無溶接鋼管継手および鋼管接合方法
【課題】簡単な構造により施工が容易であるうえ、継手部の耐力や剛性の低下を抑えることができ、しかもコンパクトな構造とすることで外観を良くすることができる。
【解決手段】一方の上部柱2の端部内には上下部隔壁21、22によって液密に区画されたモルタル注入部23を有する内鋼管20を備え、他方の下部柱3の端部には内鋼管20よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管30を備え、内鋼管20を外鋼管30に同軸に挿入させた状態で、モルタル注入部23に膨張性を有する膨張モルタル4を注入することで内鋼管20を膨張させ、内鋼管20と外鋼管30とを摩擦接合させる継手部1を設けた。
【解決手段】一方の上部柱2の端部内には上下部隔壁21、22によって液密に区画されたモルタル注入部23を有する内鋼管20を備え、他方の下部柱3の端部には内鋼管20よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管30を備え、内鋼管20を外鋼管30に同軸に挿入させた状態で、モルタル注入部23に膨張性を有する膨張モルタル4を注入することで内鋼管20を膨張させ、内鋼管20と外鋼管30とを摩擦接合させる継手部1を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の鋼管柱などの接合に用いられる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造建物の施工現場では、分割されて搬入された鉄骨ピースを、高力ボルトや現場溶接によって接合しているのが一般的である。そして、接合対象が鋼管の場合には、閉断面であるため高力ボルトによる接合を採用することが困難であり、現場溶接を実施せざるを得ない現状がある。ところが、現場溶接の場合、溶接の品質、欠陥の有無は溶接技能者の力量によるところが大きく、また溶接作業によっては気温や気候の影響を受け、品質管理項目も多いことから、高コストとなっている。
【0003】
これに対して、無溶接鋼管継手として、ボルトを使用した機械式のものが知られている。この機械式の継手は、埋め込み杭への使用のほか、住宅向けの断面の小さな鋼管を適用対象としており、継手部の曲げ耐力も小さく、接合部が複雑な構造となっている。
また、機械式でない他の無溶接鋼管継手として、図15に示すように鋼管100、101同士の接続部に外鋼管102を配置し、鋼管100、101と外鋼管102との間に膨張モルタル103を注入した接合構造であり、その膨張するモルタルの付着強度や圧縮ストラットを利用したものがあり、これは例えば特許文献1にも開示されている。
【0004】
特許文献1には、相隣接して鋼管(内鋼管)の管端を対向させた鋼管の端部に止水材を設け、鋼管の継手部の外周を覆い、両側内側にフランジ部を設けた分割可能な筒状の外管(外鋼管)を鋼管に被装し、フランジ部と外管の間には止水材を配し、外管と鋼管により形成される継手空間内に所定の膨張圧を生じさせる膨張モルタルを充填した無溶接鋼管継手について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−79447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無溶接鋼管継手では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、内鋼管と外鋼管の間に膨張モルタルによる付着強度や圧縮ストラットが発生し得るだけの厚さ寸法が必要であり、これにより外鋼管の外径寸法が大きくなり、外観が悪くなるという問題があった。そして、このような外観上の問題と、上述した機械式による無溶接鋼管継手による構造が複雑になるという欠点とがあり、これらをバランスよく解決できる無溶接鋼管継手が求められている。
また、特許文献1では、継手としての耐力がモルタルと鋼管との間の付着耐力で決定するため、耐力が低くなるうえ、モルタルの膨張により内鋼管が座屈するといった品質上の問題もあった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造により施工が容易であるうえ、継手部の耐力や剛性の低下を抑えることができる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、コンパクトな構造とすることで外観を良くすることができる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る無溶接鋼管継手では、一対の鋼管の端部同士を対向配置させて接合する無溶接鋼管継手であって、一方の第1鋼管の端部内には、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備え、他方の第2鋼管の端部には、内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備え、内鋼管を外鋼管に同軸に挿入させた状態で、充填室に膨張性を有する充填材を注入することで内鋼管を膨張させ、内鋼管と外鋼管とを摩擦接合させる構成としたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る鋼管接合方法では、端部同士を対向配置させた一対の鋼管を無溶接鋼管継手によって接合するための鋼管接合方法であって、一方の第1鋼管の端部内に、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備える工程と、他方の第2鋼管の端部に、内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備える工程と、内鋼管を外鋼管に同軸に挿入する工程と、充填室に膨張性を有する充填材を注入し、内鋼管を膨張させ、内鋼管と外鋼管とを摩擦接合させる工程とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、外鋼管に内鋼管を挿入させた状態で内鋼管の充填室に充填材を注入すると、充填室が隔壁によって液密に区画されているので、その充填室内での充填材の膨張作用により内鋼管が外側へ膨らみ、外鋼管の内面に当接することになる。そして、さらに膨張が続くと、内鋼管と外鋼管との間で接触圧が生じ、この接触圧による摩擦により内鋼管と外鋼管との間に作用する軸方向の引張力や曲げモーメントに対抗することになる。つまり、内鋼管に対する外鋼管の拘束圧が十分に確保されることとなり、両鋼管が一体的に接合され、この無溶接鋼管継手により一対の第1鋼管と第2鋼管とが接合されることになる。
また、継手部内に充填材が充填されるため、その継手部における鋼管が座屈することはない。
【0011】
また、現場での施工は充填室に充填材を注入するだけの極めて簡単な作業となるので施工効率の向上が図れ、しかも無溶接による接合継手のため、現場溶接による欠陥が生じにくく、優れた品質を確保することができる。
さらに、内鋼管と外鋼管との間に充填材を注入して接合する必要がないことから、外鋼管はその内側に内鋼管が挿入されるだけの内径寸法があればよい。つまり、内鋼管と外鋼管との間の間隔を小さくし、或いはほぼ接触した状態に設定できるので、外鋼管の外形を抑えたコンパクトな構造となり、外観を良くすることができるうえ、配置上の制約を受けずに済む。
【0012】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、内鋼管の内周面及び外周面のうち少なくとも一方面に溝が設けられていることが好ましい。
本発明では、内鋼管に溝を設けることでその断面積が小さくなることから、充填材による内鋼管の径方向外側への変形がし易くなり、内鋼管に対する外鋼管の拘束圧をより高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、溝は内鋼管の軸方向に沿って延びていてもよい。
