説明

無菌包装されているHMBを含む栄養液

ペルオキシド処理した無菌パッケージ、及び該パッケージ中に収容されているβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレート(HMB)並びに脂肪、炭水化物及びタンパク質の少なくとも1つを含む栄養液を含む栄養組成物が開示されている。HMBは栄養液中で緩衝効果を与えて、無菌的に滅菌したパッケージにおいて支配的な酸性pHシフトを最小限に抑え、従って製品安定性を経時的に維持するのを助ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌包装されているβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレート(HMB)を含む栄養液に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトに対して経口投与するのに適した包装されている栄養液には色々な種類のタイプがあり、前記組成物は典型的には多量及び微量栄養素の各種組み合わせを含む。これらの包装されている栄養液の多くは単独または補充栄養源として使用するために乳またはタンパク質を主成分とするエマルジョンとして処方されている。これらの包装されているエマルジョンはしばしば脂肪、タンパク質、炭水化物、ビタミン及びミネラルを含む水中油型エマルジョンとして製造されており、その幾つかの例には米国オハイオ州コロンバスに所在のAbbott Laboratoriesから市販されているエンシュア(登録商標)栄養液及びグルセルナ(登録商標)シェイクが含まれる。
【0003】
上記した包装されている栄養組成物は、ヒトに対して経口投与するのに適した組成物とするのに必要な程度まで微生物汚染物を減らすように製造方法中滅菌されている。これらの方法はしばしばレトルト滅菌及び無菌プロセス滅菌のような熱プロセスを含む。典型的なレトルト方法は、栄養組成物を適当な容器に充填し、容器を密封した後、密封した容器及びその内容物を滅菌するのに十分な期間及び温度で加熱することを含む。一方、無菌滅菌方法は、典型的には食品グレード容器の内部及び栄養組成物を別々に滅菌した後、滅菌した容器及び滅菌した栄養組成物をクリーンルーム環境で組合せ、容器を密封することを含む。
【0004】
栄養組成物を滅菌するための無菌滅菌方法の人気は長年にわたって増えている。この方法を使用することにより、栄養製品をレトルト滅菌のために必要なほど高い温度に加熱しなくてすむ。これらの低温は高温に比して製品酸化の量を減らせるので通常好ましい。加えて、レトルト滅菌はプラスチック容器を高温に加熱する必要があり、その結果滅菌中にプラスチック容器が破損する恐れがあるので、プラスチック容器の無菌滅菌がプラスチック容器のレトルト滅菌よりも通常好ましい。
【0005】
無菌滅菌の人気は増えており、無菌滅菌はレトルト滅菌よりも幾つかの利点があるが、無菌滅菌は滅菌した栄養組成物を充填する前に容器の内部を滅菌する必要がある。この内部滅菌は、しばしばペルオキシド含有溶液(例えば、過酸化水素溶液)を典型的には噴霧形態で容器の内部に充填し、溶液を乾燥して滅菌した表面を得ることにより実施されている。使用する乾燥方法に関係なく、ペルオキシド残留物が容器の内部表面上に残る。この残留物は経時的に栄養組成物中に移行し、その後ペルオキシド処理した容器に充填される栄養組成物のpHを低下させるので、幾つかの用途では問題であり得る。
【0006】
酸化による栄養液のpHの経時的低下は、パッケージ内部の栄養液に対して(1)沈殿のために栄養液の安定性を弱め得るイオン形態の結合ミネラルの遊離が増加する;(2)特に鉄及び銅種の接触酸化の量が増加する;(3)タンパク質沈殿の量が増加する;及び(4)ビタミンCの不安定化が増加する;を含めた多数の有害な影響を与え得る。これらの望ましくない影響はどれも栄養液の商業的許容性を大きく低下し得る。
【0007】
従って、ペルオキシド処理した無菌滅菌容器中に充填され得、pHの経時的低下に対して安定であり且つ抵抗性である安定な栄養組成物(例えば、安定なタンパク質または乳を主成分とする液体またはエマルジョン)が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ペルオキシド処理した無菌パッケージ、及びその中に収容または密封されているβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレート並びに脂肪、炭水化物及びタンパク質の少なくとも1つを含む栄養液を含む組成物に関する。本明細書中で言及されているペルオキシド処理したパッケージは、ペルオキシド材料をパッケージに導入した方法または環境に関係なく、ペルオキシドに基づく無菌処理にかけたパッケージ、或いは栄養液と組み合わせる前、その間またはその後に他の方法でペルオキシド残留物を含むパッケージであり得る。
【0009】
パッケージ成分を特徴づけるために使用されるペルオキシド残留物は、栄養製品が販売されている国または地域において栄養製品中に使用するのに適した許容され得る量またはレベル以下の範囲であり得る。このペルオキシドレベルは、最も典型的にはパッケージと組み合わされるかまたはパッケージ内に収容される栄養液の重量基準で0.5ppm未満、例えば約0.001〜約0.5ppm、及び約0.05〜約0.1ppmである。
【0010】
本発明は、更にペルオキシド処理した無菌パッケージ中のpH安定性栄養液を製造する方法に関する。この方法は、脂肪、タンパク質、炭水化物及びβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートを一緒に合わせて栄養液を形成し、栄養液を滅菌し、少なくともパッケージの内部をペルオキシド含有溶液で処理することによりパッケージを無菌的に滅菌し、滅菌した栄養液を無菌滅菌したパッケージに充填することを含む。
【0011】
