化合物)、両性顔料分散剤(例えば、アミノ酸類;ベタイン)などが使用できる。市販品としては例えば、アニオン性化合物としては、Disperbyk−102、Disperbyk−110、Disperbyk−111、BYK−P104、BYK−P104S(いずれもBYK社製)、ディスパロン2150、同1210、同DA−1200、同DA−375(いずれも楠本化成株式会社製)がある。ノニオン性化合物としては、Disperbyk−103、Disperbyk−170、Disperbyk−171(いずれもBYK社製)、ディスパロンDN−900、同DA−550(いずれも楠本化成株式会社製)等を挙げることができる。顔料分散剤(E)は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜8重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含有することが塗料粘度を低減する効果の点から好ましい。
【0020】
本発明では、さらに必要に応じて顔料成分として、体質顔料、防錆顔料及び着色顔料を塗膜の緻密性を損なわない程度に使用できる。体質顔料、防錆顔料及び着色顔料としては、例えばシリカ粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、酸化チタン、リン化鉄、MIO、シアナミド鉛、ジンククロメ−ト、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、メタホウ酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カ−ボンブラック、ルチル粉末、ジルコン粉末などが挙げられる。
【0021】
本発明の無機質ジンクリッチペイントには、さらに必要に応じて有機溶剤、沈降防止剤、タレ止め剤、付着性付与剤などの通常の塗料用添加剤を適宜配合してもよい。
【0022】
本発明の無機質ジンクリッチペイントは、常法に従って調整でき、例えば結合剤成分を含む液状成分と亜鉛末を含む粉末成分とを別容器に保存し、使用直前に両者を混合する1液1粉末形で使用することができる。また、顔料分散剤(E)は、液状成分中に添加されていても良く、また液状成分と粉末成分を混合した後に添加しても良い。
【0023】
本発明の無機質ジンクリッチペイントは、通常基材表面に乾燥膜厚で50μm以上となるよう塗装することができる。その塗装は、例えばエアスプレー、エアレススプレー、刷毛など従来公知の手段で行うことができる。
【0024】
本発明では、上記の通り得られる塗膜の空隙率が、10%以下、好ましくは5%以下であることが、塗膜の緻密性を維持しバブルの発生を抑制する点から好ましい。ここで、空隙率とは塗膜体積に対する空隙部分の体積の比率であり、以下の測定方法によって得られる値である。
【0025】
鋼板上に無機質ジンクリッチペイントを、スプレーにて75μmの乾燥膜厚となるよう塗装し、室温(20℃)にて7日間乾燥させ、得られた塗装鋼板の重量(W0)を測定し、これを流動パラフィンに1分間浸し引き上げ後、速やかに表面の流動パラフィンを拭き取り、塗装鋼板の重量(W)を測定し、下記式(1)によって算出する。尚、塗膜体積は塗装面積と乾燥膜厚の積である。
空隙率(%)={(W−W0)/流動パラフィンの比重}/塗膜体積×100 (1)
【0026】
また、本発明の複層塗膜形成方法は、基材表面に対し前記無機質ジンクリッチペイントを塗装する工程の後、ミストコート工程を行わずに次工程の塗料を塗装する方法である。ここで使用される基材は特に限定されるものではなく、例えば鉄および鉄を含む合金等を含むことができる。無機質ジンクリッチペイントの塗装は前記方法により行うことができる。次工程の塗料としては、特に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂系塗料などの既知の下塗り塗料が使用できる。
【0027】
このようにして得られた複層塗膜の上に、さらに上塗り塗料を塗装しても良い。この上塗り塗料としては、特に限定されるものではなく、それ自体既知の塗料を使用でき、例えば、アルキド樹脂系、アクリル樹脂系、塩化ゴム系、エポキシ樹脂系、シリコンアルキド樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、フッ素樹脂系などの塗料を使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0029】
製造例1:結合剤液の製造
反応容器にエチルシリケ−ト40(コルコ−ト社製)100部、エタノール72.5部、水10部及び2%塩酸5部を入れ、40℃に2時間保ちながら攪拌を継続し結合剤液(固形分40%)を得た。
【0030】
製造例2:液状成分B−1の製造
結合剤液187.5部に、エスレックBM−1(注1)10部をイソプロパノール15部で希釈したものを加え、さらにトリメチルボレートを13.2部添加して混合し、液状成分B−1(固形分43.5%)を得た。
【0031】
製造例3〜12:液状成分B−2〜B−11の製造
表1の配合に従い、製造例2と同様に液状成分B−2〜B−11を製造した。表1の(注1)〜(注5)はそれぞれ下記の通りである。液状成分B−1〜B−11について下記性能試験に供した。性能試験結果を表1に併せて示す。
(注1)エスレックBM−1:積水化学工業株式会社製、ポリビニルブチラール樹脂、ブチラール化度65±3%、固形分100%、重量平均分子量約16万
