無線通信システム
【課題】地上でのリーダにおけるマンホール内の無線タグからの電波の受信レベルを容易に向上させる。
【解決手段】マンホール500の床面510の全面には、電波を反射させるため、電波反射部材515が設けられている。電波反射部材515としては、金属の網(メッシュ)や、反射塗料などを用いる。金属の網は、電波の波長より短い網目を有し、設置する前のマンホール500の内側への運搬に支障のないように畳むことが可能となっており、マンホール500の床面510に設置するときに畳んだ網を展開するようになっている。マンホール500に設置された無線タグ100の電波は、電波反射部材515が設けられた床面510で反射され、直接波とともに、地上(路上)でリーダ200に送出される。
【解決手段】マンホール500の床面510の全面には、電波を反射させるため、電波反射部材515が設けられている。電波反射部材515としては、金属の網(メッシュ)や、反射塗料などを用いる。金属の網は、電波の波長より短い網目を有し、設置する前のマンホール500の内側への運搬に支障のないように畳むことが可能となっており、マンホール500の床面510に設置するときに畳んだ網を展開するようになっている。マンホール500に設置された無線タグ100の電波は、電波反射部材515が設けられた床面510で反射され、直接波とともに、地上(路上)でリーダ200に送出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内に設置された無線タグから送信される情報(ID、及びマンホール内の状況)を地上のリーダで受信して、マンホールへ立入る作業を実施せずにマンホール内部の状況を把握し、マンホール自体や、内部の通信設備の現況調査をより効果的に行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中にあるマンホール内の情報を得る無線通信システムとしては、マンホールポンプの遠隔監視を行う小エリア無線を用いた長距離ワイヤレスモデムがある(例えば非特許文献1参照)。図18は、従来技術による、マンホールポンプを遠隔で監視する無線通信システムの構成を示す模式図である。
【0003】
図18において、郊外にあるマンホール500内の設備として設置されているマンホールポンプを遠隔で状態監視や管理を行う。マンホール500内のマンホールポンプ501に対しては、ケーブルにより地上に設けられた現地制御装置600に繋がり、その先の防水保護ケース601に収められた子機(無線部本体)602へマンホールポンプ501の情報が伝わる。子機602から1km程度の距離の範囲で郊外の別の場所にある親機700まで小エリア無線によりマンホールポンプ501の情報が送られ状態監視される。
【0004】
また、逆方向に親機700から子機602へ制御信号を送り、マンホールポンプ501を制御・管理することもできる。なお、その親子−子機間の小エリア無線については、通信方式が単信方式で半二重通信であり、使用周波数は、348.56625〜348.8000MHzを用いており、通信速度は、2400bps、空中線電力は、0.1W/1W切り替えとなっている。
【0005】
また、他のマンホール内の情報を得る技術として無線中継装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。図19は、従来技術による無線中継装置の動作を説明するための断面図である。図19において、マンホール1内に設置した無線機5は、電波を送受信する。この無線機5から送信された電波は、このマンホール1内で蓋3の真下に設置された反射体(反射板)10aで反射される。この反射体10aで反射により、その無線機5からの電波の放射電力が強められ、地上の無線機(図19では省略されている)へ伝えられる。
【0006】
このように、反射体10aで無線機5からの電波が反射され、地上の無線機が受信し易くなることで、マンホール1内の情報を得ることができるようになる.また、逆に、地上の無線機からの電波が同じ反射板10aで反射されて無線機5に到達することで、マンホール1の外部、すなわち地上からの指示をマンホール1内へと送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−50899号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】長距離ワイヤレスモデム 形WM51 OMRON 小エリア無線により郊外1kmの長距離通信を実現、インターネット<URL:http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/cat/wm51_sgsa-012f-1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した非特許文献1のように、マンホール500の内外の情報をケーブル(有線)で送受信するケースでは、マンホール500の天井や、壁に地上までケーブルを通すための穴が必要になる。このような穴は、マンホール500の強度に影響があったり、マンホール500内への浸水の増加を招く恐れがあったりという問題がある。また、ケーブルの敷設工事が必要となり、土木工事の費用が膨大になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献1のように、マンホール蓋3の下に反射板10aを設置する場合には、反射板10aを設置する位置から考えると、その設置工事、及びマンホール1内へ作業員が入る場合に困難が予想される。特に、ここでの反射板10aについては、無線機5から送信される電波の放射強度を増すために、大きなサイズが要求されると考えられる。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、地上でのリーダにおけるマンホール内の無線タグからの電波の受信レベルを容易に向上させることができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、前記マンホールの全床面に設置された電波反射部材を備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの4つの側面のいずれかの全面に設置されることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向と平行となる2つの側面の全面に設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向に直交する2つの側面の全面と車道側の側面との全面とに設置されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの全ての側面の全面に設置されることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、全ての側面の全面、及び前記マンホールの天井の一部を除く全面に設置されることを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記の発明において、前記天井に設置された電波反射部材は、前記路上を走行する車両の走行方向に一致する方向に開口したスリット部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記の発明において、前記天井に設置された電波反射部材は、その一部に開口した開口部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、金属製のメッシュ、または反射塗料のいずれかであることを特徴とする。
【0021】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、前記タグは、前記リーダの場所、または移動に一致する指向性を有する指向性アンテナを備えることを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、地上でのリーダにおけるマンホール内の無線タグからの電波の受信レベルを容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内部の構成を示す模式図である。
【図2】従来のマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。
【図3】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。
【図4】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。
【図5】マンホール床面&側面反射が殆どない場合を説明するための概念図である。
【図6】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。
【図7】マンホールにて床面での電波反射がある/なしの場合での受信レベルのシミュレーション結果を示す概念図である。
【図8】本第1実施形態による無線通信システムでのシミュレーション条件を説明するための概念図である。
【図9】本発明の第2実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す模式図である。
【図10】本第2実施形態の第1の変形例による、マンホール床面と3側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図11】本第2実施形態の第2の変形例による、マンホール床面と4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図12】本第2実施形態の第3の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図13】本第2実施形態の第4の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図14】本第3実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す概念図である。
【図15】本第3実施形態による指向性アンテナ110の構造と放射指向性を示す概念図である。
【図16】本発明の第4実施形態による反射塗料の一例を示す概念図である。
【図17】本第4実施形態による指向性アンテナの一例を示す概念図である。
【図18】従来技術による、マンホールポンプを遠隔で監視する無線通信システムの構成を示す模式図である。
【図19】従来技術による無線中継装置の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
A.第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内部の構成を示す模式図である。図1において、マンホール500の内部に設置した無線タグ100からの電波は、直接、地上へ向かう直接波のみでは、地上で作業員が所持するリーダ200で受信できるレベルが低く確実に無線タグ100からの情報を把握できない場合がある。
【0026】
本第1実施形態では、図1に示すように、直接波に加え、無線タグ100からの電波を床面510で反射させる(床面510での反射波の割合を強める)ことにより、上述した無線タグ100の直接波のみの受信レベルが低くても、反射波が足し合わされて、地上(路上)にてリーダ200で受信可能とする。
【0027】
そこで、本第1実施形態では、マンホール500の床面510で電波を反射させるため、電波反射部材515を床510の全面に設ける。電波反射部材515としては、金属の網(メッシュ)や、反射塗料などを用いる。金属の網は、電波の波長より短い網目を有し、設置する前のマンホール500の内側への運搬に支障のないように畳むことが可能となっており、マンホール500の床面510に設置するときに畳んだ網を展開するようになっている。
【0028】
また、他方の反射塗料としては、例えば、電子機器のプラスチック製パッケージの内側に塗布されるものがある(電磁波シールドコーティング、導電塗料、インターネット<URL:http://www.plascoat.co.jp/shield_det.html>)。これは、金属フィラーの入った塗料をスプレーにより塗装することで、塗装対象となるものの表面に導電率の高いコーティング膜を形成し電磁波を反射する技術である。
【0029】
ここで、マンホール内に設置した無線タグ100から送信される電波について、地上へ直進して進む直接波と、マンホール500の床面510で反射して地上へ届く反射波の2つの電波により、どのように地上での電波の受信強度に影響があるのか、また、マンホール500の側面520での反射波が加わった場合には、どのような影響を及ぼすのか、それぞれに基本的な原理について説明する。
