説明

無線LAN制御装置及びプログラム

【課題】無線LANシステムの省電力化を図ること。
【解決手段】通信信号を送受信する送信部及び受信部を有する複数の端末装置と、予め定められた領域内に互いに間隔を置いて設置され端末装置それぞれとの間で通信信号を送受信する送信部及び受信部を有する複数のアクセスポイントと、の間の無線通信接続を制御する無線LAN制御装置である管理装置は、予め定められた領域に存在する前記端末装置の総数を検出し、予め定められた領域に存在する前記端末装置の個々の位置情報である分割領域を特定し、検出した端末装置の総数と特定した端末装置の個々の位置情報とに基づいて、アクセスポイントの送信部の送信制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)システムが多数構築されている。
この無線LANシステムは、予め定められた領域内において、複数の携帯端末やネットワーク機器等のユーザが使用する端末装置を接続するために無線を使用して構築されたLANであり、上記領域内に設けられた複数のアクセスポイントにユーザが使用する端末装置が無線により接続されることにより、他の端末装置や外部装置と通信可能としたシステムである。
【0003】
この無線LANシステムにおいて、特定の領域のみ多数の端末装置が集中したり、端末装置が大量のデータ通信を行ったりする場合には通信負荷が高まり、通信効率や通信品質の低下を招く。そのため、アクセスポイントは通信負荷が高くなると、接続する端末装置数を制限したり、各端末装置との通信レートを下げたりといった対策や、アクセスポイントの送信電力の出力値(送信電力値)を大きくする対策が採られている。しかし、接続する端末装置数の制限や通信レートの低減は、回線速度の低下や通信接続のリアルタイム性が低下し、また、送信電力値を大きくした場合には、接続される端末装置数が少ない場合において電力の無駄となってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、複数のアクセスポイントが自己の負荷状態を互いに送受信して把握し、自己アクセスポイントの負荷状態と近傍アクセスポイントの負荷状態とに基づいて送信電力を制御し、近傍アクセスポイントが高負荷状態で自己アクセスポイントが低負荷状態の場合には、近傍アクセスポイントの通信を補助すべく送信出力を上げる等の制御を行い、無線LANシステム全体の負荷分散を行う無線LANシステム用接続装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、接続中の端末数が予め定められた所定値を超えた場合、省電力状態の他のアクセスポイントに対して端末の接続を受け入れる通常状態に移行するよう指示するアクセスポイントが開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3634806号
【特許文献2】特開2003−174456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、アクセスポイントに接続される端末装置数等の負荷状態のみに応じてアクセスポイントの送信電力値を変更するものにすぎず、予め設定された領域内において端末装置がどのような位置であっても必ずアクセスポイントと通信可能となるように、予め設定された領域内において均一な通信状態を保つよう全てのアクセスポイントの送信電力値をある一定値に保つ必要がある。従って、端末装置と接続しないアクセスポイントであっても常に通信可能状態を保つ必要があり、依然として省電力化を図ることは難しい。
【0007】
本発明の課題は、無線LANシステムの省電力化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、通信信号を送受信する通信手段を有する複数の端末装置と、予め定められた領域内に互いに間隔を置いて設置され前記端末装置それぞれとの間で前記通信信号を送受信する通信手段を有する複数のアクセスポイントと、の間の無線通信接続を制御する無線LAN制御装置において、前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の総数を検出する端末数検出手段と、前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の個々の位置情報を特定する位置特定手段と、前記端末数検出手段により検出された前記端末装置の総数と、前記位置特定手段により特定された前記端末装置の個々の位置情報と、に基づいて、前記アクセスポイントの前記通信手段の送信制御を行うアクセスポイント制御手段と、を備えることを特徴としている。
更に、コンピュータを上述した請求項1記載の発明に示した主要手段として機能させるためのプログラムを提供する(請求項6記載の発明)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、6記載の発明によれば、予め定められた領域内に存在する端末装置の総数と端末装置の個々の位置情報とに基づいて、各アクセスポイントの通信手段の送信制御を行うことができるため、予め定められた領域内に存在する端末装置の分布状態に応じてアクセスポイントの通信手段による送信制御に要する消費電力を低減することができ、端末装置、アクセスポイント、無線LAN制御装置から構成される無線LANシステム全体の省電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、この発明にはこの実施の形態に限定されるものではない。また、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明の用語はこれに限定されない。
【0011】
[実施の形態1]
以下、図を参照して本発明の実施の形態1を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1に、本実施の形態1における無線LANシステム1の概略構成図を示す。
【0012】
図1に示すように、無線LANシステム1は、管理装置10と、当該管理装置10とネットワークNを介して接続された複数のアクセスポイント20と、各アクセスポイント20と無線を介して接続される複数の端末装置30とから構成されており、管理装置10は、アクセスポイント20と端末装置30との無線通信接続の制御を行う無線LAN制御装置としての機能を実現する。
【0013】
図2に、本実施の形態1における無線LANシステム1が適用される領域100と当該領域100内でのアクセスポイント20の配置例を示す。
【0014】
図2に示すように、本実施の形態1における無線LANシステム1が適用される領域100は、予め定められた領域であり、当該領域100は、当該領域100が複数に分割されることにより形成された複数の分割領域01〜09から構成されている。なお、領域100の分割の形態や分割領域の数は、図示に限らず任意に設定可能である。
【0015】
また、複数のアクセスポイント20は、領域100内に互いに間隔を置いて設置されている。なお、本実施の形態1においては、複数のアクセスポイント20を個々に識別するためA〜Iの識別符号を付している。
【0016】
図3に、本実施の形態1における管理装置10の制御ブロック図を示す。
図3に示すように、管理装置10は、制御部11、記憶部12、ネットワークI/F13を備えており、各部は電気的に接続されている。
【0017】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、記憶部12に記憶されている各種プログラム、各種テーブルやデータの中から指定されたプログラム、テーブルやデータを読み出し、記憶部12内のワークエリアに展開し、上記プログラムとの協働によって各種処理を実行し、その処理結果を記憶部12の所定の領域に格納するとともに、各部に指示して管理装置10及び無線LANシステム1の動作全般を統括的に制御する。
【0018】
また、制御部11は、領域100に存在する端末装置30の総数を検出する端末数検出手段と、各端末装置30がアクセスポイント20の後述する送信部から送信された通信信号を受信した際の電界強度を取得する第1電界強度取得手段と、取得された電界強度に基づいて領域100に存在する端末装置30の個々の位置情報を特定する位置特定手段と、端末装置30の総数と各端末装置30の個々の位置情報とに基づいてアクセスポイント20の後述する送信部の送信制御を行うアクセスポイント制御手段と、としての機能を実現する。
【0019】
本実施の形態1において、アクセスポイント20の送信部の送信制御としては、当該送信部の駆動状態の制御、即ち、当該送信部による通信信号の送信動作の可否及び通信信号を送信する際の送信電力値を制御することである。また、特定される位置情報は、複数の分割領域からなる領域100内において、端末装置が存在する分割領域である。
【0020】
更に制御部11は、特定された端末装置30の個々の位置情報(分割領域)と、記憶部12に記憶されている後述する端末電力値設定情報群としての端末電力値設定テーブル12cとに基づいて、端末装置30の後述する送信部の送信電力値を制御する端末制御手段としての機能を実現する。
【0021】