栄養液(例えば、栄養エマルジョン)にβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレート(HMB)を添加すると、栄養液が水素イオン濃度のシフト時のpH変化に対してより抵抗性であるように栄養液に対して緩衝効果が付与されることを知見した。この予期せぬ効果は、HMBが栄養組成物に対する望ましい添加物であり、今回なされた知見に基づいて、HMBを栄養液に添加すると栄養液がペルオキシド含有溶液を用いて無菌的に滅菌した容器中に包装し、生じた栄養液が該液体中に存在するHMBの緩衝効果のためによりpH安定性である点で有利である。ペルオキシド含有溶液を用いて無菌的に滅菌した容器中に充填される栄養液は本来上記したようにpHの経時的シフトをより受けやすいので、栄養液中のHMBの緩衝効果の予期せぬ知見はペルオキシド含有溶液を用いて無菌的に滅菌した容器に充填する栄養液にとって特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の包装されている栄養組成物はHMB、並びに脂肪、タンパク質及び炭水化物の少なくとも1つを含み得、1つ以上の任意または他の成分、特徴または成分をも含み得る。栄養液の本質的特徴及び多くの任意バリエーションの幾つかを以下に詳記する。
【0013】
本明細書中で使用されている用語「HMB」は、別段の定めがない限り、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート(β−ヒドロキシル−3−メチル酪酸、β−ヒドロキシイソ吉草酸とも称される)またはその源(例えば、HMBのカルシウム塩)を指す。HMBの源がHMBカルシウムであるとき、この具体的源は最も典型的には一水和物であり、HMBカルシウムに対して本明細書中で使用されている重量、%及び濃度はすべて別段の定めがない限りHMBカルシウム一水和物の重量に基づいている。
【0014】
本明細書中で使用されている用語「栄養液」は、別段の定めがない限り、ヒトに対して経口投与するのに適しており、最も典型的には約1℃〜約25℃である意図する投与温度で飲用に適した粘度を有している脂肪、タンパク質及び炭水化物の少なくとも1つを含む処方物を意味する。これに関連して、目標温度で飲用に適した粘度は、典型的には約300cps未満、より典型的には約10cps〜約160cps、更により典型的には約20cps〜約70cpsである。本明細書中で使用されている粘度値は、別段の定めがない限り、ブルックフィールド粘度計(モデルDV−II+)を62スピンドル及び目標温度で用いて得る。粘度は、粘度計を目盛り上の読みを得るようにできるだけ最高速度のスピンドル速度で操作することにより測定される。測定した粘度値は、ダイン−秒/cm、すなわちポアズ、より典型的にはセンチポアズ(cps)、すなわちポアズの1/100として表示される剪断応力/剪断速度の比を表す。
【0015】
本明細書中で使用されている用語「長期貯蔵可能な」は、別段の定めがない限り、包装し、次いで18〜25℃で少なくとも約3ヶ月間(例えば、約6〜約24ヶ月間及び約12〜約18ヶ月間)貯蔵した後も商業的に安定のままであり得る栄養液を指す。
【0016】
本明細書中で使用されている用語「栄養エマルジョン」は、別段の定めがない限り、水性エマルジョン(例えば、油中水型、水中油型及び複合エマルジョン)、最も典型的には水中油型エマルジョンとして処方される栄養液を意味する。
【0017】
本明細書中で使用されている用語「脂肪」及び「油」は、別段の定めがない限り、植物または動物から誘導または加工される脂質材料を指すべく互換可能に使用されている。これらの用語は、合成脂質材料がヒトに対して経口投与するのに適している限り合成脂質材料をも含む。
【0018】
本明細書中で使用されている「pH安定性」は、別段の定めがない限り、pHがβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートの緩衝効果のためにpH低下に対して抵抗性または少なくともより抵抗性であることを意味する。
【0019】
本明細書中で使用されている用語「プラスチック」は、別段の定めがない限り、米国食品医薬品局または他の適当な規制グループにより認可されている食品グレードプラスチックを意味し、その幾つかの非限定例にはポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が含まれる。
【0020】
本明細書中で使用されている用語「無菌」、「滅菌した」または「滅菌」は、別段の定めがない限り、食品をヒトの消費に適するとするのに必要な程度までの食品中または食品グレード表面上の伝染性物質(例えば、真菌、細菌、ウイルス、胞子形態等)の減少を指す。滅菌方法は、熱、ペルオキシドまたは他の化学物質、照射、高圧、濾過、或いはその組合せまたは改変の適用を含む各種技術を含み得る。
【0021】
本明細書中で使用されている%、部及び比はすべて別段の定めがない限り全組成物の重量基準である。リストされている成分に関する重量はすべて活性レベルに基づいており、従って市販材料に含まれているかもしれない溶媒または副生成物は別段の定めがない限り含まれない。
【0022】
別段の定めがないかまたは言及されている前後関係により明らかに反対が暗示されていない限り、本発明の単数の特性または限定に対する言及はすべて対応する複数の特性または限定及びその逆を含む。
【0023】
別段の定めがないか組合せが言及されている前後関係により明らかに反対が暗示されていない限り、本発明で使用されている方法またはプロセスステップのすべての組合せは任意の順序で実施され得る。
【0024】
本発明の栄養エマルジョンの各種実施形態は、残りの栄養エマルジョンが本明細書中に記載されている必要な成分または特徴のすべてを含んでいる限り、本明細書中に記載されている任意または選択した必須成分または特徴を実質的に含んでいなくてもよい。これに関連して、別段の定めがない限り、用語「実質的に含んでいない」は、選択した栄養エマルジョンが任意成分を機能量未満しか、典型的には任意または選択した必須成分を約0.5重量%未満、例えば約0.1重量%、及び0重量%しか含んでいないことを意味する。
【0025】
本発明の栄養液及び対応する製造方法は、本明細書中に記載されている必須要素及び特徴、並びに本明細書中に記載されているかまたはそうでなくとも栄養用途において有用である追加または任意の成分、特徴または要素を含み得、これらから構成され得、または本質的にこれらから構成され得る。
【0026】
製品形態
