説明

無線タグ通信装置

【課題】複数の無線タグ通信装置相互における混信や無線タグ側における混信を抑制し、情報送受信の信頼性を向上する。
【解決手段】リーダ1は、所定の周波数範囲内において、無線タグ1に対し無線通信を実行可能なリーダアンテナユニット3と、受信された電波の受信信号強度を検出するRSSI回路226とを備える。検出される受信信号強度Vsに基づき、複数のチャンネルすべてについての使用状況が判定され、複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定されたか、若しくは、複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定されたかに応じて通信動作が決定される。そして、複数のチャンネルのうち使用するチャンネルが選択され、その選択されたチャンネルを用いて決定された通信動作で無線タグTと情報送受信が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ通信システムに係わり、特に、無線タグ通信装置の相互干渉抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグに対し無線通信を行う無線タグ通信装置が既に知られている。複数の無線タグ通信装置が通信を行う場合の干渉抑制に関する従来技術として、例えば、特許文献1に記載の無線タグ通信システムがある。
【0003】
この従来技術の無線タグ通信システムに備えられた無線タグ通信装置は、受信される干渉信号のレベルを判定し、その干渉信号のレベルをしきい値以下とするチャンネル及び偏波方向を決定する。そして、その決定したチャンネル及び偏波方向を用いて、無線タグ通信装置が無線タグとの通信を実行する。これにより、1つの無線タグ通信装置が通信を開始しようとするとき、他の無線タグ通信装置に使用されていない空きチャンネルを検出できる可能性を高め、複数の無線タグ通信装置相互の干渉を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2006/082612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、1つの無線タグ通信装置が通信を開始しようとするとき、複数のチャンネルのうち不使用のチャンネルがあれば、当該チャンネルを使用して情報送受信を行う。しかしながらこの場合、同時に動作している複数の無線タグ通信装置相互の混信を抑制することはできるものの、それら複数の無線タグ通信装置からの電波を受信可能な無線タグ側で混信が発生するおそれがあった。この結果、無線タグ通信装置と無線タグ通信との情報送受信の信頼性を向上することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、複数の無線タグ通信装置相互における混信や無線タグ側における混信を抑制し、情報送受信の信頼性を向上できる無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、複数のチャンネルを含む所定の周波数範囲内において、無線タグに対し無線通信を実行可能なアンテナ手段と、前記アンテナ手段により受信された電波の受信信号強度を検出する強度検出手段と、前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により、前記複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定されたか、若しくは、前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定されたか、に応じて、通信動作を決定する通信動作決定手段と、当該複数のチャンネルのうち使用するチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、前記チャンネル選択手段により選択された前記チャンネルを用いて、前記アンテナ手段により、前記通信動作決定手段が決定した通信動作で無線タグと情報送受信を行う送受信制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の無線タグ通信装置においては、無線通信を実行するに際して、第1判定手段が、強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する。通信動作決定手段は、第1判定手段により、複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定されたか、あるいは、複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定されたかに応じ、通信動作を決定する。そして、選択されたチャンネルを用いて、送受信制御手段が、通信動作決定手段が決定した通信動作で無線タグに対し情報送受信を行う。
【0009】
以上のようにして、本願第1発明においては、所定の周波数範囲に含まれる複数のチャンネルのすべてについて不使用を確認した後に、情報送受信を実行するか、若しくは、少なくとも一部のチャンネルが使用されている状態で送信出力を小さくして通信を実行することが可能となる。これにより、周波数選択機能のない無線タグ側において混信が生じるのを抑制することができる。この結果、複数のチャンネルのうち不使用のチャンネルを確認し当該チャンネルを使用して情報送受信を行う従来技術に比べ、通信の確実性を向上することができる。したがって、複数の無線タグ通信装置を含む通信システム全体として、情報送受信の信頼性を向上することができる。
【0010】
第2発明は、上記第1発明において、前記通信動作決定手段は、前記第1判定手段により前記複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定された場合に、前記送受信制御手段により通信を行うよう決定することを特徴とする。
【0011】
すべてのチャンネルが使用されていないと判定された場合に、通信を行うことで他のリーダがタグと通信をしているのに対して影響を与えないようにすることができる。
【0012】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記通信動作決定手段は、前記第1判定手段により前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定された場合、前記強度検出手段の結果に基づいて前記送受信制御手段の送信出力を決定することを特徴とする。
