説明

無線タグ読取装置

【課題】故障検出のための独自の構成を設けることなく、読み取りの動作状況を判別することを可能にする。
【解決手段】リーダ12は、ホストPC10からの命令を受信する受信部30と、受信部30によりダミー識別子のセット命令が受信された場合に、ホストPC10から送信されたダミー識別子を記憶するダミー識別子記憶部33と、受信部30により読み取り命令が受信された場合に、無線タグ14に記憶された情報を読み取る無線タグ読取部32と、無線タグ読取部32により無線タグ14から読み取られた情報に、ダミー識別子記憶部33に記憶されたダミー識別子を追加して読み取り結果として送信する送信部34を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに記憶された情報を非接触通信により読み取る無線タグ読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品例えば商品に付けられた無線タグの情報を非接触で読取り、その読取り情報を上位のアプリケーションに渡すRFID(Radio Frequency Identification)システムがある。RFIDシステムは、複数の無線読取装置(リーダ)と、それら複数の無線読取装置からその読み取り結果である無線タグの識別子のリストを取得し、マージ(重複した識別子の除去)やフィルタリング、グループごとの分類などの処理を施すRFIDミドルウェアと、その処理結果をRFIDミドルウェアから受け取り格納するデータベースと、データベースに記憶された読み取り結果を参照するアプリケーションとから構成される。RFIDミドルウェアを含むRFIDシステム全体については、それを構成するモジュール(無線タグ読取装置、ミドルウェア、データベース)それぞれの間のインタフェース仕様が、非特許文献1に開示されているように、国際団体EPCglobalにより標準化されている。
【0003】
このインタフェース仕様に基づいてモジュールを実装することにより、例えばA社製の無線タグ読取装置とB社製のRFIDミドルウェアを接続したり、X社、Y社が互いにそれぞれのデータベースが保持する読み取り結果を参照して活用したりすることができるなどのメリットが得られる。このため、このインタフェース仕様を採用したRFIDシステムが物流・流通分野で広く活用されている。
【0004】
ところで、システム内の機器(モジュール)の故障を検出する方法としては、ネットワーク通信において、端末がその通信がまだ有効であることを示すパケットをハートビートとして定期的に送出し、相手端末はこれが受信されなくなると通信が切断されたものと判断するキープアライブ方式が広く用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、EPCglobalにおいて定められたインタフェース仕様では、無線タグ読取装置からミドルウェアに伝えられる情報にも、ミドルウェアからデータベースに伝えられる情報にも、無線タグ読取装置において発生した異常に関する情報が含まれない。従って、ミドルウェアより上の階層においては、読み取り結果が空(データ無し)であった場合に、無線タグ読取装置の近くに無線タグが存在しないからなのか、無線タグ読取装置が故障しているからなのかの区別ができないという問題がある。
【0006】
また、キープアライブ方式を無線タグ読取装置に適用すれば故障を検出できるが、EPCglobalの仕様によるRFIDシステムにおいてはキープアライブ信号については標準化されていないため相互接続性が保てないという問題がある。また、無線タグ読取装置からのキープアライブ信号は読み取り結果とは別にそれぞれ独立して送信されるため、どの読み取り結果において故障が発生していたかの関連付けが難しいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、故障検出のための独自の構成を設けることなく、読み取りの動作状況を判別することが可能な無線タグ読取装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ホストからの命令を受信する受信手段と、前記受信手段によりダミー識別子のセット命令が受信された場合に、前記ホストから送信された前記ダミー識別子を記憶するダミー識別子記憶手段と、前記受信手段により読み取り命令が受信された場合に、無線タグに記憶された情報を読み取る無線タグ読取手段と、前記無線タグ読取手段により前記無線タグから読