説明

無線端末及び無線端末におけるリソース割当制御方法

【課題】メッシュネットワークを構築する無線端末を提供することである。
【解決手段】一方の無線端末から他方の無線端末に送信されるデータを中継可能な無線端末10であって、自端末が送信元となるデータ通信に要する第1の無線リソースを管理する管理部12と、メッシュネットワークを構成する他の無線端末のデータを中継する際に、自端末の利用可能な無線リソースを前記第1の無線リソースと、前記中継に利用する第2の無線リソースとに分割して割り当てる分割割当部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末と、無線端末をデータ中継に利用する際のリソース割当制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の無線ネットワークでは、1つの基地局に対して複数の端末が通信を行うことが通常である。従って、1つの基地局のカバーエリアが広域の場合、必然的に1つの基地局に対して通信を行う端末の数が増加し、通信環境の悪化につながる。当然、基地局の増設により通信環境は改善されるが、そのためには設置場所やコストの面で制約がある。このような問題を解決するために、基地局を増設しなくても無線端末同士がデータ中継を行い、設置場所やコストの制約を受けることが無い、アドホックネットワークやメッシュネットワークに関する技術が開発されている。
【0003】
アドホックネットワークやメッシュネットワークは、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント等の通信インフラを介在させずに、パソコン、PDA(Personal Digital Assistance)、携帯電話などの端末同士を相互に接続させて構築するネットワークである。これにより、大掛かりな通信インフラが整備されていない場所でも無線ネットワークを構築できる。したがって、非常に柔軟性の高い無線ネットワークが構築できる。
【0004】
図3に、従来のメッシュネットワークの構成の一例を示す。図3において、例えば、端末203が基地局100を通じてインターネットに接続する場合は、端末202および201を介して接続するものとする。ここで、端末203は、端末202および201を介して基地局100に接続され、動画ストリーミングなどの広帯域を必要とする通信を行っているものとする。端末202が通信アプリケーションを起動して、データ通信を行おうとすると、端末202の無線リソースの大半が端末203のデータ中継に費やされているため、端末202が自端末のためのデータ通信を行うためには、端末203のためのデータ中継を制限してデータ通信を行うか、端末203のためのデータ中継が完了するまで待機する。
【0005】
このような問題を解決するために、中継端末の状態に応じて、中継するデータの量を制御することにより、中継端末の無線リソースを有効利用できるようにしたデータの送信方法が開発されている。例えば、特許文献1に係るデータ送信方法では、中継端末におけるアプリケーション実行時に無線リソース不足が発生した場合には、中継端末は、データ送信元に対して、データ送信の中止や送信データ量の削減を求める。
【0006】
図4を参照して、端末A〜Cがメッシュネットワークを構成している場合について説明する。端末Bが、端末Cのデータ通信を中継している場合(ステップS1及びS2)、端末Bに、自端末のためのデータ通信要求が発生し(ステップS3)、端末Cのためのデータ中継に使用されていないリソース量が自端末のためのデータ通信に不十分であれば、端末Bは、端末Cに対して送信データの抑制を要求する(ステップS4)。それに応じて、端末Cは端末Bに送信するデータ量を削減し(ステップS5)、端末Bは必要なリソース量を確保できた状態で、端末Aに対する自端末のためのデータ送信を開始する(ステップS6)。
【0007】
このように、特許文献1に係るデータ送信方法は、中継端末の無線リソース状態に応じて中継データの量を制御することにより中継端末の無線リソースを有効利用できるようにするものである。すなわち、この方法によれば、データ中継に端末の無線リソースの大部分が用いられている場合であっても、当該端末自体のためのアプリケーションの実行に際して、CPU(Central Processing Unit)能力、メモリ容量、ネットワーク帯域などのリソースが不足して満足な動作を実行できないという不都合を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−50371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の特許文献1に係るデータ中継方法では、データ送信端末がデータ中継端末に送信可能なデータ量は、データ中継端末の状態に応じて制限される。このため、あるデータ中継端末がその無線リソースの大部分を使用して無線通信を開始する場合、それまでそのデータ中継端末にデータを送信していた他の端末が送信できるデータ量が著しく減少する。その結果、容量不足によりこれらの端末間で中継できなくなった場合には、データ中継端末にデータを送信していた端末は、新たな通信経路の探索を行わなくてはならない。このような新たな通信経路の探索は、中継できなくなった上述の2つの端末だけではなく、メッシュネットワークを構築する他の端末にも負担をかけてしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的は、メッシュネットワークを構築する無線端末及び無線端末における無線リソース割当制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の第1の観点に係る無線端末の発明は、