この場合、内鋼管の軸方向に延びる溝を周方向に沿って一定の間隔をもって配置することで、内鋼管を周方向に均一に径方向外側に膨らませることができ、バランスの取れた継手を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、溝は内鋼管の周方向に沿って延びていてもかまわない。
この場合、内鋼管に設けた周方向に沿う溝によって、内鋼管の材軸方向の一部を積極的に膨らませることが可能である。
【0015】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、外鋼管の内周面は、材軸方向で中央部が最も径方向外側に位置し、中央部の両側には中央部から離れるに従って漸次、内鋼管の外周面に近づくテーパー部が形成されていることがより好ましい。
本発明では、内鋼管を外鋼管のテーパー部に倣って変形させることができる。このとき、内鋼管の材軸方向中央部が径方向外側に凸状に突出した状態で外鋼管に接合した状態となるくさび作用が働き、内鋼管と外鋼管との間に作用する引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方に摩擦を増大させるための処理が施されていることが好ましい。
本発明では、内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方にブラスト処理や赤錆等を施すことですべり係数を高め、充填材により膨らんだ内鋼管と外鋼管との間の摩擦を増大させて接触圧を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無溶接鋼管継手および鋼管接合方法によれば、内鋼管が充填室に注入された充填材によって径方向外側に膨らんで外鋼管に対して接触圧を生じさせ、これにより内鋼管に対する外鋼管の拘束圧を十分に確保することができ、両鋼管を一体的に接合する構成となるので、継手部の耐力や剛性の低下を抑制することができる。
また、充填材を内鋼管の充填室に注入するといった簡単な構造であるため、施工が容易となる利点がある。
さらに、内鋼管と外鋼管との間に充填材を充填するような十分な間隔を設ける必要がなく、外鋼管の外径寸法が抑えられることから、コンパクトな継手構造を実現でき、外観を良くすることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による継手部を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示す継手部の側断面図である。
【図3】図2に示すA−A線断面図である。
【図4】継手部の作用を説明するための側断面図であって、図2に示すように対応する図である。
【図5】同じく継手部の作用を説明するための側断面図であって、図2に示すように対応する図である。
【図6】図5に示すB−B線断面図である。
【図7】第2の実施の形態による継手部を示す側断面図である。
【図8】第1変形例による継手部を示す側断面図である。
【図9】第2変形例による継手部を示す側断面図である。
【図10】実施例による鋼材の降伏特性を示す図である。
【図11】実施例による鋼材の降伏特性を示すグラフである。
【図12】他の膨張モルタルの注入方法を示す側断面図であって、図2に対応する図である。
【図13】他の膨張モルタルの注入方法を示す一部破断斜視図であって、図1に対応する図である。
【図14】他の膨張モルタルの注入方法を示す側断面図であって、図2に対応する図である。
【図15】従来の膨張モルタルを用いた無溶接鋼管継手を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本第1の実施の形態による無溶接鋼管継手(以下、単に「継手部1」という)は、鉄骨造の建物に用いられる円筒状の鋼管柱どうしを無溶接で材軸方向に直列に接合する場合に用いられている。
ここで、鋼管柱のうち図1の符号2は上部柱(第1鋼管)、符号3は下部柱(第2鋼管)を示している。上部柱2と下部柱3は同じ外径寸法をなし、上部柱2の下端と下部柱3の上端とを同軸線上に対向配置させて継手部1によって接合されている。
【0021】
図1および図2に示すように、上部柱2の下部には、上下方向に所定の間隔をもって平板形状の隔壁21、22が設けられ、それぞれ壁面方向が上部柱2の上下方向の軸線O1に対して直交する水平方向に向けて配置されている。上下一対の隔壁21、22によって液密に区画されたモルタル注入部23(充填室)には、膨張性を有する膨張モルタル4(充填材)が注入されるようになっている。
【0022】
下側の下部隔壁21は、上部柱2の下端2aに位置し、その外周縁部21aが上部柱2に溶接により液密な状態で固定されている。
上側の上部隔壁22は、下部隔壁21より上方へ上記所定の間隔をもっての上部柱2の内空部に位置し、その外周縁部22aが上部柱2の内周面2bに溶接により液密な状態で固定されている。上部隔壁22には、厚さ方向に貫通する膨張モルタル4用の注入孔24が設けられている。
【0023】
ここで、上部柱2のうち上部隔壁22から下方に位置する部分(すなわちモルタル注入部23に相当する部分)を以下、内鋼管20という。
【0024】
内鋼管20には、上部隔壁22の直ぐ下の位置に、鋼管の厚さ方向に貫通する脱気孔25(図2)が適宜数設けられている。この脱気孔25は、注入孔24からモルタル注入部23に膨張モルタル4を充填する際の内部の空気と置換するためのエアー抜き孔である。
【0025】
図1および図3に示すように、下部柱3には、上端3aに内鋼管20の外径寸法より大径の内径寸法をなす外鋼管30がこの軸線O1上に同軸に設けられている。具体的には、下部柱3の上端3aに外鋼管30と同じ外径寸法の円形プレート31が溶着され、その上に外鋼管30の下端30aを当接させて溶接により固着されている。
この外鋼管30には、上述した上部柱2の内鋼管20が挿入可能となっている。そして、外鋼管30の高さ寸法は、前記内鋼管20に対してオーバーラップ可能な長さ寸法で形成されている。
【0026】
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間は、接触した状態、または僅かな隙間s(図3)を有する状態で配置されている。
【0027】
そして、図1および図2に示すように、外鋼管30内に内鋼管20が同軸に嵌合され、外鋼管30によって内鋼管20を囲繞するように配置させた状態で、内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4が密に充填されている。このとき、内鋼管20の下端20aが外鋼管30の円形プレート31に当接され、下部柱3が内鋼管20を備えた上部柱2を支持している。
【0028】
次に、このように構成される継手部1の作用について、図面に基づいて説明する。
図4に示すように、外鋼管30に内鋼管20を挿入させた状態で内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入すると、モルタル注入部23が下部隔壁21と上部隔壁22によって液密に区画されているので、そのモルタル注入部23内で膨張モルタル4のする膨張作用により内鋼管20が所定の膨張圧(図4で符号F1)をもって外側へ膨らみ、外鋼管30の内面に当接することになる。
そして、図5に示すように、さらに膨張が続くと、内鋼管と外鋼管30との間で接触圧が生じ、この接触圧による摩擦により内鋼管20と外鋼管30との間に作用する軸方向の引張力や曲げモーメントに対抗することになる。つまり、内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧(図5で符号F2)が十分に確保されることとなり、両鋼管20、30が一体的に接合され、この継手部1により上部柱2と下部柱3とが接合されることになる。また、継手部1内に膨張モルタル4が充填されるため、その継手部1における鋼管が座屈することはない。
