説明

無線受信機

【課題】伝送効率を損なうことなく無線信号を受信できる無線受信機を提供する。
【解決手段】STC判別器34は、MIMO分離部320からの信号に基づいて、受信信号が時空間符号化処理を施されているか否かを判別し、判定結果を示す信号を選択器326に対して出力する。選択器326は、STC判別器34からの信号が「受信信号は時空間符号化処理を施されている」ことを示す信号である場合は、メモリ312から信号を読み取り、データ処理部328に対して出力する。また、選択器326は、STC判別器34からの信号が「受信信号は時空間符号化処理を施されていない(つまりSM方式である)」ことを示す信号である場合は、メモリ324−1,324−2から信号を読み取り、データ処理部328に対して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において高い伝送速度あるいは高い伝送品質を実現できる技術として、複数のアンテナを用いて無線通信を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式が知られている。
たとえば、非特許文献1は、逆行列演算(ゼロフォーシング)の処理を予め実行し、1つの送信信号の候補数を一定数に限定してから全ての送信信号をMLD処理によって推定する技術を開示する。
また、たとえば、特許文献1は、逆行列演算の処理を実行後、各送信信号のSN比に応じて各送信信号の候補数を設定し、全ての送信信号をMLD処理によって推定する技術を開示する。
【特許文献1】特開2006−211131号公報
【非特許文献1】古田浩之,池田哲臣、“ミリ波モバイルカメラ用MIMO−OFDM伝送装置の試作とレイリーフェージング環境下での伝送性能の評価”、電子情報通信学会無線通信システム研究会技術報告、RCS2005−141、2006年1月、pp.101−106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、伝送効率を損なうことなく無線信号を受信できる無線受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る無線受信機は、複数の受信アンテナと、前記受信アンテナを介して、時空間符号化処理がなされている第1の信号および前記第1の信号以外の第2の信号またはこれらのいずれかを受信する複数の受信手段と、前記第1の信号を時空間復号するための時空間復号手段と、前記複数の受信手段が受信した信号を分離する信号分離手段と、前記信号分離手段から出力された信号に基づいて、前記受信手段が受信した信号が第1の信号であるか第2の信号であるかを判別する判別手段と、前記判別手段によって前記受信信号は第1の信号であると判別された場合は、前記時空間復号手段からの出力信号を選択し、前記受信信号は第2の信号であると判別された場合は、前記信号分離手段からの出力信号を選択する選択手段とを有する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る無線受信機によれば、伝送効率を損なうことなく無線信号を受信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[本発明の背景]
本発明の理解を助けるために、まず、本発明がなされるに至った背景を説明する。
【0007】
[第1の無線通信システム1]
図1は、MIMO方式の一つであるSTC(Space Time Coding:時空間符号化)方式を採用した第1の無線通信システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、第1の無線通信システム1は、それぞれ2つのアンテナを有する送信機10および受信機12から構成され、送信機10と受信機12との間を、4本の経路を有する無線伝送チャネルを介して、信号が伝送される。
なお、以下の説明においては、送信機および受信機に、それぞれ、アンテナ、送信部、受信部などが2つずつ含まれる構成が具体例とされるが、それぞれ3つ以上のアンテナ等が含まれるようにしてもよく、これらアンテナ等の数に対応して、無線伝送チャネルの経路数も増減し、送信機および受信機の内部構成も、適宜、変更されうる。
【0008】
送信機10は、伝送シンボル生成部102、STC符号化器104、送信部106−1,106−2および送信アンテナ108−1,108−2から構成される。
なお、以下、送信部106−1,106−2など、複数ある構成部分のいずれかを特定せずに示す場合には、単に送信部106などと略記することがある。
伝送シンボル生成部102は、受信機12に伝送するデータを生成し、必要な変調処理を行って、生成された送信シンボル(信号)を、STC符号化器104に対して出力する。
【0009】
STC符号化器104は、伝送シンボル生成部102からの送信シンボルに対して時空間符号化を行う。
時空間符号化とは、時間的な次元と空間的な次元とをまとめて符号化することであって、シンボルの順序の交換という時間領域の符号化とアンテナなどの配列ごとに信号を変える空間領域の符号化とを組み合わせた符号化処理である。
すなわち、時刻2n,2n+1における送信シンボルをそれぞれs1,s2とすると、STC符号化器104は、各シンボルを時空間符号化して、送信部106−1に対してはs1,-s2*の順で時空間符号化されたシンボルを出力し、送信部106−2に対してはs2,s1*(s1*は、s1の複素共役。以下同様)の順で時空間符号化されたシンボルを出力する。
【0010】
送信部106は、STC符号化器104からのシンボルに対して周波数変換および増幅等の送信処理を行い、送信アンテナ108を介して、時空間符号化されたシンボルを含む信号を無線伝送チャネルに対して送信する。
ここで、送信アンテナ108−1,108−2から送信される信号に含まれるシンボルx1,x2は、送信部106における送信処理を省略すると、以下の式(1)で表される。
【0011】
【数1】

