説明

無機酸化物微粒子の水分散液

【課題】低温条件下で凍結させても、解凍させた際には再分散が容易で、品質が低下しにくい無機酸化物微粒子の水分散液の提供。
【解決手段】平均粒子径1〜500nmの無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1×10-8〜20mol/m2の範囲にあり、該水分散液に含まれる該無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜60重量%の範囲にある無機酸化物微粒子の水分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機酸化物微粒子の水分散液に関し、特に、凍結・解凍後の再分散性に優れた無機酸化物微粒子の水分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカゾルやシリカアルミナゾル、あるいはチタニアゾルなどの無機酸化物微粒子の分散液は、研磨剤、塗料、ハードコート剤など様々な用途に使用されている。
このような水分散液の一例として、特許文献1に記載されるようなシリカ系ゾルが知られている。
しかし、このような分散液のうち分散媒が水である水分散液は、例えば氷点下のような低温条件下で保管または輸送、使用した場合に、該水分散液が凍結してゲル化する場合があり、再分散させることが困難な場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、このような課題を鑑みて、鋭意研究した結果、水を分散媒とした無機酸化物微粒子の分散液に少量のアルコールを添加することで、該分散液を凍結後解凍させた際の不可逆的凝集が著しく抑制されることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明では、低温条件下で凍結させても、解凍させた際には再分散が容易で、品質の低下しにくい無機酸化物微粒子の水分散液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無機酸化物微粒子の水分散液は、平均粒子径1〜500nmの無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1×10-8〜20mol/m2の範囲にあり、該水分散液に含まれる該無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜60重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0006】
前記アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれた1種以上であることが好ましい。
前記水分散液に含まれるアルコール濃度が0.5〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
前記水分散液に含まれるアルカリ金属含有量がM2O換算基準(ただしMはアルカリ金属元素とする)の固形分濃度で0.45重量%未満の範囲にあることが好ましい。
【0007】
前記無機酸化物微粒子がケイ素とアルミニウムとを含むことが好ましい。
前記無機酸化物微粒子がシリカ微粒子であることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子の平均粒子径が100〜200nmの範囲にあることが好ましい。
前記水分散液に含まれる前記無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液は、該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに対して所定の範囲のアルコールを含んでいるために、該水分散液が凍結した場合にも、これを解凍した際に該分散液中に含まれる該無機酸化物微粒子を再分散させることが容易である。
また再分散後の分散性や透明性が、凍結前と比べて低下することも少ない。
このような無機酸化物微粒子の水分散液は凍結によってその品質が低下することが非常に少ないため寒冷地や低温条件下でも輸送および保管または使用することができる。また、該水分散液に含まれるアルコールの量は、無機酸化物微粒子の固形分濃度にもよるが、比較的少ないため、危険物の法的取り扱い制限を受けることも少なく、必要以上にアルコール成分を含まず、分散媒の主成分を水とすることができるため、安全性も高く、また使用する用途が制限されることが少なく様々な目的に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態について具体的に述べる。
無機酸化物微粒子の水分散液
本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液は、平均粒子径1〜500nmの無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1.0×10-8〜20mol/m2の範囲にあり、該水分散液に含まれる該無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜60重量%の範囲にあることを特徴としている。
前記水分散液に含まれるアルコールの含有量が、上記の範囲にあることによって、必要最小限のアルコール添加量で、該水分散液を凍結、解凍させたのちの再分散性を著しく向上させることができる。
その理由としては、定かではないものの、少なくとも水分散液が凍結する際に、アルコール分子が無機酸化物微粒子の表面の一部を被覆することにより、不可逆的な凝集が抑制されるためであると考えられる。
【0010】
前記アルコールの含有量は、前記無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1.0×10-8〜20mol/m2、より好ましくは1.0×10-6〜1.0×10-3mol/m2、さらに好ましくは3.0×10-6〜5.0×10-4mol/m2の範囲にあることが好ましい。
前記アルコールの含有量が1.0×10-8mol/m2未満の場合には、前記水分散液の凍結解凍後の再分散性が向上する効果が低いため好ましくない。