【0013】
少なくとも一部のチャンネルが使用されていると判定された場合も、送信出力を小さくして通信を実行することで、他のリーダがタグと通信する際に与える影響を小さくすることができる。
【0014】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、所定の時間、前記アンテナ手段による無線通信を禁止する禁止制御手段を備え、前記送受信制御手段による情報送受信が完了した場合に、前記禁止制御手段により前記アンテナ手段による無線通信を禁止すること特徴とする。
【0015】
情報送受信完了後は、禁止制御手段により所定の時間無線通信を行わないようにするので、他の無線タグ通信装置が通信できなくなるのを防止することができる。
【0016】
第5発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記アンテナ手段での無線通信で使用する前記チャンネルを切り替えるチャンネル切替手段をさらに有し、前記第1判定手段は、前記チャンネル切替手段により切り替えられる各チャンネルごとに、前記強度検出手段により検出される受信信号強度が使用状況確認用しきい値より大きいかどうかを判定する。
【0017】
複数のチャンネルを切り替えながらチャンネルごとに判定を行うことにより、受信側の回路の構成を簡素化することができ、従来から使用されている汎用のキャリアセンス回路を流用することも可能となる。
【0018】
第6発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記第1判定手段は、前記強度検出手段により検出される受信信号強度が使用状況確認用しきい値より大きいかどうかを、前記複数のチャンネルについて一括して判定することを特徴とする。
【0019】
全チャンネルについて一括して判定を行うことにより、複数のチャンネルを切り替えながらチャンネルごとに判定を行う場合に比べ、迅速に判定を行うことができる。
【0020】
第7発明は、上記第5又は第6発明において、前記使用状況確認用しきい値よりも小さいチャンネル選択用しきい値を用いて、前記強度検出手段により検出される受信信号強度が、当該チャンネル選択用しきい値よりも大きいかどうかを判定する第2判定手段をさらに有し、前記チャンネル選択手段は、前記複数のチャンネルのうち、前記第2判定手段により、前記受信信号強度が前記チャンネル選択用しきい値以下であると判定されたチャンネルを、使用するチャンネルとして選択することを特徴とする。
【0021】
通常用いられるチャンネル選択用しきい値は、複数の無線タグ通信装置どうしの間隔が離れていて相互に干渉し合う場合を想定し、比較的低い値に設定される場合が多い。無線タグにおける干渉の発生を想定した場合、無線タグ通信装置と無線タグとの間ではより強力な電波が必要であるため、使用状況確認用しきい値としては、上記チャンネル選択用しきい値よりも大きな値を用いることが好ましい。
【0022】
本願第7発明においては、上記に基づき、チャンネル選択用しきい値<使用状況確認用しきい値の関係となるような、両しきい値を用いることにより、第1判定手段及び第2判定手段において合理的かつ有効な判定を行うことができる。
【0023】
第8発明は、上記第1乃至第7発明のいずれかにおいて、前記第1判定手段により、前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定された場合に、前記アンテナ手段のアンテナ属性を切り替えるアンテナ切替手段をさらに有し、強度検出手段は、前記アンテナ切替手段により前記アンテナ属性が切り替えられた後の前記アンテナ手段での受信信号強度を検出し、前記第1判定手段は、前記アンテナ切替手段により前記アンテナ属性が切り替えられた後の、前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定することを特徴とする。
【0024】
アンテナ手段のアンテナ属性が複数の態様に切り替え可能となっている場合、各態様ごとに通信範囲や通信対象となる無線タグが異なるため、各態様ごとに使用状態を確認することが好ましい。そこで、本願第8発明では、第1判定手段によって複数チャンネルのいずれかが使用されていると判定された場合には、アンテナ切替手段がアンテナ属性を切り替える。そして、その切り替えられた後のアンテナ手段の受信信号強度を強度検出手段が検出し、その検出した強度に基づき、第1判定手段が複数のチャンネルすべての使用状況を判定する。これにより、複数の無線タグ通信装置相互の混信発生及び無線タグ側の混信発生を抑制できるアンテナ態様を見つけ出し、当該アンテナ態様において信頼性の高い情報送受信を行うことができる。
【0025】
第9発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、他の無線タグ通信装置と通信を行うためのリーダ通信手段と、前記リーダ通信手段を用いて前記他の無線タグ通信装置に対し無線通信の停止を要求する停波要求信号を送信する停波要求送信手段と、前記停波要求手段からの前記停波要求信号に対応した、前記他の無線タグ通信手段からの通信状態信号を受信する通信状態受信手段とをさらに有し、前記第1判定手段は、前記通信状態受信手段が前記通信状態信号を受信しなかった場合に、前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定することを特徴とする。
【0026】
本願第9発明においては、リーダ通信手段を用いて、複数の無線タグ通信装置相互がコミュニケーションをとり、協調動作を行う。このような協調動作を行うことにより、1つの無線タグ通信装置が無線通信を実行する際、協調する他の無線タグ通信装置は無線通信を停止するので、迅速かつ確実に全チャンネルの不使用を確認し情報送受信を開始することができる。この結果、情報伝達効率を向上することができる。また、複数の無線タグ通信装置相互がコミュニケーションをとって協調動作を行うことにより、複数の無線タグ通信装置を制御するための上位コントローラを設ける必要がない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の無線タグ通信装置相互における混信や無線タグ側における混信を抑制し、情報送受信の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のリーダを、無線タグが貼付されている多数の書籍の管理に適用した場合の一例を表す図である。
