説明

無線通信システム

【課題】子機を動かすことで初期設定通信を行える無線通信システムを提供する。
【解決手段】親機1では、子機2から受信した信号の今回の受信レベル値を測定し(S3)、前回の受信レベル値と今回の受信レベル値との差Δがしきい値THΔであり、且つ、今回の受信レベル値がしきい値TH以上であるなら(S5:YES)、初期設定通信を行う(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子機を動かすことで初期設定通信を行える無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいては、多くの場合、親機と子機が、本来の通信を行えるように
接続とセキュリティの設定を行うための初期設定通信を行う。
【0003】
例えば、ユーザが、親機と子機に設けられた初期設定通信のスイッチを操作すると、または、親機や子機をパーソナルコンピュータなどに接続し、ウェブブラウザによるグラフィックインタフェースの画面に表示される階層メニューを辿り、初期設定通信の項目を選択すると、初期設定通信が始まり、これにより、本来の通信を行えるようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Wi-Fi Alliance: Home"、[online]、[平成23年4月22日検索]、インターネット<URL:http://www.wi-fi.org/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、市中製品(タブレット端末、ゲーム機等)には、スイッチを備えないものがあり、よって、初期設定通信をスイッチにより行うことができない。
【0006】
また、階層メニューを辿るのは煩雑であり、初期設定通信を容易に行いたいという要望がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、子機を動かすことで初期設定通信を行える無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、第1の本発明は、無線通信システムの親機であって、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部とを備えることを特徴とする無線通信システムの親機をもって解決手段とする。
【0009】
第2の本発明は、無線通信システムの親機であって、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が該差について予め定めたしきい値以上であり、且つ、当該受信レベル値が該受信レベル値について予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部とを備えることを特徴とする無線通信システムの親機をもって解決手段とする。
【0010】
例えば、親機は、前記初期設定通信において送信される信号のレベルが低くなるように制御する信号レベル制御部を備える。
【0011】
第3の本発明は、無線通信システムであって、前記無線通信システムの親機は、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部とを備え、前記無線通信システムの子機は、前記無線通信システムの親機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記初期設定通信で得られた前記親機の情報が記憶される記憶部と、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されていないなら、前記子機の初期設定通信部を起動する設定通信起動部とを備えることを特徴とする無線通信システムをもって解決手段とする。
【0012】
第4の本発明は、無線通信システムの親機の動作方法であって、前記親機は、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、前記動作方法は、前記親機の初期設定通信起動部が、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動することを特徴とする無線通信システムの親機の動作方法をもって解決手段とする。
【0013】
第5の本発明は、無線通信システムの親機の動作方法であって、前記親機は、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、前記動作方法は、前記親機の初期設定通信起動部が、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が該差について予め定めたしきい値以上であり、且つ、当該受信レベル値が該受信レベル値について予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動することを特徴とする無線通信システムの親機の動作方法をもって解決手段とする。
【0014】
