説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重され、再送を行う伝送において、パケット分離を行う最尤検出における状態数を増やさずに、常に一定のパケット多重数を確保しつつ、最尤検出におけるメトリックに基づいて再送パケットを合成する。
【解決手段】再送パケットを合成してこれらのパケットを分離する無線通信装置10が、すでに正しく復号されたパケットのビット系列を用いて変調シンボルを生成する変調シンボル生成部16と、変調シンボルを用いて最尤検出における状態数を削減し、受信信号から最尤検出によりビットLLRを算出する干渉除去MUD部14と、ビットLLRに対してチャネル復号を行い、パケットのビット系列を出力するチャネル復号部15Eとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数ユーザの再送パケットを同時受信する伝送方式における無線通信装置及び無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信の上り回線パケット伝送において、基地局が複数ユーザのパケットを同時に受信し、それぞれのパケットを分離(検出)するマルチユーザ検出(Multiuser Detection:MUD)が検討されている。また、基地局(受信機)において検出されたパケットに判定誤りが生じた際には、再送制御により移動局(送信機)からパケットが再送される。再送されたパケットは再度誤り検出され、誤りなく受信されるか、あるいは最大再送回数まで再送が続けられる。ここで、上記のように同時に同一周波数チャネルを用いて複数ユーザのパケットを無線区間で多重する方法をパケット多重と呼ぶことにする。パケット多重において再送制御時におけるMUDでは、初送及び再送されたパケットに対応する受信信号を用いて、基地局は再送で受信されたパケットを検出する。なお、各パケットは誤り訂正符号によりチャネル符号化されているものとする。
【0003】
MUDには線形と非線形があり、線形MUDとして同一の多重パケットをパケット多重数と同じ回数再送し、受信機で線形フィルタにより多重パケットを分離する方法が提案されており、下記の非特許文献1に記載されている。一方、非線形MUDとしては、最尤検出(Maximum Likelihood Detection:MLD)に基づく分離法が提案されており、下記の非特許文献2から非特許文献4に記載されている。また、非線形MUDは線形MUDより優れた伝送特性を実現できることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. K. Tsatsanis, R. Zhang, and S. Banerjee, “Network-assisted diversity for random access wireless networks,” IEEE Trans. Signal Processing, vol.48, March 2000, pp.702-711.
【非特許文献2】R. Nagareda, K. Fukawa, and H. Suzuki, “OFDM mobile packet transmission system with multiuser detection and metric combining ARQ,” IEICE Trans. Commun., vol.E88-B, no.1, Jan. 2005, pp.106-114.
【非特許文献3】R. Nagareda, K. Fukawa and H. Suzuki, “Efficient OFDM mobile radio packet system employing LLR combining multiuser detection for ARQ with adaptive modulation and coding scheme,” IEICE Trans. Commun., vol.E90-B, no.6, June 2007, pp.1444-1453.
【非特許文献4】宗 秀哉,府川 和彦,須山 聡,鈴木 博,“再送制御とスケジューリングを行うOFDMA上り回線におけるハイブリッド合成型マルチユーザ検出,”信学技報,RCS2010-65,2010年7月.
【0005】
非特許文献2に記載されているメトリック合成型MUD(MC-MUD)では、MLDにおける受信信号とレプリカ信号との2乗ユークリッド距離をメトリックとし、受信機がメトリックを用いて再送パケットを合成する。最尤推定の観点で最適なMUDでは再送回数に対してMLDの状態数が指数的に増加してしまうため、MC-MUDでは計算量を削減するために全ての多重パケットが正常受信されるまで同一の多重パケットが再送されることを前提とする。そのため、すでに受信が成功しているパケットまで再送する必要があり、スループットが低下するという問題があった。
【0006】
この問題を解決するため、符号化された各ビットの対数尤度比(Log-likelihood Ratio:LLR)を用いて受信機でパケット合成を行うLLR合成型MUD(LC-MUD)が非特許文献3で提案されている。LC-MUDでは同一の多重パケットの再送が不要となり、受信が成功したパケットが発生した際に、次の再送時において別のパケットを多重することが可能となるため、MC-MUDと比較して高SNR領域ではスループットが向上する。一方、低SNR領域では、ビットLLRによるパケット合成は準最適な方法であるため、LC-MUDはMC-MUDより特性が劣るという問題がある。
【0007】