み取られた情報に、前記ダミー識別子記憶手段に記憶された前記ダミー識別子を追加して読み取り結果として送信する送信手段ととを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる手段を講じた本発明によれば、故障検出のための独自の構成を設けることなく、読み取りの動作状況を判別することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のRFIDシステムの構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のリーダにおける読み取り命令を受信した場合の動作を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態のホストPC1おけるミドルウェア部20の動作を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態のRFIDシステムの構成を示すブロック図。
【図5】第2実施形態における設定ツール部からリーダに対して送信されるダミー識別子の一例を示す図。
【図6】第2実施形態のリーダにおける読み取り命令を受信した場合の動作を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態のホストPCにおけるミドルウェア部25の動作を示すフローチャート。
【図8】第3実施形態のRFIDシステムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、RFIDシステムは、ホストPC10とネットワークを介してリーダ12(無線タグ読取装置)が接続されている。図1では、1つのリーダ12のみを示しているが、ホストPC10に複数のリーダ12が接続された構成とすることができる。第1実施形態におけるRFIDシステムは、例えばEPCglobalの仕様に従って構成されるものとする。リーダ12は、ホストPC10(ミドルウェア部20)の制御のもとで、一つまたは複数の物品(商品等)のそれぞれに付された無線タグ14に記憶されているタグID(タグ情報)を非接触により読み取る。タグIDは、識別子を表すもので、例えばコード体系を識別するためのヘッダの他、企業コード、商品アイテムコード、商品の製造番号等を表すデータなどが含まれている。
【0012】
ホストPC10は、各種プログラムをプロセッサにより実行することで各機能を実現する。ホストPC10は、リーダ12を制御して一つまたは複数の無線タグ14のそれぞれから情報を読み取るための制御を行うもので、ミドルウェア部20、アプリケーション部21、データベース22、及び設定ツール部23の各機能が設けられる。
【0013】
ミドルウェア部20は、システム管理者によって設定されたアプリケーション部21からの読み取り設定情報に基づいて、リーダ12に対して各種命令を送信して無線タグ14それぞれからの情報の読み取りを制御すると共に、リーダ12によって読まれた無線タグ14それぞれに関する情報を処理する。読み取り設定情報には、無線タグ14の読み取りに使用するリーダの指定、無線タグ14から読み取った情報のフィルタリングやグルーピングの条件、無線タグ読み取りの時間間隔などを指定する情報等が含まれる。ミドルウェア部20は、リーダ12から受信される読み取り結果に、一つまたは複数の無線タグ14のそれぞれから読み取られた無線タグごとの識別子(タグID)とは別のダミー識別子が含まれているか否かを検査することで、リーダ12の動作状況を判断する機能を有する。
【0014】
アプリケーション部21は、システム管理者からの指示に応じた読み取り設定情報の作成、この読み取り設定情報のミドルウェア部20への通知、また読み取り設定情報に基づいてリーダ12によって無線タグ14のそれぞれから読み取られた情報に対する処理などを実行する。
【0015】
データベース22は、ミドルウェア部20により処理された読み取り結果を記憶する。
【0016】
設定ツール部23は、システム管理者がリーダ12に対して各種設定を行うための機能であり、入力装置を通じてシステム管理者により入力された指示に応じた各種設定を行い、リーダ12(受信部30)に送信する。第1実施形態では、リーダ12における動作状況を判別するために使用されるダミー識別子が設定されてリーダ12に送信される。ダミー識別子は、無線タグ14として読み取られる可能性がない架空の識別子とすることが好ましい。
【0017】
