説明

無線装置および送信方法

【課題】周波数分割多重がなされている状況下において、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率を向上する技術を提供する。
【解決手段】ガードインターバル相関処理部16は、周波数領域において連続して配置された複数の帯域のうち、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域を調査する。動作制御部18は、調査した結果を記憶する。動作制御部18は、記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域と、他の無線装置がOFDMシンボルを非送信である第2帯域とを選択する。OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成する。周波数変換部36は、生成したタイミングにしたがって、選択した第2帯域においてOFDMシンボルを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信技術に関し、特にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を送信する無線装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数分割多重通信は、周波数帯域を分割して複数のチャンネルを同時に使用する。このような無線通信の場合、互いの干渉を低減するために、隣接チャンネル間には一定のガードバンドが一般的に配置される。OFDMにおいても例外ではなく、例えば地上デジタル放送では、1セグメントの帯域がガードバンドとして使用されている。ガードバンドの配置は、隣接チャンネルの干渉を低減するために必要ではあるが、限られた周波数帯域を有効利用する視点から考えればない方が望ましい。しかしながら、ガードバンドをなくして全周波数帯域を通信に使用すれば、周波数帯域を最大限に有効利用できるが、隣接チャンネルからの干渉が問題となる。
【0003】
複数の無線装置間で通信を実行する場合に、一方がマスタ機器として動作し、他方がスレーブ機器として動作することがある(例えば、特許文献1)。このようなマスタモードとスレーブモードとを周波数分割多重のOFDM通信、特に地上デジタル放送でのワンセグメント放送に適用すると、隣接セグメントのOFDM信号をマスタとしてシンボル同期が実行される。シンボル同期したタイミングにてOFDM信号を送信することによって、隣接したセグメント間にガードバンドがなくても、チャンネル間の干渉が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−197452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隣接セグメントのOFDM信号に同期したタイミングのOFDM信号を送信する場合、マスタとなる基準のOFDM信号は、特定の1セグメント帯域を使用して常時送信されている必要がある。そのため、マスタモードで動作する無線装置と、スレーブモードで動作する無線装置とは固定されるべきである。一方、マスタとなるべきセグメントにおいてOFDM信号が常時送信されていない場合、スレーブモードで動作中の無線装置が存在しているにもかかわらずマスタが消失してしまうおそれがある。
【0006】
また、放送のために選択されるセグメントが任意である場合、マスタとなるOFDM信号が先行して送信されていたとしても、そのセグメントは固定ではない。そのため、どのセグメントで送信されているOFDM信号をマスタにすればよいか不明になるおそれもある。これらを解決するためには、ある特定のセグメントをマスタとして固定し、当該セグメントにおいてOFDM信号が常時送信されていればよい。しかしながら、これによって一定の帯域が占有されてしまうので、同時に使用可能なセグメント数が少なくなってしまう。これは周波数の利用効率が低減することに相当する。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、周波数分割多重がなされている状況下において、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率を向上する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、周波数領域において連続して配置された複数の帯域のうち、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域を調査する調査部と、調査部が調査した結果を記憶する記憶部と、記憶部が記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域と、他の無線装置がOFDMシンボルを非送信である第2帯域とを選択する選択部と、選択部が選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成する同期部と、同期部が生成したタイミングにしたがって、選択部が選択した第2帯域においてOFDMシンボルを送信する送信部とを備える。調査部は、送信部がOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行し、記憶部は、調査部における調査結果を更新して記憶し、選択部は、第1帯域においてOFDMシンボルが非受信になった場合に、記憶部に記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択し、同期部は、選択部において新たに選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成する。
【0009】
この態様によると、第1帯域においてOFDMシンボルが非受信になった場合に、記憶した調査結果をもとに、別の第1帯域を新たに選択するので、タイミング生成の基準にしているOFDMシンボルが非受信になっても、新たな基準を直ちに使用できる。
【0010】
選択部は、第1帯域においてOFDMシンボルが再び非受信になった場合であっても、記憶部に記憶した調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていれば、そのうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択してもよい。この場合、調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていれば、そのうちのひとつである第1帯域を新たに選択するので、干渉を低減できる。
