説明

無線通信方法および無線通信装置

【課題】アドホックネットワークにおけるTDMA通信におけるデータ送信スロットの空間的な帯域再利用率を高める。
【解決手段】通常のTDMA通信で行われる双方向通信スロット予約に加えて、単方向通信スロット予約を行えるように、予約受動側が予約起動側に自己の周囲の予約状況をスロットビジーフラグにて通知することにより、予約起動側が自己の周囲の予約状況と総合して、双方向通信より緩和された条件にてスロット予約を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ネットワーク、特に無線通信ネットワークにおけるアドホックネットワーク通信に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信方法として、非特許文献1に記載の無線通信方法がある。これはWPANにおけるTDMA方式(正確にはCSMA/CAとのハイブリッド方式)の一種の無線ネットワークプロトコルといえる。
【0003】
非特許文献1の無線通信方法によれば、制御局であるPNC(ピコネットコントローラ)がその傘下となる無線通信装置(DEV)より要求を受けてチャネルタイムアロケーションピリオド(CTAP)においてチャネルタイムアロケーション(CTA)を割り振る。そして、各DEVはこの割り振られた時間に合せてユーザデータのやり取りを行う。IEEE802.15.3のMACのスーパーフレームの構成を図8に示す。
【0004】
また、非特許文献2に開示されるように、自律分散型ネットワークにおけるTDMAスロットの割り当て方式も同様のものが考えられている。
【0005】
図9はスーパーフレームの構成を示す図である。
【0006】
図9において、スーパーフレームはビーコンピリオド901とデータピリオド902に分割される。
【0007】
ビーコン903は、ビーコンピリオド901内で各無線通信装置から送信されるが、近隣のノードのビーコンは衝突することなく近隣のノードに伝わることが保証されている。
【0008】
データピリオド902は、均等に分割され、その順番にスロットIDが付与されるが、これに限らず、データピリオドは均等でなくても良いし、また隣接する必要もない。
【0009】
図10は、自律分散型ネットワークにおける無線通信装置の配置を示す図であり、各無線通信装置1001乃至1004は通信可能エリア1101乃至1104内の無線通信装置と無線通信を行う。この無線通信を開始するにあたり、自律分散型ネットワークに参加する各無線通信装置1001乃至1004は、おのおのがビーコンを送信しあい、図9に示したスーパーフレームのデータピリオド中で自分の占有したいスロットを宣言する。もし通信を宣言している発信元と送信先において既に宣言しているようなスロットがあれば、その優先度などの重み付けを行って、重要度の高い通信にスロットを割り当てるように各ノードが協調して、優先度の低い通信を取り下げる。
【0010】
この場合、スロット内の通信は、起動者側(無線通信装置A)から受動者側(無線通信装置B)にフレームを送信することも受動者側(無線通信装置B)から起動者側(無線通信装置A)へフレームを送信することも可能である。これにより、スロットを予約した者(無線通信装置A)は受信者(無線通信装置B)に対して、到達確認のためのACKを要求することが可能であり、受信者(無線通信装置B)はフレームを正常に受信した場合、同一スロットでACKを応答する。
【非特許文献1】IEEE802.15.3「Wireless Medium Access Control(MAC)and Physical Layer (PHY) Specifications for High Rates Wireless Personal Area Networks (WPANs)」
【非特許文献2】”Towards High Speed Wireless Personal Area Network-Efficiency Analysis of MBOA MAC” Yunpeng Zang,etc インターネットURL:http://www.ctr.kcl.ac.uk/IWWAN2005/papers/88_invited_Philips.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の無線通信方法では、無線通信装置A(1001)が無線通信装置B(1002)と通信するときには、無線通信装置B(1002)の通信可能エリア内の無線通信装置C(1003)が同一スロットで無線通信装置D(1004)と通信することは許されない。これは、無線通信装置C(1003)が送信している場合、その無線信号により無線通信装置A(1001)からの無線信号が混信状態となり、無線通信装置B(1002)は無線通信装置A(1001)からの無線信号を正しく受信できなくなるからである。また、同様に、無線通信装置C(1003)が受信する際に混信の可能性があるため、無線通信装置C(1003)と無線通信装置D(1004)は無線通信装置A、Bが使用するのと同一スロットでは通信することはできない。
【0012】
このように、無線通信装置がTDMAスロットを双方向通信として予約してしまうと、当該無線通信装置の通信可能エリア内に位置する他の無線通信装置は、送信可能な位置関係にある他の無線通信装置と同一スロットでは通信ができないことになり、通信帯域の再利用効率を落としてしまうという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線通信方法は、アドホックネットワークにおける時分割通信を実現する無線通信方法であって、無線通信装置が特定のデータ送信スロットを指定し、単方向送信、単方向受信、あるいは双方向通信で使用することを他の無線通信装置に予約するステップと、無線通信装置が他の無線通信装置から予約された予約状況を管理するステップと、無線通信装置が前記予約状況に基づいて、データ送信スロットでの送信もしくは受信が可能であるか否かを示すスロット情報を生成し、他の無線通信装置へ通知するステップと、無線通信装置が単方向送信、あるいは単方向受信をするとき、自己が管理する前記予約状況と、通信相手の無線通信装置から通知された前記スロット情報とから使用するデータ送信スロットを決定するステップとを有している。
【0014】