第6の本発明は、無線通信システムの動作方法であって、前記無線通信システムの親機は、前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、前記無線通信システムの子機は、前記無線通信システムの親機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、前記初期設定通信で得られた前記親機の情報が記憶される記憶部とを備え、前記動作方法は、前記親機の初期設定通信起動部が、前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動し、前記子機の設定通信起動部が、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されていないなら、前記子機の初期設定通信部を起動することを特徴とする無線通信システムの動作方法をもって解決手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線通信システムの親機や子機のスイッチを操作せずに、また、階層メニューを辿ることなく、子機を動かすことで初期設定通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【図2】親機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】履歴情報記憶部107の構成と記憶内容の一例を示す図である。
【図4】子機2の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図5】親機1における初期設定通信に関するフローチャートである。
【図6】子機2における初期設定通信および通常設定通信に関するフローチャートである。
【図7】親機1と子機2の間の初期設定通信に関するシーケンスを示す図である。
【図8】親機1と子機2の間の距離Lと、信号Aが距離Lを進む間に減衰する減衰量Kとの関係を示す図である。
【図9】本実施の形態の変形例に係る無線通信システムの親機1と子機2の間の初期設定通信に関するシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。
無線通信システムは、親機1と子機2を備え、親機1と子機2は互いに電波により無線通信を行う。親機1には、LAN(Local Area Network)ケーブルを介して通信装置3が接続され、通信装置3は、通信網Nに接続される。親機1、子機2および通信装置3は、例えば、無線通信システムのユーザ宅に設置される。子機2は、親機1と通信装置3を介して、通信網N内のウェブサーバなど(図示せず)と通信を行う。無線通信システムには複数の子機2が含まれることがあり、この場合、各子機2は、その識別情報であるアドレス(MACアドレス(Media Access Control address)など)で識別される。
【0019】
図2は、親機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
親機1は、各子機2に対し、電波を用いた無線通信を行う無線通信部101と、通信装置3に対し、LANケーブルを介して通信を行う有線通信部102と、無線通信部101と有線通信部102の間で信号転送を行うブリッジ部103と、無線通信部101で受信した信号から特定の無線フレームを抽出する無線フレーム抽出部104と、無線通信部101で受信した信号の受信レベル値を測定する受信レベル値測定部105と、無線フレーム抽出部104で抽出された特定の無線フレームに含まれる送信元の子機2のアドレスと受信レベル値と受信時刻とを含む履歴情報を生成する無線フレーム処理部106と、履歴情報が記憶される履歴情報記憶部107と、各子機2との初回の通信に際して必要な初期設定通信を行う初期設定通信部108と、初期設定通信で得た設定情報が記憶される設定情報記憶部109と、各子機2との2回目以降の通信に際して必要な設定通信(初期設定通信と区別し、「通常設定通信」という)を行う通常設定通信部110と、初期設定通信部108を起動する初期設定通信起動部111と、初期設定通信において送信される信号のレベルを低下させるための制御を行う信号レベル制御部112とを備える。
【0020】
初期設定通信部108は、例えば、Wi-Fi Allianceが定めたWPS(Wi-Fi Protected Setup)と称される初期設定通信を行うものである。
【0021】
図3は、履歴情報記憶部107の構成と記憶内容の一例を示す図である。
履歴情報記憶部107には、子機2のアドレスと受信レベル値と受信時刻を含む履歴情報が蓄積される。同図は、アドレスをMACアドレスとしたものである。
【0022】
図4は、子機2の概略構成を示す機能ブロック図である。
子機2は、無線通信を行う無線通信部21と、無線通信部21で受信した信号から特定の無線フレームを抽出する無線フレーム抽出部22と、該無線フレームから親機1の識別情報を取り出す無線フレーム処理部23と、親機1との初回の通信に際して必要な初期設定通信を行う初期設定通信部24と、初期設定通信で得た設定情報が記憶される設定情報記憶部25と、親機1との2回目以降の通信に際して必要な設定通信(親機1と同様に、初期設定通信と区別し、「通常設定通信」という)を行う通常設定通信部26と、初期設定通信部24と通常設定通信部26を起動する設定通信起動部27とを備える。
【0023】
初期設定通信部24は、例えば、WPSを行うものである。親機1の識別情報は、例えば、無線LANの通信規定にあるSSID(Service Set Identifier)である。
【0024】
