説明

無鉛はんだ合金、およびこれを用いたガラス物品

【課題】ガラス基材上のはんだ付けに用いることができ、高温または低温に曝された場合にも、ガラス基材の割れが防止されかつ良好な接合強度を維持できる無鉛はんだ合金を提供する。
【解決手段】実質的に、インジウム、亜鉛、銀、および錫からなり、インジウムの含有量が66質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、残部が錫であることを特徴とする無鉛はんだ合金、または実質的に、インジウム、亜鉛および銀からなり、インジウムの含有量が80質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が0質量%以上10質量%以下であることを特徴とする無鉛はんだ合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基材上に適用するのに好適な無鉛はんだ合金、およびこれを用いたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のリアウインドウに用いるガラス板の表面には、視界確保のために、デフォッガとして導電線群(熱線群)が形成されることがある。デフォッガには、給電用の金属端子を介して電流が供給される。この金属端子は、デフォッガに接続されたバスバー上に設けられる。
また自動車のリアウインドウやサイドウインドウには、ガラスアンテナが用いられることもある。ガラスアンテナでは、ガラス板の表面に、受信すべき波長に応じたパターンを描くように導電線(アンテナパターン)が形成される。このアンテナパターンの給電点にも金属端子が設けられる。
【0003】
一般に、導電線やバスバーは、ガラス板の表面に印刷した銀(Ag)を含有する導電性ペーストを焼成して形成される。導電性ペーストは、通常、Ag粒子、ガラスフリットおよび溶剤を含む。この導電性ペーストを焼成して導電性被膜とし、その上に、金属端子をはんだ付けにより固着させる。
このように、ガラス板上にはんだ付けを行う場合には、はんだとガラスとの熱膨張係数の差が比較的大きいため、温度変化に伴って生じる応力によってガラス板に割れが生じやすいという問題がある。
【0004】
従来、金属端子のはんだ付けには、一般的に、錫−鉛系(Sn−Pb系)はんだ合金が用いられることが多く、特にガラス板上に適用されるSn−Pb系はんだ合金は、温度変化に伴って発生する応力を緩和するために、鉛の含有量を多くしてガラスとの熱膨張率の差を吸収する延性、展性など性能を高めた合金が用いられる。
【0005】
しかしながら、近年、環境保護の観点から無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)の使用が求められており、自動車用途においても例外ではない。また、特に自動車用途では、高温または低温に曝されても良好な接合強度を維持できることが要求される。
特許文献1には、主に自動車用ガラスへのはんだ付けに用いられる無鉛はんだ組成物として、錫、インジウム、銀、およびビスマスを含み、錫の含有量が約30〜85%、インジウムの含有量が15〜65%である、はんだ合金が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−504411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者等の知見によれば、特許文献1に記載のはんだ合金は、固相と液相が共存する状態と、固体のみが存在する状態の境目の温度である固相線温度が109℃程度またはそれより低くなる可能性が高いため、例えば110℃以上の高温に曝されたときに接合強度が大きく低下するおそれがある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ガラス基材上のはんだ付けに用いることができ、高温または低温に曝された場合にも、ガラス基材の割れが防止されかつ良好な接合強度を維持できる無鉛はんだ合金、およびこれを用いたガラス物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]〜[10]である。
[1]実質的に、インジウム、亜鉛、銀、および錫からなり、インジウムの含有量が66質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、残部が錫であることを特徴とする無鉛はんだ合金。
[2]実質的に、インジウム、亜鉛および銀からなり、インジウムの含有量が80質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする無鉛はんだ合金。