【0030】
図2(a)、(b)は、従来のマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。図2(a)には、通常のマンホール500の床面510のみの反射波がある場合を示している。また、図2(b)には、通常のマンホール500の側面520からの反射波が加わる場合を示している。図2(a)において、マンホール500の天井530は、地面から深さDmにあり、さらにHm深い位置に床面510がある。このマンホール500の内部に、その床面510から高さhtの位置に無線タグ100が設置される。一方で、リーダ200は、地上hrの高さにある。
【0031】
このような場合には、無線タグ100からリーダ200までの距離は、Hm−ht+Dm+hrであり、この距離を無線タグ100から送信された電波の直接波が伝わる。他方で、無線タグ100から床面510を経由してリーダ200までの距離は、Hm+ht+Dm+hrであり、この距離を床で反射した電波の反射波が進む。
【0032】
反射波については、マンホール500の床面510での反射率をγm(≪1)とすれば、反射波が地上に到達するまでの実質的な距離は、(Hm+ht+Dm+hr)・1/γmと考えられる。従って、反射波は、直接波に比べ、地上へ届いた際の受信強度が極めて弱いため、地上では、直接波のみの受信強度と変わらない。なお、図2(a)に示す直接波と反射波とを比較した検討では、マンホール天井530から地面までに当たる深さ(Dm)の土壌による、それぞれの電波の減衰については、直接波と反射波との双方とも同じで、比較においては相殺されていると考えている。
【0033】
図2(b)において、マンホール500については、図2(a)と同様、地面から深さDmでマンホールの天井530、地上からDm+Hm深さがマンホールの床面510になり、Dm+Hm−htの深さに無線タグ100が設置され、地上高さhrにリーダ200がある。また、このマンホール500の幅はWmであり、そのマンホール500での片方の側面520の位置からWtの距離に無線タグ100に設置され、同じ側面520の位置からWrの距離にある地上にリーダ200がある。
【0034】
上述した構成において、まず、無線タグ100からリーダ200までの直線距離、つまりは、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}を直接波Aが進む。また、無線タグ100からマンホール500の床面510で反射してリーダ200までの距離は、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}であり、床面510の反射波Bがこの距離を進む。
【0035】
しかし、マンホール500の床面510での電波の反射率は、γm(≪1)と僅かなため、この反射波Bが無線タグ100からリーダ200に到達するまでの実質的な距離は、1/γm・√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}とみなして考えられる。さらに、無線タグ100からの電波がマンホール500の側面520で反射してリーダ200に到達するための経路は、図2(b)では2つあり、片方の距離は、√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}であり、他方の距離は、√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}である。
【0036】
これらの距離を進む反射波C、及びDは、マンホール500の側面520で反射するため、その反射率は、γm(≪1)と僅かである。従って、上述した反射波C、及びDの実質的な距離は、1/γm・√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}、及び1/γm・√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}となる。
【0037】
上述した3つの反射波B、C、及びDについては、リーダ200による受信の強度を直接波Aと比較すると、極めて小さいものとなる。従って、通常のマンホール500では、床面510と側面520とによる反射波B、C、及びDが直接波Aに加わって地上のリーダ200での電波の受信強度を高めるように期待はできない。
【0038】
なお、図2(a)と同様に、図2(b)に示す直接波Aと3つの反射波B、C、Dを比較した検討においても、マンホール天井530と地面(Dm)間の土壌で各電波が減衰することについて、直接波Aと3つの反射波B、C、Dが全て同じ条件で比べられており、そのDm間の減衰を各電波の比較で全て同じ分を差し引いて考えている。
【0039】
図3(a)、(b)は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。図3(a)には、床面510で反射のあるマンホール500を示している。また、図3(b)には、床面510の反射に加え、側面520で反射のあるマンホール500を示している。
【0040】
図3(a)においては、図2(a)と同様に、地面から深さDmにマンホール500の天井530、さらに深さDm+Hmに床面510があり、そして深さDm+Hm−htのマンホール内に無線タグ100が設置され、リーダ200は、地上で高さhrにある。無線タグ100からリーダ200までがHm−ht+Dm+hrで、無線タグ100から電波が送信され、直接波がリーダ200に伝わる距離であり、加えて、床面510を経由した無線タグ100からリーダ200まではHm+ht+Dm+hrであり、これは、床面510で反射した電波の反射波が進む距離である。
【0041】
反射波については、マンホール500の床面510に反射塗料の塗布や、金属製メッシュが設置されているので、その反射率は高く(ここでは、反射率≒1と仮定し)、この反射波が地上に到達する実質的な距離も、Hm+ht+Dm+hrと変わらない。ここで、マンホール500の深さと床面510から天井530の高さと、さらに、地上にあるリーダ200の高さとの合計に比べて、床面510から無線タグ100までの高さが十分小さい(ht≪Hm+Dm+hr)ことも想定できるので、その反射波が地上へ届く距離が直接波と同程度であり、これら直接波と反射波とが合成され、リーダ200での受信強度が向上されると期待される。
【0042】
図3(b)においては、図2(b)と同様、地面から深さDmにマンホールの天井530、深さDm+Hmに床面510があり、床面から高さhtに無線タグ100、地上から高さhrにリーダがある。加えて、このマンホール500の幅はWmで、無線タグ100は、片方の側面520からWtの位置にあり、同じ側面520からWrの距離に地上のリーダ200がある。この条件の下で、無線タグ100からリーダ200までを直接波aが√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}の距離を、床面510での反射波bは、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}の距離を、それぞれ進む。
【0043】
ここで、図3(b)のマンホール500の床面510には、反射塗料が塗布されたり、金属製メッシュが設置されたりしており、電波を殆ど反射する(反射率≒1)ため、この反射波bは√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}を無線タグ100からリーダ200に到達するまでの実質的な距離となる(この点が先の図2(b)に示した反射波Bとは異なる)。さらに、図3(b)では、無線タグ100から送信されマンホール500の側面520で反射された電波が2つの経路によりリーダ200に到達する。一方の距離が√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}で、他方は、√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}である。
【0044】
これら距離を進む反射波c、及びdは、マンホール500の側面520で反射するが、側面520には、反射塗料が塗布されたり、金属製メッシュが設置されたりしており、殆どの電波を反射する(反射率≒1)ため、反射波c、及びdについては、√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}、及び√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}が実質的な距離になる。これまでの説明から、直接波aの進む無線タグ100からリーダ200までの距離と、3つの反射波b、c、及びdが進む実質的な距離とは殆ど同じになる。
【0045】
ここでの仮定として、マンホール500の深さ、床面510から天井530の高さ、リーダ200の地上高さの合計に対し、床面510から無線タグ100の高さが十分小さい(ht≪Hm+Dm+hr)と想定できる。また、もう1つの仮定としては、無線タグ100、及びリーダ200が設置される位置は、マンホール500の片方の側面からマンホール500の幅の半分程度になる(Wr≒Wt≒Wm/2)。
【0046】
つまり、マンホール500の中央にあると想定される。よって、これら4つの電波、すなわち直接波aと、反射波b、c、及びdとでのリーダ200による受信の強度は、それぞれ同程度である。従って、通常のマンホール500では、床面510と側面520とによる反射波b、c、及びdが、直接波aに加わって、地上のリーダ200での電波の受信強度を高めると期待できる。
【0047】
図4は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。図4においても、図1と同様にマンホール500に設置された無線タグ100の電波を、電波反射部材515が設けられた床面510で反射させる(反射波の強度を強くする)。無線タグ100からの電波を床面510で反射させることにより、地上(路上)でリーダ200の受信範囲を広げることができる。
【0048】
この結果、走行する車両(自動車)300に搭載されたリーダ200が無線タグ100の電波を受信することを考えると、車両300の走行速度が速くても、無線タグ100からの情報を車両300に搭載されたリーダ200で取得することができるようになる。
【0049】
なお、マンホール500の床面510で電波を反射させるために、上述したように、床面510に電波反射部材(反射塗料、電波の波長よりも短い網目となる金属製のメッシュ)を設けている。この反射塗料としては、図1において述べた電磁波シールドコーティング、導電塗料が好ましく、また、金属製のメッシュについては、設置前の運搬時に畳むことが可能で、使用時に展開することができるものが好ましい。
【0050】
ここで、図5は、マンホール床面&側面反射が殆どない場合を説明するための概念図である。図5においては、図4で示したように、マンホール500の床面510で無線タグ100の電波を反射させたこととは逆の状態で、マンホール500の床面510はもちろん側面520での無線タグ100からの電波の反射もない場合、あるいは電波の反射が床面510で仮にあったとしても僅かである場合を示している。
【0051】
このような場合には、地上でのリーダ200による無線タグ100からの電波は、直進した電波のみ、あるいは床面510で反射された電波の割合が殆どなく大部分が直進の電波であるため、無線タグ100からの電波の地上における受信レベルが弱くなる。そのために、無線タグ100からの電波を地上でリーダ200が受信できる範囲も狭い範囲に限られてしまう(実線の円)。つまり、マンホール500に十分近距離に位置するリーダ200Aでは無線タグ100からの電波を受信することができるが、マンホール500から離れたリーダ200Bでは、無線タグ100からの電波を受信することができなくなる。
【0052】
図6は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。図6においては、図5と同じ場所の道路にあるマンホール500を示しているが、マンホール500の床面510で無線タグ100からの電波を反射させている点、あるいは床面510で反射する電波が無線タグ100から地上へと直進する電波と同程度の強度がある点で異なっている。
【0053】