無線通信部21は、外部に対して、例えば、定期的に、信号(以下、信号Aという)を送出するようになっている。信号Aの無線フレームには、予め定められた情報(以下、情報aという)が含まれている。信号Aは、例えば、無線LANの通信規定にあるProbe Requestである。情報aは、例えば、信号AがProbe Requestであることを示すものである。
【0025】
図5は、親機1における初期設定通信に関するフローチャートである。
ステップS1では、無線通信部101で信号が受信されたなら、無線フレーム抽出部104は、受信された信号が信号Aか否かを判定する。
【0026】
情報aを含む無線フレームが信号に含まれておらず、つまり、受信された信号が信号AでないならステップS1に戻る一方、情報aを含む無線フレームが信号に含まれており、つまり、受信された信号が信号AならステップS3に進む。
【0027】
ステップS3では、まず、無線フレーム抽出部104は、情報aを含む無線フレームを、無線フレーム処理部106に転送する。
【0028】
ステップS3では、また、受信レベル値測定部105は、受信した信号Aの受信レベル値を測定し、該受信レベル値を無線フレーム処理部106に通知する。
【0029】
ステップS3では、次に、無線フレーム処理部106が、転送された無線フレームから送信元である子機2のアドレスを読み出し、親機1内のタイマーにより受信時刻を計測し、該アドレスと受信レベル値と受信時刻を含む履歴情報を生成し、履歴情報を履歴情報記憶部107に記憶させる。
【0030】
なお、履歴情報については、その中の受信時刻と現在時刻との差が、予め設定された値以上となったなら、履歴情報記憶部107から削除される。これにより、履歴情報記憶部107における情報量を少なくすることができる。
【0031】
ステップS3では、次に、無線フレーム処理部106が、読み出したアドレスを初期設定通信起動部111に転送し、ステップS5に進む。
【0032】
ステップS5では、初期設定通信起動部111が、履歴情報記憶部107から、転送されたアドレスを含む履歴情報を検索し、該履歴情報から2つの最新の受信時刻のそれぞれを含む履歴情報を選択し、各履歴情報から受信レベル値を読み出し、各受信レベル値の差Δを計算する。
【0033】
ステップS5では、次に、初期設定通信起動部111が、差Δが該差Δについて予められたしきい値THΔ以上であり、かつ、最新の受信時刻を含む履歴情報から読み出した受信レベル値が該受信レベル値について予め定められたしきい値TH以上であるか否かを判定する。
【0034】
差Δがしきい値THΔ未満、または、受信レベル値がしきい値TH未満ならステップS1に戻る一方、差Δがしきい値THΔ以上、且つ、受信レベル値がしきい値TH以上ならステップS7に進む。
【0035】
ステップS7では、まず、初期設定通信起動部111が信号レベル制御部112を起動する。
【0036】
ステップS7では、次に、信号レベル制御部112が、無線通信部101に対し、初期設定通信において送信される信号のレベルを低下させるように制御を行う。
【0037】
ステップS7では、次に、初期設定通信起動部111が、初期設定通信部108を起動する。
【0038】
ステップS7では、次に、起動された初期設定通信部108が、無線通信部101を介して、外部に対して、信号(以下、信号Bという)を送出する。信号Bの無線フレームには、親機1の識別情報と予め定められた情報(以下、情報bという)が含まれている。
【0039】
信号Bは、例えば、WPS IE(Wi-Fi Protected Setup 情報要素) ビーコンである。情報bは、例えば、信号BがWPS IE ビーコンであることを示すものである。
【0040】
初期設定通信部108は、子機2の初期設定通信部24から信号Cが送信された場合には、初期設定通信部24に対して、初期設定通信を行う。信号Cは、例えば、WPS IE付きのProbe Requestである。
【0041】
初期設定通信の間、信号のレベルは、信号Bを含め、信号レベル制御部112の制御により、通常の信号のレベルより低くなっている。
【0042】
そのため、例えば、悪意のユーザが別の子機2を購入し、遠方から秘密裏にこの子機2で初期設定通信を行おうとしても、この遠方の子機2では低いレベルの信号を受信できず、よって、この子機2により初期設定通信が行われてしまうのを防止することができる。
【0043】
ステップS7では、次に、初期設定通信部108が、初期設定通信で得た、接続とセキュリティのための設定情報を設定情報記憶部109に記憶させ、ステップS1に戻る。
【0044】
なお、初期設定通信部108は、起動されてから所定の時間が経過したときに停止し、これにより、通常設定通信部110が起動する。
【0045】
起動した通常設定通信部110は、設定情報記憶部109から設定情報を読み出し、子機2の通常設定通信部26に対して、該設定情報を用いて、通常設定通信を行う。
【0046】
無線通信部101は、初期設定通信または通常設定通信が行われたなら、設定情報記憶部109から設定情報を読み出し、子機2に対して、該設定情報を用いて、無線通信を行う。該無線通信は、初期設定通信または通常設定通信とは異なる、本来の目的の通信である。
【0047】
図6は、子機2における初期設定通信および通常設定通信に関するフローチャートである。
【0048】
ステップS11では、無線通信部21で信号が受信されたなら、無線フレーム抽出部22は、受信された信号が信号B(例えば、WPS IE ビーコン)か否かを判定する。
