説明

無線装置

【課題】アンテナの方向調整を行い易い受信レベル表示を行うことができる方法を提供する。
【解決手段】対向装置と無線通信を行う無線装置を、対向装置を特定し認識する対向装置認識部12と、対向装置から受信した受信信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部14と、対向装置との間の距離、対向装置の定格送信電力、対向装置の送信アンテナ利得、本装置の受信アンテナ利得に基づき最大受信可能レベルを演算し、該最大受信可能レベルに基づき受信レベル表示の刻み幅を演算する演算部15と、該演算部15で演算した受信レベル表示の刻み幅に基づき受信レベルを表示する表示部16とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置において、例えばアンテナを設置する際にアンテナの方向を調整するための受信レベルの表示方法、該受信レベル表示方法を用いた無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、表示部に予め割り当てた表示範囲や、表示目盛り間隔で、受信レベルを表示していた。図9は、従来例における受信レベル表示を示す図である。図9においては、表示部が8個のLED(LED0〜LED7)を有し、この8個のLEDを用いて、−86dBm未満から−44dBm以上の9つの受信レベルを表示している。例えば、最も受信レベルの低い−86dBm未満においては、LED0〜LED7をいずれも消灯状態とする。また、最も受信レベルの高い−44dBm以上においては、LED0〜LED7をいずれも点灯状態とする。図9において、黒丸は点灯状態、−は消灯状態を示している。例えば特許文献1には、通信相手(対向装置)との距離に依存する降雨減衰量を考慮してアンテナの設置方向の合否を判定する無線装置において、複数のLEDを用いて受信レベルを表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−112554公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の表示では、1つのLEDの点灯・消灯毎に6dBの差を設けることにより、最小受信レベル(−86dBm)〜最大受信レベル(−44dBm)を表示している。この場合、以下の問題がある。
1つ目の問題は、受信レベル表示を用いて、無線装置のアンテナの向きを合わせる場合、6dBm刻みでは広すぎることである。一般的には、アンテナの方向調整は、最大受信レベルであるピークより3dB(半値角)の範囲、あるいは、1dB程度まで合うように方向調整を行う必要がある。
2つ目の問題は、受信レベルの表示範囲が固定されているため、対向装置との距離が、最大受信レベル(−44dBm)より近距離になった場合に、方向調整を行えないことである。上記1つ目の問題における表示の刻みの細かさと相反するが、刻み・目盛りが細かくなると、表示できる受信レベルの範囲が限られる。細かい刻みで広い範囲を表示しようとすると、LEDの数が多くなってしまい、無線装置の表示エリアが増大してしまい、小型化が難しくなる。
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑みて為されたもので、例えばアンテナの方向調整を行い易い受信レベル表示を行うことができる受信レベル表示方法、あるいは該受信レベル表示方法を用いた無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本願発明における無線装置の代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
対向装置と無線通信を行う無線装置であって、
対向装置を特定し認識する対向装置認識部と、
対向装置から受信した受信信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
対向装置との間の距離、対向装置の定格送信電力、対向装置の送信アンテナ利得、本装置の受信アンテナ利得に基づき最大受信可能レベルを演算し、該最大受信可能レベルに基づき受信レベル表示の刻み幅を演算する演算部と、
該演算部で演算した受信レベル表示の刻み幅に基づき受信レベルを表示する表示部と、を備えることを特徴とする無線装置。
ここで、検出する受信信号レベルは、RSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)でもよいし、CNR(Carrier to Noise Ratio:搬送波電力対雑音電力比)等でもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成すると、受信レベルの最も大きい方向を検知することが容易となり、例えばアンテナの方向調整を行い易い受信レベル表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る無線装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図7】本発明の第3実施例に係る受信レベル表示を示す図である。
