説明

無線通信システム及びこのシステムに用いられる漏洩同軸ケーブル

【課題】移動局がローミングにより接続先のアクセスポイントを切り替える際に通信が不安定になるのを防ぐ。
【解決手段】第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備える。そして、第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、移動局が第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、漏洩同軸ケーブルを用いた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局であるアクセスポイントに漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとし、このアンテナを介してアクセスポイントが移動局と無線通信を行うようにした無線通信システムがある。このシステムに用いられる漏洩同軸ケーブルは、非常に細長い距離の通信エリアを確保できる。しかし、ケーブルを伝播する電波に伝送損失があるため、当然のことながら、1台のアクセスポイントで実現できる通信エリアの距離は有限である。
【0003】
一般的な無線LAN(Local Area Network)システムにおいては、通信エリアを拡張する技術としてローミングが知られている。ローミングは、複数の無線LANアクセスポイントが配置された領域内を移動する無線LANクライアントが、移動に合わせて接続するアクセスポイントを切り替える技術である。
【0004】
漏洩同軸ケーブルを用いた無線通信システムにおいても、ローミングの技術を適用することによって、通信エリアの距離を伸ばすことができる。しかし、漏洩同軸ケーブルは、一般的なモノポールアンテナと比較して、終端部近傍での電波減衰量の変化が急峻である。このため、接続先のアクセスポイントを切り替える際に通信が不安定となり、リアルタイムでの通信ができなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−116251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、移動局がローミングにより接続先のアクセスポイントを切り替える際に通信が不安定になるのを防ぐことができ、通信のリアルタイム性を安定に維持できる漏洩同軸ケーブルを用いた無線通信システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、無線通信システムは、第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備える。そして、第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、移動局が第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態における無線通信システムの概念図。
【図2】第1の実施形態における無線通信システムにおいて、クライアント端末の受信レベルと移動距離との関係を示す図。
【図3】第1の実施形態の無線通信システムで使用される漏洩同軸ケーブルの第1の具体例を示す模式図。
【図4】第1の実施形態の無線通信システムで使用される漏洩同軸ケーブルの第2の具体例を示す模式図。
【図5】第1の実施形態の無線通信システムで使用される漏洩同軸ケーブルの第3の具体例を示す模式図。
【図6】第1の実施形態の無線通信システムで使用される漏洩同軸ケーブルの第4の具体例を示す模式図。
【図7】第2の実施形態における無線通信システムの概念図。
【図8】第3の実施形態における無線通信システムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における無線通信システムの概念図である。本システムは、全長が約200メートルの第1の漏洩同軸ケーブル1を接続してアンテナとする第1のアクセスポイント2と、同じく全長が約200メートルの第2の漏洩同軸ケーブル3を接続してアンテナとする第2のアクセスポイント4とを少なくとも備える。第2のアクセスポイント4は、第1の漏洩同軸ケーブル1の終端部近傍に配置される。この配置により、第2の漏洩同軸ケーブル3の基端側の通信エリアは、第1の漏洩同軸ケーブル1の終端部側の通信エリアと重なる。その結果、第1の漏洩同軸ケーブル1から第2の漏洩同軸ケーブル3に連なって、約400メートルの細長い通信エリアが確保される。
【0010】
図示しないが、各アクセスポイント2,4は、有線LANで接続されている。そして、この有線LANには、クライアント端末5のコントロールサーバが接続されている。クライアント端末5は、第1,第2の漏洩同軸ケーブル1,3に沿って図中矢印X方向または−X方向に移動する。そしてクライアント端末5は、第1,第2の漏洩同軸ケーブル1,3から漏洩する電波を利用して、第1または第2のアクセスポイント2,4と無線通信を行う。この無線通信により、クライアント端末5は、コントロールサーバから制御信号を受信する。つまりクライアント端末5は、第1または第2のアクセスポイント2,4に対して移動局となる。
【0011】