【0029】
なお、継手部1における力学的な釣り合いは、(1)式に示す膨張モルタル4の膨張圧F1と、(2)式に示す内鋼管20と外鋼管30の間で発生する摩擦力(図5で符号F3)により決定される。
膨張圧=内鋼管の拘束圧+外鋼管の拘束圧 ・・・(1)
摩擦力=滑り係数×外鋼管の拘束圧×接触面積 ・・・(2)
【0030】
さらに、(2)式において、滑り係数を高めるため、内鋼管20の外側および外鋼管30の内側にブラスト処理や赤錆を発生させるといった摩擦を増大させるための処理を施しておいてもよい。
【0031】
また、現場での施工はモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入するだけの極めて簡単な作業となるので施工効率の向上が図れ、しかも無溶接による接合継手のため、現場溶接による欠陥が生じにくく、優れた品質を確保することができる。
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間に膨張モルタル4を注入して接合する必要がないことから、外鋼管30はその内側に内鋼管20が挿入されるだけの内径寸法があればよい。つまり、図6に示すように、内鋼管20と外鋼管30との間の間隔s(図3)を小さくし、或いはほぼ接触した状態に設定できるので、外鋼管30の外形を抑えたコンパクトな構造となり、外観を良くすることができるうえ、配置上の制約を受けずに済む。
【0032】
上述のように本第1の実施の形態による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法では、内鋼管20がモルタル注入部23に注入された膨張モルタル4によって径方向外側に膨らんで外鋼管30に対して接触圧を生じさせ、これにより内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧を十分に確保することができ、両鋼管20、30を一体的に接合する構成となるので、継手部の耐力や剛性の低下を抑制することができる。
また、膨張モルタル4を内鋼管20のモルタル注入部23に注入するといった簡単な構造であるため、施工が容易となる利点がある。
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間に膨張モルタルを充填するような十分な間隔を設ける必要がなく、外鋼管30の外径寸法が抑えられることから、コンパクトな継手構造を実現でき、外観を良くすることができる効果を奏する。
【0033】
次に、本発明の無溶接鋼管継手および鋼管接合方法による他の実施の形態および変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0034】
また、図7に示すように、第2の実施の形態による無溶接鋼管継手(継手部1A)は、内鋼管20の外周面、或いは内周面(図7では外周面20b)に、縦方向(柱の軸方向)に沿って延びる縦溝26を設けた構成となっている。縦溝26は、内鋼管20の材軸方向(高さ寸法)でほぼ全長の範囲にわたって設けられ、内鋼管20の周方向に一定の間隔をもって複数設けられている。
【0035】
本第2の実施の形態による継手部1Aでは、複数の縦溝26、26、…によって内鋼管20の断面積が小さくなることから、膨張モルタル4の膨張による内鋼管20の径方向外側への変形がし易くなり、内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧をより高めることが可能となる。
また、その一方で、軸方向の摩擦力や鋼材断面の減少は最小限に抑えられるため、摩擦力は増大させることができ有効的である。
しかも、この場合、内鋼管20の軸方向に延びる縦溝26を周方向に沿って一定の間隔をもって配置することで、内鋼管20を周方向に均一に径方向外側に膨らませることができ、バランスの取れた継手を実現することができる。
【0036】
また、図8に示すように、第1変形例による無溶接鋼管継手(継手部1B)は、内鋼管20の外周面、或いは内周面(図7では外周面20b)に、全周にわたって延びる横溝27を内鋼管20の材軸方向(高さ方向)で略中間位置に設け、外鋼管30には横溝27に対向する位置で最も径方向外側に突出する頂点30bが設けられ、その頂点30bから上下にむけて離れるに従って漸次、内鋼管20の外周面に近づくテーパー部30c、30cが形成されている。
【0037】
この場合、内鋼管20に設けた周方向に沿う横溝27によって、内鋼管20の材軸方向の一部を積極的に膨らませることが可能である。
また、内鋼管20を外鋼管30のテーパー部30cに倣って変形させることができる。このとき、内鋼管20の材軸方向中央部が径方向外側に凸状に突出した状態で外鋼管30に接合した状態となるくさび作用が働き、内鋼管20と外鋼管30との間に作用する引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【0038】
また、図9に示す第2変形例による無溶接鋼管継手(継手部1C)は、外鋼管30において、上下方向の中間部に筒状部30dを有し、その筒状部30dの上下それぞれにテーパー部30c、30cが設けられた構成となっている。そして、内鋼管20には、筒状部30dとテーパー部30c、30cとの接続部に対応する位置に横溝27(27A、27B)を上下方向に一定の間隔を開けて設けられている。
本第2変形例の継手部1Cにおいても、上述した第1変形例と同様にテーパーによるくさび効果によって引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【実施例】
【0039】
次に、上述した実施の形態による無溶接鋼管継手による接合効果を裏付けるために行った計算例について以下説明する。
【0040】
先ず、鋼管を周方向に塑性化させるために必要な内圧を算出する。
ここで、計算を簡略化するため、SS400の内鋼管の形状として、外径を400mm、厚さ寸法(板厚)を12mmとする。
図10に示すように、円筒殻に発生する応力度である軸方向応力σ1と、円周方向応力σ2とは、それぞれ(3)式、(4)式より求められる。ここで、式中のpは内圧であり、rは鋼管の半径であり、tは鋼管の板厚である。
σ1=rp/2t ・・・(3)
σ2=rp/t ・・・(4)
【0041】
次に、内鋼管と外鋼管のクリアランスについて検討する。
鋼管の降伏応力度σyを235N/mm2とした場合、鋼管の塑性化に必要な内圧は、(5)式により14N/mm2となることから、塑性化に必要な内圧を膨張コンクリートで実現することは、十分に可能である。
なお、膨張モルタルの膨張圧は、49N/mm2以上(48時間後)(太平洋マテリアル社のカタログより)とする。
P=tσ2/r ・・・(5)
【0042】
また、膨張コンクリートによる膨張圧Pを30N/mm2とすると、内鋼管の周方向に発生する応力度は、(6)式より、500N/mm2となる。
σ2=rp/t ・・・(6)
【0043】
鋼材の降伏特性をバイリニア(σy=235N/mm2、ヤング係数E=205000N/mm2、第2折れ線のヤング係数E´=E/200)で、図11に示すように仮定すると、鋼管の周方向のひずみ度は、降伏点までのひずみ度εyが(7)式より0.001146(1146μ)となり、降伏点以降のひずみ度Δεが(8)式より0.063415となる。したがって、(9)式よりε2は0.064561となる。
εy=σy/E ・・・(7)
Δε=Δσ/E´=(σ2−σy)/E´ ・・・(8)
ε2=εy+Δε ・・・(9)
【0044】