【図8】指向性アンテナのアンテナパターンを示す図である。
【図9】従来例における受信レベル表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の一例である無線装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る無線装置10の構成例を示す図である。図1において、11は、アンテナより受信した信号の増幅、周波数変換、復調処理等を行う無線部である。12は、複数の他の無線装置の中から通信相手である対向装置を特定し認識する対向装置認識部である。13は、対向装置との間の距離を検出する距離検出部である。14は、対向装置から受信した受信信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部である。15は、対向装置との間の距離、対向装置の定格送信電力、対向装置の送信アンテナ利得、本装置の受信アンテナ利得に基づき最大受信可能レベルを演算し、該最大受信可能レベルに基づき受信レベル表示の刻み幅を演算する演算部である。16は、演算部で演算した受信レベル表示の刻み幅に基づき受信レベルを表示する表示部である。17は、操作者からの各種データ入力や操作入力を受け付ける操作入力部である。
【0010】
次に、無線装置10の動作について説明する。まず、無線部11が、対向装置からの通信を受信し、受信信号を出力する。対向装置認識部12は、無線部11からの受信信号の例えば無線フレーム内の装置識別コードにより、対向装置を特定し認識する。受信レベル検出部14は、無線部11からの受信信号に基づき、無線装置10が対向装置からの通信を受信した際の受信レベルを検出する。距離検出部13は、無線装置10からの送信タイミングと対向装置からの受信タイミングの時間差により、無線装置10と対向装置間の距離である区間長を検出する。
【0011】
距離検出部13が区間長を検出するやり方は、例えば次のようにして行う。無線装置10は、対向装置送信許可の情報を含む問い合わせ信号を、対向装置へ送信し、当該問い合わせ信号を受信した対向装置は、無線装置10に対して応答信号を送信する。この場合、対向装置は、無線装置10からの対向装置送信許可を受信した直後に応答信号を送信し、無線装置10は、対向装置からの応答信号の受信タイミングについて、対向装置送信許可の送信完了時点からの時間(t)を検出する。無線装置10は、当該時間(t)から無線装置10と対向装置との距離(区間長)を算出する。具体的には、信号速度は光速(約30万km/秒)、tは往復時間なので、光速×t×1/2として算出する。このようにして、無線装置10は、対向装置との無線通信における伝播遅延時間から、無線装置10と対向装置との距離(区間長)を検出することができる。なお、区間長は、距離検出部13を用いることなく、ユーザである操作者が、操作入力部17から、手動で任意の距離(値)を直接入力しても良い。
【0012】
演算部15では、対向装置確認動作として、対向装置認識部12からの入力に基づき、特定の対向装置からの受信の場合のみ、受信レベルを表示部16に表示させる。これは、他の装置からの受信レベルを表示することにより、例えばアンテナの設置作業者が特定の対向装置とは別の方角にアンテナを向けることがないようにするためである。
特定の装置を対向装置に設定するには、例えば、操作者が操作入力部17から装置識別コード等の入力により設定してもよいし、パソコン等からの信号、通信により設定してもよいし、あるいは、無線装置10が受信中のある時点で、操作入力部17から特定キーの入力により、その時点で最も大きい受信レベルの装置を、対向装置として設定するようにしてもよい。
また、演算部15では、距離検出部13からの区間長の入力により、最適な環境状態での最大受信可能レベルを求める。自由空間における無線電力の減衰を考慮すると、受信レベルは、次式(1)で求められる。
受信レベル=(λ/4πd)×P×Gs×Gr・・・(1)
ここで、λは対向装置からの受信波の波長(無線周波数)、dは対向装置と無線装置10間の距離である区間長、Pは対向装置の送信電力、Gsは対向装置の送信アンテナ利得、Grは受信側である無線装置10の受信アンテナ利得である。
無線装置10では、波長λ、送信電力P、送信アンテナ利得Gs、受信アンテナ利得Grは既知のものであるため、区間長dが分かれば、受信レベルを求めることができる。したがって、式(1)において、Pとして対向装置の定格送信電力を適用すると、該対向装置から無線装置10が受信できる最大受信可能レベルを求めることができる。