【0011】
同期部は、第1帯域においてOFDMシンボルが再び非受信になった場合に、記憶部に記憶した調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていなければ、自律的なタイミングを生成してもよい。この場合、調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていなければ、自律的なタイミングを生成するので、干渉を生じさせずに、タイミングを生成できる。
【0012】
本発明の別の態様は、送信方法である。この方法は、周波数領域において連続して配置された複数の帯域のうち、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域を調査するステップと、調査した結果をメモリに記憶するステップと、メモリに記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域と、他の無線装置がOFDMシンボルを非送信である第2帯域とを選択するステップと、選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成するステップと、生成したタイミングにしたがって、選択した第2帯域においてOFDMシンボルを送信するステップとを備える。調査するステップは、送信するステップがOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行し、記憶するステップは、調査結果をメモリに更新して記憶し、選択するステップは、第1帯域においてOFDMシンボルが非受信になった場合に、メモリに記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択し、生成するステップは、新たに選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成する。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周波数分割多重がなされている状況下において、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a)−(b)は、本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システムにおけるセグメントの配置を示す図である。
【図2】図1のエリアワンセグメント放送システムにおける無線装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(e)は、図2のガードインターバル相関処理部における動作概要を説明する図である。
【図4】図2の動作制御部の構成を示す図である。
【図5】図2のOFDMフレーム構成タイミング生成部の構成を示す図である。
【図6】図6(a)−(f)は、図5のOFDMフレーム構成タイミング生成部における動作概要を説明する図である。
【図7】図7(a)−(d)は、図5のOFDMフレーム構成タイミング生成部における別の動作概要を説明する図である。
【図8】図4の既占有セグメント記憶部による記憶手順を示すフローチャートである。
【図9】図4のセグメント選択部による選択手順を示すフローチャートである。
【図10】図4の動作モード設定部による設定手順を示すフローチャートである。
【図11】図4のマスタセグメント選択部による選択手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、エリアワンセグメント放送におけるコンテンツ配信サービスを実現するために、コンテンツデータが含まれたOFDM信号を送信する無線装置に関する。エリアワンセグメント放送とは、地上デジタル放送のひとつであるワンセグメント放送を利用し、放送事業者によって使用される送信電力よりも低い送信電力によって、狭いエリアに限定的にコンテンツデータを送信するサービスである。そのため、各無線装置は、ワンセグメント放送と同様に、1セグメントのみを使用する。当該エリアワンセグメント放送においては、周波数の利用効率を向上させるために、周波数帯域において連続して配置された複数のセグメントがそれぞれ使用されており、セグメント間にガードバンドが設定されていない。また、各無線装置は、所定の期間にわたってOFDM信号を送信してから送信を停止するという動作を繰り返す。このような状況において、隣接セグメント間の干渉を低減するために、無線装置は、次の処理を実行する。
【0017】
無線装置では、スレーブモードとマスタモードとが規定される。無線装置は、OFDM信号の送信を開始する際に、他の無線装置が先行してOFDM信号を送信中のセグメントが存在する場合、スレーブモードの動作を選択し、セグメントが存在しない場合、マスタモードの動作を選択する。スレーブモードで動作する場合、無線装置は、複数のセグメントにおけるOFDM信号検出を定期的に実行することによって、他の無線装置によって使用されているセグメントを検出し、検出結果を記憶する。また、無線装置は、検出結果をもとに、既に使用されているセグメントのひとつをマスタセグメントとして選択し、使用されていないセグメントのひとつを使用すべきセグメント(以下、「使用セグメント」という)として選択する。無線装置は、マスタセグメントにおいて受信したOFDM信号のOFDMシンボルに同期したタイミングを生成し、生成したタイミングにてOFDMシンボルを生成する。さらに、無線装置は、生成したOFDMシンボルを使用セグメントにて送信する。
【0018】
無線装置は、マスタセグメントでのOFDM信号の送信が中断した場合に、記憶した検出結果をもとに、使用が継続されている別のセグメントをマスタセグメントとして新たに選択する。つまり、マスタセグメントの切替がなされる。その際、もとのマスタセグメントに関する情報は、検出結果から削除される。無線装置は、新たなマスタセグメントに対して同期処理を実行する。なお、このような処理を繰り返しているときに、すべてのセグメントにおいてOFDM信号の送信が停止された場合、無線装置は、スレーブモードをマスタモードに切りかえることによって、自律的なタイミングにてOFDM信号を送信する。このように、マスタセグメントは固定されず、任意のセグメントがマスタセグメントになりうる。