これにより、単方向通信の起動側の無線通信装置は、自己と受動側無線通信装置のデータ通信スロットにおける通信状況を把握できるので、起動側の無線通信装置は、より稠密に帯域の空間的再利用が可能なスロットを決定することができる。
【0015】
また、本発明の無線通信方法のデータ送信スロットを決定するステップは、無線通信装置が、予約状況から双方向通信を行っている無線通信装置、あるいは受信側となっている無線通信装置がいないデータ送信スロットを検出するステップと、スロット情報から通信相手の無線通信装置が送受信しておらず、かつ通信相手の通信可能エリア内の無線通信装置が送信をしていないデータ送信スロットを検出するステップとの両方のステップで共通して検出されたデータ送信スロットを通信に使用するデータ送信スロットであると決定するステップとからなっている。
【0016】
これにより、単方向通信の起動側通信装置は、最大限の通信可能なデータ通信スロットを選択できる。
【0017】
また、本発明の無線通信方法において、通信相手の無線通信装置が通信要求元の無線通信装置から予約を受け取ったときに通信の可否を判定するステップと、その通信相手の無線通信装置が通信可と判定したとき、通信要求元の無線通信装置へ同一のデータ送信スロ
ットの予約を行うステップとを有している。
【0018】
これにより、通信相手に指定された無線通信装置は、通信要求元の無線通信装置へスロット予約を受け付けたことを通知することができるので、単方向通信を行う無線通信装置が相互に確認して、通信を開始することができる。
【0019】
また、本発明の無線通信方法における時分割通信は、ビーコンを送信するビーコンピリオドとデータ送信するデータピリオドとからなるスーパーフレーム周期で行われるものであって、データ送信スロットの予約とスロット情報がビーコンで通知される。
【0020】
これにより、無線通信装置はビーコンを使用することにより、データ送信スロットを予約することができる。
【0021】
また、本発明の無線通信方法は、通信相手の無線通信装置が通信要求元の無線通信装置から単方向送信の予約をされたデータを正常に受信したとき、次のスーパーフレームにおけるビーコンで到達確認情報を通知するステップを有している。
【0022】
これにより、無線通信装置は単方向通信においても、データの正常受信を確認することができる。
【0023】
本発明の無線通信装置は、アドホックネットワークにおける時分割通信を実現する無線ネットワークを構成するものである。そして、本発明の無線通信装置は、データ送信スロットを指定して、当該データ送信スロットにおいて、自己が双方向通信の送受信者、単方向通信の送信者もしくは受信者であることを近隣のノードに通知する通信方向明示手段と、各データ送信スロットにおける、送信もしくは受信が可能か否かを近隣のノードに通知するビジースロット明示手段と、他の無線通信装置の通信方向明示手段から通知された通信方向情報と、ビジースロット明示手段から通知されたスロットビジー情報とを受信するスロット情報受信手段と、単方向通信を行うときに、スロット情報受信手段が受信した通信方向情報とスロットビジー情報とから、自己の使用するデータ送信スロットを決定するスロット決定手段とを有している。
【0024】
これにより、無線通信装置は、単方向通信の起動側であるときに、自己と受動側無線通信装置のデータ通信スロットにおける通信状況を把握できるので、より稠密に帯域の空間的再利用が可能なスロットを決定することができる。
【0025】
また、本発明の無線通信装置のスロット決定手段は、通信方向情報から双方向通信を行っている無線通信装置と受信側となっている無線通信装置とがいないデータ送信スロットを検出する。さらに、スロット決定手段は、通信相手の無線通信装置のスロットビジー情報から当該通信相手の無線通信装置が送受信しておらず、かつ通信相手の通信可能エリア内の無線通信装置が送信をしていないデータ送信スロットを検出する。そして、両方で共通に検出されたデータ送信スロットを通信に使用するデータ送信スロットとして決定する。
【0026】
これにより、無線通信装置は、単方向通信の起動側であるときに、最大限の通信可能なデータ通信スロットを選択できる。
【0027】
また、本発明の無線通信装置は、スロット情報受信手段が他の無線通信装置から通信要求を受信したとき、通信の可否を判定する通信可否判定部を有し、その通信可否判定部が通信可と判定したとき、通信方向明示手段に指示して通信要求元の無線通信装置へ同一のデータ送信スロットでの自己の通信方向を通知する。
【0028】
また、本発明の無線通信装置が行う時分割通信は、ビーコンを送信するビーコンピリオドとデータ送信するデータピリオドとからなるスーパーフレーム周期で行われるものである。そして、無線通信装置はデータ送信スロットで単方向送信されるデータフレームを受信するデータ受信部と、そのデータ受信部で正常に受信されたか否かを判定するデータ受信判定部と、そのデータ受信判定部で正常受信であると判定したとき、そのスーパーフレーム周回もしくは次の周回におけるビーコン送信時に到達確認情報を含めて送信するビーコン送信手段とを有している。
【0029】
これにより、無線通信装置は単方向通信においても、データの正常受信を確認することができる。
【発明の効果】
【0030】
無線通信装置がTDMAスロットを予約して通信可能エリア内に位置する他の無線通信装置と通信するときの、通信帯域の再利用効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図2は本実施の形態にかかる無線通信装置の構成図である。
【0033】
図2において、無線処理部201はアンテナ200から受信した信号を復調した後、デジタル変換してフレームを生成したり、フレームをアナログ変換した後、変調してアンテナ200から送出するものである。このアンテナ200は、無指向性アンテナであり、通信可能エリア内へ電波を放出する。なお、この無線処理部201は、本発明にかかるデータ受信部とビーコン送信部の機能を有している。
【0034】
フレーム判定部202は、無線処理部201からのフレームを判定し、通常のフレームを上位層処理部204に、ビーコンをビーコン受信処理部205へ、そしてACK(アクノリッジ)フレームをACK・再送処理部203へ送出する。このとき、フレームが正常に受信されたことも合わせて通知する。但し、当該無線通信装置が双方向通信を行っている場合、ACKを応答する必要のあるフレームのときは、上位層処理部204にフレームを送ると同時にACK・再送処理部203にACK送信を要求する。また、フレーム判定部202は、データフレームに付与されている、フレームのシーケンス番号であるフレームIDを抽出し、ビーコン受信処理部205へ通知する。なお、フレーム判定部202は、本発明にかかるデータ受信判定部の機能を有している。
