説明

無線通信装置および通信システム

【課題】データ送信が実際に行われた時刻と、送信データに付加された送信時刻情報が示す送信時刻とを一致させる
【解決手段】まず、フレームを無線送信する予測送信時刻tsを決定し(S30〜S90)、入力データと予測送信時刻情報とから構成される送信メッセージに基づいて、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名を生成する(S100)。そして、予測送信時刻tsになると(S120:YES)、送信メッセージとメッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名とから構成されるフレームを無線送信する(S130)。なお、予測送信時刻tsは、送信メッセージのデータ長に基づいて、MACもしくは電子署名を生成するのに要する時間を算出し(S60)、MACもしくは電子署名の生成を完了する時刻より後になるように決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信時刻を含むデータを無線送信する無線通信装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線送信されるデータが悪意ある第三者により改竄されることを防止するために、送信データにメッセージ認証符号(Message Authentication code)を付加して送信する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−258864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術において、送信データを送信する時刻を示す送信時刻情報をこの送信データに付加する場合には、以下の手順でデータの送信が行われる。
【0005】
まず、送信データの送信要求があると、現在時刻情報を取得する。そして、この現在時刻情報を送信時刻情報として送信データに付加する。以下、送信時刻情報が付加された状態の送信データを送信時刻付加送信データという。
【0006】
その後、送信時刻付加送信データを元データとしてメッセージ認証符号を生成し、生成したメッセージ認証符号を上記の送信時刻付加送信データに付加した後に、無線送信を行う。
【0007】
したがって、無線送信が実際に行われた時刻と、送信データに付加された送信時刻情報が示す送信時刻との間には、メッセージ認証符号の生成に要する時間分の差がある。
このため、上記送信データを受信した無線通信装置が、このデータに含まれる送信時刻情報に基づいて、自身の時計を同期させると、データを送信した無線通信装置の時計の時刻と、データを受信した無線通信装置の時計の時刻との間で、上記の差が生じ、送信側無線通信装置と受信側無線通信装置の間で十分な同期精度が得られなくなるといった問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、送信データの送信が実際に行われた時刻と、送信データに付加された送信時刻情報が示す送信時刻とを一致させることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の無線通信装置では、まず送信時刻決定手段が、データを無線送信する時刻であるデータ送信時刻を決定し、生成手段が、データ送信時刻を示す送信時刻情報とデータ送信時刻に送信されるデータとから構成される送信時刻付加データに基づいて、メッセージ認証符号もしくは電子署名を生成する。そして送信手段が、送信時刻決定手段により決定されたデータ送信時刻になると、生成手段により生成されたメッセージ認証符号もしくは電子署名と送信時刻付加データとから構成されるデータを無線送信する。
【0010】
このように構成された無線通信装置では、送信手段がデータを送信する時刻(データ送信時刻)を予め決定してから、送信時刻情報が付加されたデータ(送信時刻付加データ)に基づいて、メッセージ認証符号もしくは電子署名を生成し、その後に、データ送信時刻になると、メッセージ認証符号もしくは電子署名と送信時刻付加データとから構成されるデータを無線送信する。このため、当該無線通信装置が実際にデータを無線送信した時刻と、送信したデータに含まれている送信時刻情報が示すデータ送信時刻とを一致させることができる。
【0011】
したがって、当該無線通信装置から送信されたデータを受信した無線通信装置は、自身の時計の時刻を、受信したデータ内の送信時刻情報が示すデータ送信時刻に同期させることにより、当該無線通信装置との間での同期精度を向上させることができる。
【0012】
また、請求項1に記載の無線通信装置において、請求項2に記載のように、生成時間算出手段が、送信時刻付加データのデータ長に基づいて、生成手段がメッセージ認証符号もしくは電子署名を生成するのに要する時間である生成所要時間を算出し、送信時刻決定手段が、生成時間算出手段により算出された生成所要時間に基づいて、生成手段がメッセージ認証符号もしくは電子署名の生成を完了する時刻である生成完了時刻より後になるように、データ送信時刻を決定するようにするとよい。