さらに、その欠点を補うため、メトリック合成を基本としてパケット合成を行うが、受信が成功したパケットが発生した際に新たに多重されたパケットに対してビットLLRを用いて受信機がパケット合成を行うハイブリッド合成型MUD(HC-MUD)も非特許文献4で提案されている。HC-MUDは、高SNR領域においてLC-MUDと同等のスループット特性を実現できるが、低SNR領域においてMC-MUDより特性が劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術であるMC-MUD、LC-MUD、HC-MUDでは、高SNR領域においてはLC-MUDとHC-MUDが最も優れたスループット特性を実現できるが、低SNR領域においてはMC-MUDが最も優れたスループット特性を実現しており、全SNR領域において常に優れた特性を実現できる方法は存在しないという問題があった。これは従来技術がMLDにおける状態数を増やさない前提で検討されたためであり、最尤推定の観点で最適なMUDではないためである。最適なMUDでは、全SNR領域において常に優れた特性を実現できるが、一方、再送回数に対してMLDの状態数が指数的に増加してしまうため、計算量が膨大になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重され、再送制御を行う無線伝送システムにおいて、受信が成功したパケットが発生した際に、そのパケットの情報を用いてMLDにおける状態数を減らし、新たに多重されたパケットに対応して削減された状態数を増やすことで、計算量を抑えつつ、最適なMUDを実現できる無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題点を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重される無線伝送システムで使用され、多重されたパケットのうち誤りがあったパケットを複数回受信して、多重されたパケットを分離する無線通信装置であって、すでに正しく復号されたパケットのビット系列を用いて変調シンボルを生成する変調シンボル生成部と、変調シンボル生成部で生成された変調シンボルを用いて最尤検出における状態数を削減し、パケットを表す受信信号から最尤検出によりビットLLR(対数尤度比)を算出する干渉除去MUD(マルチユーザ検出)部と、干渉除去MUD部において計算されたビットLLRに対してチャネル復号を行い、パケットのビット系列を出力するチャネル復号部とを備え、チャネル復号部で正しく復号されたパケットのビット系列が変調シンボル生成部に供給されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成により、同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重される無線伝送システムにおいて、誤りがあったパケットを複数回受信して、多重されたパケットを分離する際に、変調シンボル生成部において生成された変調シンボルを干渉除去MUD部で利用することで、多重されたパケットの受信信号からビットLLRを算出する際に最尤検出における状態数を削減できる。
【0012】
本発明に係る無線通信装置において、干渉除去MUD部は、最尤検出の状態に合わせて変調信号を生成する候補信号変調部と、候補信号変調部で生成された変調信号を用いて受信信号のレプリカ信号を生成するレプリカ生成部と、レプリカ生成部で生成されたレプリカ信号と受信信号との2乗ユークリッド距離であるメトリックを計算するメトリック算出部と、メトリック算出部で計算されたメトリックを、同一パケットを受信する度に最尤検出の状態毎に蓄積して蓄積メトリックを計算するとともに、変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減するメトリック蓄積部と、メトリック蓄積部で計算された蓄積メトリックを用いてビットLLRを計算するビットLLR算出部とを備えることが望ましい。この場合には、多重されたパケットを受信する度に最尤検出の状態毎にメトリックが蓄積されることでパケット合成が行われ、パケットの検出性能が向上する。また、状態毎にメトリックを蓄積する際に、受信が成功したパケットが発生した場合には、そのパケットの変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減できる。
【0013】
また、演算量、および蓄積メトリック削減のために、累積メトリックの大きいもの(すなわち、正しいパスである確率が低いもの)については削除し、M個の値のみを保存する以下の文献の方法を適用してもよい。
C.-F. Lin and J. B. Anderson, “M-algorithm decoding of channel convolutional codes,” presented at 20th Annu. Conf. Inform. Sci. Syst., Princeton, NJ, Mar. 19-21, 1986.
【0014】
さらに、この文献に記載された方法を適用する際に、LLR算出部で計算が不可能とならないように、パスを選択するか、以下の文献に示すように,別の値で代用する方法を適用する必要がある。
K. Higuchi, H. Kawai, N. Maeda, M. Sawahashi, T. Itoh, Y. Kakura, A. Ushirokawa, and H. Seki, “Likelihood Function for QRM-MLD Suitable for Soft-Decision Turbo Decoding and Its Performance for OFCDM MIMO Multiplexing in Multipath Fading Channel,” in Proc. IEEE 15th International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications, PIMRC 2004, Barcelona, Spain, 5-8 Sept. 2004, pp.1142-1148.
【0015】
また、本発明に係る無線通信装置は、ビットLLR蓄積部をさらに有し、干渉除去MUD部で計算されたビットLLRがビットLLR蓄積部に入力され、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する毎にビットLLRがビットLLR蓄積部に蓄積され、ビットLLR蓄積部は蓄積されたビットLLRから蓄積ビットLLRを生成し、蓄積ビットLLRが、チャネル復号部に入力されることが望ましい。この場合には、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する際に、ビットLLRが蓄積されることでパケット合成が行われ、誤り訂正符号の符号化率が低下することでパケットの検出性能が向上する。なお、同一のパンクチャリングが適用されたパケットは、同じビット系列を有するので、同一のパケットとして扱うことができるため、メトリックによりパケット合成が行われ、パケットの検出性能が向上する。