【0049】
情報bを含む無線フレームが信号に含まれておらず、つまり、受信された信号が信号BでないならステップS11に戻る一方、情報bを含む無線フレームが信号に含まれており、つまり、受信された信号が信号BならステップS13に進む。
【0050】
ステップS13では、まず、無線フレーム抽出部22は、情報bを含む無線フレームを、無線フレーム処理部23に転送する。
【0051】
ステップS13では、次に、無線フレーム処理部23が、転送された無線フレームから親機1の識別情報を読み出し、設定通信起動部27に転送する。
【0052】
ステップS13では、次に、設定通信起動部27が、転送された親機1の識別情報が設定情報記憶部25に記憶されているか否かを判定する。つまり、設定通信起動部27は、今回の通信が親機1との初回の通信か否かを判定する。
【0053】
転送された親機1の識別情報が設定情報記憶部25に記憶されておらず、つまり、今回の通信が親機1との初回の通信ならステップS15に進む一方、転送された親機1の識別情報が設定情報記憶部25に記憶されており、つまり、今回の通信が親機1との2回目以降の通信ならステップS17に進む。
【0054】
ステップS15では、まず、設定通信起動部27が初期設定通信部24を起動する。
ステップS15では、次に、起動した初期設定通信部24が、無線通信部21を介して、信号Cを外部に送出する。信号Cは、上記のように、例えば、WPS IE付きのProbe Requestである。
【0055】
信号Cが、親機1の無線通信部101を介して、初期設定通信部108で受信された場合は、初期設定通信部108が応答を返すので、初期設定通信部24は、初期設定通信部108に対し、初期設定通信を行う。
【0056】
ステップS15では、初期設定通信部24は、親機1の識別情報と、初期設定通信で得た、接続とセキュリティのための設定情報を設定情報記憶部25に記憶させ、ステップS11に戻る。
【0057】
よって、これ以降は、ステップS13では、親機1の識別情報が設定情報記憶部25に記憶されており、つまり、当該回の通信が親機1との2回目以降の通信であると判定される。
【0058】
ステップS17では、まず、設定通信起動部27が通常設定通信部26を起動する。
ステップS17では、次に、起動した通常設定通信部26が、設定情報記憶部25から設定情報を読み出し、親機1の通常設定通信部110に対して、該設定情報を用いて、通常設定通信を行い、ステップS11に戻る。
【0059】
無線通信部21は、初期設定通信または通常設定通信が行われたなら、設定情報記憶部25から設定情報を読み出し、親機1に対して、該設定情報を用いて、無線通信を行う。該無線通信は、初期設定通信または通常設定通信とは異なる、本来の目的の通信である。
【0060】
図7は、親機1と子機2の間の初期設定通信に関するシーケンスを示す図である。
無線通信システムのユーザは、例えば、親機1と子機2を購入したなら、親機1を所望の位置に配置し、子機2の筐体を親機1に近づけていく(T1)。
【0061】
子機2の無線通信部21は、前述のように、外部に対して、例えば、定期的に、信号Aを送出する(T11)。
【0062】
親機1において、図5のステップS5の条件が満たされたなら、初期設定通信部108が起動される(T13)。
【0063】
図8は、親機1と子機2の間の距離Lと、信号Aが距離Lを進む間に減衰する減衰量Kとの関係を示す図である。
【0064】
同図に示すように、距離Lが短い場合、つまり、子機2が親機1に近い場合、減衰量Kは小さく、距離Lが長い場合、つまり、子機2が親機1から遠い場合、減衰量Kは大きい。
【0065】
また、子機2が親機1に近い場合において、信号Aが距離lを進む間に減衰する減衰量を減衰量k1とし、子機2が親機1から遠い場合において、信号Aが距離lを進む間に減衰する減衰量を減衰量k2とすると、減衰量k1は、減衰量k2より大きい。
【0066】
つまり、図7において、子機2を親機1に近づけていくと、図5のステップS5の条件が満たされ、初期設定通信部108が起動される(T13)。
【0067】
初期設定通信部108は、外部に対して、信号Bを送出する(T15)。
子機2においては、図6のステップS11、13の条件が満たされるので、初期設定通信部24が起動される(T17)。
したがって、親機1と子機2は、互いに初期設定通信を行うこととなる(T19)。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係る無線通信システムによれば、親機1は、子機2から送信された信号(信号A)の受信レベル値が記憶される履歴情報記憶部107と、信号Aを受信したなら、履歴情報記憶部107から受信レベル値を読み出し(図5:S5)、受信レベル値と信号Aの受信レベル値との差Δを求め(図5:S5)、差Δが該差について予め定めたしきい値THΔ以上であり、かつ、信号Aの受信レベル値が該受信レベル値について予め定めたしきい値TH以上であるなら、初期設定通信部108を起動する初期設定通信起動部111とを備えるので、子機2の筐体を動かすことで初期設定通信を行うことができる。よって、初期設定通信のスイッチおよび階層メニューが不要となり、初期設定通信を容易に行うことができると共に、親機1、子機2の簡素化を図ることができる。
【0069】
また、差Δをもって判定を行うことで、以下のような効果がある。