【0035】
ここで、ビーコンフレームの構成を図3に示す。
【0036】
図3において、本実施の形態におけるビーコンは、オプションフィールドにスロット予約情報301とスロットビジーフラグ302とACKリスト303とを有している。
【0037】
スロット予約情報311は、データピリオドでデータを送信、あるいは受信するために、スロットを予約するものであり、相手DEV311と通信方向312と優先度313と予約通信スロット314とビーコンACK315とからなる。相手DEV311は、通信相手の無線通信装置を特定する識別子であり、通信方向312は自己が単方向通信の送信側であるか、受信側であるか、あるいは双方向通信であるかを示すものである。本実施の形態においては、受信側であるとき“01”送信側であるとき“10”、双方向であるとき“11”とする。
【0038】
優先度313は、自己の行う通信の優先度を示すものであり、各無線通信装置は、同一スロット内の優先度の大きい方の通信を優先するように自律的に決定する。予約通信スロット314は、自己が予約しようとしているスロットを特定するものであり、データピリオドの全スロットをビットマップで指定可能になっている。ビーコンACK315は、受信側にビーコンACKを要求するか否かを示すものである。このビーコンACKとは、受信者からのACK通知をデータスロットではなく、ビーコンにより受けることを要求するものである。
【0039】
通信相手に指定された受信側の無線通信装置が、このスロット予約情報311の要求を受け付け、相手DEV311に送信側無線通信装置を設定したスロット予約情報311を付加したビーコンを送信したとき、スロット予約が完了したことになる。また、通信相手は、マルチキャストのように複数の相手を指定してもよい。このときは単方向通信となるが、スロット予約情報301を相手通信の数だけ設けることになる。
【0040】
スロットビジーフラグ302は、1スロットに付き2ビットずつ各データスロットIDの順番に各データスロットの使用状況が設定されている。具体的には、自己が送受信しておらず、かつ自己の周囲にも送受信している無線通信装置がいない状態のとき“00”が設定され、自己が送受信しておらず、かつ自己の周囲には受信側の無線通信装置しかいない状態のとき“01”が設定される。さらに、自己が送受信中であるか、あるいは自己の周囲に少なくとも一つ以上の送信している無線通信装置が有る状態のとき“11”が設定される。また、自己の周囲には送信している無線通信装置のみが有る状態のとき“10”が設定される。
【0041】
ACKリスト303は、受信者がビーコンによりACK通知を送信者に行うためのものであり、ACKリストID331と、スロット数332と、スロットID333と、ACKビットマップ334とからなっている。このスロットID333とACKビットマップ334は、ビーコンACKを要求されたスロット対象の数だけ設けられる(335)。
【0042】
ACKリストID331は、以降のデータがACKリストであることを示す識別子であり、スロット数332は以下に続くスロットID333とACKビットマップ334の組数を示す。スロットID333は、ACKを応答する対象のスロットIDを示し、ACKビットマップ334はACKを応答する対象であるフレームを示すものであり、フレームIDが‘k’のフレームにACKの応答をする場合、先頭からkビット目に‘1’がセットされる。
【0043】
ビーコン受信処理部205は、他の無線通信装置から上記のビーコンフレームを受信すると、スロット予約情報301に基づいて、図4(a)に示すスロット予約テーブルを記録部206に記録する。このスロット予約テーブルが、本発明にかかる予約状況に相当する。
【0044】
図4(a)において、DEV_ID401、通信方向402、優先度403、予約通信スロット404、およびビーコンACK405には、それぞれスロット予約情報301の相手DEV311、通信方向312、優先度313、予約通信スロット314、およびビーコンACK315が記録される。
【0045】
また、ビーコン受信処理部205は、ビーコンフレームからスロットビジーフラグを抽出し、図4(b)に示す無線通信装置周囲状況テーブルとして記録部206に記録する。この無線通信装置周囲状況テーブルは、ビーコン送信元の無線通信装置毎に、各スロットID411のビジーフラグ(ビジー状態412)が記録される。
【0046】
また、ビーコン受信処理部205は、ビーコンフレームからACKリスト303を抽出し、ACK・再送処理部203へ送出する。また、ビーコン受信処理部205は、フレーム判定部202から通知されたフレームIDを記録部206に記録する。そして、ACK・再送処理部203へACKリスト303を送出するときに、最新のフレームIDも合わせて送出する。なお、ビーコン受信処理部205は、本発明にかかるスロット情報受信部に相当する。
【0047】
上位層処理部204は、各種のアプリケーションを実行し、コンテンツデータなどの送信データを生成し、フレーム構成部207へ送出したり、ビーコン生成部205へスロット予約を要求したりする。
【0048】
ビーコン生成部205は、さらに通信可否判定部212と通信方向明示部213とビジースロット明示部214とスロット決定部215とACKリスト生成部216とからなる。
【0049】
通信方向明示部213は、上位層処理部204から通信の要求を受けている場合、スロット予約情報301にその要求に従った設定を行う。このとき、スロット決定部215が通信で使用するスロットを決定する。
【0050】
ビジースロット明示部214は、記録部206に記録されたスロット予約テーブルに基づいて、該当するスロット番号のスロットビジーフラグ302に“00”乃至“11”で示す使用状態を設定する。これが、本発明にかかるスロット情報に相当する。
【0051】
ACKリスト生成部216は、自己が受信者であって、ビーコンACKを要求されている場合に、フレーム判定部202からデータ受信が正常にできたことを通知されたとき、記録部206に記録されているフレームIDの位置にACK(‘1’)をセットしたACKリスト303を生成する。
【0052】