【0016】
また、異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する際で、チャネル復号部でのパケット復号後に誤りが検出されない場合には、この復号結果であるパケットのビット系列を用いて変調シンボル生成部が変調シンボルを生成することによって、干渉除去MUD部はそのパケットの変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減する。これにより、同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重された場合、別のパケットを再度復号することにより、特性を向上できる。
【0017】
また、本発明に係る無線通信装置は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を行うために、GI(ガードインターバル除去部と、直並列変換部と、フーリエ変換部とをさらに有し、GI除去部は受信信号におけるGI成分を除去し、GIが除去された受信信号は直並列変換部に入力され、直並列変換部はGIが除去された受信信号を直並列変換した後、フーリエ変換部に入力し、フーリエ変換部は直並列変換部の出力に対してフーリエ変換を行うことで各サブキャリアにおけるサブキャリア受信信号を計算し、干渉除去MUD部は、各サブキャリアについて、サブキャリア受信信号から最尤検出によりビットLLRを算出することが望ましい。この場合には、OFDMでパケットが多重されるシステムにおいて、受信信号をOFDM復調し、その後、各サブキャリアにおいて多重されたパケットを干渉除去MUD部により検出する処理が行われる。これにより、計算量を抑えつつ、再送されたパケットを最適に合成できる。
【0018】
上記の問題点を解決するため、本発明に係る無線通信方法は、同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが多重される伝送システムで使用され、多重されたパケットのうち誤りがあったパケットを複数回受信して、多重されたパケットを分離する無線通信方法であって、すでに正しく復号されたパケットのビット系列を用いて、変調シンボル生成部により変調シンボルを生成する変調シンボル生成ステップと、変調シンボル生成ステップで生成された変調シンボルを用いて最尤検出における状態数を削減し、パケットを表す受信信号から最尤検出によりビットLLR(対数尤度比)を算出する干渉除去MUD(マルチユーザ検出)ステップと、干渉除去MUDステップにおいて計算されたビットLLRに対してチャネル復号を行い、パケットのビット系列を出力するチャネル復号ステップと、チャネル復号ステップで正しく復号されたパケットのビット系列を変調シンボル生成部に供給するステップとを備えたことを特徴とする。
【0019】
上記の方法により、同一時間、同一周波数において送信された複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重される無線伝送システムにおいて、誤りがあったパケットを複数回受信して、多重されたパケットを分離する際に、変調シンボル生成ステップにおいて生成された変調シンボルを干渉除去MUDステップで利用することで、多重されたパケットの受信信号からビットLLRを算出する際に最尤検出における状態数を削減できる。
【0020】
本発明に係る無線通信方法において、干渉除去MUDステップは、最尤検出の状態に合わせて変調信号を生成する候補信号変調ステップと、候補信号変調ステップで生成された変調信号を用いて受信信号のレプリカ信号を生成するレプリカ生成ステップと、レプリカ生成ステップで生成されたレプリカ信号と受信信号との2乗ユークリッド距離であるメトリックを計算するメトリック算出ステップと、メトリック算出ステップで計算されたメトリックを、同一パケットを受信する度に最尤検出の状態毎に蓄積して蓄積メトリックを計算するとともに、変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減するメトリック蓄積ステップと、メトリック蓄積ステップで計算された蓄積メトリックを用いてビットLLRを計算するビットLLR算出ステップとを備えることが望ましい。この場合には、多重されたパケットを受信する度に最尤検出の状態毎にメトリックが蓄積されることでパケット合成が行われ、パケットの検出性能が向上する。また、状態毎にメトリックを蓄積する際に、受信が成功したパケットが発生した場合には、そのパケットの変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減できる。
【0021】
また、本発明に係る無線通信方法は、干渉除去MUDステップで計算されたビットLLRをビットLLR蓄積部に入力し、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する毎にビットLLRをビットLLR蓄積部に蓄積し、ビットLLR蓄積部に蓄積されたビットLLRから蓄積ビットLLRを生成し、蓄積ビットLLRをチャネル復号ステップに供給することが望ましい。この場合には、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する際に、ビットLLRが蓄積されることでパケット合成が行われ、誤り訂正符号の符号化率が低下することでパケットの検出性能が向上する。なお、同一のパンクチャリングが適用されたパケットは、同じビット系列を有するので、同一のパケットとして扱うことができるため、メトリックによりパケット合成が行われ、パケットの検出性能が向上する。
【0022】