本発明の栄養液は、ヒトに対して経口投与するのに適しており、意図する投与温度で飲用に適した粘度を有している脂肪、タンパク質及び炭水化物の少なくとも1つを含む。これらの組成物は、最も典型的にはエマルジョン(例えば、水中油型、油中水型または複合水性エマルジョン)として、更により典型的には連続水性相及び不連続油相を有する水中油型エマルジョンとして処方され得る。栄養液は長期貯蔵可能であり得る。
【0027】
栄養液はレディ・トゥ・フィードまたはレディ・トゥ・ドリンク液体としても特徴づけられ得、これは栄養液が液体形態で包装されており、液体を収容している密封プラスチック容器から取り出したらすぐにそのまま消費するのに適していることを意味する。換言すると、本発明は、処方または他の方法で再構成され、処方または再構成から24〜72時間以内に使用しなければならない栄養パウダーまたは他の組成物を意図していない。
【0028】
栄養液は最も典型的に長期貯蔵可能なエマルジョンの形態であるが、これらの栄養液は溶液、懸濁液(懸濁している固体)、ゲル等のような非エマルジョンとしても処方され得る。栄養液は、長い貯蔵寿命を維持するために冷蔵を必要とする長期貯蔵できない製品としても処方され得る。
【0029】
栄養液は、典型的には栄養液の重量基準で最高約95重量%の水、例えば約50%〜約95%、約60%〜約90%、及び約70%〜約85%の水を含有している。
【0030】
栄養液は、単独、主要または補充栄養源を与えるように、または特別の疾患または状態に悩んでいる個人が使用するための特殊な栄養液を提供するように十分な種類及び量の栄養素を用いて処方され得る。これらの栄養組成物は広範囲の製品密度を有し得るが、最も典型的には約1.055g/ml以上、例えば1.06g/ml〜1.12g/ml、及び約1.085g/ml〜約1.10g/mlの密度を有している。
【0031】
栄養液は最終使用者の栄養要求に合わせたカロリー密度を有し得るが、多くの場合組成物は約100〜約500kcal/240ml、例えば約150〜約350kcal/240ml、及び約200〜約320kcal/240mlを含む。これらの栄養組成物は、本明細書中に記載されているHMBを含み、その量は最も典型的には約0.5〜約3.0g/240ml、例えば約0.75〜約2.0g/240ml、及び約1.5g/240mlの範囲である。
【0032】
栄養液は約3.5〜約8の範囲のpHを有し得るが、最も有利には約4.5〜約7.5、例えば約5.5〜約7.3、約6.2〜約7.2の範囲である。
【0033】
栄養エマルジョンのサービングサイズは多数の変数に応じて異なり得るが、典型的なサービングサイズは約100〜約300ml、例えば約150〜約250ml、約190ml〜約240mlの範囲である。
【0034】
β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート(HMB)
栄養液は、経口栄養製品中に使用するのに適しており、そうでなくとも栄養液の必須要素または特徴と適合するHMBまたはその源を含む。
【0035】
栄養液は最も適当にはHMBのカルシウム塩を含み、このカルシウム塩は最も典型的には一水和物形態である。HMBカルシウムまたはHMBカルシウム一水和物が本発明において使用するための好ましいHMB源であるが、他の適当な源には遊離酸、無水塩を含めた他の塩形態、エステル、ラクトン、またはそうでなくとも栄養液からバイオアベイラブル形態のHMBを与える他の製品形態としてのHMBが含まれ得る。本発明において使用するための適当なHMB塩の非限定例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、クロム、カルシウムまたは他の非毒性塩形態の水和または無水のHMB塩が含まれる。HMBカルシウム一水和物が好ましく、ユタ州ソルトレークシティーのTechnical Sourcing International(TSI)から市販されている。
【0036】
本発明においてHMB源として使用されるときのHMBカルシウムの濃度(例えば、HMBカルシウム及び/またはHMBカルシウム一水和物の濃度)は、栄養液の重量基準で最高約10%、例えば約0.1%〜約8%、約0.2%〜約5.0%、約0.3%〜約3%、約0.4%〜約1.5%、及び約0.45%の範囲であり得る。
【0037】
多量栄養素
栄養液は、HMBに加えて脂肪、タンパク質及び炭水化物の少なくとも1つを含む。通常、多量栄養素が本明細書中に規定されている栄養液の必須要素と適合し得るならば、公知であるかまたはそうでなくとも栄養製品中に使用するのに適しているどんな脂肪、タンパク質及び炭水化物の源も本発明において使用するのに適している。
【0038】
脂肪、タンパク質及び炭水化物の全濃度または量は意図する使用者の栄養要求に応じて異なり得るが、その濃度または量は最も典型的には本明細書中に記載されている他の脂肪、タンパク質及び/または炭水化物成分を含めて以下の具体的範囲の1つの範囲内に入る。
【0039】
炭水化物濃度は、最も典型的には栄養液の重量基準で約5%〜約40%、例えば約7%〜約30%、約10%〜約25%の範囲である。脂肪濃度は、最も典型的には栄養液の重量基準で約1%〜約30%、例えば約2%〜約15%、及び約4%〜約10%の範囲である。タンパク質濃度は、最も典型的には栄養液の重量基準で約0.5%〜約30%、例えば約1%〜約15%、及び約2%〜約10%の範囲である。
【0040】
栄養液中の炭水化物、脂肪及び/またはタンパク質のレベルまたは量は、追加または代替的に下表に記載されている栄養液中の総カロリーの%としても特徴づけられ得る。
【0041】
【表1】

【0042】
本明細書中に記載されている栄養液中に使用するための適当な脂肪またはその源の非限定例には、ヤシ油、分画ヤシ油、大豆油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、高オレフィン酸サフラワー油、MCT油(中鎖トリグリセリド)、サンフラワー油、高オレイン酸サンフラワー油、パーム及びパーム核油、パームオレイン、カノーラ油、魚油、綿実油及びその組合せが含まれる。
【0043】
本明細書中に記載されている栄養液中に使用するための適当な炭水化物またはその源の非限定例には、マルトデキストリン、加水分解または化工澱粉またはコーンスターチ、グルコースポリマー、コーンシロップ、固形コーンシロップ、コメ由来炭水化物、グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ、蜂密、糖アルコール(例えば、マルチトール、エリトリトール、ソルビトール)及びその組合せが含まれ得る。