この最大受信可能レベルを、表示する受信レベルのピーク(最大値)とすることにより、例えば、遠距離ではアンテナ方向調整の際に8つのLEDを有効に使え、近距離ではアンテナ方向調整の際における受信レベル表示の上限を伸ばすことができる。
【0013】
受信レベル表示の刻みを等間隔にした場合の第1実施例について説明する。図2は、区間長が遠距離において、受信レベル表示の刻みを、等間隔の2dBにした場合である。最大受信可能レベル(−72dBm)から無線装置10の最小受信レベル(−86dBm)までの範囲において、受信レベルが2dB異なる毎にLED表示を変えるものである。図3は、区間長が近距離において、受信レベル表示の刻みを、等間隔の8dBにした場合である。最大受信可能レベル(−30dBm)から最小受信レベル(−86dBm)までの範囲において、受信レベルが8dB異なる毎にLED表示を変えるものである。このようにすることにより、区間長が遠距離、近距離のいずれにおいても、受信可能レベルの範囲における受信レベルを適切に表示することができる。
【0014】
次に、受信レベル表示の刻みを、最大受信可能レベル周辺において細かくする場合の第2実施例について説明する。アンテナ方向調整では、特にピーク(最大受信可能レベル)周辺での微調整が重要となることから、受信レベル表示の刻みを等間隔ではなく、最大受信可能レベル周辺における受信レベル表示の刻みを細かくすると有効である。図4は、区間長が遠距離において、最大受信可能レベル(−72dBm)周辺における受信レベル表示の刻みを、1dBにした場合である。図4の例では、最大受信可能レベル(−72dBm)周辺では刻みを1dBにしており相当に細かいが、受信レベルが小さくなるに従い段階を追って大きな刻み幅になっている。こうすることにより、区間長が遠距離において最大受信可能レベル周辺の刻みを、後述する図5の近距離の場合よりも小さくし、アンテナが最大受信可能レベルの方向を向くよう、近距離の場合よりも微細な方向調整をすることができる。
【0015】
図5は、区間長が近距離において、最大受信可能レベル(−30dBm)周辺における受信レベル表示の刻みを、2dBにした場合である。図5の例では、最大受信可能レベル(−30dBm)周辺では刻みを2dBにしており細かいが、受信レベルが小さくなるに従い段階を追って大きな刻み幅になっている。こうすることにより、区間長が近距離においても最大受信可能レベル周辺の刻みを小さくし、アンテナが最大受信可能レベルの方向を向くよう、正しく方向調整することができる。
なお、図4の例で−72dBm(最大受信可能レベル)〜−76dBm 、あるいは図5の例で−30dBm(最大受信可能レベル)〜−36dBmまで、受信レベルの刻みを等間隔にする理由は、実際のアンテナ据付時には、マルチパスや障害物等により、なかなか最大受信可能レベルの理論値に達しないので、調整し易いよう幅を持たせているためである。
【0016】
次に、受信レベル表示の刻みを、最大受信可能レベル周辺において細かくするため、刻み式に2次曲線を用いた場合の第3実施例について説明する。図6は、区間長が遠距離において、受信レベル表示の刻み式に2次曲線を用いた場合である。図6の例では、最大受信可能レベル(−72dBm)から、受信レベル表示の刻み間隔が、約0.3dB、約0.9dB、約1.4dB、約2.0dB、約2.6dB、約3.1dB、約3.7dBとなっており、受信レベルが小さくなるに従い2次曲線に沿って段階を追って大きな刻み幅になっている。こうすることにより、区間長が遠距離においても最大受信可能レベル周辺の刻みを第2実施例の場合よりも小さくし、アンテナが最大受信可能レベルの方向を向くよう、第2実施例の場合よりも微細な方向調整をすることができる。
【0017】
図7は、区間長が近距離において、受信レベル表示の刻み式に2次曲線を用いた場合である。図7の例では、最大受信可能レベル(−30dBm)から、受信レベル表示の刻み間隔が、約1.1dB、約3.4dB、約5.7dB、約8.0dB、約10.3dB、約12.6dB、約14.9dBとなっており、受信レベルが小さくなるに従い2次曲線に沿って段階を追って大きな刻み幅になっている。こうすることにより、区間長が近距離において最大受信可能レベル周辺の刻みを第2実施例の場合よりも小さくし、アンテナが最大受信可能レベルの方向を向くよう、第2実施例の場合よりも微細な方向調整をすることができる。
【0018】
なお、刻み式の2次曲線は、例えば次式(2)により求めることができる。
RSSI(N) = a × N2 + RSSI(0)・・・(2)
ここで、RSSI(N)は受信レベル、RSSI(0)は最大受信可能レベル、Nは刻みの項数、aは2次曲線の傾きである。