無線タグ100が送信する電波は、地上へ直進する電波に加えて、マンホール500の床面510に反射して地上へ伝わる電波もある。この結果、マンホール500の床面510で反射した電波が加わる分、地上、すなわち道路上でのリーダ200の受信範囲を拡張させられる。つまり、マンホール500に十分近距離に位置するリーダ200Aでも、マンホール500から離れたリーダ200Bでも、無線タグ100からの電波を受信することができる。
【0054】
図7は、マンホールにて床面での電波反射がある/なしの場合での受信レベルのシミュレーション結果を示す概念図である。つまり、図7には、マンホール500の床面510での反射がある/なしの場合で、それらの受信レベルの違いをシミュレーションにより求めて示したものである。図7に示すグラフの横軸は、無線タグ100から送信された電波の受信レベルであり、縦軸は、マンホール500の床面510からの高さで、受信アンテナの位置を示す。
【0055】
図7に示すグラフの一点鎖線がマンホール500の床面510がコンクリートの場合、つまり床面510での電波の反射が僅かであり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。また、実線は、マンホール500の床面510が銅であり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。
【0056】
また、点線は、マンホール500の床面510が銅であり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から波長の1/4、つまり3.4cmの高さにある場合を示している。さらに、破線が自由空間、つまりマンホール500の床面510において全く電波の反射がなく、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。
【0057】
破線の自由空間に対して、点線のマンホール床面510に銅版を配置して送信アンテナを1/4波長の高さに設置した場合には、マンホール500の床510から4m以上、すなわち、地上1m以上の高さに受信アンテナがあると、電波の受信レベルが何れも上回り、受信アンテナの位置が高いほど受信レベルの差が広がっている。
【0058】
一点鎖線のコンクリートと比較して、実線のマンホール床面510に銅版を配置して送信アンテナを2.06mの高さに設置した場合には、受信アンテナがマンホール500の床面510から3mを若干超えている箇所と4〜6mにおいては、言い換えると、地上の僅かな高さの範囲と地上1〜3mにおいては、受信レベルが高くなっている。
【0059】
また、点線で示す銅の床面で1/4波長の高さに置かれた送信アンテナに対して、実線で示す同じ銅の床面でも2.06mの高さに送信アンテナが設置されている場合には、マンホール500の床面510から3mの高さと4〜5m前後、言い換えると、地上に近い範囲と地上1〜2mで受信レベルが高くなっている。
【0060】
これらシミュレーション結果からは、マンホール500の床面510に銅などの電波を反射する素材を配置することで、地上での受信レベルを向上できたり、送信アンテナの設置する高さを工夫することにより、受信レベルに違いが出たりすることが分かる。
【0061】
図8は、本第1実施形態による無線通信システムでのシミュレーション条件を説明するための概念図である。図8には、図7に示すシミュレーションで用いたマンホールのサイズのパラメータなど状況を示している。まず、図8に示すように、マンホール500には、蓋、出入り口、天井、側面,床面510があるが、最も強い反射の効果を簡単なシミュレーションで得るために、床面510のみがあることを想定している。そして、該床面510については、一般的なマンホール500での材質であるコンクリート、電波反射部材515として反射塗料や、金属製のメッシュとして銅、また電波を全く反射しない状況として自由空間(床面が存在しない状況)をシミュレーションの条件例とした。
【0062】
典型的なマンホール500の床面の位置は、地上から深さ3mにあると考えればよい。このようなマンホール500に対して、無線タグ100を設置する位置は、床面510からの高さを決め、その無線タグ100の位置は、送信アンテナ高とした。また、リーダ200の高さを受信Rxアンテナ高とし、この高さもマンホール500の床面の基準としていることから、地上3m以上の高さを確認すれればよい。
【0063】
この受信Rxアンテナの高さを変え、それぞれ受信Rxアンテナの高さで上述した送信アンテナからの(直接波と反射波とを合わせた)電波の受信レベルを求める。このように、図8に示すシミュレーション条件で、図7に示すシミュレーション結果では、4つの例、すなわち床面510がコンクリート(送信アンテナ高さ=2.06m)を一点鎖線、床面が銅(送信アンテナ高さ=2.06m)を実線、同じく銅(送信アンテナ高さ=3.4cm(1/4波長))を点線、自由空間(送信アンテナ高さ=2.06m)を破線のそれぞれの例を示したものである。
【0064】
上述した第1実施形態によれば、マンホール500の内部に設置した無線タグ100の電波を反射する電波反射部材(反射塗料、または金属製のメッシュ)515を、マンホール500の床面510に設置するようにしたので、マンホール500の内部から地上へのケーブルがなくてもマンホール内の情報収集と地上からの指示も容易にできる。
【0065】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に付いて説明する。
図9は、本第2実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す模式図である。本第2実施形態では、マンホール床面と側面で無線タグ100からの電波を反射する。図9において、マンホール500では、床面510と、道路上の車両300が走行する方向と平行となる2つの側面520A、520Cに電波を反射する電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置する。
【0066】
図9の左側には、マンホール500の内面の展開図を示している。該展開図には、天井530の中央には出入口あり、また、床面510と時計回りに側面520A、520B、520C、520Dが示されている。電波反射部材(塗料またはメッシュ)515は、床面510と、道路を車両300が走行する方向と平行な側面520A、520Cとに設置されている。
【0067】
このように、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていることにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100から送信された電波としては、地上への直接波と、マンホール500の床面510と上記2つの側面520A、520Cによるそれぞれの反射波とが加わる。直接波に床面510と2つの側面520A、520Cからの反射波とが加わることにより、車両300が走行する方向に無線タグ100の電波が到達する受信範囲が拡張される。
【0068】
B−1.第1の変形例
図10は、本第2実施形態の第1の変形例による、マンホール床面と3側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。上述した図9に示すように、マンホール500での床面510、及び車両300の走行方向に平行な2つの側面520A、520Cに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていることに対し、該第1の変形例では、図10に示すように、マンホール500での床面510、及び歩道方向を除く3方向の側面520A、520B、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。言い換えると、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515は、車両300の走行方向に直交する2つの側面520B、520Dと、車道側の側面520Aとに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。
【0069】
図9と同様に、図10の左側に展開図を示す。図10において、天井530、床面510と側面520A、520B、520C、520Dは、図9と同じ位置である。図10においては、展開図にある床面510と側面520A、520B、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置している。これにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波は、それらマンホール500の床面510とそれらの3つの側面520A、520B、520Dの電波反射部材(塗料またはメッシュ)515に反射し、歩道方向に広い範囲に届く。その結果、歩道にある電話BOX400へも、マンホール500の内部の無線タグ100からの電波が到達し易くなる。
【0070】
B−2.第2の変形例
図11は、本第2実施形態の第2の変形例による、マンホール床面と4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図11において、マンホール500には、天井530以外の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。
【0071】
図9や、図10と同様に、図11の左側に展開図を示す。マンホール500の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置している。これにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波は、それらマンホール500の床面510とそれら全ての側面520A、520B、520C、520Dの電波反射部材(塗料またはメッシュ)515に反射してマンホール500の上方となる地上へ電波の強度が増す。結果として、マンホール500の上方にあたる範囲の地上へは、マンホール500の内部の無線タグ100からの電波が受信し易くなる。
【0072】
従って、点検作業員は、マンホール500の上方の地上でリーダ200を所持して、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波を受信する際に、無線タグ100から送信される電波の直接波の他にも、マンホール500の床面510による電波の反射波、および全ての側面520A、520B、520C、520Dによる反射波も合わせて受信する。このために、単に無線タグ100からの電波の直接波のみを受信するレベルに比べ、床面510全ての側面520A、520B、520C、520Dによる反射波の分も受信レベルが向上するため、より的確に無線タグ100からの信号を受信できるようになる。
【0073】
B−3.第3の変形例
図12は、本第2実施形態の第3の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図12において、マンホール500には、天井530を含む、床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。なお、図12の斜視図において、側面520B、520D、及び天井530に設置されている電波反射部材(塗料またはメッシュ)515については省略している。
【0074】
図11に示したマンホール500が天井530以下の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていたが、図12に示すマンホール500は、さらに、天井530にも、ライン状のスリット部516を除いて、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置する。マンホール500の内部全体からみると、天井530のライン状のスリット部516が開いているように見える。該スリット部516の方向は、路上の車両300の走行方向と一致している。
【0075】
図9〜図11と同様に、図12の左側に展開図を示す。図12の左側に示す展開図から明らかなように、マンホール500の全ての面、つまり床面510と4つの側面520A、520B、520C、520Dと天井530とに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。但し、唯一、天井530の長手方向にスリット部516が切られており、該スリット部516の延長の方向に当たる側面520B、520Dにもスリットの端がある。これら天井530と側面520B、520Dのスリット部(端部)516とは、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない範囲となっている。