一方の無線端末から他方の無線端末に送信されるデータを中継可能な無線端末であって、
自端末が送信元となるデータ通信に要する第1の無線リソースを管理する管理部と、
メッシュネットワークを構成する他の無線端末のデータを中継する際に、自端末の利用可能な無線リソースを前記第1の無線リソースと、前記中継に利用する第2の無線リソースとに分割して割り当てる分割割当部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0012】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る無線端末において、
前記分割割当部は、前記第2の無線リソースを分割して割り当てる際に、自端末の利用するサービス内容に応じて分割することを特徴とするものである。
【0013】
第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る無線端末において、
前記第2の無線リソースを利用するデータ通信のデータ量をカウントするカウント部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0014】
第4の観点に係る発明は、無線リソースの割当制御方法であって、
自端末が送信元となるデータ通信に要する第1の無線リソースを管理するステップと、
メッシュネットワークを構成する他の無線端末のデータを中継する際に、自端末の利用可能な無線リソースを、前記第1の無線リソースと、前記中継に利用する第2の無線リソースとに分割して割り当てるステップと、
を備えることを特徴とするものである。
【0015】
第5の観点に係る発明は、第4の観点に係る方法であって、
前記無線リソースを分割して割り当てるステップにおいて、自端末の利用するサービス内容に応じて分割することを特徴とするものである。
【0016】
第6の観点に係る発明は、第4または第5の観点に係る方法において、
前記第2の無線リソースを利用するデータ通信のデータ量をカウントするステップをさらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る無線端末及び無線リソース割当制御方法によれば、任意の無線リソースを自端末のデータ通信用に分割割当するようにリソース割当を制御するようにしたので、自端末のデータ通信に必要な最低限の無線リソースを確保しながらも、データ中継に無線リソースを開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線端末の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る第1及び第2の無線リソース量の設定の一例を示す図である。
【図3】メッシュネットワークの構成の一例を示す図である。
【図4】従来のデータ中継端末における無線リソース利用制御の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線端末の概略構成を示す機能ブロック図である。端末10は、メモリ11、管理部12および分割割当部13を備えるスケジューラ14と、カウント部15と、無線部16Aと、無線部16Bと、を備える。端末10は、メッシュネットワーク等を構成する端末であって、他の無線端末のデータを中継することができる。メモリ11は、自端末による動画やテキストデータの送受信、通信アプリケーションの使用等のために必要とされる無線リソース(以下、第1の無線リソースという)に関する設定情報を記憶する。また、スケジューラ14の管理部12は、メモリ11に記憶された設定情報に基づいて第1の無線リソース量を管理する。第1の無線リソース量の設定情報は、自端末が利用するサービス内容に応じて、ユーザにより任意に設定することができる。例えば、図2に示すように、ユーザが、通信サービスをほとんど利用しないため、自端末のデータ通信をほとんど行わないと判断した場合には、利用可能な無線リソースの90%をデータ中継のために開放することができる。また、ユーザは、利用する通信サービスの内容に応じて、データ中継に開放する無線リソースの割合を50%や10%とすることができる。
【0021】
スケジューラ14の分割割当部13は、管理部12で管理される第1の無線リソース量に応じて、自端末の利用可能な無線リソース全体を、上述した第1の無線リソースと、それ以外の無線リソースである第2の無線リソースとに分割する。第2の無線リソースは、メッシュネットワークを構成する他の無線端末のためのデータ中継に割り当てられるものである。
【0022】
尚、上述した、メモリ11、スケジューラ14、カウント部15は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やCPUにより構成することができる。
【0023】
以下、本実施の形態に係る無線端末の概略動作について説明する。ここでは、無線リソースの50%を第1の無線リソースに割り当てるとする設定情報をメモリ11に記憶したとする。この設定情報に従い、スケジューラ14の管理部12が、第1の無線リソース量を管理する。端末10がデータ中継を行う際には、分割割当部13は、管理部12が管理する第1の無線リソース量に従って、無線リソースを第1及び第2の無線リソースに分割し、第2の無線リソースをデータ中継に割り当てる。データ中継をしている最中に、自端末データ通信要求が発生すると、端末10は、あらかじめ確保していた第1の無線リソース(即ち、無線リソースの50%)を自端末データ通信に割り当てる。したがって、中継データの送信元端末はデータ量を削減する必要が無く、かつ、端末10は自端末データ通信を待機させる必要も無いので、中継データの送信側端末、受信側端末は、共に安定したデータ中継を継続することができる。