図7の例では、RSSIの最小値であるRSSIminは、刻みの項数Nが最大であるNmax=7の場合のRSSI(7)なので−86dBmであり、最大受信可能レベルRSSI(0)は−30dBmなので、式(2)より、傾きaは、a=((−86)−(−30))/49=−1.14となる。したがって、RSSI(1)は、a × 12 +(−30)=約−31.1dBmとなる。このようにして、RSSI(N)を、N=1〜6について求めることができる。
【0019】
図8に、無線装置10の受信アンテナに用いる指向性アンテナの、アンテナパターンを示す。本発明は無指向性アンテナでも適用できるが、マルチパスによる影響が比較的少ない指向性アンテナにおいて、特に有用である。図8において、縦軸は正規化した受信アンテナ利得であり、横軸は受信波の方向に対するアンテナの角度である。図8の指向性アンテナパターンの例では、アンテナの角度が、受信波の方向の中心から5度ずれると約30dB減衰することを示す。図8右側の部分拡大図に示すように、半値角の範囲は±2度であるから、できるだけアンテナの角度が、受信波の方向の中心になるように、受信レベルを表示部に表示して、アンテナの方向調整作業を行う必要がある。
【0020】
以上説明したように、対向装置との距離に応じて表示する受信レベルの範囲を自動的に調整して表示するようにしているので、対向装置との距離が遠距離であっても近距離であっても、適切な方向調整を行うことが容易となる。また、対向装置との距離に応じて表示する1目盛りの量(刻みの量)を自動的に調整して表示するようにしているので、対向装置との距離が遠距離であっても近距離であっても、最大受信レベル付近にアンテナの方向を調整することが容易となる。
【0021】
なお、上記第1〜第3実施例においては、最大受信可能レベルから最小受信レベルまでの範囲を表示するようにしているが、必ずしも最小受信レベルまで表示する必要はない。必要に応じ、適宜、最大受信可能レベルに近い範囲のみを表示するようにしてもよい。このようにすると、受信レベル表示の刻みをより適切に設定することが可能となる。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置としてだけでなく、システム、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
【0022】
本明細書には、次の発明が含まれる。
第1の発明は、
対向装置と無線通信を行う無線装置であって、
対向装置を特定し認識する対向装置認識部と、
対向装置から受信した受信信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
対向装置との間の距離、対向装置の定格送信電力、対向装置の送信アンテナ利得、本装置の受信アンテナ利得に基づき最大受信可能レベルを演算し、該最大受信可能レベルに基づき受信レベル表示の刻み幅を演算する演算部と、
該演算部で演算した受信レベル表示の刻み幅に基づき受信レベルを表示する表示部と、を備えることを特徴とする無線装置。
このように構成すると、受信レベルの大きい方向を検知することが容易となる。
【0023】
第2の発明は、
前記第1の発明に記載された無線装置であって、
対向装置との間の距離を検出する距離検出部を備え、
該距離検出部が検出した距離に応じて、前記演算部が、受信レベル表示の刻み幅を演算することを特徴とする無線装置。
このように構成すると、対向装置との間の距離を、操作者が設定する手間を省くことができ、また、対向装置との間の距離が変動する場合でも、受信レベルの大きい方向を検知することが容易となる。
【符号の説明】
【0024】
11・・無線部、12・・対向装置認識部、13・・距離検出部、14・・受信レベル検出部、15・・演算部、16・・表示部、17・・操作入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向装置と無線通信を行う無線装置であって、
対向装置を特定し認識する対向装置認識部と、
対向装置から受信した受信信号の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
対向装置との間の距離、対向装置の定格送信電力、対向装置の送信アンテナ利得、本装置の受信アンテナ利得に基づき最大受信可能レベルを演算し、該最大受信可能レベルに基づき受信レベル表示の刻み幅を演算する演算部と、
該演算部で演算した受信レベル表示の刻み幅に基づき受信レベルを表示する表示部と、を備えることを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120150(P2011−120150A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277599(P2009−277599)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】