そして、クライアント端末5が第1の漏洩同軸ケーブル1の通信エリアから第2の漏洩同軸ケーブル4の通信エリアに、あるいはその逆方向に移動しても、コントロールサーバとの接続が維持されるように、本システムではローミングの技術を使用する。そのため、各アクセスポイント2,4にそれぞれ設定されるESSID(Extended Service Set Identifier)は、同じである。ただし、電波の混信を防ぐために、第1のアクセスポイント2と第2のアクセスポイント4とは異なる周波数を使用する。本実施形態では、第1のアクセスポイント2がiチャンネル(ch.i)を使用し、第2のアクセスポイント4がjチャンネル(ch.j)を使用する。
【0012】
ローミング技術の中には、通信中に、次に接続するアクセスポイントを探しておくことで、接続が切れてもスムーズにアクセスポイントを切り替える、いわゆるバックグラウンドスキャンと呼ばれるような技術が知られている。また、高いスループットが求められる場合には、ローミング閾値を変更して、高いスループットが得られない場合には、アクセスポイントを意図的に切り替えるような方法も知られている。そこで、本システムのように、漏洩同軸ケーブル1,3を有するアクセスポイント2,4を複数設置し、上記のようなバックグラウンドスキャンやローミング閾値の最適化をしたローミング処理を実施することで、高いスループットで長い通信エリアを確保することが可能であると考えられる。
【0013】
しかしながら、漏洩同軸ケーブル1,3は、その独特の放射形状と指向性から、終端付近での電波減衰量が大きい。このため、バックグラウンドスキャンによるローミングを実施する場合には、クライアント端末5の接続先が第1のアクセスポイント2から第2のアクセスポイント4に切り替わる際に通信が不安定となり、リアルタイムでの通信ができなくなるおそれがある。
【0014】
このような課題を解決するために、本システムでは、第1の漏洩同軸ケーブル1の終端から基端に向けて所定の長さにわたり、クライアント端末5が第1の漏洩同軸ケーブル1から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させる。
【0015】
このような課題の解決策について、図2を用いて説明する。なお、本システムのローミング処理は、秒速2メートルで移動するクライアント端末5において、現在の受信レベルが30以下であるとバックグラウンドスキャンを開始し、5秒間のスキャンの結果、受信レベルが40以上のアクセスポイントが見つかった場合に切り替えるものと仮定する。
【0016】
図2は、横軸にクライアント端末5の第1のアクセスポイント2からの移動距離[メートル]を示し、縦軸にクライアント端末5の漏洩電波受信レベルを示している。図2において、実線Pは、第1の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波の移動距離に対する受信レベルを示し、一点鎖線Qは、第2の漏洩同軸ケーブル3からの漏洩電波の移動距離に対する受信レベルを示す。また、破線Rは、第1の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波の移動距離に対する従来仕様の受信レベルを示す。
【0017】
はじめに、クライアント端末5が、第1,第2の漏洩同軸ケーブル1,3に沿ってX方向に移動する場合について説明する。
図2の破線Rに示すように、従来仕様であるとき、第1の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波は、第1のアクセスポイント2に接続される漏洩同軸ケーブル1の基端部からそのケーブル1の終端部となる200メートル付近まで、受信レベルが30を超えている。ただし、200メートルを越えると受信レベルが急激に減衰する。
【0018】
距離x5(>200メートル)にて受信レベルが30以下になると、X方向に移動するクライアント端末5はローミング処理を開始する。このローミング処理には、約5秒のスキャン時間を要する。また、クライアント端末5の移動速度は2[m/秒]である。したがって、ローミング処理の間におけるクライアント端末5の移動距離Δtは約10メートルとなる。
【0019】
クライアント端末5が距離x5の地点からX方向に約10メートルを移動して距離x6(>x5)の地点に達すると、ローミング処理が終了する。このとき、第2の漏洩同軸ケーブル3からの漏洩電波受信レベルが40を超えている。したがってクライアント端末5は、無線LANの接続先を、第1のアクセスポイント2から第2のアクセスポイント4に切り替える。ただし、ローミング処理の実行区間t5〜t6の途中で、クライアント端末5は、第1の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波を受信できなくなる。このため、通信が不安定となり、リアルタイムでの通信ができなくなる。
【0020】
これに対し、図2の実線Pに示すように、本システムの仕様であるときには、X方向に移動するクライアント端末5は、第1の漏洩同軸ケーブル1の終端より手前側の距離x3(150<x3<190)の地点において、第1の漏洩同軸ケーブル1の漏洩電波受信レベルが30以下となる。その結果、クライアント端末5はローミング処理を開始する。
【0021】
そして、クライアント端末5が距離x3の地点からX方向に約10メートルを移動して距離x4(>x3)の地点に達すると、ローミング処理が終了する。このとき、第2の漏洩同軸ケーブル3からの漏洩電波受信レベルが40を超えている。したがってクライアント端末5は、無線LANの接続先を、第1のアクセスポイント2から第2のアクセスポイント4に切り替える。そして、このときのローミング処理区間t3〜t4では、第1の漏洩同軸ケーブル1の漏洩電波受信レベルも25近辺であるため、通信は安定している。したがって、X方向に移動するクライアント端末5は、通信のリアルタイム性を維持しつつ、接続先を第1のクライアント端末2から第2のクライアント端末5に切り替える。