さらに、鋼管の初期半径をr、膨張後の半径をr´とすると、膨張前後の周方向の長さの差は、(10)式で表される。したがって、膨張による鋼管直径の増分は、(11)式より25.8mmとなる。
2π(r´−r)=2πr×ε2 ・・・(10)
2(r´−r)=2πr×ε2 ・・・(11)
なお、施工に必要な外鋼管の内径と内鋼管の外径の差を10mmとすれば、上記条件において、内鋼管の膨張によって内鋼管と外鋼管が十分に密着することが確認できる。
【0045】
また、継手部の圧縮軸力に対しては、メタルタッチで応力を伝達する。
一方、受け側の柱も外鋼管で外周が補強されるため、座屈を起こさずほぼ全強継手として取り扱うことが可能である。
【0046】
次に、継手部の引張軸力に関しては、外鋼管とオーバーラップする内鋼管全周の摩擦耐力で抵抗する。なお、万一、摩擦耐力以上の引張軸力が生じても、オーバーラップ部が存在するため継手部での軸方向に外れたり、面外にずれることはない。
ここで、摩擦による引張軸耐力の具体例を示すが、簡略化するため、外径400mm×厚さ寸法12mmの内鋼管に対して、内径φ410mmの外鋼管を想定する。鋼管接触面のオーバーラップ長を450mm、外鋼管の拘束圧pを20N/mm2、滑り係数をμ=0.4とすれば、(12)式より、4645kNとなる。
Qf=μpA ・・・(12)
なお、受け側鋼管の外鋼管の接合は、引張軸力に対して十分な強度設計を行った溶接接合とする。
【0047】
また、継手部のせん断力に対しては、外鋼管の断面で抵抗するため、ほぼ全強継手として取り扱うことが可能である。
【0048】
また、継手部の曲げモーメントに対しては、内部に膨張コンクリートが充填されているため、曲げによる継手部のつぶれを防止する効果(平面保持)を期待することができる。
そして、継手の摩擦耐力が不足する場合には、オーバーラップの長さ寸法、膨張圧を大きくすることや、テーパーを付けてフランジの引抜きを防止する。
これに関しては、簡単のため、400mm×400mmで厚さ寸法12mmの角形鋼管を想定する。なお、柱の圧縮軸力は、安全側に働くことから、ここでは考慮しないものとする。
角形鋼管の降伏強さσyを235N/mm2とすれば、柱の降伏モーメントMyは、(13)式より550kNmとなる。なお、Zは断面係数である。
My=σyZ ・・・(13)
【0049】
さらに、継手フェイスに生じる摩擦力をQf、柱成をhとすれば、フランジ継手が負担する曲げモーメントMfは、(14)式で表される。
Mf=Qfh ・・・(14)
ここで、鋼管接触面のオーバーラップ長を450mmとし、外鋼管の拘束圧pを20N/mm2とし、滑り係数μを0.4とすれば、継手フェイスに生じる摩擦力Qfは1440kNとなり、(14)式より曲げモーメントMfは576kNmとなる。
したがって、柱の降伏曲げモーメントに対して全強で設計することができる。
【0050】
以上、本発明による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では上部柱2と下部柱3を構成する鋼管を円形断面としているが、この形状に限定されることはなく、四角形或いは六角形などの角形断面の鋼管であってもかまわない。また、内鋼管20および外鋼管30についても、同様に円形断面であることに制限されることはない。
【0051】
また、本実施の形態では内鋼管20の充填室(モルタル注入部23)に注入する材料として膨張モルタル4を採用しているが、これに限らず、例えば膨張性を有するコンクリートであってもかまわない。
さらに、内鋼管20と外鋼管30の材軸方向のオーバーラップ長や、内鋼管20と外鋼管30の間隔、外鋼管30の厚さ寸法、さらに縦溝26および横溝27の間隔、位置、外鋼管30のテーパー部30cの傾斜角度などの構成は、鋼管(上部柱2、下部柱3)の大きさ、内鋼管20の膨張量等に応じて適宜、設定することが可能である。
【0052】
また、膨張モルタル4の注入方法に関しては、上述した実施の形態に限定されることはなく、適宜な方法が採用可能であり、例えば、図12に示すように、上部柱2の上部隔壁22の注入孔24に柱梁接合部Tの上側から注入管5が接続され、この注入管5を使用して内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入する方法がある。
さらに、図13に示すように、上部柱2の側面に側面孔28があり、この側面孔28から上部隔壁22の注入孔24に接続される注入管6が設けられており、この注入管6を使用して内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入する方法もある。
さらにまた、図14に示すように、内鋼管20の脱気孔25と同様の位置に配置された注入孔7からモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入し、その膨張モルタル4が脱気孔25からオーバーフローするまで注入する方法であってもよい。
そして、モルタル注入部23(充填室)への膨張モルタル4の充填では、モルタルは上部隔壁22と密着することが好ましいが、多少の隙間が生じても、モルタルの膨張により、その隙間はなくなる。一方、充填室の材軸方向の長さがオーバーラップ長さよりも長い場合には、上部隔壁22とモルタル間に多少の隙間が生じてもモルタルは3次元的に膨張するため、オーバーラップ部の内鋼管20は外側へ膨張する。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、1C 継手部(無溶接鋼管継手)
2 上部柱(第1鋼管)
3 下部柱(第2鋼管)
4 膨張モルタル(充填材)
20 内鋼管
21 下部隔壁
22 上部隔壁
23 モルタル注入部(充填室)
26 縦溝
27 横溝
30 外鋼管
30c テーパー部
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の鋼管柱などの接合に用いられる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造建物の施工現場では、分割されて搬入された鉄骨ピースを、高力ボルトや現場溶接によって接合しているのが一般的である。そして、接合対象が鋼管の場合には、閉断面であるため高力ボルトによる接合を採用することが困難であり、現場溶接を実施せざるを得ない現状がある。ところが、現場溶接の場合、溶接の品質、欠陥の有無は溶接技能者の力量によるところが大きく、また溶接作業によっては気温や気候の影響を受け、品質管理項目も多いことから、高コストとなっている。
【0003】
これに対して、無溶接鋼管継手として、ボルトを使用した機械式のものが知られている。この機械式の継手は、埋め込み杭への使用のほか、住宅向けの断面の小さな鋼管を適用対象としており、継手部の曲げ耐力も小さく、接合部が複雑な構造となっている。
また、機械式でない他の無溶接鋼管継手として、図15に示すように鋼管100、101同士の接続部に外鋼管102を配置し、鋼管100、101と外鋼管102との間に膨張モルタル103を注入した接合構造であり、その膨張するモルタルの付着強度や圧縮ストラットを利用したものがあり、これは例えば特許文献1にも開示されている。
【0004】
特許文献1には、相隣接して鋼管(内鋼管)の管端を対向させた鋼管の端部に止水材を設け、鋼管の継手部の外周を覆い、両側内側にフランジ部を設けた分割可能な筒状の外管(外鋼管)を鋼管に被装し、フランジ部と外管の間には止水材を配し、外管と鋼管により形成される継手空間内に所定の膨張圧を生じさせる膨張モルタルを充填した無溶接鋼管継手について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−79447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の無溶接鋼管継手では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、内鋼管と外鋼管の間に膨張モルタルによる付着強度や圧縮ストラットが発生し得るだけの厚さ寸法が必要であり、これにより外鋼管の外径寸法が大きくなり、外観が悪くなるという問題があった。そして、このような外観上の問題と、上述した機械式による無溶接鋼管継手による構造が複雑になるという欠点とがあり、これらをバランスよく解決できる無溶接鋼管継手が求められている。