【図2】リーダの概略構成を表す機能ブロック図である。
【図3】リーダにおけるRF通信制御部及びリーダアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図4】CPUの制御手順を表すフローチャートである。
【図5】複数のチャンネルについて一括して判定を行う変形例における、RF通信制御部及びリーダアンテナユニットの詳細構成を表す機能ブロック図である。
【図6】CPUの制御手順を表すフローチャートである。
【図7】複数のリーダ間で通信を行い協調する変形例における、リーダの概略構成を表す機能ブロック図である。
【図8】複数のリーダで協調する動作を説明する説明図である。
【図9】CPUの制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1により、本発明の一実施形態の無線タグ通信装置としてのリーダ1の使用態様の一例を説明する。
【0031】
図1において、この例では、図書館の書棚Sに多数の書籍Bが収納されている。各書籍Bの背表紙には無線タグTが貼付されている。無線タグTには、書籍名、著者名等の書籍情報が記憶されている。この例では、2台のリーダ1,1が、所定の近傍する範囲内で、それぞれ書籍Bに貼付された無線タグTの探索を行っている。リーダ1は、無線通信が可能な領域Aに存在する無線タグTに対し情報送受信を行い、上記書籍情報を取得する。
【0032】
リーダ1は、この例では、携帯型すなわちいわゆるハンドヘルドタイプの無線通信装置であり、略直方体形状の筐体2aを有している。筐体2aには、偏波面が縦方向と横方向とで切り替え可能なリーダアンテナユニット3が設けられているとともに、操作部7及び表示部8が設けられている。
【0033】
リーダ1の概略システム構成を図2を用いて説明する。
【0034】
リーダ1のシステムは、上記筐体2aの内部に設けられた本体制御部2と、アンテナ手段としてのリーダアンテナユニット3とから成る。
【0035】
リーダアンテナユニット3は、複数のチャンネルを含む所定の周波数範囲、例えば法規の許す全帯域内において、無線タグTに対し無線通信を行う(詳細は後述)ための電波の送受信を行う。リーダアンテナユニット3は、この例では、マイクロストリップアンテナ11と、このマイクロストリップアンテナ11の偏波面を切り替えるための切替スイッチ回路12とを有する。
【0036】
本体制御部2は、CPU4と、不揮発性記憶装置5と、メモリ6と、上記操作部7と、上記表示部8と、RF通信制御部9とを備えている。
【0037】
無線タグTは、タグアンテナ151とIC回路部150とを備えた無線タグ回路部Toを有している。無線タグTは、無線タグ回路部Toを、特に図示しない基材などに設けて上記書籍Bに貼付可能にしたものである。前述の図1において、無線タグTは、タグアンテナ151の長手方向の向きが縦方向と横方向のいずれかの方向に向く姿勢で各書籍Bに貼付されている。この例では、ダイポールアンテナであるタグアンテナ151の長手方向を含む面が電波の電界に対する感度が高くなる。この面を偏波面という。
【0038】
RF通信制御部9は、上記リーダアンテナユニット3を介し、上記無線タグ回路部ToのIC回路部150に記憶された、タグIDを含む情報へアクセスする。
【0039】
不揮発性記憶装置5は、ハードディスク装置やフラッシュメモリからなり、書籍Bの管理状況などの各種情報を記憶する。メモリ6は、例えばRAMやROM等から構成される。操作部7は、使用者からの指示や情報が入力される。表示部8は各種情報やメッセージを表示する。
【0040】
CPU4は、上記メモリ6内のRAMの一時記憶機能を利用しつつ上記不揮発性記憶装置5に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってリーダ1全体の各種制御を行う。またCPU4は、無線タグ回路部ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路部ToのIC回路部150へアクセスするための各種コマンド等を生成する。
【0041】
上記RF通信制御部9及びリーダアンテナユニット3の詳細構成を図3を用いて説明する。
【0042】
RF通信制御部9は、送信部212と、受信部213と、送受分離器214とから構成される。
【0043】
送信部212は、リーダアンテナユニット3を介し、無線タグ回路部ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための質問波を生成するブロックである。送信部212は、水晶振動子215Aと、Phase Locked Loop(PLL)215Bと、Voltage Controlled Oscillator(VCO)215Cと、送信乗算回路216と、可変送信アンプ217とを備えている。
【0044】
水晶振動子215Aは、基準周波数を発生する。PLL215Bは、水晶振動子215Aにより発生した周波数を元に、VCO215Cの出力する搬送波の周波数が所定周波数となるようにCPU4の命令に基づき制御する。VCO215Cは上記PLL215Bによって発生される制御電圧に基いて決められた周波数の搬送波を出力する。なお、発生される搬送波の周波数としては、例えばUHF帯、マイクロ波帯、あるいは短波帯の周波数が用いられる。
【0045】
送信乗算回路216は、CPU4から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調する。この例では、送信乗算回路216は、CPU4からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調を実行する。なお、このような振幅変調の場合、送信乗算回路216に代え、増幅率可変アンプ等を用いてもよい。
【0046】
可変送信アンプ217は、送信乗算回路216により変調された変調波を増幅する。この例では、可変送信アンプ217は、CPU4からの「TX_PWR」信号によって決定される増幅率により、増幅を行う。そして、送信アンプ217の出力は、送受分離器214を介し、マイクロストリップアンテナ11に伝達されて、質問波としてマイクロストリップアンテナ11から放射され、無線タグ回路部ToのIC回路部150に供給される。なお、質問波は上記のように変調した信号すなわち変調波に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0047】