前記アルコールの含有量が20mol/m2を超えると、前記水分散液の凍結解凍後の再分散性を向上させる効果が、それ以上増加しなくなり、かつ、水分散液が不要なアルコールを含むとその使用用途が制限される場合があったり、用途にもよるがその安全性が低下する場合があるので好ましくない。
【0011】
前記水分散液に含まれる前記無機酸化物微粒子の固形分濃度は0.001〜60重量%、より好ましくは0.001〜40重量%、さらに好ましくは0.001〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
前記固形分濃度が0.001重量%未満の場合には、そもそも、無機酸化物微粒子の水分散液の特徴が発現しにくいので好ましくない。前記固形分濃度が60重量%の場合には、前記水分散液の分散安定性が低下するので好ましくない。
固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にある前記水分散液は、安定性が高く、凍結解凍したのちの再分散性が特に高いため好ましい。
【0012】
前記アルコールは特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。
中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。特に、エチルアルコールは安全性が高いため特に好ましい。
【0013】
本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液は、殆どの場合、凍結させ解凍したのちに特殊な再分散工程を行わなくても、自発的に再分散する。また、アルコール含有量や無機酸化物微粒子の固形分濃度などの条件によって擬似的な凝集が起こった場合であっても、超音波処理などの簡単な再分散処理によって容易にこれを再分散させることができる。
このように水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の凍結解凍後の再分散性が向上する理由としては定かではないものの、水分散液の分散時、もしくは凍結時に、無機酸化物微粒子の表面にアルコール分子が存在することにより、またはアルコール分子が該微粒子の表面を部分的または全体的に被覆または吸着することにより、凍結時の該微粒子の不可逆的な凝集が抑制され、解凍後に水分子が溶解すれば無機酸化物微粒子は再び分散するものと推察される。
【0014】
本発明に係る水分散液に含まれる前記アルコール濃度は0.5〜8重量%、より好ましくは0.9〜3.5重量%の範囲にあることが好ましい。
前記アルコール濃度が0.5重量%未満の場合には、水分散液を凍結解凍したのちの再分散性が低下する場合があるので好ましくない。前記アルコール濃度が8重量%を超えると、水分散液の安全性および加工性や取り扱いの面、および使用する用途によっては好ましくない場合がある。
【0015】
無機酸化物微粒子
本発明に係る水分散液の無機酸化物微粒子について詳述する。
前記無機酸化物微粒子としては、特に制限されるものではないが、例えば遷移金属、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などをはじめとする金属の酸化物微粒子、複合酸化物微粒子などが挙げられる。
またこれらの金属酸化物微粒子や金属酸化物微粒子は有機ケイ素化合物やアミンなどの公知の表面処理剤によって少なくともその表面の一部を処理または修飾されたものであってもよい。
【0016】
さらに具体的に述べれば、前記無機酸化物微粒子はケイ素、アルミニウム、チタニウム、マグネシウム、ジルコニウム、アンチモン、鉄、タングステンより選ばれた1種または1種以上の金属元素を含む酸化物微粒子および/または複合酸化物微粒子であることが好ましい。
また前記酸化物微粒子または複合酸化物微粒子は、さらにリン、ホウ素、セリウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属より選ばれる1種以上を含むものであってもよい。
前記無機酸化物微粒子は、コアシェル型微粒子であってもよく、中空型微粒子であってもよい。また前記無機酸化物微粒子は副成分として有機基や樹脂などの有機物を含んでいてもかまわない。
【0017】
前記無機酸化物微粒子は、平均粒子径1〜500nmの範囲にあることを特徴としている。
前記平均粒子径は、より好ましくは、5〜300nm、さらに好ましくは、100〜200nmの範囲にあることが好ましい。
前記平均粒子径が1nm未満の場合には、無機酸化物微粒子の安定性が低いので好ましくない。
また、前記平均粒子径が500nmを超えると、無機酸化物微粒子を含む水分散液の分散安定性が低下するので好ましくない。
【0018】
前記無機酸化物微粒子の形状は特に制限されるものではなく、球状、繊維状、針状、棒状、鎖状、金平糖状などを含むあらゆる形状の微粒子を使用することができる。
ただし、前記無機酸化物微粒子が、鎖状など、複数の一次粒子が結合した二次粒子を形成している形状にある場合には、前記平均粒子径は二次粒子径を意味するものとする。
【0019】
前記無機酸化物微粒子は、粉末状の微粒子であっても良いが、より好ましくはゾルやコロイドなどの分散液状の微粒子であることが好ましい。分散液状の無機酸化物微粒子を用いると、本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液の安定性や透明性が向上するので好ましい。
分散液状の無機酸化物微粒子を用いる場合には、水を分散媒とする無機酸化物微粒子を用いることが好ましい。
【0020】
前記無機酸化物微粒子は、例えばアルコキシド法、ゾルゲル法、金属塩や金属アルコキシドを加水分解し必要に応じて中和する方法、水熱合成法などをはじめとする公知の方法で製造することができる。
また、分散液状の前記無機酸化物微粒子としては、市販品(例えば、日揮触媒化成(株)のカタロイド、ファインカタロイド、アトミーボール(AB)等)を用いてもよい。
【0021】
さらに、前記水分散液に含まれるアルカリ金属含有量は、M2O換算基準(ただしMはアルカリ金属元素とする)の固形分重量で0.45重量%未満の範囲にあることが好ましい。