また、特許文献1では、継手としての耐力がモルタルと鋼管との間の付着耐力で決定するため、耐力が低くなるうえ、モルタルの膨張により内鋼管が座屈するといった品質上の問題もあった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造により施工が容易であるうえ、継手部の耐力や剛性の低下を抑えることができる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、コンパクトな構造とすることで外観を良くすることができる無溶接鋼管継手および鋼管接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る無溶接鋼管継手では、一対の鋼管の端部同士を対向配置させて接合する無溶接鋼管継手であって、一方の第1鋼管の端部内には、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備え、他方の第2鋼管の端部には、内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備え、内鋼管を外鋼管に同軸に挿入させた状態で、充填室に膨張性を有する充填材を注入することで内鋼管を膨張させ、内鋼管と外鋼管とを摩擦接合させる構成としたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る鋼管接合方法では、端部同士を対向配置させた一対の鋼管を無溶接鋼管継手によって接合するための鋼管接合方法であって、一方の第1鋼管の端部内に、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備える工程と、他方の第2鋼管の端部に、内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備える工程と、内鋼管を外鋼管に同軸に挿入する工程と、充填室に膨張性を有する充填材を注入し、内鋼管を膨張させ、内鋼管と外鋼管とを摩擦接合させる工程とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、外鋼管に内鋼管を挿入させた状態で内鋼管の充填室に充填材を注入すると、充填室が隔壁によって液密に区画されているので、その充填室内での充填材の膨張作用により内鋼管が外側へ膨らみ、外鋼管の内面に当接することになる。そして、さらに膨張が続くと、内鋼管と外鋼管との間で接触圧が生じ、この接触圧による摩擦により内鋼管と外鋼管との間に作用する軸方向の引張力や曲げモーメントに対抗することになる。つまり、内鋼管に対する外鋼管の拘束圧が十分に確保されることとなり、両鋼管が一体的に接合され、この無溶接鋼管継手により一対の第1鋼管と第2鋼管とが接合されることになる。
また、継手部内に充填材が充填されるため、その継手部における鋼管が座屈することはない。
【0011】
また、現場での施工は充填室に充填材を注入するだけの極めて簡単な作業となるので施工効率の向上が図れ、しかも無溶接による接合継手のため、現場溶接による欠陥が生じにくく、優れた品質を確保することができる。
さらに、内鋼管と外鋼管との間に充填材を注入して接合する必要がないことから、外鋼管はその内側に内鋼管が挿入されるだけの内径寸法があればよい。つまり、内鋼管と外鋼管との間の間隔を小さくし、或いはほぼ接触した状態に設定できるので、外鋼管の外形を抑えたコンパクトな構造となり、外観を良くすることができるうえ、配置上の制約を受けずに済む。
【0012】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、内鋼管の内周面及び外周面のうち少なくとも一方面に溝が設けられていることが好ましい。
本発明では、内鋼管に溝を設けることでその断面積が小さくなることから、充填材による内鋼管の径方向外側への変形がし易くなり、内鋼管に対する外鋼管の拘束圧をより高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、溝は内鋼管の軸方向に沿って延びていてもよい。
この場合、内鋼管の軸方向に延びる溝を周方向に沿って一定の間隔をもって配置することで、内鋼管を周方向に均一に径方向外側に膨らませることができ、バランスの取れた継手を実現することができる。
【0014】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、溝は内鋼管の周方向に沿って延びていてもかまわない。
この場合、内鋼管に設けた周方向に沿う溝によって、内鋼管の材軸方向の一部を積極的に膨らませることが可能である。
【0015】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、外鋼管の内周面は、材軸方向で中央部が最も径方向外側に位置し、中央部の両側には中央部から離れるに従って漸次、内鋼管の外周面に近づくテーパー部が形成されていることがより好ましい。
本発明では、内鋼管を外鋼管のテーパー部に倣って変形させることができる。このとき、内鋼管の材軸方向中央部が径方向外側に凸状に突出した状態で外鋼管に接合した状態となるくさび作用が働き、内鋼管と外鋼管との間に作用する引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る無溶接鋼管継手では、内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方に摩擦を増大させるための処理が施されていることが好ましい。
本発明では、内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方にブラスト処理や赤錆等を施すことですべり係数を高め、充填材により膨らんだ内鋼管と外鋼管との間の摩擦を増大させて接触圧を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無溶接鋼管継手および鋼管接合方法によれば、内鋼管が充填室に注入された充填材によって径方向外側に膨らんで外鋼管に対して接触圧を生じさせ、これにより内鋼管に対する外鋼管の拘束圧を十分に確保することができ、両鋼管を一体的に接合する構成となるので、継手部の耐力や剛性の低下を抑制することができる。
また、充填材を内鋼管の充填室に注入するといった簡単な構造であるため、施工が容易となる利点がある。
さらに、内鋼管と外鋼管との間に充填材を充填するような十分な間隔を設ける必要がなく、外鋼管の外径寸法が抑えられることから、コンパクトな継手構造を実現でき、外観を良くすることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による継手部を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示す継手部の側断面図である。
【図3】図2に示すA−A線断面図である。
【図4】継手部の作用を説明するための側断面図であって、図2に示すように対応する図である。
【図5】同じく継手部の作用を説明するための側断面図であって、図2に示すように対応する図である。
【図6】図5に示すB−B線断面図である。
【図7】第2の実施の形態による継手部を示す側断面図である。
【図8】第1変形例による継手部を示す側断面図である。
【図9】第2変形例による継手部を示す側断面図である。
