説明

無線通信用アンテナおよび無線通信装置

【課題】遠方への信号(電磁波)の漏洩を防止することができるようにする。
【解決手段】第1の共振器(第1のλ/2共振器11)および第2の共振器(第2のλ/2共振器12)を、互いの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置(平行配置)すると共に、対向する開放端同士をキャパシタ20,30を介して接続する。この構造により、第1および第2の共振器に流れる電流の向きが互いに逆になるような基本共振モードを得ることができる。これにより、基本共振モードでは、第1および第2の共振器に流れる電流が互いに打ち消し合い、遠方への放射電力が小さくなるので、基本共振モードに対応する周波数帯域の信号伝送に関して、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離で信号(電磁波)の伝送を行う無線通信用アンテナおよび無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号伝送を行う信号伝送装置が知られている。例えば特許文献1には、異なる基板それぞれに共振器を構成し、それら共振器同士を電磁結合させて2段のフィルタを構成して信号伝送させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−67012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、共振器を用いた無線通信用アンテナにおいて、アンテナから放射される電磁波の成分には、遠方にまで伝搬する成分と、アンテナの近傍にしか伝搬しない成分とがある。このとき、遠方に伝搬する成分の強度はアンテナからの距離rに反比例して減衰し、近傍にしか伝搬しない成分の強度はアンテナからの距離rの2乗または3乗に反比例して減衰する。一方、高速での無線通信を実現するためには、信号の帯域幅を広くすることが有利である。この際、広帯域の信号を使うためには、既存の無線通信システムとの周波数および帯域幅の干渉を避けなければならない(電波法による制限がある)。上述したようにアンテナから放射される電磁波の成分には遠方にまで伝搬する成分があるが、例えば数ミリメートルから数センチメートル程度の近距離での無線通信を行う場合には、この遠方にまで伝搬する成分を極力小さくするよう、アンテナの放射電力を極限的に小さくしなければいけない。電波法に違反しない程度、微弱な送信電力を用いることで、周波数および帯域幅の制限がなくなり、近距離での高速無線通信を実現することができる。特許文献1に記載のような従来の共振器構造では、近距離での高速無線通信を実現しつつ、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防止することが困難である。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防止することができるようにした無線通信用アンテナおよび無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による無線通信用アンテナは、それぞれが開放端を有し、互いの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置された第1および第2の共振器と、互いに対向する開放端同士を接続するキャパシタとを備えたものである。
【0007】
本発明による無線通信装置は、信号の送信を行う第1のアンテナと、第1のアンテナから送信された信号の受信を行う第2のアンテナとを備え、第1のアンテナを、上記した本発明の無線通信用アンテナで構成したものである。
また、第1のアンテナが信号の受信を行う機能をさらに有すると共に、第2のアンテナが信号の送信を行う機能をさらに有し、第1のアンテナと第2のアンテナとの間で双方向に信号の送受信を行うような場合には、第1のアンテナと第2のアンテナとをそれぞれ、上記した本発明の無線通信用アンテナで構成しても良い。
【0008】
本発明の無線通信用アンテナまたは無線通信装置では、第1および第2の共振器が、それぞれの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置されると共に、対向する開放端同士がキャパシタを介して接続されていることで、基本共振モード(共振周波数が最も低い最低次の共振モード)では、第1および第2の共振器に流れる電流の向きが互いに逆になる(差動の共振モードになる)。これにより、基本共振モードでは、第1および第2の共振器に流れる電流が互いに打ち消し合い、遠方での放射電力が小さくなる。
【0009】
本発明の無線通信用アンテナにおいて、第1および第2の共振器は例えば、導体線路を用いた線路型共振器で構成することができる。キャパシタは、第1および第2の共振器の開放端側に形成された導体による電極パターンで構成することができる。
また、キャパシタを、第1および第2の共振器とは別部品のコンデンサ素子で構成してもよい。
【0010】
また、本発明の無線通信用アンテナにおいて、第1の共振器を両端が開放端とされた第1のλ/2共振器(1/2波長共振器)で構成し、第2の共振器を両端が開放端とされた第2のλ/2共振器で構成しても良い。この場合、キャパシタを、第1のキャパシタと第2のキャパシタとで構成し、第1のキャパシタを、第1の共振器の一方の開放端と第2の共振器の一方の開放端とに接続し、第2のキャパシタを、第1の共振器の他方の開放端と第2の共振器の他方の開放端とに接続する。
【0011】
第1および第2の共振器をλ/2共振器で構成した場合、例えば、第1のλ/2共振器において共振中心位置に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端を接続すると共に、信号源の他端を接地することが好ましい。または、第1のλ/2共振器において共振中心位置に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端を接続し、第2のλ/2共振器の共振中心位置に信号源の他端を接続するようにしても良い。
【0012】
また、本発明の無線通信用アンテナにおいて、第1の共振器を一端が開放端とされ他端が短絡端とされた第1のλ/4共振器(1/4波長共振器)で構成し、第2の共振器を一端が開放端とされ他端が短絡端とされた第2のλ/4共振器で構成するようにしても良い。
この場合、例えば、第1のλ/4共振器の短絡端に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端を接続すると共に、信号源の他端を接地することが好ましい。
【0013】