また、本発明に係る無線通信方法は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を行うために、GI(ガードインターバル)除去ステップと、直並列変換ステップと、フーリエ変換ステップとをさらに有し、GI除去ステップは受信信号におけるGI成分を除去し、直並列変換ステップはGIが除去された受信信号を直並列変換し、フーリエ変換ステップは直並列変換ステップの出力に対してフーリエ変換を行うことで各サブキャリアにおけるサブキャリア受信信号を計算し、前記干渉除去MUDステップは、各サブキャリアについて、サブキャリア受信信号から最尤検出によりビットLLRを算出することが望ましい。この場合には、OFDMでパケットが多重されるシステムにおいて、受信信号をOFDM復調し、その後、各サブキャリアにおいて多重されたパケットを干渉除去MUDステップにより検出する処理が行われる。これにより、計算量を抑えつつ、再送されたパケットを最適に合成できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る無線通信装置及び無線通信方法によれば、同一時間、同一周波数においてチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重され、再送制御を行う無線伝送システムにおいて、最尤検出のメトリックを用いてパケットを合成することで伝送特性を改善でき、さらに、すでに正しく復号されたパケットから生成された変調シンボルを用いて、最尤検出における状態数を減らすことで、計算量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るOFDM伝送における無線通信装置の構成図である。
【図2】第1及び第2実施形態に係る無線通信装置の干渉除去MUD部の構成図である。
【図3】第1及び第2実施形態に係るOFDM伝送における無線通信装置の変調シンボル生成部の構成図である。
【図4】本発明で想定する送信局の構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るOFDM伝送における無線通信装置の構成図である。
【図6】本発明の適用効果を示すスループット特性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係るOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送における無線通信装置の構成について説明する。図1はOFDM伝送における無線通信装置10のハードウェア構成図である。図1に示された無線通信装置10は、移動体通信システムでの基地局であってもよい。あるいは、無線通信装置10は、無線LAN(local area network)またはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)でのアクセスポイントであってもよい。図1は、無線通信装置10のうち、上り信号の受信に係る要素を示す。
【0027】
無線通信装置10は、物理的には、図1に示すように、GI(ガードインターバル)除去部11と、直並列変換部12と、フーリエ変換部13と、干渉除去MUD(マルチユーザ検出)部14と、複数の受信ビット算出部15と、変調シンボル生成部16とを備える。各受信ビット算出部15は、並直列変換部15Aと、デインターリーブ部15Bと、デパンクチャ部15C、チャネル復号部15E、誤り検出部15Fとを備える。
【0028】
図2は干渉除去MUD部14の構成図である。干渉除去MUD部14は、レプリカ減算部21と、メトリック算出部22と、候補信号変調部23と、レプリカ生成部24と、メトリック蓄積部25、ビットLLR算出部26とを備える。また、図3はOFDM伝送における本実施形態の変調シンボル生成部16の構成図である。変調シンボル生成部16は、チャネル符号化部31と、パンクチャ部32と、インターリーブ部33と、シンボル生成部34と、直並列変換部35とを備える。
【0029】
以下では、サブキャリア数NのOFDM伝送において、複数(L台)の送信局から送信されるパケットが同一周波数、同一時間に多重され、受信局である無線通信装置10においてパケットを分離する無線通信システムを想定する。なお、多重されたパケットは、理想的に時間及び周波数の同期は確立されているとする。
【0030】
はじめに、以下の説明で想定する送信局の構成について説明する。図4は送信局40を示す。送信局40は、例えば移動体通信システムでの移動局、または無線LANもしくはWiMAXでの端末である。図4に示す送信局40では、入力された情報ビット系列に対して巡回冗長検査(CRC)符号化部41でCRC符号化が行われ、その出力に対してチャネル符号化部42でチャネル符号化が行われる。符号化されたビット系列は符号化率に合わせてパンクチャ部43でパンクチャリングされた後、インターリーブ部44でインターリーブされる。さらに、インターリーブされた符号化されたビット系列は信号変調部45で変調信号に変換され、直並列変換部46により各サブキャリアに対応する複数系列の変調信号に変換された後、Nポイントの逆フーリエ変換部47で時間領域の信号に変換される。最後に、その出力は並直列変換部48で並直列変換され、GI(ガードインターバル)挿入部49においてGI(ガードインターバル)が挿入されて、送信信号として送信される。
【0031】
続いて、本実施形態に係る無線通信装置10の動作及び無線通信方法について説明する。図1に示すGI除去部11では、多重されたパケットの受信信号におけるGI成分を除去する。GIが除去された受信信号は直並列変換部12に入力され、直並列変換された後、フーリエ変換部13においてフーリエ変換され、各サブキャリアにおける受信信号が計算される。
【0032】
後述する誤り検出部15Fによって、受信されたパケットに判定誤りが検出された際には、パケットは再送される。また、パケットが正常に受信された際には、新たなパケットが多重され、常にL多重されていると仮定する(つまり無線通信装置10は、常にL個の送信局40からパケットを受信すると仮定する)。いま、同じパケットの最大再送回数をQとし、第q(1≦q≦Q)回目の再送における第n(1≦n≦N)サブキャリアのパケットを表す受信信号をR(n,q)とすると、R(n,q)は式(1)で表される。
【数1】