【0044】
栄養液中に使用するための適当なタンパク質またはその源の非限定例には、公知であるかまたはそうでなくとも適当な源、例えば乳(例えば、カゼイン、ホエー)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、コメ、トウモロコシ)、野菜(例えば、大豆)またはその組合せから誘導され得る加水分解、部分加水分解または非加水分解タンパク質またはタンパク質源が含まれる。前記タンパク質の非限定例には、乳タンパク質単離物、本明細書中に記載されている乳タンパク質濃縮物、カゼインタンパク質単離物、ホエータンパク質、カゼインナトリウム及びカルシウム、全乳、部分または完全脱脂乳、大豆タンパク質単離物、大豆タンパク質濃縮物等が含まれる。
【0045】
本明細書中に記載されている脂肪成分は水性エマルジョン中で経時的に容易に酸化し、よって水素イオン濃度が経時的に発生または増加し得、本明細書に記載されているHMBまたは他の緩衝系を使用しないと組成物pHが低下し、その結果製品安定性が損なわれる恐れがあるので、栄養液は前記脂肪成分と一緒に処方したときに特に有用である。
【0046】
可溶性タンパク質
本発明の栄養液は、製品安定性を改善し、苦味及び後味の経時的発生を最小限とするために選択した量の可溶性タンパク質を含み得る。
【0047】
可溶性タンパク質は栄養液中の全タンパク質の重量基準で約35%〜100%、例えば40%〜約85%、約60%〜約80%、及び約65%〜約75%に相当し得る。可溶性タンパク質の濃度は、栄養液の重量基準で少なくとも約0.5%、例えば約1%〜約26%、約2%〜約15%、約3%〜約10%、及び約4%〜約8%の範囲であり得る。
【0048】
栄養液中に含まれる可溶性タンパク質の量は可溶性タンパク質/HMBの重量比によっても特徴づけられ得、栄養液の可溶性タンパク質/HMB(例えば、HMBカルシウム及び/またはHMBカルシウム一水和物)の重量比は少なくとも約3.0、例えば約4.0〜約12.0、約7.0〜約11.0、及び約8.0〜約10.0である。
【0049】
本明細書中で使用されている用語「可溶性タンパク質」は、別段の定めがない限りタンパク質可溶性測定試験に従って測定して少なくとも約90%の可溶性を有するタンパク質を指す。前記試験は、(1)タンパク質を水中に2.00%(w/w)で懸濁させるステップ;(2)20℃で1時間激しく撹拌して懸濁液を形成するステップ;(3)懸濁液のアリコートを除去し、タンパク質濃度を全タンパク質として測定するステップ;(4)懸濁液を31,000×g、20℃で1時間遠心するステップ;(5)上清中のタンパク質濃度(可溶性タンパク質)を測定するステップ;及び(6)可溶性タンパク質を全タンパク質の%として表示するステップ;を含む。
【0050】
本明細書中に規定されている可溶性要件を満たしているならば、どんな可溶性タンパク質源でも本発明において使用するのに適しており、その幾つかの非限定例にはカゼインナトリウム(タンパク質可溶性測定試験で測定して>95%の可溶性)、ホエータンパク質濃縮物(タンパク質可溶性測定試験で測定して>90%の可溶性)及びその組合せが含まれる。勿論、不溶性タンパク質を栄養エマルジョン中に配合してもよい。
【0051】
本発明において使用するのに適した可溶性タンパク質はタンパク質中のホスホセリンの含量によっても特徴づけられ得、これに関連して可溶性タンパク質はタンパク質1kgあたり少なくとも約100mmol、例えば約150〜400mmol、約200〜約350mmol、及び約250〜約350mmolのホスホセリンを有するタンパク質と規定される。
【0052】
可溶性タンパク質をホスホセリン含量に換算して規定するとき、可溶性タンパク質(規定したホスホセリン含量を有する)/HMBカルシウムの重量比は少なくとも約3:1、例えば少なくとも約5:1、少なくとも約7:1、及び約9:1〜約30:1であり得ると知見された。これに関連して、必要含量のホスホセリンを有するタンパク質は最も典型的にはカゼインナトリウム、カゼインカリウム及びその組合せのような一価カゼイン塩の形態であり得る。
【0053】
1つの実施形態では、可溶性タンパク質は一価カゼインホスホセリン/HMBカルシウム一水和物のモル比が少なくとも約0.2、例えば約0.2〜約2.0、及び約0.25〜1.7であることによっても特徴づけられ得る。
【0054】
しかしながら、所要のホスホセリン含量を有しており且つ比を計算するために使用されるホスホセリンが多価カチオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)に結合も複合体形成も、または他の方法で連結もしていないならば、どんなホスホセリン含有タンパク質も本発明において使用するのに適していると理解されるべきである。
【0055】
可溶性タンパク質についての本明細書中に記載されている別の規定は、組成物の可溶性タンパク質画分がホスホセリンを有する及び/または有さない可溶性タンパク質を含み得るように殆どまたは全くホスホセリンを含有していないタンパク質を含み得ることも注目すべきである。従って、本発明において使用するための可溶性タンパク質は可溶性タンパク質の特徴の1つ以上により別々にまたは組み合わせて規定され得る。
【0056】
従って、タンパク質内のホスホセリン部分はHMBカルシウムから遊離するカルシウムと結合するために利用され得、よって可溶性タンパク質/HMBカルシウムの上記比は結合も連結もしておらず、また処方中HMBカルシウム由来の可溶性カルシウムに結合するために他の方法で利用可能なホスホセリン部分を有するタンパク質の比である。例えば、カゼインカルシウムとカゼインナトリウムの混合物が組成物中に使用されるが、ホスホセリン含量/HMBカルシウムにより規定されるタンパク質の比はカゼインナトリウム由来のタンパク質画分、更にカルシウムに結合していないカゼインカルシウム画分由来のタンパク質に基づいて計算され得る。
【0057】
可溶性カルシウム結合能
本発明の栄養組成物は、製品安定性を改善し、苦味及び後味の経時的発生を最小限とするためにエマルジョン中の可溶性カルシウム結合能(SCBC)/全可溶性カルシウムの選択した重量比を含むエマルジョン実施形態を含み得る。