【0076】
そのため、マンホール500の大部分の範囲である床面510、側面520A、520B、520C、520D、及び天井530に設置した電波反射部材(塗料またはメッシュ)515で電波が反射され、マンホール500の内側に戻される。そして、スリット部516を通じてのみ、無線タグ100から送信された電波がマンホール500の外部へと出る。さらに、マンホール500の内側の様々な箇所で反射された電波も加わるため、そのスリット部516からマンホール500の外側へ出る電波の送信レベルは強くなる。
【0077】
言い換えると、マンホール500の内部に設置された無線タグ100の電波は、大部分の範囲でマンホール500の内側に閉じ込められているが、唯一、そのスリット部516からのみマンホール500の外側へと送出される状態にある。従って、無線タグ100の電波がマンホール500の上方に当たる地上で受信できる範囲は、スリット部516と一致する方向に拡張されることになり、路上を走行する車両300に搭載したリーダ200で受信する場合に、より速い速度で移動する車両300でも、無線タグ100の信号を受信することができる。
【0078】
B−4.第4の変形例
図13は、本第2実施形態の第4の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図13においても、図12のように、マンホール500の床510、全ての側面520A、520B、520C、520D、一部を除く天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。なお、図12の斜視図において、側面520B、520D、及び天井530に設置されている電波反射部材(塗料またはメッシュ)515については省略している。
【0079】
本第4の変形例において、図10に示す構成と異なる点は、図13に示すように、天井530の一部に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていない開口部517を有していることにある。図12では、道路を走行する方向に一致した形状のスリット部516であったが、本第4の変形例においては、図13に示すように、天井530の隅の一箇所に、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置していない。
【0080】
図9〜図12と同様に、図13の左側に展開図を示す。図13の左側に示すように、マンホール500の内側の殆ど全面、つまり床面510、4つの側面520A、520B、520C、520D、大部分の天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。但し、マンホール500において、天井530の一部分には、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない、電波に対して透過な開口部517が形成されている。
【0081】
マンホール500の内部に設置した無線タグ100からの電波は、マンホール500の内側に設置された電波反射部材(塗料またはメッシュ)515により大部分が反射され、電波に対し透過な開口部517から唯一全てマンホール500の外へと放出されることになる。従って、天井530の一部に形成された、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない開口部517から送出される無線タグ100からの電波の強度が強まることになる。天井530の電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていない開口部517上に当たる地上での位置では、リーダ200により無線タグ100の電波を受信することができる。
【0082】
上述した第2実施形態によれば、マンホール500の床510に加えて、車両300が地上の道路を走行する方向と平行な側面520A、520Cにも、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置したり、あるいは、マンホール500の床510や、側面520A、520B、520C、520Dのいずれかに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置したりすることにより、特定の方向にだけ無線タグ100からの電波(直接波、反射波)を送出し、道路を高速度で走行する車両300や、道にある電話BOX400に設置したリーダ200、あるいは、地上の真上で受信する場合においても、マンホール500の無線タグ100の電波を容易に、かつ確実に受信することができる。
【0083】
また、マンホール500の内側の床面510、全ての側面520A〜520D、及び天井530の一部を除いた範囲に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を配置し、マンホール天井530の一部を、地上の道路での車両300の走行方向に一致するスリット部516、あるいは開口部517とすることで、さらに高速度で走行する車両300に搭載したリーダ200、あるいはマンホール上にある地上にて作業員が持つリーダ200にて、マンホール500の無線タグ100の電波を容易に、かつ確実に受信することができる。
【0084】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図14は、本第3実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す概念図である。本第3実施形態では、無線タグ100は、指向性を持つアンテナ110を有する。アンテナ110の指向性は、道路の車両300が走行する方向へ沿って広く、垂直な方向には狭い。これは、図9や、図12で説明したように、マンホール500の床面510、側面520A〜520D、さらに、天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を配置したり、前述した第2実施形態と同じ効果がある。
【0085】
すなわち、図14に示すような、指向性のあるアンテナ110を、無線タグ100に接続することで、同じ出力の送信電力の無線タグ100を用いた場合、道路をより速い速度で走行する車両300に搭載されたリーダ200により、無線タグ100の電波を受信しやすくなる。この指向性を持つアンテナ110の例としては、双指向性パッチ・スロット複合アンテナ(BNPSA:Bidirectional Narrow Patch and Slot Antenna)がある。このBNPSAは、双指向性スロットアンテナ(BSA)と双指向性細幅パッチアンテナ(BNPA)とを組み合わせた構成である。
【0086】
図15(a)、(b)は、本第3実施形態による指向性アンテナ110の構造と放射指向性を示す概念図である。図15(a)は、BNPSAの構造であり、図15(b)は、該BNPSAの放射指向性である(参考文献1:長敬三,堀俊和,兎澤一“双指向性を有する偏波供用基地局アンテナ”、インターネット<URL:http://ci.nii.ac.jp/naid/110003339814>)。図15(b)に示すように、アンテナの放射指向性は、ある直線方向(図15(b)では左右方向)に広く、その垂直方向(図15(b)では上下方向)に狭いという特徴を有する。
【0087】
上述した第3実施形態によれば、マンホール500の内部に設置される無線タグ100に対して,そのアンテナを受信するリーダ200の場所や、移動に合わせた指向性のあるものにすることで、地上のリーダ200で無線タグ100が送信する電波を受信しやすくできる。
【0088】
D.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
前述した第1、第2実施形態では、電波反射部材515の1つとして、反射塗料について説明した。また、上述した第3実施形態では、指向性を有するアンテナ110を無線タグ100に接続する例に付いて説明した。本第4実施形態は、該反射塗料の具体体例、及び指向性アンテナの他の例を示すものである。
【0089】
図16は、本第4実施形態による反射塗料の一例を示す概念図である。図16には、反射塗料515aが塗布された電子機器のパッケージ800の内側を示している。図16に示すように、電子機器から発生する電子ノイズをパッケージ800内側の反射塗料515aを塗布することにより外部漏れないようにしている。これと同じ反射塗料515aをマンホール500の床510や、側面520A〜520D、あるいは天井530に塗布することにより、マンホール500の内部に設置した無線タグ100から送信する電波を反射することができる。反射塗料515aの利点は、塗布する対象、この場合、マンホール500の壁面形状に影響されることなく、一様に塗布することができる点にある。
【0090】
図17は、本第4実施形態による指向性アンテナの一例を示す概念図である。指向性アンテナとしては、図15に示すパッチ・スロット複合アンテナ(BNPSA)110の他に、図17に示すように、コーリニアアンテナ110aを用いたアクティブアレイ(参考文献2:アンテナの基礎から応用まで、インターネット<URL:http://www.interq.or.jp/blue/rhf333/ANT-K.htm>、参考文献3:進行波アンテナ 低在波アンテナ 周波数帯域特性 終端抵抗 共振状態 ロンビックアンテナ − 1アマの無線工学 H16年08月期、インターネット<URL:http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H16/html/H1608A19_.html>)がある。
【0091】
上述した第4実施形態によれば、図15や、図17に示す様々な指向性を有するアンテナ110、110aを、図14に示すように、マンホール500に設置する無線タグ100に接続したり、反射塗料515aをマンホール500内の床面510や、側面520A〜520D、さらに、天井530に塗布したりすることなどにより、地上のリーダ200で無線タグ100が送信する電波を受信しやすくできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、マンホール内の情報を簡便に地上で収集でき、マンホール設備の使用する電気・ガス・水道・通信など社会基盤に関係する各種機器の保守点検を容易にすることを可能にする。また、これによりマンホールの異常状態の予兆などを事前に検知できるようになる。
【符号の説明】
【0093】
100 無線タグ
110 アンテナ
110a コーリニアアンテナ
200、200A、200B リーダ
300 車両
400 電話BOX
500 マンホール
510 床
515 電波反射部材
515a 反射塗料
520 側面
520A 側面A
520B 側面B
520C 側面C
520D 側面D
530 天井
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内に設置された無線タグから送信される情報(ID、及びマンホール内の状況)を地上のリーダで受信して、マンホールへ立入る作業を実施せずにマンホール内部の状況を把握し、マンホール自体や、内部の通信設備の現況調査をより効果的に行う無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中にあるマンホール内の情報を得る無線通信システムとしては、マンホールポンプの遠隔監視を行う小エリア無線を用いた長距離ワイヤレスモデムがある(例えば非特許文献1参照)。図18は、従来技術による、マンホールポンプを遠隔で監視する無線通信システムの構成を示す模式図である。
【0003】
図18において、郊外にあるマンホール500内の設備として設置されているマンホールポンプを遠隔で状態監視や管理を行う。マンホール500内のマンホールポンプ501に対しては、ケーブルにより地上に設けられた現地制御装置600に繋がり、その先の防水保護ケース601に収められた子機(無線部本体)602へマンホールポンプ501の情報が伝わる。子機602から1km程度の距離の範囲で郊外の別の場所にある親機700まで小エリア無線によりマンホールポンプ501の情報が送られ状態監視される。
【0004】
また、逆方向に親機700から子機602へ制御信号を送り、マンホールポンプ501を制御・管理することもできる。なお、その親子−子機間の小エリア無線については、通信方式が単信方式で半二重通信であり、使用周波数は、348.56625〜348.8000MHzを用いており、通信速度は、2400bps、空中線電力は、0.1W/1W切り替えとなっている。