つまり、仮に、受信レベル値のみの判定だと、例えば、悪意のユーザが、自身が購入した子機2に対し、信号の送信レベルを高める施策を講じた場合、遠方(例えば、正規のユーザ宅の外)からでも、この子機2で、親機1との初期設定通信が行われてしまう。
【0070】
しかし、差Δをもって判定を行うことで、例えば、悪意のユーザが、子機2を親機1に近づけることで初期設定通信を行われることを知らない場合においては、前述の施策を講じた子機2をもってしても、初期設定通信は行われない。
【0071】
例えば、悪意のユーザが、子機2を親機1に近づけることで初期設定通信を行われることを知っている場合であっても、前述の施策を講じなければ、遠方において自身の子機2を親機1に近づけても、差Δ、受信レベル値は小さく、よって、初期設定通信は行われない。
【0072】
なお、差Δのみの判定だと、悪意のユーザが子機2を素早く動かした場合には、それが比較的遠方でも、初期設定通信が行われてしまう可能性がある。
【0073】
しかし、差Δの判定と受信レベル値の判定を組み合わせることで、その子機2が、親機1に近くなければ、子機2を素早く動かしても、初期設定通信は行われない。
【0074】
なお、このような場合は、比較的稀であり、よって、差Δのみの判定としてもよい。
また、親機1においては、初期設定通信で送信される信号のレベルを低下させるので、仮に、しきい値THΔ、しきい値THの値が適切でなく、悪意のユーザが使用する比較的遠方の子機2について、差Δと受信レベル値の条件が満たされた場合であっても、かかる子機2に対しては、レベルの低下した信号が届かず、よって、初期設定通信が行われるのを防止することができる。
【0075】
なお、例えば、このような場合を想定しないなら、信号のレベルを低下させなくてもよい。
【0076】
また、子機2は、初期設定通信で得た設定情報が記憶される設定情報記憶部25と、設定情報記憶部25に設定情報が記憶されているか否かを判定し(図6:S13)、記憶されていないなら、初期設定通信部24を起動する設定通信起動部27を備えるので、親機1との2回目以降の通信に際しては起動する必要のない初期設定通信部24が起動されてしまうのを防止することができる。
【0077】
仮に、ステップS13の判定を行わず、単に初期設定通信部24を起動してしまうと、例えば、追加購入した子機2と親機1で初期設定通信を行わせようとし、ユーザが子機2を親機1に近づけているときに、既存の子機2が不意に動いてしまい、既存の子機2が初期設定通信が行おうとすると、2つの子機2が初期設定通信が行おうとすることとなる。
【0078】
このような場合、親機1は、各子機2の識別情報を取り違える可能性があるので、初期設定通信を中止せざるをえない。
【0079】
しかし、ステップS13の判定を行うことで、このような場合、既存の子機2は初期設定通信を行わず、よって、追加購入した子機2と親機1で初期設定通信を行わせることができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、初期設定通信を行わせるにあたり、子機2を親機1に近づけたが、多くの場合、子機2から送信される信号には指向性があるので、子機2を同じ位置で回転させてもよい。
【0081】
(変形例)
図9は、本実施の形態の変形例に係る無線通信システムの親機1と子機2の間の初期設定通信に関するシーケンスを示す図である。
【0082】
かかる変形例では、図4の無線フレーム抽出部22、無線フレーム処理部23、設定通信起動部27以外のブロックを備えた子機2が使用される。また、子機2は、初期設定通信部24を、例えば、子機2の筐体に設けられたスイッチを操作することで、起動することができるように構成される。起動した初期設定通信部24は、無線通信部21を介して、外部に対して、例えば、定期的に、信号Cを送出するように構成される。
【0083】
また、親機1では、図5にステップS1で、受信された信号が信号Cか否かを判定するように構成される。
【0084】
図9において、無線通信システムのユーザは、例えば、親機1と子機2を購入したなら、親機1を所望の位置に配置し、子機2の初期設定通信部24をスイッチなどで起動し(T0)、子機2を親機1に近づけていく(T1)。
【0085】
子機2の初期設定通信部24は、例えば、定期的に、信号Cを送出する(T11a)。
親機1において、図5のステップS1で、受信された信号が信号Cであると判定され、図5のステップS5の条件が満たされたなら、初期設定通信部108が起動される(T13a)。
【0086】
したがって、親機1と子機2は、互いに初期設定通信を行うこととなる(T19)。
かかる変形例によれば、受信された信号が信号Cか否かを判定することで、初期設定通信にあたり、子機2への操作は必要だが、親機1への操作は不要にすることができる。よって、子機2として、一般的な子機を使用できる。
【0087】
なお、本実施の形態(変形例を含む)に係る親機1または子機2としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録でき、また、インターネットなどの通信網を介して伝送させて、広く流通させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1…親機
2…子機
21…無線通信部
22…無線フレーム抽出部
23…無線フレーム処理部
24…初期設定通信部