なお、本発明の無線通信用アンテナまたは無線通信装置において、「信号伝送」とは、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のような信号伝送に限らず、電力の送電/受電のような電力伝送も含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無線通信用アンテナまたは無線通信装置によれば、第1および第2の共振器を、互いの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置すると共に、対向する開放端同士をキャパシタを介して接続するようにしたので、第1および第2の共振器に流れる電流の向きが互いに逆になるような基本共振モードを得ることができる。これにより、基本共振モードでは、第1および第2の共振器に流れる電流が互いに打ち消し合い、遠方での放射電力が小さくなるので、基本共振モードに対応する周波数帯域の信号伝送に関して、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナの基本構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した無線通信用アンテナにおける基本共振モードでの電荷分布および電流ベクトルの状態を示す説明図である。
【図3】(A)は図1に示した無線通信用アンテナにおける基本共振モードでの第1の共振器の電界分布および電流ベクトルの状態を示す説明図であり、(B)は基本共振モードでの第2の共振器の電界分布および電流ベクトルの状態を示す説明図である。
【図4】図1に示した無線通信用アンテナにおける共振器の励振方法の第1の例を示す構成図である。
【図5】図1に示した無線通信用アンテナにおける共振器の励振方法の第1の例共振器の第2の励振方法を示す構成図である。
【図6】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成例を示す平面図である。
【図7】図6に示した具体的な構成例における基本共振モードでの電流ベクトルの状態をシミュレーションした結果を示す特性図である。
【図8】図1に示した無線通信用アンテナを用いた無線通信装置の一例を示す斜視図である。
【図9】図8に示した無線通信装置における導体パターンの構造を示す平面図である。
【図10】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第1の変形例を示す平面図である。
【図11】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第2の変形例を示す平面図である。
【図12】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第3の変形例を示す平面図である。
【図13】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第4の変形例を示す平面図である。
【図14】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第5の変形例を示す平面図である。
【図15】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第6の変形例を示す平面図である。
【図16】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第7の変形例を示す平面図である。
【図17】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第8の変形例を示す平面図である。
【図18】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第9の変形例を示す平面図である。
【図19】図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第10の変形例を示す平面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信用アンテナの基本構成を示す回路図である。
【図21】図20に示した無線通信用アンテナにおける基本共振モードでの電荷分布および電流ベクトルの状態を示す説明図である。
【図22】図20に示した無線通信用アンテナにおける共振器の励振方法を示す構成図である。
【図23】図20に示した無線通信用アンテナの具体的な構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施の形態>
[無線通信用アンテナの基本構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナの基本構成を示している。この無線通信用アンテナは、第1のλ/2共振器11(第1の共振器)と、第2のλ/2共振器12(第2の共振器)と、第1のキャパシタ20と、第2のキャパシタ30とを備えている。
【0018】
第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12はそれぞれ、両端が開放端とされ、互いの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置(例えば同一面内で平行配置または上下方向に平行配置)されている。第1のキャパシタ20と第2のキャパシタ30は、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12との互いに対向する開放端同士に接続されている。
【0019】
より具体的には、第1のキャパシタ20は、互いに対向する第1のλ/2共振器11の一方の開放端と第2のλ/2共振器12の一方の開放端とに接続されている。第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21は、第1のλ/2共振器11の一方の開放端に接続されている。第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22は、第2のλ/2共振器12の一方の開放端に接続されている。
【0020】
また、第2のキャパシタ30は、互いに対向する第1のλ/2共振器11の他方の開放端と第2のλ/2共振器12の他方の開放端とに接続されている。第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31は、第1のλ/2共振器11の他方の開放端に接続されている。第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32は、第2のλ/2共振器12の他方の開放端に接続されている。
【0021】
[無線通信用アンテナの基本動作および作用]
図2は、この無線通信用アンテナにおける基本共振モード(共振周波数が最も低い最低次の共振モード)での電荷分布および電流ベクトルの状態を示している。図3(A)は基本共振モードでの第1のλ/2共振器11の電界Eの分布および電流ベクトル(i)の状態を示し、図3(B)は基本共振モードでの第2のλ/2共振器12の電界分布および電流ベクトルの状態を示している。