【0022】
次に、クライアント端末5が−X方向に移動する場合について説明する。
図2の一点鎖線Qに示すように、第2の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波は、第2のアクセスポイント4と接続される基端部を外れると、受信レベルが緩やかに変化する。そして、距離x2(<190メートル)にて受信レベルが30以下になると、−X方向に移動するクライアント端末5はローミング処理を開始する。そして、クライアント端末5が距離x2の地点から−X方向に約10メートルを移動して距離x1(<x2)の地点に達すると、ローミング処理が終了する。このとき、第1の漏洩同軸ケーブル1からの漏洩電波受信レベルが40を超えている。したがって、クライアント端末5は、無線LANの接続先を、第2のアクセスポイント4から第1のアクセスポイント2に切り替える。そして、このときのローミング処理区間t2〜t1では、第2の漏洩同軸ケーブル3の漏洩電波受信レベルも20以上であるため、通信は安定している。したがって、−X方向に移動するクライアント端末5は、通信のリアルタイム性を維持しつつ、接続先を第2のクライアント端末5から第1のクライアント端末2に切り替える。
【0023】
さて、本システムにおいて、第1の漏洩同軸ケーブル1は、終端から基端に向けて所定の長さにわたり結合損失を他の部位よりも大きくすることで、クライアント端末5が第1の漏洩同軸ケーブル1から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させている。すなわち、第1の漏洩同軸ケーブル1は、結合損失の異なる2以上の漏洩同軸ケーブルを組み合わせたものといえる。
【0024】
このような漏洩同軸ケーブルの具体例について、図3〜図6を用いて説明する。なお、図3〜図6において、各漏洩同軸ケーブル11,12,13,14は、いずれも内部導体と、絶縁体と、外部導体と、シースを備えて構成され、外部導体上に周期的なスロット6が設けられている点は、従来と同様である。また、漏洩同軸ケーブル11,12,13,14は、その基端部でアクセスポイント2の給電線(アプローチケーブル)に接続されており、終端部に終端器が接続されている点も、従来と同様である。
【0025】
図3〜図6に示す各漏洩同軸ケーブル11,12,13,14において、区間Aは、結合損失が小さく、漏洩電波の放射強度が強い区間である。これに対して、区間Bは、結合損失が大きく、漏洩電波の放射強度が強い区間である。区間Bの長さは、クライアント端末5がローミング処理を実行する間に移動する距離よりも長いことが必須である。また、この移動距離にできるだけ近い値とすることが好ましい。
【0026】
図3示す漏洩同軸ケーブル11は、区間Aに形成される各スロット6の間隔d1に対し、区間Bに形成される各スロット6の間隔d2を広くずらすことで、見かけ上、区間Bの結合損失を区間Aよりも大きくする。そして、区間Bにおいては、クライアント端末5が漏洩同軸ケーブル10から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させたものである。
【0027】
図4に示す漏洩同軸ケーブル12は、区間Aに形成される各スロット6aに対し、区間Bに形成される各スロット6bのサイズを小さくすることで、見かけ上、区間Bの結合損失を区間Aよりも大きくする。そして、区間Bにおいては、クライアント端末5が漏洩同軸ケーブル10から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させたものである。
【0028】
なお、漏洩同軸ケーブル12は、区間Aに形成される各スロット6aの間隔d1と区間Bに形成される各スロット6bの間隔d2とは等しいが、漏洩同軸ケーブル11のように各スロット6bの間隔も広くずらすことで、区間Bの結合損失を区間Aより大きくしてもよい。
【0029】
図5に示す漏洩同軸ケーブル13は、区間Aと区間Bに形成されるスロット6の間隔やサイズは、既存のものと変わらない。漏洩同軸ケーブル13は、区間Bにおけるケーブルの外被であるシースの周囲を電波遮蔽シート7で覆うことにより、見かけ上、区間Bの結合損失を区間Aよりも大きくする。そして、区間Bにおいては、クライアント端末5が漏洩同軸ケーブル10から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させたものである。
【0030】
このような漏洩同軸ケーブル13は、例えば電波遮蔽シート7の厚みを変えることで、電波減衰量を補完的に調整することができるので、より安定なローミングを可能にできる。
【0031】
なお、電波遮蔽シート7は、図1においてクライアント端末5がX方向に移動する際は必要だが、−X方向に移動する際は不要である。そこで、クライアント端末5の移動方向を検知し、X方向への移動の際は、漏洩同軸ケーブル13の区間Bの周囲を電波遮蔽シート7で覆い、−X方向への移動の際は覆わないようにしてもよい。
【0032】
