説明

無機顆粒廃触媒から貴金属を抽出する方法及び該装置

【課題】浸出を利用した顆粒状廃触媒から貴金属を抽出するための効果的方法を開発、及びその方法を実現するにあたり、使用が容易な装置を提供すること。
【解決手段】固定された顆粒触媒層及び活性炭顆粒からなる3次元充填陰極が備えられた垂直なシリンダ型電解槽を通じて電解質を循環させるにあたり、貴金属の浸出と沈殿は同一段階で行われる。電気化学的浸出過程及び電気化学的収着過程が一緒に行われることから、電気エネルギーの浪費を減らし、設備利用過程が容易になる。無機性顆粒廃触媒から貴金属を抽出する装置は垂直型電解槽、導管、電解質循環ポンプ、循環する電解質に要求される酸性を自動維持する装置、電解質から活性炭粒子を濾し出すフィルター、コントロールバルブ、ストップバルブを含む。前記電解槽は循環する電解質の加熱のための熱交換器、非溶解性陽極及び活性炭顆粒からなる3次元充填陰極が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属の廃棄物減少のための電気化学的湿式冶金学に関するものであり、特に無機(inorganic)顆粒廃触媒から貴金属を抽出する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機性顆粒廃触媒から貴金属を抽出する方法とは、電解槽で電気化学的に浸出し、陰極(cathode)で貴金属を沈殿させた後、従来の方法で陰極から貴金属を分離することを意味する。
【0003】
廃触媒から貴金属を溶解及び抽出する従来方法(特許文献1)、「Process for dissolution and recovery of noble metals」は、水平型電解槽の陽極(anode)チェンバーで浸出が行われた。水平型電解槽は電解槽を陽極と陰極の両チェンバーに分離するフッ素樹脂アニオン交換膜を含む。陽極チェンバーの底は拡散格子を含む。貴金属抽出における第1の段階は、顆粒状廃触媒固定層が陽極チェンバーに投入され、拡散格子を通して電解質が下から上へ循環する。電解質としては塩酸、硝酸、硫酸または酸化合物が用いられるが、5〜35%の濃度の塩酸を利用するのが望ましい。この際、陽極及び陰極の膜は、電解質の流れ方向と平行に電解槽の側面に沿って位置する。
【0004】
安定した大きさの多孔性陽極は貴金属の酸化物でコーティングされたチタニウムからなる。陰極はチタニウムからなる。電解槽の規模は、長さ85mm、幅115‐250mm、深さ200‐1000mmである。貴金属を浸出した後、第2の段階では、電解質を6〜50倍に希釈させ貴金属を沈殿させることによって、陽イオン膜を含む第2電解槽の陰極空間に流動状態で存在する活性炭顆粒で貴金属を分離させる。
【0005】
このような抽出方法の短所は、陽極と陰極間の間隔が増加しながら貴金属の抽出率が低くなるということである。これは塩酸酸化物が電解質の流れにより陽極膜と平行に上向き移動し、陽極膜の表面から陰極側に遠ざかるにつれ、その濃度が低くなるためである。したがって、貴金属の浸出は主に廃触媒に近い陽極層で行われる。
【0006】
電解質は電解槽を介して1回ポンプされるため、多量の溶液流出が発生し、これは追加装置を要求することになるので、経済的及び利用的損失が増加する。
【0007】
前記特許文献1による抽出法を実現するために利用する装置は、エネルギー集約的で貴金属抽出率が低く、高濃度の5〜35%の酸(主に塩酸)の利用が要求される。
【0008】
無機性廃触媒、スラッジ、精鉱及びその他金属から貴金属を抽出する従来技術(特許文献2)、「貴金属抽出法及びその実行のための装置」は、浸出された物質の粒子の固定フィルタ層または流動層を通じて電解質を循環させるにおいて、貴金属の浸出と充填陰極の沈殿が同じ段階で同時に行われる特徴を持つ。
【0009】
貴金属の抽出は浸出ブロック及び充填陰極が含まれた電解槽を通じて同時に行われる。作用に必要な量の塩酸及びアルカリを含んだ濃度10〜25%の塩化ナトリウム水溶液が電解質に利用される。この時、貴金属は充填陰極に蓄積される。浸出ブロックは1つまたは数個のリアクターを含み、前記リアクターには浸出物質を投入及び排出させる任意の従来装置が備えられている。浸出ブロックは、pH測定チェンバー、自動排出制御装置を備えた電解質容器を具備している。
【0010】