記憶部12は、制御部11により実行される各種プログラム及びこれらプログラムで使用される各種テーブルやデータ等が予め記憶されている領域と、当該プログラムや各種テーブルやデータが展開される領域とを有する記録媒体である。記憶部12は、磁気的、光学的記録媒体又は半導体等の電気的に消去及び書き換えが可能な不揮発性メモリで構成されており、管理装置10に固定的に設けられたもの又は着脱自在に装着されるものである。例えば、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)、OUM(カルコゲニド合金による相変化記録メモリ)等を挙げることができる。
【0022】
また、記憶部12は、位置特定テーブル12a、AP(Access Point)出力値設定テーブル12b、端末電力値設定テーブル12cが予め記憶されていると共に、AP別端末接続情報12dが生成され記憶される。
【0023】
位置特定テーブル12aは、領域100内に設置された全てのアクセスポイント20の送信部の送信電力値が最大電力値である場合において、端末装置30が各アクセスポイント20から送信された通信信号を受信した際の電界強度の組み合わせを示すパターンを複数有し、当該パターンが示す電界強度の組み合わせを受信し得る分割領域を示すテーブルである。
【0024】
図4に、アクセスポイント20から通信信号を送信する際の送信部の送信電力値が最大電力値である場合に生じる電界強度分布の一例を示し、図5に、位置特定テーブル12aの一例を示す。
【0025】
図4に示すアクセスポイント20の電界強度分布は、識別符号がBのアクセスポイント20の電界強度分布を示す。電界強度分布は、アクセスポイント20を中心として当該中心から半径方向に向かって電界強度が弱くなる。図4に示すアクセスポイント20を中心とした3つの一点鎖線の円は、電界強度が弱い順番に電界強度を示す番号(1、2、3)を付している。例えば、最も外側の円(「1」が付されている円)の内側の領域は、アクセスポイント20から送信された通信信号を端末装置30が受信可能な最低限の電界強度の領域であり、当該円の外側の領域では、アクセスポイント20から送信された通信信号を端末装置30は受信することはできない。
【0026】
従って、全てのアクセスポイント20の送信部の送信電力値が最大電力値である場合には、領域100内に存在する端末装置30の位置に応じて、当該端末装置30がアクセスポイント20の送信部から送信された通信信号を受信し得るアクセスポイント20及び当該通信信号を受信した際の電界強度が異なる。
【0027】
図5に示す位置特定テーブル12aに示される各アクセスポイント20(識別符号A〜I)と複数のパターンとが対応する0〜3の数字は、端末装置30が各アクセスポイント20の送信部から送信された通信信号を受信した際の電界強度を示している。また、各パターンに対して端末装置30が存在する分割領域が設定されている。
【0028】
例えば、ある端末装置30が識別符号Aのアクセスポイント20から送信される通信信号を電界強度3で受信している場合、パターン1に該当し、当該端末装置30は分割領域01に存在していると特定される。
【0029】
AP電力値設定テーブル12bは、端末装置30の総数と、当該総数における端末装置30が存在する分割領域の組み合わせを示すパターンを複数有し、当該パターン毎に各アクセスポイント20の送信電力値が設定されたテーブルである。
【0030】
図6に、AP電力値設定テーブル12bの一例を示す。
ここで、本実施の形態1におけるアクセスポイント20は、最大3台の端末装置30に対して通信信号を送信可能であるものとする。
【0031】
図6に示すように、AP電力値設定テーブル12bは、最小駆動状態であるパターン1から最大駆動状態であるパターンXまでの複数のパターンにより形成されている。
【0032】
図7(a)、(b)に、アクセスポイント20の送信部により通信信号を送信可能な範囲及び端末装置30の配置例を示す。なお、以下、図中に示すアクセスポイント20は、送信部により通信信号の送信が可能な状態(送信可能状態)のアクセスポイント20を実線の四角形で示し、送信部により通信信号の送信不可の状態(送信停止状態)のアクセスポイント20を破線の四角形で示し、各四角形の内部にアクセスポイント20の識別符号を示す。また、図中に示す三角形は、端末装置30を示す。更に、各アクセスポイント20を中心とした円は、設定された送信電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲を示す。
【0033】
図7(a)に、最小駆動状態である場合のアクセスポイント20の送信部により通信信号を送信可能な範囲及び端末装置30の配置例を示す。
図7(a)に示す最小駆動状態であるパターン1は、領域100内に存在する端末装置30の総数が最小値(1台)であり、且つ、領域100内に存在する端末装置30に対して通信信号の送信に要する最も少ない台数のアクセスポイント20が駆動されている状態である。図7(a)では、A,C,Hの3台のアクセスポイント20の送信部の送信電力値が最大電力値(ここでは3)に設定され駆動されている。
【0034】
図7(b)に、最大駆動状態である場合のアクセスポイント20の送信部により通信信号を送信可能な範囲及び端末装置30の配置例を示す。
図7(b)に示す最大駆動状態であるパターンXは、領域100内に存在可能な端末装置30の総数が最大値(27台)であり、且つ、全てのアクセスポイント20(A〜I)の送信部の送信電力値が最小値(ここでは1)に設定され駆動されている状態である。
【0035】
端末電力値設定テーブル12cは、各分割領域と各アクセスポイント20とに基づいて、端末装置30の送信電力値が予め定められたテーブルである。
【0036】
図8に、端末電力値設定テーブル12cの一例を示す。
図8に示すように、端末電力値設定テーブル12cには、分割領域毎(01〜09)に、端末装置30からアクセスポイント20(A〜I)それぞれに通信信号を送信する際に最低限必要とされる端末装置の送信部の送信電力値が予め定められている。
【0037】
例えば、分割領域01に存在する端末装置30は、識別符号がAのアクセスポイント20に対して通信信号を最低限送信可能に接続する場合には端末装置30の送信電力値は1であり、識別符号がB又はDのアクセスポイント20に対して通信信号を最低限送信可能に接続する場合には端末装置30の送信電力値は2であり、識別符号がEのアクセスポイント20に対して通信信号を最低限送信可能に接続する場合には端末装置30の送信電力値は3であり、識別符号がC、F、G、H、Iのいずれかのアクセスポイント20に対して通信信号を送信可能に接続することは不可であり端末装置30の送信電力値は0(接続不可)、が設定されている。
【0038】
従って、端末電力値設定テーブル12cを参照して、端末装置30が存在する分割領域と当該端末装置30が接続されるアクセスポイント20に応じて、端末装置30の送信電力値を設定することができる。
【0039】
AP別端末接続情報12dは、アクセスポイント20毎に、接続されている端末装置30及び当該端末装置30が存在する分割領域が記憶されている。このAP別端末接続情報12dは、アクセスポイント20に接続される端末装置30の位置の変動や駆動の有無に基づいて随時更新される。
【0040】
ネットワークI/F13は、所定の通信方式により有線又は無線を用いてネットワークNを介して接続されるアクセスポイント20と通信を行うための通信制御を行う。
【0041】
図9に、アクセスポイント20の制御ブロック図を示す。
図9に示すように、アクセスポイント20は、制御部21、記憶部22、各端末装置30それぞれとの間で通信信号を送受信する通信手段としての送信部23及び受信部24、ネットワークI/F25を備えており、各部は電気的に接続されている。
【0042】
制御部21は、CPU等を備え、記憶部22に記憶されている各種プログラム、各種テーブルやデータの中から指定されたプログラム、テーブルやデータを読み出し、記憶部22内のワークエリアに展開し、上記プログラムとの協働によって各種処理を実行し、その処理結果を記憶部22の所定の領域に格納するとともに、各部に指示してアクセスポイント20の動作全般を統括的に制御する。
【0043】
また、制御部21は、管理装置10からの指示に基づき、管理装置10から当該アクセスポイント20と接続されている端末装置30への通信信号の仲介や、送信部23の駆動状態の変更指示を行う。
【0044】
記憶部22は、制御部21により実行される各種プログラム及びこれらプログラムで使用される各種テーブルやデータ等が予め記憶されている領域と、当該プログラムや各種テーブルやデータが展開される領域とを有する記録媒体である。記憶部22は、磁気的、光学的記録媒体又は半導体等の電気的に消去及び書き換えが可能な不揮発性メモリで構成されており、アクセスポイント20に固定的に設けられたもの又は着脱自在に装着されるものである。例えば、FeRAM、MRAM、OUM等を挙げることができる。
【0045】
また記憶部22は、AP電力値テーブル22aが予め記憶されている。
AP電力値テーブル22aは、送信部23により通信信号を送信する際の複数の送信電力値から形成されており、本実施の形態1においては、送信部23により通信信号を送信可能な範囲が最大となる送信電力値(最大電力値)を3、最小となる送信電力値(最小電力値)を1、最大電力値と最小電力値との間の送信電力値を2とするテーブルである(不図示)。
【0046】
送信部23は、無線部23a、出力調整部23b、アンテナ部23cを有しており、通信信号を送信する機能を実現する。