一方、リーダ12は、ホストPC10(ミドルウェア部20)の制御のもとで、リーダの周囲に存在する一つまたは複数の無線タグ14のそれぞれに記憶された情報を非接触により読み取るもので、図1に示すように、受信部30、命令判別部31、無線タグ読取部32、ダミー識別子記憶部33、送信部34、及びアンテナ35が設けられている。
【0018】
受信部30は、ホストPC10から送信される各種命令やデータを、ネットワークを通じて受信する。
【0019】
命令判別部31は、受信部30により受信された命令の種類を判別し、例えば無線タグ読取部32に対する読み取り処理の実行や、ダミー識別子記憶部33に対するホストPC10から受信されたダミー識別子の記憶などを指示する。
【0020】
無線タグ読取部32は、命令判別部31によりホストPC10からの命令が読み取り命令であることが判別された場合に、アンテナ35を通じて無線タグ14のそれぞれに記憶された情報(タグID)の読み取りを実行する。
【0021】
ダミー識別子記憶部33は、命令判別部31によりホストPC10からの命令がホストPC10(設定ツール部23)からのダミー識別子のセット命令であることが判別された場合に、ホストPC10から送信されたダミー識別子を記憶する。
【0022】
送信部34は、無線タグ読取部32により無線タグ14のそれぞれから読み取られた情報(タグIDが示す識別子)からなるリストを作成し、そのリストにさらにダミー識別子記憶部33に記憶されたダミー識別子を追加して読み取り結果としてホストPC10(ミドルウェア部20)に送信する。
【0023】
次に、第1実施形態におけるRFIDシステムの動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
システム管理者は、ホストPC10において設定ツール部23を利用して、リーダ12に提供するダミー識別子を設定する。このダミー識別子は、リーダ12に接続されたアンテナ35から読まれる可能性がないものから選択することが望ましい。設定ツール部23は、システム管理者の指示によりダミー識別子の送信が指示されると、設定されたダミー識別子と共にセット命令をリーダ12に送信する。
【0024】
命令判別部31は、受信部30によって受信された命令を判別し、ダミー識別子のセット命令であった場合には、ダミー識別子記憶部33にダミー識別子と共に同ダミー識別子のセット命令を送信する。
【0025】
ダミー識別子記憶部33は、命令判別部31を介して受信されたダミー識別子を記憶する。なお、ダミー識別子は、一つである必要はなく、複数個記憶するようにしてもよい。例えば、ダミー識別子記憶部33に複数のダミー識別子を累積して記憶するようにしても良いし、ホストPC10の設定ツール部23から複数のダミー識別子を一括して受信して記憶するようにしても良い。
【0026】
システム管理者は、設定ツール部23を用いたダミー識別子の設定を完了すると、ミドルウェア部20を起動する。ミドルウェア部20は、リーダ12に対して無線タグ14の読み取り命令を送信する。
【0027】
図2は、リーダ12における読み取り命令を受信した場合の動作を示すフローチャートである。
リーダ12は、ミドルウェア部20から送信された命令を受信部30により受信し、命令判別部31により命令の種類を判別する。命令判別部31は、読み取り命令が受信されたことを判別すると(ステップA1、Yes)、無線タグ読取部32に対して読み取り処理の実行を通知する。
【0028】
無線タグ読取部32は、命令判別部31からの通知に応じて、アンテナ35の周囲に存在する一つまたは複数の無線タグ14のそれぞれから情報を読み取るための探索処理を実行する(ステップA2)。これにより無線タグ読取部32は、アンテナ35からの探索可能範囲(通信可能範囲)に存在する無線タグ14を探索して、無線タグ14のそれぞれに記憶された識別子を含む情報(タグID)の読み取りを実行する。
【0029】
無線タグ読取部32は、探索可能範囲(通信可能範囲)に存在する無線タグ14のそれぞれから情報を取得して探索処理が終了すると、各無線タグ14のそれぞれから読み取られた識別子からなるリストを送信部34に送る。
【0030】
送信部34は、無線タグ読取部32から識別子のリスト(空(データ無し)の場合を含む)が送られてくると、ダミー識別子記憶部33にアクセスし、記憶されているダミー識別子を読み出して識別子のリストに追加する(ステップA3)。
【0031】