【0012】
受信機12は、受信アンテナ122−1,122−2、雑音源124−1,124−2、雑音加算器126−1,126−2、受信部128−1,128−2、STC復号器130−1,130−2、信号合成器132、軟判定器134およびデータ処理部136から構成される。
受信アンテナ122は、送信アンテナ108から送信された、時空間符号化されたシンボルを含む信号を、無線伝送チャネルを介して受信する。
ここで、図1に示すように、送信アンテナ108−jから受信アンテナ122−i(i,jは1または2)への経路に対する複素係数は、hijと表される。
なお、複素係数hijは、一般には時刻の関数となるが、本明細書に記載される各実施形態においては、変動が十分緩やかであると仮定する。
【0013】
受信アンテナ122−1から受信された信号は、雑音加算器126−1で雑音源124−1からの雑音z1(n)が加算され、受信部128−1に入力される。
受信部128−1は、受け入れた受信信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r1(n)をSTC復号器130−1に対して出力する。
受信アンテナ122−2から受信された信号についても同様に、雑音加算器126−2で雑音源124−2からの雑音z2(n)が加算され、受信部128−2に入力される。
受信部128−2は、受け入れた受信信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r2(n)をSTC復号器130−2に対して出力する。
ここで、受信信号r1(n)およびr2(n)は、それぞれ以下の式(2)で表される。
【0014】
【数2】

【0015】
STC復号器130−1は、受信信号r1(n)に対して、以下の式で表されるような時空間復号処理を行う。
時刻2nおよび2n+1において、受信信号r1(n)は以下の式(3)で表される。
【0016】
【数3】

【0017】
式(1)を式(3)に代入すると、以下の式(4)が得られる。
【0018】
【数4】

【0019】
ただし、式(4)の第2式は全体の複素共役をとっている。
ここで、第1式にh11*を乗じたものと第2式にh12を乗じたものとが加算され、また、第1式にh12*を乗じたものから第2式にh11を乗じたものを減算されると、以下の式(5)が得られる。
【0020】
【数5】

【0021】
ただし、式(5)において、ν11およびν12は、雑音成分をまとめた雑音項である。
式(5)は、雑音項を除けばs1およびs2のみについての関数であるので、各係数を算出することによって、s1およびs2を求めることができる。
また、式(5)において、s1およびs2の係数はチャネル上の2つの経路の電力和となっているので、ブランチ数2のダイバーシチ効果が得られていることが分かる。
STC復号器130−2は、受信信号r2(n)に対して、STC復号器130−1と同様の時空間復号処理を行い、以下の式(6)が得られる。
【0022】
【数6】

【0023】
信号合成器132は、STC復号器130−1,130−2から、式(5),式(6)で得られる各信号を受け入れ、これらの加算を行うことによって、以下の式(7)で表される信号を得て、軟判定器134に対して出力する。
【0024】
【数7】