【0005】
また、他のマンホール内の情報を得る技術として無線中継装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。図19は、従来技術による無線中継装置の動作を説明するための断面図である。図19において、マンホール1内に設置した無線機5は、電波を送受信する。この無線機5から送信された電波は、このマンホール1内で蓋3の真下に設置された反射体(反射板)10aで反射される。この反射体10aで反射により、その無線機5からの電波の放射電力が強められ、地上の無線機(図19では省略されている)へ伝えられる。
【0006】
このように、反射体10aで無線機5からの電波が反射され、地上の無線機が受信し易くなることで、マンホール1内の情報を得ることができるようになる.また、逆に、地上の無線機からの電波が同じ反射板10aで反射されて無線機5に到達することで、マンホール1の外部、すなわち地上からの指示をマンホール1内へと送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−50899号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】長距離ワイヤレスモデム 形WM51 OMRON 小エリア無線により郊外1kmの長距離通信を実現、インターネット<URL:http://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/cat/wm51_sgsa-012f-1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した非特許文献1のように、マンホール500の内外の情報をケーブル(有線)で送受信するケースでは、マンホール500の天井や、壁に地上までケーブルを通すための穴が必要になる。このような穴は、マンホール500の強度に影響があったり、マンホール500内への浸水の増加を招く恐れがあったりという問題がある。また、ケーブルの敷設工事が必要となり、土木工事の費用が膨大になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献1のように、マンホール蓋3の下に反射板10aを設置する場合には、反射板10aを設置する位置から考えると、その設置工事、及びマンホール1内へ作業員が入る場合に困難が予想される。特に、ここでの反射板10aについては、無線機5から送信される電波の放射強度を増すために、大きなサイズが要求されると考えられる。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、地上でのリーダにおけるマンホール内の無線タグからの電波の受信レベルを容易に向上させることができる無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、前記マンホールの全床面に設置された電波反射部材を備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの4つの側面のいずれかの全面に設置されることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向と平行となる2つの側面の全面に設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向に直交する2つの側面の全面と車道側の側面との全面とに設置されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの全ての側面の全面に設置されることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、前記マンホールの全床面に加えて、全ての側面の全面、及び前記マンホールの天井の一部を除く全面に設置されることを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記の発明において、前記天井に設置された電波反射部材は、前記路上を走行する車両の走行方向に一致する方向に開口したスリット部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記の発明において、前記天井に設置された電波反射部材は、その一部に開口した開口部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記の発明において、前記電波反射部材は、金属製のメッシュ、または反射塗料のいずれかであることを特徴とする。
【0021】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、前記タグは、前記リーダの場所、または移動に一致する指向性を有する指向性アンテナを備えることを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、地上でのリーダにおけるマンホール内の無線タグからの電波の受信レベルを容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内部の構成を示す模式図である。
【図2】従来のマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。
【図3】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。
【図4】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。
【図5】マンホール床面&側面反射が殆どない場合を説明するための概念図である。
【図6】本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。
【図7】マンホールにて床面での電波反射がある/なしの場合での受信レベルのシミュレーション結果を示す概念図である。
【図8】本第1実施形態による無線通信システムでのシミュレーション条件を説明するための概念図である。
【図9】本発明の第2実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す模式図である。
【図10】本第2実施形態の第1の変形例による、マンホール床面と3側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図11】本第2実施形態の第2の変形例による、マンホール床面と4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図12】本第2実施形態の第3の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図13】本第2実施形態の第4の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。
【図14】本第3実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す概念図である。
【図15】本第3実施形態による指向性アンテナ110の構造と放射指向性を示す概念図である。
【図16】本発明の第4実施形態による反射塗料の一例を示す概念図である。
【図17】本第4実施形態による指向性アンテナの一例を示す概念図である。
【図18】従来技術による、マンホールポンプを遠隔で監視する無線通信システムの構成を示す模式図である。
【図19】従来技術による無線中継装置の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
A.第1実施形態
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内部の構成を示す模式図である。図1において、マンホール500の内部に設置した無線タグ100からの電波は、直接、地上へ向かう直接波のみでは、地上で作業員が所持するリーダ200で受信できるレベルが低く確実に無線タグ100からの情報を把握できない場合がある。
【0026】
本第1実施形態では、図1に示すように、直接波に加え、無線タグ100からの電波を床面510で反射させる(床面510での反射波の割合を強める)ことにより、上述した無線タグ100の直接波のみの受信レベルが低くても、反射波が足し合わされて、地上(路上)にてリーダ200で受信可能とする。
【0027】
そこで、本第1実施形態では、マンホール500の床面510で電波を反射させるため、電波反射部材515を床510の全面に設ける。電波反射部材515としては、金属の網(メッシュ)や、反射塗料などを用いる。金属の網は、電波の波長より短い網目を有し、設置する前のマンホール500の内側への運搬に支障のないように畳むことが可能となっており、マンホール500の床面510に設置するときに畳んだ網を展開するようになっている。
【0028】
また、他方の反射塗料としては、例えば、電子機器のプラスチック製パッケージの内側に塗布されるものがある(電磁波シールドコーティング、導電塗料、インターネット<URL:http://www.plascoat.co.jp/shield_det.html>)。これは、金属フィラーの入った塗料をスプレーにより塗装することで、塗装対象となるものの表面に導電率の高いコーティング膜を形成し電磁波を反射する技術である。
【0029】
ここで、マンホール内に設置した無線タグ100から送信される電波について、地上へ直進して進む直接波と、マンホール500の床面510で反射して地上へ届く反射波の2つの電波により、どのように地上での電波の受信強度に影響があるのか、また、マンホール500の側面520での反射波が加わった場合には、どのような影響を及ぼすのか、それぞれに基本的な原理について説明する。
【0030】
図2(a)、(b)は、従来のマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。図2(a)には、通常のマンホール500の床面510のみの反射波がある場合を示している。また、図2(b)には、通常のマンホール500の側面520からの反射波が加わる場合を示している。図2(a)において、マンホール500の天井530は、地面から深さDmにあり、さらにHm深い位置に床面510がある。このマンホール500の内部に、その床面510から高さhtの位置に無線タグ100が設置される。一方で、リーダ200は、地上hrの高さにある。
【0031】
このような場合には、無線タグ100からリーダ200までの距離は、Hm−ht+Dm+hrであり、この距離を無線タグ100から送信された電波の直接波が伝わる。他方で、無線タグ100から床面510を経由してリーダ200までの距離は、Hm+ht+Dm+hrであり、この距離を床で反射した電波の反射波が進む。
【0032】
反射波については、マンホール500の床面510での反射率をγm(≪1)とすれば、反射波が地上に到達するまでの実質的な距離は、(Hm+ht+Dm+hr)・1/γmと考えられる。従って、反射波は、直接波に比べ、地上へ届いた際の受信強度が極めて弱いため、地上では、直接波のみの受信強度と変わらない。なお、図2(a)に示す直接波と反射波とを比較した検討では、マンホール天井530から地面までに当たる深さ(Dm)の土壌による、それぞれの電波の減衰については、直接波と反射波との双方とも同じで、比較においては相殺されていると考えている。
【0033】
図2(b)において、マンホール500については、図2(a)と同様、地面から深さDmでマンホールの天井530、地上からDm+Hm深さがマンホールの床面510になり、Dm+Hm−htの深さに無線タグ100が設置され、地上高さhrにリーダ200がある。また、このマンホール500の幅はWmであり、そのマンホール500での片方の側面520の位置からWtの距離に無線タグ100に設置され、同じ側面520の位置からWrの距離にある地上にリーダ200がある。
【0034】
上述した構成において、まず、無線タグ100からリーダ200までの直線距離、つまりは、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}を直接波Aが進む。また、無線タグ100からマンホール500の床面510で反射してリーダ200までの距離は、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}であり、床面510の反射波Bがこの距離を進む。
【0035】