【0013】
すなわち、請求項2に記載の無線通信装置では、送信時刻付加データのデータ長に基づいて、メッセージ認証符号もしくは電子署名の生成を完了する時刻(生成完了時刻)を予測して、この生成完了時刻より後にデータ送信時刻を設定する。このため、送信時刻決定手段で決定したデータ送信時刻より後にメッセージ認証符号もしくは電子署名の生成が完了してしまうという事態が発生し難くなる。これにより、送信するデータに含まれている送信時刻情報が示すデータ送信時刻より後になって当該無線通信装置が実際にデータを送信してしまい、当該無線通信装置が実際に無線送信した時刻と、送信したデータに含まれている送信時刻情報が示すデータ送信時刻とが一致しなくなってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の無線通信装置において、当該無線通信装置における直近のデータ送信についてのデータ送信時刻である直近データ送信時刻と、直近データ送信時刻以降の少なくとも1つ以上のデータ送信についてのデータ送信時刻である次回データ送信時刻とが予め設定されている場合には、送信時刻決定手段は、直近データ送信時刻が生成完了時刻よりも前である場合に、請求項3に記載のように、生成完了時刻後の次回データ送信時刻をデータ送信時刻とするようにしてもよいし、請求項4に記載のように、生成完了時刻より後であり、且つ、生成完了時刻後で最も早い次回データ送信時刻より前となる時刻をデータ送信時刻とするにしてもよい。
【0015】
これにより、請求項3に記載の無線通信装置では、直近データ送信時刻をデータ送信時刻として決定することができない場合に、送信時刻が既に設定されている次回データ送信時刻を用いることができるので、データ送信時刻を容易に決定することができる。また、請求項4に記載の無線通信装置では、直近データ送信時刻をデータ送信時刻として決定することができない場合に、次回データ送信時刻になるまで待機することなく、請求項3に記載の無線通信装置よりも早い時点でデータを送信することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の無線通信システムは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信装置で構成されることを特徴とする。
このように構成された無線通信システムによれば、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信装置と同様の効果を得ることができ、無線通信システムの同期タイミングを保護できる安全性の高い無線通信システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】無線通信システム1の構成及び動作の概要を示す説明図である。
【図2】通信装置2A,2B,2C,…が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】フレーム送信処理を示すフローチャートである。
【図4】フレーム検証処理を示すフローチャートである。
【図5】予測送信時刻tsの設定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】別の実施形態における予測送信時刻tsの設定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
図1は、無線通信システム1の構成及び動作の概要を示す説明図である。
本実施形態の無線通信システム1は、図1(a)に示すように、路上機として自動車の走行路付近に分散して設置される複数の通信装置2Aと、自動車に搭載され、路上機や他の車両との間で無線通信を行う通信装置2B,2C,…とから構成されている。
【0019】
通信装置2Aは、交通情報等の各種情報を周囲の自動車に定期的に送信する定期送信機能を有し、通信装置2B,2C,…は、自動車に搭載された制御装置からの送信要求を受けて、自車両の状態等を路上機や他の車両に送信するランダム送信機能を有する。
【0020】
そして、これら各通信装置2A,2B,2C,…間の通信には、全て共通の通信チャンネルが使用され、通信装置2B,2C,…がランダム送信する際には、CSMA方式のアクセス制御によって通信チャンネルが空いているか否かを判断し、通信チャンネルが空いているときにデータ送信を開始する。
【0021】
また通信装置2Aは、定期送信を行うが、この定期送信の周期は、予め決められており、通信装置2Aには、定期送信一周期内のどの期間を定期送信に利用するかが割り当てられている。
【0022】
そして通信装置2Aは、その割り当てられた定期送信期間を、定期送信によって他の通信装置2B,2C,…に通知し、他の通信装置2B,2C,…は、その通知された定期送信期間中は、ランダム送信を禁止する。
【0023】