受信部213は、リーダアンテナユニット3により受信された無線タグ回路部Toからの応答波を入力する。受信部213は、送受分離器214と、バンドパスフィルタ227と、I相受信乗算回路218と、I相ローパスフィルタ219と、I相受信アンプ221と、I相リミッタ220と、移相器227と、Q相受信乗算回路222と、Q相ローパスフィルタ223と、Q相受信アンプ225と、Q相リミッタ224と、強度検出手段としてのReceived Signal Strength Indicator(RSSI)回路226とを備えている。
【0048】
I相受信乗算回路218は、マイクロストリップアンテナ11で受信され送受分離器214及びバンドパスフィルタ227を介して入力された、無線タグ回路部Toからの応答波と上記発生させられた搬送波とを乗算して復調する。
【0049】
I相ローパスフィルタ219は、I相受信乗算回路218の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。I相受信アンプ221は、I相ローパスフィルタ219の出力を増幅する。I相リミッタ220は、I相受信アンプ221の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0050】
移相器227は、前述のようにして発生した搬送波の位相を90°遅らせる。Q相受信乗算回路222は、上記リーダアンテナユニット3で受信された無線タグ回路部Toからの応答波と、上記移相器227により位相を90°遅らせた搬送波とを乗算する。Q相ローパスフィルタ223は、Q相受信乗算回路222の出力から必要な帯域の信号のみを取り出す。Q相受信アンプ225は、Q相ローパスフィルタ223の出力を増幅する。Q相リミッタ224は、Q相受信アンプ225の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換する。
【0051】
I相リミッタ220から出力される信号「RXS−I」とQ相リミッタ224から出力される信号「RXS−Q」とは、上記CPU4に入力されて処理される。I相受信アンプ221及びQ相受信アンプ225の出力は、RSSI回路226にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」がCPU4に入力される。上記のようにして、リーダ1では、I−Q直交復調によって無線タグ回路部Toからの応答波の復調が行われる。
【0052】
リーダアンテナユニット3は、前述したように、マイクロストリップアンテナ11と、このマイクロストリップアンテナ11の偏波面を切り替えるための切替スイッチ回路12とを有する。切替スイッチ回路12は、例えば、公知の高周波用FETやダイオードを用いたスイッチ回路である。切替スイッチ回路12は、CPU4からの制御信号によりマイクロストリップアンテナ11に設けられた2つの給電点のいずれかを選択して、送受分離器214に接続する。この切替スイッチ回路12による接続切り替え動作により、マイクロストリップアンテナ11はその偏波面が直交する2方向、例えば図2、図3中に破線で示す上下方向と左右方向のいずれかに切り替えられる。
【0053】
以上において、本実施形態の特徴は、CPU4が、RSSI回路226により検出される受信信号強度に基づき、複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定することである。複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定された場合に、CPU4は、当該複数のチャンネルのうち使用するチャンネルを選択する。そして、この選択されたチャンネルを用いて、無線タグTと情報送受信が行われる。
【0054】
上記の内容を実現するために、リーダ1のCPU4が実行する制御を図4を用いて説明する。
【0055】
まず、ステップS10において、CPU4は、リーダアンテナユニット3の各種パラメータについて、適宜の初期アンテナ設定を実行する。この際、CPU4は、切替スイッチ回路12に制御信号を出力し、アンテナ属性としてのマイクロストリップアンテナ11の偏波面が、前述の直交する2面のいずれかに初期的に設定される。
【0056】
その後、ステップS11に移り、前述した、例えば法規により許される所定の周波数範囲において予め設定される複数のチャンネルに含まれるチャンネル番号を表す変数CH(以下、単に「チャンネル変数CH」と称する)を1に初期化する。また、使用するチャンネルを表すチャンネル番号TX_Ch(以下、単に「チャンネルTX_Ch」と称する)を0に初期化する。
【0057】
そして、ステップS12に移り、CPU4は、RSSI回路226により検出された受信信号強度Vsを取得する。
【0058】
その後、ステップS13に移り、CPU4は、ステップS12で取得した受信信号強度Vsが、予め定められた使用状況確認用しきい値V_t1よりも大きいかどうかを判定する。なお、この手順が、各請求項記載の第1判定手段として機能する。
【0059】
例えば通信中の別のリーダ1が近傍にある場合には、受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1よりも大きくなるためステップS13の判定が満たされ、ステップS14に移る。ステップS14では、CPU4は、切替スイッチ回路12に制御信号を出力し、マイクロストリップアンテナ11の偏波面を、前述の面のうち、現在使用されている面と直交する面へ切り替える。この手順が、各請求項記載のアンテナ切替手段として機能する。なお、このように同一アンテナの偏波面を切替える替わりに、予めアンテナ属性の異なる複数のアンテナを設けておき、アンテナ切替手段として別のアンテナに切替るようにしても良い。その後、ステップS11に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0060】
一方、ステップS13において、受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1以下であった場合はステップS14の判定が満たされず、ステップS15に移る。
【0061】
ステップS15では、CPU4は、この時点でのチャンネルTx_chが0に設定されているかどうかを判定する。Tx_ch=0の場合は判定が満たされ、ステップS16に移る。ステップS16では、CPU4は、ステップS12で取得した受信信号強度Vsが、(上記使用状況確認用しきい値V_t1よりも小さく予め定められた)チャンネル選択用しきい値V_t2より小さいかどうかを判定する。なお、この手順が、各請求項記載の第2判定手段として機能する。