無線部23aは、制御部21により指示された通信信号を無線信号に変換する回路であり、無線信号を出力調整部23bに出力する。出力調整部23bは、制御部21から指示された当該送信部23の駆動状態を示す情報(通信信号の送信動作の可否及び通信信号を送信する際の送信電力値)に応じて無線信号を送信する際の送信電力値を調整する回路であり、例えばアッテネータを挙げることができる。アンテナ部23cは、出力調整部23bにより調整された送信電力値に応じて無線信号を端末装置30に送信する。
【0047】
受信部24は、端末装置30から送信される通信信号である無線信号を受信し、受信した無線信号を制御部21に出力する。受信部24は、常に駆動又は定期的に駆動されるものである。
【0048】
ネットワークI/F25は、所定の通信方式により有線又は無線を用いてネットワークNを介して接続される管理装置10と通信を行うための通信制御を行う。
【0049】
図10に、端末装置30の制御ブロック図を示す。
図10に示すように、端末装置30は、制御部31、記憶部32、通信信号を送受信する通信手段としての送信部33及び受信部34、操作表示部35を備えており、各部は電気的に接続されている。
【0050】
制御部31は、CPU等を備え、記憶部32に記憶されている各種プログラム、各種テーブルやデータの中から指定されたプログラム、テーブルやデータを読み出し、記憶部32内のワークエリアに展開し、上記プログラムとの協働によって各種処理を実行し、その処理結果を記憶部32の所定の領域に格納するとともに、各部に指示して端末装置30の動作全般を統括的に制御する。
【0051】
また、制御部31は、アクセスポイント20を介して管理装置10から送信される指示に基づき、送信部33の送信電力値の変更指示を行う。
【0052】
記憶部32は、制御部31により実行される各種プログラム及びこれらプログラムで使用される各種テーブルやデータ等が予め記憶されている領域と、当該プログラムや各種テーブルやデータが展開される領域とを有する記録媒体である。記憶部32は、磁気的、光学的記録媒体又は半導体等の電気的に消去及び書き換えが可能な不揮発性メモリで構成されており、端末装置30に固定的に設けられたもの又は着脱自在に装着されるものである。例えば、FeRAM等を挙げることができる。
【0053】
また記憶部32は、端末電力値テーブル32aが予め記憶されている。
端末電力値テーブル32aは、送信部33により通信信号を送信する際の複数の送信電力値から形成されており、本実施の形態1においては、送信部33により通信信号を送信可能な範囲が最大となる送信電力値(最大電力値)を3、最小となる送信電力値(最小電力値)を1、最大電力値と最小電力値との間の送信電力値を2とするテーブルである(不図示)。
【0054】
送信部33は、無線部33a、出力調整部33b、アンテナ部33cを有しており、アクセスポイント20に通信信号を送信する機能を実現する。
無線部33aは、制御部31により指示された通信信号を無線信号に変換する回路であり、無線信号を出力調整部33bに出力する。出力調整部33bは、制御部31から指示された当該送信部33の送信電力値に応じて無線信号を送信する際の送信電力値を調整する回路であり、例えばアッテネータを挙げることができる。アンテナ部33cは、出力調整部33bにより調整された送信電力値に応じて無線信号をアクセスポイント20に送信する。
【0055】
受信部34は、アクセスポイント20から送信される通信信号である無線信号を受信すると共に、受信した通信信号の電界強度を検知する手段であり、受信した無線信号や検知した電界強度を制御部31に出力する。受信部34は、常に駆動又は定期的に駆動されるものである。
【0056】
操作表示部35は、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electronic Luminescent)素子等を用いた表示画面を備え、制御部31から入力される表示制御信号に従って所要の表示処理を行う。また、操作表示部35は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルや、テンキー、メニューキー、十字キー及び各種機能キー等のハードキーを有し、タッチパネルやハードキーが押下されることにより生じる操作信号を制御部31に出力する。
【0057】
次に、本実施の形態1の動作を説明する。
図11に、本実施の形態1におけるアクセスポイント20の送信部23の駆動開始時の処理を示すラダーチャートを示す。なお、図11に示すラダーチャートは、複数の端末装置30のうち任意の端末装置30と、複数のアクセスポイント20のうち任意のアクセスポイント20と、管理装置10との間の処理である。
【0058】
まず、全てのアクセスポイント20の送信部23による通信信号の送信動作が停止している状態において、端末装置30の送信部33の送信電力値(以下、端末電力値)が任意の電力値で駆動されて通信信号が送信されると、当該端末装置30を中心とした電界強度分布が発生する(ステップS1)。
【0059】
図12に、ステップS1における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。
なお、以下、図中に示す三角形で示された端末装置30は、当該三角形の内部に各端末装置30の識別符号(イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ)を示し、以下の図も同様とする。更に、各端末装置30を中心とした円は、端末装置30の送信部33の端末電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲を示しており、この範囲内に電界が生じている。なお、図12において、分割領域を示す番号(01〜09)は省略している。
【0060】
ステップS1は、例えば、図12に示すように、領域100内の全てのA〜Iのアクセスポイント20の送信部23の駆動が停止している状態であって、領域100内において端末装置30を識別する符号としてイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘがそれぞれ付された各端末装置30を中心として電界が発生した状態である。
【0061】
アクセスポイント20は、複数の端末装置30のうち、少なくともいずれか1つの端末装置30の送信部33が駆動されて通信信号が送信されることにより発生する電界を検知したか否かを判別し(ステップS2)、電界を検知していないと判別した場合は(ステップS2;No)、電界を検知するまで待機する。
【0062】
アクセスポイント20は、端末装置30により発生する電界を検知した場合(ステップS2;Yes)、領域100内において通信接続を行う端末装置30が存在する旨を管理装置10に送信する(ステップS3)。
【0063】
管理装置10は、通信接続を行う端末装置30が存在する旨を受信すると、全てのアクセスポイント20に対し、送信電力値を最大電力値に設定して送信部23を駆動させる指示を送信する(ステップS4)。
以下、アクセスポイント20の送信部23の送信電力値をAP電力値と略す。
【0064】
アクセスポイント20は、管理装置10から送信された指示に従って、AP電力値を最大電力値に設定して送信部23を駆動して通信信号を送信すると、アクセスポイント20を中心とした電界強度分布が発生する(ステップS5)。
【0065】
図13に、ステップS5における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。なお、図13では、各端末装置30の送信部33の端末電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲、分割領域を示す番号(01〜24)は省略している。
【0066】
ステップS5は、例えば、図13に示すように、領域100内の全てのA〜Iのアクセスポイント20の送信部33のAP電力値を最大電力値として駆動しており、各アクセスポイント20を中心として電界強度分布が発生している。
【0067】
端末装置30は、アクセスポイント20から送信される通信信号を受信すると共に受信した通信信号の電界強度を検知し(ステップS6)、通信信号が受信できたアクセスポイント20のうち、通信信号の電界強度が最大であるアクセスポイント20と接続する(ステップS7)。以下、端末装置30がアクセスポイント20から送信される通信信号を受信した際の電界強度を、AP電界強度と略す。
【0068】
ステップS7により、端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との通信接続が確立される(ステップS8)。
【0069】
なお、ステップS8は、端末装置30側からの要求により、当該端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との間の通信接続が確立した状態を示しており、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0070】
端末装置30は、ステップS6において検知したAP電界強度を、通信接続が確立したアクセスポイント20に対して送信する(ステップS9)。
【0071】
アクセスポイント20は、端末装置30と通信接続が確立した後、当該通信接続が確立した各端末装置30から送信されるAP電界強度を管理装置10に送信する(ステップS10)。
【0072】