貴金属が蓄積された後、充填陰極はその後、再生工程のため電解槽から分離される。金属抽出のために充填陰極物質を消却する。電解槽から陰極を分離しなくとも金属抽出が可能である。この場合、貴金属は逆極性の電流を通過させることによって、溶解し、高濃度の塩化溶液を得ることになる。
【0011】
特許文献2による方法の短所は浸出方法が複雑という点と、機能技術的ブロックが別に離れているため装置の設計が複雑という点である。
【0012】
無機性廃触媒、精鉱及びその他金属から貴金属を抽出する従来技術(特許文献3)、「貴金属抽出法」は、本願発明に技術的に最も近いもので、電解質から浸出し、充填材を通過し閉鎖回路を通じて電解質を循環させ、電解槽で金属を沈殿させた後、従来方法を利用し、貴金属を陰極から分離させるが、この時、充填形態に処理された金属は電解槽の電極間の空間に位置することを特徴とする。事前に電極の極性反転を引き起こすことによって、貴金属の電気化学的浸出を活性化させることができるが、これは電極を大容量多極性電極に変化させるもので物質の量に関係なく、金属の陽極溶解を可能にする。一方、始めから陰極にブラウンクラウド(brown cloud)の形成を統制することから、充填材の浸出過程で形成される貴金属水和陰イオン塩化化合物が陰極に消滅することを防止し、このような条件に適合する速度で電解質が陽極から陰極に充填材を通じて循環するようにする。この時、電解質としては塩酸0.3〜4.0%を含有した酸性水を利用する。
【0013】
本発明者は、前記貴金属抽出法の効率性の研究及びその短所を究明するために特許文献3の説明に一致する電解槽(図1)を製作した。この電解槽は前記特許に示したように、水平な構造で、電解槽の有効断面は1600?(40×40cm)、充填材の長さは100cmである。電極間の空間の充填材は誘電体格子で固定されている。実験のパラメーターは特許文献3に提示した例の説明に一致するようにした。
【0014】
前記プロトタイプ(prototype)によって我々が実施した研究によると、極性反転が浸出の速度及び深さに及ぶ影響は微々たるものであった。そして、極性反転が起こる時間だけ浸出時間が増加した。また、貴金属がチタニウム陰極の表面でコンパクトフォイル(compact foil)で形成されず、上昇水素気泡により容易に陰極の表面から分離する黒金(niello)の形態で沈殿した。陰極膜の表面から分離する水素気泡は電解質の表面に上昇し、対流を形成してその結果、流動状態の貴金属黒金が電解層陰極の空間に位置した。このような条件は、貴金属黒金が格子孔を通じて廃触媒の充填材として戻ってくるようにする。それだけでなく、貴金属黒金は循環する電解質の流れにより電解槽の陽極空間に移動する。前記した実験を実施した後、充填材のサンプルを分析した結果、充填材の下部から貴金属の浸出が完全に行われていなかったことがわかる。これは陽極から陰極への電解質の循環速度が電解槽の断面によって一定でなかったためである。電解槽の下部は上部より電解質の循環速度が遅い。これは明らかに、電解槽の下部の廃触媒粒子が上部の粒子の圧力下に置かれているためであると説明することができる。これにより、電解槽下部の粒子間の電解質循環がなされる自由空間の規模が減少する。このような条件は産業的規模に拡大することにおいて、電解槽の深さを増すことに制限することになる。それだけでなく、電解槽から電解質が蒸発する面積が広い。前記過程が70℃でなされる場合、電解質及び塩酸陽極酸化物が活発に蒸発するため、環境に及ぶ否定的な影響を減少させるための追加的な処置が要求される。また、電気分解過程で触媒を部分的に溶解させるにあたり、塩酸を消費するため、溶液の酸度が減少する。溶液の酸度がpH>1の場合、浸出過程の速度は著しく減ることが糾明された。
【0015】
酸度を均一に合わせるため、定期的に電解槽から電解質を排出させ、要求される濃度まで塩酸を補充しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許登録第4,775,452(1998)
【特許文献2】ロシア特許第21199646(1997)
