説明

無溶剤型接着剤用樹脂組成物、及び接着剤

【課題】 初期凝集力が大きく、フィルムの一部に浮きが発生しにくい特徴を有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤を提供することにある。
【解決手段】 分子内に水酸基を2個以上有し、ポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオール(A)と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(C)とを含有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物であって、
無溶剤型接着剤用樹脂組成物の酸価が20mgKOH/g以上であることを特徴とする無溶剤型接着剤用樹脂組成物により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期凝集力が大きく、フィルムの一部に浮き(いわゆるトンネリング)が発生しにくい特徴を有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐レトルト性、耐ボイル性、耐熱性といった機能ばかりでなく、内容物を確認できるよう透明性に優れるなど多岐に渡る機能が要求されている。一方、労働環境改善、消防法変化、大気へのVOC放出規制等のニーズから接着剤の脱溶剤化要望が強く、現主流の溶剤型ドライラミネート用接着剤から無溶剤型接着剤への移行が進みつつある。しかしながら、無溶剤型接着剤は作業性の観点から、樹脂の分子量を上げることが困難で、結果低分子量成分から構成される為、初期凝集力が小さく、主に以下の3点の課題が未解決である。
【0003】
1)ラミネートフィルムのフィルム同士がずれやすく、フィルムの一部に浮き(いわゆるトンネリング現象)が発生しやすく、仕上がり外観の優れたラミネートフィルムが得られにくい。これは、ラミネート時は2種のフィルムに何れもテンションがかかっている状態のものが、ラミネート終了後、テンションを開放した際、フィルムの収縮率の差により、初期凝集力の小さい接着剤を使用したラミネートフィルムにはトンネリングと呼ばれる現象が発生するためである。
【0004】
2)ラミネート後のラミネート物巻物の巻物がテレスコープ状に崩れてしまう。これは、ラミネートフィルムの巻き取り時の左右の巻き取り圧の差が巻きの横方向に対する応力差に変換され、その際初期凝集力の弱い接着剤を使用したラミネートフィルムはその応力差に耐えられず、ラミネートフィルムの巻物がテレスコープ状に崩れてしまうためである。
3)インラインで3層以上の複層ラミネートフィルムが製造できない。現在は一度ラミネート、セミエージング後再度ラミネートし、3層以上の複層ラミネートフィルムを製造しており、作業は煩雑となり製造工程上の問題となっている。
【0005】
本発明の接着剤樹脂組成物の構成に近いものとして、例えば、特許文献1には、ポリオール成分(A)およびポリイソシアネート成分(B)からなるドライラミネート用接着剤において、(A)がカルボキシ基含有有機ポリマーポリオール(A1)からなり、そのカルボキシ基の少なくとも一部が塩基で中和されてなることを特徴とする二液型ドライラミネート用接着剤組成物が記載されている。有機ポリマーポリオール(A1)の酸価が1〜20、水酸基価が10〜80であり、そのカルボキシ基の3〜80当量%が塩基で中和されていることが特徴である。本引用文献の接着剤組成物は、硬化速度が速く、配合液の安定性に優れることは記載されているが、初期凝集力が大きいこと、トンネリング現象を抑制すること等については、記載も示唆もされていない。
【0006】
特許文献2には、ポリオール成分および必要に応じてモノオール成分とポリイソシアネート成分とを、水酸基/イソシアネート基の当量比率が1.0/1.1〜1.0/10.0の割合で含有させてなるドライラミネート用接着剤組成物において、前記ポリオール成分および/またはモノオール成分の一部として、数平均分子量200〜5000、酸価20〜350、水酸基価20〜350のヒドロキシカルボン酸を、当該接着剤組成物の固形分の酸価に占める該ヒドロキシカルボン酸に由来する酸価が1〜20となる量で含有することを特徴とするドライラミネート用接着剤組成物について記載されている。当該組成物は耐性を付与するドライラミネート用背着剤として利用が可能であることは記載されているが、初期凝集力が大きいこと、トンネリング現象を抑制すること等については、記載も示唆もされていない。
【0007】
特許文献3には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる1種以上のポリオールを有するポリオール成分(1)と、3官能ポリイソシアネート化合物を必須とする多官能ポリイソシアネート化合物を有するポリイソシアネート成分(2)とからなり、かつ分岐点濃度が0.05〜1.0ミリ当量/gであり、ポリオール成分(1)の水酸基とポリイソシアネート成分(2)のイソシアネート基との比率が、水酸基:イソシアネート基=1.0:1.0〜1.0:3.0であることを特徴とする無溶剤型ラミネート用接着剤組成物が記載されている。当該接着剤組成物は、洗剤、薬品等の内容物耐性に優れた積層フィルムを作製することを可能とする無溶剤型ラミネート用接着剤組成物としての利用が可能であることが記載されているが、初期凝集力が大きいこと、トンネリング現象を抑制すること等については、記載も示唆もされていない。
【0008】
以上のように、本発明で提供を目的とする初期凝集力が大きく、フィルムの一部にトンネリングが発生しにくい特徴を有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物は、これまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−50036号公報
【特許文献2】特開平8−183943号公報
【特許文献3】特開2003−96428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、初期凝集力が大きく、フィルムの一部にトンネリングが発生しにくい特徴を有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行い、分子内に水酸基を2個以上有し、ポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオール(A)と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(C)とを含有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物であって、
該無溶剤型接着剤用樹脂組成物の酸価が20mgKOH/g以上であることを特徴とする無溶剤型接着剤用樹脂組成物により、上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、初期凝集力が大きく、フィルムの一部にトンネリングが発生しにくい特徴を有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例に記載の引っ張り強度試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、