送信部34は、ダミー識別子が追加されたリストを読み取り結果としてホストPC10(ミドルウェア部20)に送信する(ステップA4)。
【0032】
従って、リーダ12は、無線タグ読取部32によりすくなくとも一つの無線タグ14から情報が読み取られた場合には、この読み取られた情報(識別子)とダミー識別子とを含むリストを送信し、無線タグ14から情報を読み取れなかった場合(アンテナ35の探索可能範囲に一つも無線タグ14が存在しなかった場合)には、ダミー識別子のみを含むリストを送信することになる。
【0033】
図3は、ホストPC10におけるミドルウェア部20の動作を示すフローチャートである。
ホストPC10においては、ミドルウェア部20が読み取り結果(識別子のリスト)を受信すると(ステップB1)、このリストにダミー識別子が含まれているか否かを検査する(ステップB2)。
【0034】
ミドルウェア部20は、リストにダミー識別子が含まれている場合には(ステップB3、Yes)、リーダ12における読み取りが正常に行われたものと判別する。すなわち、リーダ12が正常に読み取り動作を実行して、その読み取り結果とするリストが正常に受信された場合には、そのリストには無線タグ14から読み取られた識別子が存在しなかったとしても最低限ダミー識別子が記録されるはずであるので、読み取りが正常に行われたものと判別できる。
【0035】
この場合、ミドルウェア部20は、読み取り結果のリストからダミー識別子を取り除き、実際にアンテナ35の周囲に実在した無線タグ14から読み取られた識別子のみをデータベース22に格納する(ステップB5)。
【0036】
一方、読み取り結果のリストにダミー識別子が含まれていない場合、すなわち読み取り結果が完全に空(データ無し)であれば、それはリーダ12における障害の発生か、リーダ12とホストPC10の間の通信路の障害であると判断できる(ステップB3、No)。これらの異常が発生したと判断した場合には、ミドルウェア部20は、システム管理者に異常発生の警告を通知するなどの処理を行う(ステップB4)。例えば、ミドルウェア部20は、ホストPC10の表示画面中に警告メッセージを表示させたり、あるいはスピーカから警告音声を出力させたりする。
【0037】
これにより、システム管理者は、リーダ12を通じた無線タグ14からの情報の読み取りに障害が発生したことを認識することができる。
【0038】
なお、前述した説明では、ミドルウェア部20において異常の発生を判断しているが、アプリケーション部21によって異常発生を判断する処理を実行させるようにしても良い。この場合、ミドルウェア部20は、リーダ12から受信されたダミー識別子も含めた読み取り結果をデータベース22に格納する。アプリケーション部21は、データベース22に格納された読み取り結果を参照して、前述のようにして、ダミー識別子が含まれているか検査することで異常の判断を行う。
【0039】
このようにすると、データベース22に蓄積された毎回の読み取り実行結果のそれぞれに、その読み取りが正常に行われたものであったか否かを示す情報が含まれているため、後からデータベース22を参照したときに、いつ異常が発生したのかをアプリケーション部21が容易に知ることができるというメリットがある。
【0040】
また、第1実施形態におけるRFIDシステムにおいては、無線タグ14からの情報の読み取り時に必ずダミー識別子を設定しなければならないものではない。読み取りの異常を検出する必要がない場合は、設定ツール部23からのダミー識別子の設定を行わない。リーダ12は、一般的なリーダとして動作し、ミドルウェア部20からの読み取り命令に応じて読み取り処理を実行し、ダミー識別子を含まない読み取り結果のリストをホストPC10に送信する。また、第1実施形態におけるリーダ12の各機能部は、ハードウェアとして実現するだけでなく、コンピュータの上で動作するソフトウェア(プログラム)により実現される機能とすることも可能である。
【0041】