【特許文献3】ロシア登録第21989477(2000.9.12.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、浸出を利用した顆粒状廃触媒から貴金属を抽出するための効果的な方法を開発、及びそのような方法を実現するにあたり、使用が容易な装置を製作することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題は本発明の無機性顆粒廃触媒及びその他物質から貴金属を抽出する方法により解決されたが、これは垂直な電解槽の電極間の空間で浸出するものを含む。浸出は充填触媒を通じて閉鎖回路に沿って陽極から陰極に上向き循環する電解質により行われる。貴金属の沈殿は垂直な電解槽の上部の活性炭顆粒からなっている3次元充填陰極でなされる。プロトタイプとは違い、酸度pH=1である塩酸溶液を電解質に使用するが、これは濃度0.1〜5%である塩化アルミニウムAlCl3を含む。貴金属の浸出及び3次元充填陰極での沈殿は同じ段階で同時になされる。貴金属は活性炭を消却するか、沈殿された金属を陽極溶解させることによって陰極から分離される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電解槽は廃触媒を粉末化させずに顆粒形態で電気分解が可能である。また、本発明は金属化合物担持顆粒触媒から白金族金属の抽出率を大きく改善して、ほぼ全量を抽出することができ、電気使用量と抽出時間を短縮し、環境親和性を高める。リサイクルしなければならない液体廃棄物の量を最小化し、多量の廃触媒を投入して浸出することが可能なので、作業効率が改善される。また、電解槽の信頼度とその電気安全性を高めることができ、電解槽のメインテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術の電解槽の断面図である。
【図2】本発明の貴金属抽出装置の断面図である。
【図3】本発明の垂直電解槽の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、無機性顆粒廃触媒及びその他物質から貴金属を抽出するための装置(図2)は、不溶性陽極3及び3次元充填陰極4を含む垂直な流れの電解槽1を持つ。垂直な流れの電解槽の充電は充電ブロック18から行われる。陽極及び陰極の空間は導管によりつながっている。流量計7により制御される、決まった速度で作動するポンプ6により電解質の循環が行われる。3次元充填陰極から活性炭粉末が陽極の空間への浸透を防止するために、循環線にフィルタープレス19を設ける。循環線の溶液の酸度はpH測定器21により測定され、塩酸自動排出調節器24により一定の水準で維持される。前記装置は、またストップバルブ8、9、10、11、12、13を含む。
【0022】
貴金属抽出装置は次のように作動する。
【0023】
垂直な流れの電解槽は事前に有機混合物を除去した顆粒廃触媒で満たされる。触媒に0.05〜5%含量で含まれた貴金属は再生(金属)状態でなければならない。コーク(バルブ)10及び13が開放され、コーク8、11、12が閉鎖され、自動排出調節器24が止まった状態で投入口16を通じて酸度pH=1である塩酸溶液及び濃度0.1〜5%である塩化アルミニウムAlClの電解質を電解槽に満たす。電解質は電解質高速ポンプライン15に沿って満たされる。装置に電解質を満たした後、管からなっている加熱器25が決まった温度に加熱する。電解質が決まった温度に到達すると、バルブ10を閉鎖し、12を開放する。この時、電解質は流量計7を通じて決まった速度で循環する。充電ブロック18を利用して電解槽の電流を設定する。垂直な電解槽の陽極空間の前側にpH=1の電解質酸度維持のために必要な量の塩酸が本体から排出されるが、これは自動排出調節器24によりなされる。このような過程を行うにあたり、決まった条件は従来の自動制御システムを利用して維持することができる。3次元充填炭素陰極4に充分な量の抽出貴金属が蓄積された後、垂直な電解槽から陰極を抽出して消却する。沈殿貴金属を陽極溶解する時には、プロセスを中断し、電解槽から電解質を抜き出し、充填陰極を抽出して温水で洗浄する。洗浄後、チタニウム電極を含んだチューブに陰極を入れ、塩酸または硝酸でチューブを満たした後、貴金属が担持された3次元炭素電極に陽極性を供給する。このように極性が変わる過程で活性炭顆粒に蓄積されている金属は漸次溶解される。
【0024】
図3は本発明の電解槽の断面を示している。
【0025】
垂直な流れの電解槽は再生触媒顆粒からなる3次元多極性電極の垂直円筒型の本体101を含み、電解槽の流れを分配する分配器103が追加で具備され、前記分配器には溶液の温度を予め決められた温度に維持するための電気ヒーター104を備える。この時、下から上に向かう電解質の流れの循環方向は電解槽空間で電場の向きと同じ軸を持つ。