【0019】
図1(a)−(b)は、本発明の実施例に係るエリアワンセグメント放送システムにおけるセグメントの配置を示す。図1(a)は、本実施例において使用されるセグメントに相当する。図示のごとく、5.7MHz帯域幅の中に13個のセグメントが配置されており、これは地上デジタル放送と同一である。そのため、各セグメントは、約429kHzの帯域を有する。地上デジタル放送では、中央のセグメント0がワンセグメント放送に使用される。エリアワンセグメント放送において、サービスを提供するチャンネルが増えた場合、セグメント0だけを使用していてはチャンネル不足になってしまう。そこでチャンネル数を増やすために、本実施例では、中央のセグメント0以外の12個のセグメントも使用する。この場合、使用される12個の各セグメント間、すなわち各エリアワンセグメント放送を放送する各チャンネル間にはガードバンドが設けられていない状況となる。
【0020】
図1(b)は、本実施例の比較対象となるセグメントの配置である。ここでは、ひとつおきのセグメントを使用し、その間のセグメントをガードバンドとして使用する。そのため、図1(a)と同一幅の周波数帯域において、7セグメントしか使用できない。しかしながら、ガードバンドを設けることによって、セグメント間の干渉が低減される。そのため、異なったセグメントに対する連結送信が不要になり、シンボルタイミング同期も不要になる。一方、前述のごとく、本実施例では、図1(a)のごとく、ガードバンドが設けられていないので、これらに対する対策が必要になる。
【0021】
図2は、エリアワンセグメント放送システムにおける無線装置100の構成を示す。無線装置100は、受信処理部10、送信処理部12を含む。また、受信処理部10は、ワンセグメントチューナ14と総称される第0ワンセグメントチューナ14a、第1ワンセグメントチューナ14b、第12ワンセグメントチューナ14m、ガードインターバル相関処理部16と総称される第0ガードインターバル相関処理部16a、第1ガードインターバル相関処理部16b、第12ガードインターバル相関処理部16m、動作制御部18、スイッチ20、送信キャリア設定部22を含む。また、送信処理部12は、撮像素子24、マイク26、エンコード部28、OFDMフレーム構成部30、OFDMフレーム構成タイミング生成部32、OFDM変調部34、周波数変換部36、局部発振部38、RF部40を含む。
【0022】
ワンセグメントチューナ14は、アンテナを介して図示しない他の無線装置から送信された信号を受信する。13個のワンセグメントチューナ14のそれぞれは、アンテナで受信した信号を入力する。各ワンセグメントチューナ14は、図1(a)に示されたセグメントに1対1で対応する。つまり、各ワンセグメントチューナ14は、互いに異なったセグメントの信号を受信できるように設定されている。各ワンセグメントチューナ14は、設定されたセグメントの信号を抽出する。各ワンセグメントチューナ14は、抽出した信号をガードインターバル相関処理部16へ出力する。
【0023】
ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14と同様に13個備えられ、13個のガードインターバル相関処理部16のそれぞれは、ワンセグメントチューナ14と1対1で対応する。各ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14からの信号を入力する。各ガードインターバル相関処理部16は、ワンセグメントチューナ14から入力した信号に対して、ガードインターバルでの相関処理を実行する。受信される信号は、OFDM信号である。このOFDM信号は、OFDMシンボルとよばれる所定単位期間毎に区切って送信される。各OFDMシンボルの先頭部分には、ガードインターバルが付加され、それにつづいて有効シンボルが配置されている。また、ガードインターバルは、OFDMシンボルの最後の部分を複製することによって作成されている。なお、以降の説明ではOFDM信号を、OFDMシンボル、または単に信号と呼ぶことがある。
【0024】
そのため、ガードインターバル相関処理部16は、入力した信号を有効シンボルの期間だけ遅延させ、遅延させた信号と入力した信号との相関値を検出する。当該相関値は、ガードインターバルの部分を入力しているときにピークとなる。そのため、相関値を検出することによって、OFDMシンボルの開始タイミングを検出することができる。これは、OFDM信号を受信していることを検出することに相当する。つまり、ガードインターバル相関処理部16は、周波数領域において連続して配置された複数のセグメントのうち、他の無線装置がOFDM信号を送信している帯域を調査する。なお、ガードインターバル相関処理部16は、後述のごとく無線装置100がOFDM信号を送信している場合においても調査を繰り返し実行する。以下では、本機器が送信を開始する時点で他の無線装置によって既に先行して使用されているセグメントを便宜的に「既占有セグメント」という。
【0025】
図3(a)−(e)は、ガードインターバル相関処理部16における動作概要を説明する図である。図3(a)は、OFDMシンボルの構成を示す。前述のごとく、OFDMシンボルは、ガードインターバル(GI)と有効シンボルとの組合せによって構成される。ここでは、有効シンボルの後ろの部分を切り出し、これをGIとして有効シンボルの前に付加されている。図3(b)は、受信されるOFDM信号の構成を示す。図示のごとく、図3(a)に示されたOFDMシンボルが繰り返されている。図3(c)は、相関処理を実行すべき区間を示す。図示のごとく、有効シンボル長離れたふたつのウインドウが設定されており、各ウインドウはGI長の相当区間を有する。ここでは、Highレベルの区間がウインドウを示す。ガードインターバル相関処理部16は、ふたつのウインドウに入力された信号同士に対して相関処理を実行する。
【0026】
図3(d)は、相関処理によって生成された相関値を示す。相関値は、GIの中においてピークになる。図3(e)は、図3(d)の相関値をもとに生成したシンボル区間パルスを示す。シンボル区間パルスは、相関値のピーク近傍のタイミングにおいてLowレベルになり、それ以外の期間においてHighレベルになる波形である。シンボル区間パルスを生成することは、前述のOFDMシンボルの開始タイミングを検出することに相当する。なお、ワンセグメントチューナ14およびガードインターバル相関処理部16にOFDM信号が入力されていない場合、シンボル区間パルスは、Highレベルを維持している。図2に戻る。ガードインターバル相関処理部16は、動作制御部18にシンボル区間パルスを出力する。