しかし、マンホール500の床面510での電波の反射率は、γm(≪1)と僅かなため、この反射波Bが無線タグ100からリーダ200に到達するまでの実質的な距離は、1/γm・√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}とみなして考えられる。さらに、無線タグ100からの電波がマンホール500の側面520で反射してリーダ200に到達するための経路は、図2(b)では2つあり、片方の距離は、√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}であり、他方の距離は、√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}である。
【0036】
これらの距離を進む反射波C、及びDは、マンホール500の側面520で反射するため、その反射率は、γm(≪1)と僅かである。従って、上述した反射波C、及びDの実質的な距離は、1/γm・√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}、及び1/γm・√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}となる。
【0037】
上述した3つの反射波B、C、及びDについては、リーダ200による受信の強度を直接波Aと比較すると、極めて小さいものとなる。従って、通常のマンホール500では、床面510と側面520とによる反射波B、C、及びDが直接波Aに加わって地上のリーダ200での電波の受信強度を高めるように期待はできない。
【0038】
なお、図2(a)と同様に、図2(b)に示す直接波Aと3つの反射波B、C、Dを比較した検討においても、マンホール天井530と地面(Dm)間の土壌で各電波が減衰することについて、直接波Aと3つの反射波B、C、Dが全て同じ条件で比べられており、そのDm間の減衰を各電波の比較で全て同じ分を差し引いて考えている。
【0039】
図3(a)、(b)は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホールでの電波状況の基本原理を説明するための概念図である。図3(a)には、床面510で反射のあるマンホール500を示している。また、図3(b)には、床面510の反射に加え、側面520で反射のあるマンホール500を示している。
【0040】
図3(a)においては、図2(a)と同様に、地面から深さDmにマンホール500の天井530、さらに深さDm+Hmに床面510があり、そして深さDm+Hm−htのマンホール内に無線タグ100が設置され、リーダ200は、地上で高さhrにある。無線タグ100からリーダ200までがHm−ht+Dm+hrで、無線タグ100から電波が送信され、直接波がリーダ200に伝わる距離であり、加えて、床面510を経由した無線タグ100からリーダ200まではHm+ht+Dm+hrであり、これは、床面510で反射した電波の反射波が進む距離である。
【0041】
反射波については、マンホール500の床面510に反射塗料の塗布や、金属製メッシュが設置されているので、その反射率は高く(ここでは、反射率≒1と仮定し)、この反射波が地上に到達する実質的な距離も、Hm+ht+Dm+hrと変わらない。ここで、マンホール500の深さと床面510から天井530の高さと、さらに、地上にあるリーダ200の高さとの合計に比べて、床面510から無線タグ100までの高さが十分小さい(ht≪Hm+Dm+hr)ことも想定できるので、その反射波が地上へ届く距離が直接波と同程度であり、これら直接波と反射波とが合成され、リーダ200での受信強度が向上されると期待される。
【0042】
図3(b)においては、図2(b)と同様、地面から深さDmにマンホールの天井530、深さDm+Hmに床面510があり、床面から高さhtに無線タグ100、地上から高さhrにリーダがある。加えて、このマンホール500の幅はWmで、無線タグ100は、片方の側面520からWtの位置にあり、同じ側面520からWrの距離に地上のリーダ200がある。この条件の下で、無線タグ100からリーダ200までを直接波aが√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}の距離を、床面510での反射波bは、√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}の距離を、それぞれ進む。
【0043】
ここで、図3(b)のマンホール500の床面510には、反射塗料が塗布されたり、金属製メッシュが設置されたりしており、電波を殆ど反射する(反射率≒1)ため、この反射波bは√{(Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm+ht)2}を無線タグ100からリーダ200に到達するまでの実質的な距離となる(この点が先の図2(b)に示した反射波Bとは異なる)。さらに、図3(b)では、無線タグ100から送信されマンホール500の側面520で反射された電波が2つの経路によりリーダ200に到達する。一方の距離が√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}で、他方は、√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}である。
【0044】
これら距離を進む反射波c、及びdは、マンホール500の側面520で反射するが、側面520には、反射塗料が塗布されたり、金属製メッシュが設置されたりしており、殆どの電波を反射する(反射率≒1)ため、反射波c、及びdについては、√{(Wr+Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}、及び√{(2Wm−Wr−Wt)2+(hr+Dm+Hm−ht)2}が実質的な距離になる。これまでの説明から、直接波aの進む無線タグ100からリーダ200までの距離と、3つの反射波b、c、及びdが進む実質的な距離とは殆ど同じになる。
【0045】
ここでの仮定として、マンホール500の深さ、床面510から天井530の高さ、リーダ200の地上高さの合計に対し、床面510から無線タグ100の高さが十分小さい(ht≪Hm+Dm+hr)と想定できる。また、もう1つの仮定としては、無線タグ100、及びリーダ200が設置される位置は、マンホール500の片方の側面からマンホール500の幅の半分程度になる(Wr≒Wt≒Wm/2)。
【0046】
つまり、マンホール500の中央にあると想定される。よって、これら4つの電波、すなわち直接波aと、反射波b、c、及びdとでのリーダ200による受信の強度は、それぞれ同程度である。従って、通常のマンホール500では、床面510と側面520とによる反射波b、c、及びdが、直接波aに加わって、地上のリーダ200での電波の受信強度を高めると期待できる。
【0047】
図4は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。図4においても、図1と同様にマンホール500に設置された無線タグ100の電波を、電波反射部材515が設けられた床面510で反射させる(反射波の強度を強くする)。無線タグ100からの電波を床面510で反射させることにより、地上(路上)でリーダ200の受信範囲を広げることができる。
【0048】
この結果、走行する車両(自動車)300に搭載されたリーダ200が無線タグ100の電波を受信することを考えると、車両300の走行速度が速くても、無線タグ100からの情報を車両300に搭載されたリーダ200で取得することができるようになる。
【0049】
なお、マンホール500の床面510で電波を反射させるために、上述したように、床面510に電波反射部材(反射塗料、電波の波長よりも短い網目となる金属製のメッシュ)を設けている。この反射塗料としては、図1において述べた電磁波シールドコーティング、導電塗料が好ましく、また、金属製のメッシュについては、設置前の運搬時に畳むことが可能で、使用時に展開することができるものが好ましい。
【0050】
ここで、図5は、マンホール床面&側面反射が殆どない場合を説明するための概念図である。図5においては、図4で示したように、マンホール500の床面510で無線タグ100の電波を反射させたこととは逆の状態で、マンホール500の床面510はもちろん側面520での無線タグ100からの電波の反射もない場合、あるいは電波の反射が床面510で仮にあったとしても僅かである場合を示している。
【0051】
このような場合には、地上でのリーダ200による無線タグ100からの電波は、直進した電波のみ、あるいは床面510で反射された電波の割合が殆どなく大部分が直進の電波であるため、無線タグ100からの電波の地上における受信レベルが弱くなる。そのために、無線タグ100からの電波を地上でリーダ200が受信できる範囲も狭い範囲に限られてしまう(実線の円)。つまり、マンホール500に十分近距離に位置するリーダ200Aでは無線タグ100からの電波を受信することができるが、マンホール500から離れたリーダ200Bでは、無線タグ100からの電波を受信することができなくなる。
【0052】
図6は、本第1実施形態による無線通信システムでのマンホール床面反射を説明するための概念図である。図6においては、図5と同じ場所の道路にあるマンホール500を示しているが、マンホール500の床面510で無線タグ100からの電波を反射させている点、あるいは床面510で反射する電波が無線タグ100から地上へと直進する電波と同程度の強度がある点で異なっている。
【0053】
無線タグ100が送信する電波は、地上へ直進する電波に加えて、マンホール500の床面510に反射して地上へ伝わる電波もある。この結果、マンホール500の床面510で反射した電波が加わる分、地上、すなわち道路上でのリーダ200の受信範囲を拡張させられる。つまり、マンホール500に十分近距離に位置するリーダ200Aでも、マンホール500から離れたリーダ200Bでも、無線タグ100からの電波を受信することができる。
【0054】
図7は、マンホールにて床面での電波反射がある/なしの場合での受信レベルのシミュレーション結果を示す概念図である。つまり、図7には、マンホール500の床面510での反射がある/なしの場合で、それらの受信レベルの違いをシミュレーションにより求めて示したものである。図7に示すグラフの横軸は、無線タグ100から送信された電波の受信レベルであり、縦軸は、マンホール500の床面510からの高さで、受信アンテナの位置を示す。
【0055】
図7に示すグラフの一点鎖線がマンホール500の床面510がコンクリートの場合、つまり床面510での電波の反射が僅かであり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。また、実線は、マンホール500の床面510が銅であり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。
【0056】
また、点線は、マンホール500の床面510が銅であり、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から波長の1/4、つまり3.4cmの高さにある場合を示している。さらに、破線が自由空間、つまりマンホール500の床面510において全く電波の反射がなく、かつ電波を送信する無線タグ100の位置がマンホール500の床面510から2.06mの場合を示している。
【0057】
破線の自由空間に対して、点線のマンホール床面510に銅版を配置して送信アンテナを1/4波長の高さに設置した場合には、マンホール500の床510から4m以上、すなわち、地上1m以上の高さに受信アンテナがあると、電波の受信レベルが何れも上回り、受信アンテナの位置が高いほど受信レベルの差が広がっている。
【0058】
一点鎖線のコンクリートと比較して、実線のマンホール床面510に銅版を配置して送信アンテナを2.06mの高さに設置した場合には、受信アンテナがマンホール500の床面510から3mを若干超えている箇所と4〜6mにおいては、言い換えると、地上の僅かな高さの範囲と地上1〜3mにおいては、受信レベルが高くなっている。
【0059】
また、点線で示す銅の床面で1/4波長の高さに置かれた送信アンテナに対して、実線で示す同じ銅の床面でも2.06mの高さに送信アンテナが設置されている場合には、マンホール500の床面510から3mの高さと4〜5m前後、言い換えると、地上に近い範囲と地上1〜2mで受信レベルが高くなっている。
【0060】
これらシミュレーション結果からは、マンホール500の床面510に銅などの電波を反射する素材を配置することで、地上での受信レベルを向上できたり、送信アンテナの設置する高さを工夫することにより、受信レベルに違いが出たりすることが分かる。