【0022】
この無線通信用アンテナでは、第1および第2のλ/2共振器11,12が、互いの開放端同士が対向するように互いに並列的に配置(平行配置)されると共に、対向する開放端同士が第1および第2のキャパシタ20,30を介して接続されていることで、基本共振モードでは、図3(A),(B)に示したような電界強度分布となる。すなわち、第1のキャパシタ20のキャパシタンスCint1と第2のキャパシタ30のキャパシタンスCint2とが同じであるものとすると、共振器の物理的な中心線16を共振中心(ゼロ電位)として、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12とで電界分布は互いに逆位相になる。このため、基本共振モードでは、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12とで、図2に示したように、流れる電流iの向きが互いに逆になる(差動の共振モードになる)。これにより、基本共振モードでは、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12とで、互いに流れる電流が互いに打ち消し合い、遠方での放射電力が小さくなる。従って、基本共振モードに対応する周波数帯域の信号伝送に関して、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0023】
一般に、共振器を用いた無線通信用アンテナにおいて、アンテナから放射される電磁波の成分には、遠方にまで伝搬する成分と、アンテナの近傍にしか伝搬しない成分とがある。遠方に伝搬する成分はエネルギーとして外部に放射され、入力共振器に帰ってこないため、損失(放射損)となる。一方、近傍にしか伝搬しない成分のエネルギーは、外部に放射されずに、共振器近傍の空間にリアクタンスエネルギーとして蓄えられる。従って、遠方にまで伝搬する成分の放射電力がゼロの場合であっても、2つの無線通信用アンテナ同士を近づけると、近傍にしか伝搬しない成分があることで、2つの無線通信用アンテナを構成するそれぞれの共振器同士が電磁的に結合してリアクタンス結合する。この場合、2つの無線通信用アンテナを構成するそれぞれの共振器間で、近傍にしか伝搬しない成分によるエネルギー交換が始まり、共鳴状態となり、混成共振モードを形成し、異なる共振器間(2つの無線通信用アンテナ間)での信号伝送が可能になる。これにより、例えば図1に示した無線通信用アンテナを結合器(カプラ)とみなすと、図1に示した構成の無線通信用アンテナを2つ用いて、互いに近づけると、放射電力を極力小さくして、リアクタンス結合によってのみ伝送する無線通信装置を実現できる。従って、既存の無線通信システムとの周波数および帯域幅の干渉を避けつつ、近距離での高速無線通信を実現できる。
【0024】
[信号源との接続方法(共振器の励振方法)]
図4は、図1に示した無線通信用アンテナにおける共振器の励振方法の第1の例を示している。この第1の例では、第1のλ/2共振器11において共振中心位置に対して所定の距離x0だけ離れた位置17に信号源13の一端(第1の接続線15)が接続されていると共に、信号源13の他端(第2の接続線14)が接地されている。なお、第1のキャパシタ20のキャパシタンスCint1と第2のキャパシタ30のキャパシタンスCint2とが同じであるものとすると、共振器の物理的な中心線16が共振中心(ゼロ電位)となる。この場合、中心線16から距離x0だけ離れた位置17に信号源13の一端を接続する。
【0025】
図5は、共振器の励振方法の第2の例を示している。この第2の例では、第1のλ/2共振器11において共振中心位置に対して所定の距離x0だけ離れた位置17に信号源13の一端(第1の接続線15)が接続されていると共に、第2のλ/2共振器12の共振中心位置に信号源13の他端(第2の接続線14)が接続されている。なお、第1のキャパシタ20のキャパシタンスCint1と第2のキャパシタ30のキャパシタンスCint2とが同じであるものとすると、共振器の物理的な中心線16が共振中心(ゼロ電位)となる。この場合、中心線16から距離x0だけ離れた位置17に信号源13の一端を接続し、中心線16の位置に信号源13の他端を接続する。
【0026】
図4および図5における距離x0は、第1のλ/2共振器11と信号源13との整合(インピーダンス・マッチング)が取れるような値に設定される。距離x0が小さければ小さいほど、第1のλ/2共振器11と信号源13との結合が小さくなる。
【0027】
[無線通信用アンテナの具体的な構成例]
図6(A),(B)は、図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図6(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。例えば、誘電体基板の上面に図6(A)の導体パターンを形成し、底面に図6(B)の導体パターンを形成する。図6(A)の導体パターンは、中心部に第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンがあり、その第1の導体線路パターンの両端(開放端)に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとがそれぞれ半円状に形成されている。図6(B)の導体パターンも同様の構造であり、中心部に第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンがあり、その第2の導体線路パターンの両端(開放端)に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとがそれぞれ半円状に形成されている。
【0028】
図7は、図6(A),(B)に示した具体的な構成例における基本共振モードでの電流ベクトルの状態をシミュレーションした結果を示している。図7に示したように、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12とで、流れる電流の向きが互いに逆方向になっているのが分かる。
【0029】
[無線通信装置の構成例]
無線通信システムを構築する場合、遠方への電磁波の漏洩を防ぐために、少なくとも送信側のアンテナを図1に示した無線通信用アンテナで構成すると良い。互いに2つのアンテナ間で双方向の通信を行う場合には、2つのアンテナをそれぞれ図1に示した無線通信用アンテナで構成すると良い。ここでは、実質的に同一構造の2つのアンテナを用いた無線通信装置の例を示す。
【0030】
図8は、図1に示した無線通信用アンテナを用いた無線通信装置の一例を示している。この無線通信装置は、第1のアンテナ1と、第2のアンテナ2とを備えている。第1のアンテナ1は、平板状の第1の誘電体基板5を有している。第2のアンテナ2は、平板状の第2の誘電体基板6を有している。通信時には、第1の誘電体基板5と第2の誘電体基板6とが、間隔d(例えば数ミリメートルから数センチメートル)を空けて互いに対向配置される。