【0025】
式(7)より、第1の無線通信システム1においては、ブランチ数4のダイバーシチ効果が得られることが分かる。
また、式(7)で表される信号は、送信シンボルに対応するものである。
軟判定器134は、式(7)で表される信号に含まれる送信シンボルについて、各ビットに対応する軟判定値(ビット尤度)を算出し、算出されたビット尤度を、データ処理部136に対して出力する。
データ処理部136は、受け入れたビット尤度に対して、必要な処理を行う。
【0026】
上述したように、STC方式は、複数の送信アンテナおよび受信アンテナを利用することによって、ダイバーシチ効果を得る方式であって、本方式を採用することによって、特にSNR(Signal to Noise ratio)が低い場合に、ビット誤りを軽減することができる。 一方、時刻2n,2n+1の間にシンボルs1,s2のみが伝送されるので、STC方式を採用することによって、伝送速度が向上されるわけではない。
【0027】
[第2の無線通信システム2]
図2は、MIMO方式の一つであるSM(Spatial Multiplexing:空間多重化)方式を採用した第2の無線通信システム2の構成を示す図である。
SM方式とは、複数のデータを多重化した無線通信空間に送信し、多重化した無線通信空間において混信された信号を、受信側で分離する方式である。
図2に示すように、第2の無線通信システム2は、それぞれ2つのアンテナを有する送信機20および受信機22から構成され、送信機20と受信機22との間を、4本の経路を有する無線伝送チャネルを介して、信号が伝送される。
【0028】
送信機20は、伝送シンボル生成部202、送信部204−1,204−2および送信アンテナ206−1,206−2から構成される。
伝送シンボル生成部202は、受信機22に伝送するデータを生成し、必要な変調処理を行って、生成された送信シンボルを、送信部204に対して出力する。
【0029】
送信部204−1は、伝送シンボル生成部202から、送信シンボルs1を受け入れる。
送信部204−1は、送信部106と同様に、受け入れたシンボルに対して周波数変換および増幅等の送信処理を行い、送信アンテナ206−1を介して、送信シンボルs1を含む信号を無線伝送チャネルに対して送信する。
送信部204−2は、伝送シンボル生成部202から、送信シンボルs2を受け入れる。
送信部204−2は、送信部106と同様に、受け入れたシンボルに対して周波数変換および増幅等の送信処理を行い、送信アンテナ206−2を介して、送信シンボルs2を含む信号を無線伝送チャネルに対して送信する。
【0030】
受信機22は、受信アンテナ222−1,222−2、雑音源224−1,224−2、雑音加算器226−1,226−2、受信部228−1,228−2、MIMO分離部230、軟判定器232−1,232−2およびデータ処理部234から構成される。
受信アンテナ222は、送信アンテナ206から送信されたシンボルs1,s2を含む信号を、第1の無線通信システム1と同様の無線伝送チャネルを介して受信する。
受信アンテナ222−1から受信された信号は、雑音加算器226−1で雑音源224−1からの雑音z1(n)が加算され、受信部228−1に入力される。
受信部228−1は、受け入れた受信信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r1(n)をMIMO分離部230に対して出力する。
【0031】
受信アンテナ222−2から受信された信号についても同様に、雑音加算器226−2で雑音源224−2からの雑音z2(n)が加算され、受信部228−2に入力される。
受信部228−2は、受け入れた受信信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r2(n)をMIMO分離部230に対して出力する。
ここで、受信信号r1(n)およびr2(n)は、それぞれ、以下の式(8)で表される。
【0032】
【数8】

【0033】
式(8)は、行列表記すると、以下の式(9)で表される。
【0034】
【数9】

【0035】
MIMO分離部230は、式(9)で表される信号から、s(n)の推定値の分離処理を行う。
分離処理の方法は、ZF(Zero Forcing)法、または、MMSE(Minimum Mean Square Error)法がある。
ZF法を用いる場合、式(9)の両側に、伝搬路行列Hの逆行列H-1を左から乗じることによって、以下の式(10)が得られる。
【0036】
【数10】