【0010】
[3]インジウムの含有量が68質量%以上90質量%以下である、[1]の無鉛はんだ合金。
[4]亜鉛の含有量が2質量%以上4質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかの無鉛はんだ合金。
[5]銀の含有量が1.4質量%以上5質量%以下である、[1]〜[4]のいずれかの無鉛はんだ合金。
[6]耐熱温度が120℃以上である、[1]〜[5]のいずれかの無鉛はんだ合金。
[7]ガラス基材上に設けられた銀を主成分とする導電性被膜と、導電性部材との固着に用いられる、[1]〜[6]のいずれかの無鉛はんだ合金。
[8]前記ガラス基材が自動車用窓ガラスである、[7]の無鉛はんだ合金。
【0011】
[9]ガラス基材上に銀を主成分とする導電性被膜が設けられており、該導電性被膜と導電性部材とが[1]〜[6]のいずれかの無鉛はんだ合金によって固着されているガラス物品。
[10]前記ガラス基材が自動車用窓ガラスである、[9]のガラス物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無鉛はんだ合金は、ガラス基材上にはんだ付けして高温または低温に曝された場合のガラス基材の割れを防止でき、かつ良好な接合強度を維持できる。
本発明のガラス物品は、高温または低温に曝された場合にもガラスに割れが生じず、ガラス基材上に設けられた銀を主成分とする導電性被膜と導電性部材との、はんだ付けによる接合強度が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】金属端子(導電性部材)の例を示したもので、(a)は正面図、(b)は下面図である。
【図2】実施例で用いたサンプルの概略図である。
【図3】耐熱性試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の無鉛はんだ合金の第1の実施形態は、実質的に、インジウム、亜鉛、銀、および錫からなり、インジウムの含有量が66質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、残部が錫である。
本発明において「実質的に」とは、製造上不可避の不純物を含んでもよいことを意味する。
インジウム(In)は鉛同様に弾性率の低い金属のため応力を緩和するのに効果的であることの他に、本発明の範囲では含有率を高めることにより耐熱温度の上昇に寄与する。インジウムの含有量が66質量%以上であると、115℃以上の耐熱温度が得られる。該含有量の下限は68質量%以上がより好ましい。70質量%以上であれば耐熱温度が120℃以上となり、さらに好ましい。また、インジウムはレアメタルであるため、一般に本発明で用いられる他のハンダ材料より高価であり、製造コスト及び材料調達の安定性や多様性の確保の観点からもその使用比率は低い方が好ましく、上限は93質量%以下であり、90質量%以下が好ましい。
【0015】
亜鉛(Zn)を、1質量%以上含有させることにより、ガラス基材上にはんだ付けしたときのガラスの割れが生じにくくなる。亜鉛の含有量は2質量%以上が好ましい。10質量%以下であると、亜鉛の酸化による劣化が生じにくく、高湿下での錆の発生が抑えられる。4質量%以下が好ましい。
銀(Ag)を、1質量%以上含有させることにより、ガラス基材上に設けられた銀を主成分とする導電性被膜上にはんだ付けした場合に、はんだ合金と導電性被膜との相溶性により、はんだ合金の導電性被膜への浸食(銀くわれ)による当該部分の変色などガラスの外観上の低下が抑えられる。銀の含有量は1.4質量%以上が好ましい。銀はインジウム同様一般に高価であり、製造コストを抑えながら良好な効果を得るために、10質量%以下とし、5質量%以下が好ましい。
錫(Sn)は残部とする。錫を含有させることによりインジウムの使用量を減らして製造コストを削減することができる。
【0016】
本発明の無鉛はんだ合金の第2の実施形態が、上記第1の実施形態と大きく異なる点は、錫を含まない点である。すなわち本実施形態の無鉛はんだ合金は、実施的にインジウム、亜鉛および銀からなり、インジウムの含有量が80質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下である。インジウムの含有量が80質量%以上であると、115℃以上の耐熱温度が得られ、含有量の下限は85質量%以上がさらに好ましい。また、インジウムはレアメタルであるため、一般に本発明で用いられる他のハンダ材料より高価であり、製造コスト及び材料調達の安定性や多様性の確保の観点からもその使用比率は低い方が好ましく、上限は93質量%以下であり、91質量%以下がさらに好ましい。