管理装置10は、各アクセスポイント20から送信される各アクセスポイント20と通信接続が確立した端末装置30と、各端末装置30のAP電界強度とに基づいて、領域100内において通信接続を行う端末装置30の総数を算出し(ステップS11)、また、位置特定テーブル12aを参照して、各端末装置30の位置情報として、各端末装置30が存在する分割領域を特定する(ステップS12)。
【0073】
ステップS12において、例えば、図13に示す識別符号がイの端末装置30が受信したAP電界強度として、識別符号がBのアクセスポイント20のAP電界強度が2、識別符号がCのアクセスポイント20のAP電界強度が3、識別符号がEのアクセスポイント20のAP電界強度が1、識別符号がFのアクセスポイント20のAP電界強度が2、である場合には、位置特定テーブル12aのパターンnに該当するため、パターンnに対する分割領域が03であることから、当該端末装置30が存在する分割領域は03であると特定される。
【0074】
管理装置10は、AP電力値設定テーブル12bを参照して、算出した端末装置30の総数と、特定された端末装置30の個々の分割領域とに基づいて、該当するパターンを特定し、当該パターンに対応した各アクセスポイント20の送信部23の駆動状態、即ち、当該送信部23による通信信号の送信動作の可否及びAP電力値を設定する(ステップS13)。
【0075】
なお、ステップS13において、端末装置30の総数及び端末装置30が存在する分割領域の組み合わせが同じパターンが複数存在している場合には、駆動されるアクセスポイント20の数が最も少ないパターンを設定する。
【0076】
ステップS13において、例えば、図13に示すように、端末装置30の総数が6であって、分割領域01、03、04、06、08、09に1台ずつ端末装置30が存在している場合には、図6に示すAP電力値設定テーブル12bのパターンmに該当するため、識別符号がA、C、Hのアクセスポイント20の送信部23のAP電力値を3(最大電力値)で通信信号の送信動作を行わせ、他のアクセスポイント20の送信部23は通信信号の送信動作停止、という駆動状態が設定される。
【0077】
管理装置10は、各アクセスポイント20に対して、設定した駆動状態に基づいて送信部23の駆動状態を変更させる指示を送信する(ステップS14)。
【0078】
アクセスポイント20は、管理装置10から駆動状態の変更指示を受信すると、通信接続が確立している端末装置30に対して、管理装置10から受信した自らの送信部23による通信信号の送信可否を送信する(ステップS15)。
【0079】
ステップS15後、又は端末装置30が通信接続を確立しているアクセスポイント20から当該アクセスポイントの送信部23による通信信号の送信可否の情報を受信した後、通信接続が確立されていた端末装置30とアクセスポイント20との通信接続が切断される(ステップS16)。
【0080】
なお、ステップS16においては、アクセスポイント20側から通信接続されている端末装置30との通信接続を切断する場合、又は、端末装置30側から通信接続されているアクセスポイント20との通信接続を切断する場合、のいずれか一方の動作の速い方により実行されるため、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0081】
アクセスポイント20は、端末装置30との通信接続を切断した後、管理装置10から受信した駆動状態の変更指示に応じて、駆動状態を変更する(ステップS17)。駆動状態の変更とは、送信部23による通信信号の送信動作が指示されている場合には、送信部23の出力調整部23bによりAP電力値を設定されたAP電力値に変更し、送信部23による通信信号の送信動作停止が指示されている場合には、本処理を終了する。
【0082】
送信部23による通信信号の送信動作が指示され、送信部23の出力調整部23bにより設定されたAP電力値に変更した場合、変更されたAP電力値に応じて、新たに当該アクセスポイント20を中心とした電界強度分布が発生する。
【0083】
端末装置30は、ステップS8において通信接続が確立していたアクセスポイント20との通信接続が切断された後であって、新たに通信信号を受信可能なアクセスポイント20のうち、当該通信信号を受信した際のAP電界強度を検知すると、通信信号が受信できたアクセスポイント20のうち、通信信号の電界強度が最大であるアクセスポイント20と接続し、端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との通信接続が確立される(ステップS18)。
【0084】
なお、ステップS18は、端末装置30側からの要求により、当該端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との間の通信接続が確立した状態を示しており、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0085】
そして、端末装置30は、通信接続が確立したアクセスポイント20の識別符号を当該通信接続が確立したアクセスポイント20に送信する(ステップS19)。アクセスポイント20は、通信接続が確立した各端末装置30の識別符号と当該端末装置30が送信してきたアクセスポイント20の識別符号を管理装置10に送信する(ステップS20)。
【0086】
管理装置10は、端末電力値設定テーブル12cを参照して、各アクセスポイント20から受信した各端末装置30の識別符号と、当該端末装置30が接続されているアクセスポイント20の識別符号と、ステップS12において特定された各端末装置30が存在する分割領域とに応じて、各端末装置30の送信部33の送信電力値の設定を行う(ステップS21)。
【0087】
管理装置10は、各端末装置30の端末電力値の変更指示を駆動しているアクセスポイント20に送信し(ステップS22)、本処理を終了する。
【0088】
アクセスポイント20は、管理装置10から受信した各端末装置30端末電力値を自身と通信接続が確立している端末装置30に送信し(ステップS23)、本処理を終了する。
【0089】
端末装置30は、送信部33の出力調整部33bによりアクセスポイント20から受信した端末電力値に応じて送信電力値を変更し(ステップS24)、本処理を終了する。
【0090】
図14に、図11に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。なお、図14は、アクセスポイント20のAP電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲を実線の円で示し、端末装置30の端末電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲をアクセスポイント20のAP電力値に応じて通信信号を送信可能な範囲を示す線よりも太い線の円で示す。なお、図14において、分割領域を示す番号(01〜09)は省略している。
【0091】
図14に示すように、識別符号がA,C,Hの3台のアクセスポイント20は、AP電力値が最大電力値に設定された状態で駆動されており、他のアクセスポイント20は、送信部23が停止常態となっている。そして、領域100内の各端末装置30(イ〜ヘ)は、送信部23駆動されているアクセスポイント20のうちいずれか1つと通信接続可能な端末電力値に応じて駆動されている。即ち、識別符号がホ、ヘの端末装置30は、識別符号がAのアクセスポイント20と接続される端末電力値が設定され、識別符号がイ、ロの端末装置30は、識別符号がCのアクセスポイント20と接続される端末電力値が設定され、識別符号がハ、ニの端末装置30は、識別符号がHのアクセスポイント20と接続される端末電力値が設定される。
【0092】
以上、図11に示す処理が終了すると、AP別端末接続情報12dが生成される。
図15(a)に、図11に示す処理終了後に生成されるAP別端末接続情報12dの一例を示す。
【0093】
図15(a)に示すAP別端末接続情報12dは、図14に対応するAP別端末接続情報である。図15(a)に示すように、識別符号がAのアクセスポイント20には、分割領域01に存在する識別符号がホの端末装置30と、分割領域04に存在する識別符号がヘの端末装置30が接続されていることが示されている。また、識別符号がCのアクセスポイント20には、分割領域03に存在する識別符号がイの端末装置30と、分割領域06に存在する識別符号がロの端末装置30が接続されていることが示されている。識別符号がHのアクセスポイント20には、分割領域08に存在する識別符号がハの端末装置30と、分割領域09に存在する識別符号がニの端末装置30が接続されていることが示されている。
【0094】
次に、図16に、本実施の形態1において、いずれかのアクセスポイント20の送信部23が通信信号を送信している場合の処理を示すラダーチャートを示す。なお、図16に示すラダーチャートは、複数の端末装置30のうち任意の端末装置30と、複数のアクセスポイント20のうち任意のアクセスポイント20と、管理装置10との間の処理である。
【0095】
端末装置30は、送信部33による通信信号の送信の開始又は停止、即ち、送信部33の駆動の開始又は停止を行う(ステップS31)。また、アクセスポイント20は、通信接続している端末装置30の数に増減が発生したか否かを判別し(ステップS32)、端末装置30の数に増減が発生していないと判別した場合(ステップS32;No)、端末装置30の数の増減が発生するまで待機する。
【0096】