【0027】
動作制御部18は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスを入力する。動作制御部18は、シンボル区間パルスをもとに、所定の処理を実行する。所定の処理とは、(1)既占有セグメントの認識処理、(2)使用セグメントの選択処理、(3)動作モードの設定処理、(4)スレーブモードにおけるマスタセグメントの選択処理である。既占有セグメントの認識処理は、使用されているセグメントの有無の認識と記憶である。使用セグメントの選択処理は、無線装置100が使用すべきセグメント番号の設定である。動作モードの設定処理は、無線装置100の動作モードとして、マスタモードあるいはスレーブモードの設定である。マスタセグメントの選択処理は、スレーブモードで動作する場合のマスタセグメントの設定である。これらの処理によって、所定のセグメント、例えば0番のセグメントをマスタセグメントとし、別のセグメント、例えば2番のセグメントを使用セグメントとし、マスタセグメントでのOFDM信号をマスタとし、使用セグメントでのOFDMシンボル同期送信を行う。一方、マスタセグメントが設定されない場合には、マスタモードとして動作される。
【0028】
図4は、動作制御部18の構成を示す。動作制御部18は、既占有セグメント記憶部50、セグメント選択部52、動作モード設定部54、マスタセグメント選択部56を含む。
(1)既占有セグメントの認識処理
既占有セグメント記憶部50は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスをもとに既占有セグメントの有無と該当セグメント情報を取得する。つまり、既占有セグメント記憶部50は、各セグメントに対して、シンボル区間パルスのなかにLowレベルの区間が含まれているかを監視することによって、それぞれのセグメントが既占有セグメントであるか否かの情報を取得する。
【0029】
ここで、既占有セグメント記憶部50は、Lowレベルの区間が含まれている場合、既占有セグメントであると判定し、Lowレベルの区間が含まれていない場合、空きのセグメントであると判定する。既占有セグメント記憶部50は、取得した情報、つまりガードインターバル相関処理部16での調査結果を記憶する。前述のごとく、ガードインターバル相関処理部16は、後述のごとく無線装置100がOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行するので、既占有セグメント記憶部50は、取得を繰り返し実行することによって、調査結果を更新して記憶する。更新とは具体的には既占有セグメントにおいてOFDMシンボルの送信が終了した場合、既占有セグメント記憶部50は、そのOFDMシンボルの送信が終了した既占有セグメントに関する情報を削除する処理である。なお、新たにOFDMシンボルの送信を開始したセグメントについては既占有セグメントとはしない。
【0030】
(2)使用セグメントの選択処理
セグメント選択部52は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、セグメント選択部52は、既占有セグメント記憶部50の内容を参照し、他の無線装置100がOFDMシンボルを非送信であるセグメント、つまり使用されていない任意のセグメントとを選択する。選択されたセグメントが、前述の使用セグメントに相当する。また、セグメント選択部52は、信号送信終了時に、それまで選択していた使用セグメントを解放する。次に、信号送信を再開する際に、セグメント選択部52は、使用セグメントを新たに選択する。
【0031】
(3)動作モードの設定処理
動作モード設定部54は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、動作モード設定部54は、既占有セグメント記憶部50の内容を参照し、既占有セグメントが存在する場合、つまり他の無線装置がOFDM信号を送信しているセグメントが存在する場合、スレーブモードを設定する。一方、動作モード設定部54は、既占有セグメントが存在しない場合、マスタモードを設定する。スレーブモードを設定した場合、動作モード設定部54は、信号送信動作中にわたってマスタセグメント選択部56での選択内容を監視し、マスタセグメントが存在しなくなれば、マスタモードへ移行させる。マスタモードを設定した場合、動作モード設定部54は、信号送信終了までマスタモードを維持する。
【0032】
(4)スレーブモードにおけるマスタセグメントの選択処理
マスタセグメント選択部56は、信号送信開始時に、既占有セグメント記憶部50での記憶が終了したこと、つまり既占有セグメント初期設定が終了したことを確認する。確認後、マスタセグメント選択部56は、動作モード設定部54での設定内容を参照し、動作モードがスレーブモードである場合に、マスタセグメントの初期設定を実行する。動作モードがスレーブモードである場合、既占有セグメント記憶部50には、少なくともひとつの既占有セグメントに関する情報が記憶されている。そのため、マスタセグメント選択部56は、そのうちのひとつの既占有セグメントを任意に選択する。選択した既占有セグメントが、マスタセグメントに相当する。
【0033】
マスタセグメント選択部56は、信号送信動作中にわたって、既占有セグメント記憶部50の記憶内容を参照することによって、マスタセグメントの信号送信状態を監視する。マスタセグメントが既占有セグメント記憶部50から消失した場合、つまりマスタセグメントでの信号送信が終了した場合、マスタセグメント選択部56は、既占有セグメント記憶部50の記憶内容を参照する。既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていれば、マスタセグメント選択部56は、それまでマスタセグメントとして選択していた既占有セグメントとは異なった既占有セグメントを任意に新たに選択する。なお、マスタセグメントでの信号送信が終了したことは、OFDM信号が非受信になったことに相当する。マスタセグメント選択部56は、新たに選択した既占有セグメントを新たなマスタセグメントに設定して、スレーブ動作を継続させる。