(注2)エスレックBL−1:積水化学工業株式会社製、ポリビニルブチラール樹脂、ブチラール化度63±3%、固形分100%、重量平均分子量約15万
(注3)エスレックBL−10:積水化学工業株式会社製、ポリビニルブチラール樹脂、ブチラール化度71±3%、固形分100%、重量平均分子量約17万
(注4)Disperbyk−110:BYK社製、アニオン性顔料分散剤、固形分52%
(注5)Disperbyk−170:BYK社製、ノニオン性顔料分散剤、固形分30%
【0032】
液状成分の試験方法
クラック評価
1.0×70×150mmのガラス板に、イソプロパノールを加え固形分25%に調製した各液状成分をアプリケーターにより塗装し、塗装後23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日乾燥させ膜厚15μmの塗膜を得た。得られた塗膜の表面状態を目視により評価した(○:正常、△:塗膜の一部にクラックあり、×:塗膜全面にクラックあり)。
耐溶剤性試験
1.0×70×150mmのガラス板に、イソプロパノールを加え固形分25%に調製した各液状成分をアプリケーターにより塗装し、塗装後23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日乾燥させ膜厚15μmの塗膜を得た。塗膜上にブチルセロソルブ1mlを滴下し、その上をガーゼで10往復した後の塗膜の状態を評価した(○:正常、△:表面が溶解する、×:完全に塗膜が溶解する)。
【0033】
【表1】

【0034】
無機質ジンクリッチペイントの作成
実施例1〜9及び比較例1〜5
上記で得た液状成分B−1〜B−11に、表2で示す各成分を配合して攪拌・混合し、各無機質ジンクリッチペイントを得た。表2中の(注6)〜(注9)については下記の通りである。得られた各無機質ジンクリッチペイントについて下記性能試験に供した。性能試験結果を表2に併せて示す。
(注6)亜鉛末 特2:堺化学工業株式会社製、亜鉛末、平均粒子径15.5μm
(注7)亜鉛末 MCS:日本ペイント防食コーティング株式会社製、亜鉛末、平均粒子径8.1μm
(注8)亜鉛末 LS−2:日本ペイント防食コーティング株式会社製、亜鉛末、平均粒子径3.5μm
(注9)ベントン27 :ウィルバーエルス社製、タレ止め剤、固形分100%
【0035】
無機質ジンクリッチペイントの試験方法
耐溶剤性試験
3.2×70×150mmのサンドブラスト鋼板に乾燥膜厚75μmになるように塗装し、塗装後23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日乾燥させた塗膜上にブチルセロソルブ1mlを滴下し、その上をガーゼで10往復した後の塗膜の状態を評価した(○:正常、△:表面が溶解する、×:完全に塗膜が溶解する)。
空隙率の測定
1.0×70×150mmのサンドブラスト鋼板にスプレー塗装にて乾燥膜厚で75μmとなるように塗装し、塗装後23℃、相対湿度50%の雰囲気下で7日乾燥させた後、前記の空隙率測定方法に従って空隙率を測定した。
バブル抑止性試験
3.2×500×500mmのサンドブラスト鋼板に、各無機質ジンクリッチペイントをイソプロパノールで5%希釈したものをスプレーにて乾燥膜厚で75μmとなるよう塗装し、室温にて7日間乾燥させた後、得られた塗膜上に、粘度10ポイズで不揮発分60%のエポキシ樹脂塗料をスプレーにて乾燥膜厚で60μm又は120μmとなるよう塗装し、室温にて1日乾燥させて試験板を得た。このエポキシ塗膜上に発生する泡(バブル)とピンホールの数(50cm当たり)を目視にて調べ下記基準で評価した(○:0個、△:1〜3個、×:4個以上)。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素系無機結合剤、(B)ポリビニルブチラール樹脂、(C)有機ホウ素化合物及び(D)亜鉛末を含有する無機質ジンクリッチペイントであって、(A)と(B)の配合比が(A)成分中のSiO成分:(B)成分=85:15〜15:85(重量比)であり、且つ(C)成分の含有量が(A)及び(B)成分の合計重量に対して5〜30重量%であり、(D)成分が(d1)平均粒子径10〜50μmの亜鉛末及び(d2)平均粒子径10μm未満の亜鉛末からなり、両者の配合比が(d1):(d2)=5:95〜70:30(重量比)であり、さらに(D)成分の含有量が乾燥塗膜固形分中に60〜90重量%であることを特徴とする無機質ジンクリッチペイント。
【請求項2】
顔料分散剤(E)を(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計重量に対して0.01〜10重量%含有する請求項1記載の無機質ジンクリッチペイント。
【請求項3】
得られる塗膜の空隙率が10%以下である請求項1又は2記載の無機質ジンクリッチペイント。
【請求項4】
基材表面に、請求項1乃至3のいずれか1項記載の無機質ジンクリッチペイントを塗装した後、その上にミストコート工程を行わずに次工程の塗料を塗装することを特徴とする複層塗膜形成方法。

【公開番号】特開2008−31237(P2008−31237A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204250(P2006−204250)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】