【0058】
エマルジョン実施形態の可溶性カルシウム結合能(本明細書中に規定されている)/全可溶性カルシウムの比は少なくとも約2.3、例えば約2.3〜約12.0、約3.0〜約8.0、及び約4.0〜約6.5の重量比であり、前記比は以下の式:
比=SCBC/[可溶性カルシウム]
SCBC=(0.32×[可溶性クエン酸]+0.63[可溶性リン酸]+0.013×[可溶性タンパク質])
に従って求められる。
【0059】
SCBC/全可溶性カルシウムの濃度の重量比は、製品安定性を改善し、苦味及び後味の経時的発生を減ずるために、栄養エマルジョン中の非結合カルシウムの濃度を最小限にするかまたはエマルジョン中の非結合カルシウム/HMBの重量比を最小限とするように調節され得る。
【0060】
カルシウム
本発明の栄養液は、更に対象とする個人において健康な筋肉を発達または維持するのに使用するために所望によりカルシウムを含み得る。HMBカルシウムまたはHMBカルシウム一水和物をHMB源として使用するときカルシウムの一部または全部が与えられ得る。しかしながら、他のカルシウム源が栄養液の必須要素と適合するならば、どんな他のカルシウム源を使用してもよい。
【0061】
栄養液中のカルシウムの濃度は約10mg/Lを超えてもよく、約25mg/L〜約3000mg/L、例えば約50mg/L〜約500mg/L、及び約100mg/L〜約300mg/Lの濃度を含み得る。
【0062】
エマルジョン実施形態において味及び安定性の問題を最小限とするために、カルシウムがエマルジョン中に可溶化される程度を最小限とするようにカルシウムを処方し得る。よって、エマルジョン実施形態中の可溶化カルシウム濃度は約900mg/L未満、例えば約700mg/L未満、約500mg/L〜約700mg/L、及び約400mg/L〜約600mg/Lであり得る。これに関連して、用語「可溶化カルシウム」は20℃で測定した栄養液中の上清カルシウムを指す。
【0063】
液体中のカルシウムは、可溶化クエン酸/可溶化カルシウムの比(当量基準)が5.0以下、例えば4.0以下、3.0以下、及び約0.8〜約3.0であることによっても特徴づけられ得る。これに関連して、用語「可溶化クエン酸」及び「可溶化カルシウム」はそれぞれ20℃で測定した栄養液の上清中に存在するクエン酸及びカルシウムカチオンの均等物を指す。
【0064】
栄養液のカルシウム成分は、900mg/L未満、例えば700mg/L未満、600mg/L未満、及び400mg/L〜700mg/L−栄養エマルジョンに相当する可溶化カルシウムレベルによっても特徴づけられ、HMBカルシウムまたはその一水和物形態/可溶化カルシウムの重量比は約6〜約15、例えば約6〜約12、約6〜約10、及び約6〜約8の範囲である。
【0065】
ビタミンD
本発明の栄養組成物は、更に対象とする使用者の健康な筋肉を維持するのを助けるためにビタミンDを含み得る。ビタミンD形態には、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)及びビタミンD3(コレカルシフェロール)、または栄養製品中に使用するのに適している他の形態が含まれる。
【0066】
栄養液中のビタミンDの量は、サービングサイズあたり最も典型的には最高約1000IU、より典型的には約10〜約600IU、より典型的には約50〜400IUの範囲である。
【0067】
任意成分
栄養液は、更に製品の物理的、化学的、快楽的または加工特性を修正し得、または対象とする集団において使用するとき医薬成分または追加栄養成分として役立ち得る他の任意成分を含み得る。これらの任意成分の多くは公知であるかまたはそうでなくとも他の栄養製品中に使用するのに適しており、任意成分が経口投与するのに安全且つ有効であり、選択した製品形態中の必須成分及び他の成分と適合性であるならば本明細書中に記載されている栄養液中にも使用され得る。
【0068】
任意成分の非限定例には、保存剤、抗酸化剤、乳化剤、追加の緩衝剤、医薬活性物質、本明細書中に記載されている追加栄養素、着色剤、フレーバー、増粘剤及び安定化剤等が含まれる。
【0069】
栄養液は更にビタミンまたは関連栄養素を含み得、その非限定例にはビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロチノイド、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、その塩及び誘導体、並びにその組合せが含まれ得る。
【0070】
栄養液は更にミネラルを含み得、その非限定例にはリン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、セレン、クロリド及びその組合せが含まれる。
【0071】
栄養液は、該液体中に残留する苦味及び後味が経時的に発生するのを抑えるかまたはそうでなくとも覆い隠す1つ以上のマスキング剤をも含み得る。適当なマスキング剤には、天然及び人工甘味料、ナトリウム源(例えば、塩化ナトリウム)及び親水ミロイド(例えば、グアーガム、キサンタンガム、カラゲーナン、ゲランガム)、並びにその組合せが含まれる。栄養液中のマスキング剤の量は選択した具体的マスキング剤、処方物中の他の成分、及び他の処方物または製品の目標変数に応じて異なり得る。しかしながら、前記量は、最も典型的には栄養液の重量基準で少なくとも約0.1%、例えば約0.15%〜約3.0%、及び約0.18%〜約2.5%の範囲である。
【0072】
使用方法
本明細書中に記載されている栄養液は、補充、主要または単独の栄養源を与えるために及び/または本明細書中に記載されている1つ以上の効果を個人に与えるために有用である。この方法によれば、栄養液を所要により所望レベルの栄養を最も典型的には1日につき1〜2サービングの形態で、1日につき1または2つ以上の分割用量で与えるために経口投与され得、例えばサービングサイズは典型的には約100〜約300ml、例えば約150〜約250ml、約190ml〜約240mlの範囲であり、各サービングは1サービングあたり約0.4〜約3.0g、例えば約0.75〜約2.0g、約1.5gのHMBカルシウムを含有している。
【0073】