亜鉛及び銀の含有量の上限および下限の理由は第1の実施形態と同じである。
【0017】
本発明の無鉛はんだ合金は、耐熱温度が120℃以上であることが好ましい。耐熱温度は金属の組成によって制御できる。本発明の無鉛はんだ合金において、インジウム含有量が多くなるほど耐熱温度は高くなる。
耐熱温度が120℃以上であると、多様な使用環境、特に自動車用途に充分に高い耐熱性が得られ好適である。なお、本発明における耐熱温度とは、後述の耐熱性試験に合格した温度の値である。すなわち、耐熱温度が120℃以上とは、後述の耐熱性試験において、積層基材10の表面温度を120℃で保持したときに金属端子5が脱落しない(○:合格)ことをいう。
【0018】
<ガラス物品>
本発明のガラス物品は、ガラス基材上に銀を主成分とする導電性被膜が設けられており、該導電性被膜と導電性部材とが本発明の無鉛はんだ合金によって固着されている構成を有する。
ガラス基材は特に制限されず、例えば公知のガラス板を適宜用いることができる。具体的には、ソーダライムガラス板などの組成のガラス板及びフロート法などで製造した板ガラスを化学的処理または熱処理した強化ガラス板が挙げられる。ガラス板は、平板でもよく、曲げなどの加工が施されていてもよい。2枚のガラス板を、フィルム状の中間膜によって貼り合わせた合わせガラスでもよい。
ガラス板は、好ましくは自動車用の安全ガラスであり、公知のリアウインドウ用、サイドウインドウ用、またはフロントガラス用など車両の各開口部に用いられる自動車用窓ガラスを用いることができる。自動車用窓ガラスの厚さは、1.0〜5mmが好ましく、1.8〜4mmがより好適に用いられる。
【0019】
銀を主成分とする導電性被膜は、銀粒子を50質量%以上含む導電性ペーストを塗布した後、焼成して形成される。導電性ペーストは、従来からガラス物品に適用されてきた公知の組成物を用いることができる。代表的な例としては、銀粒子、ガラスフリット、溶剤を含む組成物が挙げられる。組成は特に制限されないが、例えば銀粒子70〜85質量%、ガラスフリット1〜20重量%、溶剤5〜25質量%が好ましい。
導電性被膜は、例えばアンテナまたはデフォッガであり、ガラス基材上に導電性ペーストを、アンテナまたはデフォッガとして適切な形状に、スクリーン印刷等の塗布手段で塗布し、これを焼成して形成される。アンテナまたはデフォッガとしての導電性被膜の厚さは、一般的に5〜15μm程度である。
【0020】
ガラス基材と導電性被膜との間に、必要に応じて可視光を隠ぺいする暗色に着色した領域、一般には黒色に着色された黒色セラミック層(所謂黒セラ層)を形成してもよい。該黒色セラミック層を設けることにより、自動車用窓ガラスを固定するための接着剤の紫外線等による劣化を防止するとともに、車外側から接着剤やその他の取付治具が隠ぺいされるので、外観意匠の完成度が高まるとの効果もある。該黒色セラミック層の厚さは、一般的に8〜20μm程度である。
該黒色セラミック層は、例えば顔料として酸化銅、酸化クロムなど、セラミックとして酸化ケイ素、酸化ビスマス、酸化亜鉛などからなるガラスフリットを含む黒色セラミックペーストを、スクリーン印刷等の塗布手段で塗布し、これを焼成して形成される。該黒色セラミックペーストとしては、従来からガラス物品に適用されてきた公知の組成物を用いることができる。
【0021】
導電性部材は、例えば、ガラス基材上の導電性被膜に給電するための金属端子である。従来からガラス物品に適用されてきた公知の金属端子を用いることができる。
例えば、図1に例示する構成の金属端子を用いることができる。この例の金属端子5は、導電性被膜にはんだ付けされる2つの接合面51、52を有し、該接合面51と接合面52とを掛け渡す脚部53と、該脚部53から上方に突出した接続部54とを備える。本例の金属端子5は、一枚の金属板を折り曲げ加工して形成されたものであり、接合面51と52とは導通している。
金属端子5の接続部54は、図示しないコネクターおよびワイヤー等を介して電源、アンプ等に電気的に接続される。
なお金属端子5の接合面および各部の形状は、本例に限定されず、適宜変更可能である。
【0022】
本発明のガラス物品は、以下の方法で製造できる。導電性部材として図1の金属端子の例を用いて説明する。