【図10】実施例による鋼材の降伏特性を示す図である。
【図11】実施例による鋼材の降伏特性を示すグラフである。
【図12】他の膨張モルタルの注入方法を示す側断面図であって、図2に対応する図である。
【図13】他の膨張モルタルの注入方法を示す一部破断斜視図であって、図1に対応する図である。
【図14】他の膨張モルタルの注入方法を示す側断面図であって、図2に対応する図である。
【図15】従来の膨張モルタルを用いた無溶接鋼管継手を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本第1の実施の形態による無溶接鋼管継手(以下、単に「継手部1」という)は、鉄骨造の建物に用いられる円筒状の鋼管柱どうしを無溶接で材軸方向に直列に接合する場合に用いられている。
ここで、鋼管柱のうち図1の符号2は上部柱(第1鋼管)、符号3は下部柱(第2鋼管)を示している。上部柱2と下部柱3は同じ外径寸法をなし、上部柱2の下端と下部柱3の上端とを同軸線上に対向配置させて継手部1によって接合されている。
【0021】
図1および図2に示すように、上部柱2の下部には、上下方向に所定の間隔をもって平板形状の隔壁21、22が設けられ、それぞれ壁面方向が上部柱2の上下方向の軸線O1に対して直交する水平方向に向けて配置されている。上下一対の隔壁21、22によって液密に区画されたモルタル注入部23(充填室)には、膨張性を有する膨張モルタル4(充填材)が注入されるようになっている。
【0022】
下側の下部隔壁21は、上部柱2の下端2aに位置し、その外周縁部21aが上部柱2に溶接により液密な状態で固定されている。
上側の上部隔壁22は、下部隔壁21より上方へ上記所定の間隔をもっての上部柱2の内空部に位置し、その外周縁部22aが上部柱2の内周面2bに溶接により液密な状態で固定されている。上部隔壁22には、厚さ方向に貫通する膨張モルタル4用の注入孔24が設けられている。
【0023】
ここで、上部柱2のうち上部隔壁22から下方に位置する部分(すなわちモルタル注入部23に相当する部分)を以下、内鋼管20という。
【0024】
内鋼管20には、上部隔壁22の直ぐ下の位置に、鋼管の厚さ方向に貫通する脱気孔25(図2)が適宜数設けられている。この脱気孔25は、注入孔24からモルタル注入部23に膨張モルタル4を充填する際の内部の空気と置換するためのエアー抜き孔である。
【0025】
図1および図3に示すように、下部柱3には、上端3aに内鋼管20の外径寸法より大径の内径寸法をなす外鋼管30がこの軸線O1上に同軸に設けられている。具体的には、下部柱3の上端3aに外鋼管30と同じ外径寸法の円形プレート31が溶着され、その上に外鋼管30の下端30aを当接させて溶接により固着されている。
この外鋼管30には、上述した上部柱2の内鋼管20が挿入可能となっている。そして、外鋼管30の高さ寸法は、前記内鋼管20に対してオーバーラップ可能な長さ寸法で形成されている。
【0026】
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間は、接触した状態、または僅かな隙間s(図3)を有する状態で配置されている。
【0027】
そして、図1および図2に示すように、外鋼管30内に内鋼管20が同軸に嵌合され、外鋼管30によって内鋼管20を囲繞するように配置させた状態で、内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4が密に充填されている。このとき、内鋼管20の下端20aが外鋼管30の円形プレート31に当接され、下部柱3が内鋼管20を備えた上部柱2を支持している。
【0028】
次に、このように構成される継手部1の作用について、図面に基づいて説明する。
図4に示すように、外鋼管30に内鋼管20を挿入させた状態で内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入すると、モルタル注入部23が下部隔壁21と上部隔壁22によって液密に区画されているので、そのモルタル注入部23内で膨張モルタル4のする膨張作用により内鋼管20が所定の膨張圧(図4で符号F1)をもって外側へ膨らみ、外鋼管30の内面に当接することになる。
そして、図5に示すように、さらに膨張が続くと、内鋼管と外鋼管30との間で接触圧が生じ、この接触圧による摩擦により内鋼管20と外鋼管30との間に作用する軸方向の引張力や曲げモーメントに対抗することになる。つまり、内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧(図5で符号F2)が十分に確保されることとなり、両鋼管20、30が一体的に接合され、この継手部1により上部柱2と下部柱3とが接合されることになる。また、継手部1内に膨張モルタル4が充填されるため、その継手部1における鋼管が座屈することはない。
【0029】
なお、継手部1における力学的な釣り合いは、(1)式に示す膨張モルタル4の膨張圧F1と、(2)式に示す内鋼管20と外鋼管30の間で発生する摩擦力(図5で符号F3)により決定される。
膨張圧=内鋼管の拘束圧+外鋼管の拘束圧 ・・・(1)
摩擦力=滑り係数×外鋼管の拘束圧×接触面積 ・・・(2)
【0030】
さらに、(2)式において、滑り係数を高めるため、内鋼管20の外側および外鋼管30の内側にブラスト処理や赤錆を発生させるといった摩擦を増大させるための処理を施しておいてもよい。
【0031】
また、現場での施工はモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入するだけの極めて簡単な作業となるので施工効率の向上が図れ、しかも無溶接による接合継手のため、現場溶接による欠陥が生じにくく、優れた品質を確保することができる。
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間に膨張モルタル4を注入して接合する必要がないことから、外鋼管30はその内側に内鋼管20が挿入されるだけの内径寸法があればよい。つまり、図6に示すように、内鋼管20と外鋼管30との間の間隔s(図3)を小さくし、或いはほぼ接触した状態に設定できるので、外鋼管30の外形を抑えたコンパクトな構造となり、外観を良くすることができるうえ、配置上の制約を受けずに済む。
【0032】
上述のように本第1の実施の形態による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法では、内鋼管20がモルタル注入部23に注入された膨張モルタル4によって径方向外側に膨らんで外鋼管30に対して接触圧を生じさせ、これにより内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧を十分に確保することができ、両鋼管20、30を一体的に接合する構成となるので、継手部の耐力や剛性の低下を抑制することができる。
また、膨張モルタル4を内鋼管20のモルタル注入部23に注入するといった簡単な構造であるため、施工が容易となる利点がある。
さらに、内鋼管20と外鋼管30との間に膨張モルタルを充填するような十分な間隔を設ける必要がなく、外鋼管30の外径寸法が抑えられることから、コンパクトな継手構造を実現でき、外観を良くすることができる効果を奏する。
【0033】
次に、本発明の無溶接鋼管継手および鋼管接合方法による他の実施の形態および変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0034】
また、図7に示すように、第2の実施の形態による無溶接鋼管継手(継手部1A)は、内鋼管20の外周面、或いは内周面(図7では外周面20b)に、縦方向(柱の軸方向)に沿って延びる縦溝26を設けた構成となっている。縦溝26は、内鋼管20の材軸方向(高さ寸法)でほぼ全長の範囲にわたって設けられ、内鋼管20の周方向に一定の間隔をもって複数設けられている。