前記アルカリ金属含有量が固形分濃度で0.45重量%を超える場合には、無機酸化物微粒子の種類にもよるが、凍結解凍後の水分散液の再分散性が低下する場合があるので好ましくない。
【0022】
例えば、シリカゾルやシリカアルミナゾルなどは製法によってはアルカリ金属を含む場合があるが、このようなゾルを無機酸化物微粒子として使用する場合に、最終的な水分散液のアルカリ金属含有量が上記範囲を超えるような場合には、必要に応じて、イオン交換樹脂や、限外ろ過膜などを用いて該水分散液中のアルカリ金属元素を除去してもよい。
【0023】
また、前記無機酸化物微粒子のより好ましい形態の一つとして、ケイ素とアルミニウムとを含む無機酸化物微粒子が挙げられる。
また、前記ケイ素とアルミニウムとを含む無機酸化物微粒子のうち、分散液状のものは特に好ましい。
ケイ素とアルミニウムとを含む無機酸化物微粒子を本発明に係る水分散液に用いると、該無機酸化物微粒子の分散安定性が非常に高く、水分散液を凍結、解凍させたのちの再分散性に優れるため、好ましい。
【0024】
ケイ素とアルミニウムとを含む無機酸化物微粒子の一例としては、例えば特開昭63−123807号公報に記載の酸性シリカゾルや、特開平06−199515号公報に記載の酸性シリカゾルなどが挙げられる。
なお、前記無機酸化物微粒子が、ケイ素とアルミニウム以外の元素、例えばチタニウム、ジルコニウム、亜鉛などをさらに含むものであってもよい。
【0025】
また、前記無機酸化物微粒子はシリカ微粒子であることが好ましい。
より好ましくは、前記シリカ微粒子は、シリカゾルに含まれるシリカ微粒子であることが好ましい。シリカゾルは、水硝子やケイ酸液を縮重合させる方法や、アルコキシド法などにより製造することができる。
【0026】
前記シリカゾルにアルカリ金属が含まれる場合には、該アルカリ金属を必要に応じてイオン交換樹脂や限外ろ過膜などにより除去してもよい。
このとき、前記シリカゾルに含まれるアルカリ金属含有量がM2O換算基準(ただし、Mはアルカリ金属元素)の固形分濃度で0.4重量%未満となるようにすればよい。
前記シリカゾルのアルカリ金属含有量が0.4重量%を超える場合には、該ゾルを含む水分散液を凍結させ、解凍させたのちの再分散性が低下する場合がある。
また、前記無機酸化物微粒子としてシリカ微粒子を用いる場合には、該シリカ微粒子の平均粒子径が100〜200nmの範囲にあるものが好ましい。
平均粒子径が前記範囲にあるシリカ微粒子は、凍結解凍後の再分散性が高いため好ましい。
【0027】
前記無機酸化物微粒子の水分散液は、さらに、界面活性剤、分散剤、アロマ成分、各種添加剤その他、本発明を損なわない範囲において、公知の添加成分を含んでいても良い。
このように本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液は、凍結解凍後も不可逆的な凝集が起こらず、分散性、透明性、安定性、均一性を長期間高い品質で維持する効果に優れ、寒冷地や低温条件下で輸送または保管もしくは使用しても、品質の低下を招くことがない。
【0028】
また前記水分散液は、無機酸化物微粒子の固形分濃度にもよるが、アルコール含有量が必要最小限ですむため、生体への安全性が高く、取り扱いが容易で、安価であり、また加工や他成分との混合が容易であり、簡便かつ安価な方法で製造することができ、その使用用途について制限されたり、規制されることが少ない。
本発明に係る水分散液は、研磨剤、各種被膜形成用塗料、各種の樹脂組成物製品、化粧料、日用品、歯科材料、各種繊維製品、衣料、化学品、建設材料などをはじめとしたあらゆる用途に使用することができる。
【0029】
無機酸化物微粒子の分散液の製造方法
本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液の製造方法の一例としては、無機酸化物微粒子を含み、アルコールを含まない水分散液に、該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1.0×10-8〜20mol/m2の範囲となるようにアルコールを添加する方法が挙げられる。
前記アルコールの添加量が1.0×10-8mol/m2未満の場合には、該水分散液の凍解凍後に再分散性がほとんど得られない、もしくは得られないため好ましくない。
前記アルコールの添加量が20mol/m2を超えると、それ以上アルコールを添加しても効果はほとんど向上しなくなり、また不要に多くのアルコールを含むと用途によっては使用規制を受けたり、取り扱いや加工上での問題が生じる場合があるので、好ましくない。
【0030】
無機酸化物微粒子およびアルコールについては、上述した無機酸化物微粒子およびアルコールを用いることができる。
具体的な製造方法としては、無機酸化物微粒子の水分散液を公知の液相法により合成するか、粉末状の無機酸化物微粒子を水に分散させて分散液とするか、または市販の無機酸化物微粒子の水分散液を用意し、これを必要に応じて水で希釈するか、あるいは濃縮させて所望の濃度に調整したのち、上記範囲のアルコールを添加し、攪拌等により混合することにより、本発明に係る無機酸化物微粒子の水分散液を調製することができる。
【0031】
このとき、前記水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の固形分濃度は0.001〜60重量%の範囲となるようにすることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001重量%未満の場合には、そもそも、無機酸化物微粒子の水分散液の特徴が発現しにくく、60重量%を超えると、前記水分散液の安定性が低下し、凍結解凍後の再分散性が低下するので好ましくない。
さらにこのようにして得られた水分散液に所望の添加成分を混合してもよい。
【0032】
[測定方法および評価試験方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験方法を具体的に述べれば、以下の通りである。
(1)比表面積の測定方法
無機酸化物微粒子の比表面積は窒素吸着法(BET法)により下記の方法で求めた。
無機酸化物微粒子の水分散液を110℃で1時間乾燥させたのち、得られた無機酸化物微粒子の粉末に含まれる無機酸化物微粒子の比表面積をBET比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM model-1220)によりBET1点法を用いて測定した。