【0062】
例えば受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2より小さい場合は、ステップS16の判定が満たされ、ステップS17に移行する。ステップS17では、CPU4は、通信に使用するチャンネルTX_chを、この時点での変数CHの値に設定する。なお、この手順が、各請求項記載のチャンネル選択手段として機能する。その後、ステップS18に移行する。
【0063】
一方、例えば受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2以上である場合には、ステップS16の判定が満たされず、後述のステップS18に移行する。
【0064】
ステップS18では、CPU4は、この時点でのチャンネル変数CHが、前述の所定の周波数範囲において予め設定されたチャンネル数のうち、チャンネル番号の最大値に対応したCH_maxに達したかどうかを判定する。チャンネル変数CHがCH_maxまで達していなければステップS18の判定が満たされず、ステップS19に移る。
【0065】
ステップS19では、無線通信で使用するチャンネルを切り替えるため、チャンネル変数CHに1を加える。なお、この手順が、各請求項記載のチャンネル切替手段として機能する。その後、ステップS12に戻り、次のチャンネルに対して同様の手順を繰り返す。
【0066】
一方、ステップS18において、チャンネル変数CHがCH_maxと等しくなっていた場合はステップS18の判定が満たされ、ステップS20に移る。
ステップS20では、この時点で使用するとして設定されているチャンネルTx_chを用いて、リーダアンテナユニット3を介し、無線タグTと無線通信を行い、情報送受信を実行する。なお、この手順が、各請求項記載の通信動作決定手段及び送受信制御手段として機能する。
【0067】
その後、ステップS21に移り、CPU4は、所定の待ち時間が経過したかどうかを判定する。待ち時間が経過するまでは判定が満たされずループ待機し、待ち時間が経過したらステップS21の判定が満たされ、このフローを終了する。言い換えれば、次回このフローが再び開始されるより前に、当該待ち時間だけリーダアンテナユニット3による無線通信が禁止されることとなる。この結果、近傍に存在する他のリーダ1が同様なフロー(ステップS10からステップS19)を繰り返した結果、電波を出して良いと判断され、通信を開始できるようになる。すなわち、ステップS21は、各請求項記載の禁止制御手段として機能する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のリーダ1では、ステップS20において無線通信を実行するに際して、RSSI回路226で検出される受信信号強度に基づき、ステップS13、ステップS16、ステップS18、及びステップS19等により、複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する。そして、複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定された場合に、ステップS17で選択されたチャンネルを用いて、ステップS20において、無線タグTに対し情報送受信を行う。
【0069】
これにより、複数のリーダ1相互において混信が生じるのを抑制できるのみならず、周波数選択機能のない無線タグT側において混信が生じるのも併せて抑制することができる。すなわち、他のリーダ1が無線タグTと通信をしているのに対して影響を与えないようにすることができる。この結果、複数のチャンネルのうち不使用のチャンネルを確認し当該チャンネルを使用して情報送受信を行う従来技術に比べ、通信の確実性を向上することができる。したがって、複数のリーダ1を含む通信システム全体として、情報送受信の信頼性を向上することができる。
【0070】
なお、必ずしも、上記のような、複数のチャンネルすべてが使用されていないことを確認した後、無線タグTに対し情報送受信を行う手法でなくてもよい。すなわち、いずれか1つのチャンネルの使用が確認されたとき、そのチャネルにおける受信電力に応じ、ステップS20において、CPU4が、可変送信アンプ217を制御して送信出力を適宜の小さい値に制限しつつ、無線タグTと通信を行うようにしてもよい。この場合、リーダ1の通信範囲と近傍の他のリーダ1の通信範囲との重なり具合を調整することができるため、上記とほぼ同様に、複数のリーダ1相互において混信が生じるのを抑制でき、他のリーダ1が無線タグTと通信をしているのに対して与える影響を小さくすることができる。
【0071】
また、本実施形態では特に、ステップS20での情報送受信完了後、ステップS21により、所定の時間無線通信を行わないようにする。この結果、この所定の時間の間に、それまでリーダ1の通信によって通信が開始できなかった近傍の他のリーダ1が通信を開始できるため、他のリーダ1が通信できなくなるのを防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では特に、ステップS18及びステップS19において、切り替えられる各チャンネルごとに、ステップS13でRSSI回路226により検出される受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1より大きいかどうかが判定される。このように、複数のチャンネルを切り替えながらチャンネルごとに判定を行うことにより、図5に示したように、受信側の回路の構成を簡素化することができる。この結果、従来から使用されている汎用のキャリアセンス回路を流用することも可能となる。
【0073】
また、本実施形態では特に、ステップS1で受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1より大きいかどうかが判定された後、さらにステップS16で、受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2より小さいかどうかが判定される。これには以下のような意義がある。すなわち、通常用いられるチャンネル選択用しきい値V_t2は、複数のリーダ1どうしの間隔が離れていて相互に干渉し合う場合を想定し、比較的低い値に設定される場合が多い。無線タグTにおける干渉の発生を想定した場合、リーダ1と無線タグTとの間ではより強力な電波が必要であるため、使用状況確認用しきい値V_t1としては、上記チャンネル選択用しきい値V_t2よりも大きな値を用いることが好ましい。そこで本実施形態においては、上記に基づき、チャンネル選択用しきい値V_t2<使用状況確認用しきい値V_t1の関係となるような、両しきい値を用いる。これにより、前述のステップS13及びステップS16において、上記の趣旨に添った合理的かつ有効な判定を行うことができる。