【0031】
第1の誘電体基板5の互いに対向する第1の面(上面)と第2の面(底面)とには、図9(A),(B)に示したようなパターンの導体が形成されている。第2の誘電体基板6の互いに対向する第1の面(上面)と第2の面(底面)とにも同様のパターンの導体が形成されている。より具体的には、第1の誘電体基板5の上面には図9(A)の導体パターンが形成され、底面には図9(B)の導体パターンが形成されている。第2の誘電体基板6の上面には図9(B)の導体パターンが形成され、底面には図9(A)の導体パターンが形成されている。
【0032】
図9(A)の導体パターンは、図6(A)の導体パターンと同様に、中心部に第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンがあり、その第1の導体線路パターンの両端(開放端)に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとがそれぞれ半円状に形成されている。図9(A)の導体パターンとしてはさらに、例えば信号源13(図4)の一端を接続するための第1の接続線15となる線路パターンが形成されている。第1の接続線15となる線路パターンの一端は、中心部の第1の導体線路パターンに接続されている。なお、上述したように、第1のλ/2共振器11と信号源13とのインピーダンス・マッチングが取れるように、第1の接続線15となる線路パターンの一端は、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンの中心位置から距離x0だけ離れた位置に接続することが好ましい。
【0033】
図9(B)の導体パターンは、図6(B)の導体パターンと同様に、中心部に第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンがあり、その第2の導体線路パターンの両端(開放端)に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとがそれぞれ半円状に形成されている。図9(B)の導体パターンとしてはさらに、例えば信号源13(図4)の他端を接続するための第2の接続線14となる線路パターンと、グランド電極18となる電極パターンとが形成されている。第2の接続線14となる線路パターンの一端は、中心部の第2の導体線路パターンに接続されている。なお、第2の接続線14となる線路パターンの一端は、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンの中心位置に接続することが好ましい。
【0034】
この無線通信装置は、例えば、第1のアンテナ1を送信アンテナとし、第2のアンテナ2を第1のアンテナ1から送信された信号の受信を行う受信アンテナとして動作させることができる。また、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2との双方を送受信アンテナとして用いて、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2との間で双方向に信号の送受信を行うこともできる。
【0035】
[無線通信用アンテナの具体的な構成の変形例]
図10は、図1に示した無線通信用アンテナの具体的な構成の第1の変形例を示している。この第1の変形例は、例えば、平板状の誘電体基板の1つの面内に図10に示したようなパターンの導体を形成したものである。図10に示したように、同一平面内に、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンと、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンとが並列的に形成されている。第1の導体線路パターンの両端(開放端)部分において、第2の導体線路パターンに対向する側には、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとがそれぞれ形成されている。これらの電極パターンは、第1の導体線路パターンに対して段差状に形成されている。第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンの両端(開放端)部分において、第1の導体線路パターンに対向する側には、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとがそれぞれ形成されている。これらの電極パターンは、第2の導体線路パターンに対して段差状に形成されている。
【0036】
図10の構成例では、同一平面内で、第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のコンデンサ電極22の電極パターンとが所定間隔を空けて対向することで、第1のキャパシタ20が形成される。また、同一平面内で、第1のコンデンサ電極31の電極パターンと第2のコンデンサ電極32の電極パターンとが所定間隔を空けて対向することで第2のキャパシタ30が形成される。
【0037】
図11は、第2の変形例を示している。この第2の変形例は、図10の構成例と同様、例えば、平板状の誘電体基板の1つの面内に図11に示したようなパターンの導体を形成したものである。この第2の変形例の基本的な構造は図10の構成例と同様であるが、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を構成する電極パターンの形状が異なっている。この第2の変形例では、第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のコンデンサ電極22の電極パターンとがそれぞれ、くし状に形成され、所定間隔を空けてくし状の線路部分が交互に対向することで、インターディジタル型の線路構造となるような第1のキャパシタ20が形成されている。同様に、第1のコンデンサ電極31の電極パターンと第2のコンデンサ電極32の電極パターンとがそれぞれ、くし状に形成され、所定間隔を空けてくし状の線路部分が交互に対向することで、インターディジタル型の線路構造となるような第2のキャパシタ30が形成される。この第2の変形例では、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を構成する電極パターンをインターディジタル型の線路構造にしていることで、対向容量が増え、より大きな容量を形成することができる。これにより、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。
【0038】