【0034】
このように新たに設定したマスタセグメントでの信号送信が終了した場合、マスタセグメント選択部56は、これまでと同様の処理を繰り返し実行する。つまり、マスタセグメント選択部56は、既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていれば、それまでマスタセグメントとして選択していた既占有セグメントとは異なった既占有セグメントをマスタセグメントして任意に新たに選択する。一方、既占有セグメント記憶部50に既占有セグメントに関する情報が含まれていなければ、マスタセグメント選択部56は、処理を停止する。このような場合には、動作モード設定部54によって、スレーブモードからマスタモードへの切替がなされるからである。なお、動作モード初期設定がマスタモードである場合、マスタセグメント選択部56は、処理を実行しない。図2に戻る。
【0035】
スイッチ20は、各ガードインターバル相関処理部16からのシンボル区間パルスを入力するとともに、動作制御部18からの動作モードに関する情報を入力する。また、動作モードがスレーブモードである場合、スイッチ20は、動作制御部18から、マスタセグメントに関する情報も入力する。スイッチ20は、動作モードがスレーブモードである場合、マスタセグメントに関する情報をもとに、マスタセグメントに対応したシンボル区間パルスを選択する。スイッチ20は、選択したシンボル区間パルスをOFDMフレーム構成タイミング生成部32に出力する。一方、スイッチ20は、動作モードがマスタモードである場合、出力を停止する。送信キャリア設定部22は、動作制御部18から使用セグメントに関する情報を入力する。送信キャリア設定部22は、使用セグメントに対する周波数を局部発振部38に設定する。
【0036】
撮像素子24は、動画像あるいは静止画像(以下、これらを「画像」と総称する)を撮像する。撮像素子24は、撮像した画像のデジタルデータ(以下、これを「画像」という)をエンコード部28に出力する。マイク26は、音声を取得する。マイク26は、取得した音声のデジタルデータ(以下、これを「音声」という)をエンコード部28に出力する。なお、画像および音声は、無線装置100によって配信されるコンテンツデータに相当する。なお、コンテンツデータは、これに限定されるものではなく、他のものであってもよい。例えば、予め記憶された画像や、図示しないネットワークを介して取得された情報がコンテンツとされてもよい。エンコード部28は、撮像素子24から画像を入力するとともに、マイク26から音声も入力する。エンコード部28は、画像および音声に対してエンコードを実行する。なお、エンコードには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。エンコード部28は、エンコード結果(以下、「データ」という)をOFDMフレーム構成部30に出力する。
【0037】
OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、動作制御部18からの動作モードに関する情報を入力する。動作モードがスレーブモードである場合に、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、スイッチ20からのシンボル区間パルスを入力する。OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、入力したシンボル区間パルスをもとに、マスタセグメントで受信したOFDMシンボルに同期したタイミング(以下、「シンボルタイミング」という)を生成する。また、マスタセグメントが切りかわった場合、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、新たに選択したマスタセグメントにおいて受信したOFDMシンボルに同期したシンボルタイミングを生成する。一方、動作モードがマスタモードである場合に、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、基準となるタイミングを使用せずにフリーランで動作することによって、自律的なタイミングを生成する。
【0038】
前述のごとく、スレーブモードで動作中に、マスタセグメントにおいてOFDMシンボルが非受信になり、かつ既占有セグメント記憶部50に記憶した調査結果において、既占有セグメントが含まれていなければ、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、スレーブモードからマスタモードに動作モードを切りかえる。その結果、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、フリーランで動作するようになる。ここでは、スレーブモードに対応したOFDMフレーム構成タイミング生成部32の構成をさらに詳しく説明する。
【0039】
図5は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32の構成を示す。OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、OFDM伝送シンボルカウンタ60、比較器62、EN回路64、ゲート素子66を含む。また、信号として、シンボル区間パルス200、シンボル区間セットパルス202、シンボルタイミング204、A<C信号206、セットパルスディセーブル信号208を含む。ここでは、図6(a)−(f)および図7(a)−(f)を使用しながら、OFDMフレーム構成タイミング生成部32の構成を説明する。図6(a)−(f)は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32における動作概要を説明する図である。図6(a)は、マスタセグメントにおいて受信されるOFDM信号の構成を示す。図6(b)は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32に入力されるシンボル区間パルス200を示す。図6(a)および(b)は、図3(b)および(e)と同様である。図5に戻る。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、シンボル区間パルス200を入力する。
【0040】