【0035】
本第2の実施の形態による継手部1Aでは、複数の縦溝26、26、…によって内鋼管20の断面積が小さくなることから、膨張モルタル4の膨張による内鋼管20の径方向外側への変形がし易くなり、内鋼管20に対する外鋼管30の拘束圧をより高めることが可能となる。
また、その一方で、軸方向の摩擦力や鋼材断面の減少は最小限に抑えられるため、摩擦力は増大させることができ有効的である。
しかも、この場合、内鋼管20の軸方向に延びる縦溝26を周方向に沿って一定の間隔をもって配置することで、内鋼管20を周方向に均一に径方向外側に膨らませることができ、バランスの取れた継手を実現することができる。
【0036】
また、図8に示すように、第1変形例による無溶接鋼管継手(継手部1B)は、内鋼管20の外周面、或いは内周面(図7では外周面20b)に、全周にわたって延びる横溝27を内鋼管20の材軸方向(高さ方向)で略中間位置に設け、外鋼管30には横溝27に対向する位置で最も径方向外側に突出する頂点30bが設けられ、その頂点30bから上下にむけて離れるに従って漸次、内鋼管20の外周面に近づくテーパー部30c、30cが形成されている。
【0037】
この場合、内鋼管20に設けた周方向に沿う横溝27によって、内鋼管20の材軸方向の一部を積極的に膨らませることが可能である。
また、内鋼管20を外鋼管30のテーパー部30cに倣って変形させることができる。このとき、内鋼管20の材軸方向中央部が径方向外側に凸状に突出した状態で外鋼管30に接合した状態となるくさび作用が働き、内鋼管20と外鋼管30との間に作用する引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【0038】
また、図9に示す第2変形例による無溶接鋼管継手(継手部1C)は、外鋼管30において、上下方向の中間部に筒状部30dを有し、その筒状部30dの上下それぞれにテーパー部30c、30cが設けられた構成となっている。そして、内鋼管20には、筒状部30dとテーパー部30c、30cとの接続部に対応する位置に横溝27(27A、27B)を上下方向に一定の間隔を開けて設けられている。
本第2変形例の継手部1Cにおいても、上述した第1変形例と同様にテーパーによるくさび効果によって引張軸耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
【実施例】
【0039】
次に、上述した実施の形態による無溶接鋼管継手による接合効果を裏付けるために行った計算例について以下説明する。
【0040】
先ず、鋼管を周方向に塑性化させるために必要な内圧を算出する。
ここで、計算を簡略化するため、SS400の内鋼管の形状として、外径を400mm、厚さ寸法(板厚)を12mmとする。
図10に示すように、円筒殻に発生する応力度である軸方向応力σ1と、円周方向応力σ2とは、それぞれ(3)式、(4)式より求められる。ここで、式中のpは内圧であり、rは鋼管の半径であり、tは鋼管の板厚である。
σ1=rp/2t ・・・(3)
σ2=rp/t ・・・(4)
【0041】
次に、内鋼管と外鋼管のクリアランスについて検討する。
鋼管の降伏応力度σyを235N/mm2とした場合、鋼管の塑性化に必要な内圧は、(5)式により14N/mm2となることから、塑性化に必要な内圧を膨張コンクリートで実現することは、十分に可能である。
なお、膨張モルタルの膨張圧は、49N/mm2以上(48時間後)(太平洋マテリアル社のカタログより)とする。
P=tσ2/r ・・・(5)
【0042】
また、膨張コンクリートによる膨張圧Pを30N/mm2とすると、内鋼管の周方向に発生する応力度は、(6)式より、500N/mm2となる。
σ2=rp/t ・・・(6)
【0043】
鋼材の降伏特性をバイリニア(σy=235N/mm2、ヤング係数E=205000N/mm2、第2折れ線のヤング係数E´=E/200)で、図11に示すように仮定すると、鋼管の周方向のひずみ度は、降伏点までのひずみ度εyが(7)式より0.001146(1146μ)となり、降伏点以降のひずみ度Δεが(8)式より0.063415となる。したがって、(9)式よりε2は0.064561となる。
εy=σy/E ・・・(7)
Δε=Δσ/E´=(σ2−σy)/E´ ・・・(8)
ε2=εy+Δε ・・・(9)
【0044】
さらに、鋼管の初期半径をr、膨張後の半径をr´とすると、膨張前後の周方向の長さの差は、(10)式で表される。したがって、膨張による鋼管直径の増分は、(11)式より25.8mmとなる。
2π(r´−r)=2πr×ε2 ・・・(10)
2(r´−r)=2πr×ε2 ・・・(11)
なお、施工に必要な外鋼管の内径と内鋼管の外径の差を10mmとすれば、上記条件において、内鋼管の膨張によって内鋼管と外鋼管が十分に密着することが確認できる。
【0045】
また、継手部の圧縮軸力に対しては、メタルタッチで応力を伝達する。
一方、受け側の柱も外鋼管で外周が補強されるため、座屈を起こさずほぼ全強継手として取り扱うことが可能である。
【0046】
次に、継手部の引張軸力に関しては、外鋼管とオーバーラップする内鋼管全周の摩擦耐力で抵抗する。なお、万一、摩擦耐力以上の引張軸力が生じても、オーバーラップ部が存在するため継手部での軸方向に外れたり、面外にずれることはない。
ここで、摩擦による引張軸耐力の具体例を示すが、簡略化するため、外径400mm×厚さ寸法12mmの内鋼管に対して、内径φ410mmの外鋼管を想定する。鋼管接触面のオーバーラップ長を450mm、外鋼管の拘束圧pを20N/mm2、滑り係数をμ=0.4とすれば、(12)式より、4645kNとなる。
Qf=μpA ・・・(12)
なお、受け側鋼管の外鋼管の接合は、引張軸力に対して十分な強度設計を行った溶接接合とする。
【0047】
また、継手部のせん断力に対しては、外鋼管の断面で抵抗するため、ほぼ全強継手として取り扱うことが可能である。
【0048】
また、継手部の曲げモーメントに対しては、内部に膨張コンクリートが充填されているため、曲げによる継手部のつぶれを防止する効果(平面保持)を期待することができる。
そして、継手の摩擦耐力が不足する場合には、オーバーラップの長さ寸法、膨張圧を大きくすることや、テーパーを付けてフランジの引抜きを防止する。
これに関しては、簡単のため、400mm×400mmで厚さ寸法12mmの角形鋼管を想定する。なお、柱の圧縮軸力は、安全側に働くことから、ここでは考慮しないものとする。
角形鋼管の降伏強さσyを235N/mm2とすれば、柱の降伏モーメントMyは、(13)式より550kNmとなる。なお、Zは断面係数である。
My=σyZ ・・・(13)
【0049】
さらに、継手フェイスに生じる摩擦力をQf、柱成をhとすれば、フランジ継手が負担する曲げモーメントMfは、(14)式で表される。
Mf=Qfh ・・・(14)
ここで、鋼管接触面のオーバーラップ長を450mmとし、外鋼管の拘束圧pを20N/mm2とし、滑り係数μを0.4とすれば、継手フェイスに生じる摩擦力Qfは1440kNとなり、(14)式より曲げモーメントMfは576kNmとなる。
したがって、柱の降伏曲げモーメントに対して全強で設計することができる。
【0050】
以上、本発明による無溶接鋼管継手および鋼管接合方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では上部柱2と下部柱3を構成する鋼管を円形断面としているが、この形状に限定されることはなく、四角形或いは六角形などの角形断面の鋼管であってもかまわない。また、内鋼管20および外鋼管30についても、同様に円形断面であることに制限されることはない。
【0051】
また、本実施の形態では内鋼管20の充填室(モルタル注入部23)に注入する材料として膨張モルタル4を採用しているが、これに限らず、例えば膨張性を有するコンクリートであってもかまわない。