予め、本発明の無鉛はんだ合金を一度溶融させ、金属端子5の接合面51、52上に盛るように溶着させておく。次いで、該無鉛はんだ合金にフラックス(融剤)を塗り、該無鉛はんだ合金を盛った金属端子5の接合面を、ガラス基材上に設けられた導電性被膜の上に押し当てる。次いで、該端子の接合面付近に所定の温度に加熱したコテ先を接触させて加熱しはんだを溶融する。これにより該無鉛はんだ合金が溶融し導電性被膜へ拡散する。しかる後に室温に放置することによって、溶融した無鉛はんだ合金が固化し、導電性被膜と金属端子5とがはんだ付けによって固着されたガラス物品が得られる。
なお、フラックスは、無鉛はんだ合金と接触するガラス基材上の導電性被膜の上に塗布しておいてもよい。また、導電性被膜の上に予めはんだを準備しておいてもよく、本発明の無鉛はんだ合金を一度溶融させて、導電性被膜の上に溶着しておくことも可能である。
ガラス物品において、無鉛はんだ合金は、金属端子5(導電性部材)側から見たときに金属端子5の接合面51、52から大きくはみ出ることなく、該接合面51、52の全面と導電性被膜との間に存在していることが好ましい。該接合面51、52からのはんだ合金のはみ出し量は、金属端子5の接合面51、52上、または導電性被膜の上に予め盛られる無鉛はんだ合金の量によって制御できる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<例1〜12>
表1に示す組成の無鉛はんだ合金を用いて、図2に示すガラス物品のサンプルを作製した。例1〜8は実施例、例9〜12は比較例である。
図2において符号1はガラス板(ガラス基材)、2は黒色セラミック層、3は導電性被膜、4は無鉛はんだ合金、5は金属端子(導電性部材)を示す。金属端子5は錫メッキが施された銅板(厚さ約0.8mm)を折り曲げ加工等して作製されたものである。金属端子5の2つの接合面51、52の面積は互いに等しく、いずれも28mmである。
ガラス板1としては、縦100mm、横100mmの矩形で、板厚が3.5mmのソーダライムガラスからなるガラス板を用いた。ガラス板1の一面上に、無鉛ビスマスシリカ系黒色セラミックペーストからなる黒色セラミックペーストをスクリーン印刷して乾燥した。その上に銀含有量70質量%からなる導電性ペーストをスクリーン印刷して乾燥した。これを700℃に加熱し4分間保持した後、ガラス板1の温度が常温に下がるまで放置した。こうして、ガラス板1上に、厚さ10〜15μmの黒色セラミック層2、および厚さ6〜7μmの導電性被膜(導電性ペーストの焼結体)3が順に設けられた積層基材10を得た。
この積層基材10の導電性被膜3上であって、金属端子5の接合面51、52が固着される部分に、無鉛はんだ合金4をそれぞれ0.2〜0.3g、合計で0.4〜0.5g程度を盛り、その表面にロジン、キシレン、活性剤などからなるフラックスを塗布した。次いで、該無鉛はんだ合金を盛った金属端子5の接合面を、ガラス基材上に設けられた導電性被膜の上に押し当て、該端子の接合面付近に所定の温度に加熱したコテ先を接触させて加熱しはんだを溶融した。このとき、はんだに接触させるはんだごての温度は250℃、接触時間は4〜5秒間とした。この後、室温(20℃)に24時間放置して、図2に示すように、積層基材10上に金属端子5が無鉛はんだ合金4を介して条件ごとにN=6のサンプルを得て、それぞれn=3で冷熱サイクル試験と耐熱性試験を行った。
【0024】
<評価>
[冷熱サイクル試験・割れ]
各例で作製したサンプルについて、下記の条件で冷熱サイクル試験を行った。
すなわち、室温(20℃)のサンプルを、−1℃/分の降温速度で−40℃まで冷却して90分間保持した後、+1℃/分の昇温速度で90℃まで加熱し、90分間保持した後、再び−1℃/分の冷却速度で冷却して20℃に到達するまでを1サイクルとし、連続して30サイクル繰り返した後、ガラス板1を目視で観察した。
例ごとに3個のサンプルについて試験を行い、1個もガラス板が割れなかった場合を○、1個または2個のガラス板に割れが生じた場合を△、3個ともガラス板に割れが生じた場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0025】
[冷熱サイクル試験・接合強度]
上記[冷熱サイクル試験・割れ]を行って、ガラス板に割れが生じなかったサンプルについて、金属端子5を上方(図2中、矢印で示す)に引張る方法で接合強度を測定した。
すなわち、金属端子5を150Nの応力、100mm/分の速度で上方に引張ったときに、金属端子5と積層基材10とが剥離せず両者の固着が保持された場合○、金属端子5が積層基材10から剥離した場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0026】