通信接続している端末装置30の数の増減の発生の有無は、アクセスポイント20が受信する端末装置30の送信部33により通信信号が送信された際に発生する電界の有無に基づいて判別することができる。
【0097】
図17に、ステップS31における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。なお、図17では、各端末装置30の送信部33により通信信号を送信可能な範囲、分割領域を示す番号(01〜09)は省略している。ステップS31は、例えば、図14に示す状態から図17に示す状態に移った場合のように、識別符号がト、チ、リ、ヌの端末装置30の送信部33により通信信号が送信された状態である。
【0098】
アクセスポイント20は、端末装置30の数に増減が発生したと判別した場合(ステップS32;Yes)、接続されている端末装置30の数に変更が生じた旨を管理装置10に送信する(ステップS33)。
【0099】
管理装置10は、いずれかのアクセスポイント20から接続されている端末装置30の数の変更発生の旨を受信すると、全てのアクセスポイント20に対し、端末装置30の位置を確認する指示を送信する(ステップS34)。
【0100】
端末装置30と通信接続しているアクセスポイント20は、管理装置10から端末装置30の位置を確認する指示を受信すると、通信接続している端末装置30に対して、各端末装置30の位置を確認する指示を送信する(ステップS35)。
【0101】
また、全てのアクセスポイント20は、管理装置10から端末装置30の位置を確認する指示を受信すると、AP電力値を最大電力値に設定して送信部23を駆動して通信信号を送信し、アクセスポイント20を中心とした電界強度分布を発生させる(ステップS36)。
【0102】
端末装置30は、アクセスポイント20から送信される通信信号を受信すると共にAP電界強度を検知し、また、通信接続しているアクセスポイント20の識別符号を当該通信接続しているアクセスポイント20に送信する(ステップS37)。
【0103】
アクセスポイント20は、通信接続している各端末装置30から送信されるAP電界強度及び各端末装置30が通信接続しているアクセスポイント20の識別符号と、通信接続している各端末装置30の識別符号と、を管理装置10に送信する(ステップS38)。
【0104】
管理装置10は、各アクセスポイント20から送信される各アクセスポイント20と通信接続がされている端末装置30と、各端末装置30のAP電界強度とに基づいて、領域100内において通信を行う端末装置30の総数を算出し(ステップS39)、また、位置特定テーブル12aを参照して、各端末装置30の位置情報として、各端末装置30が存在する分割領域を特定する(ステップS40)。
【0105】
管理装置10は、各端末装置30が存在する分割領域、各端末装置30が接続しているアクセスポイント20の識別符号に基づいて、AP別端末接続情報12dを更新する(ステップS41)。
【0106】
図15(b)に、ステップS41において更新されるAP別端末接続情報12dの一例を示す。
図15(b)に示す更新されたAP別端末接続情報12dは、図17に対応するAP別端末接続情報である。図15(b)に示すように、識別符号がAのアクセスポイント20には、分割領域01に存在する識別符号がホの端末装置30、分割領域04に存在する識別符号がヘの端末装置30、分割領域04に存在する識別符号がトの端末装置30、分割領域01に存在する識別符号がリの端末装置30の4台の端末装置30が接続されていることが示されている。また、識別符号がCのアクセスポイント20には、分割領域03に存在する識別符号がイの端末装置30、分割領域06に存在する識別符号がロの端末装置30が接続されていることが示されている。識別符号がHのアクセスポイント20には、分割領域08に存在する識別符号がハの端末装置30、分割領域09に存在する識別符号がニの端末装置30、分割領域04に存在する識別符号がチの端末装置30、分割領域07に存在する識別符号がヌの端末装置30の4台の端末装置30が接続されていることが示されている。
【0107】
本実施の形態1においては、各アクセスポイント20は、最大3台の端末装置30に対して信号を送信可能であるものであることから、識別符号がA及びHのアクセスポイント20には4台の端末装置30が接続される場合には、識別符号がA及びHのアクセスポイント20に接続される端末装置30は、充分な通信接続を確立できない恐れがある。
【0108】
管理装置10は、AP別端末接続情報12dを更新した後、AP電力値設定テーブル12bを参照して、算出した端末装置30の総数と、端末装置30毎の分割領域とに基づいて、該当するパターンを特定し、当該パターンに対応した各アクセスポイント20の送信部23の駆動状態として、通信信号の送信の可否及びAP電力値を設定する(ステップS42)。
【0109】
なお、ステップS42において、端末装置30の総数及び端末装置30が存在する分割領域の組み合わせが同じパターンが複数存在している場合には、駆動されるアクセスポイント20の数が最も少ないパターンを設定する。
【0110】
ステップS42において、例えば、図17に示すように、端末装置30の総数が10であって、分割領域01に2台、分割領域04に3台、分割領域03、06、08、09に1台ずつ端末装置30が存在している場合には、図6に示すAP電力値設定テーブル12bのパターンnに該当するため、識別符号がA、Dのアクセスポイント20の送信部23のAP電力値を1(最小電力値)、識別符号がC,Hのアクセスポイント20の送信部23のAP電力値を3(最大電力値)で通信信号の送信動作を行わせ、他のアクセスポイント20の送信部23は通信信号の送信動作停止、という駆動状態が設定される。
【0111】
管理装置10は、全てのアクセスポイント20に対して、設定した駆動状態に基づいて送信部23を変更させる指示を送信する(ステップS43)。
【0112】
ステップS44〜ステップS53は、図11に示したステップS15〜ステップS24と同様の処理であるため、説明は省略する。
【0113】
なお、ステップS45は、ステップS16と同様に、アクセスポイント20側から通信接続されている端末装置30との通信接続を切断する場合、又は、端末装置30側から通信接続されているアクセスポイント20との通信接続を切断する場合、のいずれか一方の動作の速い方により実行されるため、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0114】
また、ステップS47は、ステップS18と同様に、端末装置30側からの要求により、当該端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との間の通信接続が確立した状態を示しており、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0115】
図18に、ステップS46における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。なお、図18では、各端末装置30の送信部33により通信信号が送信可能な能範囲、分割領域を示す番号(01〜09)は省略している。
【0116】
図18は、例えば、図17に示す状態から、管理装置10から受信した駆動状態の変更指示に応じてアクセスポイント20の送信部23の駆動状態が変更された状態である。図18に示すように、識別符号がAのアクセスポイント20の送信部23の送信電力値は、図17では最大電力値(3)で通信信号が送信されていたものが最小電力値(1)に変更され、通信信号の送信可能な範囲が縮小される。また、新たに、識別符号がDのアクセスポイント20の送信部23は、送信電力値が最小電力値(1)で通信信号を送信され、識別符号がDのアクセスポイント20の送信部23による通信信号の送信可能な範囲が発生する。
【0117】
図19に、図16に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。なお、図19において、アクセスポイント20の送信部23により通信信号を送信可能な範囲は図18に示しているため省略し、また、分割領域を示す番号(01〜09)を省略している。
【0118】
図19に示すように、領域100内の各端末装置30(イ〜ヌ)は、送信部23が駆動されているアクセスポイント20のうちいずれか1つと通信接続可能な端末電力値に変更されて駆動される。
例えば、領域100内において図14に示す状態から識別符号がト〜ヌの端末装置30が増加した場合には、識別符号がヘの端末装置30の送信部33の端末電力値は、識別符号がDのアクセスポイント20と接続される端末電力値に変更される。
【0119】
詳しくは、識別符号がリの端末装置30の送信部33の端末電力値は、識別符号がAのアクセスポイント20と接続される端末電力値が設定され、識別符号がト、チの端末装置30の送信部33の端末電力値は、識別符号がDのアクセスポイント20と接続される端末電力値が設定され、識別符号がヌの端末装置30の送信部33の端末電力値は、識別符号がHのアクセスポイント20と接続される端末電力値にそれぞれ設定される。
【0120】