さらに、内鋼管20と外鋼管30の材軸方向のオーバーラップ長や、内鋼管20と外鋼管30の間隔、外鋼管30の厚さ寸法、さらに縦溝26および横溝27の間隔、位置、外鋼管30のテーパー部30cの傾斜角度などの構成は、鋼管(上部柱2、下部柱3)の大きさ、内鋼管20の膨張量等に応じて適宜、設定することが可能である。
【0052】
また、膨張モルタル4の注入方法に関しては、上述した実施の形態に限定されることはなく、適宜な方法が採用可能であり、例えば、図12に示すように、上部柱2の上部隔壁22の注入孔24に柱梁接合部Tの上側から注入管5が接続され、この注入管5を使用して内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入する方法がある。
さらに、図13に示すように、上部柱2の側面に側面孔28があり、この側面孔28から上部隔壁22の注入孔24に接続される注入管6が設けられており、この注入管6を使用して内鋼管20のモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入する方法もある。
さらにまた、図14に示すように、内鋼管20の脱気孔25と同様の位置に配置された注入孔7からモルタル注入部23に膨張モルタル4を注入し、その膨張モルタル4が脱気孔25からオーバーフローするまで注入する方法であってもよい。
そして、モルタル注入部23(充填室)への膨張モルタル4の充填では、モルタルは上部隔壁22と密着することが好ましいが、多少の隙間が生じても、モルタルの膨張により、その隙間はなくなる。一方、充填室の材軸方向の長さがオーバーラップ長さよりも長い場合には、上部隔壁22とモルタル間に多少の隙間が生じてもモルタルは3次元的に膨張するため、オーバーラップ部の内鋼管20は外側へ膨張する。
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、1C 継手部(無溶接鋼管継手)
2 上部柱(第1鋼管)
3 下部柱(第2鋼管)
4 膨張モルタル(充填材)
20 内鋼管
21 下部隔壁
22 上部隔壁
23 モルタル注入部(充填室)
26 縦溝
27 横溝
30 外鋼管
30c テーパー部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋼管の端部同士を対向配置させて接合する無溶接鋼管継手であって、
一方の第1鋼管の端部内には、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備え、
他方の第2鋼管の端部には、前記内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備え、
前記内鋼管を前記外鋼管に同軸に挿入させた状態で、前記充填室に膨張性を有する充填材を注入することで前記内鋼管を膨張させ、該内鋼管と前記外鋼管とを摩擦接合させる構成としたことを特徴とする無溶接鋼管継手。
【請求項2】
前記内鋼管の内周面及び外周面のうち少なくとも一方面に溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項3】
前記溝は前記内鋼管の軸方向に沿って延びていることを特徴とする請求項2に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項4】
前記溝は前記内鋼管の周方向に沿って延びていることを特徴とする請求項2に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項5】
前記外鋼管の内周面は、材軸方向で中央部が最も径方向外側に位置し、前記中央部の両側には該中央部から離れるに従って漸次前記内鋼管の外周面に近づくテーパー部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無溶接鋼管継手。
【請求項6】
前記内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方に摩擦を増大させるための処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無溶接鋼管継手。
【請求項7】
端部同士を対向配置させた一対の鋼管を無溶接鋼管継手によって接合するための鋼管接合方法であって、
一方の第1鋼管の端部内に、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備える工程と、
他方の第2鋼管の端部に、前記内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備える工程と、
前記内鋼管を前記外鋼管に同軸に挿入する工程と、
前記充填室に膨張性を有する充填材を注入し、前記内鋼管を膨張させ、該内鋼管と前記外鋼管とを摩擦接合させる工程と、
を有することを特徴とする鋼管接合方法。
【請求項1】
一対の鋼管の端部同士を対向配置させて接合する無溶接鋼管継手であって、
一方の第1鋼管の端部内には、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備え、
他方の第2鋼管の端部には、前記内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備え、
前記内鋼管を前記外鋼管に同軸に挿入させた状態で、前記充填室に膨張性を有する充填材を注入することで前記内鋼管を膨張させ、該内鋼管と前記外鋼管とを摩擦接合させる構成としたことを特徴とする無溶接鋼管継手。
【請求項2】
前記内鋼管の内周面及び外周面のうち少なくとも一方面に溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項3】
前記溝は前記内鋼管の軸方向に沿って延びていることを特徴とする請求項2に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項4】
前記溝は前記内鋼管の周方向に沿って延びていることを特徴とする請求項2に記載の無溶接鋼管継手。
【請求項5】
前記外鋼管の内周面は、材軸方向で中央部が最も径方向外側に位置し、前記中央部の両側には該中央部から離れるに従って漸次前記内鋼管の外周面に近づくテーパー部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無溶接鋼管継手。
【請求項6】
前記内鋼管の外周面及び外鋼管の内周面の少なくとも一方に摩擦を増大させるための処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無溶接鋼管継手。
【請求項7】
端部同士を対向配置させた一対の鋼管を無溶接鋼管継手によって接合するための鋼管接合方法であって、
一方の第1鋼管の端部内に、隔壁によって液密に区画された充填室を有する内鋼管を備える工程と、
他方の第2鋼管の端部に、前記内鋼管よりも大きな内径寸法をもつ外鋼管を備える工程と、
前記内鋼管を前記外鋼管に同軸に挿入する工程と、
前記充填室に膨張性を有する充填材を注入し、前記内鋼管を膨張させ、該内鋼管と前記外鋼管とを摩擦接合させる工程と、
を有することを特徴とする鋼管接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−7651(P2012−7651A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142698(P2010−142698)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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