【0026】
始めから、そして3次元多極性電極チェンバー108から貴金属を浸出することにしたがい、水平に位置した陽極106で形成される塩素は電解質の上向きの流れにより誘電体の金属酸化物の性質の顆粒状充填廃触媒全量に分配される。電解槽の円筒型本体の構造の下部側面に直角の排出口110を位置させることにより金属の浸出過程以後、顆粒廃触媒を簡単に迅速に排出させることができる。
【0027】
多極性電極チェンバー陽極106の上部保護/支持用誘電体格子109と排出口110の下端が同じ面を占有するように設置することで、労働力を最小化し、顆粒触媒を完全に排出することができる。
【0028】
機械的堅固性を持ち、電解質流れ分配器103と円筒型本体101の間に位置する耐腐食性誘電体支持格子105は陽極と陰極間の顆粒状充填触媒を阻止させるので、電解槽(電極間の空間)の多極性電極の顆粒触媒が(垂直円筒形本体から)円錐形の電解質流れ分配器103(陽極前面空間)への浸透(流出)を防止する。
【0029】
水平に配置され、チタニウム格子からなる陽極6は、陽極で形成される酸化剤の総フラックス密度(total flux density)を多極性電極全体に均等に分配する。二酸化イリジウムIrOからなるチタニウム陽極の保護膜は酸素含有の酸陰イオンによる陽極酸化(二酸化チタニウムTiOの誘電体層形成)または無酸素の酸陰イオンの酸化時、電気化学的腐食を防止する。
【0030】
保護/支持用誘電体格子109は陽極のチタニウム格子と再生顆粒触媒(3次元多極性電極)間に設けられたものであり、耐腐食性、耐熱性及び機械的堅固性を有する物質(テフロン(登録商標))からなり、顆粒触媒の研磨材により、二酸化イリジウムIrOからなる陽極のコーティングが機械的に破壊されることを防止する。
【0031】
電解槽の陰極空間と多極性3次元電極チェンバーを分離させる隔膜(ポリプロピレン組織)114は陰極の表面に酸化アルミニウムのような物質が沈殿することを最小化して電解槽で溶解した金属が電解質の流れにより更に完全に除去されるようにする。
【0032】
電解槽の陰極チェンバーと再生顆粒触媒からなる3次元多極性電極との間に横たわって位置する一対の誘電体支持台113は、陽極と陰極間の間隔を固定させ、3次元多極性電極で電場を均等に分配するようにし、電解槽の円筒型空間の上部に陰極チェンバーを維持させる。
【0033】
多極性電極チェンバーを貫通する金属棒107に沿って水平に位置した陽極106に電流を投入することにより、電解槽の密閉性を保障し、電気安定性及び使用の利便性を向上させる。
【0034】
流れ分配器103の円錐の中心に投入口117を設けることで、浸出された電解質が直接熱源として供給されるようにする。電解質の流れの上向き熱対流は流れの速度が速くない状態で陽極に近い空間に熱クッションを形成するが、これは冷えた電解質が顆粒再生触媒からなる3次元多極性電極の円筒形チェンバー108への浸透を防止する。
【0035】
流れの電解槽の上部シリンダ陰極11の部分に設けたオーバーフロー排出口118は貴金属塩溶液を排出させ、電解槽内部の最大電解質量を定めて、電解質が溢れることを防止する。
【0036】
電解槽の円筒形及び円錐形部分の断熱材119は熱損失を最小化し、電気化学的浸出過程を実施するにおいて、エネルギー消費を減少させる。
【0037】
酸性電解質の蒸気の温度より、低い温度の電解槽の蓋120はその内部面で蒸気が凝結するようにする。これにより、電解質及び熱損失を減少させ、電気化学的浸出過程の環境的安定性を高める。
【0038】
電解槽の蓋120に位置する排出口121は陰極に形成される水素を除去し、電解質が満たされていない電解槽の本体に水素が蓄積することを防止して電解槽の働きの安定性を向上させる。
【0039】