【0037】
ZF法では、雑音項z(n)を含む量に対して直接逆行列H-1を乗じているため、Hが特異点に近い場合(すなわちHの行列式が小さい場合)、雑音成分が強調され、SNRが低い場合には著しく性能が低下する。
この性能の低下を抑制する方法がMMSE法である。
MMSE法を用いる場合、MIMO分離部230は、逆行列H-1の代わりに、以下の式(11)で定義される行列WMMSEを式(9)の両側に乗じる。
【0038】
【数11】

【0039】
ここで、HHは行列Hの共役転置行列、Iは2×2の単位行列、σ2は送信電力を1とした場合の雑音電力である。
このMMSE法を用いることによって、MIMO分離部230は、雑音成分の強調に対する影響を軽減して信号を分離することができる。
MIMO分離部230は、上述した方法によって算出されたs(n)の推定値を、軟判定器232に対して出力する。
軟判定器232は、シンボルs(n)の推定値の各成分について、各ビットに対応する軟判定値(ビット尤度)を算出し、算出されたビット尤度を、データ処理部234に対して出力する。
データ処理部234は、受け入れたビット尤度に対して、必要な処理を行う。
【0040】
上述したように、SM方式は、たとえば2つの送信アンテナおよび受信アンテナを利用することによって、ある時刻nにおいて2つのシンボルs1,s2を同時に伝送でき、したがって伝送速度を2倍にすることができる。
一方、SM方式では、STC方式のようなダイバーシチ効果は得られないので、低いSNRにおいては著しくビット誤り率が高くなる。
【0041】
以上説明したように、STC方式とSM方式とは、伝送速度と伝送品質とに関して、相反する関係にある。
したがって、SNR値などの伝送チャネルの状態に応じて、これらSTC方式とSM方式とを切り替えることが理想的である。
しかしながら、STC方式とSM方式とを切り替える際に受信側においてSTC方式とSM方式とを判別するためには、予め、送信側から、STC方式であるかSM方式であるかを識別する識別情報が受信側に対して送信される必要がある。
【0042】
この識別情報は、伝送チャネルの状態が劣悪である場合であっても確実に受信側に伝わる必要があるので、符号化率を低くすることが要求される。
また、移動体通信の場合は伝送チャネルの変動が大きいので、この識別情報の伝送頻度を高くする必要がある。
以上から、STC方式とSM方式とを適切に切り替えるためには、この識別情報を伝送するために相当の冗長性が必要となり、信号の伝送効率が劣化するといった問題が懸念される。
以下で説明する第3の受信機3は、このような問題点を解消するように構成されている。
【0043】
[本発明の実施形態]
以下、本発明の実施形態を説明する。
図3は、本発明の実施形態にかかる第3の受信機3の構成を示す図である。
図3に示すように、第3の受信機3は、受信アンテナ302−1,302−2、受信部304−1,304−2、STC復号器306−1,306−2、信号合成器308、軟判定器310、メモリ312、MIMO分離部320、軟判定器322−1,322−2、メモリ324−1,324−2、STC判別器34、選択器326およびデータ処理部328から構成される。
なお、説明の具体化および明確化のために、図1および図2に記載した送信機、無線伝送チャネル、雑音源および雑音加算器については、省略されている。
【0044】
受信部304−1は、受信アンテナ302−1を介して受信された信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r1(n)を、STC復号器306−1およびMIMO分離部320に対して出力する。
受信部304−2は、受信アンテナ302−2を介して受信された信号に対して、増幅および周波数変換等の処理を行い、処理された受信信号r2(n)を、STC復号器306−2およびMIMO分離部320に対して出力する。
【0045】
STC復号器306−1,306−2は、受信部304−1,304−2からの受信信号が時空間符号化処理を施されているものと仮定して、STC復号器130の行う時空間復号処理と同様の復号処理を行う。
信号合成器308は、信号合成器132と同様に、STC復号器306−1,306−2からの復号処理された信号を受け入れて加算し、得られた信号を軟判定器310に対して出力する。
軟判定器310は、信号合成器308からの信号に含まれる送信シンボルについて、各ビットに対応する軟判定値(ビット尤度)を算出し、得られたビット尤度をメモリ312に格納する。
【0046】
MIMO分離部320は、MIMO分離部230と同様に、受信部304−1,304−2からの受信信号から、送信シンボル系列に分離する処理を行い、算出されたシンボルの推定値を、軟判定器322−1,322−2およびSTC判別器34に対して出力する。
軟判定器322−1,322−2は、MIMO分離部320からのシンボルの推定値の各成分について、各ビットに対応する軟判定値(ビット尤度)を算出し、算出されたビット尤度をメモリ324−1,324−2に格納する。
STC判別器34は、MIMO分離部320からのシンボルの推定値に基づいて、受信信号が時空間符号化処理を施されているか否かを判別し、判定結果を示す信号を選択器326に対して出力する。
【0047】
選択器326は、STC判別器34からの信号が「受信信号は時空間符号化処理を施されている」ことを示す信号である場合は、メモリ312からデータを読み取り、データ処理部328に対して出力する。
また、選択器326は、STC判別器34からの信号が「受信信号は時空間符号化処理を施されていない(つまりSM方式である)」ことを示す信号である場合は、メモリ324−1,324−2からデータを読み取り、データ処理部328に対して出力する。
データ処理部328は、受け入れたデータに対して、必要な処理を行う。
【0048】
図4は、図3に示したSTC判別器34の構成を示す図である。
図4に示すように、STC判別器34は、入力端子340−1,340−2、レジスタ342−1,342−2、乗算器344−1,344−2、平均器346−1,346−2、減算器348、閾値判定器350および出力端子352から構成される。
レジスタ342−1,342−2は、MIMO分離部320から、シンボルs(n)の推定値
【0049】
【数12】