このようにして、第1実施形態におけるリーダ12(無線タグ読取装置)では、一つまたは複数の無線タグ14それぞれに対する読み取り結果に、設定ツール部23により設定されたダミー識別子を付加してホストPC10に送信するので、ミドルウェア部20やデータベース22、あるいはアプリケーション部21のモジュールでは、読み取り結果の中にダミー識別子が含まれているか否かを検査することで、リーダ12の動作状況を判別することができる。すなわち、読み取り結果が空の場合に、その理由がリーダ12において正常に読み取り処理が行われたが周囲に無線タグ14が存在しなかったためなのか、あるいは、周囲に無線タグ14が存在したが、リーダ12そのものもしくはリーダ12とホストPC10(ミドルウェア部20)との間の通信路に異常が発生したためなのかを判別することができる。第1実施形態におけるRFIDシステムでは、リーダ12の動作状況を通知するための信号(キープアライブ信号等)のための機能など、EPCglobalで規定されたインタフェース仕様を拡張することなく、リーダ12における動作状況をホストPC10において認識することができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態におけるRFIDシステムの構成を示すブロック図である。
図4に示すように、第2実施形態におけるリーダ12aには、受信部30、命令判別部41、無線タグ読取部42、ダミー識別子記憶部43、送信部44、読取状態検査部45を有している。すなわち、第2実施形態のリーダ12aは、第1実施形態の説明で用いた図1に示す構成に、さらに無線タグ読取部42における読み取り処理の状態を検査する読取状態検査部45が設けられている。なお、図1に示す構成と同じ名称を付した機能部は、基本的に第1実施形態と同様の動作を実行するものとして詳細な説明を省略する。異なる部分について以下に説明する。
【0043】
次に、第2実施形態におけるRFIDシステムの動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
第2実施形態は、システム管理者が設定ツール23を用いてダミー識別子記憶部43に設定するダミー識別子を設定する場合に、読み取り処理時に発生する異常の種類(情報の読み取り不良の理由)に応じてそれぞれ異なる複数のダミー識別子を設定することができる。ダミー識別子を設定した後の無線タグ読取部42に対して読み取り命令を送信する処理については第1実施形態と同様であるものとする。
【0044】
図5には、設定ツール部23からリーダ12aに対して送信されるダミー識別子の一例を示している。例えば、図5では、リーダ12aにおいて発生する可能がある異常の種類「電波干渉」に対して、パターンAによるダミー識別子が設定される。その他の異常の種類に対しても、パターンB,Cのそれぞれ異なるダミー識別子が設定される。なお、ダミー識別子が設定される異常の種類(情報の読み取り不良の理由)は、リーダ12aの読取状態検査部45によって検査可能なものとする。
【0045】
図6は、リーダ12における読み取り命令を受信した場合の動作を示すフローチャートである。
リーダ12は、ミドルウェア部20から送信された命令を受信部30により受信し、命令判別部31により命令の種類を判別する。命令判別部31は、読み取り命令が受信されたことを判別すると(ステップC1、Yes)、無線タグ読取部32に対して読み取り処理の実行を通知する。
【0046】
無線タグ読取部32は、命令判別部31からの通知に応じて、アンテナ35の周囲に存在する一つまたは複数の無線タグ14のそれぞれから情報を読み取るための探索処理を実行する(ステップC2)。これにより無線タグ読取部32は、アンテナ35からの探索可能範囲(通信可能範囲)に存在する一つまたは複数の無線タグ14を探索して、無線タグ14のそれぞれに記憶された識別子を含む情報(タグID)の読み取りを実行する。
【0047】
無線タグ読取部32は、探索可能範囲(通信可能範囲)に存在する無線タグ14それぞれから情報を取得して探索処理が終了すると、各無線タグ14それぞれから読み取られた識別子からなるリストを作成して送信部44に送信する(ステップC3)。さらに、無線タグ読取部42は、探索処理に関する情報、例えば無線タグ14それぞれから返送された電波の受信レベルや、アンテナ35において計測された周囲の電波の干渉状態や、読み取り結果を一時的に格納するのに用いるバッファ用のメモリ領域の空きといった情報を読取状態検査部45に送る。
【0048】
読取状態検査部45は、無線タグ読取部42から取得した情報に基づいて読み取り処理の状態を検査して読み取り不良の状態であるか否かを判断する(ステップC4)。例えば、周囲の電波の干渉が多い場合は読み取りであって、その理由は電波干渉であると判断する。
【0049】
送信部34は、無線タグ読取部32から識別子のリスト(空(データ無し)の場合を含む)が送られてくると、読取状態検査部45にアクセスする。読取状態検査部45は、送信部44からのアクセスがあると、読み取り不良と判断している場合には(ステップC5、Yes)、その読み取り不良の理由(例えば電波干渉)に対応するダミー識別子をダミー識別子記憶部43から読み出して送信部44に返す。