1.分子内に水酸基を2個以上有し、ポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオール(A)と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(C)とを含有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物であって、
無溶剤型接着剤用樹脂組成物の酸価が20mgKOH/g以上であることを特徴とする無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
2.分子内に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオール(B)を更に含有する1.に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
3.ポリエステルポリオール(A)が、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有する1.又は2.に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
4.ポリエステルポリオール(A)、及びポリエステルポリオール(B)が、
イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オルトフタル酸及びその酸無水物、マレイン酸及びその酸無水物から成る群から選ばれるカルボン酸又はカルボン酸無水物の単一成分或いは混合成分と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートからなる群から選ばれる多価アルコールの単一成分或いは混合成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールである1.〜3.の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
5.ポリイソシアネート(C)が、
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びメタキシリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる単量体(D)、
該単量体(D)から誘導されたイソシアネート、ビューレット、及びアロファネートからなる群から選ばれる多官能ポリイソシアネート化合物(E)、又は
前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリエステルポリオール(B)、トリメチロールプロパン、及びグリセリンからなる群から選ばれる2官能以上のポリオール化合物と、前記単量体(D)或いは前記多官能ポリイソシアネート化合物(E)との反応により得られるポリイソシアネートである1.〜4.の何れかに記載の無溶剤型接着剤用組成物、
6.ポリイソシアネート(C)が、芳香族環を有するものである1.〜4.の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
7.芳香族環を有するポリイソシアネートが、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物である6.に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
8.1.〜7.の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物を含有する酸素バリア性無溶剤型接着剤用樹脂組成物、
9.1.〜8.の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物を硬化させてなる接着剤、
10.フィルムラミネート用接着剤として使用する9.に記載の接着剤、
から構成されるものである。
【0016】
本発明で使用するポリエステルポリオール(A)は、分子内に水酸基を2個以上有し、ポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオールであり、多価カルボン酸及び多価アルコールより構成される。
【0017】
前記ポリエステルポリオール(A)は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分との反応生成物から構成されるポリエステルポリオール(I)とカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオールである。また、当該ポリエステルポリオール(A)は、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有するものであってもよい。
【0018】
ポリエステルポリオール(A)及びポリエステルポリオール(I)を構成する多価カルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オルトフタル酸及びその酸無水物、マレイン酸及びその酸無水物から成る群から選ばれるカルボン酸又はカルボン酸無水物等の単一成分或いは混合成分を挙げることができ、
多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートからなる群から選ばれる多価アルコールの単一成分或いは混合成分等を挙げることができる。
【0019】
また、本発明のポリエステルポリオール(B)は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分との反応生成物から得られるポリエステルポリオールから構成される。
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分は、前記のものと同様である。当該ポリエステルポリオール(B)は、本発明の無溶剤型接着剤用樹脂組成物に含まれていても含まれていなくてもよいが、ポリエステルポリオール(A)の水酸基の数が2個の場合、ポリエステルポリオール(B)を含有させることにより、後述の硬化剤であるポリイソシアネートとの反応により、より強靭な硬化塗膜を形成し、ラミネート強度やシール強度等の接着剤としての物性を満足しやすい。
【0020】
本発明では、ポリエステルポリオール(A)及びポリエステルポリオール(B)を構成する多価カルボン酸又はその無水物の主成分がオルトフタル酸及びその無水物である場合には、無溶剤型接着剤用樹脂組成物が酸素バリア性を有することに特徴がある。
【0021】
ここで、オルトフタル酸及びその無水物は、骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これにより酸素バリア性に優れると推定される。また、この非対称構造に起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与され、接着力と酸素バリア性に優れると推定される。さらにドライラミネート接着剤として用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで取扱い性にも優れる。
【0022】
(多価カルボン酸 その他の成分)
本発明のポリエステルポリオール(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独であるいは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、コハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。また、三価以上の多価カルボン酸として、トリメリット酸およびその酸無水物、ピロメリット酸及びその酸無水物等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価カルボン酸としては三価カルボン酸が好ましい。