図12は、第3の変形例を示している。この第3の変形例は、図10の構成例と同様、例えば、平板状の誘電体基板の1つの面内に、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンと、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンとが並列的に形成されている。この第3の変形例は、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、第1のλ/2共振器11および第2のλ/2共振器12とは別部品のコンデンサ素子で構成している点が、図10の構成例とは異なっている。具体的には、互いに対向する第1のλ/2共振器11(第1の導体線路パターン)の一方の開放端と第2のλ/2共振器12(第2の導体線路パターン)の一方の開放端とに、第1のキャパシタ20としての第1のチップコンデンサ41が接続されている。また、互いに対向する第1のλ/2共振器11(第1の導体線路パターン)の他方の開放端と第2のλ/2共振器12(第2の導体線路パターン)の他方の開放端とに第2のキャパシタ30としての第2のチップコンデンサ42が接続されている。この第3の変形例では、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、コンデンサ素子で構成しているので、例えば図10の構成例に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。
【0039】
図13(A)〜(C)は、第4の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図13(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図13(C)は、図13(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図13(B)の導体パターンを形成し、底面に図13(A)の導体パターンを形成する。図13(A)の導体パターンとしては、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンと、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンとが並列的に形成されている。図13(B)の導体パターンとしては、互いに対向する第1のλ/2共振器11(第1の導体線路パターン)の一方の開放端と第2のλ/2共振器12(第2の導体線路パターン)の一方の開放端とに対応する位置に、第1のコンデンサ電極33の電極パターンが形成されている。これにより、誘電体基板の互いに対向する2つの面間に第1のキャパシタ20が形成される。また、互いに対向する第1のλ/2共振器11(第1の導体線路パターン)の他方の開放端と第2のλ/2共振器12(第2の導体線路パターン)の他方の開放端とに対応する位置に、第2のコンデンサ電極34の電極パターンが形成されている。これにより、誘電体基板の互いに対向する2つの面間に第2のキャパシタ30が形成される。この第4の変形例によれば、2つの対向する面間で容量を形成するため、例えば図10の構成例のように1つの面内でキャパシタを形成する場合に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。
【0040】
図14(A)〜(C)は、第5の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図14(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図14(C)は、図14(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図14(B)の導体パターンを形成し、底面に図14(A)の導体パターンを形成する。図14(A)の導体パターンとしては、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンが形成され、その第2の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとが、全体としてC字形状に形成されている。図14(B)の導体パターンとしては、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンが形成され、その第1の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとが、全体として図14(A)の導体パターンとは左右対称的となるC字形状に形成されている。この第5の変形例によれば、2つの対向する面間で容量を形成するため、例えば図10の構成例のように1つの面内でキャパシタを形成する場合に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。
【0041】
図15(A)〜(C)は、第6の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図15(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図15(C)は、図15(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図15(B)の導体パターンを形成し、底面に図15(A)の導体パターンを形成する。図15(A)の導体パターンとしては、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンが形成され、その第2の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとが、全体としてI字形状に形成されている。図15(B)の導体パターンとしては、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンが形成され、その第1の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとが、全体としてI字形状に形成されている。この第6の変形例によれば、2つの対向する面間で容量を形成するため、例えば図10の構成例のように1つの面内でキャパシタを形成する場合に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。
【0042】