以上のように、本実施の形態1によれば、予め定められた領域100内に存在する端末装置30の総数と特定された端末装置30の個々の分割領域とに基づいて、各アクセスポイント20の送信部23の送信制御を行うことができるため、領域100内に存在する端末装置30の配置分布状態に応じてアクセスポイント20の送信部23による送信制御に要する消費電力を低減することができ、端末装置30、アクセスポイント20、無線LAN制御装置である管理装置10から構成される無線LANシステム1全体の省電力化を図ることができる。
【0121】
また、端末装置30の位置情報(端末装置30が存在する分割領域)を、各端末装置30がアクセスポイント20から送信された通信信号の電界強度に基づいて特定することができるため、GPS(Global Positioning System)等の特別な装置や回路を設けずとも、予め定められた領域内での端末装置の位置を特定することができる。
【0122】
更に、端末装置30の送信部33の送信電力値を、アクセスポイント20との通信接続に最低限必要とされる送信電力値に調整することができるため、端末装置30が消費する消費電力の低減を図ることができ、無線LANシステム1全体の省電力化を図ることができる。
【0123】
[実施の形態2]
以下、図を参照して本発明の実施の形態2を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
本実施の形態2における無線LANシステムの概略構成は、実施の形態1の図1に示す無線LANシステム1の管理装置10が管理装置40になる以外は略同様であるため、図示及び説明は省略する。また、本実施の形態2における無線LANシステム1が適用される領域及び当該領域内でのアクセスポイント20の配置例は、実施の形態1の図2に示す図と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0124】
図20に、本実施の形態2における管理装置40の制御ブロック図を示す。
図20に示す管理装置40において、図3に示す実施の形態1の管理装置10と同様の部分には同様の番号を付して説明は省略し、異なる部分のみ説明する。
【0125】
図20に示すように、本実施の形態2の管理装置40は、制御部41、記憶部42、ネットワークI/F13を備えており、各部は電気的に接続されている。
【0126】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、記憶部42に記憶されている各種プログラム、各種テーブルやデータの中から指定されたプログラム、テーブルやデータを読み出し、記憶部42内のワークエリアに展開し、上記プログラムとの協働によって各種処理を実行し、その処理結果を記憶部42の所定の領域に格納するとともに、各部に指示して管理装置40及び無線LANシステム1の動作全般を統括的に制御する。
【0127】
また、制御部41は、領域100に存在する端末装置30の総数を検出する端末数検出手段と、各アクセスポイント20が端末装置30の送信部から送信された通信信号を受信した際の電界強度を取得する第2電界強度取得手段と、取得された電界強度に基づいて領域100に存在する端末装置30の個々の位置情報を特定する位置特定手段と、端末装置30の総数と各端末装置30の個々の位置情報とに基づいてアクセスポイント20の後述する送信部の送信制御を行うアクセスポイント制御手段と、としての機能を実現する。
【0128】
本実施の形態2において、アクセスポイント20の送信部の送信制御としては、当該送信部の駆動状態の制御、即ち、当該送信部による通信信号の送信動作の可否及び通信信号を送信する際の送信電力値を制御することである。また、特定される位置情報は、複数の分割領域からなる領域100内において、端末装置が存在する分割領域である。
【0129】
更に制御部41は、特定された端末装置30毎の位置情報(分割領域)と、記憶部42に記憶されている端末電力値設定テーブル12cとに基づいて、端末装置30が有する後述する送信部の駆動状態としての送信電力の出力値を制御する端末制御手段としての機能を実現する。
【0130】
記憶部42は、制御部41により実行される各種プログラム及びこれらプログラムで使用される各種テーブルやデータ等が予め記憶されている領域と、当該プログラムや各種テーブルやデータが展開される領域とを有する記録媒体である。記憶部42は、磁気的、光学的記録媒体又は半導体等の電気的に消去及び書き換えが可能な不揮発性メモリで構成されており、管理装置40に固定的に設けられたもの又は着脱自在に装着されるものである。例えば、FeRAM、MRAM、OUM等を挙げることができる。
【0131】
また、記憶部42は、位置特定テーブル42a、AP電力値設定テーブル12b、端末電力値設定テーブル12cが予め記憶されていると共に、AP別端末接続情報12dが生成され記憶される。
【0132】
位置特定テーブル42aは、端末装置30の送信部の送信電力値が最大電力値である場合において、ある端末装置30に着目して、各アクセスポイント20が当該端末装置30の送信部から送信された通信信号を受信した際の電界強度の組み合わせを示すパターンを複数有し、当該パターンが示す電界強度の組み合わせを受信し得る分割領域を示すテーブルである。
【0133】
図21に、端末装置30から通信信号を送信する際の送信部の送信電力値が最大電力値である場合に生じる電界強度分布の一例を示し、図22に、位置特定テーブル42aの一例を示す。
【0134】
図21に示す端末装置30の電界強度分布は、端末装置30を中心として当該中心から半径方向に向かって電界強度が弱くなる。図21に示す端末装置30を中心とした3つの二点鎖線の円は、電界強度が弱い順番に電界強度を示す番号(1、2、3)を付している。例えば、最も外側の円(「1」が付されている円)の内側の領域は、端末装置30から送信された通信信号をアクセスポイント20が受信可能な最低限の電界強度の領域であり、当該円の外側の領域では、端末装置30から送信された通信信号をアクセスポイント20は受信することはできない。
【0135】
従って、端末装置30の送信部の送信電力値が最大電力値である場合には、領域100内に存在する当該端末装置30の位置に応じて、領域100内に存在する各アクセスポイント20が端末装置30の送信部から送信された通信信号を受信し得る端末装置30及び当該通信信号を受信した際の電界強度が異なる。
【0136】
図22に示す位置特定テーブル42aに示される各アクセスポイント20(識別符号A〜I)と複数のパターンとが対応する0〜3の数字は、任意の端末装置30に対して各アクセスポイント20が当該端末装置30の送信部から送信された通信信号を受信した際の電界強度を示している。また、各パターンに対して端末装置が存在する分割領域が設定されている。
【0137】
例えば、ある端末装置30が送信した通信信号を識別符号Aのアクセスポイント20のみが電解強度3で受信している場合、パターン1に該当し、当該端末装置30は分割領域01に存在していると特定される。
【0138】
AP電力値設定テーブル12b、端末電力値設定テーブル12c、AP別端末接続情報12dは、実施の形態1のAP電力値設定テーブル12b、端末電力値設定テーブル12c、AP別端末接続情報12dと同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0139】
本実施の形態2のアクセスポイント20の構成は、図9に示す実施の形態1のアクセスポイント20と略同様であるため、図示は省略し、異なる内容のみ説明する。
【0140】
受信部24は、端末装置30から送信される通信信号である無線信号を受信すると共に、受信した通信信号の電界強度を検知する手段であり、受信した無線信号や検知した電界強度を制御部21に出力する。受信部24は、常に駆動又は定期的に駆動されるものである。
【0141】
本実施の形態2の端末装置30の構成は、図10に示す実施の形態1の端末装置30と略同様であるため、図示は省略し、異なる内容のみ説明する。
【0142】
受信部34は、アクセスポイント20から送信される通信信号である無線信号を受信し、受信した無線信号を制御部31に出力する。受信部34は、常に駆動又は定期的に駆動されるものである。
【0143】
次に、本実施の形態2の動作を説明する。
図23に、本実施の形態2におけるアクセスポイント20の送信部23の駆動開始時の処理を示すラダーチャートを示す。なお、図23に示すラダーチャートは、複数の端末装置30のうち任意の端末装置30と、複数のアクセスポイント20のうち任意のアクセスポイント20と、管理装置40との間の処理である。
【0144】
まず、全てのアクセスポイント20の送信部23による通信信号の送信動作が停止している状態において、端末装置30の送信部33の送信電力値(以下、端末電力値)が最大電力値で駆動されて通信信号が送信されると、当該端末装置30を中心とした電界強度分布が発生する(ステップS61)。
【0145】
図24に、ステップS61における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図を示す。
図24に示す三角形で示された端末装置30は、当該三角形の内部に各端末装置30の識別符号(イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ)を示し、以下の図も同様とする。なお、図24において、分割領域を示す番号(01〜09)は省略している。
【0146】
ステップS61は、例えば、図24に示すように、領域100内の全てのA〜Iのアクセスポイント20の送信部23の駆動が停止している状態であって、領域100内において識別符号がイ、ロ、ハ、ニ、ホ。ヘの各端末装置30が送信部33の端末電力値を最大電力値として通信信号を送信しており、各端末装置30を中心として図21に示すような電界強度分布が発生した状態である。