通信可否判定部212は、スロット予約情報301の相手DEV311が自己のDEV_IDである場合、上位層処理部204へ問い合わせたり、スロット予約テーブルを参照して通信の可否を判断する。
【0053】
ACK・再送処理部203は、通常のACKフレームを受信処理したり、ビーコンACKの受信処理をしたりする。特に、ビーコンACKの受信処理において、ACK・再送処理部203はビーコン受信処理部205から受け取ったACKリスト303を解析し、送信したデータに対するACKビットが通知されたフレームIDの位置にセットされているか否かを判定する。そして、ACKビットがセットされていない場合、再送するようにフレーム構成部207へ指示する。
【0054】
フレーム構成部207は、ヘッダを付加してデータフレームを生成したり、双方向通信による通常のACKフレームやビーコンフレームを生成し、無線処理部201へ送出する。このとき、フレーム構成部207は、フレームIDを付与する。さらに、フレーム構成部207は無線処理部201へ送出する際に、そのフレームのコピーを再送フレームバッファ部208へ記憶する。
【0055】
また、フレーム構成部207は、ACK・再送処理部203からフレームの再送を指示されると、再送フレームバッファ部208から前回のスーパーフレーム周期で送信したフレームを読み出す。そして、再送するために無線処理部201へ送出する。
また
以上のように構成された無線通信装置について、以下にその動作、作用を説明する。
【0056】
初めに、無線通信装置が常時行うビーコン受信動作について説明する。
【0057】
まず、アンテナ200で受信された電波から、無線処理部201においてフレームが取り出され、フレーム判定部202へ送出される。
【0058】
フレーム判定部202は、受信したフレームがビーコンフレームである場合、ビーコン受信処理部205へ送出する。
【0059】
ビーコン受信処理部205は、ビーコンフレームのオプションフィールドにスロット予約情報301がある場合、その情報に基づいてスロット予約テーブルを生成し、記録部206に記録する。このとき、スロット予約テーブルに同一の無線通信装置の情報が記録されていた場合は、新たな情報に更新する。
【0060】
また、スロット予約情報301の相手DEV311に自己のDEV_IDが記載されている場合、ビーコン受信処理部205は、自己への通信要求であると判定し、受信したスロット予約情報とビーコンの送信元無線通信装置のDEV_IDとを通信予約情報として記録部206に記録する。
【0061】
次に、ビーコン受信処理部205は、ビーコンフレームのスロットビジーフラグ302に基づいて、無線通信装置周囲状況テーブルを生成し、記録部206に記録する。なお、ビーコン受信処理部205は、この情報をスーパーフレーム毎に更新する。
【0062】
その後、受信処理を終了し、受信待機状態へ移行する。
【0063】
以上のビーコン受信動作が1スーパーサイクル終了すると、スロット予約テーブルには、自己の通信可能エリア内の通信予約状況が記録され、無線通信装置周囲状況テーブルには通信相手となる無線通信装置の最新の周囲状況が記録される。
【0064】
次に、無線通信装置からビーコンを送信する動作について説明する。
【0065】
まず、通信可否判定部212は、記録部206内の通信予約情報をチェックし、通信予約情報が記録されている場合、スロット予約情報301の予約通信スロット314が使用可能であるか否かについてスロット予約テーブルを参照して判定する。
【0066】
ビーコン生成部209は、予約通信スロット404に同一スロットを予約している無線通信装置がある場合、その無線通信装置の通信方向402が送信(“10”)あるいは双方向(“11”)であるか否かを確認する。そして、これらが記録されている場合、通信不可と判断しスロット予約情報の生成を中止する。
【0067】
一方、通信可否判定部212は、通信方向402が送信(“10”)あるいは双方向(“11”)でない場合、通信可と判定し、記録されているスロット予約情報を生成中のスロット予約情報301にコピーし、相手DEV311を通信予約情報として記録されてDEV_IDに書き換える。また、通信方向312には、自己が受信側として要求されているのであれば、受信側を示す“01”を設定し、送信側として要求されているのであれば、送信側を示す“10”を設定し、双方向を要求されているのであれば、双方向を示す“11”を設定する。
【0068】
次に、ビジースロット明示部214は、スロットビジーフラグ302にスロット予約テーブルに基づいて自己の周囲の通信状況を記入する。すなわち、ビジースロット明示部2
14は、通信方向402の情報を基にスロットビジーフラグを決定する。例えば、通信方向402の情報が、双方向(“11”)や送信側(“10”)であればビジーフラグは“11”であり、通信方向402の情報が、受信側(“01”)であればビジーフラグは“01”であり、通信方向402の情報が、その他の値であればビジーフラグは“00”とする。また、スロット予約テーブルに記録されていない、上記以外のスロットのビジーフラグは“00”とする。
【0069】
次に、ビーコン生成部209は、生成したスロット予約情報301とスロットビジーフラグ302とを含むビーコンデータをフレーム構成部207へ送出する。
【0070】
フレーム構成部207は、このビーコンデータを受け取った後、ビーコンヘッダを付加してビーコンフレームを構成し無線処理部201へ送出する。
【0071】
そして、無線処理部201は、所定のタイミングでビーコンをアンテナ200から放出する。
【0072】
以上が無線通信装置からビーコンを送信する場合の動作である。
【0073】
次に、無線通信装置からデータを送信する場合の動作について説明する。なお、この通信は単方向通信であるものとする。
【0074】
まず、上位層処理部204は、アプリケーションの作成したデータを他の無線通信装置へ送信する場合、ビーコン生成部209へスロット予約を指示する。
【0075】
スロット決定部215は、このスロット予約の指示を受けて、以下のような処理によりデータスロットを決定しスロット予約情報を生成する。
【0076】
図6は、単方向通信のためのスロット決定方法を示すフローチャートである。
【0077】