【0050】
送信部44は、読取状態検査部45からダミー識別子が返された場合には、無線タグ読取部42から送られた識別子のリストにダミー識別子を追加する(ステップC6)。
【0051】
送信部34は、ダミー識別子が追加されたリストを読み取り結果としてホストPC10(ミドルウェア部20)に送信する(ステップC7)。
【0052】
一方、読取状態検査部45は、読み取り不良の状態にはないと判断している場合には(ステップC5、No)、送信部44からのアクセスに対してダミー識別子を返さないものとする。
【0053】
送信部44は、無線タグ読取部42から送られた識別子のリストをホストPC10(ミドルウェア部25)に対して送信する(ステップC8)。
【0054】
図7は、ホストPC10aにおけるミドルウェア部25の動作を示すフローチャートである。
ホストPC10aにおいては、ミドルウェア部25が読み取り結果(識別子のリスト)を受信すると(ステップD1)、このリストにダミー識別子が含まれているか否かを検査する(ステップD2)。
【0055】
ミドルウェア部25は、リストにダミー識別子が含まれている場合には(ステップD3、Yes)、ダミー識別子の種類に基づいてリーダ12によって検出された読み取り不良の理由を判別する(ステップD4)。
【0056】
ミドルウェア部25は、読み取り結果のリストからダミー識別子を取り除き、リストに記録された識別子のみをデータベース22に格納する(ステップD5)。
【0057】
そして、ミドルウェア部25は、読み取り不良の理由に応じた処理を実行する(ステップD6)。例えば、第1実施形態と同様にして警告を出力する。さらに第2実施形態では、ミドルウェア部25は、例えば読み取り不良の理由が電波干渉である場合には、すぐに次の読み取り命令を発行しても再び干渉を受けて失敗する可能性が高いことを考慮して、次の読み取り命令まで時間を空けた後に、再度、読み取り命令を送信する。このように、ホストPC10aからのリストには読み取り不良の理由に応じたダミー識別子が付加されているので、読み取り不良発生時にきめ細かな対応が可能になる。
【0058】
一方、リストにダミー識別子が含まれていない場合には、正常に読み取りが行われたものとして、ミドルウェア部25は、リストに記録された識別子をデータベース22に格納する。
【0059】
なお、前述した第2実施形態では、読取状態検査部45によって読み取り不良として判断されていない場合には、識別子のリストにダミー識別子を追加しないものとしているが、第1実施形態と同様にして、読み取り不良の理由と対応付けられていない特定のダミー識別子をリストに付加して送信するようにしても良い。
【0060】
また、第1実施形態において説明した各変形例、例えばアプリケーション部21において異常を判断する等の処理を第2実施形態に適用することも可能である。
【0061】
このようにして、第2実施形態によれば、第1実施形態の構成夜効果に加えて、リーダ12において異常等が発生した場合に、その異常の理由に応じてそれぞれ異なるダミー識別子が付加されるので、ミドルウェア部20やアプリケーション部21によって異常の発生を検出することができるだけでなく、その理由も知ることができる。
【0062】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態においては、リーダ12,12aに対してダミー識別子を設定する設定ツール部23をホストPC10,10aに設けているが、図8に示すような、RFIDのシステム構成において実現することも可能である。
【0063】
図8に示すRFIDシステムでは、複数のリーダ制御用PC501,…,50mがホストPC10bの制御のもとで動作している。
【0064】
リーダ制御用PC501,…,50mには、それぞれ第1及び第2実施形態と同様に機能するミドルウェア部501a,…,50maが設けられている。第3実施形態では、複数のリーダ12b1,12b2,…,12bnとネットワークを介して接続された設定用PC60を設け、設定用PC60において設定ツール部61を動作させる。
【0065】
設定ツール部61は、複数のリーダ12b1,12b2,…,12bnに対して、共通するダミー識別子を設定したり、個別に異なるダミー識別子などを設定したりすることができるようにする。
【0066】