【0147】
アクセスポイント20は、複数の端末装置30のうち、少なくともいずれか1つの端末装置30の送信部33が駆動されて通信信号が送信されることにより発生する電界を検知したか否かを判別し(ステップS62)、電界を検知していないと判別した場合は(ステップS62;No)、電界を検知するまで待機する。
【0148】
アクセスポイント20は、端末装置30により発生する電界を検知した場合(ステップS62;Yes)、端末装置30から送信される受信可能な通信信号を受信すると共に受信した通信信号の電界強度を検知する(ステップS63)。
以下、アクセスポイント20が各端末装置30から送信される通信信号を受信した際の電界強度を、端末電界強度と略す。
【0149】
アクセスポイント20は、検知した各端末装置30の端末電界強度を管理装置40に送信する(ステップS64)。
【0150】
管理装置40は、各アクセスポイント20から送信される各アクセスポイント20の端末電界強度に基づいて、領域100内において存在する端末装置30の総数を算出し(ステップS65)、また、位置特定テーブル42aを参照して、各端末装置30の位置情報として、各端末装置30が存在する分割領域を特定する(ステップS66)。
【0151】
ステップS62において、例えば、図24に示す識別符号がイの端末装置30が送信した通信信号の電界強度に着目すると、識別符号がBのアクセスポイント20が受信した端末電界強度が2、識別符号がCのアクセスポイント20が受信した端末電界強度が3、識別符号がEのアクセスポイント20が受信した端末電界強度が1、識別符号がFのアクセスポイント20が受信した端末電界強度が2、である場合には、位置特定テーブル42aのパターンnに該当するため、パターンnに対する分割領域が03であることから、当該端末装置30が存在する分割領域は03であると特定される。
【0152】
管理装置40は、AP電力値設定テーブル12bを参照して、算出した端末装置30の総数と、端末装置30毎の分割領域とに基づいて、該当するパターンを特定し、当該パターンに対応した各アクセスポイント20の送信部23の駆動状態、即ち、当該送信部23による通信信号の送信動作の可否及びアクセスポイント20の送信部23の送信電力値(以下、AP電力値)を設定する(ステップS67)。
【0153】
なお、ステップS67において、端末装置30の総数及び端末装置30が存在する分割領域の組み合わせが同じパターンが複数存在している場合には、駆動されるアクセスポイント20の数が最も少ないパターンを設定する。
【0154】
ステップS67において、例えば、図24に示すように、端末装置30の総数が6であって、分割領域01、03、04、06、08、09に1台ずつ端末装置30が存在している場合には、図6に示すAP電力値設定テーブル12bのパターンmに該当するため、識別符号がA、C、Hのアクセスポイント20の送信部23のAP電力値を3(最大電力値)で通信信号の送信動作を行わせ、他のアクセスポイント20の送信部23は通信信号の送信動作停止、という駆動状態が設定される。
【0155】
管理装置40は、各アクセスポイント20に対して、設定した駆動状態に基づいて送信部を変更させる指示を送信する(ステップS68)。
【0156】
アクセスポイント20は、管理装置40から駆動状態の変更指示を受信すると、駆動状態を変更する(ステップS69)。駆動状態の変更とは、送信部23による通信信号の送信動作が指示されている場合には、送信部23の出力調整部23bにより設定されたAP電力値に変更し、送信部23による通信信号の送信動作停止が指示されている場合には、本処理を終了する。
【0157】
送信部23による通信信号の送信動作が指示され、送信部23の出力調整部23bにより設定されたAP電力値に変更した場合、変更されたAP電力値に応じて、アクセスポイント20を中心とした電界強度分布が発生する。
【0158】
ステップS70〜ステップS76は、図11に示したステップS18〜ステップS24と同様の処理であるため、説明は省略する。
【0159】
なお、ステップS70は、ステップS18と同様に、端末装置30側からの要求により、当該端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との間の通信接続が確立した状態を示しており、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0160】
図23に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図は、図14に示す実施の形態1と同様であるため、図示および説明は省略する。
【0161】
また、図23に示す処理が終了すると、AP別端末接続情報12dが生成される。
図23に示す処理が終了した際に生成されるAP別端末接続情報12dの一例は、図15(a)に示す実施の形態1と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0162】
次に、図25に、本実施の形態2において、いずれかのアクセスポイント20の送信部23が通信信号を送信している場合の処理を示すラダーチャートを示す。なお、図25に示すラダーチャートは、複数の端末装置30のうち任意の端末装置30と、複数のアクセスポイント20のうち任意のアクセスポイント20と、管理装置40との間の処理である。
【0163】
端末装置30は、送信部33による通信信号の送信の開始又は停止、即ち、送信部33の駆動の開始又は停止を行う(ステップS81)。また、アクセスポイント20は、通信接続している端末装置30の数に増減が発生したか否かを判別し(ステップS82)、端末装置30の数に増減が発生していないと判別した場合(ステップS82;No)、端末装置30の数の増減が発生するまで待機する。
【0164】
通信接続している端末装置30の数の増減の発生の有無は、アクセスポイント20が受信する端末装置30の送信部33により通信信号が送信された際に発生する電界の有無に基づいて判別することができる。
【0165】
ステップS81における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図は、図17に示す実施の形態1と略同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0166】
アクセスポイント20は、端末装置30の数に増減が発生したと判別した場合(ステップS82;Yes)、接続されている端末装置30の数に変更が生じた旨を管理装置40に送信する(ステップS83)。
【0167】
管理装置40は、いずれかのアクセスポイント20から接続されている端末装置30の数の変更発生の旨を受信すると、全てのアクセスポイント20に対して、端末装置30の位置を確認する指示を送信する(ステップS84)。
【0168】
端末装置30と通信接続しているアクセスポイント20は、管理装置40から端末装置30の位置を確認する指示を受信すると、通信接続している端末装置30に対して、各端末装置30の位置を確認する指示を送信する(ステップS85)。
【0169】
端末装置30は、アクセスポイント20から位置確認の指示を受信すると、端末電力値を最大電力値に変更して送信部33を駆動して通信信号を送信し、端末装置30を中心とした電界強度分布を発生させる(ステップS86)。
【0170】
アクセスポイント20は、端末装置30から送信される通信信号を受信すると共に端末電界強度を検知し(ステップS87)、検知した端末電界強度と、通信接続している端末装置30の識別符号を管理装置40に送信する(ステップS88)。
【0171】
管理装置40は、各アクセスポイント20から送信される各アクセスポイント20の端末電界強度に基づいて、領域100内において存在する端末装置30の総数を算出し(ステップS89)、また、位置特定テーブル42aを参照して、各端末装置30の位置情報として、各端末装置30が存在する分割領域を特定する(ステップS90)。
【0172】
ステップS90〜ステップS103は、図16に示したステップS40〜ステップS53と同様の処理であるため、説明は省略する。
【0173】
なお、ステップS95は、ステップS16と同様に、アクセスポイント20側から通信接続されている端末装置30との通信接続を切断する場合、又は、端末装置30側から通信接続されているアクセスポイント20との通信接続を切断する場合、のいずれか一方の動作の速い方により実行されるため、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0174】
また、ステップS97は、ステップS18と同様に、端末装置30側からの要求により、当該端末装置30と当該端末装置30において通信信号の電界強度が最大となるアクセスポイント20との間の通信接続が確立した状態を示しており、アクセスポイント20側及び端末装置30側夫々に同一ステップ番号を付している。
【0175】
また、ステップS96における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図は、図18に示す実施の形態1と同様であり、更に、図25に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図は、図19に示す実施の形態1と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0176】