となる。ここで、上付き文字Tは転置を表し、N(n,q)は雑音であり、
【数2】

はL次元チャネルベクトルであり、
【数3】

はL次元変調信号ベクトルであって、それぞれ以下の式で表せる。
【数4】

なお、H(n,q)は第q回目の再送時における第j(1≦j≦L)送信局40、第nサブキャリアの伝達関数であり、sj(n,q)は第q回目の再送時における第j送信局40の第nサブキャリアの変調信号である。
【0033】
次に、受信信号R(n,q)から第1送信局のパケットを検出する方法を説明する。ただし、以降では、説明を簡単化するため、第1送信局の変調信号s1(n,q)は最大再送回数Qまで再送されると仮定する。即ち、式(4)が成立する。
【数5】

【0034】
また、初送時(q=1)から第Q'回目までは同一のパケットが連続して送信されており、第Q'回目の再送時に第1送信局以外の送信局から送信されたL'(≦L-1)個のパケットが無線通信装置10に正しく受信され、第Q'+1回目の再送時から第1送信局以外の送信局の送信による新たなL'個のパケットが多重されると仮定する。即ち、第q回目の再送時におけるL次元変調信号ベクトル
【数6】

は、q≦Q'では
【数7】

であり、Q'+1≦q≦Qにおいては
【数8】

である。
【0035】
図2の干渉除去MUD部14は、受信信号R(n,q)を用いて第1送信局のビットLLRを計算する。まず、メトリック算出部22は、MLDの状態k(1≦k≦K)におけるメトリックα(k,n,q)を計算する。なお、MLDにおける状態数Kは、M値QAM(M-array quadrature amplitude modulation)が変調方式として使用されると仮定すると、ベクトル
【数9】

がL次元のベクトルのため、MLとなる。
【0036】
メトリック算出部22から出力されたMLDの状態は、候補信号変調部23に入力され、候補信号変調部23は、状態kに対応したL次元の変調信号候補ベクトル
【数10】

を生成する。変調信号候補ベクトルはレプリカ生成部24に入力され、レプリカ生成部24は、チャネルベクトル
【数11】

と変調信号候補ベクトルとの内積により受信信号のレプリカ信号
【数12】

を以下のように計算する。
【数13】

【0037】
そして、レプリカ減算部21は受信信号R(n,q)からこのレプリカ信号を減算する。メトリック算出部22はその結果を用いて以下のようにメトリックα(k,n,q)を計算する。つまり、レプリカ信号と受信信号との2乗ユークリッド距離をメトリックとして計算する。
【数14】

同様に、全ての状態におけるメトリックが計算され、メトリック蓄積部25に入力される。
【0038】
メトリック蓄積部25は、第Q'回目までは同一のパケットが再送されるため、最尤推定の原理に基づいて各再送時のメトリックα(k,n,q)をMLDの状態毎に加算することでパケット合成を行う。第q(q≦Q')回目の再送における蓄積メトリックβ(k,n,q)は以下の式(9)で表すことができる。
【数15】

ただし、q≦Q'であり、β(k,n,0)=0である。
【0039】
第1送信局から送信されたパケットを検出するためには、最大再送回数Qまでの蓄積メトリックを計算する必要がある。しかしながら、第Q'+1回目の再送時から新たに多重された他の送信局から送信されたL'個のパケットの変調信号を状態として考慮する必要があり、単純に式(9)を用いることができない。そこで、メトリック蓄積部25は第Q'回目の再送時において正しく受信されたL'個のパケットの情報を用いて、MLDの状態数を削減する。具体的には、正しく受信されたパケットのビット系列(後述するチャネル復号部15Eで正しく復号されたパケットのビット系列)から変調シンボル生成部16により生成された変調シンボルを用いる。なお、変調シンボル生成部16による変調シンボルの生成方法については後述する。正しく受信されたL'個のパケットの変調シンボルに対応する状態はすでに確定しているため、ML-L'の状態数のみを考慮すれば良い。この状態数ML-L'の生き残った状態k'の蓄積メトリックβ(k',n,Q')を用いて、メトリック蓄積部25は第Q'+1回目以降の再送における蓄積メトリックを計算する。
【0040】
第Q'+1回目の再送時における蓄積メトリックは、生き残った状態k'の蓄積メトリックβ(k',n,Q')にメトリックα(k,n,Q'+1)を加算することで計算できる。ただし、第Q'回目の再送において生き残った状態k'と、第Q'+1回目の再送における状態k(1≦k≦K)との関係は、新たに多重されたL'個のパケットの変調信号が状態kにどのように割り当てられているかに依存し、ここでは、状態kに対応する生き残った状態k'をk'=f(k)とする。このとき、第q(Q'+1≦q≦Q)回目の再送における蓄積メトリックβ'(k,n,q)は以下の式で計算できる。
【数16】

ここで、q=Q'+1の場合、式(10)右辺のβ'(k,n,Q')は以下の式で計算できる。
【数17】

【0041】
メトリック蓄積部25で再送毎に更新された蓄積メトリックは、ビットLLR算出部26に入力される。ビットLLR算出部26は、第1送信局から送信されたパケットを検出するために必要となるビットLLR(対数尤度比)を蓄積メトリックから計算する。ここで、第j送信局の変調信号sj(n,q)の第m番目のビットに対応するビットLLRをλj(n,m,q)とすると、第1送信局のλ1(n,m,Q)は蓄積メトリックβ'(k,n,Q)を用いて
【数18】

と計算できる。ただし、κ(1,bm=0)とκ(1,bm=1)は第1送信局の変調信号における第m番目のビットbmが0、あるいは1となるMLDにおける状態の集合である。同様に、干渉除去MUD部14は、第1送信局だけでなく他の送信局から送信される全サブキャリアにおけるビットLLRを計算する。
【0042】
干渉除去MUD部14で計算された全サブキャリアのビットLLRは、各送信局に対応した受信ビット算出部15に入力される。第1送信局の全サブキャリアのビットLLRは、第1送信局に対応した受信ビット算出部15の並直列変換部15Bに入力され、並直列変換される。その後、デインターリーブ部15Bでデインターリーブされた後、デパンクチャ部15Cでチャネル符号化における符号化率に合わせてデパンクチャされる。最終的に、デパンクチャされたビットLLRはチャネル復号部15Eに入力され、チャネル復号される。チャネル復号部15Eで復号されたビット系列は、誤り検出部15Fと変調シンボル生成部16とに入力される。誤り検出部15Fはパケットの情報ビットに付加された巡回冗長検査符号を用いてパケット内の判定誤りを検出する。誤りが検出された際には、送信局へ再送要求を行う。
【0043】
続いて図3に示される変調シンボル生成部16の動作について説明する。誤り検出部15Fで誤りが検出されなかった場合、チャネル復号部15Eの出力である正しく復号されたビット系列は変調シンボル生成部16に入力され、その送信局に対応した変調シンボルが変調シンボル生成部16によって生成される。復号されたビット系列は変調シンボル生成部16内のチャネル符号化部31に入力され、送信局40のチャネル符号化部42と同様の手法でチャネル符号化部31によりチャネル符号化される。符号化されたビット系列は、パンクチャ部32とインターリーブ部33とでそれぞれパンクチャリングとインターリーブされた後、シンボル生成部34で変調シンボルに割り当てられる。パンクチャ部32によるパンクチャリングの手法は送信局40のパンクチャ部43の手法と同じであり、シンボル生成部34によるインターリーブの手法は送信局40のインターリーブ部44の手法と同じである。変調シンボルは、変調信号とは異なり、M値QAMにおける変調点の番号を示すものである。変調シンボルは、上述した干渉除去MUD部14のメトリック蓄積部25によるMLDにおける状態数の削減のみに使われ、L個の変調シンボルの組み合わせによりMLDの状態が決定する。
[第2実施形態]
【0044】
続いて、本発明の第2実施形態に係る無線通信装置の構成及び無線通信方法について説明する。図5は、第2実施形態に係るOFDM伝送における無線通信装置10の構成図である。この無線通信装置10は、図1の第2実施形態に係る無線通信装置10と同様の構成に加えて、ビットLLR(対数尤度比)蓄積部15Dを有する。この無線通信装置10の干渉除去MUD部14は図2に示され上述した干渉除去MUD部14と同じ構成を有し、この無線通信装置10の変調シンボル生成部16は図2に示され上述した変調シンボル生成部16と同じ構成を有する。以下、第1実施形態と相違する第2実施形態の特徴を説明するが、他の特徴は第1実施形態と同じである。
【0045】
上述の第1実施形態に係る説明では、第1送信局の同一のパケットが最大再送回数Qまで再送されることを想定していた。しかしながら、送信局40でチャネル符号化されたビット系列をパンクチャ部43がパンクチャリングする方法には、再送時に初送時と異なるパンクチャリングを行う方法がある。この方法では、受信側すなわち無線通信装置10で、再送されたパケットを合成することでパンクチャリングされた情報を復元でき、送信局40でパンクチャリングされる前の符号化率を無線通信装置10で実現できる。なお、再送回数が増えてくると、再び初送時と同一のパンクチャリングを用いて送信局40は再送を行う。ただし、全ての再送時に同一のパケット(すなわち同一のパンクチャリングが施されたパケット)が受信されないため、第1実施形態のようにメトリックのみによりパケット合成を行うことができない。そこで、第2実施形態では、同一のパンクチャリングを用いて送信局40により再送されたパケットに対しては、図2のメトリック蓄積部25でメトリックを蓄積することでパケットを合成し、異なるパンクチャリングにより再送されたパケットに対しては、図1のビットLLR蓄積部15EでビットLLRを蓄積することでパケットを合成する。
【0046】
以降では、説明を簡単化するため、第1送信局のパケットが最大再送回数Q(ここではQは偶数と仮定)まで再送されると仮定し、第2i-1(1≦i≦Q/2)回目の再送におけるパンクチャリングと、第2i回目の再送におけるパンクチャリングが異なっていると仮定する。ただし、第2i-1回目あるいは第2i回目の再送では同一のパンクチャリングが適用されている(つまり、奇数回目の再送では第1のパンクチャリングが使用され、偶数回目の再送では第1のパンクチャリングと異なる第2のパンクチャリングが使用される)。このとき、メトリック蓄積部25は、i≦Q'/2(ここではQ'は偶数と仮定)における第2i-1回目(奇数回目)の再送パケット用の蓄積メトリックβo(k,n,2i-1)と、第2i回目(偶数回目)の再送パケット用の蓄積メトリックβe(k,n,2i)を以下のように計算する。
【数19】

ただし、βo(k,n,-1) = βe(k,n,0) = 0である。同様に、Q'/2+1≦i≦Q/2における蓄積メトリックに関しても、第2i-1回目(奇数回目)の再送時の蓄積メトリックβo'(k,n,2i-1)と第2i回目(偶数回目)の再送時の蓄積メトリックβe'(k,n,2i)を以下の式(14)および式(15)のように計算する。
【数20】

ここで、i=Q'/2+1の場合、式(14)右辺のβo'(k,n,Q'-1)は以下の式で計算できる。
【数21】

【数22】

ここで、i=Q'/2+1の場合、式(15)右辺のβe'(k,n,Q')は以下の式で計算できる。
【数23】

【0047】
このとき、第Q-1回目の再送時における第1送信局のビットLLRλ1(n,m,Q-1)は蓄積メトリックβo'(k,n,Q-1)を用いて、
【数24】

と計算できる。λ1(n,m,Q-1)は、受信ビット算出部15の並直列変換部15Aと、デインターリーブ部15Bと、デパンクチャ部15Cとで処理された後、ビットLLR蓄積部15Dが有するメモリに保存される。また、第Q回目の再送時における第1送信局のビットLLRλ1(n,m,Q)は蓄積メトリックβe'(k,n,Q)を用いて、
【数25】

と計算でき、同様にビットLLR蓄積部15Dに入力される。ビットLLR蓄積部15Dは、第Q-1回目の再送時に送信局40で使用されたパンクチャリングと第Q回目の再送時に送信局40で使用されたパンクチャリングの比較により、同一のビット毎に第Q-1回目のビットLLRと第Q回目のビットLLRを足し合わせる(無線通信装置10にとって送信局40で使用されるパンクチャリングのパターンは既知である。)。こうして、ビットLLR蓄積部15Dは、蓄積されたビットLLRから蓄積ビットLLRを生成し、蓄積ビットLLRをチャネル復号部15Eに供給する。
【0048】
なお、本実施形態に係る上述の説明では、二種類の異なるパンクチャリングが送信局40で使用されることを想定した無線通信装置10及び無線通信方法を示したが、それ以上の種類のパンクチャリングを送信局40が用いる場合においても、上記方法を利用して、同一のパンクチャリングにおいては計算量を抑えてメトリックによるパケット合成を実現し、異なるパンクチャリングについてはメトリックにより計算されたビットLLRを用いてパケット合成を実現できる。
【0049】
第1及び第2実施形態に関する上述の説明ではOFDM伝送への適用例について示したが、シングルキャリア伝送にも本発明を適用することが可能である。なお、シングルキャリア伝送では、GI除去部11と、直並列変換部12と、フーリエ変換部13とが不要となる。また、アンテナダイバーシチ受信を行うOFDM伝送や、空間多重を行うMIMO-OFDM(Multiple-Input Multiple-Output Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送にも本発明を適用できる。
【実施例1】
【0050】
本発明の第1実施形態に係る実施例について図面を参照して説明する。本発明の有効性を確認するため、OFDM伝送において本発明の第1実施形態を適用した場合の計算機シミュレーション結果について以下に示す。多重される送信局数Lは2とし、FFTポイント数Nは64とした。その他のOFDMのパラメータは5GHz帯無線LANに準拠した。変調方式は16QAMとし、チャネル符号化には畳み込み符号を用い、符号化率は1/2とした。また、最大再送回数Qは4とした。
【0051】
図6に本発明である干渉除去を行うメトリック合成型MUD(CMC-MUD)のスループット特性を示す。比較のため、非特許文献2に記載されているMC-MUDと、非特許文献4に記載されているHC-MUDの特性も併せて示す。なお、非特許文献3に記載されているLC-MUDの特性は、非特許文献4においてHC-MUDより特性が悪いことが明らかにされているため、比較を行わなかった。同図において、CMC-MUDは低SNR領域でメトリックに基づいてパケット合成を行うMC-MUDとほぼ同等のスループット特性を実現できており、HC-MUD以上の特性を実現できている。一方、高SNR領域では、CMC-MUDがMC-MUDより優れたスループット特性を実現できている。これはCMC-MUDが再送時に常にL多重可能であるためである。また、CMC-MUDはHC-MUDに比較して平均SNRが23dB以下において、メトリックでパケットを合成することで優れたスループット特性を実現できることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
10…無線通信装置、11…GI(ガードインターバル)除去部、12…直並列変換部、13…フーリエ変換部、14…干渉除去MUD(マルチユーザ検出)部、15…受信ビット算出部、15A…並直列変換部、15B…デインターリーブ部、15C…デパンクチャ部、15D…ビットLLR(対数尤度比)蓄積部、15E…チャネル復号部、15F…誤り検出部、16…変調シンボル生成部、21…レプリカ減算部、22…メトリック算出部、23…候補信号変調部、24…レプリカ生成部、25…メトリック蓄積部、26…ビットLLR(対数尤度比)算出部、31…チャネル符号化部、32…パンクチャ部、33…インターリーブ部、34…シンボル生成部、35…直並列変換部、40…送信局、41…CRC(巡回冗長検査)符号化部、42…チャネル符号化部、43…パンクチャ部、44…インターリーブ部、45…信号変調部、46…直並列変換部、47…逆フーリエ変換部、48…並直列変換部、49…GI(ガードインターバル)挿入部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重される無線伝送システムで使用され、前記多重されたパケットのうち誤りがあったパケットを複数回受信して、前記多重されたパケットを分離する無線通信装置であって、
すでに正しく復号されたパケットのビット系列を用いて変調シンボルを生成する変調シンボル生成部と、
前記変調シンボル生成部で生成された前記変調シンボルを用いて最尤検出における状態数を削減し、パケットを表す受信信号から最尤検出によりビットLLR(対数尤度比)を算出する干渉除去MUD(マルチユーザ検出)部と、
前記干渉除去MUD部において計算されたビットLLRに対してチャネル復号を行い、パケットのビット系列を出力するチャネル復号部と、
を備え、前記チャネル復号部で正しく復号されたパケットのビット系列が前記変調シンボル生成部に供給されることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記干渉除去MUD部は、最尤検出の状態に合わせて変調信号を生成する候補信号変調部と、
前記候補信号変調部で生成された前記変調信号を用いて受信信号のレプリカ信号を生成するレプリカ生成部と、
前記レプリカ生成部で生成された前記レプリカ信号と受信信号との2乗ユークリッド距離であるメトリックを計算するメトリック算出部と、
前記メトリック算出部で計算された前記メトリックを、同一パケットを受信する度に最尤検出の状態毎に蓄積して蓄積メトリックを計算するとともに、前記変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減するメトリック蓄積部と、
前記メトリック蓄積部で計算された前記蓄積メトリックを用いて前記ビットLLRを計算するビットLLR算出部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
ビットLLR蓄積部をさらに有し、
前記干渉除去MUD部で計算されたビットLLRが前記ビットLLR蓄積部に入力され、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する毎にビットLLRが前記ビットLLR蓄積部に蓄積され、前記ビットLLR蓄積部は蓄積されたビットLLRから蓄積ビットLLRを生成し、前記蓄積ビットLLRが、前記チャネル復号部に入力される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を行うために、GI(ガードインターバル)除去部と、直並列変換部と、フーリエ変換部とをさらに有し、
前記GI除去部は受信信号におけるGI成分を除去し、GIが除去された受信信号は前記直並列変換部に入力され、
前記直並列変換部はGIが除去された受信信号を直並列変換した後、前記フーリエ変換部に入力し、
前記フーリエ変換部は前記直並列変換部の出力に対してフーリエ変換を行うことで各サブキャリアにおけるサブキャリア受信信号を計算し、
前記干渉除去MUD部は、各サブキャリアについて、前記サブキャリア受信信号から最尤検出によりビットLLRを算出する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
同一時間、同一周波数において複数のチャネル符号化されたパケットが無線区間で多重される無線伝送システムで使用され、前記多重されたパケットのうち誤りがあったパケットを複数回受信して、前記多重されたパケットを分離する無線通信方法であって、
すでに正しく復号されたパケットのビット系列を用いて、変調シンボル生成部により変調シンボルを生成する変調シンボル生成ステップと、
前記変調シンボル生成ステップで生成された前記変調シンボルを用いて最尤検出における状態数を削減し、パケットを表す受信信号から最尤検出によりビットLLR(対数尤度比)を算出する干渉除去MUD(マルチユーザ検出)ステップと、
前記干渉除去MUDステップにおいて計算されたビットLLRに対してチャネル復号を行い、パケットのビット系列を出力するチャネル復号ステップと、
前記チャネル復号ステップで正しく復号されたパケットのビット系列を前記変調シンボル生成部に供給するステップと、
を備えたことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
前記干渉除去MUDステップは、最尤検出の状態に合わせて変調信号を生成する候補信号変調ステップと、
前記候補信号変調ステップで生成された前記変調信号を用いて受信信号のレプリカ信号を生成するレプリカ生成ステップと、
前記レプリカ生成ステップで生成された前記レプリカ信号と受信信号との2乗ユークリッド距離であるメトリックを計算するメトリック算出ステップと、
前記メトリック算出ステップで計算された前記メトリックを、同一パケットを受信する度に最尤検出の状態毎に蓄積して蓄積メトリックを計算するとともに、前記変調シンボルを用いて最尤検出の状態数を削減するメトリック蓄積ステップと、
前記メトリック蓄積ステップで計算された前記蓄積メトリックを用いて前記ビットLLRを計算するビットLLR算出ステップと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の無線通信方法。
【請求項7】
前記干渉除去MUDステップで計算されたビットLLRをビットLLR蓄積部に入力し、同一の符号化されたビット系列に対して異なるパンクチャリングが適用されたパケットを受信する毎にビットLLRを前記ビットLLR蓄積部に蓄積し、前記ビットLLR蓄積部に蓄積されたビットLLRから蓄積ビットLLRを生成し、前記蓄積ビットLLRを前記チャネル復号ステップに供給する、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の無線通信方法。
【請求項8】
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を行うために、GI(ガードインターバル)除去ステップと、直並列変換ステップと、フーリエ変換ステップとをさらに有し、
前記GI除去ステップは受信信号におけるGI成分を除去し、
前記直並列変換ステップはGIが除去された受信信号を直並列変換し、
前記フーリエ変換ステップは前記直並列変換ステップの出力に対してフーリエ変換を行うことで各サブキャリアにおけるサブキャリア受信信号を計算し、
前記干渉除去MUDステップは、各サブキャリアについて、前記サブキャリア受信信号から最尤検出によりビットLLRを算出する、
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の無線通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100026(P2012−100026A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245408(P2010−245408)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】