つまり本実施形態では、定期送信機能を有する通信装置2Aが、図1(b)に示すように、送信時刻データと定期送信データとMAC(Message Authentication code)もしくは電子署名とから構成されるフレームを、周囲に定期送信する。なお、上記送信時刻データは、通信装置2Aがフレームを送信する時刻を示す情報である。また上記定期送信データは、交通情報等の各種情報と、定期送信期間の開始タイミングと定期送信期間の長さ(期間長)を表す定期送信期間情報とから構成される。また上記MACもしくは電子署名は、送信時刻データと定期送信データとから構成される送信メッセージを元データとして生成されたものである。
【0024】
そして、ランダム送信機能を有する他の通信装置2B,2C,…は、通信装置2Aが送信したフレームを受けると、そのフレームに含まれている定期送信期間情報に基づき、図1(c)に示すように、通信装置2Aの定期送信期間内にランダム送信を開始してしまうことのないよう自らのランダム送信禁止期間を設定し、そのランダム送信禁止期間以外の期間(ランダム送信期間)内に、ランダム送信を行う。
【0025】
図2(a)は、通信装置2Aが実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
通信装置2Aは、図2(a)に示すように、データ入力部11、データ処理部12、MAC・電子署名処理部13、及び送信部14を備える。
【0026】
これらのうちデータ入力部11は、通信装置2Aの外部に設置された情報局と有線または無線でデータ入力可能に構成されており、この情報局から、交通情報等の各種情報を示すデータを入力して、データ処理部12に送信する。
【0027】
またデータ処理部12は、データ入力部11から受信したデータに送信時刻データを付加して送信メッセージを生成し、生成した送信メッセージをMAC・電子署名処理部13に送信するともに、MAC・電子署名処理部13から受信したMACもしくは電子署名を送信メッセージに付加してフレームを生成し、生成したフレームを送信部14に送信する。なおデータ処理部12は、内部クロックをカウントすることにより時刻を計時する時計(不図示)を備え、この時計を用いて、送信時刻データが示す送信時刻を決定する。
【0028】
またMAC・電子署名処理部13は、データ処理部12から受信した送信メッセージを元データとしてMACもしくは電子署名を生成し、生成したMACもしくは電子署名をデータ処理部12に送信する。
【0029】
また送信部14は、データ処理部12からフレームを受信し、このフレームを無線で送信する。
なお通信装置2Aは、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、上記のデータ入力部11、データ処理部12、MAC・電子署名処理部13、及び送信部14に相当する処理を実行する。
【0030】
図2(b)は、通信装置2B,2C,…が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
通信装置2B,2C,…は、図2(b)に示すように、データ入出力部21、データ処理部22、MAC・電子署名処理部23、送受信部24、同期処理部25、及びデータ記憶部26を備える。
【0031】
これらのうちデータ入出力部21は、自動車に搭載された制御装置から送信データを入力して、データ処理部22に送信するとともに、データ処理部22から制御装置への送信データ(制御データ)を受信した場合に、制御装置に制御データを送信する。
【0032】
またデータ処理部22は、データ入出力部21からデータを受信した場合には、受信したデータにヘッダ等の付加情報を付加して送信メッセージを生成し、生成した送信メッセージをMAC・電子署名処理部23に送信するともに、MAC・電子署名処理部23から受信したMACもしくは電子署名を送信メッセージに付加してフレームを生成し、生成したフレームを送受信部24に送信する。
【0033】
さらにデータ処理部22は、送受信部24からフレームを受信した場合には、受信フレームと検証命令からなる検証依頼メッセージをMAC・電子署名処理部23に送信し、検証結果(受理もしくは棄却)を受信するとともに、データ処理部22がMAC・電子署名処理部から検証結果として受理を受信した場合に、受信したフレームに含まれているメッセージをデータ記憶部26に記憶する。
【0034】
さらにデータ処理部22は、制御データを制御装置に送信する必要がある場合に、データ記憶部26からメッセージを受信し、受信したメッセージより制御データを生成し、生成した制御データをデータ入出力部21へ送信する。
【0035】
またMAC・電子署名処理部23は、データ処理部22から受信した検証依頼メッセージの受信フレームのMACもしくは電子署名を検証し、検証結果(受理もしくは棄却)をデータ処理部22に送信する。
【0036】
また送受信部24は、データ処理部22からフレームを受信した場合には、このフレームを無線で送信するとともに、フレームを無線受信した場合には、このフレームをデータ処理部22に送信する。
【0037】
また同期処理部25は、内部クロックをカウントすることにより時刻を計時する時計(不図示)を備えている。そして同期処理部25は、データ処理部22がMAC・電子署名処理部から検証結果として受理を受信した場合に、受信したフレームに付加されている送信時刻データが示す時刻に、時計を同期させる。