【0023】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。酸素バリア性を有する無溶剤型接着剤の場合、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを使用することが最も好ましい。
【0024】
(多価アルコール その他の成分)
本発明では前述の多価アルコール成分を使用することが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族ジオールとしては1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。三価以上の多価アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールが好ましい。
【0025】
次に、本発明のポリエステルポリオール(I)とカルボン酸無水物又は多価カルボン酸との反応は、以下の様にして行う。
【0026】
即ち、前記ポリエステルポリオール(I)に、多価カルボン酸又はその酸無水物をポリエステルポリオール(I)の水酸基と反応させることにより得ることができる。後述の硬化剤との反応により接着剤としての塗膜物性を付与する必要があるため、ポリエステルポリオールは分子末端に水酸基を有する必要がある。その為には、水酸基がカルボキシ基よりも過剰であればよい。ここで用いられるカルボン酸無水物又は多価カルボン酸に制限はないが、多価カルボン酸とポリエステルポリオール(I)との反応時のゲル化を考慮すると、二価あるいは三価のカルボン酸無水物を使用することが好ましい。二価のカルボン酸無水物としては無水コハク酸、無水マレイン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物等が使用でき、三価のカルボン酸無水物としてはトリメリット酸無水物等が使用できる。
【0027】
前記ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は450〜3000であると接着能と酸素バリア能とのバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。また硬化剤としては、後述のポリイソシアネートが最も好ましく、適度な反応時間を付与でき、接着強度と酸素バリア能に特に優れる。分子量が450より小さい場合、架橋密度が高くなりすぎて塗膜の柔軟性が著しく損なわれ、ラミネート強度を付与しにくくなるといった不具合が起こり、逆に分子量が3000よりも高い場合、無溶剤型接着剤塗工可能な温度まで塗料を加温しても、粘度が高すぎて、塗工に必要な粘度が得られないといった不具合が発生する。また、数平均分子量は得られた水酸基価と設計上の水酸基の官能基数から計算により求めた。
【0028】
本発明で使用するポリエステルポリオール(A)は、ガラス転移温度が−50℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは−20℃〜60℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近でのポリエステルポリオールの柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。又、多価カルボン酸にオルトフタル酸、又はその無水物を含む酸素バリア性に優れた無溶剤型接着剤の場合、ガラス転移温度が−50℃よりも低い場合、常温付近でのポリエステルポリオールの分子運動が激しいことにより十分な酸素バリア性が出ないおそれがある。
【0029】
本発明の無溶剤型接着剤用樹脂組成物の酸価は20mgKOH/g以上であることに特徴を有し、酸価がこれ以下であると十分な初期凝集力が得られず、浮き(いわゆるトンネリング現象)を発生しやすくなる。酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて測定することができる。酸価の高い無溶剤型接着剤用樹脂組成物で初期凝主力が得られるのは、樹脂末端に残っているカルボン酸同士が2量体を形成し、擬似的に高分子化しているからと推定される。酸価20mgKOH/g以上でその効果が高い初期凝集力となって現れ、酸価20mgKOH/g以下ではその効果は初期凝集力としては現れない。
【0030】
(接着剤 硬化剤)
本発明で使用する硬化剤は、前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基と反応しうる硬化剤であれば特に限定はなく、ポリイソシアネートやエポキシ化合物等の公知の硬化剤を使用できる。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0031】
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、2価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体、ビュレット体、アロファネート体が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲においてイソシアネートモノマーを使用しても良い。
【0032】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0033】
また、本発明で用いるポリエステルポリオール(A)の末端にカルボン酸が存在することより、エポキシ化合物を硬化剤として用いることが出来る。エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0034】
エポキシ化合物を硬化剤として用いる場合には、硬化を促進する目的で汎用公知のエポキシ硬化促進剤を本発明の目的である酸素バリア性が損なわれない範囲で適宜添加してもよい。
【0035】
また、酸素バリア性付与を目的とした無溶剤型接着剤組成物の場合、硬化剤が芳香族環を有するポリイソシアネートであることが好ましく、特に、前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネートであると、ウレタン基の水素結合だけでなく芳香環同士のπ−πスタッキングによって酸素バリア性を向上させることが出来るという理由から好ましい。
【0036】
前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体があるが、3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネートのドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいという理由からアダクト体がより好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0037】