【0033】
(2)平均粒子径の測定方法
無機酸化物微粒子の水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径をマイクロトラック(日機装(株)製、NPA150-1-000-0-10N)を用いて測定した。
【0034】
(3)金属元素含有量の測定方法
無機酸化物微粒子に含まれる金属元素の組成分析については、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100)を用いて行った。
ただし、アルカリ金属含有量(本実施例においては、ナトリウム)については、原子吸光分光法により、原子吸光分光光度計((株)日立製作所製、Z−5300、測定モード;原子吸光、測定波長範囲;190〜900nm)を用いて測定した。
【0035】
(4)分散性の評価
凍結解凍後の無機酸化物微粒子の分散性を下記の通り評価した。
「良好」・・・特に分散工程に処さずとも分散する。目視にて透明でゲル化が確認されず、凍結解凍前後で平均粒子径に殆ど変化が見られない。
「不可」・・・抗菌消臭性無機酸化物微粒子が凝集沈降しており、超音波照射などの分散処理に処しても再分散しない。目視にて不透明でゲル化している部分がある。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-30、日揮触媒化成(株)、シリカ微粒子の平均粒子径:10.6nm、シリカ微粒子の比表面積:257m2/g、SiO2濃度;30.3重量%、Na2O含有量;0.4重量%、分散媒;水)40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含むシリカ微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は10.6nmで比表面積は257m2/gであり、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の固形分濃度は29.8重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の単位表面積当りに対して8.49×10-6mol/m2であった。
この水分散液を−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、シリカ微粒子は容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は約10.8nmで該水分散液は透明であった。
【0038】
[実施例2]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-40、日揮触媒化成(株)、シリカ微粒子の平均粒子径:18.1nm、シリカ微粒子の比表面積:151m2/g、SiO2濃度:40.5重量%、Na2O含有量:0.42重量%、分散媒;水)40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含むシリカ微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は18.1nmで比表面積は約151m2/gであり、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の固形分濃度は39.7重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の単位表面積当りに対して1.08×10-5mol/m2であった。
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は約18.5nmで該水分散液は透明であった。
【0039】
[実施例3]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:SS(スフェリカスラリー)-120、日揮触媒化成(株)、シリカ微粒子の平均粒子径:120nm、シリカ微粒子の比表面積:23m2/g、SiO2濃度:18.6重量%、Na2O含有量:0.07重量%、分散媒;水)40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含むシリカ微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は120nm、比表面積は約23m2/gであり、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の固形分濃度は18.1重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の単位表面積当りに対して1.56×10-4mol/m2であった。
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は約122nmで該水分散液は透明であった。
【0040】
[実施例4]
特開昭63−123807号公報に記載された方法、即ち、ケイ酸ソーダの水溶液を加熱しながらこれにケイ酸液とアルミン酸ナトリウム溶液とを添加したのちイオン交換する方法により、ケイ素とアルミニウムとを含む無機酸化物微粒子の水分散液を製造した。この無機酸化物微粒子の平均粒子径は7.2nm、比表面積は378m2/g、該水分散液のSiO2濃度は16.6重量%、Al2O3濃度:0.07重量%,Na2O含有量:0.07重量%であった。この水分散液40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含む無機酸化物微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は7.2nmで比表面積は約378m2/gであり、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の固形分濃度は15.8重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の単位表面積当りに対して1.09×10-5mol/m2であった。