前記方法は、製品の投与時に、最も典型的には約1〜約6ヶ月(例えば、約1〜約3ヶ月)の長期間にわたり毎日使用した後に個人に対して1)除脂肪体重の維持をサポートするため、2)体力及び/または筋力をサポートするため、3)タンパク質分解及び筋肉細胞の損傷を減らすため、4)運動または他の外傷後の筋肉回復を助けるため、及び5)運動後の筋肉タンパク質分解を減らすための1つ以上を与えるために行われる。
【0074】
前記方法は、1)筋肉が減少している高齢者の除脂肪体重を維持し、サポートするため、2)個人、特に高齢者の活動的な自立ライフスタイルをサポートすべく栄養を与えるため、3)筋力回復をサポートするため、4)筋肉の再建及び体力の回復を助けるため、及び5)筋力を含めた体力及び機動性を向上させるための1つ以上を達成するためにも役立つ。
【0075】
製造方法
栄養液は、栄養エマルジョンまたは他の栄養液を製造するため、最も典型的には栄養水性エマルジョンまたは乳を主成分とするエマルジョンを製造するための公知であるかまたはそうでなくとも適当な方法により製造され得る。
【0076】
1つの適当な製造方法では、例えば脂肪中タンパク質(PIF)スラリー、炭水化物−ミネラル(CHO−MIN)スラリー及び水中タンパク質(PIW)スラリーを含めた少なくとも3つの別々のスラリーを調製する。PIFスラリーは、選択した油(例えば、カノーラ油、コーン油等)を加熱し、混合した後、乳化剤(例えば、レシチン)、脂溶性ビタミン及び全タンパク質の一部(例えば、乳タンパク質濃縮物等)を連続的に加熱撹拌しながら添加することにより形成される。CHO−MINスラリーは、水にミネラル(例えば、クエン酸カリウム、リン酸二カリウム、クエン酸ナトリウム等)、微量及び超微量ミネラル(TM/UTMプレミックス)、増粘または懸濁剤(例えば、アビセル、ゲラン、カラゲーニン)、及びHMBカルシウムまたは他のHMB源を加熱撹拌しながら添加することにより形成される。生じたCHO−MINスラリーを連続的に加熱撹拌しながら10分間保持した後、追加のミネラル(例えば、塩化カリウム、炭酸マグネシウム、ヨウ化カリウム等)、炭水化物(例えば、フルクトオリゴ糖、スクロース、コーンシロップ等)を添加する。次いで、PIWスラリーは、残りのタンパク質(例えば、カゼインナトリウム、大豆タンパク質濃縮物等)を水に加熱撹拌しながら混合することにより形成される。
【0077】
その後、生じたスラリーを加熱撹拌しながら一緒に混合し、pHを所望範囲、典型的には6.6〜7.0に調節する。次いで、組成物を加熱処理し、乳化し、均質化した後放冷する高温短時間(HTST)プロセッシングを組成物に施す。水溶性ビタミン及びアスコルビン酸を添加し、必要ならばpHを所望範囲に調節し、フレーバーを添加し、所望の全固体レベルに達するまで水を添加する。次いで、組成物を無菌的に包装して、無菌包装されている栄養エマルジョンまたは栄養液を形成する。
【0078】
無菌滅菌方法では、例えば栄養液またはエマルジョンを滅菌し、容器を別に滅菌する。栄養液は例えば加熱方法を用いて滅菌され得る。容器は少なくとも容器の内壁に過酸化水素を噴霧した後内壁を乾燥することにより滅菌され得る。容器及び栄養液またはエマルジョンの両方を滅菌したら、液体またはエマルジョンをクリーンルーム環境で容器に充填し、容器を密封する。組成物内の残留ペルオキシドレベルは組成物の重量基準で0.5ppm未満である。
【0079】
無菌滅菌は通常容器の内部に対する滅菌剤として過酸化水素を使用しなければならないことがあるため、通常無菌的に処理した容器の内壁上に残留過酸化水素が存在し、これが液体及びエマルジョンに進入し、pHを変化させる恐れがあるので無菌滅菌した容器中に包装されている無菌的に処理した栄養液またはエマルジョンは経時的pH変化を受け得る。よって、栄養液またはエマルジョンを緩衝し、製品のpHの経時的な望ましくないシフトを防ぐのを助けるために本明細書中に記載されている栄養液またはエマルジョンにHMBを導入することが特に有利である。
【0080】
記載されている方法の他の製造方法、技術及びバリエーションが本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく栄養液またはエマルジョンを製造する際に使用され得る。
【0081】
包装
本発明の栄養液は、重量基準でその全部または大部分がプラスチック、金属、ガラス、紙、厚紙であり得る容器、または前記材料の組み合わせからなるパッケージ(例えば、プラスチック本体と金属キャップ、蓋、リムまたは他の少量包装成分を有する缶)に包装される。
【0082】
容器は単回投与容器であっても、または複数回投与用の密封部材(例えば、キャップの下に位置する薄ホイル密封部材)を有していてもよいリシーラブルまたはリクローザブル容器であってもよい。容器が明細書中に記載されており、当業者に公知の無菌滅菌方法に耐えることができることが好ましい。
【0083】
幾つかの実施形態では押出しプラスチック容器であり得るプラスチック容器は単層プラスチックから構成され得、または中間層を有していてもよい2つ以上の(多層)プラスチックから構成され得る。1つの適当なプラスチック材料は高密度ポリエチレンである。適当な中間層はエチレンビニルアルコールである。1つの特定実施形態では、プラスチック容器はホイルシール及びリクローザブルキャップを有する8オンスの多層プラスチックボトルであり、前記多層ボトルは高密度ポリエチレンの2層及びエチレンビニルアルコールの中間層からなる。別の実施形態では、プラスチック容器はホイルシール及びリクローザブルキャップを有する32オンスの単層または多層プラスチックボトルである。
【0084】
本明細書中に記載されている栄養組成物と一緒に使用されるプラスチック容器またはパッケージは、通常その中に存在するヘッドスペースの量を可能な限り最大に制限するようなサイズ及び形状を有している。ヘッドスペースにおける空気中の酸素が栄養組成物の各種成分の望ましくない酸化を引き起こす恐れがあるので、通常ヘッドスペース、よってプラスチックパッケージ中に存在する酸素の量を制限することが好ましい。1つの実施形態では、プラスチックパッケージまたは容器は約13cm未満のヘッドスペースしか含んでいない。別の実施形態では、プラスチックパッケージは約10cm未満のヘッドスペースしか含んでいない。
【0085】