図6に示す漏洩同軸ケーブル14は、区間Aについては、外部導体上に周期的なスロット6を設けた既存の漏洩同軸ケーブル14aであるが、区間Bについては、漏洩同軸ケーブルとは別の低利得アンテナ用ケーブル14bであり、漏洩同軸ケーブル14aの終端と低利得アンテナ用ケーブル14bの基端とをケーブルコネクタ8で接続したものである。
【0033】
低利得アンテナ用ケーブル14bは、漏洩同軸ケーブル14aと比較して結合損失が大きい。したがって、区間Bでは、クライアント端末5が漏洩同軸ケーブル14から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させることができる。
【0034】
なお、低利得アンテナ用ケーブル14bの代わりに通常の同軸ケーブルを用い、自然と漏洩される電波を利用して無線通信を行うようにしてもよい。この場合も、区間Bでは、クライアント端末5が漏洩同軸ケーブル14から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させることができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態における無線通信システムの概念図である。なお、図1と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0036】
図7に示すように、第2の実施形態の無線通信システムにおいては、第1のアクセスポイント2がアンテナとして使用する第1の漏洩同軸ケーブル1の終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分が、当該第1の漏洩同軸ケーブル1に沿って移動するクライアント端末5のアンテナとの距離が離反する方向に曲げられている。この第1の漏洩同軸ケーブル1が曲げられている部分は、図3〜図6に示した漏洩同軸ケーブル11〜14の区間Bに相当する。ただし、漏洩同軸ケーブル11〜14のように区間Bの結合損失を区間Aよりも大きくしてはいない。
【0037】
第2の実施形態では、区間Bに相当する部分が、第1の漏洩同軸ケーブル1に沿って移動するクライアント端末5のアンテナとの距離が離反する方向に曲げられているので、第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルが、クライアント端末5にてローミング処理が開始されるレベルまで低下させることができる。その結果、クライアント端末5がローミングにより接続先のアクセスポイントを切り替える際に通信が不安定になるのを防ぐことができるので、通信のリアルタイム性を安定に維持できる。
【0038】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態における無線通信システムの概念図である。なお、図1と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0039】
図8に示すように、第3の実施形態の無線通信システムにおいては、第2の漏洩同軸ケーブル3の基端部が第1の漏洩同軸ケーブル1の終端部と重複するように、第2のアクセスポイント4を配置している。因みに、第1の漏洩同軸ケーブル1は、第1の実施形態と同様に、その終端から基端に向けて所定の長さ(区間B)にわたり、クライアント端末5が第1の漏洩同軸ケーブル1から受信する漏洩電波の受信レベルを、クライアント端末5がローミング処理を開始するレベルまで低下させるようにしている。
【0040】
このように、第2の漏洩同軸ケーブル3の基端部を第1の漏洩同軸ケーブル1の終端部と重複させることによって、ローミングが実施された際に確実に第2のアクセスポイント4に切り替わるので、より一層安定したローミングを実施することができる。
【0041】
なお、前記各実施形態では、2つのアクセスポイント2,4を配置してなる無線通信システムを例示したが、3つ以上のアクセスポイントを配置してなる無線通信ステムに対しても、各アクセスポイントに接続される漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、移動局がその漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させることで、実施可能である。
【0042】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0043】
以下に、本実施形態で説明する他の発明について付記する。
[付記1]
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させ、さらに前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたりケーブルの周囲を電波遮蔽物で覆う無線通信システム。
【0044】
[付記2]
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させ、前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分を、漏洩同軸ケーブルとは別の低利得アンテナ用ケーブルとした無線通信システム。
【0045】
[付記3]
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させ、前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分を、漏洩同軸ケーブルとは別の同軸ケーブルとした無線通信システム。
【0046】
[付記4]