【0050】
を、入力端子340−1,340−2を介して受け入れる。
また、レジスタ342−1,342−2は、受け入れたデータ(シンボルs(n)の推定値)を、2サンプルごとに格納する。
乗算器344−1は、レジスタ342にデータが2サンプル入力されるごとに、レジスタ342−1の出力データ
【0051】
【数13】

【0052】
と、レジスタ342−2の入力データ
【0053】
【数14】

【0054】
とを乗算し、算出値を平均器346−1に対して出力する。
乗算器344−2は、乗算器344−1と同様に、レジスタ342にデータが2サンプル入力されるごとに、レジスタ342−2の出力データ
【0055】
【数15】

【0056】
と、レジスタ342−1の入力データ
【0057】
【数16】

【0058】
とを乗算し、算出値を平均器346−2に対して出力する。
平均器346−1は、乗算器344−1からのデータに対して加算平均処理を行って、得られたデータq1を減算器348に対して出力する。
平均器346−2は、平均器346−1と同様に、乗算器344−2からのデータに対して加算平均処理を行って、得られたデータq2を減算器348に対して出力する。
平均器346−1,346−2の出力q1,q2は、以下の式(12)で表される。
【0059】
【数17】

【0060】
ここで、E(A)は、Aの加算平均を表す。
減算器348は、平均器346−1の出力から平均器346−2の出力を減算する。
つまり、減算器348は、q1-q2を計算し、算出値を閾値判定器350に対して出力する。
送信機から送信された信号(シンボル)が時空間符号化処理を施されている場合、s1,s2は、以下の式(13)で表される。
【0061】
【数18】

【0062】
したがって、q1,q2は、以下の式(14)で表される。
【0063】
【数19】

【0064】
一方、送信機から送信された信号が時空間符号化処理を施されていない場合、連続する2つのシンボルおよび系列1,2のシンボルには相関がないとみなせるので、q1,q2は、以下の式(15)で表される。
【0065】
【数20】