図6において、まず、スロット決定部215は、スロット予約テーブルの予約通信スロット404を参照して、第1スロットから順に予約されているか否かを判定する(ステップS601)。予約されている場合、スロット決定部215は、そのスロットに対応する通信方向402を参照して、通信方向が双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)であるか否かを確認する(ステップS602)。双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)である場合、その予約された通信を阻害してしまう可能性があるためそのスロットは使用できないので、次のスロットの判定のためにステップS607へ移行する。
【0078】
一方、双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)でない場合と、ステップS601において、スロット予約がない場合、スロット決定部215は、通信相手である無線通信装置の周囲状況を無線通信装置周囲状況テーブルから求める(ステップS603)。該当するスロット番号411のビジー状態412が“00”もしくは“01”である場合、ビーコン生成部209は相手無線通信装置の周りで送受信しているものがいない、あるいは少なくとも送信している無線通信装置はいないので相手無線通信装置が受信可であると判断し、スロット予約情報301の予約スロット314における該当するスロット位置のビットをセットする(ステップS604)。
【0079】
また、該当するスロット番号411のビジー状態412が“10”である場合、ビーコン生成部209は通信相手が送受信中か、あるいはその周囲に送信している無線通信装置があって通信が不可であると判断し、次のスロットをチェックするためにステップS60
7へ移行する。
【0080】
次に、スロット決定部215は、送信データを送信するのに必要なスロット数が選択できたか否かをチェックし(ステップS605)、スロットが足りた場合、スロット決定処理を終了する。そして、通信方向明示部213は相手DEV311に対象としている無線通信装置のIDを記入し、通信方向312に送信側であることを示す“10”を記入する。そして、優先度313とビーコンACK315には、上位層処理部204から要求された通信品質(QoS)を満足するような設定を行う(ステップS606)。
【0081】
一方、スロット数が足りない場合、最終のスロットIDまで上記ステップS601乃至S605を終了したか否かを判定し(ステップS607)、終了していればスロットの選択処理を終了し、最終のスロットまで終了していなければ、次のスロットを判定するためにステップS601へ再度移行する。
【0082】
以上のようにして、通信方向明示部213とスロット決定部215はスロット予約情報301を生成する。
【0083】
次に、ビジースロット明示部214は、スロット予約テーブルを基にスロットビジーフラグ302に自己の周囲の通信状況を記入する。すなわち、ビジースロット明示部214は、スロット予約情報で予約したスロット位置に、自己が送信中であることを示す“11”を設定し、予約通信スロット404に記録されている他のスロット位置には、通信方向402の情報を基にスロットビジーフラグを決定する。例えば、通信方向402の情報が、双方向(“11”)や送信側(“10”)であればビジーフラグは“11”であり、通信方向402の情報が、受信側(“01”)であればビジーフラグは“01”であり、通信方向402の情報が、その他の値であればビジーフラグは“00”とする。また、上記以外のスロットのビジーフラグは“00”とする。
【0084】
以降の、ビーコン生成部209からフレーム構成部207へビーコンデータを送出し、フレーム構成部207でフレームを構成した後に、無線処理部201を介してビーコンが送信される動作は、上記のビーコン送信のものと同一である。
【0085】
次に、送信側の無線通信装置は、通信相手先から同一のスロット予約情報が記載されたビーコンを受信すると、上記のビーコン受信処理の結果、スロット予約が確立したと判断する。
【0086】
そして、送信側無線通信装置の上位層処理部204は生成したデータをフレーム構成部207へ送出する。フレーム構成部207は受け取ったデータにヘッダを付与した後、無線処理部201へ送出する。
【0087】
そして、無線処理部201は、データピリオドの指定したスロットで、データをアンテナ200から送信する。
【0088】
以上が無線通信装置からデータを単方向送信する場合の動作である。
【0089】
なお、上記のスロット予約を行うときのスロット決定方法は、通信相手とその周囲に送信者がいないか、あるいは受信者しかいない場合にそのスロットでの通信は可であると判定したが、より稠密に空間的再利用を行うためには、近隣の無線通信装置に予約されていないスロットよりは予約されているスロットを選択した方が好ましい。図7は、このように稠密なスロット決定方法を示すフローチャートである。
【0090】
図7において、まず、スロット決定部215は、スロット予約テーブルの予約通信スロット404を参照して、第1スロットから順に予約されているか否かを判定する(ステップS701)。予約されている場合、ビーコン生成部209は、そのスロットに対応する通信方向402を参照して、通信方向が双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)であるか否かを確認する(ステップS702)。双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)である場合、次のスロットの判定のためにステップS707へ移行する。
【0091】
一方、双方向通信(“11”)もしくは受信側(“01”)でない場合と、ステップS701においてスロット予約がない場合、スロット決定部215は、通信相手である無線通信装置の周囲状況を無線通信装置周囲状況テーブルから求める。該当するスロット番号411のビジー状態412が“01”である場合(ステップS703)、当該スロットIDを記録部206内の予約スロットリストAに記録する(ステップS704)。
【0092】
また、該当するスロット番号411のビジー状態412が“00”である場合(ステップS705)、当該スロットIDを記録部206内の予約スロットリストBに記録する(ステップS706)。
【0093】
さらに、該当するスロット番号411のビジー状態412が“10”である場合、通信が不可であると判断し、次のスロットをチェックするためにステップS707へ移行する。