図16(A)〜(C)は、第7の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図16(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図16(C)は、図16(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図16(B)の導体パターンを形成し、底面に図16(A)の導体パターンを形成する。図16(A)の導体パターンとしては、第2のλ/2共振器12を構成するミアンダ構造の第2の導体線路パターンが形成され、そのミアンダ構造の第2の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとが形成されている。図16(B)の導体パターンとしては、第1のλ/2共振器11を構成するミアンダ構造の第1の導体線路パターンが形成され、そのミアンダ構造の第1の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとが形成されている。この第7の変形例によれば、2つの対向する面間で容量を形成するため、例えば図10の構成例のように1つの面内でキャパシタを形成する場合に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。また、この第7の変形例によれば、第1および第2の導体線路パターンをミアンダ構造にしているため、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12との間で流れる電流iの向きが互いに逆になるだけでなく、それぞれの共振器内に流れる電流iの向きも互いに逆になる。このため、第1および第2の導体線路パターンを単純に直線状にした場合に比べて、第1および第2のλ/2共振器11,12に流れる電流iがより効果的に打ち消し合い、遠方での放射電力がより小さくなる。
【0043】
図17(A)〜(C)は、第8の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図17(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図17(C)は、図17(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図17(B)の導体パターンを形成し、底面に図17(A)の導体パターンを形成する。この第8の変形例は、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンと、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンとが、上記第7の変形例と同様、ミアンダ構造になっている。
【0044】
この第8の変形例は、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、第1のλ/2共振器11および第2のλ/2共振器12とは別部品のコンデンサ素子で構成している点が、上記第7の変形例とは異なっている。具体的には、第1のキャパシタ20としての第1のチップコンデンサ41が、第1のλ/2共振器11の一方の開放端(第1の導体線路パターンの一方の端部21A)と第2のλ/2共振器12の一方の開放端(第2の導体線路パターンの一方の端部22A)とに接続されている。第2の導体線路パターンの一方の端部22Aは、誘電体基板を貫通する第1の接続導体22Bを介して第1のチップコンデンサ41に接続されている。また、第2のキャパシタ30としての第2のチップコンデンサ42が、第1のλ/2共振器11の他方の開放端(第1の導体線路パターンの他方の端部31A)と第2のλ/2共振器12の他方の開放端(第2の導体線路パターンの他方の端部32A)とに接続されている。第2の導体線路パターンの他方の端部32Aは、誘電体基板を貫通する第2の接続導体32Bを介して第2のチップコンデンサ42に接続されている。この第8の変形例では、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、コンデンサ素子で構成しているので、例えば上記第7の変形例に比べて、小さい面積でより大きな容量を形成することができる。
【0045】
図18(A)〜(C)は、第9の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図18(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図18(C)は、図18(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図18(B)の導体パターンを形成し、底面に図18(A)の導体パターンを形成する。図18(A)の導体パターンとしては、第2のλ/2共振器12を構成するスパイラル構造の第2の導体線路パターンが形成され、そのスパイラル構造の第2の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンと第2のキャパシタ30の第2のコンデンサ電極32の電極パターンとが形成されている。図18(B)の導体パターンとしては、第1のλ/2共振器11を構成するスパイラル構造の第1の導体線路パターンが形成され、そのスパイラル構造の第1の導体線路パターンの両端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンと第2のキャパシタ30の第1のコンデンサ電極31の電極パターンとが形成されている。この第9の変形例によれば、2つの対向する面間で容量を形成するため、例えば図10の構成例のように1つの面内でキャパシタを形成する場合に比べて、より大きな容量を形成することができ、アンテナ全体としての小型化を図ることができる。また、この第9の変形例によれば、第1および第2の導体線路パターンをスパイラル構造にしているため、第1のλ/2共振器11と第2のλ/2共振器12との間で流れる電流iの向きが互いに逆になるだけでなく、それぞれの共振器内に流れる電流iの向きが部分的に互いに逆になる。このため、第1および第2の導体線路パターンを単純に直線状にした場合に比べて、第1および第2のλ/2共振器11,12に流れる電流iがより効果的に打ち消し合い、遠方での放射電力がより小さくなる。
【0046】
図19(A)〜(C)は、第10の変形例を示している。例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図19(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図19(C)は、図19(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図19(B)の導体パターンを形成し、底面に図19(A)の導体パターンを形成する。この第10の変形例は、第1のλ/2共振器11を構成する第1の導体線路パターンと、第2のλ/2共振器12を構成する第2の導体線路パターンとが、上記第9の変形例と同様、スパイラル構造になっている。
【0047】