以上のように、本実施の形態2によれば、予め定められた領域100内に存在する端末装置30の総数と特定された端末装置30の個々の分割領域とに基づいて、各アクセスポイント20の送信部23の送信制御を行うことができるため、領域100内に存在する端末装置30の配置分布状態に応じてアクセスポイント20の送信部23による送信制御に要する消費電力を低減することができ、端末装置30、アクセスポイント20、無線LAN制御装置である管理装置10から構成される無線LANシステム1全体の省電力化を図ることができる。
【0177】
また、端末装置30の位置情報(端末装置30が存在する分割領域)を、各アクセスポイント20が端末装置30から送信された通信信号の電界強度に基づいて特定することができるため、GPS(Global Positioning System)等の特別な装置や回路を設けずとも、予め定められた領域内での端末装置30の位置を特定することができる。
【0178】
更に、端末装置30の送信部33の送信電力値を、アクセスポイント20との通信接続に最低限必要とされる送信電力値に調整することができるため、端末装置30が消費する消費電力の低減を図ることができ、無線LANシステム1全体の省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本実施の形態1における無線LANシステム1の概略構成図である。
【図2】本実施の形態1における無線LANシステム1が適用される領域100と当該領域100内でのアクセスポイント20の配置例である。
【図3】本実施の形態1における管理装置10の制御ブロック図である。
【図4】アクセスポイント20から通信信号を送信する際の送信部の送信電力値が最大電力値である場合に生じる電界強度分布の一例である。
【図5】位置特定テーブル12aの一例である。
【図6】AP電力値設定テーブル12bの一例である。
【図7】図7(a)は、最小駆動状態である場合のアクセスポイント20の送信部により通信信号を送信可能な範囲及び端末装置30の配置例であり、図7(b)は、最大駆動状態である場合のアクセスポイント20の送信部により通信信号を送信可能な範囲及び端末装置30の配置例である。
【図8】端末電力値設定テーブル12cの一例である。
【図9】アクセスポイント20の制御ブロック図である。
【図10】端末装置30の制御ブロック図である。
【図11】本実施の形態1におけるアクセスポイント20の送信部23の駆動開始時の処理を示すラダーチャートである。
【図12】ステップS1における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図13】ステップS5における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図14】図11に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図15】図15(a)は、図11に示す処理終了後に生成されるAP別端末接続情報12dの一例であり、図15(b)は、ステップS41において更新されるAP別端末接続情報12dの一例である。
【図16】本実施の形態1において、いずれかのアクセスポイント20の送信部23が通信信号を送信している場合の処理を示すラダーチャートである。
【図17】ステップS31における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図18】ステップS46における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図19】図16に示す処理終了後における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図20】本実施の形態2における管理装置40の制御ブロック図である。
【図21】端末装置30から通信信号を送信する際の送信部33の送信電力値が最大電力値である場合に生じる電界強度分布の一例である。
【図22】位置特定テーブル42aの一例である。
【図23】本実施の形態2におけるアクセスポイント20の送信部23の駆動開始時の処理を示すラダーチャートである。
【図24】ステップS61における領域100内のアクセスポイント20と端末装置30の状態イメージ図である。
【図25】本実施の形態2において、いずれかのアクセスポイント20の送信部23が通信信号を送信している場合の処理を示すラダーチャートである。
【符号の説明】
【0180】
1 無線LANシステム
10 管理装置
11 制御部
12 記憶部
12a 位置特定テーブル
12b AP電力値設定テーブル
12c 端末電力値設定テーブル
12d AP別端末接続情報
13 ネットワークI/F
20 アクセスポイント
21 制御部
22 記憶部
22a AP電力値テーブル
23 送信部
23a 無線部
23b 出力調整部
23c アンテナ部
24 受信部
25 ネットワークI/F
30 端末装置
31 制御部
32 記憶部
32a 端末電力値テーブル
33 送信部
33a 無線部
33b 出力調整部
33c アンテナ部
34 受信部
35 操作表示部
40 管理装置
41 制御部
42 記憶部
42a 位置特定テーブル
100 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を送受信する通信手段を有する複数の端末装置と、予め定められた領域内に互いに間隔を置いて設置され前記端末装置それぞれとの間で前記通信信号を送受信する通信手段を有する複数のアクセスポイントと、の間の無線通信接続を制御する無線LAN制御装置において、
前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の総数を検出する端末数検出手段と、
前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の個々の位置情報を特定する位置特定手段と、
前記端末数検出手段により検出された前記端末装置の総数と、前記位置特定手段により特定された前記端末装置の個々の位置情報と、に基づいて、前記アクセスポイントの前記通信手段の送信制御を行うアクセスポイント制御手段と、
を備えること、
を特徴とする無線LAN制御装置。
【請求項2】
前記アクセスポイント制御手段は、前記アクセスポイントの前記通信手段の送信制御として、当該通信手段による通信信号の送信の可否及び前記通信信号を送信する際の送信電力値を制御すること、
を特徴とする請求項1記載の無線LAN制御装置。
【請求項3】
前記端末装置が前記アクセスポイントの前記通信手段から送信された前記通信信号を受信した際の電界強度を取得する第1電界強度取得手段を備え、
前記位置特定手段は、前記第1電界強度取得手段により取得された電界強度に基づいて前記位置情報を特定すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の無線LAN制御装置。
【請求項4】
前記アクセスポイントが前記端末装置の前記通信手段から送信された前記通信信号を受信した際の電界強度を取得する第2電界強度取得手段を備え、
前記位置特定手段は、前記第2電界強度取得手段により取得された電界強度に基づいて前記位置情報を特定すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の無線LAN制御装置。
【請求項5】
前記予め定められた領域を複数の分割した分割領域毎に前記端末装置から前記アクセスポイントそれぞれに前記通信信号を送信する際に最低限必要とされる当該端末装置の前記通信手段の送信電力値が予め定められている端末出力値設定情報群を記憶する記憶手段と、
前記位置特定手段により特定された前記端末装置の個々の位置情報と、前記記憶手段に記憶されている端末電力値設定情報群とに基づいて、前記端末装置の前記通信手段の送信電力値を制御する端末制御手段と、
を備えること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の無線LAN制御装置。
【請求項6】
通信信号を送受信する通信手段を有する複数の端末装置と、予め定められた領域内に互いに間隔を置いて設置され前記端末装置それぞれとの間で前記通信信号を送受信する通信手段を有する複数のアクセスポイントと、の間の無線通信接続を制御するコンピュータを、
前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の総数を検出する端末数検出手段、
前記予め定められた領域に存在する前記端末装置の個々の位置情報を特定する位置特定手段、
前記端末数検出手段により検出された前記端末装置の総数と、前記位置特定手段により特定された前記端末装置の個々の位置情報と、に基づいて、前記アクセスポイントの前記通信手段の送信制御を行うアクセスポイント制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−79103(P2008−79103A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257417(P2006−257417)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】