【0038】
またデータ記憶部26は、データ処理部22がMAC・電子署名処理部から検証結果として受理を受信した場合に、受信したフレームに含まれているメッセージを記憶するとともに、記憶したメッセージをデータ処理部22に送信する。
【0039】
なお通信装置2B,2C,…は、CPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、上記のデータ入出力部21、データ処理部22、MAC・電子署名処理部23、送受信部24、同期処理部25、及びデータ記憶部26に相当する処理を実行する。
【0040】
このように構成された無線通信システム1において、通信装置2Aは、フレームを生成して送信するフレーム送信処理を実行し、通信装置2B,2C,…は、受信したフレームを検証するフレーム検証処理を実行する。
【0041】
図3はフレーム送信処理を示すフローチャート、図4はフレーム検証処理を示すフローチャートである。図5は、予測送信時刻tsの設定方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0042】
次に、通信装置2Aが実行するフレーム送信処理の手順を図3を用いて説明する。このフレーム送信処理は、通信装置2AのCPUが起動している間に繰り返し実行される処理である。
【0043】
このフレーム送信処理が実行されると、通信装置2Aは、まずS10にて、通信装置2Aの外部からデータが入力したか否かを判断する。ここで、データが入力していない場合には(S10:NO)、フレーム送信処理を一旦終了する。
【0044】
一方、データが入力した場合には(S10:YES)、S20にて、送信順指示値iを1に設定し、S30にて、現在時刻t0を、データ処理部12が備える上記時計から取得する。その後S40にて、未来送信時刻tiを取得する。この未来送信時刻tiは、現在時刻t0を基準として、i番目にフレームを送信する時刻を示す。本実施形態において、通信装置2Aでは、定期送信期間の開始から予め設定された固定時間tf(図5を参照)が経過した後に1回のみフレームを送信するように、1回の定期送信期間内における送信時刻が設定されている。すなわち、通信装置2Aがフレーム送信する時刻は既に決定されている。そして、定期送信の周期をTpとすると、未来送信時刻tiは下式(1)で表される。なお、iは1以上の整数である。
【0045】
ti = t1 + Tp×(i−1) ・・・(1)
そしてS50にて、未来送信時刻tiと現在時刻t0との差を送信猶予時間Δtとして算出し、さらにS60にて、S10の処理で入力したと判断されたデータと、未来送信時刻tiを示す情報と、定期送信期間情報とから構成される送信メッセージを元データとしてMACもしくは電子署名を生成するのに要する時間(以下、MAC・電子署名生成処理時間tmという)を、上記元データのデータ長に基づいて算出する。
【0046】
その後S70にて、送信猶予時間ΔtがMAC・電子署名生成処理時間tmより長いか否かを判断する。ここで、送信猶予時間ΔtがMAC・電子署名生成処理時間tmより長くない場合には(S70:NO)、S80にて、送信順指示値iをインクリメント(1加算)して、S30に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0047】
一方、送信猶予時間ΔtがMAC・電子署名生成処理時間tmより長い場合には(S70:YES)、S90にて、予測送信時刻tsを未来送信時刻tiに設定する。その後S100にて、S10の処理で入力したと判断されたデータと、予測送信時刻tsを示す予測送信時刻情報と、定期送信期間情報とから構成される送信メッセージを元データとしてMACもしくは電子署名を生成する。そしてS110にて、予測送信時刻情報と、S10の処理で入力したと判断されたデータと、定期送信期間情報と、S100の処理で生成されたMACもしくは電子署名とから構成されるフレームを生成する。
【0048】
その後S120にて、現在時刻が予測送信時刻tsであるか否かを判断する。ここで、現在時刻が予測送信時刻tsでない場合には(S120:NO)、S120の処理を繰り返し、現在時刻が予測送信時刻tsとなるまで待機する。一方、現在時刻が予測送信時刻tsである場合には(S120:YES)、S130にて、S110の処理で生成されたフレームを無線送信して、フレーム送信処理を一旦終了する。
【0049】
次に、通信装置2B,2C,…が実行するフレーム検証処理の手順を図4を用いて説明する。このフレーム検証処理は、通信装置2B,2C,…のCPUが起動している間に繰り返し実行される処理である。
【0050】
このフレーム検証処理が実行されると、通信装置2B,2C,…は、まずS210にて、通信装置2Aからフレームを受信したか否かを判断する。ここで、フレームを受信していない場合には(S210:NO)、フレーム検証処理を一旦終了する。
【0051】