第3実施形態におけるRFIDシステムでは、各リーダ制御用PC501,…,50mがそれぞれダミー識別子を設定するのではなく、複数のリーダ12b1,12b2,…,12bnに対して、設定用PC60(設定ツール部61)によって共通してダミー識別子の設定が可能となるので、システム管理者によるダミー識別子の管理負担を軽減することができる。
【0067】
なお、前述した説明では、ホストPC10からダミー識別子のセット命令であった場合に、無線タグ14から読み取った情報(識別子)にダミー識別子を追加して読み取り結果として送信するものとしているが、ダミー識別子のセット命令を受信した場合以外の状況においてダミー識別子を追加して読み取り結果として送信するようにしても良い。例えば、定常的にダミー識別子を追加して読み取り結果として送信したり、一定期間のみダミー識別子を追加したり、さらには読み取り設定により予め指定された特定の情報を含む場合(例えば、特定の企業コードを有するタグIDの場合など)にダミー識別子を追加したりすることが可能である。特定の情報を含む場合にダミー識別子を付加する場合には、ミドルウェア部20から無線タグ読取部32,42に対象とする情報を示すデータが通知されるものとする。このようにして、リーダ12(無線タグ読取装置)について動作状況の確認が必要な状況に合わせて、ダミー識別子を利用した確認が可能となる。
【0068】
さらに、前記実施形態では、リーダ12の内部に発明を実施する各機能が設けられているものとして説明をしたが、これに限らず同様の機能を実現するためのプログラムをネットワークからダウンロードしても良いし、同様の機能を実現するプログラムが記憶された記憶媒体からインストールしてもよい。記憶媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記憶媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0069】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10,10a,10b…ホストPC、12,12a,12b1…リーダ、14…無線タグ、20,25…ミドルウェア部、21…アプリケーション部、22…データベース、23…設定ツール部、30…受信部、31,41…命令判別部、32,42…無線タグ読取部、33,43…ダミー識別子記憶部、34,44…送信部、35…アンテナ、45…読取状態検査部、501,50m…リーダ制御用PC、501a,50ma…ミドルウェア部、60…設定用PC、61…設定ツール部。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0071】
【非特許文献1】EPCglobal標準仕様、[online]、[平成21年9月4日検索]、インターネット<http://www.epcglobalinc.org/standards>

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストからの命令を受信する受信手段と、
前記受信手段によりダミー識別子のセット命令が受信された場合に、前記ホストから送信された前記ダミー識別子を記憶するダミー識別子記憶手段と、
前記受信手段により読み取り命令が受信された場合に、無線タグに記憶された情報を読み取る無線タグ読取手段と、
前記無線タグ読取手段により前記無線タグから読み取られた情報に、前記ダミー識別子記憶手段に記憶された前記ダミー識別子を追加して読み取り結果として送信する送信手段と
を具備したことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記無線タグ読取手段による前記無線タグからの情報の読み取り状態を検査する読取状態検査手段をさらに備え、
前記ダミー識別子には読み取り状態別の複数のダミー識別子が記憶され、
前記送信手段は、前記読取状態検査手段による検査により判別された読み取り状態に応じた前記ダミー識別子を追加することを特徴とする請求項1記載の無線タグ読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−65460(P2011−65460A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215964(P2009−215964)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】