【0074】
また、本実施形態では特に、ステップS13で受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1より大きいと判定された場合、ステップS14で、マイクロストリップアンテナ11の偏波面を切り替える。これには以下のような意義がある。すなわち、このマイクロストリップアンテナ11のように偏波面などのアンテナ属性が複数の態様に切り替え可能となっている場合、各態様ごとに通信範囲や通信対象となる無線タグTが異なるため、各態様ごとに使用状態を確認することが好ましい。そこで、本実施形態では、ステップS13での判定が満たされ複数チャンネルのいずれかが使用されていると判定された場合に、ステップS14でアンテナ属性としての偏波面を切り替える。そして、その切り替えられた後の受信信号強度Vsを検出し、その検出した強度に基づき、複数のチャンネルすべての使用状況を判定する。これにより、複数のリーダ1相互の混信発生及び無線タグT側の混信発生を防止できるアンテナ態様を見つけ出し、当該アンテナ態様において信頼性の高い情報送受信を行うことができる。
【0075】
なお、本発明は上記に限られず、技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0076】
(1)複数のチャンネルについて一括して判定を行う場合
上記実施形態においては、ステップS13及びステップS19により、RSSI回路226で検出される受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1より大きいかどうかを、複数のチャンネルについて個別に判定した。本変形例では、この手法に代えて、受信信号強度Vsが使用状況確認用しきい値V_t1より大きいかどうかを、複数のチャンネルについて一括して判定する。
【0077】
本変形例におけるRF通信制御部9及びリーダアンテナユニット3の詳細構成を図5に示す。図5に示すように、本実施形態のRF通信制御部9では、上記I相ローパスフィルタ219及び上記Q相受信ローパスフィルタ223に加えて、これら両ローパスフィルタ219,223よりも広い帯域、理想的には法規で許されている帯域幅の略半分の帯域幅、で信号を取り出すことのできるI相ローパスフィルタ219A及びQ相ローパスフィルタ223Aが設けられる。その他は図3と同様であり、説明を省略する。
【0078】
本変形例のリーダ1のCPU4が実行する制御を図6を用いて説明する。
【0079】
まずステップS100で、上記図4のステップS10と同様、CPU4は、初期アンテナ設定を行う。その後、ステップS101に移る。
【0080】
ステップS101では、CPU4は、RSSI回路226により検出された、すべての帯域にわたる全帯域信号強度Vaを取得する。
【0081】
その後、ステップS102に移り、CPU4は、ステップS101で取得した全帯域受信信号強度Vaが、予め定められた使用状況確認用しきい値V_t1′よりも大きいかどうかを判定する。なお、この手順が、各請求項記載の第1判定手段として機能する。
【0082】
例えば通信中の別のリーダ1が近傍にある場合には、全帯域受信信号強度Vaが使用状況確認用しきい値V_t1′よりも大きくなるためステップS102の判定が満たされ、ステップS103に移る。ステップS103では、CPU4は、前述の図4のステップS14と同様、切替スイッチ回路12に制御信号を出力し、マイクロストリップアンテナ11の偏波面を、前述の2面のうち、現在使用されている面と直交する面へ切り替える。この手順が、各請求項記載のアンテナ切替手段として機能する。その後、ステップS101に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0083】
一方、ステップS102において、全帯域受信信号強度Vaが使用状況確認用しきい値V_t1′以下であった場合はステップS102の判定が満たされず、ステップS104に移る。
【0084】
ステップS104では、前述の図4のステップS11と同様、所定の周波数範囲において予め設定される複数のチャンネルに含まれるチャンネル番号を表すチャンネル変数CHを1に初期化する。また、使用するチャンネルを表すチャンネルTX_Chを0に初期化する。
【0085】
その後、ステップS105に移り、CPU4は、上記図4のステップS12と同様、RSSI回路226により検出された受信信号強度Vsを取得する。
【0086】
そして、ステップS106に移り、上記図4のステップS16と同様、ステップS105で取得した受信信号強度Vsが、上記使用状況確認用しきい値V_t1′よりも小さく予め定められた、チャンネル選択用しきい値V_t2より小さいかどうかを判定する。なお、この手順が、各請求項記載の第2判定手段として機能する。
【0087】
受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2より小さい場合、ステップS106の判定が満たされ、後述のステップS109に移行する。
【0088】
一方、受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2以上である場合には、ステップS106の判定が満たされず、ステップS107に移行する。ステップS17では、CPU4は、上記図4のステップS18と同様、この時点でのチャンネル変数CHがCH_maxに達したかどうかを判定する。チャンネル変数CHがCH_maxまで達していなければステップS107の判定が満たされず、ステップS108に移る。
【0089】
ステップS108では、上記図4のステップS19と同様、無線通信で使用するチャンネルを切り替えるため、チャンネル変数CHに1を加える。なお、この手順が、各請求項記載のチャンネル切替手段として機能する。その後、ステップS105に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0090】
一方、ステップS107において、チャンネル変数CHがCH_maxと等しくなっていた場合は判定が満たされ、上記ステップS103に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0091】