一方、フレームを受信した場合には(S210:YES)、S220にて、S210の処理で受信したと判断されたフレームから、送信メッセージ(すなわち、図1(b)に示す送信時刻データと定期送信データ)とMACもしくは電子署名を抽出する。さらにS230にて、受信メッセージのMACもしくは電子署名を検証する。
【0052】
そしてS240にて、S230の検証が受理されたか否かで処理を分ける。S230の検証を棄却した場合(S240:NO)、S250にて、S210の処理で受信したと判断されたフレームを廃棄して、フレーム検証処理を一旦終了する。
【0053】
一方、S230の検証を受理した場合(S240:YES)、S260にて、受信したフレームに含まれているメッセージを記憶し、さらにS270にて、S220の処理で抽出された送信時刻データが示す時刻に、同期処理部25が備える時計を同期させ、フレーム検証処理を一旦終了する。
【0054】
このように構成された無線通信システム1の通信装置2Aでは、まず、フレームを無線送信する予測送信時刻tsを決定し(S30〜S90)、入力データと予測送信時刻情報と定期送信期間情報とから構成される送信メッセージに基づいて、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名を生成する(S100)。そして、予測送信時刻tsになると(S120:YES)、送信メッセージとメッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名とから構成されるフレームを無線送信する(S130)。
【0055】
このように構成された通信装置2Aでは、フレームを送信する時刻を予め決定してから、予測送信時刻情報が付加されたデータ(送信メッセージ)に基づいて、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名を生成し、その後に、予測送信時刻tsになると、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名と送信メッセージとから構成されるフレームを無線送信する。このため、通信装置2Aが実際にフレームを無線送信した時刻と、送信したフレームに含まれている予測送信時刻情報が示す予測送信時刻tsとを一致させることができる。
【0056】
したがって、通信装置2Aから送信されたデータを受信した通信装置2B,2C,…は、自身の時計の時刻を、受信したデータ内の予測送信時刻情報が示す時刻に同期させることにより、通信装置2Aとの間での同期精度を向上させることができる。
【0057】
また、送信メッセージのデータ長に基づいて、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名を生成するのに要する時間(MAC・電子署名生成処理時間tm)を算出し(S60)、メッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名の生成を完了する時刻(以下、認証符号・電子署名生成完了時刻ともいう)より後になるように予測送信時刻tsを決定する(S30〜S90)。
【0058】
このため、決定した予測送信時刻tsより後にメッセージ認証符号(MAC)もしくは電子署名の生成が完了してしまうという事態が発生し難くなる。これにより、送信するフレームに含まれている予測送信時刻情報が示す予測送信時刻tsより後になって通信装置2Aが実際フレームを送信してしまい、通信装置2Aが実際に無線送信した時刻と、送信したフレームに含まれている予測送信時刻情報が示す予測送信時刻tsとが一致しなくなってしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0059】
また、通信装置2Aがフレーム送信する時刻は既に決定されており、通信装置2Aにおける直近のデータ送信時刻をt1とすると(図5を参照)、以降のデータ送信時刻は、上式(1)で予め設定されている。そして、認証符号・電子署名生成完了時刻tc(図5を参照)後で最も早いデータ送信時刻を予測送信時刻tsとする(S30〜S90)。例えば、図5に示すように、直近のデータ送信時刻t1は認証符号・電子署名生成完了時刻tcより前になる場合には、次回のデータ送信時刻として設定されている時刻t2(=t1+Tp)を予測送信時刻tsとする。
【0060】
これにより、通信装置2Aにおける直近のデータ送信時刻を予測送信時刻tsとして決定することができない場合に、時刻が既に設定されているデータ送信時刻を用いることができるので、予測送信時刻tsを容易に決定することができる。
【0061】
また無線通信システム1は、無線通信システムの同期タイミングを保護できる安全性の高い無線通信システムを実現できる。
以上説明した実施形態において、通信装置2Aは本発明における無線通信装置、S30〜S90の処理は本発明における送信時刻決定手段、S100の処理は本発明における生成手段、S120およびS130の処理は本発明における送信手段、送信メッセージは本発明における送信時刻付加データである。
【0062】