[耐熱性試験]
各例で作製した3個のサンプルについて、下記の条件で耐熱性試験を行った。
図3に示すように、サンプルの金属端子5の接続部54に、針金11を介して500gのおもり12を垂下した状態で、オーブン内で加熱した。金属端子5が固着されている面上の、金属端子5からの距離が10mmの位置に熱電対を貼り付けて積層基材10の表面温度を測定した。積層基材10の表面温度を漸次昇温させ、115℃、120℃、125℃、130℃に達したら、それぞれ30分間保持した。各温度で保持したときに金属端子5が脱落しなかった場合を○(合格)、金属端子5が積層基材10から剥離して脱落した場合を×(不合格)として評価した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1の結果より、本発明の無鉛はんだ合金を用いた例1〜8では、冷熱サイクル試験においてガラス板1の割れが良好に防止され、特に例2〜8においては、冷熱サイクル試験におけるガラスの割れは発生しなかった。また、該冷熱サイクル試験後の接合強度も良好である。また耐熱性は良好であり、耐熱性試験の結果より、例1〜8のいずれも、耐熱温度が115℃以上であることがわかる。これは、本発明の無鉛はんだ合金において含有量の多い共晶点が117℃であるインジウムと錫の2元系合金の固相温度(固相と液相が共存する状態と、固体のみが存在する状態の境目の温度)とよく合致する。インジウムの含有量が相対的に多い例3〜8のいずれも耐熱温度が120℃以上であり、より耐熱性能が高いはんだ合金が得られた。
これに対して、はんだ合金が亜鉛を含まない例9〜11は、冷熱サイクル試験においてガラス板1の割れが生じやすい。はんだ合金が亜鉛を含まず、錫も含まない例12は冷熱サイクル試験結果においては、比較的良好な結果を示しているが、インジウムの含有量が多くなるためコスト等の経済面などで好ましくない。
【符号の説明】
【0029】
1 ガラス板(ガラス基材)
2 黒色セラミック層
3 導電性被膜
4 無鉛はんだ合金
5 金属端子(導電性部材)
10 積層基材
11 針金
12 おもり
51、52 接合面
53 脚部
54 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に、インジウム、亜鉛、銀、および錫からなり、インジウムの含有量が66質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であり、残部が錫であることを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項2】
実質的に、インジウム、亜鉛および銀からなり、インジウムの含有量が80質量%以上93質量%以下、亜鉛の含有量が1質量%以上10質量%以下、銀の含有量が1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項3】
インジウムの含有量が68質量%以上90質量%以下である、請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項4】
亜鉛の含有量が2質量%以上4質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無鉛はんだ合金。
【請求項5】
銀の含有量が1.4質量%以上5質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の無鉛はんだ合金。
【請求項6】
耐熱温度が120℃以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の無鉛はんだ合金。
【請求項7】
ガラス基材上に設けられた銀を主成分とする導電性被膜と、導電性部材との固着に用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の無鉛はんだ合金。
【請求項8】
前記ガラス基材が自動車用窓ガラスである、請求項7に記載の無鉛はんだ合金。
【請求項9】
ガラス基材上に銀を主成分とする導電性被膜が設けられており、該導電性被膜と導電性部材とが請求項1〜6のいずれか一項に記載の無鉛はんだ合金によって固着されているガラス物品。
【請求項10】
前記ガラス基材が自動車用窓ガラスである、請求項9に記載のガラス物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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