【0094】
次に、スロット決定部215は、最終のスロットIDまで上記ステップS701乃至S706を終了したか否かを判定し(ステップS707)、終了していなければ次のスロットについてチェックするため、ステップS701へ処理を戻す。
【0095】
一方、スロット決定部215は、最終のスロットIDまでチェックを終了した場合、記録部206内の予約スロットリストAから通信に必要なスロットを選択する。そして、スロット予約情報301の予約スロット314における該当するスロット位置のビットをセットする(ステップS708)。
【0096】
次に、スロット決定部215は、送信データを送信するのに必要なスロット数が選択できたか否かをチェックし(ステップS709)、スロットが足りた場合、スロット決定処理を終了する。
【0097】
一方、スロット決定部215は、スロット数が足りない場合、記録部206内の予約スロットリストBから通信に必要なスロットを選択する。そして、スロット決定部215は、スロット予約情報301の予約スロット314における該当するスロット位置のビットをセットする(ステップS710)。
【0098】
以上のようにして、スロット決定部215は、予約するスロットを決定する。
【0099】
これにより、すでに予約されているが通信に使用可能なスロットから、今回使用するスロットを選択するので、スロットの空間的利用効率を高めることができる。
【0100】
次に、受信側の無線通信装置がデータを受信したときの動作を以下に説明する。なお、以下の説明は、ビーコンACKが要求されているものとして行う。
【0101】
まず、アンテナ200で受信された電波から、無線処理部201においてフレームが取り出され、フレーム判定部202へ送出される。
【0102】
フレーム判定部202は、受信したフレームがデータフレームである場合、記録部206にフレームIDを記録するとともに、受信したフレームのペイロードを上位層処理部204へ送出する。上位層処理部204は、受け取ったペイロードをアプリケーションにより処理する。このとき、本実施の形態では単方向通信を行うため、上位層処理部204が応答データを作成することはないが、上位層処理部204は正常にデータを受信できたとき、ビーコン生成処理部209にビーコンACKの応答を要求する。
【0103】
ビーコン生成処理部209は、記録部206に記録されているフレームIDの位置にACK(‘1’)をセットしたACKリスト303を生成する。なお、このACKリスト303は、到達確認情報となる。また、スロット予約情報301とスロットビジーフラグ302については、上記したビーコン送信と同様にして生成する。
【0104】
次に、ビーコン生成部209は、生成したスロット予約情報301とスロットビジーフラグ302とACKリスト303とを含むビーコンデータをフレーム構成部207へ送出する。
【0105】
フレーム構成部207は、このビーコンデータを受け取った後、ビーコンヘッダを付加してビーコンフレームを構成し無線処理部201へ送出する。
【0106】
そして、無線処理部201は、所定のタイミングでビーコンをアンテナ200から放出する。
【0107】
以上が受信側の無線通信装置からデータを受信した後にビーコンACKを送信する動作であるが、このように単方向送信をする場合においても、ビーコンACKにより正常受信されたか否かを送信側無線通信装置は知ることができる。このため、ビーコンACKの指定ビットがセットされなかったフレームについては、次の周回のスロットで再送を行うことができるので、単方向通信においても双方向通信と同様の通信品質を確保することが可能になる。
【0108】
次に、データを単方向で受信する無線通信装置からスロット予約を行って通信を開始する場合の受信側無線通信装置の動作について説明する。
【0109】
まず、上位層処理部204は、他の無線通信装置からデータを受信したい場合、ビーコン生成部209へ受信のためのスロット予約を指示する。
【0110】
ビーコン生成部209は、このスロット予約の指示を受けて、以下のような処理によりデータスロットを決定しスロット予約情報を生成する。
【0111】
図5は、単方向通信のためのスロット決定方法を示すフローチャートである。
【0112】
図5において、まず、スロット決定部215は、スロット予約テーブルの予約通信スロット404を参照して、第1スロットから順に予約されているか否かを判定する(ステップS501)。予約されている場合、スロット決定部215は、そのスロットに対応する通信方向402を参照して、通信方向が双方向通信(“11”)もしくは送信側(“10”)であるか否かを確認する(ステップS502)。双方向通信(“11”)もしくは送信側(“10”)である場合、その予約された通信を阻害してしまう可能性があるためそのスロットは使用できないので、次のスロットの判定のためにステップS507へ移行する。
【0113】
一方、双方向通信(“11”)もしくは送信側(“10”)でない場合と、ステップS501において、スロット予約がない場合、スロット決定部215は、通信相手である無線通信装置の周囲状況を無線通信装置周囲状況テーブルから求める。該当するスロット番号411のビジー状態412が“00”もしくは“10”である場合(ステップS503)、ビーコン生成部209は相手無線通信装置の周りで送受信しているものがいない、あるいは少なくとも送信している無線通信装置はいないので相手無線通信装置が送信可であると判断し、スロット予約情報301の予約スロット314における該当するスロット位置のビットをセットする(ステップS504)。
【0114】
また、ビーコン生成部209は、該当するスロット番号411のビジー状態412が“10”である場合、通信相手が送受信中か、あるいはその周囲に送信している無線通信装置があって通信が不可であると判断し、次のスロットをチェックするためにステップS507へ移行する。
【0115】
次に、スロット決定部215は、送信データを送信するのに必要なスロット数が選択できたか否かをチェックし(ステップS505)、スロットが足りた場合、スロット決定処理を終了する。そして、通信方向明示部213は相手DEV311に対象としている無線通信装置のIDを記入し、通信方向312に受信側であることを示す“01”を記入する。そして、優先度313とビーコンACK315には、上位層処理部204から要求された通信品質(QoS)を満足するような設定を行う(ステップS506)。