この第10の変形例は、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、第1のλ/2共振器11および第2のλ/2共振器12とは別部品のコンデンサ素子で構成している点が、上記第9の変形例とは異なっている。具体的には、第1のキャパシタ20としての第1のチップコンデンサ41が、第1のλ/2共振器11の一方の開放端(第1の導体線路パターンの一方の端部21A)と第2のλ/2共振器12の一方の開放端(第2の導体線路パターンの一方の端部22A)とに接続されている。第2の導体線路パターンの一方の端部22Aは、誘電体基板を貫通する第1の接続導体22Bを介して第1のチップコンデンサ41に接続されている。また、第2のキャパシタ30としての第2のチップコンデンサ42が、第1のλ/2共振器11の他方の開放端(第1の導体線路パターンの他方の端部31A)と第2のλ/2共振器12の他方の開放端(第2の導体線路パターンの他方の端部32A)とに接続されている。第2の導体線路パターンの他方の端部32Aは、誘電体基板を貫通する第2の接続導体32Bを介して第2のチップコンデンサ42に接続されている。この第10の変形例では、第1のキャパシタ20および第2のキャパシタ30を導体の電極パターンではなく、コンデンサ素子で構成しているので、例えば上記第9の変形例に比べて、小さい面積でより大きな容量を形成することができる。
【0048】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信用アンテナについて説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナと実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
[無線通信用アンテナの基本構成]
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信用アンテナの基本構成を示している。この無線通信用アンテナは、第1のλ/4共振器51(第1の共振器)と、第2のλ/4共振器52(第2の共振器)と、第1のキャパシタ20とを備えている。
【0050】
第1のλ/4共振器51と第2のλ/4共振器52はそれぞれ、一端が開放端とされると共に他端が短絡端とされ、互いの開放端同士が対向すると共に互いの短絡端同士が対向するようにして互いに平行配置されている。第1のキャパシタ20は、第1のλ/4共振器51と第2のλ/4共振器52との互いに対向する開放端同士に接続されている。第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21は、第1のλ/4共振器51の開放端に接続されている。第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22は、第2のλ/4共振器52の開放端に接続されている。
【0051】
[無線通信用アンテナの基本動作および作用]
本実施の形態に係る無線通信用アンテナの構造は、上記第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナを、共振時にゼロ電位となる部分(第1のキャパシタ20のキャパシタンスCint1と第2のキャパシタ30のキャパシタンスCint2とが同じであるものとすると、共振器の物理的な中心線16)で半分に分割した構造とされている。基本的には、上記第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナと同様の作用・効果が得られる。
【0052】
図21は、この無線通信用アンテナにおける基本共振モード(共振周波数が最も低い最低次の共振モード)での電荷分布および電流ベクトルの状態を示している。この無線通信用アンテナでは、第1および第2のλ/4共振器51,52が、互いの開放端同士が対向するように互いに平行配置されると共に、対向する開放端同士が第1のキャパシタ20を介して接続されていることで、基本共振モードでは、第1のλ/4共振器51と第2のλ/4共振器52とで電界分布は互いに逆位相になる。このため、基本共振モードでは、第1のλ/4共振器51と第2のλ/4共振器52とで、図21に示したように、流れる電流iの向きが互いに逆になる(差動の共振モードになる)。これにより、基本共振モードでは、第1のλ/4共振器51と第2のλ/4共振器52とで、互いに流れる電流が互いに打ち消し合い、遠方での放射電力が小さくなる。従って、基本共振モードに対応する周波数帯域の信号伝送に関して、遠方への信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0053】
本実施の形態に係る無線通信用アンテナも、上記第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナと同様に結合器(カプラ)とみなすと、図20に示した構成の無線通信用アンテナを2つ用いて、互いに近づけると、放射電力を極力小さくして、リアクタンス結合によってのみ伝送する無線通信装置を実現できる。従って、既存の無線通信システムとの周波数および帯域幅の干渉を避けつつ、近距離での高速無線通信を実現できる。
【0054】
[信号源との接続方法(共振器の励振方法)]
図22は、図20に示した無線通信用アンテナにおける共振器の励振方法の一例を示している。この第1の例では、第1のλ/4共振器51において短絡端の位置56に対して所定の距離x0だけ離れた位置57に信号源13の一端(第1の接続線15)が接続されていると共に、信号源13の他端(第2の接続線14)が接地されている。なお、信号源13の他端(第2の接続線14)を、例えば第2のλ/4共振器52の短絡端に接続しても良い。
【0055】
図22における距離x0は、第1のλ/4共振器51と信号源13との整合(インピーダンス・マッチング)が取れるような値に設定される。距離x0が小さければ小さいほど、第1のλ/4共振器51と信号源13との結合が小さくなる。
【0056】
[無線通信用アンテナの具体的な構成例]
本実施の形態に係る無線通信用アンテナの構造は、基本的に、上記第1の実施の形態に係る無線通信用アンテナを半分に分割したものなので、具体的な構成例としては、図6および図10〜図19に示した上記第1の実施の形態に係る各具体的な構成例の構造を半分に分割した構造にすれば良い。例えば図15に示した構成例を半分に分割すると、図23に示したような構造が得られる。
【0057】
例えば、平板状の誘電体基板の互いに対向する2つの面に図23(A),(B)に示したようなパターンの導体を形成する。図23(C)は、図23(A),(B)に示した導体パターンを重ねた(対向させた)状態を示している。例えば、誘電体基板の上面に図23(B)の導体パターンを形成し、底面に図23(A)の導体パターンを形成する。図26(B)の導体パターンとしては、第1のλ/4共振器51を構成する第1の導体線路パターンが形成され、その第1の導体線路パターンの一端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第1のコンデンサ電極21の電極パターンが形成されている。図23(A)の導体パターンとしては、第2のλ/4共振器52を構成する第2の導体線路パターンが形成され、その第2の導体線路パターンの一端(開放端)部分に、第1のキャパシタ20の第2のコンデンサ電極22の電極パターンが形成されている。これにより、誘電体基板の互いに対向する2つの面間に第1のキャパシタ20が形成される。