ステップS109では、上記図4のステップS17と同様、CPU4は、通信に使用するチャンネルTX_chを、この時点での変数CHの値に設定する。なお、この手順が、各請求項記載のチャンネル選択手段として機能する。その後、図4と同様のステップS20及びステップS21については説明を省略する。
【0092】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。また、ステップS101及びステップS102において全チャンネルについて一括して判定を行うことにより、上記実施形態のように複数のチャンネルを切り替えながらチャンネルごとに判定を行う場合に比べ、迅速に判定を行うことができる。
【0093】
(2)複数のリーダ間で通信を行い、協調する場合
すなわち、上記のような複数のリーダ1における混信の低減を図る際、上記実施形態や(1)の変形例の手法に加え、当該複数のリーダ1同士の間で通信を行って協調するようにしてもよい。
【0094】
本変形例のリーダ1の概略システム構成を図7に示す。図7に示すように、本変形例のリーダ1の本体制御部2には、他のリーダ1と通信を行うためのリーダ通信手段として、近距離通信部10が備えられている。
【0095】
本変形例において複数のリーダ1どうしの間で実行する協調制御を概念的に図8に示す。図8に示すように、無線タグTとの通信を実行しようとする一方のリーダ1(図では「リーダA」として示している)のCPU4は、上記近距離通信部10を用いて、他のリーダ1(図では「リーダB」として示している)に対し無線通信の停止を要求する停波要求信号を送信する。他のリーダ1は、その時点で無線タグTとの通信を実行中の場合は、一方のリーダ1に対し通信状態信号としての通信中フラグ信号を送信し、通信中でない場合は何も応答しない。一方のリーダ1は、当該停波要求信号に対応した、他のリーダ1からの通信中フラグ信号を受信した場合、他のリーダ1に対し一定時間後に再度停波要求信号を送信する。一方のリーダ1は、停波要求信号送信後一定時間の間、他のリーダ1からの通信中フラグ信号を受信しない場合、近傍にある他のリーダ1は上記停波要求信号によって停波状態になったと判断し、上記実施形態や(1)の変形例の手法により、受信信号強度に基づき複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定し、無線タグTとの情報送受信を行う。
【0096】
無線タグTの情報送受信が終了したら、一方のリーダ1は、他のリーダ1に対し、無線通信の停止要求を解除する停波要求解除信号を送信する。
【0097】
上記他のリーダ1が無線タグTとの通信を開始しようとする場合も、上記一方のリーダ1が実行したのと同様の手順を実行する。すなわち、上記近距離通信部10を用いて停波要求信号を送信し、一定時間内に通信中フラグ信号を受信しなかった場合、無線タグTとの情報送受信を行い、情報送受信終了後に停波要求解除信号を送信する。
【0098】
本変形例のリーダ1のCPU4が実行する制御を図9を用いて説明する。上述の図6と同等の手順には同じステップ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。なお、図9の例では、前述の(1)の変形例の手法にリーダ1どうしの協調制御を適用した場合を示している。
【0099】
まず、ステップS199で、CPU4は、現在、他のリーダ1から停波要求を受けている(停波解除されてない)状態かどうかを判定する。他のリーダ1から停波要求を受けていない状態の場合には通信を行えるため、ステップS199の判定が満たされず、後述のステップS200に移る。一方、しかし、他のリーダ1から停波要求を受けている状態の場合、通信を開始することができないため、ステップS199の判定が満たされ、ステップS198にて所定時間待機した後、ステップS197に移る。
【0100】
ステップS197では、CPU4は、停波解除を受信したかどうかを判定する。しかし停波解除を受信しない場合、ステップS197の判定が満たされず、上記ステップS198に戻り所定時間待機した後、再びこのステップS197を繰り返す。停波解除を受信すれば、通信を開始できるため、ステップS197の判定が満たされてステップS200に移る。
【0101】
ステップS200で、CPU4は、近距離通信部10により、他のリーダ1に対し無線通信の停止を要求する上記停波要求信号を送信する。なお、この手順が、各請求項記載の停波要求送信手段として機能する。
【0102】
その後、ステップS201に移り、一定時間内に上記ステップS200で送信した停波要求信号に対応した、他のリーダ1からの通信中フラグ信号が近距離通信部10により受信されたかどうかを判定する。なお、この手順が、各請求項記載の通信状態受信手段として機能する。他のリーダ1が通信中でない状態の場合は通信中フラグ信号が他のリーダ1から送信されない。このため、一定時間内に通信中フラグを受信しなければ同時に通信をしているリーダが存在しないものと考えられ、ステップS201の判定は満たされず、ステップS101に移る。一方、他のリーダ1が送信した通信中フラグを受信した場合はステップS201の判定が満たされ、ステップS202にて所定時間待機した後、ステップS200に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0103】
ステップS101〜ステップS109及びステップS20は、上記図6と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
ステップS20における無線タグTとの通信が終了したら、ステップS300へ移る。
【0105】
ステップS300では、CPU4は、近距離通信部10により、他のリーダ1に対し無線通信の停止要求を解除する停波要求解除信号を送信し、前述のステップS21に移る。ステップS21については前述と同様であり、説明を省略する。
【0106】
本変形例においては、近距離通信部10を用いて、複数のリーダ1相互がコミュニケーションをとり、協調動作を行う。このような協調動作を行うことにより、上述したように、1つのリーダ1が無線通信を実行する際、協調する他のリーダ1は無線通信を停止するので、迅速かつ確実に全チャンネルの不使用を確認し情報送受信を開始することができる。この結果、情報伝達効率を向上することができる。また、複数のリーダ1相互がコミュニケーションをとって協調動作を行うことにより、複数のリーダを制御するための上位コントローラを設ける必要がないという効果もある。