前記ポリエステルポリオール(A)と前記硬化剤とは、ポリエステルポリオール(A)と硬化剤との割合がポリエステルポリオール(A)の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/0.5〜1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/1〜1/5である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方硬化剤成分が不足の場合には接着強度不足のおそれがある。
【0038】
前記硬化剤は、その種類に応じて選択された公知の硬化剤或いは促進剤を併用することもできる。例えば接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着剤を向上させる意味でも好ましい。
【0039】
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、酸素バリア性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。膨潤性無機層状化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイル等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。膨潤性無機層状化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0040】
また、接着剤層の耐酸性を向上させる方法として公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0041】
また、必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0042】
また、塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
【0043】
本発明のポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(C)との硬化塗膜のガラス転移温度が−30℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは−20℃〜60℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近でのポリエステルポリオールの柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方−30℃よりも低い場合、常温付近でのポリエステルポリオールの分子運動が激しいことにより十分な酸素バリア性が出ないおそれがあるほか、硬化塗膜の凝集力不足の為、十分な接着強度、シール強度等も得られない恐れがある。
【0044】
(接着剤の形態)
本発明の接着剤は無溶剤型であるが、溶剤型接着剤としても使用することができる。溶剤型の場合、溶剤はポリエステルポリオール及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。使用できる溶剤としては例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらのうち通常は酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。また、無溶剤で使用する場合は必ずしも有機溶剤に可溶である必要は無いと考えられるが、合成時の反応釜の洗浄やラミネート時の塗工機等の洗浄を考慮すると、有機溶剤に対する溶解性が必要である。
【0045】
本発明の接着剤は、基材フィルム等に塗工して使用することができる。塗工方法としては特に限定はなく公知の方法で行えばよい。無溶剤型接着剤の場合、室温での粘度が高くグラビアロール塗工が適さない場合が多く、その際は、加温しながらロールコーターで塗工する。ロールコーターを使用する場合は、本発明の接着剤の粘度が500〜2500mPa・s程度となるように室温〜120℃程度まで加熱した状態で、塗工することが好ましい。又、溶剤型接着剤として用いる場合、適当な溶剤に希釈し適性な粘度に調整した後、グラビアロール塗工方式等で塗布することが多い。
【0046】
本発明の接着剤は、酸素バリア性接着剤として、ポリマー、紙、金属などに対し、酸素バリア性を必要とする各種用途の接着剤として使用できる。以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
【0047】
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた積層フィルムは、酸素バリア性に優れるため、酸素バリア性積層フィルムとして使用できる。
【0048】
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0049】
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0050】
前記熱可塑性樹脂フィルムの一方に本発明の接着剤を塗工後、もう一方の熱可塑性樹脂フィルムを重ねてラミネーションにより貼り合わせることで、本発明の酸素バリア性積層フィルムが得られる。ラミネーション方法には、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知のラミネーションを用いることが可能である。
ドライラミネーション方法は、具体的には、基材フィルムの一方に本発明の接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。
またノンソルベントラミネーションは基材フィルムに予め室温〜120℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤を室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。ラミネート圧力は、10〜300kg/cm程度が好ましい。
【0051】
押出しラミネート法の場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明の接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0052】
また、本発明の積層フィルムは、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に接着強度が生じる。
【0053】
本発明では、バリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。その際、酸素バリア性を有する無溶剤型接着剤を用いると、更に高いバリア機能を有した積層フィルムを作製できる。
【0054】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、あるいは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、さらに、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、酸素及び水蒸気バリア性フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。
【0055】
本発明の接着剤は高い酸素バリア性を有することを特徴としていることから、該接着剤により形成されるラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。また、これら従来のガスバリア性材料とシーラント材料とを貼り合せる接着剤として併用することにより、得られるフィルムのガスバリア性を著しく向上させることもできる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」「%」は質量規準である。