【0061】
図8は、本第1実施形態による無線通信システムでのシミュレーション条件を説明するための概念図である。図8には、図7に示すシミュレーションで用いたマンホールのサイズのパラメータなど状況を示している。まず、図8に示すように、マンホール500には、蓋、出入り口、天井、側面,床面510があるが、最も強い反射の効果を簡単なシミュレーションで得るために、床面510のみがあることを想定している。そして、該床面510については、一般的なマンホール500での材質であるコンクリート、電波反射部材515として反射塗料や、金属製のメッシュとして銅、また電波を全く反射しない状況として自由空間(床面が存在しない状況)をシミュレーションの条件例とした。
【0062】
典型的なマンホール500の床面の位置は、地上から深さ3mにあると考えればよい。このようなマンホール500に対して、無線タグ100を設置する位置は、床面510からの高さを決め、その無線タグ100の位置は、送信アンテナ高とした。また、リーダ200の高さを受信Rxアンテナ高とし、この高さもマンホール500の床面の基準としていることから、地上3m以上の高さを確認すれればよい。
【0063】
この受信Rxアンテナの高さを変え、それぞれ受信Rxアンテナの高さで上述した送信アンテナからの(直接波と反射波とを合わせた)電波の受信レベルを求める。このように、図8に示すシミュレーション条件で、図7に示すシミュレーション結果では、4つの例、すなわち床面510がコンクリート(送信アンテナ高さ=2.06m)を一点鎖線、床面が銅(送信アンテナ高さ=2.06m)を実線、同じく銅(送信アンテナ高さ=3.4cm(1/4波長))を点線、自由空間(送信アンテナ高さ=2.06m)を破線のそれぞれの例を示したものである。
【0064】
上述した第1実施形態によれば、マンホール500の内部に設置した無線タグ100の電波を反射する電波反射部材(反射塗料、または金属製のメッシュ)515を、マンホール500の床面510に設置するようにしたので、マンホール500の内部から地上へのケーブルがなくてもマンホール内の情報収集と地上からの指示も容易にできる。
【0065】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に付いて説明する。
図9は、本第2実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す模式図である。本第2実施形態では、マンホール床面と側面で無線タグ100からの電波を反射する。図9において、マンホール500では、床面510と、道路上の車両300が走行する方向と平行となる2つの側面520A、520Cに電波を反射する電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置する。
【0066】
図9の左側には、マンホール500の内面の展開図を示している。該展開図には、天井530の中央には出入口あり、また、床面510と時計回りに側面520A、520B、520C、520Dが示されている。電波反射部材(塗料またはメッシュ)515は、床面510と、道路を車両300が走行する方向と平行な側面520A、520Cとに設置されている。
【0067】
このように、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていることにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100から送信された電波としては、地上への直接波と、マンホール500の床面510と上記2つの側面520A、520Cによるそれぞれの反射波とが加わる。直接波に床面510と2つの側面520A、520Cからの反射波とが加わることにより、車両300が走行する方向に無線タグ100の電波が到達する受信範囲が拡張される。
【0068】
B−1.第1の変形例
図10は、本第2実施形態の第1の変形例による、マンホール床面と3側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。上述した図9に示すように、マンホール500での床面510、及び車両300の走行方向に平行な2つの側面520A、520Cに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていることに対し、該第1の変形例では、図10に示すように、マンホール500での床面510、及び歩道方向を除く3方向の側面520A、520B、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。言い換えると、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515は、車両300の走行方向に直交する2つの側面520B、520Dと、車道側の側面520Aとに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。
【0069】
図9と同様に、図10の左側に展開図を示す。図10において、天井530、床面510と側面520A、520B、520C、520Dは、図9と同じ位置である。図10においては、展開図にある床面510と側面520A、520B、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置している。これにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波は、それらマンホール500の床面510とそれらの3つの側面520A、520B、520Dの電波反射部材(塗料またはメッシュ)515に反射し、歩道方向に広い範囲に届く。その結果、歩道にある電話BOX400へも、マンホール500の内部の無線タグ100からの電波が到達し易くなる。
【0070】
B−2.第2の変形例
図11は、本第2実施形態の第2の変形例による、マンホール床面と4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図11において、マンホール500には、天井530以外の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。
【0071】
図9や、図10と同様に、図11の左側に展開図を示す。マンホール500の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置している。これにより、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波は、それらマンホール500の床面510とそれら全ての側面520A、520B、520C、520Dの電波反射部材(塗料またはメッシュ)515に反射してマンホール500の上方となる地上へ電波の強度が増す。結果として、マンホール500の上方にあたる範囲の地上へは、マンホール500の内部の無線タグ100からの電波が受信し易くなる。
【0072】
従って、点検作業員は、マンホール500の上方の地上でリーダ200を所持して、マンホール500の内部に設置された無線タグ100からの電波を受信する際に、無線タグ100から送信される電波の直接波の他にも、マンホール500の床面510による電波の反射波、および全ての側面520A、520B、520C、520Dによる反射波も合わせて受信する。このために、単に無線タグ100からの電波の直接波のみを受信するレベルに比べ、床面510全ての側面520A、520B、520C、520Dによる反射波の分も受信レベルが向上するため、より的確に無線タグ100からの信号を受信できるようになる。
【0073】
B−3.第3の変形例
図12は、本第2実施形態の第3の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図12において、マンホール500には、天井530を含む、床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。なお、図12の斜視図において、側面520B、520D、及び天井530に設置されている電波反射部材(塗料またはメッシュ)515については省略している。
【0074】
図11に示したマンホール500が天井530以下の床面510と全ての側面520A、520B、520C、520Dに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていたが、図12に示すマンホール500は、さらに、天井530にも、ライン状のスリット部516を除いて、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置する。マンホール500の内部全体からみると、天井530のライン状のスリット部516が開いているように見える。該スリット部516の方向は、路上の車両300の走行方向と一致している。
【0075】
図9〜図11と同様に、図12の左側に展開図を示す。図12の左側に示す展開図から明らかなように、マンホール500の全ての面、つまり床面510と4つの側面520A、520B、520C、520Dと天井530とに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。但し、唯一、天井530の長手方向にスリット部516が切られており、該スリット部516の延長の方向に当たる側面520B、520Dにもスリットの端がある。これら天井530と側面520B、520Dのスリット部(端部)516とは、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない範囲となっている。
【0076】
そのため、マンホール500の大部分の範囲である床面510、側面520A、520B、520C、520D、及び天井530に設置した電波反射部材(塗料またはメッシュ)515で電波が反射され、マンホール500の内側に戻される。そして、スリット部516を通じてのみ、無線タグ100から送信された電波がマンホール500の外部へと出る。さらに、マンホール500の内側の様々な箇所で反射された電波も加わるため、そのスリット部516からマンホール500の外側へ出る電波の送信レベルは強くなる。
【0077】
言い換えると、マンホール500の内部に設置された無線タグ100の電波は、大部分の範囲でマンホール500の内側に閉じ込められているが、唯一、そのスリット部516からのみマンホール500の外側へと送出される状態にある。従って、無線タグ100の電波がマンホール500の上方に当たる地上で受信できる範囲は、スリット部516と一致する方向に拡張されることになり、路上を走行する車両300に搭載したリーダ200で受信する場合に、より速い速度で移動する車両300でも、無線タグ100の信号を受信することができる。
【0078】
B−4.第4の変形例
図13は、本第2実施形態の第4の変形例による、マンホール床面、天井、4側面とからの反射があるマンホールの構成を示す模式図である。図13においても、図12のように、マンホール500の床510、全ての側面520A、520B、520C、520D、一部を除く天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。なお、図12の斜視図において、側面520B、520D、及び天井530に設置されている電波反射部材(塗料またはメッシュ)515については省略している。
【0079】
本第4の変形例において、図10に示す構成と異なる点は、図13に示すように、天井530の一部に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていない開口部517を有していることにある。図12では、道路を走行する方向に一致した形状のスリット部516であったが、本第4の変形例においては、図13に示すように、天井530の隅の一箇所に、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置していない。
【0080】
図9〜図12と同様に、図13の左側に展開図を示す。図13の左側に示すように、マンホール500の内側の殆ど全面、つまり床面510、4つの側面520A、520B、520C、520D、大部分の天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されている。但し、マンホール500において、天井530の一部分には、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない、電波に対して透過な開口部517が形成されている。