金属、ガラス、厚紙及び紙容器も当業界で公知であり、本明細書の開示内容に基づいて当業者により適当に選択され得る。これらのタイプの容器は通常無菌滅菌方法を用いて使用するのに適しており、よって本発明において使用するのに適している。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は本発明の栄養液の具体的実施形態及び/または特徴を例示する。これらの実施例は例示の目的のみで提示されており、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなくその多くの改変が可能であるので本発明を限定すると解釈されるべきでない。例示されている量はすべて別段の定めがない限り組成物の全重量に基づく重量%である。
【0087】
実施例1
本実施例は、再構成したペディアシュア(登録商標)パウダー(栄養エマルジョン)中のHMBの緩衝効果を説明する。再構成したペディアシュア(登録商標)パウダー(Abbott Laboratories,オハイオ州コロンバス)(HMBなし)の対照サンプル及び再構成したパウダー1kgあたり5.17gのHMBで強化した再構成したペディアシュア(登録商標)パウダーのサンプルに既知量の希塩酸を室温で添加する。HMB含有サンプルを強化するために使用するHMBはHMBカルシウム一水和物からカルシウムをカチオン交換除去することにより調製する。サンプルに遊離HMBを添加する前に、そのpHを水酸化ナトリウムを用いて6.7に調節する。対照サンプルには等モル量のナトリウムを塩化ナトリウムとして添加する。塩酸の添加から1分後、各サンプルのpHを連続撹拌しながら測定する。pH測定値から、水素イオン濃度(H)を計算する。結果を下表に示す。
【0088】
【表2】

上表のデータは、栄養液中のHMBの存在に関連する適度な緩衝効果を示している。HMB含有サンプルについてのpHの全体的低下はHMB非含有サンプルについてのpHの低下より小さい。また、HMB含有サンプルにおける[H]増加はHMB非含有サンプルに比して小さい。よって、HMBは栄養液中で緩衝効果を与える。
【0089】
実施例2
本実施例は、再構成したペディアシュア(登録商標)パウダー(栄養エマルジョン)中のHMBの緩衝効果を説明する。再構成したペディアシュア(登録商標)パウダー(HMBなし)の対照サンプル及び再構成したパウダー1kgあたり5.17gのHMBで強化した再構成したペディアシュア(登録商標)パウダーのサンプルに既知量(1.32mg/kg−再構成したパウダー)の過酸化水素を室温で添加する。HMB含有サンプルを強化するために使用するHMBは、HMBカルシウム一水和物からカルシウムをカチオン交換除去することにより調製する。サンプルに遊離HMBを添加する前に、そのpHを水酸化ナトリウムを用いて6.7に調節する。対照サンプルには等モル量のナトリウムを塩化ナトリウムとして添加する。1時間後、各サンプルのpHを連続撹拌しながら室温で測定し、pH測定値から[H]濃度を計算する。結果を下表に示す。
【0090】
【表3】

上表のデータは、栄養液中のHMBの存在に関連する適度な緩衝効果を示している。HMB含有サンプルについてのpHの全体的低下はHMB非含有サンプルについてのpHの低下より小さい。また、HMB含有サンプルにおける[H]増加はHMB非含有サンプルに比して小さい。よって、HMBは栄養液中で緩衝効果を与える。
【0091】
実施例3
本実施例は、栄養エマルジョンとしてのレディ・トゥ・ドリンク液体中のHMBの緩衝効果を説明する。市販されているエンシュア(登録商標)プラス(サンプル#1)(Abbott Laboratories,オハイオ州コロンバス)及びサンプル#2(エンシュア(登録商標)プラスを主成分とし、エマルジョン1kgあたり6.5gのHMBカルシウム及びエマルジョン1kgあたり2.38gのホスフェートを含有している液体栄養エマルジョン)の緩衝能を塩酸滴定及び水酸化ナトリウム滴定により比較する。結果を下表に示す。
【0092】
【表4】

上表から明らかなように、HMBカルシウムを含有するサンプル#2はサンプル#1よりもpH低下に対する抵抗が有意により大きい。このデータは、HMBはpH上昇(NaOH添加による)よりもpH低下(酸添加による)に抵抗することにより栄養液に対して選択的緩衝効果を付与することを示している。この特性は経時的にpHが低下し、これに起因して製品が不安定になる傾向が強い栄養エマルジョン及び他の栄養液において特に有用である。
【0093】
実施例1、2及び3のpHデータは、HMBが栄養液中に存在するとき栄養液が酸添加時のpH低下に対してより抵抗性であるように緩衝効果を与えることを示している。この知見はプラスチック容器中に包装される栄養液を処方するときに特に有用である。プラスチック容器、特に過酸化水素溶液で無菌的に処理したプラスチック容器は経時的にpHが低下する傾向にあるために、栄養液中にHMBを添加することは栄養的利点のみならず、栄養液におけるpH低下に関連する有害な作用から栄養液を保護する緩衝効果をも与える。
【0094】
実施例:栄養液
以下の実施例は、本明細書中に記載されている製造方法に従って製造され得る本発明の長期貯蔵可能な栄養液の幾つかを例示する。これらの組成物には、プラスチック及び他の容器中に包装され、1〜25℃の範囲の貯蔵温度で処方/包装から2〜18ヶ月間物理的に安定のままである水性水中油型エマルジョン及び他の栄養液が含まれる。
【0095】
前記処方物は、プラスチック及び他の容器中に包装されており、無菌滅菌方法により滅菌されている長期貯蔵可能な栄養液である。組成物は苦味または後味を経時的に全くまたは殆ど生ぜず、1〜25℃の範囲の貯蔵温度で12〜18ヶ月の貯蔵期間中pH安定で且つ物理的に安定のままである。パッケージ成分組成物は残留ペルオキシドレベルを0.5ppm未満しか有していない。
【0096】
例示されている組成物は、選択した成分を別の炭水化物−ミネラルスラリー(CHO−MIN)、別の水中タンパク質スラリー(PIW)及び別の油中タンパク質スラリー(PIF)に組み合わせる本明細書中に記載されている方法を含めた栄養液を製造するための公知であるかまたはそうでなくとも適している方法により製造され得る。各スラリー毎に成分を選択した材料に対して適した温度及び剪断下で一緒に混合した後、別のスラリーを混合タンクにおいて混合し、超高温処理(UHT)にかけ、次いで約3000psiで均質化する。次いで、均質化した混合物にビタミン、フレーバー及び他の感熱性材料を添加する。所要により、所望の濃度及び密度(通常約1.085〜約1.10g/ml)に達するまで生じた混合物を水で希釈する。次いで、生じた栄養液を無菌滅菌にかけ、240mlのリクローザブルプラスチックボトルを用いて包装する。包装したエマルジョンは3.5〜7.5のpHを有している。