この水分散液を−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約7.4nmで該水分散液は透明であった。
【0041】
[実施例5]
ケイ素とアルミニウムと銀を含む無機酸化物微粒子の水分散液(製品名:ATOMY BALL-(UA)、日揮触媒化成(株)、無機酸化物微粒子の平均粒子径:15nm、比表面積:143m2/g、SiO2濃度:1.03重量%、Al2O3濃度:0.37重量%,Na2O含有量:0.01重量%,Ag2O濃度:0.07重量%)40gにエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含む無機酸化物微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は15nmで表面積は約143m2/gであり、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の固形分濃度は、1.44重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の単位表面積当りに対して3.16×10-4mol/m2であった。
この水分散液を−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約15nmで該水分散液は透明であった。
【0042】
[実施例6]
チタニウムとケイ素と亜鉛を含む無機酸化物微粒子が分散した水分散液(製品名:ATOMY BALL-(20NTZ)20、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:20nm、比表面積:100m2/g、TiO2濃度:18.0重量%、SiO2濃度:1.6重量%、ZnO濃度;0.4重量%、Na2O濃度0.04重量%)40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含む無機酸化物微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約20nmで比表面積は約100m2/gであり、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の固形分濃度は19.4重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の単位表面積当りに対して3.35×10-5mol/m2であった。
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約20nmで該水分散液は透明であった。
【0043】
[実施例7]
チタニウムとケイ素と亜鉛を含む無機酸化物微粒子が分散した水分散液(製品名:ATOMY BALL-(20NTZ)20、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:20nm、比表面積:100m2/g、TiO2濃度:18.0重量%、SiO2濃度:1.6重量%、ZnO濃度;0.4重量%、Na2O濃度0.04重量%)40g にエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)2.8gを添加して、エチルアルコールを7重量%含む無機酸化物微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約20nmで比表面積は約100m2/gであり、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の固形分濃度は18.7重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の単位表面積当りに対して7.86×10-5mol/m2であった。
この水分散液を−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれる無機酸化物微粒子の平均粒子径は約20nmで該水分散液は透明であった。
【0044】
[実施例8]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-50、日揮触媒化成(株)、シリカ微粒子の平均粒子径:27.3nm、シリカ微粒子の比表面積:100m2/g、SiO2濃度:48.3重量%、Na2O含有量:0.49重量%、分散媒;水)を純水で希釈し、(SiO2濃度:9.7重量%、Na2O含有量:0.1重量%)としたもの40gにエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含むシリカ微粒子の水分散液を得た。
この水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は27.3nmで比表面積は約100m2/gであり、固形分濃度は9.51重量%であった。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の単位表面積当りに対して6.83×10-5mol/m2であった。
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は約27.2nmで該水分散液は透明であった。
【0045】
[実施例9]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-50、日揮触媒化成(株)、シリカ微粒子の平均粒子径:27.3nm、比表面積:100m2/g、SiO2濃度:48.3重量%、Na2O含有量:0.49重量%、分散媒;水)にイオン交換樹脂を添加して、Na2O含有量が0.39重量%となるまでナトリウムイオンを除去したのち、イオン交換樹脂を分離して、得られたシリカゾル40gにエチルアルコール(林純薬工業、99%以上)1.2gを添加して、エチルアルコールを3重量%含むシリカ微粒子の水分散液を得た。
また、この水分散液に含まれるエチルアルコールは、該水分散液に含まれるシリカ微粒子の単位表面積当りに対して1.38×10-5mol/m2であった。
この水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は27.3nmで比表面積は約100m2/gであり、固形分濃度は47.4重量%であった。