OFDM伝送シンボルカウンタ60は、例えば、10ビットのカウンタであり、1024カウントを実行する。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、シンボル区間パルス200によってカウンタの値に「3F7h」をロードする。OFDM伝送シンボルカウンタ60は、カウントデータCを比較器62に出力する。比較器62は、カウントデータCと比較データA「3ECh」とを比較する。比較器62は、比較結果がA<Cであれば、A<C信号206をHighレベルにする。一方、比較器62は、それ以外の場合にA<C信号206をLowレベルにする。比較器62は、A<C信号206をEN回路64に出力する。
【0041】
EN回路64は、比較器62からA<C信号206を入力するとともに、図示しないOFDMフレーム構成部30からシンボルタイミング204を入力する。シンボルタイミング204は、OFDMフレーム構成部30においてOFDMシンボルを生成する際に使用しているタイミングである。EN回路64は、A<C信号206がHighレベルである場合に、シンボルタイミング204がLowレベルになれば、セットパルスディセーブル信号208をHighレベルに設定する。一方、EN回路64は、A<C信号206がLowレベルである場合に、シンボルタイミング204がLowレベルになれば、セットパルスディセーブル信号208をLowレベルに設定する。セットパルスディセーブル信号208は、シンボル区間セットパルス202をディセーブルするための信号である。EN回路64は、セットパルスディセーブル信号208をゲート素子66に出力する。図6(c)は、セットパルスディセーブル信号208を示す。図5に戻る。
【0042】
ゲート素子66は、シンボル区間パルス200を入力するとともに、セットパルスディセーブル信号208を入力する。ゲート素子66は、セットパルスディセーブル信号208がHighレベルであれば、シンボル区間セットパルス202をHighレベルに維持する。一方、ゲート素子66は、セットパルスディセーブル信号208がLowレベルであれば、シンボル区間パルス200が次にLowレベルである間にわたって、シンボル区間セットパルス202をLowレベルに設定する。図6(d)は、シンボル区間セットパルス202を示す。図6(e)は、シンボル区間セットパルス202をもとに、図示しないOFDMフレーム構成部30において生成されたシンボルタイミング204を示す。図6(f)は、シンボルタイミング204をもとに、図示しないOFDMフレーム構成部30において生成されたOFDM信号を示す。図5に戻る。なお、OFDMフレーム構成部30は、シンボル区間セットパルス202がLowレベルになったタイミングをOFDMシンボルの先頭タイミングとして、OFDMシンボル間隔でLowレベルになるようなシンボルタイミング204を生成する。
【0043】
このような処理は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32における監視処理といえる。具体的に説明すると、OFDMフレーム構成タイミング生成部32は、シンボルタイミング204とシンボル区間パルス200との誤差が一定の区間内(以下、「シンボル同期区間」という)におさまっているかを監視している。これを説明するために、図7(a)−(d)を使用する。図7(a)−(d)は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32における別の動作概要を説明する図である。図7(a)は、シンボル区間パルス200の一部である。
【0044】
図7(b)は、A<C信号206を示す。A<C信号206がHighレベルである区間は、シンボル同期と判定される区間、つまりGIを超えない内側の区間になっている。この区間内に、シンボルタイミング204のLowレベルが到来すれば、同期が維持されているといえる。その際、セットパルスディセーブル信号208は、Highレベルになるので、シンボル区間セットパルス202がLowレベルにならない。一方、A<C信号206がLowレベルである区間に、シンボルタイミング204のLowレベルが到来すれば、同期が維持されていない。その際、セットパルスディセーブル信号208は、Lowレベルになるので、次に到来するシンボル区間パルス200のLowレベルによって、シンボル区間セットパルス202がLowレベルになる。
【0045】
図7(c)は、A<C信号206がLowレベルである場合のシンボルタイミング204を示し、図7(d)は、A<C信号206がLowレベルである場合のセットパルスディセーブル信号208を示す。このような比較の結果、タイミングのずれが、GIを超える手前のシンボル同期区間を超えたら、シンボルタイミング204をシンボル区間パルス200でセットしなおすために、シンボル区間セットパルス202が出力される。その際、図6(f)に示されたシンボル区間セットパルス202でセットしなおす手前のOFDMシンボルは、GIの半分以下程度短くなるが、有効シンボル長が確保されているので問題にならない。
【0046】
また、シンボル区間セットパルス202によって、GI内の粗いタイミングでOFDMシンボルがセットされている。これは、エリアワンセグメント放送が、地上デジタル放送とは異なり、送信電力が低く、遠方から到来する反射波を想定しなくてもよい環境であるからである。例えば、モード3、GI=1/8におけるOFDMシンボルの期間は約1.125msでなる。この基準がマスタセグメントのタイミングであったと仮定し、かつ無線装置100でのOFDMシンボルの周波数が基準に対して1ppmずれていると仮定すれば、約62.5秒周期でタイミングがセットされる。図2に戻る。
【0047】
OFDMフレーム構成部30は、OFDMフレーム構成タイミング生成部32からシンボル区間セットパルス202を入力する。前述のごとく、OFDMフレーム構成部30は、シンボル区間セットパルス202をもとにシンボルタイミング204を生成する。また、OFDMフレーム構成部30は、シンボルタイミング204をOFDMフレーム構成タイミング生成部32にフィードバックする。OFDMフレーム構成部30は、エンコード部28からデータを入力する。OFDMフレーム構成部30は、シンボルタイミング204にしたがってデータを配置させる。これは、シンボルタイミング204にて示されたシンボル単位にデータをまとめることに相当する。また、OFDMフレーム構成部30は、データに対して誤り訂正の符号化を実行してもよい。OFDMフレーム構成部30において生成される信号は、周波数領域の信号に相当する。OFDMフレーム構成部30は、周波数領域の信号をOFDM変調部34に出力する。