【0097】
実施例4〜7
実施例4〜7は、成分が下表にリストされている本発明の栄養エマルジョンを例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。
【0098】
【表5】

【0099】
実施例8〜11
これらの実施例は、成分が下表にリストされている本発明の栄養エマルジョンを例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。
【0100】
【表6】

【0101】
実施例12〜15
これらの実施例は、成分が下表にリストされている本発明の栄養エマルジョンを例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。
【0102】
【表7】

【0103】
実施例16〜19
これらの実施例は、成分が下表にリストされている本発明の栄養エマルジョンを例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。
【0104】
【表8】

【0105】
実施例20〜23
これらの実施例は、成分が下表にリストされている本発明の栄養エマルジョンを例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。
【0106】
【表9】

【0107】
実施例24〜27
これらの実施例は、成分が下表にリストされている本発明の透明な非エマルジョン液体を例示する。すべての成分の量は、別段の定めがない限り、製品の1000kgバッチあたりのkgとしてリストされている。液体は4.5〜7.2の調節されたpHを有している。
【0108】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキシド処理した無菌パッケージ及び該パッケージ中に密閉した栄養液を含む包装されている組成物であって、該栄養液が、β−ヒドロキシ−β−メチルブチレート並びに脂肪、炭水化物及びタンパク質の少なくとも1つを含む組成物。
【請求項2】
ペルオキシド処理した無菌パッケージの大部分は重量基準でプラスチックである請求項1に記載の包装されている組成物。
【請求項3】
ペルオキシド処理した無菌パッケージの大部分は重量基準で金属である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
栄養液は栄養液の重量基準で約0.2%〜約5.0%のβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートを含む請求項1に記載の包装されている組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、栄養液は脂肪、炭水化物、タンパク質及びβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートを含み、前記タンパク質は50〜100重量%の可溶性タンパク質を含み、及びホスホセリン含有タンパク質1kgあたり少なくとも約100mmolのホスホセリンを有するホスホセリン含有タンパク質を含む組成物。
【請求項6】
可溶性タンパク質はカゼインナトリウム、ホエータンパク質濃縮物またはその組合せから選択される請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
栄養液は約2.3:1〜約12:1の可溶性カルシウム結合能/全可溶性カルシウムの重量比を有している請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ペルオキシド処理した無菌パッケージは少なくとも約13cmのヘッドスペースを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
脂肪、タンパク質、炭水化物及びβ−ヒドロキシ−β−メチルブチレートを一緒に合せて栄養液を形成し;
栄養液を滅菌し;
パッケージの内部をペルオキシド含有溶液で処理することによりパッケージを無菌的に滅菌し;
滅菌した栄養液を無菌的に滅菌したパッケージに充填すること
を含むペルオキシド処理した無菌パッケージ中のpH安定性栄養液の製造方法。
【請求項10】
ペルオキシド処理した無菌パッケージはガラス、プラスチック、金属、紙、厚紙及びその組合せからなる群から選択される材料を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ペルオキシド処理した無菌パッケージはリクローザブルである請求項9に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質はカゼインナトリウム、ホエータンパク質濃縮物及びその組合せからなる群から選択される可溶性タンパク質を含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
栄養組成物は約2.3:1〜約12:1の可溶性カルシウム結合能/全可溶性カルシウムの重量比を有している請求項9に記載の方法。
【請求項14】
栄養液は約5:1〜約12:1の可溶性カルシウム結合能/全可溶性カルシウムの重量比を含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ペルオキシド含有溶液は過酸化水素である請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2013−517805(P2013−517805A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551324(P2012−551324)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022932
【国際公開番号】WO2011/094548
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】