【0107】
なお、本変形例においてリーダ1どうしの通信に用いる近距離通信は、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)やその他のブロードキャスト通信やあるいは上記所定の周波数帯域の中の特定のチャンネルを専用に用いるようにしてもよい。
【0108】
(3)その他
以上においては、通信を行うチャンネルを選択するチャンネル選択手段として、各チャンネルの受信信号強度Vsがチャンネル選択用しきい値V_t2より小さいかどうかを判定し、この判定を満たすチャンネルを通信チャネルとした(ステップS16、ステップS106参照)。しかしながら、この方法に限らず、通信を行うチャンネルを規定時間内に擬似ランダム的に順次切り替える方法を用いても良い。この方法を用いる場合、通信チャネル数が十分確保できれば、リーダ1どうしが同じチャネルを使う確率が下がり、リーダ1間の干渉が発生し難くなる。この場合、前述の各請求項記載の第2判定手段は必ずしも必要としない。
【0109】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0110】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0111】
1 リーダ(無線タグ情報読み取り装置)
3 リーダアンテナユニット(アンテナ手段)
10 赤外線通信部(リーダ通信手段)
11 マイクロストリップアンテナ
12 切替スイッチ回路
150 IC回路部
151 タグアンテナ
226 RSSI回路(強度検出手段)
T 無線タグ
To 無線タグ回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルを含む所定の周波数範囲内において、無線タグに対し無線通信を実行可能なアンテナ手段と、
前記アンテナ手段により受信された電波の受信信号強度を検出する強度検出手段と、
前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段により、前記複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定されたか、若しくは、前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定されたか、に応じて、通信動作を決定する通信動作決定手段と、
当該複数のチャンネルのうち使用するチャンネルを選択するチャンネル選択手段と、
前記チャンネル選択手段により選択された前記チャンネルを用いて、前記アンテナ手段により、前記通信動作決定手段が決定した通信動作で無線タグと情報送受信を行う送受信制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記通信動作決定手段は、
前記第1判定手段により前記複数のチャンネルすべてが使用されていないと判定された場合に、前記送受信制御手段により通信を行うよう決定することを特徴とする請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記通信動作決定手段は、
前記第1判定手段により前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定された場合、前記強度検出手段の結果に基づいて前記送受信制御手段の送信出力を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線タグ通信装置。
【請求項4】
所定の時間、前記アンテナ手段による無線通信を禁止する禁止制御手段を備え、
前記送受信制御手段による情報送受信が完了した場合に、前記禁止制御手段により前記アンテナ手段による無線通信を禁止する
こと特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ手段での無線通信で使用する前記チャンネルを切り替えるチャンネル切替手段をさらに有し、
前記第1判定手段は、
前記チャンネル切替手段により切り替えられる各チャンネルごとに、前記強度検出手段により検出される受信信号強度が使用状況確認用しきい値より大きいかどうかを判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記第1判定手段は、
前記強度検出手段により検出される受信信号強度が使用状況確認用しきい値より大きいかどうかを、前記複数のチャンネルについて一括して判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記使用状況確認用しきい値よりも小さいチャンネル選択用しきい値を用いて、前記強度検出手段により検出される受信信号強度が、当該チャンネル選択用しきい値よりも大きいかどうかを判定する第2判定手段をさらに有し、
前記チャンネル選択手段は、
前記複数のチャンネルのうち、前記第2判定手段により、前記受信信号強度が前記チャンネル選択用しきい値以下であると判定されたチャンネルを、使用するチャンネルとして選択する
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記第1判定手段により、前記複数のチャンネルのうちいずれかが使用されていると判定された場合に、前記アンテナ手段のアンテナ属性を切り替えるアンテナ切替手段をさらに有し、
強度検出手段は、
前記アンテナ切替手段により前記アンテナ属性が切り替えられた後の前記アンテナ手段での受信信号強度を検出し、
前記第1判定手段は、
前記アンテナ切替手段により前記アンテナ属性が切り替えられた後の、前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項9】
他の無線タグ通信装置と通信を行うためのリーダ通信手段と、
前記リーダ通信手段を用いて前記他の無線タグ通信装置に対し無線通信の停止を要求する停波要求信号を送信する停波要求送信手段と
前記停波要求手段からの前記停波要求信号に対応した、前記他の無線タグ通信手段からの通信状態信号を受信する通信状態受信手段と
をさらに有し、
前記第1判定手段は、
前記通信状態受信手段が前記通信状態信号を受信しなかった場合に、前記強度検出手段により検出される受信信号強度に基づき、前記複数のチャンネルすべてについての使用状況を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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