【0048】
OFDM変調部34は、OFDMフレーム構成部30からの周波数領域の信号に対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行することによって、有効シンボルを生成する。また、OFDM変調部34は、GIを有効シンボルに付加することによって、ベースバンドのOFDMシンボルを生成する。OFDM変調部34は、ベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換部36に出力する。局部発振部38は、送信キャリア設定部22によって設定された周波数の局部信号を出力する。周波数は、使用セグメントに対応する。
【0049】
周波数変換部36は、OFDM変調部34から、ベースバンドのOFDMシンボルを入力し、局部発振部38から、局部信号も入力する。周波数変換部36は、局部信号によってベースバンドのOFDMシンボルを周波数変換することによって、無線周波数のOFDMシンボルを生成する。周波数変換部36は、無線周波数のOFDMシンボルをRF部40に出力する。RF部40は、周波数変換部36からの無線周波数のOFDMシンボルを増幅した後、アンテナから送信する。これらの処理によって、スレーブモードで動作している場合に、マスタセグメントでのタイミングに同期したタイミングにしたがって、使用セグメントからOFDMシンボルが送信される。
【0050】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0051】
以上の構成による無線装置100の動作を説明する。図8は、既占有セグメント記憶部50による記憶手順を示すフローチャートである。信号送信開始でなければ(S10のN)、待機される。信号送信開始であれば(S10のY)、既占有セグメント記憶部50は、ガードインターバル相関検出部からの結果を取得する(S12)。既占有セグメント記憶部50は、既占有セグメントを初期設定する(S14)。信号送信が終了せず(S16のN)、既占有セグメント中に信号送信終了セグメントがなければ(S18のN)、ステップ16に戻る。既占有セグメント中に信号送信終了セグメントがあれば(S18のY)、既占有セグメント記憶部50は、既占有セグメント情報を更新、すなわち信号送信終了セグメントを既占有セグメント情報から削除し(S20)、ステップ16に戻る。信号送信が終了すれば(S16のY)、処理は終了される。
【0052】
図9は、セグメント選択部52による選択手順を示すフローチャートである。信号送信開始でなければ(S40のN)、待機される。信号送信開始であり(S40のY)、既占有セグメント初期設定が終了すれば(S42のY)、セグメント選択部52は、既占有セグメント記憶部50の内容を取得する(S44)。一方、既占有セグメント初期設定が終了しなければ(S42のN)、ステップ42に戻る。セグメント選択部52は、使用セグメントを選択する(S46)。信号送信が終了しなければ(S48のN)、ステップ48に戻る。信号送信が終了すれば(S48のY)、処理は終了される。
【0053】
図10は、動作モード設定部54による設定手順を示すフローチャートである。信号送信開始でなければ(S60のN)、待機される。信号送信開始であり(S60のY)、既占有セグメント初期設定が終了すれば(S62のY)、動作モード設定部54は、既占有セグメント記憶部50の内容を取得する(S64)。一方、既占有セグメント初期設定が終了しなければ(S62のN)、ステップ62に戻る。使用中セグメントがあれば(S66のY)、動作モード設定部54は、動作モードをスレーブモードに設定する(S72)。動作モード設定部54は、スレーブモードにおけるマスタセグメント選択部56の内容を取得する(S74)。
【0054】
マスタセグメントがあり(S76のY)、信号送信が終了しなければ(S78のN)、ステップ74に戻る。信号送信が終了すれば(S78のY)、処理は終了される。使用中セグメントがない場合(S66のN)、あるいはマスタセグメントがない場合(S76のN)、動作モード設定部54は、動作モードをマスタモードに設定する(S68)。信号送信が終了しなければ(S70のN)、ステップ70に戻る。信号送信が終了すれば(S70のY)、処理は終了される。
【0055】
図11は、マスタセグメント選択部56による選択手順を示すフローチャートである。信号送信開始でなければ(S90のN)、待機される。信号送信開始であり(S90のY)、動作モードの初期設定が終了していれば(S92のY)、マスタセグメント選択部56は、動作モードの内容を確認する(S94)。動作モードの初期設定が終了していなければ(S92のN)、ステップ92に戻る。動作モードがスレーブモードであれば(S96のY)、マスタセグメント選択部56は、マスタセグメントの初期設定を実行する(S98)。信号送信が終了すれば(S100のY)、処理は終了される。信号送信が終了しなければ(S100のN)、マスタセグメント選択部56は、既占有セグメント記憶部50の内容を取得する(S102)。
【0056】
マスタセグメントが残っていれば(S104のY)、ステップ100に戻る。マスタセグメントが残っておらず(S104のN)、既占有セグメント中に残データがあれば(S106のY)、マスタセグメント選択部56は、マスタセグメントを再設定し(S108)、ステップ100に戻る。動作モードがスレーブモードでない場合(S96のN)、あるいは既占有セグメント中に残データがない場合(S106のN)、マスタセグメントなしが設定される(S110)。信号送信が終了しなければ(S112のN)、ステップ112に戻る。信号送信が終了すれば(S112のY)、処理は終了される。
【0057】
本発明の実施例によれば、マスタセグメントでのOFDMシンボルが非受信になった場合に、既占有セグメントの情報をもとに、別の既占有セグメントをマスタセグメントとして新たに選択するので、マスタセグメントでのOFDMシンボルが非受信になっても、新たなマスタセグメントを直ちに使用できる。また、新たなマスタセグメントが直ちに使用されるので、それまでのマスタセグメントの使用が終了する場合であっても、同期したタイミングを生成できる。また、同期したタイミングが生成されるので、セグメント間の干渉を低減できる。
【0058】