電解槽は、支持台102に位置し、円錐型の流れ分配器103(陽極の前空間)と連結された円筒形本体101から構成される。円錐型の流れ分配器103には電気ヒーター104が設置される。円筒型の本体は機械的堅固性を持つ耐腐食性誘電体支持格子105により、円錐型の流れ分配器と区分される。支持格子105には二酸化イリジウムIrOで保護コーティングされたチタニウム格子からなる陽極106が位置する。多極性電極チェンバー108を貫通する金属棒107にしたがって陽極106に電流が供給される。陽極106の上部には耐腐食性、耐熱性及び機械的堅固性を有する物質(例としてテフロン(登録商標))からできた誘電体保護/支持用格子109がある。電解槽の多極性電極円筒型チェンバー構造の下部に顆粒触媒の排出のための排出口110が設けられ、前記排出口の下端は陽極の上部誘電体保護/支持用格子109と同じ面に置かれる。流れ電解槽の上部シリンダ部分に位置する陰極空間ブロック111は電解槽の陰極チェンバーと再生顆粒触媒からなる3次元多極性電極間に横に置かれた一対の誘電体支持台112の上に設けられる。陰極本体は円筒型の誘電体物質からなる。円筒の底は多孔性底113からなり、そこに多孔性隔膜11が位置する。隔膜の上にチタニウム陰極115が設けられ、金属棒116を通じて電流供給がなされる。電解槽は浸出電解質の投入のための投入口117、貴金属塩溶液の排出口118及び排出ガスの排出口121を含む薄壁の誘電体の蓋120を具備する。
【0040】
<実施例1> 垂直電解槽の作動実施例
貴金属を含有した無機(酸化金属)誘電体顆粒状廃触媒(例として、0.02〜0.03%のパラジウム‐アルミナ触媒)を浸出するために、電解槽の円筒部分101の上部を通じて投入する。投入が始まる前に陰極空間111は電解槽から解体される。浸出電解質(例として、3%のHCl水溶液)は下部投入口117を通して円錐型の流れ分配器103に投入されるが、この時、前記分配器内部は電気ヒーター104を利用して決まった温度に加熱される。加熱された電解質層流は誘電体支持格子セル105を通過し、水平陽極格子106から酸化し、多孔性保護‐支持用格子109を通じて顆粒再生触媒からなる3次元多極性電極に移動する。貴金属は酸化した電解質溶液が顆粒触媒層を通過する過程で塩の形態で顆粒から電解質溶液に浸出する。このような過程は3次元多極性電極の作用面積が大きいため、電流密度が低くなることにより過電圧がかなり低い時に起こる。貴金属塩溶液が顆粒廃触媒層から排出された後、オーバーフロー排出口118を通じて流れ電解槽本体から排出される。陰極空間は最初電解槽を電解質で満たす時に多孔性隔膜を通じて電解質で満たす。隔膜は貴金属イオンが陰極空間に移動することを制御し、これにより陰極に沈殿する量を減少させる。蒸発する電解質は電解槽の薄膜の蓋120の冷たい壁に凝結し、陰極で分離された水素は電解槽の円筒型部分の電解質で満たされていない空間から排出口121を通して除去される。浸出過程が終了後、電解質は下部排出口118を通じて排出され、顆粒触媒は排出口110を通じて排出される。
【0041】
実施例を具現し、検査した結果、電気化学的方式で浸出された後、顆粒触媒に残っている白金族金属の電量は電解槽の下側の場合、1ppm以下、上側の場合、1〜10ppm未満であることが確認された。
【産業性の利用可能性】
【0042】
本発明の電解槽は廃触媒を粉末化させずに顆粒の形態で電気分解が可能である。本発明は金属化学物担持顆粒触媒から白金族金属の抽出率を大きく改善し、ほぼ全量を抽出することができ、電気使用量と抽出時間を短縮し、環境親和性を高める。リサイクルしなければならない液体廃棄物の量を最小化し、多量の廃触媒を投入して浸出が可能であるため、作業効率が改善される。また、電解槽の信頼度とその電気安全性を高めることができ、電解槽のメンテナンスが容易となる。
【符号の説明】
【0043】
1 垂直電解槽
2 顆粒状廃触媒
3 陽極(格子TiO+IrO
4 3次元(3‐D)充填炭素陰極
5 電池で電解液の最高レベル
6 膜ポンプ
7 流量計
8、9、10、11、12、13 ストップバルブ
14 電解質循環ライン
15 電解質高速ポンプライン
16 投入口
17 溶液除去のためのパイプフィルター
18 充填ブロック
19 フィルタープレス
20 触媒排出口
21 pH‐meter
22 電解質容器(35%HCl)
23 電解質排出パイプ
24 自動排出調節器
25 パイプヒーター
101 円筒型本体
102 支持台
103 円錐形の電解質流れ分配器
104 電気ヒーター
105 耐腐食性誘電体支持格子
106 陽極(anode)
107 陽極電流導入金属棒
108 多極性電極
109 保護/支持用誘電体格子
110 顆粒触媒の排出口
111 陰極空間ブロック
112 支持部材
113 陰極空間支持台
114 多孔性横膜
115 陰極(cathode)
116 陰極電流導入金属棒
117 電解質の投入口