【0058】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施の形態の無線通信用アンテナは、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のための信号伝送のみならず、電力の送電/受電のための電力伝送装置としても利用可能である。
【0059】
また、上記各実施の形態では、誘電体基板に導体線路パターンからなる共振器を形成する構成例について説明したが、共振器を例えば電気長がλ/2またはλ/4である集中定数素子によって構成しても良い。また、上記各実施の形態では、導体パターンを誘電体基板の上面または底面の少なくとも一方に形成する構成例について説明したが、誘電体基板を例えば多層基板として、導体パターンをその内層に形成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1…第1のアンテナ、2…第2のアンテナ、3…送信回路、4…受信回路、5…第1の誘電体基板、6…第2の誘電体基板、11…第1のλ/2共振器、12…第2のλ/2共振器、13…信号源、14…第2の接続線、15…第1の接続線、16…中心線、17…距離x0だけ離れた位置、18…グランド電極、20…第1のキャパシタ、21…第1のコンデンサ電極、21A…一方の端部、22…第2のコンデンサ電極、22A…一方の端部、22B…第1の接続導体、30…第2のキャパシタ、31…第1のコンデンサ電極、31A…他方の端部、32…第2のコンデンサ電極、32A…他方の端部、32B…第2の接続導体、33…第1のコンデンサ電極、34…第2のコンデンサ電極、41…第1のチップコンデンサ、42…第2のチップコンデンサ、51…第1のλ/4共振器、52…第2のλ/4共振器、56…短絡端の位置、57…距離x0だけ離れた位置、i…電流。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが開放端を有し、互いの前記開放端同士が対向するように互いに並列的に配置された第1および第2の共振器と、
互いに対向する前記開放端同士を接続するキャパシタと
を備えた無線通信用アンテナ。
【請求項2】
前記第1および第2の共振器は、流れる電流の向きが互いに逆となる共振モードで信号の伝搬を行う
請求項1に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項3】
前記第1および第2の共振器は、導体線路を用いた線路型共振器で構成され、
前記キャパシタは、前記第1および第2の共振器の開放端側に形成された導体による電極パターンよりなる
請求項1に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項4】
前記キャパシタは、前記第1および第2の共振器とは別部品のコンデンサ素子である
請求項1に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項5】
前記第1の共振器は、両端が開放端とされた第1のλ/2共振器であり、
前記第2の共振器は、両端が開放端とされた第2のλ/2共振器であり、
前記キャパシタは、第1のキャパシタと第2のキャパシタとからなり、
前記第1のキャパシタは、前記第1のλ/2共振器の一方の開放端と前記第2のλ/2共振器の一方の開放端とに接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第1のλ/2共振器の他方の開放端と前記第2のλ/2共振器の他方の開放端とに接続されている
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項6】
前記第1のλ/2共振器において共振中心位置に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端が接続されていると共に、前記信号源の他端が接地されている
請求項5に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項7】
前記第1のλ/2共振器において共振中心位置に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端が接続されていると共に、前記第2のλ/2共振器の共振中心位置に前記信号源の他端が接続されている
請求項5に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項8】
前記第1の共振器は、一端が開放端とされ他端が短絡端とされた第1のλ/4共振器であり、
前記第2の共振器は、一端が開放端とされ他端が短絡端とされた第2のλ/4共振器である
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項9】
前記第1のλ/4共振器の短絡端に対して所定の距離だけ離れた位置に信号源の一端が接続されていると共に、前記信号源の他端が接地されている
請求項8に記載の無線通信用アンテナ。
【請求項10】
信号の送信を行う第1のアンテナと、
前記第1のアンテナから送信された信号の受信を行う第2のアンテナと
を備え
前記第1のアンテナは、
それぞれが開放端を有し、互いの前記開放端同士が対向するように互いに並列的に配置された第1および第2の共振器と、
互いに対向する前記開放端同士を接続するキャパシタと
を有する無線通信装置。
【請求項11】
前記第1のアンテナは信号の受信を行う機能をさらに有すると共に、前記第2のアンテナは信号の送信を行う機能をさらに有し、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で双方向に信号の送受信を行うようになされ、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとがそれぞれ、
それぞれが開放端を有し、互いの前記開放端同士が対向するように互いに並列的に配置された第1および第2の共振器と、
互いに対向する前記開放端同士を接続するキャパシタと
を有する請求項10に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−142706(P2012−142706A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292704(P2010−292704)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)