【0066】
したがって、q1-q2の値は、受信信号が時空間符号化処理を施されていない場合、受信信号が時空間符号化処理を施されている場合と比較して、0に近い。
閾値判定器350は、減算器348からの値(つまりq1-q2)が所定の閾値を越えているか否かを判断する。
さらに、閾値判定器350は、所定の閾値を超えていると判断した場合は、「受信信号は時空間符号化処理を施されている」ことを示す信号を、そうでない場合は、「受信信号は時空間符号化処理を施されていない(つまりSM方式である)」ことを示す信号を、それぞれ出力端子352を介して選択器326に対して出力する。
【0067】
なお、本発明の実施形態においては、第3の受信機3の各構成部分の処理は、無線伝送フレーム単位で行われるようにしてもよい。
この場合、メモリ312、メモリ324−1,324−2は、1フレーム分の容量を有するようにしてもよい。
また、この場合、平均器346−1,346−2は、1フレーム分の平均処理を行うようにしてもよく、閾値判定器350は1フレーム分の全データの平均結果に対して閾値判定処理を行うようにしてもよく、選択器326は、1フレーム分の全てのデータを出力するようにしてもよい。
【0068】
以上述べたように、本発明の実施形態にかかる第3の受信機3は、送信信号が時空間符号化処理を施されている否かを示す識別情報を送信側から受信しなくても、受信した信号に基づいて、受信した信号が時空間符号化処理を施されている否かを判別することができ、適切に復号処理を行うことができる。
また、本発明の実施形態にかかる第3の受信機3を用いることによって、この識別情報が送信機から受信機に伝送される必要がなくなるので、信号の伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】MIMO方式の一つであるSTC方式を採用した第1の無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】MIMO方式の一つであるSM方式を採用した第2の無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる第3の受信機の構成を示す図である。
【図4】図3に示したSTC判別器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・第1の無線通信システム,
10・・・送信機,
102・・・伝送シンボル生成部,
104・・・STC符号化器,
106−1,106−2・・・送信部,
108−1,108−2・・・送信アンテナ,
12・・・受信機,
122−1,122−2・・・受信アンテナ,
124−1,124−2・・・雑音源,
126−1,126−2・・・雑音加算器,
128−1,128−2・・・受信部,
130−1,130−2・・・STC復号器,
132・・・信号合成器,
134・・・軟判定器,
136・・・データ処理部,
2・・・第2の無線通信システム,
20・・・送信機,
202・・・伝送シンボル生成部,
204−1,204−2・・・送信部,
206−1,206−2・・・送信アンテナ,
22・・・受信機,
222−1,222−2・・・受信アンテナ,
224−1,224−2・・・雑音源,
226−1,226−2・・・雑音加算器,
228−1,228−2・・・受信部,
230・・・MIMO分離部,
232−1,232−2・・・軟判定器,
234・・・データ処理部,
3・・・第3の受信機,
302−1,302−2・・・受信アンテナ,
304−1,304−2・・・受信部,
306−1,306−2・・・STC復号器,
308・・・信号合成器,
310・・・軟判定器,
312・・・メモリ,
320・・・MIMO分離部,
322−1,322−2・・・軟判定器,
324−1,324−2・・・メモリ,
34・・・STC判別器,
342−1,342−2・・・レジスタ,
344−1,344−2・・・乗算器,
346−1,346−2・・・平均器,
348・・・減算器,
350・・・閾値判定器,
326・・・選択器,
328・・・データ処理部,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信アンテナと、
前記受信アンテナを介して、時空間符号化処理がなされている第1の信号および前記第1の信号以外の第2の信号またはこれらのいずれかを受信する複数の受信手段と、
前記第1の信号を時空間復号するための時空間復号手段と、
前記複数の受信手段が受信した信号を分離する信号分離手段と、
前記信号分離手段から出力された信号に基づいて、前記受信手段が受信した信号が第1の信号であるか第2の信号であるかを判別する判別手段と、
前記判別手段によって前記受信信号は第1の信号であると判別された場合は、前記時空間復号手段からの出力信号を選択し、前記受信信号は第2の信号であると判別された場合は、前記信号分離手段からの出力信号を選択する選択手段と
を有する無線受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−188817(P2009−188817A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27743(P2008−27743)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】