この水分散ゾルを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、容易に再分散した。
解凍させた水分散液に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は約27.4nmで該水分散液は透明であった。
【0046】
[比較例1]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-30、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:10.6nm、比表面積:257m2/g、SiO2濃度:30.3重量%、Na2O含有量:0.4重量%、分散媒;水)40gを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、解凍後のシリカゾルは、シリカ微粒子が凝集体を形成し、沈殿した。
【0047】
[比較例2]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:SS-120、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:120nm、比表面積:23m2/g、SiO2濃度:18.6重量%、Na2O含有量:0.07重量%、分散媒;水)40gを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、解凍後の水分散液は、シリカ微粒子が凝集体を形成し、沈殿した。
【0048】
[比較例3]
ケイ素とアルミニウムと銀を含む無機酸化物微粒子の水分散液(製品名:ATOMY BALL-(UA)、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:15nm、比表面積:143m2/g、SiO2濃度:1.03重量%、Al2O3濃度:0.37重量%,Na2O含有量:0.01重量%,Ag2O濃度:0.07重量%)40gを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、解凍後の水分散液は、無機酸化物微粒子が凝集体を形成し、沈殿した。
【0049】
[比較例4]
チタニウムとケイ素と亜鉛を含む無機酸化物微粒子の水分散液(製品名:ATOMY BALL-(20NTZ)20、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:20nm、比表面積:100m2/g、TiO2濃度:18.0重量%、SiO2濃度:1.6重量%、ZnO濃度:0.4重量%、Na2O濃度;0.04重量%)40gを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、解凍後の水分散液は、無機酸化物微粒子が凝集体を形成し、沈殿した。
【0050】
[比較例5]
シリカ微粒子を含むシリカゾル(製品名:カタロイドSI-50、日揮触媒化成(株)、平均粒子径:27.3nm、比表面積:100m2/g、SiO2濃度:48.3重量%、Na2O含有量:0.49重量%、分散媒;水)40gを−2℃で凍結させた後、常温で解凍させたところ、解凍後の水分散液は、シリカ微粒子が凝集体を形成し、沈殿した。
【0051】
実施例および比較例で調製した無機酸化物微粒子の水分散液の性状、および該水分散液の凍結、解凍後の性状を表1に示す。
表1より、無機酸化物微粒子の単位表面積当りのアルコール含有量が所定量範囲内にある水分散液、すなわち、実施例で調製した水分散液は、凍結および解凍を経た後でも透明で、無機酸化物微粒子の平均粒子径は凍結前と同じか、ほとんど変わらず、高い再分散性を発現することが示された。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径1〜500nmの無機酸化物微粒子と、アルコールとを含む水分散液であって、該アルコールの含有量が該無機酸化物微粒子の単位表面積あたりに1×10-8〜20mol/m2の範囲にあり、該水分散液に含まれる該無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜60重量%の範囲にあることを特徴とする無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項2】
前記アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項3】
前記水分散液に含まれるアルコール濃度が0.5〜8重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項4】
前記水分散液に含まれるアルカリ金属含有量がM2O換算基準(ただしMはアルカリ金属元素とする)の固形分濃度で0.45重量%未満の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項5】
前記無機酸化物微粒子がケイ素とアルミニウムとを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項6】
前記無機酸化物微粒子がシリカ微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項7】
前記無機酸化物微粒子の平均粒子径が100〜200nmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の無機酸化物微粒子の水分散液。
【請求項8】
前記水分散液に含まれる前記無機酸化物微粒子の固形分濃度が0.001〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の無機酸化物微粒子の水分散液。

【公開番号】特開2012−121732(P2012−121732A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271014(P2010−271014)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】