また、セグメント間の干渉が低減されるので、ガードバンドを不要にできる。また、ガードバンドが不要にされるので、周波数分割多重がなされている状況下において、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率を向上できる。また、OFDM信号を送信する際の周波数利用効率が向上されるので、同一エリア内で多くのエリアワンセグメントの配信サービスを提供できる。また、既占有セグメントの情報において、既占有セグメントが含まれていれば、そのうちのひとつをマスタセグメントとして新たに選択するので、干渉を低減できる。また、既占有セグメントの情報において、既占有セグメントが含まれていなければ、自律的なタイミングを生成し、仮に送信を行っている機器が存在したとしてもそれらの機器は、本機器をマスタとしてスレーブモードで動作するので、干渉を生じさせずに自律的なタイミングを生成できる。
【0059】
また、複数のデバイスが存在し、それらの任意の1デバイスがマスタとなり共通の通信路を使用して相互通信を行う通信バス(IEEE1394等)と比較した場合、次のような相違点がある。通信バスにおいては、あるマスタデバイスが通信を終了した場合、次にマスタとなるデバイスは、マスタが消失した後に「早い者勝ち」で決定される。一方、本発明の実施例においては、次にマスタになる機器は既に決定しておりマスタ機器の通信が終了した後で、残されたスレーブ機器のうちから早い者勝ちで次のマスタが決定されることはない。
【0060】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
10 受信処理部、 12 送信処理部、 14 ワンセグメントチューナ、 16 ガードインターバル相関処理部、 18 動作制御部、 20 スイッチ、 22 送信キャリア設定部、 24 撮像素子、 26 マイク、 28 エンコード部、 30 OFDMフレーム構成部、 32 OFDMフレーム構成タイミング生成部、 34 OFDM変調部、 36 周波数変換部、 38 局部発振部、 40 RF部、 50 既占有セグメント記憶部、 52 セグメント選択部、 54 動作モード設定部、 56 マスタセグメント選択部、 60 OFDM伝送シンボルカウンタ、 62 比較器、 64 EN回路、 66 ゲート素子、 100 無線装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数領域において連続して配置された複数の帯域のうち、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域を調査する調査部と、
前記調査部が調査した結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域と、他の無線装置がOFDMシンボルを非送信である第2帯域とを選択する選択部と、
前記選択部が選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成する同期部と、
前記同期部が生成したタイミングにしたがって、前記選択部が選択した第2帯域においてOFDMシンボルを送信する送信部とを備え、
前記調査部は、前記送信部がOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行し、
前記記憶部は、前記調査部における調査結果を更新して記憶し、
前記選択部は、第1帯域においてOFDMシンボルが非受信になった場合に、前記記憶部に記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択し、
前記同期部は、前記選択部において新たに選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記選択部は、第1帯域においてOFDMシンボルが再び非受信になった場合であっても、前記記憶部に記憶した調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていれば、そのうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記同期部は、第1帯域においてOFDMシンボルが再び非受信になった場合に、前記記憶部に記憶した調査結果において、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域が含まれていなければ、自律的なタイミングを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
周波数領域において連続して配置された複数の帯域のうち、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域を調査するステップと、
調査した結果をメモリに記憶するステップと、
メモリに記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域と、他の無線装置がOFDMシンボルを非送信である第2帯域とを選択するステップと、
選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成するステップと、
生成したタイミングにしたがって、選択した第2帯域においてOFDMシンボルを送信するステップとを備え、
前記調査するステップは、送信するステップがOFDMシンボルを送信している場合においても調査を繰り返し実行し、
前記記憶するステップは、調査結果をメモリに更新して記憶し、
前記選択するステップは、第1帯域においてOFDMシンボルが非受信になった場合に、メモリに記憶した調査結果をもとに、他の無線装置がOFDMシンボルを送信している帯域のうちのひとつである第1帯域であって、かつそれまで選択していた第1帯域とは異なった第1帯域を新たに選択し、
前記生成するステップは、新たに選択した第1帯域において受信したOFDMシンボルに同期したタイミングを生成することを特徴とする送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−175345(P2012−175345A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34673(P2011−34673)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】