【0057】
(製造例1)ポリエステルポリオール(A):Gly(oPAEG)2MAの製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1316.8部、エチレングリコール573.9部、グリセリン409.3部及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppmに相当する量を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価339.9mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。次いで温度を120℃まで下げ、これに無水マレイン酸421.8部を仕込み120℃を保持した。酸価が無水マレイン酸の仕込み量から計算した酸価の概ね半分になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約520、水酸基価216.6mgKOH/g、酸価96.2mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
ポリエステルポリオール(A)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:2個、カルボキシ基:1個
【0058】
(製造例2)ポリエステルポリオール(B):Gly(oPAEG)3の製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1223.3部、エチレングリコール255.3部、グリセリン253.2部及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppmに相当する量を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約650、水酸基価261.2mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
ポリエステルポリオール(B)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:3個、カルボキシ基:0個
【0059】
(製造例3)ポリエステルポリオール(A):EGoPA+oPA の製造方法
製造例1における無水フタル酸、エチレングリコール、グリセリンを無水フタル酸14
8.1部、エチレングリコール84.2部に変えた以外は製造例1と同様にし、水酸基価190mgKOH/gのポリエステルポリオールを得、温度を120℃まで下げ、これに無水フタル酸53.8部を仕込み120℃を保持した。酸価が無水フタル酸の仕込み量から計算した酸価の概ね半分になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約740、水酸基価76mgKOH/g、酸価76mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
ポリエステルポリオール(A)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:1個、カルボキシ基:1個
【0060】
(製造例4)ポリエステルポリオール(B):EGoPA の製造方法
製造例3における水酸基価190mgKOH/gのポリエステルポリオールをポリエステルポリオール(B):EGoPAとした。数平均分子量は約600であった。
ポリエステルポリオール(B)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:2個、カルボキシ基:0個
【0061】
(製造例5)ポリエステルポリオール(A):EGNPGiPASbA+oPAの製造方法
製造例1における無水フタル酸、エチレングリコール、グリセリンを、エチレングリコール40.7部、ネオペンチルグリコール68.3部、イソフタル酸124.6部、セバシン酸50.6部に変えた以外は製造例1と同様にし、水酸基価130mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。次いで温度を120℃まで下げ、これに無水フタル酸42.2部を仕込み120℃を保持した。酸価が無水フタル酸の仕込み量から計算した酸価の概ね半分になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約1000、水酸基価56.0mgKOH/g、酸価56.0mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
ポリエステルポリオール(A)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:1個、カルボキシ基:1個
【0062】
(製造例6)ポリエステルポリオール(B):EGNPGiPASbA の製造方法
製造例5における水酸基価130mgKOH/gのポリエステルポリオールをポリエステルポリオール(B):EGNPGiPASbAとした。
ポリエステルポリオール(B)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:2個、カルボキシ基0個
【0063】
(無溶剤型接着剤用硬化剤a)
住化バイエルウレタン製「デスモジュールN3200」(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)を硬化剤aとした。硬化剤aの不揮発分は99%以上、NCO%は約23%である。
【0064】
(無溶剤型接着剤用硬化剤b)
三井化学製「タケネートD−178N」(ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体)を硬化剤bとした。硬化剤bの不揮発分は99%以上、NCO%は約19%である。
【0065】
(無用剤型接着剤用硬化剤c)
三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート)を硬化剤cとした。硬化剤cの不揮発分は99%以上、NCO%は約45%である。
【0066】
(無溶剤型接着剤の製造方法)
前記製造例で得た非晶性ポリエステルポリオールを80℃に加熱し、硬化剤a〜cを表1〜、表3に示す様に配合し、本発明の無溶剤型接着剤を得た。配合例を表1〜表3に示す。
【0067】
(無溶剤型接着剤の塗工、及びフィルムラミネート方法)
接着剤を約80℃に加熱し、無溶剤用テストコーターポリタイプ社製ロールコーターを用いて、厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「E−5102」)のコロナ処理面に塗布量5.0g/mになるよう塗布後、塗布面を厚さ70μmのCPPフィルム(東レ(株)製「ZK93KM」)のコロナ処理面とラミネートし、PETフィルム/接着層/CPPフィルムの層構成を有する複合フィルムを作製した。次いで、この複合フィルムを40℃×3日間のエージンングを行い、接着剤の硬化を行って、本発明の酸素バリア性積層フィルムを得た。
【0068】
(評価方法)
(1)接着強度