【0116】
一方、スロット数が足りない場合、最終のスロットIDまで上記ステップS501乃至S505を終了したか否かを判定し(ステップS507)、終了していればスロットの選択処理を終了し、最終のスロットまで終了していなければ、次のスロットを判定するためにステップS501へ再度移行する。
【0117】
以上のようにして、通信方向明示部213とスロット決定部215はスロット予約情報301を生成する。
【0118】
次に、ビジースロット明示部214は、スロット予約テーブルを基にスロットビジーフラグ302に自己の周囲の通信状況を記入する。すなわち、ビジースロット明示部214は、スロット予約情報で予約したスロット位置に、自己が送受信していないで、かつ周囲の無線通信装置も送受信していないことを示す“00”を設定し、スロット予約テーブルに記録されている他のスロット位置には、通信方向402の情報を基にスロットビジーフラグを決定する。例えば、通信方向402の情報が、双方向(“11”)や送信側(“10”)である無線通信装置が一つでも記録されていればビジーフラグは“11”であり、通信方向402の情報が、受信側(“01”)である無線通信装置のみが記録されていればビジーフラグは“01”であり、通信方向402の情報が、上記以外のスロットのビジーフラグは“00”とする。
【0119】
次に、ビーコン生成部209は、生成したスロット予約情報301とスロットビジーフラグ302とを含むビーコンデータをフレーム構成部207へ送出する。
【0120】
フレーム構成部207は、このビーコンデータを受け取った後、ビーコンヘッダを付加してビーコンフレームを構成し無線処理部201へ送出する。
【0121】
そして、無線処理部201は、所定のタイミングでビーコンをアンテナ200から放出する。
【0122】
以上により、受信側の無線通信装置からスロット予約されたビーコンが送信される。
【0123】
通信相手となることを要求された無線通信装置は、このビーコンを受信し、スロット予約情報とビーコンの送信元無線通信装置のDEV_IDを通信予約情報として記録部206へ記録する。
【0124】
送信側となる無線通信装置は、上記のビーコン受信処理を行い、送信可能で有れば、スロット予約を受け付け、同一内容のスロット予約情報を記載したビーコンを送信する。
【0125】
その後、送信側無線通信装置は、データピリオドでデータ送信を行うが、そのときの動作は上記のデータ送信の動作と同一である。
【0126】
以上が本実施の形態における無線通信装置の動作・作用である。
【0127】
次に、本実施の形態の無線通信装置が、図1に示す位置に配置されたときの通信動作を説明する。
【0128】
図1において、無線通信装置Aの通信可能エリア111に無線通信装置B、C、Dが位置し、無線通信装置Dの通信可能エリア112に無線通信装置A,E、Fが位置しているとする。そして、無線通信装置Cは、他の無線通信装置へ単方向の送信をしており、無線通信装置Dは他の無線通信装置から単方向の受信を行っている。また、無線通信装置Bと無線通信装置Fは、通信を行っていない状態とする。
【0129】
このとき無線通信装置Cは、単方向送信に使用するスロット予約情報とスロットビジーフラグを含むビーコンを送信しており、無線通信装置B、Dはスロットビジーフラグを含むビーコンを受信している。
【0130】
したがって、無線通信装置Aは、自己の周囲、すなわち通信可能エリア111内に無線通信装置B、C、Dが位置し、無線通信装置Cが単方向送信状態にあり、無線通信装置B、Dは非通信状態にあることを知る。また、無線通信装置B、C、Dの周辺の無線通信装置の状況も知ることができている。
【0131】
ここで、無線通信装置Aが単方向送信を無線通信装置Dに行うとき、無線通信装置Aは自己の周囲に双方向通信を行っていたり、あるいは受信側の無線通信装置となっているものがあるか否かをチェックする。この例では、無線通信装置Aはそのような無線通信装置が周囲にいないと判断できる。
【0132】
次に、無線通信装置Aは、通信相手である無線通信装置Dの周囲に、通信を行っていたり、あるいは送信側の無線通信装置となっているものがあるか否かをチェックする。無線通信装置Aは、無線通信装置Dから受信したスロットビジーフラグから、そのような無線通信装置がいないと判断できる。
【0133】
以上の2つの判断結果から、無線通信装置Aは無線通信装置Dへの単方向送信が可能であると判断し、スロット予約を行った後、送信を開始する。
【0134】
なお、本実施の形態においては、無線通信装置が単方向通信を行うことを基本としているが、これに限らず、双方向通信を基本的に行い、通信条件が合わない場合には単方向通信を行うようにしてもよい。
【0135】
無線通信装置が双方向通信を行う場合の通信条件として、スロット決定部215は対象のスロットが送信、あるいは受信の予約をされているか否かを判定し、いずれかの予約が
ある場合、そのスロットでの使用を不可とみなす。また、通信相手の周囲に、対象としているスロットにおいて送信、あるいは受信状態の無線通信装置がある場合も、そのスロットでの使用は不可とみなす。
【0136】
このように、無線通信装置が双方向通信を行う場合には、送信側と受信側の無線通信装置の近隣に送受信者がいないことを条件とするのに較べ、単方向で送信あるいは受信する場合には、送信側無線通信装置、あるいは受信側無線通信装置の近隣に、それぞれ送信者あるいは受信者がいても通信を行うことができる。これにより、無線通信装置は、広い条件で通信の可否を決定することが可能になる。
【0137】
さらに、本発明では、ビーコンにACK応答を含めるので、単方向通信であってもフレームの欠落を検出でき、再送により通信品質の確保が可能である。
【0138】
なお、本実施の形態では、自律分散型ネットワークの一例を挙げたが、これに限らず、その他のTDMAスロットを用いた自律分散型ネットワークにおいても本発明は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明はアドホック通信をするときの無線通信方法及び無線通信装置に有用であり、TDMA方式もしくはTDMAとのハイブリッド方式の自律分散型ネットワークにおいて空間的な帯域の再利用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施の形態における無線通信ネットワークにおける無線通信装置の配置図
【図2】本実施の形態における無線通信装置の構成図