【0024】
端末10がデータ中継を開始すると、スケジューラ14は、中継データ量をカウント部15に通知する。当該カウント部15は、そのデータ量をカウントする。そして、端末装置10はカウントした中継データ量を図示しないネットワーク上の課金サーバに定期的に通知する。
【0025】
本実施例に係る無線端末は、ユーザにより任意に設定された設定情報にしたがって通信リソースを分割及び割り当てるため、他の無線端末のデータを中継している最中であっても、自端末のための無線リソースを確保し、通信を行うことができる。したがって、中継端末が中継データの送信元の端末に対して送信データ量の削減を求めることは無いため、メッシュネットワークを構築する端末の負担を低減し、安定したメッシュネットワークを構築できる。また、カウント部15が中継データ量をカウントできるので、通信事業者らは、各端末のデータ中継量に応じて、端末の通信サービス使用料を割引する等の枠組みを構築することが可能になる。
【0026】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。
【0027】
例えば、第1の無線リソース量を、自端末のデータ通信に要するリソース量よりも少なくなるように設定することも可能である。この場合、通信速度が遅くなり、利便性が損なわれることが想定されるが、上述のような使用量を割引する枠組があれば、損なわれた利便性を相殺することができる。このように、本実施例は、通信事業者及び端末ユーザに新たな通信サービスの選択肢を提供することができる。
【0028】
また、無線リソースを開放する割合をユーザが任意に決定するのではなく、あらかじめ所定割合の無線リソースを自端末用に確保するように端末を設定することも可能である。または、スケジューラが、端末の使用状態の時間統計に基づいて、自動的に無線リソースを開放する割合を調節することも可能である。
【0029】
また、カウント部が中継データだけでなく自端末のデータ通信のデータ量もカウントし、第1の無線リソース量よりも自端末のデータ通信のデータ量が少ない場合には、分割割当部が第1の無線リソース量を削減するように、端末を構成することも可能である。これにより、自端末の無線リソースを有効に活用できるようになり、データ中継の効率化ができる。これとは逆に、中継データ量が第2の無線リソース量よりも少ない場合には、第2の無線リソース量を削減して、第1の無線リソース量を増加させるように、端末を構成することも可能である。これにより、第1の無線リソースの全てを使用して、自端末で通信アプリケーションを起動している場合において、他の通信アプリケーションを起動する必要が生じた場合であっても、第2の無線リソースに空きがあれば、第1の無線リソース量を増やして、他の通信アプリケーションの起動に対応することが可能になる。
【符号の説明】
【0030】
10 端末
11 メモリ
12 管理部
13 分割割当部
14 スケジューラ
15 カウント部
16A 無線部
16B 無線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の無線端末から他方の無線端末に送信されるデータを中継可能な無線端末であって、
自端末が送信元となるデータ通信に要する第1の無線リソースを管理する管理部と、
メッシュネットワークを構成する他の無線端末のデータを中継する際に、自端末の利用可能な無線リソースを前記第1の無線リソースと、前記中継に利用する第2の無線リソースとに分割して割り当てる分割割当部と、
を備えることを特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記分割割当部は、前記第2の無線リソースを分割して割り当てる際に、自端末の利用するサービス内容に応じて分割することを特徴とする請求項1に記載の無線端末。
【請求項3】
前記第2の無線リソースを利用するデータ通信のデータ量をカウントするカウント部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の無線端末。
【請求項4】
一方の無線端末から他方の無線端末に送信されるデータを中継可能な無線端末における無線リソースの割り当てを制御する方法であって、
自端末が送信元となるデータ通信に要する第1の無線リソースを管理するステップと、
メッシュネットワークを構成する他の無線端末のデータを中継する際に、自端末の利用可能な無線リソースを、前記第1の無線リソースと、前記中継に利用する第2の無線リソースとに分割して割り当てるステップと、
を備えることを特徴とする無線リソースの割り当てを制御する方法。
【請求項5】
前記無線リソースを分割して割り当てるステップにおいて、自端末の利用するサービス内容に応じて分割することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の無線リソースを利用するデータ通信のデータ量をカウントするステップをさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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