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させ、前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分が、当該第1の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する前記移動局のアンテナとの距離が離反する方向に曲げられている無線通信システム。
【0047】
[付記5]
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させ、前記第2の漏洩同軸ケーブルの基端部が前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部と重複するように、前記第2のアクセスポイントを配置した無線通信システム。
【0048】
[付記6]
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分を、漏洩同軸ケーブルとは別の低利得アンテナ用ケーブルとして、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させる漏洩同軸ケーブル。
【0049】
[付記7]
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分を、漏洩同軸ケーブルとは別の同軸ケーブルとして、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させる漏洩同軸ケーブル。
【0050】
[付記8]
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、終端から基端に向けて所定の長さにわたる部分が、当該漏洩同軸ケーブルに沿って移動する前記移動局のアンテナとの距離が離反する方向に曲げられて、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させる漏洩同軸ケーブル。
【符号の説明】
【0051】
1…第1の漏洩同軸ケーブル、2…第1のアクセスポイント、3…第2の漏洩同軸ケーブル、4…第2のアクセスポイント、5…クライアント端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第1のアクセスポイントと、前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端部近傍に配置され、第2の漏洩同軸ケーブルを接続してアンテナとする第2のアクセスポイントとを備え、前記第1または第2の漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記第1または第2のアクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記第1の漏洩同軸ケーブルの終端から基端に向けて所定の長さにわたり、前記移動局が前記第1の漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたり結合損失を他の部位よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたりスロットのサイズを他の部位よりも小さくしたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の漏洩同軸ケーブルは、終端から基端に向けて所定の長さにわたりスロットの間隔を他の部位よりも広くしたことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、
終端から基端に向けて所定の長さにわたり結合損失を他の部位よりも大きくして、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させることを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項6】
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、
終端から基端に向けて所定の長さにわたりスロットのサイズを他の部位よりも小さくして、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させることを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項7】
漏洩同軸ケーブルをそれぞれ接続してアンテナとする複数のアクセスポイントを備え、前記漏洩同軸ケーブルに沿って移動する移動局と前記各アクセスポイントを介して無線通信を行う無線通信システムの前記漏洩同軸ケーブルであって、
終端から基端に向けて所定の長さにわたりスロットの間隔を他の部位よりも広くして、前記所定の長さにわたり、前記移動局が前記漏洩同軸ケーブルから受信する漏洩電波の受信レベルを、前記移動局がローミング処理を開始するレベルまで低下させることを特徴とする漏洩同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17035(P2013−17035A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148364(P2011−148364)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】