【0081】
マンホール500の内部に設置した無線タグ100からの電波は、マンホール500の内側に設置された電波反射部材(塗料またはメッシュ)515により大部分が反射され、電波に対し透過な開口部517から唯一全てマンホール500の外へと放出されることになる。従って、天井530の一部に形成された、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515がない開口部517から送出される無線タグ100からの電波の強度が強まることになる。天井530の電波反射部材(塗料またはメッシュ)515が設置されていない開口部517上に当たる地上での位置では、リーダ200により無線タグ100の電波を受信することができる。
【0082】
上述した第2実施形態によれば、マンホール500の床510に加えて、車両300が地上の道路を走行する方向と平行な側面520A、520Cにも、電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置したり、あるいは、マンホール500の床510や、側面520A、520B、520C、520Dのいずれかに電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を設置したりすることにより、特定の方向にだけ無線タグ100からの電波(直接波、反射波)を送出し、道路を高速度で走行する車両300や、道にある電話BOX400に設置したリーダ200、あるいは、地上の真上で受信する場合においても、マンホール500の無線タグ100の電波を容易に、かつ確実に受信することができる。
【0083】
また、マンホール500の内側の床面510、全ての側面520A〜520D、及び天井530の一部を除いた範囲に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を配置し、マンホール天井530の一部を、地上の道路での車両300の走行方向に一致するスリット部516、あるいは開口部517とすることで、さらに高速度で走行する車両300に搭載したリーダ200、あるいはマンホール上にある地上にて作業員が持つリーダ200にて、マンホール500の無線タグ100の電波を容易に、かつ確実に受信することができる。
【0084】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図14は、本第3実施形態による無線通信システムを用いたマンホール内の構成を示す概念図である。本第3実施形態では、無線タグ100は、指向性を持つアンテナ110を有する。アンテナ110の指向性は、道路の車両300が走行する方向へ沿って広く、垂直な方向には狭い。これは、図9や、図12で説明したように、マンホール500の床面510、側面520A〜520D、さらに、天井530に電波反射部材(塗料またはメッシュ)515を配置したり、前述した第2実施形態と同じ効果がある。
【0085】
すなわち、図14に示すような、指向性のあるアンテナ110を、無線タグ100に接続することで、同じ出力の送信電力の無線タグ100を用いた場合、道路をより速い速度で走行する車両300に搭載されたリーダ200により、無線タグ100の電波を受信しやすくなる。この指向性を持つアンテナ110の例としては、双指向性パッチ・スロット複合アンテナ(BNPSA:Bidirectional Narrow Patch and Slot Antenna)がある。このBNPSAは、双指向性スロットアンテナ(BSA)と双指向性細幅パッチアンテナ(BNPA)とを組み合わせた構成である。
【0086】
図15(a)、(b)は、本第3実施形態による指向性アンテナ110の構造と放射指向性を示す概念図である。図15(a)は、BNPSAの構造であり、図15(b)は、該BNPSAの放射指向性である(参考文献1:長敬三,堀俊和,兎澤一“双指向性を有する偏波供用基地局アンテナ”、インターネット<URL:http://ci.nii.ac.jp/naid/110003339814>)。図15(b)に示すように、アンテナの放射指向性は、ある直線方向(図15(b)では左右方向)に広く、その垂直方向(図15(b)では上下方向)に狭いという特徴を有する。
【0087】
上述した第3実施形態によれば、マンホール500の内部に設置される無線タグ100に対して,そのアンテナを受信するリーダ200の場所や、移動に合わせた指向性のあるものにすることで、地上のリーダ200で無線タグ100が送信する電波を受信しやすくできる。
【0088】
D.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
前述した第1、第2実施形態では、電波反射部材515の1つとして、反射塗料について説明した。また、上述した第3実施形態では、指向性を有するアンテナ110を無線タグ100に接続する例に付いて説明した。本第4実施形態は、該反射塗料の具体体例、及び指向性アンテナの他の例を示すものである。
【0089】
図16は、本第4実施形態による反射塗料の一例を示す概念図である。図16には、反射塗料515aが塗布された電子機器のパッケージ800の内側を示している。図16に示すように、電子機器から発生する電子ノイズをパッケージ800内側の反射塗料515aを塗布することにより外部漏れないようにしている。これと同じ反射塗料515aをマンホール500の床510や、側面520A〜520D、あるいは天井530に塗布することにより、マンホール500の内部に設置した無線タグ100から送信する電波を反射することができる。反射塗料515aの利点は、塗布する対象、この場合、マンホール500の壁面形状に影響されることなく、一様に塗布することができる点にある。
【0090】
図17は、本第4実施形態による指向性アンテナの一例を示す概念図である。指向性アンテナとしては、図15に示すパッチ・スロット複合アンテナ(BNPSA)110の他に、図17に示すように、コーリニアアンテナ110aを用いたアクティブアレイ(参考文献2:アンテナの基礎から応用まで、インターネット<URL:http://www.interq.or.jp/blue/rhf333/ANT-K.htm>、参考文献3:進行波アンテナ 低在波アンテナ 周波数帯域特性 終端抵抗 共振状態 ロンビックアンテナ − 1アマの無線工学 H16年08月期、インターネット<URL:http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H16/html/H1608A19_.html>)がある。
【0091】
上述した第4実施形態によれば、図15や、図17に示す様々な指向性を有するアンテナ110、110aを、図14に示すように、マンホール500に設置する無線タグ100に接続したり、反射塗料515aをマンホール500内の床面510や、側面520A〜520D、さらに、天井530に塗布したりすることなどにより、地上のリーダ200で無線タグ100が送信する電波を受信しやすくできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、マンホール内の情報を簡便に地上で収集でき、マンホール設備の使用する電気・ガス・水道・通信など社会基盤に関係する各種機器の保守点検を容易にすることを可能にする。また、これによりマンホールの異常状態の予兆などを事前に検知できるようになる。
【符号の説明】
【0093】
100 無線タグ
110 アンテナ
110a コーリニアアンテナ
200、200A、200B リーダ
300 車両
400 電話BOX
500 マンホール
510 床
515 電波反射部材
515a 反射塗料
520 側面
520A 側面A
520B 側面B
520C 側面C
520D 側面D
530 天井
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、
前記マンホールの全床面に設置された電波反射部材を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの4つの側面のいずれかの全面に設置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向と平行となる2つの側面の全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向に直交する2つの側面の全面と車道側の側面との全面とに設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの全ての側面の全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、全ての側面の全面、及び前記マンホールの天井の一部を除く全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記天井に設置された電波反射部材は、
前記路上を走行する車両の走行方向に一致する方向に開口したスリット部を有することを特徴とする請求項2、3または6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記天井に設置された電波反射部材は、
その一部に開口した開口部を有することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記電波反射部材は、
金属製のメッシュ、または反射塗料のいずれかであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項10】
マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、
前記タグは、
前記リーダの場所、または移動に一致する指向性を有する指向性アンテナを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項1】
マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、
前記マンホールの全床面に設置された電波反射部材を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの4つの側面のいずれかの全面に設置されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向と平行となる2つの側面の全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、路上を走行する車両の走行方向に直交する2つの側面の全面と車道側の側面との全面とに設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、更に、前記マンホールの全ての側面の全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記電波反射部材は、
前記マンホールの全床面に加えて、全ての側面の全面、及び前記マンホールの天井の一部を除く全面に設置されることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記天井に設置された電波反射部材は、
前記路上を走行する車両の走行方向に一致する方向に開口したスリット部を有することを特徴とする請求項2、3または6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記天井に設置された電波反射部材は、
その一部に開口した開口部を有することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記電波反射部材は、
金属製のメッシュ、または反射塗料のいずれかであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項10】
マンホール内に設置されたタグと地上にあるリーダとの間で、無線で情報を送受信する無線通信システムであって、
前記タグは、
前記リーダの場所、または移動に一致する指向性を有する指向性アンテナを備えることを特徴とする無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−243171(P2011−243171A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117473(P2010−117473)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]