118 電解質のオーバーフロー(overflow)排出口
119 断熱材
120 薄膜状の誘電体の蓋
121 分離ガスの排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族金属を含有している顆粒触媒から白金族金属を電気化学方式で浸出するための電解槽において、
電解質の投入口がある電解質の流れ分配器及びその上部に円筒型の本体が備えられ、前記円筒型の本体は水平に配置された陽極、顆粒触媒で充填された多極性電極チェンバー、陰極空間ブロックが下部から順番に積層し、前記円筒型の本体の側面には顆粒触媒の排出口と電解質オーバーフロー排出口が備えられ、電解質の流れが上向きになることを特徴とする垂直な流れの電解槽。
【請求項2】
前記電解質の流れ分配器は熱源を少なくとも一つ以上備えることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項3】
前記顆粒触媒の排出口は前記多極性電極チェンバーの下部の側面に備えられることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項4】
前記電解質のオーバーフロー排出口は前記多極性電極チェンバーより上部の円筒型の本体の側面に備えられることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項5】
前記陽極の一面に耐腐食性誘電体格子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項6】
前記陽極の一面に保護支持用誘電体格子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項7】
前記陰極空間ブロックは水平に配置された陰極を含むことを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項8】
前記陰極の下部に、多孔性横膜または微細孔がある陰極空間支持台のうち、少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項7に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項9】
前記顆粒触媒で充填された多極性電極チェンバーの上部に支持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項10】
前記円筒型の本体の上部には薄膜の誘電体の蓋をさらに付加することを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項11】
前記薄膜状の誘電体の蓋に分離ガス排出口をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項12】
前記陽極はチタニウム格子からなることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項13】
前記陽極は二酸化イリジウム(IrO)によりコーティングされることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項14】
前記陽極への電流投入が前記多極性電極チェンバーを貫通する金属棒を通じて行われることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。
【請求項15】
前記電解質の流れ分配器及び円筒形の本体の外側表面には断熱材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の垂直な流れの電解槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−522139(P2012−522139A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515964(P2012−515964)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003174
【国際公開番号】WO2011/145760
【国際公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(510267926)
【Fターム(参考)】