25…設定情報記憶部
26…通常設定通信部
27…設定通信起動部
101…無線通信部
102…有線通信部
103…ブリッジ部
104…無線フレーム抽出部
105…受信レベル値測定部
106…無線フレーム処理部
107…履歴情報記憶部
108…初期設定通信部
109…設定情報記憶部
110…通常設定通信部
111…初期設定通信起動部
112…信号レベル制御部
THΔ…差Δについてのしきい値
TH…受信レベル値についてのしきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの親機であって、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部と
を備えることを特徴とする無線通信システムの親機。
【請求項2】
無線通信システムの親機であって、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が該差について予め定めたしきい値以上であり、且つ、当該受信レベル値が該受信レベル値について予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部と
を備えることを特徴とする無線通信システムの親機。
【請求項3】
前記初期設定通信において送信される信号のレベルが低くなるように制御する信号レベル制御部
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信システムの親機。
【請求項4】
無線通信システムであって、
前記無線通信システムの親機は、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部と、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する初期設定通信起動部と
を備え、
前記無線通信システムの子機は、
前記無線通信システムの親機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記初期設定通信で得られた前記親機の情報が記憶される記憶部と、
前記記憶部に前記親機の情報が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されていないなら、前記子機の初期設定通信部を起動する設定通信起動部と を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
無線通信システムの親機の動作方法であって、
前記親機は、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、
前記動作方法は、
前記親機の初期設定通信起動部が、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する
ことを特徴とする無線通信システムの親機の動作方法。
【請求項6】
無線通信システムの親機の動作方法であって、
前記親機は、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、
前記動作方法は、
前記親機の初期設定通信起動部が、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が該差について予め定めたしきい値以上であり、且つ、当該受信レベル値が該受信レベル値について予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動する
ことを特徴とする無線通信システムの親機の動作方法。
【請求項7】
無線通信システムの動作方法であって、
前記無線通信システムの親機は、
前記無線通信システムの子機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記子機から受信した信号の受信レベル値が記憶される記憶部とを備え、
前記無線通信システムの子機は、
前記無線通信システムの親機に対して初期設定通信を行う初期設定通信部と、
前記初期設定通信で得られた前記親機の情報が記憶される記憶部とを備え、
前記動作方法は、
前記親機の初期設定通信起動部が、
前記子機から信号を受信したなら、前記記憶部から受信レベル値を読み出し、該受信レベル値と当該信号の受信レベル値との差を求め、該差が予め定めたしきい値以上であるなら、前記初期設定通信部を起動し、
前記子機の設定通信起動部が、
前記記憶部に前記親機の情報が記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記親機の情報が記憶されていないなら、前記子機の初期設定通信部を起動する
ことを特徴とする無線通信システムの動作方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の無線通信システムの親機または請求項4記載の無線通信システムの子機としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248943(P2012−248943A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116990(P2011−116990)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】