エージングが終了した酸素バリア性積層フィルムを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、PETフィルムとCPPフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度を接着強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。
結果を表1〜表3に示す。
【0069】
(2)初期凝集力
記接着剤を、バーコーターを用いて塗布量5.0g/m(固形分)となるように厚さ50μmのPETフィルムA(東洋紡績(株)製「E−5100」)のコロナ処理面に塗布し、その後希釈溶剤を揮発させ乾燥した。接着剤が塗布されたPETフィルムAの接着剤面と、厚さ50μmのPETフィルムB(東洋紡績(株)製「E−5100」)のコロナ処理面とラミネートし、PETフィルムA/接着剤層/PETフィルムBの層構成を有する複合フィルムを作製した。硬化の為のエージングを行わずに、直ちに得られた複合フィルムを幅15mm、長さ25mmに切断し試験片を作製した。次いで、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、得られた試験片の長さ方向の一端はPETフィルムA、もう一端にはPETフィルムBを固定し、引っ張り試験を実施し、得られた強度を初期凝集力とした。単位はN/cmとした。評価値は測定最大強度とし、結果を表1〜表3に示す。試験の模式図を図1に示す。
【0070】
(3)ラミネート適性
ラミネート適性の評価として、ラミネート直後のフィルムの外観を下記の基準で評価した。結果を表1〜表3に示す。
○:均一に濡れていて良好な外観
△:均一に濡れているが、塗膜にトンネリングがわずかに有る。
×:塗膜にトンネリングが大量にある。
【0071】
(4)酸素透過率
エージングが終了した酸素バリア性積層フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21MHを用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃、90%RHの雰囲気下で測定した。結果を表1〜表3に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
この結果、実施例1〜12の様に、接着剤組成物中に占める酸価が20mgKOH/g以上の無溶剤型接着剤組成物は、初期凝集力が2.0N以上と比較例1〜6に示す接着剤組組成物よりも20倍以上高く、ラミネート適性に優れていた。
以上より、ポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させ、カルボキシ基を導入し、接着剤組成物の酸価を20mgKOH/g以上に調整することにより、高い初期凝集力を有し、ラミネート適性に優れた無溶剤型接着剤を設計することができた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の無溶剤型接着剤用樹脂組成物は、初期凝集力が大きく、フィルムの一部に浮きの少ないラミネート適性に優れた接着剤として利用が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1:PETフィルムA
2:接着剤
3:PETフィルムB
4:引っ張り試験方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオールの水酸基の一部にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基を有するポリエステルポリオール(A)と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(C)とを含有する無溶剤型接着剤用樹脂組成物であって、
無溶剤型接着剤用樹脂組成物の酸価が20mgKOH/g以上であることを特徴とする無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項2】
分子内に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオール(B)を更に含有する請求項1に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオール(A)が、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有する請求項1又は2に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステルポリオール(A)、及びポリエステルポリオール(B)が、
イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オルトフタル酸及びその酸無水物、マレイン酸及びその酸無水物から成る群から選ばれるカルボン酸又はカルボン酸無水物の単一成分或いは混合成分と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートからなる群から選ばれる多価アルコールの単一成分或いは混合成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールである請求項1〜3の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート(C)が、
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びメタキシリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる単量体(D)、
該単量体(D)から誘導されたイソシアネート、ビューレット、及びアロファネートからなる群から選ばれる多官能ポリイソシアネート化合物(E)、又は
前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリエステルポリオール(B)、トリメチロールプロパン、及びグリセリンからなる群から選ばれる2官能以上のポリオール化合物と、前記単量体(D)或いは前記多官能ポリイソシアネート化合物(E)との反応により得られるポリイソシアネートである請求項1〜4の何れかに記載の無溶剤型接着剤用組成物。
【請求項6】
ポリイソシアネート(C)が、芳香族環を有するものである請求項1〜4の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項7】
芳香族環を有するポリイソシアネートが、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物である請求項6に記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物を含有する酸素バリア性無溶剤型接着剤用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の無溶剤型接着剤用樹脂組成物を硬化させてなる接着剤。
【請求項10】
フィルムラミネート用接着剤として使用する請求項9に記載の接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2013−43936(P2013−43936A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182559(P2011−182559)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】