【図3】本実施の形態におけるビーコンフレームの構成図
【図4】(a)本実施の形態におけるスロット予約テーブルの構成図(b)本実施の形態における通信装置周囲状況テーブルの構成図
【図5】本実施の形態における受信者により単方向通信スロットを決定するフローチャート
【図6】本実施の形態における送信側により単方向通信スロットを決定するフローチャート
【図7】本実施の形態における単方向通信スロットを決定するフローチャート
【図8】従来例におけるスーパーフレームの構成図
【図9】従来例におけるスーパーフレームの構成図
【図10】従来例における無線通信装置の構成図
【符号の説明】
【0141】
200 アンテナ
201 無線処理部
202 フレーム判定部
203 ACK・再送処理部
204 上位層処理部
205 ビーコン受信処理部
206 記録部
207 フレーム構成部
208 再送フレームバッファ部
209 ビーコン生成部
212 通信可否判定部
213 通信方向明示部
214 ビジースロット明示部
215 スロット決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドホックネットワークにおける時分割通信を実現する無線通信方法であって、
無線通信装置が特定のデータ送信スロットを指定し、単方向送信、単方向受信、あるいは双方向通信で使用することを他の無線通信装置に予約するステップと、
前記無線通信装置が他の無線通信装置から予約された予約状況を管理するステップと、
前記無線通信装置が前記予約状況に基づいて、データ送信スロットでの送信もしくは受信が可能であるか否かを示すスロット情報を生成し、他の無線通信装置へ通知するステップと、
前記無線通信装置が単方向送信、あるいは単方向受信をするとき、自己が管理する前記予約状況と、通信相手の無線通信装置から通知された前記スロット情報とから使用するデータ送信スロットを決定するステップと
を有する無線通信方法。
【請求項2】
前記データ送信スロットを決定するステップは、
前記無線通信装置が、前記予約状況から双方向通信を行っている無線通信装置、あるいは受信側となっている無線通信装置がいないデータ送信スロットを検出するステップと、
前記無線通信装置が、前記スロット情報から通信相手の無線通信装置が送受信しておらず、かつ前記通信相手の通信可能エリア内の無線通信装置が送信をしていないデータ送信スロットを検出するステップと、
前記検出ステップの両方で共通して検出されたデータ送信スロットを通信に使用するデータ送信スロットであると決定するステップと
からなる請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記通信相手の無線通信装置が、通信要求元の無線通信装置から前記予約を受け取ったときに通信の可否を判定するステップと、
前記通信相手の無線通信装置が通信可と判定したとき、前記通信要求元の無線通信装置へ同一のデータ送信スロットの予約を行うステップと
を有する請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記時分割通信は、ビーコンを送信するビーコンピリオドとデータ送信するデータピリオドとからなるスーパーフレーム周期で行われるものであって、
前記データ送信スロットの予約と前記スロット情報は前記ビーコンで通知される請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記通信相手の無線通信装置が、通信要求元の無線通信装置から単方向送信の予約をされたデータを正常に受信したとき、次のスーパーフレームにおけるビーコンで到達確認情報を通知するステップを
有する請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
アドホックネットワークにおける時分割通信を実現する無線ネットワークを構成する無線通信装置であって、
データ送信スロットを指定して、当該データ送信スロットにおいて、自己が双方向通信の送受信者、単方向通信の送信者もしくは受信者であることを近隣のノードに通知する通信方向明示部と、
各データ送信スロットにおける、送信もしくは受信が可能か否かを近隣のノードに通知するビジースロット明示部と、
他の無線通信装置の前記通信方向明示部から通知された通信方向情報と、前記ビジースロット明示部から通知されたスロットビジー情報とを受信するスロット情報受信部と、
単方向通信を行うときに、前記スロット情報受信部が受信した通信方向情報とスロットビ
ジー情報とから、自己の使用するデータ送信スロットを決定するスロット決定部と
を有する無線通信装置。
【請求項7】
前記スロット決定部は、前記通信方向情報から双方向通信を行っている無線通信装置と受信側となっている無線通信装置とがいないデータ送信スロットを検出し、さらに、通信相手の無線通信装置の前記スロットビジー情報から当該通信相手の無線通信装置が送受信しておらず、かつ前記通信相手の通信可能エリア内の無線通信装置が送信をしていないデータ送信スロットを検出し、両方で共通して検出されたデータ送信スロットを通信に使用するデータ送信スロットとして決定する請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記スロット情報受信部が他の無線通信装置から通信要求を受信したとき、通信の可否を判定する通信可否判定部を有し、
通信可否判定部が通信可と判定したとき、前記通信方向明示部に指示して通信要求元の無線通信装置へ同一のデータ送信スロットでの自己の通信方向を通知する請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記時分割通信は、ビーコンを送信するビーコンピリオドとデータ送信するデータピリオドとからなるスーパーフレーム周期で行われるものであって、
データ送信スロットで単方向送信されるデータフレームを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部で正常に受信されたか否かを判定するデータ受信判定部と、
前記データ受信判定部で正常受信であると判定したとき、そのスーパーフレーム周回もしくは次の周回におけるビーコン送信時に到達確認情報を含めて送信するビーコン送信部と、
を有する請求項6に記載の無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate