説明

無線IC通信装置及びその応答方法

本発明は、所有者の意図しないところで情報が漏洩してしまうことを防止し得る無線IC通信装置を提供することを目的とする。この無線IC通信装置は、タイムスロット数を取得するスロット数取得部(502)と、少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに初期応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶部(504)と、前記リーダライタに初期応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定部(501)と、前記リーダライタに初期応答を返す応答部(503)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によってリーダライタと通信する無線IC通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商品の在庫管理、生鮮食品に対するトレーサビリティ、商品の盗難防止、家電製品のリサイクル、交通機関における定期券や回数券などの様々な分野において、無線IC通信装置の実証実験や実用化が行われている。中でも、在庫管理やトレーサビリティなどに利用される無線IC通信装置は無線ICタグ又はRadio Frequency IDentification(RFID)タグと呼ばれ、定期券や回数券などに利用される無線IC通信装置は非接触ICカードと呼ばれている。
【0003】
図1(A)は、一般的な無線ICタグの使用形態を示す図である。一般に、無線ICタグ102〜107は、商品108〜113に1個ずつ付加され、段ボール箱101などに梱包された状態で、商品搬入時にリーダライタ100によって識別される。すなわち、リーダライタ100は、複数の無線ICタグ102〜104、105〜107を識別し、無線ICタグ内の情報(固有IDなど)を読み取る。これによって、どの商品が何個搬入されたかを識別することが可能となる。
【0004】
図1(B)は、一般的な非接触ICカードの使用形態を示す図である。ここでは、遠隔地から診断を行い、その診断料を電子マネーで徴収するシステムを想定している。このシステムを利用する際は、医師免許などの資格を認証するための無線ICタグ121付きの非接触ICカード120と、電子マネー用の無線ICタグ123付きの非接触ICカード122とをリーダライタ100にかざす。この場合も、リーダライタ100は、複数の非接触ICカードを識別する必要がある。
【0005】
このように、複数の無線IC通信装置をリーダライタによって識別しなければならない場合がある。そこで、無線IC通信装置とリーダライタとの間の通信には、タイムスロット方式を採用している。
【0006】
すなわち、複数の無線IC通信装置が同時にリーダライタの通信エリア内に存在する場合、リーダライタからのポーリングに対して複数の無線IC通信装置が同時にレスポンス信号を送信するときがある。このときは、各レスポンス信号が衝突することによって、何れの無線IC通信装置もリーダライタと正常に通信することが不可能となる。このような衝突を避ける機能がアンチコリジョン機能である。
【0007】
図2は、一般的なアンチコリジョン機能を示すタイミングチャートである。リーダライタ100から1回目のリクエストコマンドR1が送信されると、無線ICタグ102〜104は、このリクエストコマンドR1に含まれるスロット数(リーダライタ100が指定するスロット数)を取得する。スロット数は、無線ICタグ102〜104からリーダライタ100に初期応答を返すことが可能なスロットの数であり、ここでは「4」であることを前提に説明する。なお、リクエストコマンドには、スロット数でなく、スロット数を計算するために必要な値が含まれる場合もある。
【0008】
その後、無線ICタグ102〜104は4スロット以内に初期応答を返す。ここでは、無線ICタグ102はスロット1で初期応答A21を返し、無線ICタグ103及び無線ICタグ104はスロット2で初期応答A31及びA41を返している。従って、リーダライタ100は、初期応答が衝突したことを検出し、2回目のリクエストコマンドR2を送信する。これに対して、無線ICタグ102〜104は、初期応答を返すスロットを変更する。ここでは、無線ICタグ103はスロット3で初期応答A32を返し、無線ICタグ104はスロット4で初期応答A42を返している。これによって、リーダライタ100は、初期応答が衝突していないことを検出し、全ての無線ICタグ102〜104を識別することが可能となる。
【0009】
図3は、一般的な無線IC通信装置の初期応答動作を示すフローチャートである。以下、図3に従って、一般的な無線IC通信装置の動作を説明する。
【0010】
まず、無線IC通信装置は、リーダライタの通信エリア内に位置すると、誘導起電力によって電力が供給され、リクエストコマンドが送信されてくるまで待機する(ステップS301のN)。
【0011】
リクエストコマンドを受信すると(ステップS301のY)、このリクエストコマンドに含まれるスロット数を取得するとともに(ステップS302)、乱数を発生させる(ステップS303)。そして、このスロット数と乱数とに基づいて、応答スロットを決定する(ステップS304)。例えば、スロット数が「4」で、乱数が「6」である場合は、乱数「6」をスロット数「4」で除算して、その余りである「2」を応答スロット番号として決定する。
【0012】
このように応答スロットを決定すると、そのスロットがくるまで待機する。ここでは、スロット2で初期応答を返す旨の決定をしているので、スロット1では初期応答を返さない(ステップS305のN)。その後、スロット2で初期応答を返し終えると(ステップS305のY→S306)、初期応答処理が完了する。
【0013】
なお、リクエストコマンドを受信してからスロット1で初期応答をするまでの時間、及び1つのスロットの時間は、ISO/IEC14443で規定されている。このようなタイムスロット方式に類似する方式としてスロットマーカ方式がある。このスロットマーカ方式によると、リーダライタは、リクエストコマンドを送信した後、各スロットを開始するタイミングで、スロットの開始を示すスロットマーカコマンドを送信する。このような違いはあるものの、タイムスロット方式とスロットマーカ方式とは本質的に同じである。
【0014】
図4は、一般的な無線ICタグ102のハードウェア構成図である。この無線ICタグ102は、アンテナコイル301と、ROM302と、制御部303とを備えている。アンテナコイル301は、外部機器から電源供給を受け、外部機器と通信を行う。ROM302は、プログラムを格納する。制御部303は、ROM302に格納されたプログラムに従って処理を行う。
【0015】
図5は、一般的な非接触ICカード120のハードウェア構成図である。この非接触ICカード120は、アンテナコイル301と、ROM302と、RAM401と、CPU402と、不揮発性メモリ403とを備えている。アンテナコイル301とROM302とは、無線ICタグ102が備えるものと変わらない。RAM401は、プログラムを実行する際に用いられるデータを一時的に格納する。CPU402は、ROM302に格納されたプログラムに従って、各種コマンド処理等の制御を行う。不揮発性メモリ403は、外部からダウンロードされたプログラムを格納する、書き換え可能なElectrically Erasable Programmable Read Only Memory(EEPROM)等である。
【0016】
このように、非接触ICカード120には、外部からダウンロードされたプログラムを格納することが可能である。この点が、無線ICタグ102と非接触ICカード120との大きな相違点である。すなわち、非接触ICカード120には、所望のプログラムをダウンロードすることができるので、用途に応じて異なる機能を非接触ICカード120に搭載することが可能である。
【0017】
ところで、無線IC通信装置は、通常多数の物に付加され、在庫管理や盗難防止などのシステムで用いられている。この場合、複数の無線IC通信装置を同時にあるいは順番に識別する必要があるため、無線IC通信装置には、アンチコリジョン機能を搭載する必要がある。
【0018】
ここで、アンチコリジョン機能が搭載されている無線IC通信装置内の情報は、この無線IC通信装置に対応するリーダライタさえあれば、いつでも誰でも読み出すことができる。そのため、購入した製品の情報や使用履歴など、無線IC通信装置が付加された物品の所有者(以下、単に「所有者」という)が特定されるような情報が、所有者の意図しないところで読み出される可能性があり、プライバシーが侵害されるという問題が挙がっている。
【0019】
前記問題の解決方法として、通信距離を短くする方法が考えられる。すなわち、リーダライタに無線IC通信装置を近接させなければ、無線IC通信装置内の情報を読み出すことができないようにする。このようにすれば、所有者の意図しないところで無線IC通信装置内の情報が読み出される可能性が低くなる。
【0020】
しかしながら、この解決方法を採用した場合は、多数の無線IC通信装置を読み取る必要のある作業(検品作業など)において、その作業時間が増加することが考えられる。このため、無線IC通信装置提供側は、消費者のニーズを尊重するか、業者のニーズを尊重するかの苦渋の決断を迫られている。
【発明の開示】
【0021】
前述したように、従来の技術では、リーダライタさえあれば、いつでも誰でも無線IC通信装置内の情報を読み出すことが可能である。このため、所有者の意図しないところで無線IC通信装置内の情報が読み出され、プライバシーが侵害されるという課題を有している。
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、所有者の意図しないところで情報が漏洩してしまうことを防止し得る無線IC通信装置を提供することを目的とする。
【0023】
前記従来の課題を解決するために、本発明における無線IC通信装置は、タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によってリーダライタと通信する無線IC通信装置であって、前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得部と、少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶部と、前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定部と、決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答部とを備える。これによって、前記リーダライタ側で必ず応答の衝突が検出されるので、前記リーダライタによって無線IC通信装置内の情報が読み出されることを防止することができる。
【0024】
具体的には、前記応答スロット情報は、全部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報であり、前記応答スロット決定部は、前記タイムスロット数の全部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする。これによって、前記リーダライタと通信する他の無線IC通信装置が如何なるタイムスロットにおいて応答を返した場合でも、前記リーダライタ側で必ず応答の衝突が検出される。
【0025】
また、前記応答スロット情報は、一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報でもよい。この場合、前記応答スロット決定部は、前記タイムスロット数の一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする。これによって、前記リーダライタと通信する他の無線IC通信装置の中に、前記タイムスロット数の一部のタイムスロットにおいて応答を返す無線IC通信装置が含まれている場合は、前記リーダライタ側で必ず応答の衝突が検出される。
【0026】
また、前記応答スロット情報は、所定の無線IC通信装置が発生させる乱数系列でもよい。この場合、前記応答スロット決定部は、前記乱数系列によって特定されるタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする。これによって、前記リーダライタと通信する他の無線IC通信装置の中に前記所定の無線IC通信装置が含まれている場合は、前記リーダライタ側で必ず応答の衝突が検出される。
【0027】
また、前記応答スロット情報が、一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報である場合、前記応答スロット決定部は、2つ以上のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をしてもよい。すなわち、応答を返すタイムスロットの数は、その適用場面に応じた適切な数であればよい。
【0028】
また、前記応答スロット情報が、一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報である場合、前記応答スロット決定部は、連続する2つ以上のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をしてもよい。このように連続するスロットにおいて応答を返す無線IC通信装置の方が、連続しないスロットにおいて応答を返す無線IC通信装置よりも、製造が容易であるという利点がある。
【0029】
また、前記無線IC通信装置は、さらに、前記応答スロット情報を取得する応答スロット情報取得部を備え、前記応答スロット情報記憶部は、前記応答スロット情報取得部によって取得された応答スロット情報を記憶してもよい。これによって、必要に応じて外部装置から前記応答スロット情報を取得することができる。 また、前記無線IC通信装置は、さらに、所定の期間のみ前記応答スロット決定部の機能を有効にするためのタイマーを備えてもよい。これによって、アンチコリジョン機能を無効化することを必要最小限に抑えることができるので、アンチコリジョン機能本来のメリットを十分に発揮することが可能となる。
【0030】
なお、本発明は、このような無線IC通信装置の特徴的な構成部をステップとする方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムが格納された、CD−ROM等の記憶媒体として実現したり、集積回路として実現することもできる。プログラムは、通信ネットワーク等の伝送媒体を介して流通させることもできる。
【0031】
明細書、図面、及び特許請求の範囲を含む、2004年5月25日にされた出願番号2004−154142号の日本特許出願により開示されている事項は、そっくりそのまま引用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(実施の形態1)
まず、本発明における無線IC通信装置のハードウェア構成は、前述した一般的な無線IC通信装置のハードウェア構成と変わらない。従って、ここでは、詳しい説明を省略する。
【0034】
次に、本発明における無線IC通信装置のソフトウェア構成を説明する。図6(A)は、本発明における無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。この無線IC通信装置800は、通信部500と、スロット数取得部502と、応答スロット決定部501と、応答部503と、応答スロット情報記憶部504とを備えている。
【0035】
通信部500は、リーダライタ100とデータの送受信を行う。スロット数取得部502は、リーダライタ100からのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得する。応答スロット情報記憶部504は、少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいてリーダライタ100に初期応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶している。応答スロット決定部501は、前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、リーダライタ100に初期応答を返すタイムスロットを決定する。応答部503は、決定された前記タイムスロットにおいてリーダライタ100に初期応答を返す。
【0036】
図7は、本発明における無線IC通信装置800の初期応答動作を示すフローチャートである。以下、図7に従って、本発明における無線IC通信装置800の構成を、その動作とともに説明する。
【0037】
まず、無線IC通信装置800は、リーダライタ100の通信エリア内に位置すると、誘導起電力によって電力が供給され、リクエストコマンドが送信されてくるまで待機する(ステップS601のN)。
【0038】
リクエストコマンドを受信すると(ステップS601のY)、スロット数取得部502は、このリクエストコマンドに含まれるスロット数を取得して(ステップS602)、応答スロット決定部501に通知する。
【0039】
次に、応答スロット決定部501は、応答スロット情報記憶部504から応答スロット情報を取得する(ステップS603)。そして、この応答スロット情報と、スロット数取得部502から通知されたスロット数とに基づいて、応答スロットを決定する(ステップS604)。
【0040】
ここで、本実施の形態1における応答スロット情報は、全部のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報である(詳細については後述する)。また、スロット数取得部502から通知されたスロット数は「6」であることを前提に説明する。従って、応答スロット決定部501は、スロット1から6の全部のスロットにおいて初期応答を返す旨の決定をすることになり、その結果を応答部503に通知する。
【0041】
これによって、応答部503は、リーダライタ100に対して初期応答するスロットがくるまで待機する(ステップS605のN)。ここでは、スロット1から6の全部のスロットにおいて初期応答を返す旨の通知を受けているので、まずはスロット1で初期応答を返す(ステップS606)。その後、スロット2から5で初期応答を返し、最後のスロット6で初期応答を返し終えると(ステップS607のY)、初期応答処理が完了する。
【0042】
図8は、一般的なリーダライタの動作を示すフローチャートである。以下、図8に従って、複数の無線IC通信装置と通信するリーダライタ100の動作について説明する。
【0043】
リーダライタ100は、リクエストコマンドを送信し(ステップS701)、初期応答が返されるのを待つ。すべての無線IC通信装置から初期応答が返された結果(ステップS704)、その初期応答が衝突する場合(ステップS702のY)がある。
【0044】
この場合は、所定の時間以内であれば(ステップS703のN)、再度リクエストコマンドを送信する(ステップS701)。一方、所定の時間を過ぎていれば(ステップS703のY)、タイムアウトとなって、当該通信処理を終了する。
【0045】
図9は、実施の形態1におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。以下、図9に従って、実施の形態1における無線ICタグの動作を説明する。
【0046】
なお、ここでは、無線ICタグ800のみが本発明における無線ICタグであり、その他の無線ICタグ806〜810は一般的な無線ICタグであることを前提に説明する。本発明における無線ICタグは、アンチコリジョン機能を無効化する無線ICタグであるため、以下の説明では、無線ICタグ800のことを「無効化無線ICタグ800」という場合がある。
【0047】
まず、リーダライタ100は、1回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR11を送信する。このリクエストコマンドR11は、無線ICタグ806〜810及び800に受信される。無線ICタグ806〜810及び800は、このリクエストコマンドR11に含まれるスロット数を取得する。ここでは、スロット数を「6」として説明する。
【0048】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A61を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A71を返し、無線ICタグ808はスロット2で初期応答A81を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A91を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A101を返す。
【0049】
一方、本発明における無効化無線ICタグ800は、スロット1から6の全部のスロットにおいて初期応答A801−1〜A801−6を返す。これによって、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出することになり、2回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR12を送信する。
【0050】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A62を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A72を返し、無線ICタグ808はスロット3で初期応答A82を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A92を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A102を返す。
【0051】
これらの無線ICタグ806〜810だけに着目すると、初期応答の衝突は起こっていない。しかしながら、本発明における無効化無線ICタグ800は、1回目の識別処理時と同様、スロット1から6の全部のスロットにおいて初期応答A802−1〜A802−6を返す。このため、リーダライタ100は、再び初期応答の衝突を検出することとなる。
【0052】
これ以降も同様に、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出し続ける。そして、初期応答が衝突しないことを所定の時間以内に検出することができず、無線ICタグ806〜810及び800を識別することが不可能となる。これによって、この識別処理以降に行われる処理(例えばデータ読み出し処理)を行うことも不可能となる。
【0053】
以上のように、本実施の形態1における無効化無線ICタグは、リーダライタが指定する全部のスロットにおいて初期応答を返す。かかる構成によれば、所有者が意図しないところで、無線ICタグ内の情報が読み出されることがない。このため、所有者は、自身のプライバシーが侵害される心配をすることなく、安心して生活を送ることが可能となる。
【0054】
なお、ここでは、無線ICタグを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、非接触ICカード等、その他の無線IC通信装置にも適用することができる。
【0055】
非接触ICカードに本発明を適用した場合は、この非接触ICカードに所望のプログラムをダウンロードすることができる。すなわち、本発明におけるアンチコリジョン無効化機能を必要に応じて非接触ICカードに搭載することが可能である。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態1では、無線IC通信装置は、リーダライタが指定する全部のスロットにおいて初期応答を返すこととしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、リーダライタが指定する一部のスロットにおいて初期応答を返すようにしてもよい。
【0057】
以下、本実施の形態2を実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
基本的な構成は、実施の形態1と変わらない。しかし、応答スロット情報の内容が実施の形態1と異なる。すなわち、実施の形態1における応答スロット情報は、全部のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報である。それに対して、本実施の形態2における応答スロット情報は、一部のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報である。
【0058】
図10は、本発明における応答スロット情報の一例を示す図である。
まず、応答スロット情報1301は、実施の形態1における応答スロット情報の一例である。すなわち、応答スロット情報(値:0xFFFF)1301は、全部のスロット(例えばスロット1から6)で初期応答を返す旨の情報である。
【0059】
一方、応答スロット情報1302から1304は、実施の形態2における応答スロット情報の一例である。すなわち、応答スロット情報(値:0xFF00)1302は、前半のスロット(例えばスロット1から3)で初期応答を返す旨の情報である。また、応答スロット情報(値:0x00FF)1303は、後半のスロット(例えばスロット4から6)で初期応答を返す旨の情報である。さらに、応答スロット情報(値:0x0FF0)1304は、中程のスロット(例えばスロット3及び4)で初期応答を返す旨の情報である。
【0060】
本実施の形態2における無線IC通信装置の初期応答動作は、初期応答を返すスロットが異なる点を除き、実施の形態1(図7参照)と同じである。また、リーダライタの動作も、実施の形態1(図8参照)と同じである。
【0061】
図11は、実施の形態2におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。以下、図11に従って、実施の形態2における無線ICタグの動作を説明する。
【0062】
なお、ここでも、実施の形態1と同様、無線ICタグ800のみが本発明における無効化無線ICタグであり、その他の無線ICタグ806〜810は一般的な無線ICタグであることを前提に説明する。また、応答スロット情報は、後半のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報(値:0x00FF)1303であることを前提に説明する。
【0063】
まず、リーダライタ100は、1回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR21を送信する。このリクエストコマンドR21は、無線ICタグ806〜810及び800に受信される。無線ICタグ806〜810及び800は、このリクエストコマンドR21に含まれるスロット数を取得する。ここでも、スロット数を「6」として説明する。
【0064】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A61を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A71を返し、無線ICタグ808はスロット2で初期応答A81を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A91を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A101を返す。
【0065】
一方、本発明における無効化無線ICタグ800は、一部のスロットにおいて初期応答を返す。ここでは、応答スロット情報は「0x00FF」であるので、スロット4から6で初期応答A801(A801−4〜A801−6)を返す。これによって、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出することになり、2回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR22を送信する。
【0066】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A62を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A72を返し、無線ICタグ808はスロット3で初期応答A82を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A92を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A102を返す。
【0067】
これらの無線ICタグ806〜810だけに着目すると、初期応答の衝突は起こっていない。しかしながら、本発明における無効化無線ICタグ800は、1回目の識別処理時と同様、スロット4から6で初期応答A802−4〜A802−6を返す。このため、リーダライタ100は、再び初期応答の衝突を検出することとなる。
【0068】
これ以降も同様に、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出し続ける。そして、初期応答が衝突しないことを所定の時間以内に検出することができず、無線ICタグ806〜810及び800を識別することが不可能となる。これによって、この識別処理以降に行われる処理(例えばデータ読み出し処理)を行うことも不可能となる。
【0069】
以上のように、本実施の形態2における無効化無線ICタグは、リーダライタが指定する一部のスロットにおいて初期応答を返す。かかる構成によれば、以下に説明するように、物品の所有者にとっても物品の検品者にとっても利便性の高い無線ICタグを提供することが可能となる。
【0070】
すなわち、前記無線ICタグ806〜810として、一般的な無線ICタグではなく、特定範囲のスロットにおいてのみ応答を返す無線ICタグを採用する。このように特定範囲のスロットにおいてのみ応答を返すようにするには、前記応答スロット情報1302等を当該無線ICタグ806〜810内に備えておき、この応答スロット情報に示される範囲で乱数を発生させればよい。以下、このような実施形態について、更に詳しく説明する。
【0071】
図12は、実施の形態2における別のアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。ここでは、無線ICタグ806〜808は、前半のスロットにおいてのみ応答を返す無線ICタグ(以下「グループAに属する無線ICタグ」という)であることを前提に説明する。また、無線ICタグ809及び810は、後半のスロットにおいてのみ応答を返す無線ICタグ(以下「グループBに属する無線ICタグ」という)であることを前提に説明する。さらに、無線ICタグ800は、本発明における無効化無線ICタグであって、グループBに属する無線ICタグに搭載されたアンチコリジョン機能を無効化するための無線ICタグである。すなわち、無線ICタグ800が備える応答スロット情報1303は、後半のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報(値:0x00FF)であることを前提に説明する。
【0072】
まず、リーダライタ100は、1回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR21を送信する。このリクエストコマンドR21は、無線ICタグ806〜810及び800に受信される。無線ICタグ806〜810及び800は、このリクエストコマンドR21に含まれるスロット数を取得する。ここでも、スロット数を「6」として説明する。
【0073】
ここで、グループAに属する無線ICタグ806〜808は、スロット1〜3のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット1で初期応答A61を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A71を返し、無線ICタグ808はスロット2で初期応答A81を返す。
【0074】
また、グループBに属する無線ICタグ809及び810は、スロット4〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A91を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A101を返す。
【0075】
一方、本発明における無効化無線ICタグ800は、グループBに属する無線ICタグ809及び810に搭載されたアンチコリジョン機能を無効化する。ここでは、応答スロット情報は「0x00FF」であるので、スロット4から6で初期応答A801(A801−4〜A801−6)を返す。これによって、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出することになり、2回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR22を送信する。
【0076】
ここで、グループAに属する無線ICタグ806〜808は、スロット1〜3のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット1で初期応答A62を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A72を返し、無線ICタグ808はスロット3で初期応答A82を返す。
【0077】
また、グループBに属する無線ICタグ809及び810は、スロット4〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A92を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A102を返す。
【0078】
これらの無線ICタグ806〜810だけに着目すると、初期応答の衝突は起こっていない。しかしながら、本発明における無効化無線ICタグ800は、1回目の識別処理時と同様、スロット4から6で初期応答A802−4〜A802−6を返す。このため、リーダライタ100は、再び初期応答の衝突を検出することとなる。
【0079】
これ以降も同様に、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出し続ける。そして、初期応答が衝突しないことを所定の時間以内に検出することができず、無線ICタグ806〜810及び800を識別することが不可能となる。これによって、この識別処理以降に行われる処理(例えばデータ読み出し処理)を行うことも不可能となる。
【0080】
以上のように、特定範囲のスロットにおいてのみ応答を返す無線ICタグとともに、本発明における無効化無線ICタグを用いれば、無効化する対象を幾つかのグループに分けることができる。これによって、特定のグループに属する無線ICタグについてのみ、そのアンチコリジョン機能を無効化することができる。
【0081】
例えば、日用雑貨には、グループAに属する無線ICタグを付加しておき、化粧品には、グループBに属する無線ICタグを付加しておく。一方、日用雑貨や化粧品を収納する鞄には、グループBに属する無線ICタグに搭載されたアンチコリジョン機能を無効化するための無線ICタグを付加しておく。このようにすれば、鞄に化粧品が収納されている間のみ、アンチコリジョン機能を無効化することができる。鞄に化粧品が収納されていない間は、アンチコリジョン機能が働くのはいうまでもない。
【0082】
なお、本実施の形態2では、リーダライタが指定する一部のスロットにおいて無線ICタグが初期応答を返す形態について説明したが、ここでいう「一部のスロット」の数は、特に限定されるものではない。すなわち、その適用場面に応じた適切な数であればよい。
【0083】
また、ここでいう「一部のスロット」は、スロット1〜3やスロット4〜6等のように、連続するスロットであるのが好ましい。このように連続するスロットにおいて応答を返す無線ICタグの方が、連続しないスロットにおいて応答を返す無線ICタグよりも、製造が容易であるという利点がある。
【0084】
また、スロット数が6である場合において応答スロット情報が「0x00FF」であるときは、スロット4から6で初期応答を返すこととしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、「0x00FF」を数値(すなわち255)として判断し、スロット255以降に初期応答を返すようにしてもよい。この場合、リーダライタ100が指定するスロット数が255に満たないときは、リーダライタ100によって無線ICタグ806〜810及び800が識別されることになる。
【0085】
(実施の形態3)
実施の形態2では、本発明における無線IC通信装置は、リーダライタが指定する一部のスロットにおいて初期応答を返すこととしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明における無線IC通信装置は、少なくとも一つの他の無線IC通信装置と同じスロットにおいて初期応答を返せばよい。
【0086】
以下、本実施の形態3を実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
基本的な構成は、実施の形態1と変わらない。しかし、応答スロット情報の内容が実施の形態1と異なる。すなわち、実施の形態1における応答スロット情報は、全部のスロットにおいて初期応答を返す旨の情報である。それに対して、本実施の形態3における応答スロット情報は、所定の無線IC通信装置が発生させる乱数系列である。
【0087】
すなわち、前記したように、一般的な無線IC通信装置は、乱数を発生させ、この乱数に基づいて応答スロットを決定する。そこで、本実施の形態3では、図10に示すように、所定の無線IC通信装置が発生させる乱数系列{P0,P1,・・・,Pn}を応答スロット情報1305として設定しておく。ここでいう「P0」「P1」「Pn」は例えば正の整数であり、その表記法は特に限定されるものではない。
【0088】
図13は、実施の形態3におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。以下、図13に従って、実施の形態3における無線ICタグの動作を説明する。
【0089】
なお、ここでも、実施の形態1と同様、無線ICタグ800のみが本発明における無効化無線ICタグであり、その他の無線ICタグ806〜810は一般的な無線ICタグであることを前提に説明する。また、応答スロット情報1305は、無線ICタグ808が発生させる乱数系列であることを前提に説明する。
【0090】
まず、リーダライタ100は、1回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR31を送信する。このリクエストコマンドR31は、無線ICタグ806〜810及び800に受信される。無線ICタグ806〜810及び800は、このリクエストコマンドR31に含まれるスロット数を取得する。ここでも、スロット数を「6」として説明する。
【0091】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A61を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A71を返し、無線ICタグ808はスロット2で初期応答A81を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A91を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A101を返す。
【0092】
一方、本発明における無効化無線ICタグ800は、無線ICタグ808と同じスロットにおいて初期応答を返す。すなわち、無効化無線ICタグ800が備える応答スロット情報1305は、無線ICタグ808が発生させる乱数系列である。ここでは、先頭の数P0に対応するスロット(スロット2)で初期応答A801を返す。これによって、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出することになり、2回目の識別処理をするために、リクエストコマンドR32を送信する。
【0093】
ここで、一般的な無線ICタグ806〜810は、スロット1〜6のうちのいずれかで初期応答を返す。すなわち、無線ICタグ806はスロット5で初期応答A62を返し、無線ICタグ807はスロット2で初期応答A72を返し、無線ICタグ808はスロット3で初期応答A82を返し、無線ICタグ809はスロット4で初期応答A92を返し、無線ICタグ810はスロット6で初期応答A102を返す。
【0094】
これらの無線ICタグ806〜810だけに着目すると、初期応答の衝突は起こっていない。しかしながら、本発明における無効化無線ICタグ800は、1回目の識別処理時と同様、無線ICタグ808と同じスロットにおいて初期応答を返す。ここでは、2番目の数P2に対応するスロット(スロット3)で初期応答を返す。このため、リーダライタ100は、再び初期応答の衝突を検出することとなる。
【0095】
これ以降も同様に、リーダライタ100は、初期応答の衝突を検出し続ける。そして、初期応答が衝突しないことを所定の時間以内に検出することができず、無線ICタグ806〜810及び800を識別することが不可能となる。これによって、この識別処理以降に行われる処理(例えばデータ読み出し処理)を行うことも不可能となる。
【0096】
以上のように、本実施の形態3における無効化無線ICタグは、少なくとも1つの他の無線ICタグと同じスロットにおいて初期応答を返す。かかる構成は、アンチコリジョン機能が無効化される側の無線ICタグが発生させる乱数系列を複製することによって実現することができる。すなわち、簡易な方法で、アンチコリジョン機能を無効化するための無線ICタグを製造することが可能となる。
【0097】
なお、無効化無線ICタグ800と無線ICタグ808は、新たにリーダライタ100と通信を行う際には、乱数系列{P0,P1,・・・,Pn}を、その先頭の数P0から順に用いる。乱数系列の初期位置が変動すると、無効化無線ICタグ800は、無線ICタグ808と同じスロットにおいて初期応答を返すことができなくなるからである。
【0098】
(実施の形態4)
次に、本発明における無線IC通信装置の使用形態について説明する。
【0099】
図14は、本発明における無線ICタグの使用形態を示す図である。この使用環境には、無効化無線ICタグ800、物品収納用鞄811、物品801〜805、無線ICタグ806〜810、及びリーダライタ100が含まれる。
【0100】
無効化無線ICタグ800は、物品収納鞄811に付加されている。物品収納鞄811は、鞄に限定されるものではなく、物品を収納するものであればよい。物品としては、携帯電話801、化粧品802、タバコ803、財布804、お金805を例示している。物品は、これらに限定されるものではなく、無線ICタグが付加されているものであればよい。無線ICタグ806〜810は、物品にひとつずつ付加されている。リーダライタ100は、無線ICタグを読み取り可能である。ここでは、ポータブルリーダライタを例示しているが、固定のリーダライタでもよい。
【0101】
前記のような環境下において、無効化無線ICタグ800はアンチコリジョン機能を無効化する。このため、リーダライタ100は、物品収納鞄811内の物品に付加された無線ICタグ806〜810を識別することができない。これによって、財布804内の金額や携帯電話801内の情報が読み取られることがないので、所有者は、自身のプライバシーが侵害される心配をすることなく、安心して生活を送ることが可能となる。
【0102】
(実施の形態5)
実施の形態4では、物品収納鞄811に無効化無線ICタグ800を付加する形態を例示したが、本発明における無線IC通信装置の使用形態はこれに限定されるものではない。実施の形態5では、本発明における無線IC通信装置の別の使用形態について説明する。
【0103】
図15は、本発明における非接触ICカードの使用形態を示す図である。このように、物品収納鞄811に非接触ICカード120を投入する形態としても、アンチコリジョン機能を無効化することが可能である。
【0104】
この場合、物品収納鞄811は取り替えることが可能である。すなわち、物品を収納したい入れ物に非接触ICカード120を投入することで、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。このように、本実施の形態5によれば、物品収納鞄811に固執することなく、様々な入れ物を利用して本発明の効果を得ることができる。
【0105】
また、非接触ICカード機能を搭載した携帯電話を用いて、同様にアンチコリジョン機能を無効化してもよい。この場合は、応答スロット情報は、応答スロット情報記憶部504に記憶されていなくても、外部装置からダウンロードすることができる。すなわち、一般的な携帯電話が備える通信部を応答スロット情報取得部として利用することが可能である。
【0106】
図6(B)は、応答スロット情報取得部を備えた無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。応答スロット情報取得部507は、外部装置から応答スロット情報を取得して、この応答スロット情報を応答スロット情報記憶部504に記憶させる。このように応答スロット情報記憶部504に記憶された応答スロット情報は、前記した通り、応答スロット決定部501によって取得されることになる(図7ステップS603参照)。
【0107】
このように、非接触ICカード機能を搭載した携帯電話を用いれば、必要に応じて応答スロット情報を更新することができる。これによって、物品に付加された無線ICタグ内の情報が漏洩する可能性がある環境でも、その漏洩を防止するための対策を即座に実行することができる。
【0108】
(実施の形態6)
実施の形態1〜5では、本発明における無線IC通信装置は、常にアンチコリジョン機能を無効化することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、アンチコリジョン機能を無効化する機能は、所定の期間のみ働くようにしてもよい。
【0109】
図16は、実施の形態6における無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。この無線IC通信装置800は、通信部500と、スロット数取得部502と、応答スロット決定部501と、応答部503と、応答スロット情報記憶部504とに加え、タイマー505と、タイマー設定部506とを備えている。
【0110】
タイマー505は、オンとなっている期間のみ、当該無線IC通信装置が備えるアンチコリジョン無効化機能(応答スロット決定部501の機能)を有効にする。タイマー設定部506は、タイマー505を設定するための手段である。
【0111】
これによって、応答スロット決定部501は、タイマー505がオンとなっている期間については、実施の形態1から3のいずれかにおいて説明した応答スロット決定部501として機能する。この場合、当該当該無線IC通信装置は、アンチコリジョン機能を無効化する装置として働くことになる。
【0112】
一方、応答スロット決定部501は、タイマー505がオフとなっている期間については、従来と同様、乱数を発生させて応答スロットを決定する。この場合、当該無線IC通信装置は、通常の無線IC通信装置として働くことになる。
【0113】
以下、本実施の形態6における無線ICタグの適用場面を例示する。
例えば、ある店で買い物をしたとき、その店の店員が当該商品に付加された無線ICタグのタイマーをオンにする。これによって、当該無線ICタグは、例えば2時間、無効化無線ICタグとして機能する。このようにすれば、買い物をしてから家に着くまでの間、当該無線ICタグ内の情報が漏洩することはない。すなわち、購入した商品が何であるかを他人に知られることなく、安心して帰宅することができる。しかも、帰宅した頃には、当該無線ICタグのタイマーがオフとなる。タイマーがオフとなった無線ICタグは通常の無線ICタグとして機能するので、当該商品の購入者の利便性は損なわれない。
【0114】
このように、本実施の形態6によれば、所定の期間のみアンチコリジョン機能を無効化することができる。すなわち、アンチコリジョン機能を無効化することを必要最小限に抑えることができるので、アンチコリジョン機能本来のメリットを十分に発揮することが可能となる。
【0115】
なお、アンチコリジョン無効化機能は、商品に付加された無線ICタグによって実現されなくてもよい。すなわち、別途、アンチコリジョン無効化機能を備えた無線ICタグを当該商品に付加するようにしても、同様の効果を得ることができる。このような無効化無線ICタグのタイマーがオフとなった後の機能は特に限定されるものではない。すなわち、何も機能しなくなってもよいし、特定機能を備えてもよい。
【0116】
また、タイマーの設定手法は、前記した例に限定されるものではない。すなわち、無線IC通信装置内でなく、リーダライタ等の外部機器にタイマー設定部506を備えるようにしてもよい。このようにすれば、リーダライタが備えるユーザインターフェイスを用いて、詳細なタイマー設定をすることが可能となる。
【0117】
また、タイマーの設定内容は、前記した例に限定されるものではない。例えば、午前8時から9時まで、無線ICタグのタイマーがオンとなるにしてもよい。このようにすれば、この無線ICタグを通勤鞄に付加しておくことによって、通勤鞄内の商品に関する情報が通勤途中で漏洩することを防止することができる。
【0118】
(実施の形態1〜実施の形態6の第1の補足事項)
以上、実施形態1から6について説明した。これまでの説明における、応答スロット決定部501、スロット数取得部502、応答部503などの各機能は、典型的には、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。そのプログラムは、無線IC通信装置内のROMに予め格納されている場合と、外部よりダウンロードされて無線IC通信装置内の不揮発メモリに格納される場合とがある。なお、応答スロット情報取得部507を採用した場合は、この応答スロット情報取得部507の機能も、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0119】
(実施の形態1〜実施の形態6の第2の補足事項)
また、前述の機能は、集積回路であるLSIによって実現される場合がある。これら機能は、個別に1チップ化されてもよいし、幾つかまとまった単位で1チップ化されてもよい。
【0120】
図17は、実施の形態1から3における無線IC通信装置の特徴的な構成部を集積回路化した場合の一例を示す図である。LSI2000は、集積回路の一例であり、破線で囲まれている範囲に含まれる構成部の機能を実現する。集積回路は、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。なお、応答スロット情報取得部507を採用した場合は、この応答スロット情報取得部507の機能も、LSI2000によって実現することができる。
【0121】
また、集積回路は、LSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサによって実現されてもよい。LSI製作後にプログラムを格納することが可能なField Programmable Gate Array(FPGA)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成することが可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーが利用されてもよい。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術(バイオ技術、有機化学技術等)が登場すれば、当然その技術を用いて前記機能の集積化が行われてもよい。
【0122】
本発明の典型的な実施の形態を上述したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から逸脱することなく、典型的な実施の形態において多くの変形が可能であることを容易に認識する。したがって、全てのこのような変形は、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明における無線IC通信装置は、所有者の意図しないところで情報が漏洩してしまうことを防止し得るという効果を有し、無線ICタグや非接触ICカード等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
これら、並びに、発明の他の目的、効果、及び特徴は、発明の特定の実施の形態を説明する添付図面とともに行なう説明から明らかである。
【図1A】一般的な無線ICタグの使用形態を示す図である。
【図1B】一般的な非接触ICカードの使用形態を示す図である。
【図2】一般的なアンチコリジョン機能を示すタイミングチャートである。
【図3】一般的な無線IC通信装置の初期応答動作を示すフローチャートである。
【図4】一般的な無線ICタグのハードウェア構成図である。
【図5】一般的な非接触ICカードのハードウェア構成図である。
【図6A】本発明における無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。
【図6B】応答スロット情報取得部を備えた無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。
【図7】本発明における無線IC通信装置の初期応答動作を示すフローチャートである。
【図8】一般的なリーダライタの動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。
【図10】本発明における応答スロット情報の一例を示す図である。
【図11】実施の形態2におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。
【図12】実施の形態2における別のアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。
【図13】実施の形態3におけるアンチコリジョン機能無効化処理のタイムチャートである。
【図14】本発明における無線ICタグの使用形態を示す図である。
【図15】本発明における非接触ICカードの使用形態を示す図である。
【図16】実施の形態6における無線IC通信装置のソフトウェア構成図である。
【図17】実施の形態1から3における無線IC通信装置の特徴的な構成部を集積回路化した場合の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によってリーダライタと通信する無線IC通信装置であって、
前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得部と、
少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶部と、
前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定部と、
決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答部と
を備える無線IC通信装置。
【請求項2】
前記応答スロット情報は、全部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報であり、
前記応答スロット決定部は、前記タイムスロット数の全部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする
請求項1に記載の無線IC通信装置。
【請求項3】
前記応答スロット情報は、一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の情報であり、
前記応答スロット決定部は、前記タイムスロット数の一部のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする
請求項1に記載の無線IC通信装置。
【請求項4】
前記応答スロット情報は、所定の無線IC通信装置が発生させる乱数系列であり、
前記応答スロット決定部は、前記乱数系列によって特定されるタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする
請求項1に記載の無線IC通信装置。
【請求項5】
前記応答スロット決定部は、2つ以上のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする
請求項3に記載の無線IC通信装置。
【請求項6】
前記応答スロット決定部は、連続する2つ以上のタイムスロットにおいて応答を返す旨の決定をする
請求項3に記載の無線IC通信装置。
【請求項7】
前記無線IC通信装置は、さらに、
前記応答スロット情報を取得する応答スロット情報取得部を備え、
前記応答スロット情報記憶部は、前記応答スロット情報取得部によって取得された応答スロット情報を記憶する
請求項1に記載の無線IC通信装置。
【請求項8】
前記無線IC通信装置は、さらに、
所定の期間のみ前記応答スロット決定部の機能を有効にするためのタイマーを備える
請求項1に記載の無線IC通信装置。
【請求項9】
タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によってリーダライタと通信する無線IC通信装置の応答方法であって、
前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得ステップと、
少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶ステップと、
前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定ステップと、
決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答ステップと
を含む無線IC通信装置の応答方法。
【請求項10】
タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によって無線IC通信装置がリーダライタと通信するためのプログラムであって、
前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得ステップと、
少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶ステップと、
前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定ステップと、
決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によって無線IC通信装置がリーダライタと通信するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得ステップと、
少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報を記憶する応答スロット情報記憶ステップと、
前記タイムスロット数と前記応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定ステップと、
決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。
【請求項12】
タイムスロット方式又はスロットマーカ方式によってリーダライタと通信する無線IC通信装置に用いられる集積回路であって、
前記リーダライタからのリクエストコマンドに含まれるタイムスロット数を取得するスロット数取得部と、
前記タイムスロット数と、少なくとも1つの他の無線IC通信装置と同じタイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返すための条件を示す応答スロット情報とに基づいて、前記リーダライタに応答を返すタイムスロットを決定する応答スロット決定部と、
決定された前記タイムスロットにおいて前記リーダライタに応答を返す応答部と
を備える集積回路。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−500600(P2008−500600A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515504(P2006−515504)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/JP2005/009496
【国際公開番号】WO2005/116919
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】