また、S60の処理は本発明における生成時間算出手段、MAC・電子署名生成処理時間tmは本発明における生成所要時間、データ送信時刻t1は本発明における直近データ送信時刻、データ送信時刻t2は本発明における次回データ送信時刻である。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、一定周期毎に繰り返される定期送信期間内にデータを無線送信する装置に本発明を適用したものを示したが、これに限定されるものではなく、送信時刻を含むデータを無線送信する無線通信装置であればよい。
【0064】
また上記実施形態では、定期送信期間内に1回のみデータを無線送信するものを示したが、定期送信期間内に複数回データを無線送信する装置であっても、本発明を適用することができる。例えば、図6(a)に示すように、定期送信期間内で時刻t1,t2,t3にデータを送信するように予め設定されている場合で、直近のデータ送信時刻t1が認証符号・電子署名生成完了時刻tcより前になるときには、次回のデータ送信時刻として設定されている時刻t2を予測送信時刻tsとするとよい。
【0065】
或いは、図6(b)に示すように、例えば、定期送信期間内で時刻t1,t2にデータを送信するように予め設定され、且つ、時刻t1と時刻t2との間の間隔がデータ送信時間より長い場合において、直近のデータ送信時刻t1が認証符号・電子署名生成完了時刻tcより前になるときには、認証符号・電子署名生成完了時刻tcより後であり、且つ、データ送信時刻t2より前となる時刻t1´を予測送信時刻tsとするとよい。これにより、データ送信時刻t2になるまで待機することなく、データ送信時刻t2よりも早い時点でデータを送信することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…無線通信システム、2A,2B,2C…通信装置、11…データ入力部、12…データ処理部、13…MAC・電子署名処理部、14…送信部、21…データ入出力部、22…データ処理部、23…MAC・電子署名処理部、24…送受信部、25…同期処理部、26…データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを無線送信する時刻であるデータ送信時刻を決定する送信時刻決定手段と、
前記データ送信時刻を示す送信時刻情報と前記データ送信時刻に送信されるデータとから構成される送信時刻付加データに基づいて、メッセージ認証符号もしくは電子署名を生成する生成手段と、
前記送信時刻決定手段により決定された前記データ送信時刻になると、前記生成手段により生成された前記メッセージ認証符号もしくは電子署名と前記送信時刻付加データとから構成されるデータを無線送信する送信手段とを備える
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記送信時刻付加データのデータ長に基づいて、前記生成手段が前記メッセージ認証符号もしくは電子署名を生成するのに要する時間である生成所要時間を算出する生成時間算出手段を備え、
前記送信時刻決定手段は、
前記生成時間算出手段により算出された前記生成所要時間に基づいて、前記生成手段が前記メッセージ認証符号もしくは電子署名の生成を完了する時刻である生成完了時刻より後になるように、前記データ送信時刻を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
当該無線通信装置における直近のデータ送信についての前記データ送信時刻である直近データ送信時刻と、前記直近データ送信時刻以降の少なくとも1つ以上のデータ送信についての前記データ送信時刻である次回データ送信時刻とが予め設定されており、
前記送信時刻決定手段は、
前記直近データ送信時刻が前記生成完了時刻よりも前である場合には、前記生成完了時刻後の前記次回データ送信時刻を前記データ送信時刻とする
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
当該無線通信装置における直近のデータ送信についての前記データ送信時刻である直近データ送信時刻と、前記直近データ送信時刻以降の少なくとも1つ以上のデータ送信についての前記データ送信時刻である次回データ送信時刻とが予め設定されており、
前記送信時刻決定手段は、
前記直近データ送信時刻が前記生成完了時刻よりも前である場合には、前記生成完了時刻より後であり、且つ、前記生成完了時刻後で最も早い前記次回データ送信時刻より前となる時刻を前記データ送信時刻とする
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無線通信装置で構成されることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175353(P2012−175353A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34759(P2011−34759)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】